説明

画像処理装置および方法並びにプログラム

【課題】線状構造からなる対象組織であっても、誤接続を軽減し、本来の線状構造をより正確に反映した木構造を生成させる。
【解決手段】被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出し、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元画像の検出処理に関し、特に三次元画像における線状構造からなる対象組織の自動検出に適した、画像処理装置および方法並びにそのためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野においては、複数の二次元画像に対して、所定の検出処理(例えば、マシンラーニングによる検出手法等)を施すことにより対象組織を検出し、三次元的な画像の構築を可能とする画像投影法(Intensity Projection法)やボリュームレンダリング法を計算機に実行させることにより、対象組織を表す疑似三次元画像を生成することが行われている。これにより、読影者は、対象組織の状況を容易に確認することができる。
【0003】
三次元画像を構成する二次元画像(CT画像)毎に微分フィルタを施し、CT画像の画素値の変化する位置を検出することにより、注目領域上の線状構造からなる対象組織(例えば、血管等)を検出する手法が、非特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Andrzej Szymczak, et al.. Coronary vessel tree from 3D imagery:A topological approach. Medical Image Analysis 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載される発明は、候補点(ノード)間の距離が近いものほど、重みを小さく設定し、最小全域木手法により木構造を再構成するものである。例えば、血管に対して本手法を適用した場合、図2に示すように各候補点であるノードと、ノードを接続する重みに相当するエッジ情報(図2に示す数値は、エッジ情報値)が与えられているとき、全てのノードを最小のコストで接続するエッジの組み合わせが得られる。例えば、図3(A)に示すように画像上に複数の候補点を設定し、図3(B)に示すように最小全域木手法により候補点間を接続し、木構造を再構築することにより、血管を検出する。
【0006】
しかしながら、非特許文献1の手法は、候補点(ノード)間の距離が近いもの同士を単純に接続する傾向が強く、ノイズとなる候補点が混在した場合に、血管の経路を正しく接続することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、線状構造からなる対象組織であっても、誤接続を軽減し、本来の線状構造をより正確に反映した木構造を生成することが可能な画像処理装置および方法並びにそのためのプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像処理装置は、被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出する候補点算出部と、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築する再構築処理部とを備えたものであることを特徴とする。
【0009】
「候補点算出部」は、三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出するものである。
【0010】
また、「候補点算出部」は、三次元画像に対してヘッセ行列を算出し、算出されたヘッセ行列の固有値を解析することにより、位置情報と主軸情報を有する複数の候補点を検出するものであってもよい。
【0011】
また、「候補点算出部」は、固有値が所定の閾値条件を満たすものであるか否かにより、候補点を検出するものであってもよい。
【0012】
「候補点算出部」は、主軸方向に基づいて、対象組織を含む対象領域に対して正規化処理を施す正規化処理部と、正規化処理を施された対象領域の特徴量を算出し、算出された特徴量を用いて対象領域に真の対象組織が含まれるか否かを判別する判別部を備えるものであってもよい。
【0013】
「判別部」は、対象組織と同種の対象組織を含む予め用意された三次元画像に対して、同種の対象組織の主軸方向に基づいて正規化処理を施されたデータを用いて、マシンラーニング手法を行うことにより得られた教師データを備えるものであって、教師データを用いて、算出された特徴量の解析を行うことにより、対象領域に真の対象組織が含まれるか否かを判別するものであってもよい。
【0014】
「再構築処理部」は、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築するものである。また、「再構築処理部」は、複数の候補点のうち少なくとも二つの候補点の関係が、二つの候補点それぞれの位置情報から一定の距離内にあって、かつ二つの候補点を結ぶ基本線と、二つの候補点それぞれの主軸方向から求まる二つの鋭角の和が一定角度内であることを条件とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築するものである。
