説明

画像処理装置及びそのプログラム

【課題】 撮影画像の広範囲に亘って生じるノイズを除去するためのフィルタ処理に伴う計算量を大幅に抑えることができる画像処理装置及びそのプログラムを実現する。
【解決手段】 εフィルタに用いられる画像処理フィルタ(例えば、図3(c)に示すように注目画素と周辺画素を、加重可能な範囲全体に亘って加重させるフィルタ)を、加重させる範囲の1部の画素に対して加重させ且つ加重する範囲がそれぞれ異なるように4分割し、該4分割された分割フィルタ(図4の(a)参照)の中から、注目画素の画像データ上の位置に応じて、使用するフィルタを変えて(図4(b)参照)、εフィルタ処理を行うというものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びそのプログラムに係り、詳しくは、画像データに対してフィルタ処理を施す画像処理装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、εフィルタなどの非線形フィルタを用いて画像ノイズを除去する画像処理装置において、複数のεフィルタを縦列的に接続するとともに、各εフィルタの係数に所定のインターバルを設定する(重みが0の係数を所定の規則で配置する)ことにより、フィルタ処理の計算量を抑えるという技術が登場した(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】公開特許公報 特開2004−172726
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高感度撮影時には色ノイズが撮影画像の広範囲に亘って生じてしまい、高感度撮影時の色ノイズの除去には広い範囲をカバーするフィルタが必要となってしまうため、先行技術によっても演算量が多くなり、処理時間が長くなってしまう。
【0005】
そこで本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、撮影画像の広範囲に亘って生じるノイズを除去するためのフィルタ処理に伴う計算量を大幅に抑えることができる画像処理装置及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、請求項1記載の発明による画像処理装置は、2次元配列された各画素のうち、任意の画素を注目画素と特定し、前記注目画素の画素値と、該注目画素の周辺にある複数の周辺画素の画素値を所定の重み付けで加重させる画像処理フィルタを用いて、該注目画素の新たな画素値を算出することによりフィルタ処理を行うフィルタ処理手段を備えた画像処理装置であって、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を、1部の画素に対して加重するように複数に分割した分割フィルタを有し、
前記フィルタ処理手段は、
前記複数に分割した分割フィルタの中から、前記注目画素の位置に応じて選択された1つの分割フィルタを用いて、フィルタ処理を行うことを特徴とする。
【0007】
また、例えば、請求項2に記載されているように、前記フィルタ処理手段は、
非線形な処理を含んで前記フィルタ処理を行うようにしてもよい。
【0008】
また、例えば、請求項3に記載されているように、前記画像処理フィルタは、
εフィルタであるようにしてもよい。
【0009】
また、例えば、請求項4に記載されているように、前記フィルタ処理手段は、
前記注目画素の横方向または縦方向の位置の変化に応じて前記複数に分割した分割フィルタを周期的に選択するようにしてもよい。
【0010】
また、例えば、請求項5に記載されているように、前記複数に分割した分割フィルタは、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を4つに分割した画像処理フィルタであり、
前記フィルタ処理手段は、
重み付けの係数の異なる4つの分割フィルタを、前記注目画素の横方向の位置及び縦方向の位置が奇数か偶数かに応じて周期的に選択するようにしてもよい。
【0011】
また、例えば、請求項6に記載されているように、前記フィルタ処理手段は、
2次元配列された全ての画素に対して周期的に選択された1つの分割フィルタを用いたフィルタ処理を行なうようにしてもよい。
【0012】
また、例えば、請求項7に記載されているように、前記フィルタ処理手段は、
2次元配列された各画素値の中から記注目画素として特定する画素を市松状に間引いて特定し、該特定された複数の画素に対してフィルタ処理を行うと共に、間引かれた画素に対しては該画素と隣接するフィルタ処理が行なわれた画素の画素値の平均値を算出し、該算出した平均値を該画素の画素値とすることにより間引かれた画素に対してフィルタ処理を行うようにしてもよい。
【0013】
また、例えば、請求項8に記載されているように、前記フィルタ処理手段は、
2次元配列された全ての画素値に対してフィルタ処理を行うという処理を複数回行うようにしてもよい。
【0014】
また、例えば、請求項9に記載されているように、前記フィルタ処理手段は、
フィルタ処理の回数毎に、用いられる分割フィルタのインターバルを2のべき乗で変化させるようにしてもよい。
【0015】
また、例えば、請求項10に記載されているように、前記フィルタ処理手段により算出された2次元配列された全ての画素の画素値に対して、ローパスフィルタ処理を行うローパスフィルタ処理手段を備えるようにしてもよい。
【0016】
また、例えば、請求項11に記載されているように、前記ローパスフィルタ処理手段は、
前記複数の画像処理フィルタの分割数に応じたタップ数であるようにしてもよい。
【0017】
また、例えば、請求項12に記載されているように、前記複数に分割した分割フィルタは、
重み付けの係数の重心が中央に設定された前記画像処理フィルタを、複数に分割したフィルタであり、複数の分割フィルタの重み付けの係数を全て合計すると前記画像処理フィルタの重み付けの係数と等しくなるように分割されているようにしてもよい。
【0018】
また、例えば、請求項13に記載されているように、前記複数に分割した分割フィルタは、
各々の分割フィルタにおける重み付けの係数の重心が中央からずれた位置に設定されているようにしてもよい。
【0019】
また、例えば、請求項14に記載されているように、前記複数に分割した分割フィルタは、
各々の分割フィルタにおける重み付けの係数の重心が中央に設定されているようにしてもよい。
【0020】
また、例えば、請求項15に記載されているように、前記複数に分割した分割フィルタは、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を、1部の範囲の画素に対して加重し、且つ、加重する範囲がそれぞれ異なるように複数に分割したようにしてもよい。
【0021】
