説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】変形が施される媒体に変形前に画像を形成する際に、より適切に色の補正を行なう。
【解決手段】複数の四角形を要素とするグリッド92を用いて形状が補正された対象画像(文字A)がグリッド92上に配置された状態で、各四角形の重心を頂点とするメッシュ94を作成し、各頂点における対象画像の色を取得する。そして、変形前後の色と面積変化率との対応関係に基づいて、取得されたメッシュ94の各頂点の色を変形後の色として用いると共にメッシュ94の頂点を重心とするグリッド92の四角形の面積変化率を用いて、メッシュ94の各頂点に形成すべき変形前の色を定めることにより画像の色を補正する。これにより、グリッド92の各四角形の面積変化率をメッシュ94の各頂点により正確に反映させて色補正を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形が施される媒体に該変形前に形成される画像を処理する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像処理装置としては、格子が形成されたテスト版下としての成形加工前のデータと、テスト版下で印刷されたものに成形加工が施された三次元形状物をスキャニングして得られた成形加工後のデータとに基づいて、成形加工による形状の変形具合の特徴をつかみ、つかんだ特徴に基づいて三次元形状物に成形した場合にデザイナーが要求する意匠になるような版下を作成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、成形前のuv座標系と成形後のxy座標系とを定め、xy座標上の目標絵柄の各点について対応するuv座標上の各点を求めることで成形に伴う変形を補正した補正済み絵柄を作成し、xy座標上の目標絵柄の各点の色の濃度と濃度関数とから対応するuv座標上の各点の色の濃度を算出することで成形に伴う色の濃度を補正した補正済み濃度を求めるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−119409号公報
【特許文献2】特開2005−199625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の装置では、成形加工による形状の変形については考慮されているが、成形加工による色の変化については考慮されていなかった。また、上述の特許文献2の装置では、成形加工による色の濃度変化については考慮されているものの、濃度の補正を行なう各点の位置が変形の補正を行なう各点と同じ位置に限られるから、色の補正が適切になされない場合がある。
【0005】
本発明の画像処理装置および画像処理方法は、変形が施される媒体に変形前に画像を形成する際に、より適切に色の補正を行なうことを主目的とする。
【0006】
本発明の画像処理装置および画像処理方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、
変形が施される媒体に該変形前に形成される画像を処理する画像処理装置であって、
複数の多角形を要素とする格子を変形前の前記媒体上に設定する格子設定手段と、
該媒体の変形前後における前記格子の各格子点の位置情報を取得し、該取得した位置情報に基づく各要素の変形の度合いを反映させることにより前記形成される画像の形状を補正する形状補正手段と、
前記格子のいずれかの要素に含まれると共に前記各格子点から外れた位置を画像の色を補正するための色補正点として前記格子上に複数設定する色補正点設定手段と、
形状が補正された形状補正済みの画像が前記格子上に配置された状態で前記色補正点の色を取得すると共に該色補正点を含む要素の変形の度合いを取得し、前記媒体の変形前後の色と該媒体の変形の度合いとの所定の対応関係に基づいて、該媒体の変形後の色として前記取得した色補正点の色を用いると共に該媒体の変形の度合いとして前記取得した要素の変形の度合いを用いて前記複数の色補正点に形成すべき変形前の色をそれぞれ定めることにより前記形成される画像の色を補正する色補正手段と
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像処理装置では、複数の多角形を要素とする格子を変形前の媒体上に設定し、媒体の変形前後における格子の各格子点の位置情報を取得し、取得した位置情報に基づく各要素の変形の度合いを反映させることにより形成される画像の形状を補正する。そして、格子のいずれかの要素に含まれると共に各格子点から外れた位置を画像の色を補正するための色補正点として格子上に複数設定し、形状が補正された形状補正済みの画像が格子上に配置された状態で色補正点の色を取得すると共に色補正点を含む要素の変形の度合いを取得し、媒体の変形前後の色と媒体の変形の度合いとの所定の対応関係に基づいて、取得した色補正点の色を媒体の変形後の色として用いると共に取得した各要素の変形の度合いを媒体の変形の度合いとして用いて複数の色補正点に形成すべき変形前の色をそれぞれ定めることにより形成される画像の色を補正する。これにより、色の補正に用いる色補正点を、形状の補正に用いる格子点の位置に限られず、必要とされる色補正の精度などに応じて適正な位置に定めて色補正することができる。この結果、変形が施される媒体に変形前に画像を形成する際に、より適切に色の補正を行なうことができる。
【0009】
また、本発明の画像処理装置において、前記色補正点設定手段は、前記色補正点が前記各要素に1つずつ含まれるよう設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、色補正点と格子の要素とが一対一で対応するから、各要素の変形の度合いを色の補正にスムーズに反映させることができる。
【0010】
さらに、本発明の画像処理装置において、前記色補正点設定手段は、前記色補正点が前記要素の重心に位置するよう設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、各要素の変形の度合いをより精度よく色の補正に反映させることができる。
【0011】