【0015】
例えば、最小全域木手法を用いることにより再構築するものであってもよい。また、再構築処理部は、二つの候補点の輝度値を変数としたコスト関数を用いてもよい。
【0016】
「三次元画像」は、ボクセルデータから構成される画像である。例えば、複数の二次元画像により構成される三次元的な画像である。二次元画像として、例えば、放射線画像、CT画像、MRI画像、RI画像、PET画像等が挙げられる。
【0017】
「対象組織」は、三次元画像に表される被写体の所定の部位からなる線状構造からなる組織をいい、例えば、冠動脈、脳血管、肝臓血管、気管支、肺血管等、その他の線状構造からなる組織であってもよい。
【0018】
本発明の画像処理方法は、被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出し、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築することを特徴とする。
【0019】
本発明のプログラムは、被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出する機能と、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築する機能をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の画像処理装置および方法並びにプログラムによれば、被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出し、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築することにより、三次元画像上にノイズとなる候補点が混在しても、誤接続が生じることなく正確に対象組織を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】画像処理装置における機能ブロック図
【図2】最小全域木手法を説明するための図
【図3】非特許文献1を説明するための木構造を示す候補点と接続例を示す図
【図4】心臓領域のボリュームレンダリングされた心臓領域を表す図
【図5】本発明の実施形態における一連のフローチャート
【図6】ガウシアンピラミッド構造を説明するための概念図
【図7】線状構造からなる対象組織の主軸方向を算出することを説明するための概念図
【図8】正規化処理を説明するための概念図
【図9】二つの候補点(ノード)を結ぶ基本線と、基本線とそれぞれの主軸方向から求まる二つの鋭角の和を説明するための概念図
【図10】コスト関数(距離)を説明するためのグラフ
【図11】コスト関数(角度)を説明するためのグラフ
【図12】コスト関数(CT値)を説明するためのグラフ
【図13】木構造の再構築を説明するための概念図
【図14】冠動脈と静脈の再構築処理を説明するための概念図
【図15】心臓領域の形状をコスト関数とすることを説明するための概念図
【図16】コスト関数(心臓形状)を説明するためのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の画像処理装置の一実施形態について説明する。
【0023】
図1は本発明の画像処理装置の好ましい実施の形態を示すブロック図である。
【0024】
なお、図1のような画像処理装置の構成は、補助記憶装置(不図示)に読み込まれたプログラムをコンピュータ(たとえばパーソナルコンピュータ等)上で実行することにより実現される。また、このプログラムは、CD−ROM等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされることになる。
【0025】
画像処理装置は、たとえばX線CT装置10により撮像された複数の二次元画像により構成される三次元画像に表される対象組織を自動的に算出するものであって、候補点算出部25、再構築処理部70等を有している。
【0026】
画像処理装置には、画像取得部20と、入力部80と、表示部90等が接続されている。
【0027】
画像取得部20は、たとえば図1に示すような撮像装置、例えばX線CT装置10により撮像されたCT画像(二次元画像)を取得するものである。なお、画像取得手段1は、たとえばCT画像のみならず、いわゆるMRI画像、RI画像、PET画像、X線画像等の二次元画像を取得するものであってもよい。また、画像取得部20は、このような複数の二次元画像により構成される三次元画像を取得するものである。
【0028】
なお、入力部80は、キーボード、マウス等である。
【0029】
本発明の画像処理装置は、被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出する候補点算出部25と、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築する再構築処理部70とを備えるものである。
【0030】
候補点算出部25は、検出領域設定部30と、主軸方向算出部40と、正規化処理部50と、判別部60から構成される。