また、例えば、請求項16に記載されているように、前記複数に分割した分割フィルタは、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を、加重する画素がそれぞれ異なるように複数に分割したようにしてもよい。
【0022】
また、例えば、請求項17に記載されているように、前記画像処理フィルタにおける重み付けの係数のインターバルは、
画像データの圧縮方式のブロックサイズによって決まるようにしてもよい。
【0023】
また、例えば、請求項18に記載されているように、 前記画像処理フィルタにおける重み付けの係数のインターバルは、
撮影感度に応じて決まるようにしてもよい。
【0024】
また、例えば、請求項19に記載されているように、2次元配列された各画素値からなる画像データの画像サイズを縮小する縮小手段と、
前記縮小手段により縮小された画像データの画像サイズを拡大する拡大手段と、
を備え、
前記フィルタ処理手段は、
前記縮小手段により縮小された画像データに基づいて、該画像データの各画素に対してフィルタ処理を行い、
前記拡大手段は、
前記フィルタ処理手段によりフィルタ処理が行なわれた各画素の画素値からなる画像データを拡大するようにしてもよい。
【0025】
また、例えば、請求項20に記載されているように、前記縮小手段、前記拡大手段は、
撮影感度に応じて、それぞれ縮小率、拡大率を変えるようにしてもよい。
【0026】
また、例えば、請求項21に記載されているように、前記フィルタ処理手段は、撮像して得られた画像信号の色差成分に対して行われるようにしてもよい。
【0027】
上記目的達成のため、請求項22記載の発明によるプログラムは、2次元配列された各画素のうち、任意の画素を注目画素と特定し、前記注目画素の画素値と、該注目画素の周辺にある複数の周辺画素の画素値を所定の重み付けで加重させる画像処理フィルタを用いて、該注目画素の新たな画素値を算出することによりフィルタ処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記フィルタ処理手段は、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を、1部の画素に対して加重するように複数に分割した分割フィルタの中から、前記注目画素の位置に応じた1つの画像処理フィルタを用いて、フィルタ処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本願発明によれば、フィルタ処理に伴う処理負担を大幅に軽減させることができ、処理時間を短縮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本実施の形態について、本発明の画像処理装置をデジタルカメラに適用した一例として図面を参照して詳細に説明する。
[実施の形態]
A.デジタルカメラの構成
図1は、本発明の画像処理装置を実現するデジタルカメラ1の電気的な概略構成を示すブロック図である。
デジタルカメラ1は、撮影レンズ2、レンズ駆動ブロック3、絞り4、CCD5、ドライバ6、TG(timing generator)7、ユニット回路8、メモリ9、CPU10、DRAM11、画像表示部12、フラッシュメモリ13、キー入力部14、バス15を備えている。
【0030】
撮影レンズ2は、図示しない複数のレンズ群から構成されるフォーカスレンズ、ズームレンズ等を含む。そして、撮影レンズ2にはレンズ駆動ブロック3が接続されている。レンズ駆動ブロック3は、フォーカスレンズ、ズームレンズをそれぞれ光軸方向に沿って駆動させるフォーカスモータ、ズームモータと、CPU10から送られてくる制御信号にしたがって、フォーカスモータ、ズームモータを駆動させるフォーカスモータドライバ、ズームモータドライバから構成されている(図示略)。
【0031】
絞り4は、図示しない駆動回路を含み、駆動回路はCPU10から送られてくる制御信号にしたがって絞り4を動作させる。
絞り4とは、撮影レンズ2から入ってくる光の量を制御する機構のことをいう。
【0032】
CCD5は、ドライバ6によって駆動され、一定周期毎に被写体像のRGB値の各色の光の強さを光電変換して撮像信号としてユニット回路8に出力する。このドライバ6、ユニット回路8の動作タイミングはTG7を介してCPU10により制御される。なお、CCD5はベイヤー配列の色フィルタ(RGBの色フィルタ)を有しており、電子シャッタとしての機能も有する。この電子シャッタのシャッタ速度は、ドライバ6、TG7を介してCPU10によって制御される。
【0033】
ユニット回路8には、TG7が接続されており、CCD5から出力される撮像信号を相関二重サンプリングして保持するCDS(Correlated Double Sampling)回路、そのサンプリング後の撮像信号の自動利得調整を行なうAGC(Automatic Gain Control)回路、その自動利得調整後のアナログの撮像信号をデジタル信号に変換するA/D変換器から構成されており、CCD5から出力された撮像信号はユニット回路8を経てデジタル信号としてCPU10に送られる。
【0034】
CPU10は、ユニット回路8から送られてきた画像データをバッファメモリ(DRAM11)に記憶させるとともに、該記憶させた画像データに対してガンマ補正、補間処理、ホワイトバランス処理、輝度色差信号(YUVデータ)の生成処理などの画像処理、画像データの圧縮・伸張(例えば、JPEG形式の圧縮・伸張)処理、フラッシュメモリ13への画像データの記録処理を行う機能を有するとともに、デジタルカメラ1の各部を制御するワンチップマイコンである。
【0035】
特に、CPU10は、画像データの色ノイズを低減させる色ノイズ低減処理を行う機能を有し、色ノイズ低減処理は、撮影画像の色差信号成分を対象として、注目画素の位置に応じて異なる係数のε(イプシロン)フィルタを適用してノイズを低減させる分割εフィルタ処理と、LPF(ローパスフィルター)によりノイズを低減させるLPF処理とを含む。このLPF処理は、この分割εフィルタ処理による注目画素の位置に応じて異なる係数のεフィルタの適用によって画像全体に生じる規則的な高周波ノイズを平滑化するためにLPF処理を施すものである。
ここで、LPFは線形フィルタであって主に高周波ノイズを除去するものであるが、εフィルタは非線形フィルタであって高周波ノイズに限らず様々な形態で発生するノイズを除去するものであり、特にεフィルタは画像のエッジ部分のノイズを除去する性能に優れている。
【0036】
メモリ9には、CPU10が各部を制御するのに必要な制御プログラム、及び必要なデータが記録されており、CPU10は、該プログラムに従い動作する。
DRAM11は、CCD5によって撮像された後、CPU10に送られてきた画像データを一時記憶するバッファメモリとして使用されるとともに、CPU10のワーキングメモリとして使用される。
フラッシュメモリ13は、圧縮された画像データを保存する記録媒体である。