そして、本発明の画像処理装置において、前記色補正点設定手段は、前記格子設定手段により設定される格子の多角形とは別の複数の多角形を要素とする第2の格子の各頂点を、前記複数の色補正点として設定する手段であり、前記色補正手段は、前記定めた色補正点の色を前記第2の格子の各要素における四隅の頂点の色として用いて、該第2の格子の各要素内の色を補間処理により定める手段であるものとすることもできる。こうすれば、第2の格子の各要素内を滑らかに色補正することができる。この態様の本発明の画像処理装置において、前記色補正点設定手段は、前記形状補正手段により形状が補正された画像を覆うよう前記第2の格子を定める手段であり、前記色補正手段により前記色補正点の色と前記第2の格子の各要素内の色とが定められた後に、該第2の格子から前記形状が補正された画像の輪郭に沿って該画像の色を切り出す切出手段と、前記形状補正手段により補正された画像の形状と、前記切出手段により切り出された画像の色とを合わせて、前記画像の形成用のデータとして出力する出力手段とを備えるものとすることもできる。こうすれば、色の属性と形状の属性とに分けたデータとして画像の形成用のデータを得ることができるから、色と形をそれぞれ別々に容易に修正することができる。また、画像の色補正の範囲を、必要な範囲に限定することができるから、処理負担の増加を抑制することができる。
【0012】
そして、本発明の画像処理装置において、前記所定の対応関係は、複数の色により構成されるカラーサンプルを異なる面積変化率で変形させて測色する処理により得られる、前記カラーサンプルの各色値を前記変形前の色とし、変形後の測色値を変形後の色とし、前記面積変化率を前記変形の度合いとして、予め作成された関係であるものとすることもできる。こうすれば、実際の変形の度合いや実際の色の変化をより正確に反映させた対応関係を用いることができるから、より精度よく媒体に形成すべき色を定めることができる。
【0013】
本発明の画像処理方法は、
変形が施される媒体に該変形前に形成される画像を処理する画像処理方法であって、
(a)複数の多角形を要素とする格子を変形前の前記媒体上に設定するステップと、
(b)該媒体の変形前後における前記格子の各格子点の位置情報を取得し、該取得した位置情報に基づく各要素の変形の度合いを反映させることにより前記形成される画像の形状を補正するステップと、
(c)該格子のいずれかの要素に含まれると共に前記各格子点から外れた位置を画像の色を補正するための色補正点として前記格子上に複数設定するステップと、
(d)形状が補正された形状補正済みの画像が前記格子上に配置された状態で前記色補正点の色を取得すると共に該色補正点を含む要素の変形の度合いを取得し、前記媒体の変形前後の色と該媒体の変形の度合いとの所定の対応関係に基づいて、該媒体の変形後の色として前記取得した色補正点の色を用いると共に該媒体の変形の度合いとして前記取得した要素の変形の度合いを用いて前記複数の色補正点に形成すべき変形前の色をそれぞれ定めることにより前記形成される画像の色を補正するステップと
を含むことを要旨とする。
【0014】
この本発明の画像処理方法では、複数の多角形を要素とする格子を変形前の媒体上に設定し、媒体の変形前後における格子の各格子点の位置情報を取得し、取得した位置情報に基づく各要素の変形の度合いを反映させることにより形成される画像の形状を補正する。そして、格子のいずれかの要素に含まれると共に各格子点から外れた位置を画像の色を補正するための色補正点として格子上に複数設定し、形状が補正された形状補正済みの画像が格子上に配置された状態で色補正点の色を取得すると共に色補正点を含む要素の変形の度合いを取得し、媒体の変形前後の色と媒体の変形の度合いとの所定の対応関係に基づいて、取得した色補正点の色を媒体の変形後の色として用いると共に取得した要素の変形の度合いを媒体の変形の度合いとして用いて複数の色補正点に形成すべき変形前の色をそれぞれ定めることにより形成される画像の色を補正する。これにより、色の補正に用いる色補正点を、形状の補正に用いる格子点の位置に限られず、必要とされる色補正の精度などに応じて適正な位置に定めて色補正することができる。この結果、変形が施される媒体に変形前に画像を形成する際に、より適切に色の補正を行なうことができる。この結果、変形が施される媒体に変形前に画像を形成する際に、より適切に色の補正を行なうことができる。なお、この画像処理方法において、上述した画像処理装置の種々の態様を採用してもよいし、上述した画像処理装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】加飾成形システム10の構成の概略の一例を示す構成図。
【図2】色補償変換LUT作成システム80の構成の概略の一例を示す構成図。
【図3】色補償変換LUT66の作成工程の一例を示す工程図。
【図4】色補償変換LUT66の一例を示す説明図。
【図5】形状補償処理の様子を示す説明図。
【図6】色補償処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図7】グリッド92の各格子点と各四角形とを示す説明図。
【図8】算出された各四角形の面積変化率Δsの一例を示す説明図。
【図9】グリッド92上に作成されるメッシュ94の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である加飾成形システム10の構成の概略の一例を示す構成図である。本実施形態の加飾成形システム10は、図示するように、樹脂製のシート(例えばポリフィルム)などの媒体Sがロール状に巻かれてなるロール36から媒体Sを引き出してインクを吐出することにより画像を印刷するプリンター20と、画像が印刷された後の媒体Sを所望の三次元形状に立体成形する成形装置40と、プリンター20と通信可能に接続され媒体Sに形成すべき画像を入力して印刷データに処理して出力する画像処理装置の機能を有する汎用のパソコン(PC)50とを備えている。
【0017】