【0031】
候補点算出部25は、三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出するものである。
【0032】
また、候補点算出部25は、三次元画像に対してヘッセ行列を算出し、ヘッセ行列の固有値を解析することにより、複数の候補点それぞれの位置情報及び主軸情報を算出するものである。更に、候補点算出部25は、算出された固有値が所定の閾値条件を満たすものであるか否かにより、候補点を検出するものであってもよい。
【0033】
候補点算出部25は、画像取得部20により得られた三次元画像中の検出領域を設定する検出領域設定部30と、検出領域における線状構造からなる対象組織の主軸方向を算出する主軸方向算出部40と、主軸方向に基づいて、対象組織を含む対象領域に対して正規化処理を施す正規化処理部50と、正規化処理を施された対象領域の特徴量を算出し、算出された特徴量を用いて対象領域に真の対象組織が含まれるか否かを判別する判別部60を備えるものである。
【0034】
検出領域設定部30は、画像取得部20により取得された三次元画像中の検出領域を設定するものである。検出領域設定部30は、検出アルゴリズムを実行させることにより、検出領域を設定するものであって、例えば、閾値処理、セグメント分割処理を用いた検出アルゴリズムを実行するものである。例えば、検出領域として心臓が挙げられる。
【0035】
また、検出領域設定部30は、入力部80により入力された領域を検出領域として設定してもよい。
【0036】
正規化処理部50は、主軸算出部40により算出された主軸方向に基づいて、対象組織を含む対象領域に対して正規化処理を施すものである。
【0037】
判別部60は、正規化処理部50により正規化処理を施された対象領域の特徴量を算出し、算出された特徴量を用いて対象領域に真の対象組織が含まれるか否かを判別するものである。
【0038】
また、判別部60は、対象組織と同種の対象組織を含む予め用意された三次元画像に対して、同種の対象組織の主軸方向に基づいて正規化処理を施されたデータを教師データとして備えるものであって、教師データを用いて、マシンラーニング手法を利用して算出された特徴量の解析を行うことにより、対象領域に真の対象組織が含まれるか否かを判別するものであってもよい。冠動脈を判別する判別器の学習においては、正の教師データとして冠動脈の直線部の他、湾曲部、分岐部、狭窄、石灰化またステント留置部などの病変部を表すデータを含めることができる。これらを教師データに含めて学習することで、冠動脈のバリエーションに対応し、病変部等も血管として高精度に判別することが可能となる。負の教師データには冠動脈以外の部位をランダムに用意することができる。
【0039】
具体的には、対象組織の検出方法として、統合学習機械をつくる手法であるAdaboostに基づいたマシンラーニング手法を利用するものであることが考えられる。判別部60は、上記の対象組織の検出手法に用いることができる。対象組織は、特徴点検出等の公知の手法や学習データに対してリサンプリングの際に重みを逐次的に更新し、できた機械を最後に学習機械に対する重みをつけることで、統合学習機械をつくる手法であるAdaboostに基づいたマシンラーニング手法を用いる。学習サンプル画像において、対象組織の中心座標とその主軸方向また線状構造の場合はその半径を指定し、中心座標を基準としてその主軸方向に回転させた立方体を関心領域とする。立方体のスケールは半径で規格化する。冠動脈を判別する際の正の学習サンプルには、直線的な血管の湾曲部、血管の分岐部、また狭窄や石灰化、ステント留置部などの病変部を表すデータを含める。負の教師データには冠動脈以外の部位をランダムに用意する。
【0040】
次に、正と負の学習サンプル画像に対して、ランダムに選択されたn組の画素ペアの値の組み合わせを特徴量とし、Adaboostに基づいたマシンラーニング手法により、正と負のパターンを見分ける判別器を作成する。対象組織を検出する際、3次元画像を走査し、注目画素を中心とした様々なサイズの立方体領域を切り出し、特徴量を算出する。それを学習段階で得られた判別器に入力し、判別値を求め、判別値が所定の閾値を超えた場合、対象組織であると判別する。
【0041】
判別のための特徴量はCT画像におけるCT値のX,Y,Z,XY,YZ,ZX方向それぞれの1次微分値とする。その他、CT値の絶対値、CT値のヒストグラム、2次微分値などを用いてもよい。
【0042】
また、対象組織を検出する手法として、他の様々な統計解析法や機械学習法、例えば線形判別法やニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を用いることができる。
【0043】
判別部60は、上述した手法により、三次元画像から対象組織の位置を複数検出し、上述した候補点を複数算出する。
【0044】
表示部70は、二次元画像または三次元画像等を表示するモニタ、CRT画面等である。読影者は、表示部70上に、図4(A)に示すように検出領域(心臓領域)として判別さ
れた領域をボリュームレンダリング表示することで、検出領域を視認することができる。
【0045】