【0037】
画像表示部12は、カラーLCDとその駆動回路を含み、撮影待機状態にあるときには、CCD5によって撮像された被写体をスルー画像として表示し、記録画像の再生時には、フラッシュメモリ13から読み出され、伸張された記録画像を表示させる。
キー入力部14は、半押し全押し可能なシャッタボタン、モード切替キー、顔検出モードon/off切替キー、ストロボモード切替キー、十字キー、SETキー等の複数の操作キーを含み、ユーザのキー操作に応じた操作信号をCPU10に出力する。
【0038】
B.分割εフィルタ処理について
次の本発明の特徴となる分割εフィルタ処理について説明する。
ここでは、分割εフィルタ処理に用いられる2次元の画像処理フィルタ(非線形フィルタ)を(5×5)の場合について説明するが、(3×3)の画像処理フィルタ、(9×9)の画像処理フィルタ等の場合についても適用可能である。このように分割εフィルタ処理に用いる画像処理フィルタのタップ数を変えた場合には、この変更に対応させて、その後に行われるLPF処理のタップ数も変えればよい。
ここでは、画像処理フィルタを用いてある画素の画素値のノイズを低減させるために、その周辺の画素の画素値も用いることになる。この色ノイズを低減させる対象となる画素を注目画素といい、該注目画素の画素値を注目画素値と呼ぶことにする。
【0039】
図2は分割εフィルタ処理の機能ブロック図である。
分割εフィルタ処理は、注目画素特定部21、処理対象画素抽出部22、非線形演算部23、線形フィルタ処理部24からなる。この、非線形演算部23と線形フィルタ処理部24との組み合わせによって非線形フィルタが構成されている。本実施の形態では、非線形演算部23と線形フィルタ処理部24とに分けたが、非線形フィルタの種類によっては、明確に非線形演算部と線形フィルタ処理部とに分けられない場合もあり、その場合には、非線形演算部23を削除し、線形フィルタ処理部24を非線形フィルタ処理部として構成してもよい。
注目画素特定部21は、CCD5によって撮像され、CPU10によって生成された輝度色差信号のうち、色差成分の画像データ(CCD5の各画素の色差信号の画素値)を取得すると、該取得した色差信号の画素の中から注目画素となる画素の位置を特定する。この注目画素特定部21は、取得した色差成分の画像データを処理対象画素抽出部22に出力すると共に、特定した注目画素の位置情報(x,y)を処理対象画素抽出部22と線形フィルタ処理部24に出力する。
【0040】
処理対象画素抽出部22は、注目画素特定部21から送られてきた注目画素の位置情報(x,y)、及び、色差成分の画像データに基づいて、処理対象となる画素値を抽出する。この処理対象となる画素値とは、注目画素値と、その周辺の画素値のことである。
ここでは、(5×5)の画像処理フィルタを用いるので、周辺となる画素(周辺画素)の範囲は、注目画素から左右2画素、上下2画素の範囲ということになる。つまり、画像処理フィルタのタップ数に応じて周辺となる画素の範囲が変わることになり、例えば、(3×3)の画像処理フィルタを用いる場合は、周辺画素の範囲は注目画素から左右1画素、上下1画素の範囲となり、(9×9)の画像処理フィルタを用いる場合は、周辺画素の範囲は注目画素から左右4画素、上下4画素の範囲となる。
【0041】
図3(a)は、抽出された処理対象となる画素値の様子を示すものであり、処理対象として抽出された画素のうち、中央にある画素値(画素値C)が注目画素値となり、それ以外の画素が周辺画素値(画素値Pn ;n=1、2、・・・、24)となる。
この抽出された画素値は、非線形演算部23に出力される。
【0042】
非線形演算部23は、処理対象画素抽出部22から送られてきた周辺画素の画素値(周辺画素値)に対して注目画素値及び閾値εを用いて非線形な演算を行なうという処理を全ての周辺画素値に対して行ない、該演算結果を線形フィルタ処理部24に出力する。この演算結果の値(Tn ;n=1、2、・・・、24)が、該周辺画素の新たな値ということになる。
この非線形演算処理は、周辺画素値と、注目画素値との差分の絶対値が閾値εより大きいか否かを判断し、閾値εより小さければそのまま演算結果として周辺画素値を出力し、差分の絶対値が閾値εより小さくなければ演算結果として注目画素値を出力する。なお、注目画素値Cに対しては演算を行なうことなくそのまま線形フィルタ処理部24に出力する。
【0043】
図3(b)は演算結果の様子を示すものであり、注目画素に対しては演算が行なわれていないのでそのまま注目画素の値はCである。
また、T1、T2、・・・、T24は、それぞれ、P1、P2、・・・、P24の画素値の演算結果の値を示しており、注目画素値との差分の絶対値が閾値εより小さければTnはPnの値であり、注目画素値との差分の絶対値が閾値εより小さくなければTnは注目画素値Cの値である。
【0044】
線形フィルタ処理部24は、非線形演算部23から送られてきた演算結果の画素値及び注目画素値Cの値(図3(b)に示すような画素値)と線形画像処理フィルタとを用いて注目画素値Cの色ノイズを低減した注目画素値C1を算出する。
従来、ここでは例えば、図3(c)や(d)に示すような画像処理フィルタ、つまり、1以上の係数が全範囲に均等に俯瞰している画像処理フィルタ(加重させる画素が全範囲に均等に俯瞰している画像処理フィルタ)を、画像データ内の全ての注目画素で共通に用いており、係数にインターバルを設ける際の制約があるため、注目画素値C1の計算量が増大していた。つまり、この画像処理フィルタは、全ての注目画素に共通するものであるため、係数の重心が中央(注目画素)となるように、且つ、中央(注目画素)の重み付けが最も大きくなるようにそれぞれ係数を有している必要があり、この画像処理フィルタを用いて、注目画素値Cと周辺画素値Tnとを加重平均することにより注目画素値C1を算出する処理を、全ての注目画素に対して共通して施していた。
【0045】
ここでは、図3(c)に示す画像処理フィルタを用いて説明することとし、該図3(c)の画像処理フィルタを用いて注目画素値C1の計算を数式で表すと、注目画素値C1={(T9+T13+T20+T24)+2(T10+T11+T12+T14+T15+T16+T17+T18+T19+T21+T22+T23)+4(T1+T2+T3+T4+T5+T6+T7+T8+T9+C)}/64 となる。なお、図2(d)に示す画像処理フィルタは、図3(c)に示す画像処理フィルタのインターバルを2にした場合の画像処理フィルタである。
【0046】
これに対して、本発明では、係数の設定に制約のある図3(c)に示すような画像処理フィルタを、図4(a)に示すように複数の画像処理フィルタに分割し、各注目画素に対して分割された何れか1つの画像処理フィルタを用いて注目画素値C1を算出する。