プリンター20は、装置全体を制御するコントローラー21と、インクを媒体Sに吐出する印刷機構25と、ロール36から媒体Sを引き出しながら搬送する送り機構32とを備えている。コントローラー21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムを記憶しデータを書き換え可能なフラッシュメモリー23と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM24などを備えている。このコントローラー21は、PC50からの印刷データを受信すると共に印刷処理を実行するよう印刷機構25や送り機構32を制御する。印刷機構25は、キャリッジベルト31によりキャリッジ軸30に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ26と、インクに圧力をかけノズル27からインク滴を吐出する印刷ヘッド28と、各色のインクを収容したカートリッジ29とを備えている。印刷ヘッド28は、キャリッジ26の下部に設けられており、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式により、印刷ヘッド28の下面に設けられたノズル27から各色のインクを吐出して媒体S上にドットを形成するものである。なお、インクへ圧力をかける機構は、ヒーターの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。カートリッジ29は、本体側に装着され、シアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),ブラック(k),オレンジ(o),パープル(p)などのcmykopの各色のインクを個別に収容しており、この収容したインクを図示しないチューブを介して印刷ヘッド28へ供給する。送り機構32は、駆動モーター33により駆動されて媒体Sを搬送する送りローラー35などを備えている。
【0018】
成形装置40は、媒体Sの上方側に配置される上型部41と、媒体Sの下方側に配置される下型部42とを備えている。上型部41や下型部42には、図示しない金型がセットされており、上下の金型で媒体Sを挟み込むことにより媒体Sを三次元形状に成形する。なお、成形装置40による成形は、加熱成形であってもよいし、加圧成形であってもよい。また、この成形装置40にセットされる金型は、複数種の異なる金型を交換可能なものとした。なお、媒体Sは、成形前あるいは成形後に、プリンター20と成形装置40との間に配置された切断機37により所定長さに切断される。
【0019】
PC50は、装置全体の制御を司るコントローラー51と、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリであるHDD55と、プリンター20などの外部機器とのデータの入出力を行うネットワークインターフェイス(I/F)56と、ユーザーが各種指令を入力するキーボードやマウスなどの入力装置57と、各種情報を表示するディスプレイ58とを備えている。コントローラー51は、各種制御を実行するCPU52や各種制御プログラムを記憶するフラッシュメモリー53、データを一時的に記憶するRAM54などを備えている。このPC50は、ディスプレイ58に表示されたカーソルなどをユーザーが入力装置57を介して入力操作すると、その入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。コントローラー51やHDD55、I/F56、入力装置57、ディスプレイ58などは、バス59によって電気的に接続され、各種制御信号やデータのやり取りができるよう構成されている。
【0020】
このPC50のHDD55には、図示しないアプリケーションプログラムや変形画像処理プログラム60,印刷ドライバー70などが格納されている。変形画像処理プログラム60は、媒体Sの成形に伴う変形により成形品(成形後の媒体S)の表面に形成されている画像(文字や模様などを含む)に生じる形状ずれや色ずれを補正するために用いられるプログラムである。この変形画像処理プログラム60は、各種データを入力するデータ入力部61と、入力されたデータから処理に必要な値を算出する算出部62と、三次元の画像(絵柄)モデルを編集する3D絵柄編集部63と、成形に伴う形状ずれを補償する形状補償部64と、成形に伴う色ずれを補償する色補償部65と、処理したデータを出力するデータ出力部67とを有している。データ入力部61は、複数の四角形を要素とするグリッドが構成された媒体Sの成形前後のグリッドの各格子点の位置情報をそれぞれ入力したり媒体Sに形成される対象の画像を入力したりする機能を有している。算出部62は、データ入力部61により入力された成形前後のグリッドの各格子点の位置情報に基づいて各格子点の歪み方向や歪み量を算出したりグリッドの各四角形の成形前後の面積変化を算出したりする機能を有している。3D絵柄編集部63は、データ入力部61により入力された各格子点の位置情報を基に成形前の媒体Sに形成した画像の編集や成形後の媒体Sに形成した画像の編集を実行する機能を有している。形状補償部64は、媒体Sの成形時の変形によって生じる画像の形状の変化を反映させて目的の形状に補正する形状補償を実行する機能を有している。色補償部65は、媒体Sの成形時の変形によって生じる画像の色合いの変化を反映させるために色補償変換ルックアップテーブル(LUT)66を用いて目的の色合いに補正する色補償を実行する機能を有している。なお、色補償変換LUT66については後述する。データ出力部67は、形状ずれや色ずれが補償された補正後の画像データを印刷ドライバー70や図示しないアプリケーションプログラムなどへ出力する機能を有している。これらのデータ入力部61や算出部62,3D絵柄編集部63,形状補償部64,色補償部65,データ出力部67は、それぞれ、データ入力モジュールや算出モジュール,3D絵柄編集モジュール,形状補償モジュール,色補償モジュール,データ出力モジュールとして変形画像処理プログラムに組み込まれている。そして、これらの各モジュールがコントローラー51により実行されることにより、それぞれ上述した機能を発現するものとした。また、印刷ドライバー70は、アプリケーションプログラム側から受けた印刷ジョブをプリンター20で直接印刷処理可能な印刷データへ変換してプリンター20へ出力(送信)するプログラムである。この印刷ドライバー70は、変形画像処理プログラム60で作成された印刷データをプリンター20へ出力する機能を有している。