また、読影者は、表示部70上に、図4(B)に示すように対象組織(血管A1)と検出領域(心臓領域)をボリュームレンダリング表示することで、線状構造の全体を概観し、その連続性を視認することができる。
【0046】
なお、判別部60は、切り出した真の対象組織を含む対象領域の所定点を候補点として算出する。
【0047】
再構築処理部70は、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築するものである。また、再構築処理部70は、複数の候補点のうち少なくとも二つの候補点の関係が、二つの候補点それぞれの位置情報から一定の距離内にあって、かつ二つの候補点を結ぶ基本線と、二つの候補点それぞれの主軸方向から求まる二つの鋭角の和が一定角度内であることを条件とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築するものである。具体的には、最小全域木手法を用いることにより再構築するものであってもよい。また、再構築処理部70は、二つの候補点の輝度値を変数としたコスト関数を用いてもよい。
【0048】
次に、以上の構成の画像処理装置において行われる実施態様における処理について説明する。
【0049】
図5は、画像処理装置が三次元画像における線状構造からなる対象組織を検出するまでの一連の処理フローチャートである。
【0050】
まず、図5に示す如く、X線CT装置10により撮像された三次元画像を画像取得部20に入力する(ステップS1)。
【0051】
次に、検出領域設定部30は、上述した検出アルゴリズムを実行することにより、心臓領域を検出する。検出領域設定部30は、検出された心臓領域内から、検出領域を設定する(ステップS2)。この検出領域は、被写体を撮像して得られた三次元画像中にある対象領域を含む所定の領域をいい、例えば、心臓領域を含む領域若しくはその領域の一部の領域等であってもよい。
【0052】
検出領域設定部30は、検出領域における線状構造からなる対象組織を検出すべく、予め三次元画像を多重解像度変換することにより、ガウシアンピラミッドを生成する。
【0053】
その後、検出領域設定部30は、図6に示すように、生成したガウシアンピラミッドごとに検出アルゴリズムを走査することで異なるサイズの線状構造からなる対象候補組織(例えば、冠動脈等)を検出する。
【0054】
検出領域設定部30は、ガウシアンピラミッド構造である図6(a)の検出領域に対してスキャンニングを行い、順次、図6(b)の検出領域、図6(c)の検出領域をスキャンして検出処理を実行する座標を設定する。多重解像度画像を順次走査することで、異なるサイズの対象組織(例えば、冠動脈)を検出することができる。
【0055】
次に、主軸方向算出部40は、検出座標を中心とする局所領域において線状構造からなる対象組織(例えば、冠動脈)の主軸方向を算出する(ステップS3)。
【0056】
主軸方向算出部40は、対象候補組織を含む領域内にて、ヘッセ行列の固有値解析を行い、主軸方向を算出する。ヘッセ行列は、2階の偏微分係数を要素とする行列であり、三次元画像に対しては、数(1)のように3×3行列となる。
【数1】

【数2】

【0057】
ガウシアンカーネル(f)関数を用いた場合、ヘッセ行列を得るためのフィルタ係数は数(2)によって、求められる。σは検出したいサイズの線状構造に対応させる。
【0058】
このヘッセ行列を固有値分解して固有値と固有ベクトルを得たとき、0に最も近い固有値に対応する固有ベクトルが主軸方向である。
【0059】
線状構造は、図7に示すように、3つのうち二つの固有値の値が大きく、1つが0に近い特徴を持つことが知られている。そこで固有値から線状構造らしさを判定し、残った候補についてより詳細な判定を行うようにすると効果的である。数(1)の固有値は、例えば線状構造からなる対象組織に対して、数(3)のような関係を持つ。
【数3】

【0060】
正規化処理部50は、主軸方向算出部40により算出された主軸方向に基づいて、対象組織を含む対象領域に対して正規化処理を施す(ステップS4)。正規化処理部50は、図8(a)に示すように、算出された主軸方向に沿って正規化した画像を切り出す。図8(b)に示すように、正規化処理後の対象組織の三次元画像は、回転不変な特徴を持ったものとなる。但し、画像処理装置は、正規化処理を必ずしも行う必要はなく、判別部60が、正規化した場合と同じ条件で判別のための特徴量を取得してマシンラーニング手法を利用してもよい。
【0061】
次に、判別部60は、正規化処理部50により正規化処理を施された対象領域の特徴量を算出し、算出された特徴量を用いて対象領域に真の対象組織が含まれるか否かを判別する(ステップS5)。
【0062】
判別部60は、正規化処理部50により正規化処理を施した対象領域から上述のマシンラーニング手法等により、特徴量を取り出し、真の対象組織か否かの判別を行う。
【0063】
判別部60は、対象組織であると判別した場合、その画像から切り出された対象領域の所定の点を候補点として設定する。判別すべき対象領域がある限り、判別を繰り返す(ステップS6;YES)。
【0064】
なお、本発明の実施形態は、対象組織として、冠動脈の判別を例に挙げたが、脳血管、肝臓血管、肺血管、気管支など、他の線状構造の抽出に利用することができる。
【0065】