図4(a)の(1)、(2)、(3)、(4)は、図3(c)の画像処理フィルタを4分割した場合に分割された各画像処理フィルタの一例を示すものである。なお、この分割に際しては、分割された各画像処理フィルタを合計すると元の画像処理フィルタとなるような分割であれば、どのように係数にインターバルを設けて分割するかは比較的自由である。この図4(a)の(1)を分割フィルタ1、(2)を分割フィルタ2、(3)を分割フィルタ3、(4)を分割フィルタ4と呼ぶことにする。
【0047】
この図4(a)で示す各分割フィルタは、周辺画素の1部の範囲に対して加重すると共に、加重する範囲がそれぞれ異なるように元の係数が分割された画像処理フィルタである。なお、図3(d)を4分割した場合の分割された各画像処理フィルタは、図4(a)の(1)、(2)、(3)、(4)のそれぞれの画像処理フィルタのインターバルを2にした画像処理フィルタとなる。
図4(a)を見ると分かるように、分割された各分割フィルタは、形式上は(5×5)の画像処理フィルタであるが、値が「0」の部分を除外すると(3×3)となるので、実質(3×3)の画像処理フィルタと同じ計算量となり、注目画素値C1の計算量を少なくすることができる。
【0048】
例えば、分割フィルタ1を用いる場合は、注目画素値C1={(T9+T11+T16+C)+2(T2+T4+T10+T14)+4(T1)}/16 の計算式によって算出することができ計算量を少なくすることができる。つまり、加重平均の算出に用いる画素値を少なくすることにより計算量を少なくしている。
なお、この各分割フィルタは、係数の重心および最も重み付けが大きくなる画素と注目画素とがズレているが、最も重み付けが大きくなる画素と注目画素とが一致するように画像処理フィルタを分割するようにしてもよいし、係数の重心が注目画素となるように画像処理フィルタを分割するようにしてもよい。
【0049】
線形フィルタ処理部24は、注目画素特定部21が出力する注目画素の位置情報(x,y)に基づいて分割フィルタを選択する。どの分割フィルタを用いて注目画素値C1を算出するか否かは、注目画素値Cの位置によって定まり、図4(b)に示すように注目画素値Cの位置(x,y)のxが偶数であり、yが偶数なら図4(a)の(1)の画像処理フィルタを用い、xが奇数でyが偶数なら(2)の画像処理フィルタを用い、xが偶数でyが奇数なら(3)、xが奇数でyが奇数なら(4)の画像処理フィルタを用いることになる。なお、撮像された画像データのうち、一番左上の画素の位置を(x、y)=(0、0)としている。
【0050】
注目画素特定部21によってCCD5により撮像された全ての画素値が特定されることにより、分割εフィルタ処理が全ての画素値に対して行なわれる。これにより、色ノイズが低減、除去された画像データを算出することができるとともに、処理時間を大幅に軽減することができる。
また、この分割εフィルタ処理においては、位置に応じて異なる係数のεフィルタを適用することによって画像全体に規則的な高周波ノイズが生じることとなる。そのため、この分割εフィルタ処理後は、この規則的な高周波ノイズを除去(平滑化)するために、画像データ全体に対して更にLPF処理が施される。
【0051】
このLPF処理は、LPF用の画像処理フィルタを用いることにより、LPF処理を施す注目画素値Cと、その周辺の画素値との加重平均を取ることにより、注目画素値C2を算出する。このLPF処理は、εフィルタ処理と略同じであるが、注目画素値の周辺の画素値Pnを非線形演算して画素値Tnを算出することなく、該注目画素値Cと周辺の画素値Pnとを用いて新たな注目画素値C2算出する点で異なる。また、除去(平滑化)すべき高周波ノイズは、分割の仕方によって異なるものであるが、分割フィルタを交互に適用する周期に対応した周期で発生するものであるため、このLPFのタップ数は分割フィルタを交互に適用する周期に対応する大きさのものを用いれば十分である。これにより、無駄にLPF処理を施すことがなく、計算量を抑えることができる。ここでは、4分割に対応し、図4(c)に示すような(3×3)の2次元の画像処理フィルタを用いるとする。
【0052】
例えば、図3(a)に示すような注目画素値Cを算出する場合には、LPF処理による計算式は、注目画素値C2={(P1+P3+P6+P8)+2×(P2+P4+P5+P7)+4×C}/12ということになる。
なお、ここでの注目画素値Cと周辺画素値Pnは、既にεフィルタ処理が施された注目画素値C1であることは言うまでもない。
【0053】
C.デジタルカメラ1の動作
実施の形態におけるデジタルカメラ1の動作を図5のフローチャートに従って説明する。
【0054】
まず、ステップS1で、CPU10は、CCD5によって撮像されたRGBの画像データを取得する。
次いで、ステップS2で、CPU10は、該取得した画像データから輝度色差信号の画像データを生成し、該生成した画像データを輝度成分の画像データと、色差成分の画像データとに分離させる。つまり、撮像された各画素値を輝度信号と色差信号とに分離させる。
【0055】
次いで、ステップS3で、CPU10は、該分離された色差成分の画像データに対して分割εフィルタ処理を施す。つまり、全ての色差信号の画素値に対して分割εフィルタ処理を行なうことにより、各画素の色差信号の画素値の色ノイズを低減させる。この分割εフィルタ処理の動作は後で説明する。
次いで、ステップS4で、CPU10は、分割εフィルタ処理が施された全ての色差信号の画素値に対してのLPF処理を施す。ここでは、(3×3)の画像処理フィルタを用いてローパスフィルタ処理を行うこととする。
【0056】
D.分割εフィルタ処理の動作
次に、分割εフィルタ処理の動作を図6のフローチャートに従って説明する。
分割εフィルタ処理を開始すると、つまり、図5のステップS3に進むと、図6のステップS11に進み、注目画素特定部21は、色差信号の各画素の画素値を取得すると共に、特定する注目画素の位置を(x,y)=(0,0)にする。これにより、(x,y)=(0,0)の画素が注目画素として特定されることになる。この取得した色差信号の各画素の画素値を処理対象画像抽出部22に出力するとともに、該特定した注目画素の位置情報(x,y)を処理対象画素抽出部22と線形フィルタ処理部24に出力する。
【0057】
次いで、ステップS12で、処理対象画素抽出部22は、該特定された位置(注目画素)の画素値Cと、その周辺の画素値Pnを処理対象となる画素として抽出する。この抽出された処理対象となる画素は非線形演算部23に出力される。この抽出する周辺画素の範囲は、画像処理フィルタのタップ数によって変わることになり、(5×5)の画像処理フィルタである場合は、注目画素の左右2画素、上下2画素の範囲の画素値を抽出することになる。図3(a)は、処理対象として抽出された画素の様子を示している。
【0058】
次いで、ステップS13で、非線形演算部23は、処理対象抽出部22から送られてきた周辺画素値Pnに対して、注目画素値C及び閾値εを用いて非線形演算を行なうという処理を全ての周辺画素値に対して行い、該演算結果の値Tnを線形フィルタ処理部24に出力する。なお、注目画素値Cに対しては演算を行なうことなく線形フィルタ処理部24に出力する。