【0021】
ここで、色補償処理で用いられる色補償変換LUT66について説明する。この色補償変換LUT66は、媒体Sの成形時の変形に伴う色変化が反映された変形後の色値と、成形に伴う媒体Sの変形の度合いと、成形前の媒体Sに形成(印刷)される変形前の色値との関係を定めた対応関係テーブルとして、色補償変換LUT作成システム80において作成されるものである。図2は、色補償変換LUT作成システム80の構成の概略の一例を示す構成図である。色補償変換LUT作成システム80は、汎用のインク色のデータや媒体Sの面積変化率のデータ,変形後の測色データなど処理に必要な各種データを入力するデータ入力部82と、入力されたデータを用いて色補償変換LUT66を作成するLUT作成処理部82と、作成された色補償変換LUT66を出力するLUT出力部86とを有している。ここで、色補償変換LUT66では、成形前の媒体Sに形成される変形前の色値として、汎用の色規格で用いられる原色の組合せを用いるものとした。この原色の組合せとしては、本実施形態では、JapanColor認証制度の色規格に準拠したシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)のCMYKの各色成分(ここでは、プリンター20のインク色と区別するために大文字で表記)の組合せを用いるものとした。次に、色補償変換LUT作成システム80を用いて行なわれる色補償変換LUT66の作成工程について説明する。図3は、色補償変換LUTの作成工程の一例を示す工程図である。
【0022】
この色補償変換LUTの作成工程では、まず、実成形に用いられる媒体Sと同じ素材の複数のテストシート(媒体S)を準備してそれぞれのテストシートに複数のカラーパッチを印刷する印刷処理を行なう(工程S100)。このカラーパッチの印刷に用いられるデータは、上述した汎用のCMYK値の組合せにより定めるものとし、具体的には、印刷後に成形を行なわない通常の印刷において最大濃度のパッチを形成するのに必要なインクの吐出量を100%として、CMYKの各色成分を0%から500%までの通常の印刷範囲を超える範囲内で50%刻みで変化させた組合せを用いるものとした。ここで、印刷後に媒体Sの成形を行なうものにおいては、画像が大きく引き延ばされることによる各色の濃度低下の防止を目的として、通常の印刷範囲を超えるインク量が使用される場合がある。そのような場合に対応するために、CMYKの組合せとして各色成分が100%を超える組合せを用いるのである。なお、こうして定めた汎用のCMYK値の組合せを印刷前に印刷装置で用いられるインクの各色の組合せに変換するものとし、例えば、上述したプリンター20を用いて印刷処理を行なう場合には、印刷前にCMYK値の組合せからインクの各色の組合せとしてのcmykop値に変換する。次に、カラーパッチが印刷された複数のテストシートをそれぞれ異なる面積変化率Δsをもって変形させる変形処理を行なう(工程S110)。この面積変化率Δsは、変形後のテストシートの面積を変形前の面積で除したものであり、成形装置40により複数種の異なる金型をそれぞれ用いて媒体Sの各種成形がなされた場合の媒体Sの変形範囲を十分にカバーできる程度の範囲を定めて行なう。本実施形態では、100%(変形なし)から400%の間を50%刻みとした計7通りの面積変化率Δsでテストシートを変形させるものとした。なお、この7通りの変形を行なうため、工程S100では、7枚のテストシートを準備して印刷するものとした。また、工程S110の変形は、成形装置40にセットされる実成形用の金型を用いて行なわれるものではなく、定められた面積変化率Δsをもって各テストシート全体を均一に変形させることが可能な装置を用いるものとした。こうして変形処理を行なうと、変形後の各テストシートのすべてのカラーパッチをそれぞれ測色する測色処理を行なう(工程S120)。この測色処理は、例えば、分光光度計などを用いて、色相,彩度,明度を表すL*a*b*表色系の色座標の値(以下、Lab値とする)を求めることにより行なう。
【0023】
こうして印刷処理と変形処理と測色処理とを行なうと、汎用のインク色データとしてのCMYK値と、面積変化率のデータとしての面積変化率Δsと、測色データとしてのLab値とを処理に必要なデータとして色補償変換LUT作成システム80のデータ入力部82に入力する入力処理を行なう(工程S130)。次に、演算処理部84により、面積変化率Δs毎に変形前のCMYK値から変形後のLab値への変換を対応付ける処理を行なう(工程S140)。こうして対応付けられた面積変化率Δs毎のCMYK値からLab値への変換に基づいて、変形後のLab値と面積変化率Δsとから変形前のCMYK値を逆変換により導出するための対応関係をルックアップテーブル形式で作成する作成処理を行なって(工程S150)、作成したルックアップテーブル形式の対応関係を色補償変換LUT66としてLUT出力部86から出力して(工程S160)、本工程を終了する。ここで、工程S150の作成処理では、Lab値の各値をそれぞれ所定値(例えば、値10)ずつ変化させた色に対するCMYK値を各面積変化率Δs毎にそれぞれ求める処理を行なう。このとき、工程S140でLab値の各値をそれぞれ所定値ずつ変化させた色に対するCMYK値が対応付けられていない場合には、近似の値から補間処理により求めるものとした。この作成工程により作成された色補償変換LUT66の一例を図4に示す。なお、図4では、色補償変換LUT66の一部分のみを図示した。図示するように、色補償変換LUT66では、変形後のLab値と面積変化率Δsとが与えられると変形前の汎用のCMYK値を導出することができ、面積変化率Δsが大きくなるほどCMYK値が大きくなる傾向に設定する。また、色相を表すことができるLab値を用いた対応関係として色補償変換LUT66を作成したから、後述する色補償処理において色相の変化を含めて色の変化の影響をより精度よく反映させることができる。このように、変形後の色値としてのLab値と、変形の度合いとしての面積変化率Δsと、変形前の色値としてのCMYK値との対応関係を定めた色補償変換LUT66が作成され、こうして作成された色補償変換LUT66がPC50のHDD55に記憶されることになる。