次に、全ての対象領域の判別が終了し、判別が不要となった際には(ステップS6;NO)、設定された複数の候補点のうち少なくとも二つの候補点の関係が、二つの候補点それぞれの位置情報から一定の距離内にあって、かつ二つの候補点を結ぶ基本線と、基本線とそれぞれの主軸方向から求まる二つの鋭角の和が一定角度内であることを条件とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるものであるか否かを再構築する(ステップS7)。
【0066】
具体的には、再構築処理部70は、設定した複数の候補点を最小全域木手法によって、再構築し、冠動脈である対象組織の木構造を得る。このとき、再構築処理70は、候補点間のエッジ情報を用いて、コスト関数を設定する。
【0067】
例えば、コスト関数は、候補点間のエッジ情報の重みを、距離が近いものほど小さく設定
する。更に、コスト関数は、図8に示すように二つの候補点(Node1, Node2)を結ぶ基本線Lを基準として、二つの候補点それぞれの主軸方向から求まる二つの鋭角の和(Angle1+Angle2)が一定角度内であって、コスト関数は、二つの鋭角の和が小さいほど、エッジ情報の重みを小さくするように設定する。このようにコスト関数を設定することにより、再構築処理70は、図13(A)に示すような候補点の接続前の状況から、図13(B)に示すように候補点が再構築され接続されることを可能とする。
【0068】
具体的には、再構築処理70は、コスト関数を数(4)のように設定する。
【数4】

【0069】
コスト関数は、候補点間の距離と血管の半径、主軸方向、候補点におけるCT値のそれぞれの要素を変数として用いて設定する。
【0070】
数(4)の候補点間の距離と血管の半径を用いたガウシアンカーネル(f)関数は、物理的距離が長いほど出力が小さくなる関数であって、図10に示すように、設定される。図10の縦軸は、候補点間の距離と血管の半径を用いたガウシアンカーネル(f)関数であり、横軸は、二つの候補点間の物理的距離を候補点の血管半径で割った値を示すものである。
【0071】
但し、血管の半径により規格化することにより、太い血管は相対的に長い距離でも出力を大きくするようにコスト関数を設定してもよい。また、血管の半径(太さ)とは、候補点が判別の際に、多重解像度画像としてどの程度のスケールであるかを表す。例えば、ボクセルデータが1.0mmの解像度画像で見つかった候補は血管半径を2.0mmとし、ボクセルが2.0mmの解像度画像で見つかった候補は血管半径を4.0mmとする。
【0072】
また、数(4)の主軸方向を用いたガウシアンカーネル(f)関数は、図11に示すように、二つの候補点(Node1とNode2)の指す方向(Angle1とAngle2)が一致していないほど出力が小さくなるように設定する。上述したように、図9に示すように二つの候補点(Node1, Node2)を結ぶ基本線Lと、基本線とそれぞれの主軸方向から求まる二つの鋭角の和(Angle1+Angle2)が一定角度内であって、コスト関数は、二つの鋭角の和が小さいほど、エッジの重みを小さくするように設定する。
【0073】
このように二つの鋭角の和が、一定角度内に収まり、よりゼロに近いほど、方向の一致度は高くなる。
【0074】
なお、図11の縦軸は、主軸方向を用いたガウシアンカーネル(f)関数であり、横軸は、主軸方向の一致度を示すものである。
【0075】
再構築処理70は、最小全域木手法により候補点と候補点を結ぶことで木構造を生成するため、原則としてループが存在しないルールとなっている。そのため、図14(A)に示すように、静脈(点線)が動脈(鎖線)と交差している場合は、再構築をしても図14(B)に示すようにループ中のいずれかの点が切断されて再構成される。そこでCT値をコスト関数に考慮することで、図14(C)に示すように、接続されないエッジが静脈経路(点線)上になり、動脈経路(鎖線)を正しく再構成できる。
【0076】
また、数(4)のCT値を用いたガウシアンカーネル(f)関数は、図12に示すように、候補点位置におけるCT値が低いほど重みが小さくなるよう設定されたものである。造影された冠動脈のCT値が200〜400程度であることを基準としている。図12の縦軸は、CT値を用いたガウシアンカーネル(f)関数であり、横軸は、候補点(ノード)のCT値を示すものである。
【0077】
更にコスト関数は、心臓形状を重みとして設定するものであってもよい。
【0078】
具体的には、図15(A)に示すように動脈A2が、概ね楕円体をしている心臓H1のまわりに存在していることを利用し、図15(B)に示すように最小二乗法を用いてNode3,Node4(候補点)の点群に楕円体をフィッティングし、図15(B)に示すように二つのノード(候補点)について、それぞれを結ぶ方向を計算する。また、図16に示すように心臓形状を用いたガウシアンカーネル(f)関数は、楕円体の接線方向を計算し、これら二つの角度の差が小さいほどコストを小さくし、楕円体の法線方向に近いほど(差が90度に近い)重みを小さく設定するものであってもよい。図16の縦軸は、心臓形状を用いたガウシアンカーネル(f)関数であり、横軸は、二つの候補点(ノード)を結ぶ方向と楕円体の接線方向との差を示すものである。