【0059】
この非線形演算処23理は、周辺画素値Pnと、注目画素値Cとの差分の絶対値が閾値εより大きいか否かを判段し、閾値εより小さければそのまま演算結果として該周辺画素値を出力し、差分の絶対値が閾値εより大きければ演算結果として注目画素値を出力するというものであり、図3(b)は、図3(a)の演算結果の様子を示している。
【0060】
次いで、ステップS14で、線形フィルタ処理部24は、y&1とx&1に対応する分割フィルタをフィルタ処理に用いる画像処理フィルタとして設定する。
このx&1は、xを2進数で表したときの最下位ビットの値を演算するものであり、特定された注目画素のxの位置が偶数(0、2、3、4、・・・)の場合は、x&1=0となり、xの位置が奇数(1、3、5、7、・・・)の場合は、x&1=1となる。また、y&1も同様に、yの位置が偶数(0、2、3、4、・・・)の場合は、y&1=0となり、yの位置が奇数(1、3、5、7、・・・)の場合は、y&1=1となる。
【0061】
このx&1=0であり、且つ、y&1=0の場合は分割フィルタ1に設定し、x&1=1であり、且つ、y&1=0の場合は分割フィルタ2に設定し、x&1=0であり、且つ、y&1=1の場合は分割フィルタ3に設定し、x&1=1であり、且つ、y&1=1の場合は分割フィルタ4に設定する。
次いで、ステップS15で、線形フィルタ処理部24は、演算結果の画素値(注目画素値Cも含む)と該設定された分割フィルタを用いて注目画素値Cの色ノイズを低減した注目画素値C1を算出する。
【0062】
次いで、ステップS16で、注目画素特定部21は、現在特定されている注目画素の位置(x,y)のxの位置が画像幅であるか否かを判断する。
例えば、CCD5のx軸の画素が0〜399まである場合は、x=399であるか否かを判断することになる。
ステップS16で、現在特定されている注目画素のxの位置が画像幅でないと判断すると、ステップS17に進み、注目画素特定部21は、新たに特定する注目画素の位置を、現在のxの位置をインクリメントした位置(x,y)=(x+1,y)にして、ステップS12に戻る。これにより1ラインの全ての画素に対してεフィルタ処理を行うことができる。
【0063】
一方、ステップS16で、現在特定されている注目画素のxの位置が画像幅であると判断すると、ステップS18に進み、注目画素特定部21は、現在特定されている注目画素の位置(x,y)のyの位置が画像高さであるか否かを判断する。例えば、CCD5のy軸の画素が0〜299まである場合は、y=299であるか否かを判断することになる。
【0064】
ステップS18で、現在特定されている注目画素のyの位置が画像高さでないと判断すると、ステップS19に進み、注目画素特定部21は、新たに特定する注目画素の位置を、xを0、現在のyの位置をインクリメントした位置(x,y)=(0,y+1)にして、ステップS12に戻る。これにより全てのラインの画素に対して分割εフィルタ処理を行なうことができる。
ステップS18で、現在設定されている注目画素のyの位置が、画像高さであると判断すると、処理を終了し、図5のステップSステップS4に進む。
【0065】
以上のように、実施の形態においては、加重する画素が全範囲に均等に俯瞰している画像処理フィルタを、周辺画素の1部の範囲に対して加重すると共に、加重する範囲がそれぞれ異なるように4分割された分割フィルタのうち、注目画素の位置に応じた何れか1つの分割フィルタを用いてεフィルタ処理を行うので、εフィルタ処理に伴う処理負担を大幅に軽減させることができ、処理時間を短縮させることができる。また、位置に応じて異なる係数のεフィルタを適用することによって画像全体に生じた規則的な高周波ノイズをLPF処理によって除去(平滑化)しているので、元となる画像処理フィルタを分割する際の制約が少なくなり、各分割フィルタにおける係数の重心を中央に設定する必要もなくなることで、係数のインターバルを多めに設けてフィルタ処理時間をより短縮させることも可能となる。
【0066】
[変形例]
E.上記実施の形態は以下のような態様でもよい。
(01)上記実施の形態においては、各分割フィルタにおける係数の重心を中央(注目画素)から離れた位置に設定したが、各分割フィルタにおける係数の重心を中央(注目画素と同じ位置)に設定してもよい。また、このように分割した場合は、係数の重心が変心していないので、その後のLPF処理を省略してもよく、LPF処理を省略することにより処理負担の軽減、処理時間の短縮を図ることができる。
【0067】
図7(a)は、係数の重心が中央(注目画素と同じ位置)となるように4分割された各分割フィルタの様子の一例を示す図である。
この図7(a)は、図3(c)に示すような(5×5)の画像処理フィルタを4分割した場合の例である。なお、この場合も、分割された各画像処理フィルタを合計すると元の画像処理フィルタとなる。ここでは、加重する画素はフィルタ毎に異なっていることが分かる。
【0068】
このときも、上記実施の形態で説明したように、注目画素の位置に応じて用いる分割フィルタを変えることになる。つまり、このx&1=0であり、且つ、y&1=0の場合は図7(a)の(1)に示す分割フィルタに設定し、x&1=1であり、且つ、y&1=0の場合は図7(a)の(2)に示す分割フィルタに設定し、x&1=0であり、且つ、y&1=1の場合は図7(a)の(3)に示す分割フィルタに設定し、x&1=1であり、且つ、y&1=1の場合は図7(a)の(4)に示す分割フィルタに設定する。
【0069】
例えば、図7(a)の(1)に示す分割フィルタを用いる場合は、注目画素値C1={(T9+T13+T20+T24)+2(T11+T16+T17+T22)+4(C)}/16 の計算式によって算出することができ、図7(a)の(2)に示す分割フィルタを用いる場合は、注目画素値C1=(T10+T12+T14+T15+T18+T19+T21+T23)/8 の計算式によって算出することがでる。
図7(a)の(3)に示す分割フィルタを用いる場合は、注目画素値C1=(T2+T4+T5+T7)/4 の計算式によって算出することができ、図7(a)の(4)に示す分割フィルタを用いる場合は、注目画素値C1=(T1+T3+T6+T8)/4 の計算式によって算出することができる。
【0070】
このように、係数の重心が中央(注目画素と同じ位置)となるように4分割された各分割フィルタのうち、何れかの1つの分割フィルタを用いてノイズを低減した画素値C1を算出することにより、従来より(分割されていない画像処理フィルタを用いて算出する技術より)画素値C1の計算量を大幅に少なくすることができる。
また、各画素値のノイズを低減した画素値を算出することを考えると、上記第1の実施の形態で説明した分割フィルタによる計算量よりも、更に計算量も抑えることができる。