【0024】
次に、こうして構成された本実施形態の加飾成形システム10の処理について、まず、形状補償処理について説明する。図5は、変形画像処理プログラム60により実行される形状補償処理の様子を示す説明図である。この形状補償処理では、コントローラー51のCPU52は、まず、縦横に等間隔の複数の格子点を有する四角形(正方形)を要素とするグリッド92を平面状の媒体に構成した画像を作成する(図5(a))。なお、図示の都合上、グリッド92の格子点は実際よりも少ない(間引いた)状態で図示し、格子点の間隔はプリンター20のドットの形成間隔(例えば、720dpiや1440dpiなど)よりも広いものとした。また、これらの各格子点の初期位置(変形前の位置)の位置情報は保持されるものとした。次に、目的の製品の形状に成形されるように媒体を変形させる処理を行ない、変形前後のグリッド92の各格子点の位置情報を入力して変形後の各格子点の三次元座標位置や各格子点の歪み方向や歪み量,各要素の変形度合いなどを算出する。なお、各要素の変形度合いとしては、四角形の面積変化率などが用いられるが、その詳細については後述する。そして、これらの算出結果に基づいて、各要素の変形度合いなどを反映させて成形後の立体物の三次元の画像モデルを作成し、作成した三次元の画像モデルをディスプレイ58へ表示処理する(図5(b))。次に、使用者の入力操作によって三次元の画像モデル上で絵柄の位置が指定されると、指定された位置に絵柄としての印刷対象の画像を配置し(図5(c))、二次元変換指示が入力されると、三次元での座標値を二次元の座標値に変換して変換後の画像を表示する(図5(d))。このようにして、成形後に目的とする絵柄となる形状の画像が成形前の媒体上に形成され、成形前に媒体Sに印刷すべき画像の形状データを作成することができる。なお、図5(d)の画像が媒体Sに印刷されて成形された結果の実成形品を図5(e)に示す。こうして作成された形状データには、以下に説明する色補償処理が施される。
【0025】
次に、色補償変換LUT66を用いた色補償処理について説明する。図6は、コントローラー51のCPU52により実行される色補償処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、HDD55に記憶され、形状補償処理がなされた後に色補償の実行指示が入力されたときに実行される。なお、色補償の実行指示は、例えば、形状補償処理後に、変形画像処理プログラム60の図示しない編集画面がディスプレイ58に表示された状態で、編集画面上の色補償実行ボタンを入力装置57でクリックすることにより入力されるものなどとすればよい。
【0026】
この色補償処理ルーチンが実行されると、CPU52は、まず、変形加工前後のグリッド92の各格子点の位置情報を取得する(ステップS200)。この位置情報の取得は、上述した形状補償処理で説明した変形前後の格子点の三次元座標をそれぞれ取得することにより行なう。次に、取得した各格子点の位置情報からグリッド92の各要素の変形度合いとしての各四角形の面積変化率Δsを算出する(ステップS210)。ここで、グリッド92の各格子点と各四角形とを図7に示す。なお、図7では、グリッド92の一部を拡大して示しており、図7中の対象画像(文字A)は、上述した形状補償処理後の画像(図5(d)参照)が配置されたものである。各四角形の面積変化率Δsの算出は、ステップS200で取得した各格子点の変形前後の位置情報から変形前後の四角形の面積をそれぞれ算出して、変形後の四角形の面積を変形前の面積で除することにより行なう。なお、変形前の各四角形の面積はすべて同一であるため一定値を用いてもよい。こうして算出される各四角形の面積変化率Δsの一例を図8に示す。なお、要素No.は、グリッド92の左上の四角形を起点として左から右へ、上から下へと順に付すものとした。続いて、グリッド92の各四角形の重心の位置を頂点とするメッシュ94をグリッド92上に作成する(ステップS220)。このグリッド92上に作成されるメッシュ94の一例を図9に示す。図示するように、形状補償処理後の画像が配置されたグリッド92上に、グリッド92の各四角形のそれぞれにメッシュ94の各頂点(白丸で図示)が1つずつ含まれると共に各頂点がグリッド92の各格子点から外れた四角形の重心に位置するよう、メッシュ94を作成する。なお、このメッシュ94の頂点が、本発明の色補正点に相当する。そして、このメッシュ94の各頂点のLab値を取得する(ステップS230)。このLab値は変形加工後に呈すべき色であり、その取得は、入力された画像のRGB値やCMYK値などの色の情報に基づいて各頂点に対応する位置の形状補償処理後の画像の色値を求め、求めた色値をLab値に変換することにより取得することができる。あるいは、図5(d)や図7,図9のような形状補償処理後の画像を含む図示しない編集画面をディスプレイ58上に表示して入力装置57を用いた画像の色の指定を受け付け、受け付けた色に基づいて各頂点に対応する位置の色値を求め、求めた色値をLab値に変換することにより取得することができる。
【0027】
こうしてメッシュ94の各頂点のLab値やグリッド92の各四角形の面積変化率Δsを取得すると、処理対象のメッシュ94の頂点を設定して(ステップS240)、処理対象の頂点のLab値と処理対象の頂点に対応するグリッド92の四角形の面積変化率Δsとをそれぞれ読み込む(ステップS250)。なお、処理対象の頂点は、メッシュ94の左上隅の頂点を起点として左から右へ、上から下へと順に設定する。ここで、処理対象範囲としては、後述するようにメッシュ94の色値を補間処理するため、対象画像(文字A)の外側まで完全に包含するのに必要な範囲を定めるものとした。また、処理対象の頂点に対応するグリッド92の四角形は、処理対象の頂点に重心が一致する四角形に定める。上述したように、グリッド92の各四角形にメッシュ94の各頂点が1つずつ含まれており、メッシュ94の頂点とグリッド92の四角形とが一対一で対応しているから、処理対象の頂点に対応するグリッド92の四角形の面積変化率Δsをそのまま読み込むことができる。また、上述したように、本実施形態では、各四角形の重心に各頂点が位置するようメッシュ94を作成している。ここで、四角形の重心の近傍には、四角形の各頂点の近傍などに比して、四角形の各部分に生じる大小様々な変形のうち平均的な度合いの変形が作用するといえるため、その四角形の面積変化率Δsに近い変形が生じていると考えることができる。このため、メッシュ94の頂点を重心とするグリッド92の四角形の面積変化率Δsを読み込むことにより、メッシュ94の頂点における変形の度合いをより正確に反映させたものを読み込むことができる。