【0079】
なお、心臓形状に限定することなく、所定の組織形状を用いたガウシアンカーネル(f)関数を設定してもよい。
【0080】
このように再構築処理部70は、検出された複数の候補点のうち少なくとも二つの候補点の関係について接続できるものであるか否かを上述したコスト関数を用いて、最小全域木手法を用いて計算し、その他の候補点の関係も計算することにより対象組織の検出をおこなう。
【0081】
以上により、本発明の画像処理装置は、被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出し、算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、複数の候補点が接続されるように再構築することにより、三次元画像上にノイズとなる候補点が混在しても、誤接続が生じることなく正確に対象組織を検出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出する候補点算出部と、
前記算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、前記複数の候補点が接続されるように再構築する再構築処理部とを備えたものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記再構築処理部が、前記複数の候補点のうち少なくとも二つの候補点の関係が、該二つの候補点それぞれの位置情報から一定の距離内にあって、かつ前記二つの候補点を結ぶ基本線と、前記二つの候補点それぞれの主軸方向から求まる二つの鋭角の和が一定角度内であることを条件とするコスト関数を用いて、再構築するものであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記候補点算出部は、前記三次元画像に対してヘッセ行列を算出し、該算出されたヘッセ行列の固有値を解析することにより、前記複数の候補点それぞれの位置情報及び主軸情報を算出するものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記候補点算出部は、前記固有値が所定の閾値条件を満たすものであるか否かにより、前記候補点を検出することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記候補点算出部は、前記主軸方向に基づいて、前記対象組織を含む対象領域に対して正規化処理を施す正規化処理部と、
前記正規化処理を施された対象候補領域の特徴量を算出し、該算出された特徴量を用いて前記対象領域に真の対象組織が含まれるか否かを判別する判別部を備えるものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判別部は、前記対象組織と同種の対象組織を含む予め用意された三次元画像に対して、前記同種の対象組織の主軸方向に基づいて正規化処理を施されたデータを教師データとして備えるものであって、
前記教師データを用いて、マシンラーニング手法を利用して前記算出された特徴量の解析を行うことにより、前記対象領域に真の対象組織が含まれるか否かを判別するものであることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記再構築処理部は、最小全域木手法を用いることにより再構築するものであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記再構築処理部が、前記二つの候補点の輝度値を変数としたコスト関数を用いることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記対象組織は、冠動脈であることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項10】
被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を表す複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出し、
前記算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、前記複数の候補点が接続されるように再構築することを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
被写体を撮像して得られた三次元画像に対して所定の検出処理を施すことにより、線状構造からなる対象組織を構成する複数の候補点の位置情報と主軸方向を算出する機能と、
前記算出された位置情報および主軸方向に基づいた変数とするコスト関数を用いて、前記複数の候補点が接続されるように再構築する機能とをコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−220742(P2010−220742A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69895(P2009−69895)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】