【0071】
(02)上記実施の形態においては、(5×5)の画像処理フィルタを4分割した分割フィルタで説明したが、例えば、(3×3)の画像処理フィルタを4分割した場合は、図7(b)や(c)のようになる。
ここでは、εフィルタ処理に用いられる画像処理フィルタを図4(c)とし、図7(b)、(c)は、この図4(c)に示す(3×3)の画像処理フィルタを4分割した場合の各分割フィルタの様子の一例を示す図である。
なお、この場合も、分割された各画像処理フィルタを合計すると元の画像処理フィルタとなり、注目画素の位置に応じて用いる分割フィルタを変えることになる。
【0072】
(03)上記実施の形態においては、画像処理フィルタを4分割するようにしたが、2分割にするようにしてもよい。
図8(a)の(1)、(2)は、図4(a)に示すような画像処理フィルタを2分割したときの分割フィルタの様子を示すものである。このときも同様に、分割された各分割フィルタは、周辺画素の1部の範囲に対して加重すると共に、加重する範囲がそれぞれ異なるような画像処理フィルタである。
2分割の場合のεフィルタ処理は、注目画素のxの位置が偶数であり、yの位置が偶数の場合、注目画素のxの位置が奇数であり、yの位置が奇数の場合は、図7(a)分割フィルタ1を用い、注目画素のxの位置が奇数であり、yの位置が偶数の場合、注目画素のxの位置が偶数であり、yの位置が奇数の場合は、図7(a)の分割フィルタ2を用いるようにする。
【0073】
また、2分割に限らず16分割でもよい。
図9は、図4(a)に示すような画像処理フィルタを16分割したときの分割フィルタの様子を示すものである。このときも同様に、分割された各分割フィルタは、周辺画素の1部の範囲に対して加重すると共に、加重する範囲がそれぞれ異なるような画像処理フィルタである。
ここで、4の倍数(0を含む)となる数字を偶数1とし(0、4、8、12、・・・)、2に4の倍数(0を含む)を足した数字を偶数2とし(2、6、10、14、・・・)、1に4の倍数(0を含む)を足した数字を奇数1とし(1、5、9、13、・・・)、3に4の倍数(0を含む)を足した数字を奇数2とする(3、7、11、15・・・)。
【0074】
2分割の場合のεフィルタ処理は、注目画素のyの位置が偶数1の場合であって、xの位置が偶数1である場合は図8の(1)に示す分割フィルタを設定し、注目画素のxの位置が奇数1である場合は図8の(2)に示す分割フィルタを設定し、xの位置が偶数2である場合は図8の(3)に示す分割フィルタを設定し、xの位置が奇数2である場合は図8の(4)に示す分割フィルタを設定する。
また、注目画素のyの位置が奇数1の場合であって、xの位置が偶数1である場合は図8の(5)に示す分割フィルタを設定し、注目画素のxの位置が奇数1である場合は図8の(6)に示す分割フィルタを設定し、xの位置が偶数2である場合は図8の(7)に示す分割フィルタを設定し、xの位置が奇数2である場合は図8の(8)に示す分割フィルタを設定する。
【0075】
また、注目画素のyの位置が偶数2の場合であって、xの位置が偶数1である場合は図8の(9)に示す分割フィルタを設定し、注目画素のxの位置が奇数1である場合は図8の(10)に示す分割フィルタを設定し、xの位置が偶数2である場合は図8の(11)に示す分割フィルタを設定し、xの位置が奇数2である場合は図8の(12)に示す分割フィルタを設定する。
また、注目画素のyの位置が奇数2の場合であって、xの位置が偶数1である場合は図8の(13)に示す分割フィルタを設定し、注目画素のxの位置が奇数1である場合は図8の(14)に示す分割フィルタを設定し、xの位置が偶数2である場合は図8の(15)に示す分割フィルタを設定し、xの位置が奇数2である場合は図8の(16)に示す分割フィルタを設定する。
【0076】
なお、2分割や16分割に限らず、9分割等でもよく、ようは画像処理フィルタを複数に分割する方法であれば何でもよい。2分割の場合はLPF処理に用いる画像処理フィルタのタップ数は3分割の場合と同じ3×3タップが適しているが、9分割や16分割の場合には5×5タップが適している。また、2次元の画像処理フィルタを用いて、εフィルタ処理をLPF処理を行うようにしたが、1次元の画像処理フィルタを用いてεフィルタ処理、LPF処理を行うようにしてもよい。
【0077】
(04)また、上記各実施の形態及び変形例(1)乃至(3)においては、分割フィルタの態様を説明したが、要は、加重される範囲の画素のうち、1部の画素に対して加重するように、画像処理フィルタを分割するものであればよい。、また、分割された分割フィルタを更に分割するようにしてもよい。
そして、注目画素の位置に応じた何れか1つの分割フィルタを用いてεフィルタ処理を行うので、εフィルタ処理に伴う処理負担を大幅に軽減させることができ、処理時間を短縮させることができる。
【0078】
(05)また、上記実施の形態においては、撮像された全ての画素値に対して分割εフィルタ処理を行うようにしたが、分割εフィルタ処理を行う画素を間引いて行なうようにしてもよい。
図8(b)は、εフィルタ処理の対象となる画素の様子を示す図である。
図8(b)の斜線部は、分割εフィルタ処理が行なわれない間引かれた画素を表している。そして、間引かれた画素に対しては、隣接する分割εフィルタ処理が行なわれた画素値の平均値をとるようにする。なお、この間引かれる画素(斜線部の画素)に対して分割εフィルタ処理が行なわれないだけであるので(注目画素として特定されないだけであるので)、間引かれていない画素値に対して分割εフィルタ処理を行なう際には周辺画素値として用いられる。
これにより、撮像された全ての画素値に対してεフィルタ処理を施すに比べ、大幅に処理負担を軽減させることができ、処理時間を短くすることができる。
【0079】
(06)また、また、画像データの圧縮ブロックサイズに応じてインターバルを変えるようにしてもよい。
以下、JPEG形式の圧縮を例にして圧縮ブロックサイズに応じたインターバルの変更について更に詳しく説明する。
CCD5により撮像された画像データの圧縮方法として、一般的にJPEG形式が用いられる。
このJPEG形式による圧縮は、n×mの画素のブロックを離散コサイン変換を行うことにより周波数成分で表示させ、その周波数成分を量子化し、それをハフマン符号化するという処理をn×mの画素のブロック毎に行なう。
【0080】
このとき、量子化の段階でn×mの画素のブロック毎に、ある一定の傾向が出てしまうことが多く、JPEG画像を拡大すると、これらのブロックの境界線を視認できる。また、あるブロックは黄色っぽく、その隣のブロックは赤っぽく・・というような構成になっていることが多い。
したがって、従来のように隣接する周辺画素を加重平均する方法では、結局、ブロック毎の色傾向を維持したままで各画素値を加重平均することとなり、色ノイズをきれいに除去することはできない。