【0028】
次に、読み込んだメッシュ94の頂点のLab値を変形後の色値として用いると共に頂点に対応するグリッド92の四角形の面積変化率Δsを用いて色補償変換LUT66から得られる変形前の色値としてのCMYK値を処理対象の頂点のCMYK値に設定する(ステップS260)。ここで、読み込んだLab値と面積変化率Δsとが色補償変換LUT66に登録されている場合には、色補償変換LUT66から対応する値を導出して処理対象の頂点のCMYK値に設定する。一方、読み込んだLab値や面積変化率Δsが色補償変換LUT66に登録されていない場合には、色補償変換LUT66から近似するCMYK値を抽出して補間処理により求めた値を処理対象の頂点のCMYK値に設定する。こうしてCMYK値を設定すると、すべての頂点のCMYK値を設定したか否かを判定し(ステップS270)、未設定の頂点があるときには、ステップS230に戻り各頂点を順次処理対象に設定して処理を繰り返す。一方、すべての頂点のCMYK値を設定したときには、各頂点のCMYK値をそれぞれ通常の印刷範囲の値に圧縮すると共に(ステップS280)、各頂点のCMYK値を用いてメッシュ94の内部(各四角形内)のCMYK値を補間処理によりそれぞれ演算する(ステップS290)。このように、メッシュ94の各頂点の色からメッシュ94内の色を補間処理により求めるから、メッシュ94内を滑らかに色補償することができる。なお、色補償変換LUT66ではCMYK値を500%までの値としているため、各頂点に設定されたCMYK値をそれぞれ1/5にすることで通常の印刷範囲(0〜100%)に圧縮するものとした。こうして、各頂点や内部のCMYK値が定められたメッシュ94を形状補償処理後の画像の輪郭で切り出して(ステップS300)、切り出したメッシュ94のCMYK値を色補償データとしてHDD55に保存して(ステップS310)、本ルーチンを終了する。こうして作成された色補償データは対象画像の色として定めることができ、上述した形状補償処理により形状が補償された形状データは対象画像の形状として定めることができる。そして、これらを合わせたデータをデータ出力部67から版下データとして出力して、画像の表示や印刷に用いるものとした。なお、形状補償処理後の画像における輪郭内の色は、メッシュ94から切り出された輪郭内の色として色補償データを用いて定めることができ、輪郭外の色は背景色などを用いて定めることができる。ここで、本実施形態では、汎用のインク色であるCMYK値を用いて色補償データを作成するため、通常の印刷範囲に圧縮することで作成された色補償データを画像編集ツールなどのアプリケーションソフト上で広く用いることができるものとなる。なお、版下データをもって印刷する際には、例えば、版下データからプリンター20のドットの形成間隔に応じてCMYK値を取得すると共に汎用のインク色であるCMYK値をプリンター20のインク色であるcmykop値に変換した値を5倍して圧縮前の数値範囲に戻すことにより印刷用のデータを作成する処理などが、印刷ドライバー70などを用いて行なわれる。
【0029】
このように、形状補償はグリッド92を用いて処理するのに対し、図6の色補償処理ルーチンにおいては、グリッド92とは別にメッシュ94を作成しメッシュ94の各頂点を色補正点として用いて処理するのである。これにより、グリッド92の各四角形の面積変化率Δsを各四角形の重心に位置するメッシュ94の各頂点にそれぞれ反映させることができる。上述したように、四角形の重心の近傍には四角形の各頂点の近傍に比して面積変化率Δsに近い変形が生じると考えることができるから、面積変化率Δsを各四角形の頂点(グリッド92の各格子点)に反映させるものなどに比して、面積変化率Δsをより正確に反映させて色補償を行なうことができる。したがって、媒体Sのグリッド92の個々の要素(四角形)の面積変化に伴う色の変化の影響をより精度よく反映させてメッシュ94の各頂点のCMYK値を設定することができ、ひいては、媒体S全体の変形による色の変化の影響を精度よく反映させて色補償データを作成することができる。また、色補償データは、形状補償に用いられるグリッド92とは別のメッシュ94に基づいて作成されるから、形状補償のデータとは別個に取り扱うことができ、画像の形状と画像の色とを別々に修正することができるなどユーザーの使い勝手を向上させることができる。さらに、メッシュ94を用いた処理対象範囲は、対象画像(文字A)の外側まで完全に包含するのに必要な範囲としたから、必要以上に処理対象範囲が大きくなるのを抑制して、処理負担が増加するのを防止することができる。形状補償はグリッド92を用いて処理し、色補償はグリッド92とは別に作成したメッシュ94を用いて処理するのはこうした理由による。
【0030】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のPC50のコントローラー51が本発明の「格子設定手段」に相当し、データ入力部61と算出部62と3D絵柄編集部63と形状補償部64とが「形状補正手段」に相当し、図6の色補償処理ルーチンのステップS220の処理を実行するコントローラー51が「色補正点設定手段」に相当し、色補償処理ルーチンのステップS210,230〜S260の処理を実行するコントローラー51と色補償部65とが「色補正手段」に相当する。また、図6の色補償処理ルーチンのステップS300の処理を実行するコントローラー51が「切出手段」に相当し、データ出力部67が「出力手段」に相当する。なお、本実施形態では、PC50の動作を説明することにより本発明の画像処理方法の一例も明らかにしている。
【0031】
以上詳述した本実施形態のPC50によれば、複数の四角形を要素とするグリッド92を用いて形状補償処理を行ない、形状補償処理後の画像が配置されたグリッド92上に、グリッド92の各四角形に色補正点としての各頂点が1つずつ含まれると共に各四角形の重心に各頂点が位置するようメッシュ94を作成する。そして、メッシュ94の各頂点に対応する位置における形状補償処理後の画像の色値から各頂点のLab値を取得し、取得した頂点のLab値と頂点を含むグリッド92の四角形の面積変化率Δsとを用いて色補償変換LUT66から得られる値をメッシュ94の頂点のCMYK値に設定する。これにより、色補正点であるメッシュ94の各頂点を、形状の補正に用いるグリッド92の各格子点の位置に限られず、色補正に適した位置に定めることができるから、より適切に色補正することができる。
【0032】
また、メッシュ94の頂点とグリッド92の四角形とが一対一で対応するから、対応する四角形の面積変化率Δsをそのまま読み込んでスムーズに色補正をすることができる。さらに、各四角形の重心に各頂点が位置するようメッシュ94を作成するから、各頂点に四角形の面積変化率Δsをより正確に反映させて色補正をすることができる。そして、変形後の色値としてのLab値と、変形の度合いとしての面積変化率Δsと、変形前の色値としてのCMYK値との対応関係を定めた色補償変換LUT66を用いて色補正を行なうから、変形による色の変化の影響を精度よく反映させて色補正をすることができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
上述した実施形態では、メッシュ94の各頂点がグリッド92の各四角形の重心に位置するものとしたが、これに限られず、グリッド92の各四角形内にメッシュ94の各頂点が含まれるものであればよい。また、グリッド92の各四角形にメッシュ94の頂点を1つずつ含むものとしたが、これに限られず、グリッド92の各四角形にメッシュ94の頂点を複数含むものとしてもよいし、グリッド92の各四角形のうちいくつかの四角形にメッシュ94の頂点を含まないものとしてもよい。このように、メッシュ94の頂点を必要とされる色補正の精度などに応じて適正な位置に定めるものとすればよいから、より適切に色の補正を行なうことができる。
【0035】
上述した実施形態では、色補正点をメッシュ94の頂点として定めるものとしたが、これに限られず、色補正点をメッシュ状に構成することなく各点毎に独立した点として定めるものとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、プリンター20がインク色としてcmykopの6色を有するものとしたが、これに限られず、複数のインク色を有するものであればよく、例えば、cmykの4色を有するものとしてもよいし、cmykの4色にライトシアンやライトマゼンタを加えた6色を有するものとしてもよいし、6色以上の複数色を有するものなどとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、JapanColor認証制度の色規格を用いるものとしたが、これに限られず、他の汎用の色規格を用いるものとしてもよく、例えば、DIC(DIC標準色)やTOYO(東洋インキ標準色)、SWOP(米国標準色)、EURO Standard(欧州標準色)などの色規格を用いるものとしてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、媒体Sのグリッド92は各要素が正方形となるよう構成するものとしたが、これに限られず、各要素が三角形や矩形,菱形などの多角形となるものであればどのように構成するものとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、各格子点のCMYK値を通常の印刷範囲に圧縮して色補償データを作成するものとしたが、これに限られず、各格子点のCMYK値を圧縮することなく用いて色補償データを作成するものとしてもよい。ただし、汎用性をもたせるためには、本実施形態のように圧縮するものが好ましい。
【0040】
上述した実施形態では、色補償変換LUT66の変形後の色値としてLab表色系の値を用いるものとしたが、これに限られず、RGB表色系やCMYK表色系などの他の表色系の値を用いるものなどとしてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、色補償変換LUT66の変形の度合いとして面積変化率Δsを用いるものとしたが、これに限られず、変形の度合いを示すものであれば伸び率などの他の指標を用いるものとしてもよい。また、面積変化率Δsとしては、100%以上に拡大される範囲を用いたが、100%未満に縮小される範囲を含めるものとしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、形状補償処理において成形後の各格子点の三次元座標(位置情報)をソフトウェアプログラムにより取得するものとして説明したが、これに限られず、、グリッドを形成した媒体Sを実際に成形した成形品における各格子点の位置を測定することにより各格子点の三次元座標を取得するものとしてもよい。その場合、形状補償処理は以下のような手順で行うことができる。例えば、目的の製品と同じ材質の媒体Sにグリッドを形成し、各格子点の位置を二次元座標として記録する。次に、この媒体Sを実成形品と同じ成形条件(温度や圧力など)で成形装置40により成形する。続いて、成形後の媒体Sの各格子点の位置を三次元測定器などにより測定し、測定した各格子点の位置を三次元座標として記録して、変形前後の座標を対応付けて位置情報とすることができる。このとき、測定した各格子点の三次元座標を入力装置57で入力することにより、位置情報を取得するものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、ルックアップテーブルとして作成された変形色補償LUT66を用いて色補償処理を行なうものとしたが、これに限られず、変形後の目的色の色値と、変形の度合いと、変形前の色値との対応関係式を予めHDD55に記憶しておき演算により変形前の色値を算出するものなどとしてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、着色剤としてインクを用いるものとしたが、これに限られず、媒体S上に画像を形成可能なものであればよく、例えば、ジェルのような流状体,トナーなどの粉体などとしてもよい。