【0081】
そこで、注目画素に隣接する周辺画素でなく、隣接ブロックに含まれる画素を加重平均に用いることにより色ノイズを効率的に除去することができる。
つまり、ブロックサイズが8×8画素であれば、画像処理フィルタのインターバルを8にし、ブロックサイズが16×16の画素であれば、画像処理フィルタのインターバルを16にすることにより、効率的に色ノイズを除去することができる。
また、上記変形例においては、圧縮ブロックサイズに応じてインターバルを変化させたが、撮影感度が高ければ高い程色ノイズが発生する範囲が大きくなるので、撮影感度に応じてインターバルを変化させるようにしてもよい。これにより、効果的に色ノイズを除去することができる。
【0082】
(07)また、上記実施の形態においては、CCD5により撮像された各画素値に対して分割εフィルタ処理を施すようにしたが、CCD5により撮像された画像サイズを縮小し、該縮小後の画像データに対して分割εフィルタ処理を施してから縮小前の画像データに拡大するようにしてもよい。これにより、縮小されていない画像データに対して単に分割εフィルタ処理を施すのに比べ、数倍のタップ数のεフィルタ処理を施すのと同様の結果を得ることができる。
また、撮影感度が高ければ高い程色ノイズが発生する範囲が大きくなるので、縮小率を上げるようにしてもよい。この場合は縮小率に応じて拡大率も変わることになる。これにより、効果的に色ノイズを低減させることができ、εフィルタ処理に伴う処理負担を大幅に軽減させることができ、処理時間を短くすることができる。
【0083】
(08)また、上記実施の形態においては、本発明の分割εフィルタ処理を1回行うようにしたが、複数のεフィルタを縦列的に接続する従来技術の構成に対して本発明を適用する場合には、この縦列的に接続された各εフィルタに本発明を適用して、分割εフィルタ処理を複数回行なうようにしてもよい。つまり、本発明の分割εフィルタ処理が行なわれた画像データに対して、更に分割εフィルタ処理を1回以上、施すようにしてもよい。これにより、効果的に色ノイズを低減させることができ、εフィルタ処理に伴う処理負担を大幅に軽減させることができ、処理時間を短くすることができる。
【0084】
また、εフィルタ処理の回数毎に、画像処理フィルタのインターバルを2のべき乗で変化させるようにしてもよい。例えば、1回目のεフィルタ処理の場合は画像処理フィルタのインターバルを4(2)とし、2回目のεフィルタ処理の場合は画像処理フィルタのインターバルを2(2)とし、3回目のεフィルタ処理の場合は画像処理フィルタのインターバルを1(2)とするようにしてもよい。これにより、サイドローブを抑制することができる。
【0085】
(09)また、上記実施の形態においては、εフィルタを分割した分割εフィルタ処理について説明したが、バイラテラルフィルタ等の他の非線形フィルタにおいても、本発明のような分割処理を行うようにしてもよい。また、非線形フィルタではなく通常のLPFに対して本発明のような分割処理を行うようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、輝度成分と比べて色差成分の方が、信号成分に悪影響を与えることなくノイズ成分だけを除去しやすいという特性を活かして、色差成分に対してのみ分割εフィルタ処理を適用し、輝度成分に対しては分割しない通常のεフィルタ処理を適用したが、輝度成分に対して分割εフィルタ処理を適用してもよい。
【0086】
(10)また、上記変形例(01)〜(09)を矛盾が生じない範囲内で任意に組み合わせるような態様であってもよい。
【0087】
(11)また、本発明の上記実施形態は、何れも最良の実施形態としての単なる例に過ぎず、本発明の原理や構造等をより良く理解することができるようにするために述べられたものであって、添付の特許請求の範囲を限定する趣旨のものでない。
したがって、本発明の上記実施形態に対してなされ得る多種多様な変形ないし修正はすべて本発明の範囲内に含まれるものであり、添付の特許請求の範囲によって保護されるものと解さなければならない。
【0088】
最後に、上記各実施の形態においては、本発明の画像処理装置をデジタルカメラ1に適用した場合について説明したが、上記の実施の形態に限定されるものではなく、要は、画像を処理することができる機器であれば適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態のデジタルカメラのブロック図である。
【図2】εフィルタ処理の機能ブロック図である。
【図3】εフィルタ処理を説明するための図である。
【図4】εフィルタ処理を説明するための図である。
【図5】実施の形態におけるデジタルカメラ1の動作を示すフローチャートである。
【図6】εフィルタ処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】変形例を説明するための図である。
【図8】変形例を説明するための図である。
【図9】変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0090】
1 デジタルカメラ
2 撮影レンズ
3 レンズ駆動ブロック
4 絞り
5 CCD
6 ドライバ
7 TG
8 ユニット回路
9 メモリ
10 CPU
11 DRAM
12 画像表示部
13 フラッシュメモリ
14 キー入力部
15 バス
21 注目画素特定部
22 処理対象画素抽出部
23 非線形演算部
24 線形フィルタ処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配列された各画素のうち、任意の画素を注目画素と特定し、前記注目画素の画素値と、該注目画素の周辺にある複数の周辺画素の画素値を所定の重み付けで加重させる画像処理フィルタを用いて、該注目画素の新たな画素値を算出することによりフィルタ処理を行うフィルタ処理手段を備えた画像処理装置であって、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を、1部の画素に対して加重するように複数に分割した分割フィルタを有し、
前記フィルタ処理手段は、
前記複数に分割した分割フィルタの中から、前記注目画素の位置に応じて選択された1つの分割フィルタを用いて、フィルタ処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記フィルタ処理手段は、
非線形な処理を含んで前記フィルタ処理を行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理フィルタは、
εフィルタであることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記フィルタ処理手段は、
前記注目画素の横方向または縦方向の位置の変化に応じて前記複数に分割した分割フィルタを周期的に選択することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記複数に分割した分割フィルタは、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を4つに分割した画像処理フィルタであり、
前記フィルタ処理手段は、
重み付けの係数の異なる4つの分割フィルタを、前記注目画素の横方向の位置及び縦方向の位置が奇数か偶数かに応じて周期的に選択することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記フィルタ処理手段は、
2次元配列された全ての画素に対して周期的に選択された1つの分割フィルタを用いたフィルタ処理を行なうことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記フィルタ処理手段は、
2次元配列された各画素値の中から記注目画素として特定する画素を市松状に間引いて特定し、該特定された複数の画素に対してフィルタ処理を行うと共に、間引かれた画素に対しては該画素と隣接するフィルタ処理が行なわれた画素の画素値の平均値を算出し、該算出した平均値を該画素の画素値とすることにより間引かれた画素に対してフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記フィルタ処理手段は、
2次元配列された全ての画素値に対してフィルタ処理を行うという処理を複数回行うことを特徴とする請求項6又は7記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記フィルタ処理手段は、
フィルタ処理の回数毎に、用いられる分割フィルタのインターバルを2のべき乗で変化させることを特徴とする請求項8記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記フィルタ処理手段により算出された2次元配列された全ての画素の画素値に対して、ローパスフィルタ処理を行うローパスフィルタ処理手段を備えたことを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記ローパスフィルタ処理手段は、
前記複数の画像処理フィルタの分割数に応じたタップ数であることを特徴とする請求項10記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記複数に分割した分割フィルタは、
重み付けの係数の重心が中央に設定された前記画像処理フィルタを、複数に分割したフィルタであり、複数の分割フィルタの重み付けの係数を全て合計すると前記画像処理フィルタの重み付けの係数と等しくなるように分割されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れかにに記載に画像処理装置。
【請求項13】
前記複数に分割した分割フィルタは、
各々の分割フィルタにおける重み付けの係数の重心が中央からずれた位置に設定されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載に画像処理装置。
【請求項14】
前記複数に分割した分割フィルタは、
各々の分割フィルタにおける重み付けの係数の重心が中央に設定されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載に画像処理装置。
【請求項15】
前記複数に分割した分割フィルタは、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を、1部の範囲の画素に対して加重し、且つ、加重する範囲がそれぞれ異なるように複数に分割したことを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記複数に分割した分割フィルタは、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を、加重する画素がそれぞれ異なるように複数に分割したことを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記画像処理フィルタにおける重み付けの係数のインターバルは、
画像データの圧縮方式のブロックサイズによって決まることを特徴とする請求項1乃至16の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記画像処理フィルタにおける重み付けの係数のインターバルは、
撮影感度に応じて決まることを特徴とする請求項1乃至16の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項19】
2次元配列された各画素値からなる画像データの画像サイズを縮小する縮小手段と、
前記縮小手段により縮小された画像データの画像サイズを拡大する拡大手段と、
を備え、
前記フィルタ処理手段は、
前記縮小手段により縮小された画像データに基づいて、該画像データの各画素に対してフィルタ処理を行い、
前記拡大手段は、
前記フィルタ処理手段によりフィルタ処理が行なわれた各画素の画素値からなる画像データを拡大することを特徴とする請求項1乃至18の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項20】
前記縮小手段、前記拡大手段は、
撮影感度に応じて、それぞれ縮小率、拡大率を変えることを特徴とする請求項19記載の画像処理装置。
【請求項21】
前記フィルタ処理手段は、撮像して得られた画像信号の色差成分に対して行われることを特徴とする請求項1乃至20の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項22】
2次元配列された各画素のうち、任意の画素を注目画素と特定し、前記注目画素の画素値と、該注目画素の周辺にある複数の周辺画素の画素値を所定の重み付けで加重させる画像処理フィルタを用いて、該注目画素の新たな画素値を算出することによりフィルタ処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記フィルタ処理手段は、
前記画像処理フィルタの重み付け係数を、1部の画素に対して加重するように複数に分割した分割フィルタの中から、前記注目画素の位置に応じた1つの画像処理フィルタを用いて、フィルタ処理を行うことを特徴とするプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−288947(P2008−288947A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132662(P2007−132662)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】