また、インクとしては、溶媒に溶解したものであってもよいし、機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)であってもよい。また、インクは、溶媒や分散液以外の液体を含有してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 加飾成形システム、20 プリンター、21 コントローラー、22 CPU、23 フラッシュメモリー、24 RAM、25 印刷機構、26 キャリッジ、27 ノズル、28 印刷ヘッド、29 カートリッジ、30 キャリッジ軸、31 キャリッジベルト、32 送り機構、33 駆動モーター、34 送りローラー、36 ロール、37 切断機、40 成形装置、41 上型部、42 下型部、50 PC、51 コントローラー、52 CPU、53 フラッシュメモリー、54 RAM、55 HDD、56 I/F、57 入力装置、58 ディスプレイ、59 バス、60 変形画像処理プログラム、61 データ入力部、62 算出部、63 3D絵柄編集部、64 形状補償部、65 色補償部、66 色補償変換LUT、67 データ出力部、70 印刷ドライバー、80 色補償変換LUT作成システム、82 データ入力部、84 演算処理部、86 LUT出力部、92 グリッド、94 メッシュ、S 媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形が施される媒体に該変形前に形成される画像を処理する画像処理装置であって、
複数の多角形を要素とする格子を変形前の前記媒体上に設定する格子設定手段と、
該媒体の変形前後における前記格子の各格子点の位置情報を取得し、該取得した位置情報に基づく各要素の変形の度合いを反映させることにより前記形成される画像の形状を補正する形状補正手段と、
前記格子のいずれかの要素に含まれると共に前記各格子点から外れた位置を画像の色を補正するための色補正点として前記格子上に複数設定する色補正点設定手段と、
形状が補正された形状補正済みの画像が前記格子上に配置された状態で前記色補正点の色を取得すると共に該色補正点を含む要素の変形の度合いを取得し、前記媒体の変形前後の色と該媒体の変形の度合いとの所定の対応関係に基づいて、該媒体の変形後の色として前記取得した色補正点の色を用いると共に該媒体の変形の度合いとして前記取得した要素の変形の度合いを用いて前記複数の色補正点に形成すべき変形前の色をそれぞれ定めることにより前記形成される画像の色を補正する色補正手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記色補正点設定手段は、前記色補正点が前記各要素に1つずつ含まれるよう設定する手段である請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色補正点設定手段は、前記色補正点が前記要素の重心に位置するよう設定する手段である請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記色補正点設定手段は、前記格子設定手段により設定される格子の多角形とは別の複数の多角形を要素とする第2の格子の各頂点を、前記複数の色補正点として設定する手段であり、
前記色補正手段は、前記定めた色補正点の色を前記第2の格子の各要素における四隅の頂点の色として用いて、該第2の格子の各要素内の色を補間処理により定める手段である 画像処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像処理装置であって、
前記色補正点設定手段は、前記形状補正手段により形状が補正された画像を覆うよう前記第2の格子を定める手段であり、
前記色補正手段により前記色補正点の色と前記第2の格子の各要素内の色とが定められた後に、該第2の格子から前記形状が補正された画像の輪郭に沿って該画像の色を切り出す切出手段と、
前記形状補正手段により補正された画像の形状と、前記切出手段により切り出された画像の色とを合わせて、前記画像の形成用のデータとして出力する出力手段と
を備える画像処理装置。
【請求項6】
前記所定の対応関係は、複数の色により構成されるカラーサンプルを異なる面積変化率で変形させて測色する処理により得られる、前記カラーサンプルの各色値を前記変形前の色とし、変形後の測色値を変形後の色とし、前記面積変化率を前記変形の度合いとして、予め作成された関係である請求項1ないし5いずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
変形が施される媒体に該変形前に形成される画像を処理する画像処理方法であって、
(a)複数の多角形を要素とする格子を変形前の前記媒体上に設定するステップと、
(b)該媒体の変形前後における前記格子の各格子点の位置情報を取得し、該取得した位置情報に基づく各要素の変形の度合いを反映させることにより前記形成される画像の形状を補正するステップと、
(c)該格子のいずれかの要素に含まれると共に前記各格子点から外れた位置を画像の色を補正するための色補正点として前記格子上に複数設定するステップと、
(d)形状が補正された形状補正済みの画像が前記格子上に配置された状態で前記色補正点の色を取得すると共に該色補正点を含む要素の変形の度合いを取得し、前記媒体の変形前後の色と該媒体の変形の度合いとの所定の対応関係に基づいて、該媒体の変形後の色として前記取得した色補正点の色を用いると共に該媒体の変形の度合いとして前記取得した要素の変形の度合いを用いて前記複数の色補正点に形成すべき変形前の色をそれぞれ定めることにより前記形成される画像の色を補正するステップと
を含む画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−161928(P2012−161928A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21640(P2011−21640)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】