説明

画像処理装置及びプログラム

【課題】入力デバイスで視認される色の印象を出力デバイスで再現することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置10は、表示装置における加法混色の色再現特性の一部を取得する特性取得部38と、前記取得された色再現特性に基づいて、入力色空間の色再現域から出力装置の色再現域への変換手法を決定する変換手法決定部40とを有する。特性取得部38は、無彩色と、当該無彩色の少なくともいずれかの色成分が変更された色とを表示装置に表示し、これらの色の中からユーザにより無彩色であるとして選択された色情報を取得し、選択された色情報と無彩色とのずれを算出する。変換手法決定部40は、色再現特性において示される無彩色のずれ量に応じて、色相の変換方法を決定し、圧縮・写像関数を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モニタ等の入力デバイスとプリンタ等の出力デバイスとでは、色再現の印象が異なる場合がある。これは、入力色再現域と出力色再現域とが異なるためである。したがって、一般的には、モニタのICCプロファイルを変更する等の対策が行われている。
【0003】
特許文献1では、複数のデバイスと接続可能な画像処理装置であって、該デバイス毎の特性を考慮した適切な色補正を簡易な構成で実現する画像処理装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−144980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された手法では、出力色再現域への色変換が、入力色再現特性に基いて行われない。このため、印刷処理が行われた場合、モニタに表示された印象を保って出力することができない場合がある。
【0006】
本発明は、入力デバイスで視認される色の印象を出力デバイスで再現することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、表示装置における加法混色の色再現特性の一部を取得する特性取得手段と、前記特性取得手段により取得された色再現特性に基づいて、入力色空間の色再現域から出力装置の色再現域への変換手法を決定する変換手法決定手段とを有する。本発明によれば、入力デバイスで視認される色の印象を出力デバイスで再現することができる。
【0008】
好ましくは、前記特性取得手段は、無彩色領域の色再現特性を取得する。本発明によれば、入力デバイスの全ての領域における特性を取得していないにもかかわらず、入力デバイスで視認される色空間全体の印象をモニタと合わせることができる。
【0009】
好ましくは、前記特性取得手段は、複数の色成分のそれぞれが等しい値である色と、当該色の少なくともいずれかの色成分が変更された色とが表示装置に表示された結果に基づいて選択された色情報を取得する。本発明によれば、無彩色でないにもかかわらず無彩色であると判定された色の特性を色空間全体に用いることができる。
【0010】
好ましくは、前記特性取得手段は、複数の色成分のそれぞれが等しい値である色の少なくともいずれかの色成分が変更された複数の色が表示装置に表示された結果に基づいて選択された色情報を取得する。本発明によれば、無彩色でないにもかかわらず無彩色であると判定された色の特性を色空間全体に用いることができる。
【0011】
好ましくは、前記特性取得手段は、複数の色成分のそれぞれが等しい値である複数の色と、当該色の少なくともいずれかの色成分が変更された色とが表示装置に表示された結果に基づいて選択された色情報を取得する。本発明によれば、無彩色でないにもかかわらず無彩色であると判定された色の特性を色空間全体に用いることができる。
【0012】
好ましくは、前記特性取得手段は、複数の色成分のそれぞれが等しい値である色の少なくともいずれかの色成分が変更された色と、当該色の補色とが表示装置に表示された結果に基づいて選択された色情報を取得する。本発明によれば、無彩色でないにもかかわらず無彩色であると判定された色の特性を色空間全体に用いることができる。
【0013】
好ましくは、前記特性取得手段は、入力デバイスのプロファイルと予め決められたプロファイルとの比較結果から補正対象の色情報を取得する。本発明によれば、ユーザが無彩色を判定する手間を省くことができる。
【0014】
好ましくは、前記変換方法決定手段は、前記特性取得手段により取得された色情報に基づいて算出される色成分を中心として、当該色成分の補色に基づいて色相が変換されるように変換手法を決定する。本発明によれば、無彩色領域の特性に基づいて色空間全体が補正されるので、色空間全体の階調再現性を保った上で、例えばグラデーション等の印象をモニタに合わせることができる。
【0015】
好ましくは、前記変換方法決定手段は、入力色空間の1次色に近い色ほど色相の変換量を小さくする。本発明によれば、色再現域が略一致する場合においても、色再現域内での特性の相違を表すことができる。
【0016】
好ましくは、前記変換方法決定手段は、前記特性取得手段により取得された色情報と、デバイスに依存しない色空間における無彩色情報とに基づいて変換手法を決定する。本発明によれば、無彩色領域の特性に基づいて色空間全体が補正されるので、色空間全体の階調再現性を保った上で、例えばグラデーション等の印象をモニタに合わせることができる。
【0017】
好ましくは、前記変換方法決定手段は、入力色空間から出力色空間へ変換するための色変換係数を決定する。本発明によれば、この変換係数を含む圧縮・写像関数を用いて、入力デバイスで視認される色の印象を出力デバイスで再現することができる。
【0018】
好ましくは、前記変換手法決定手段により決定された変換手法を用いて、入力画像を加法混色系の色空間から減法混色系の色空間に色変換する色変換手段をさらに有する。本発明によれば、入力デバイスで視認される色の印象で、画像を、複合機、プリンタ等の画像形成装置から出力することができる。
【0019】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを含む画像処理装置において、表示装置における加法混色の色再現特性の一部を取得する特性取得ステップと、前記取得された色再現特性に基づいて、入力色空間の色再現域から出力装置の色再現域への変換手法を決定する変換手法決定ステップとを前記画像処理装置のコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、入力デバイスで視認される色の印象を出力デバイスで再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10を説明する。
図1は、本実施形態に係る画像処理装置10のハードウェア構成を示す図である。
図1に示すように、画像処理装置10は、CPU12、メモリ14、ハードディスク駆動装置等の記憶装置16、ネットワークを介して外部のコンピュータ(不図示)とデータの通信を行う通信装置18、液晶ディスプレイ等の表示装置20、及びキーボードやマウスなどを含む入力装置22を有する。これらの構成要素は、システムバス24を介して互いに接続されている。
【0022】
図2は、本実施形態に係る画像処理装置10上で動作する画像処理プログラム30の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、画像処理プログラム30は、第1の色空間変換部32、色再現域変換部34、第2の色空間変換部36、特性取得部38及び変換手法決定部40を有する。画像処理プログラム30は、画像処理装置10のメモリ14にロードされ、CPU12により実行される。なお、画像処理プログラム30の全部又は一部の機能は、画像処理装置10に設けられたハードウェアにより実現されてもよい。
【0023】
画像処理プログラム30において、第1の色空間変換部32は、記憶装置16に記憶されている画像データを読み出し、又は通信装置18を介して外部のコンピュータから送信される画像データを受け付け、入力画像データとして取得する。入力画像データは、加法混色系の色空間(例えば、sRGB色空間)に属し、各画素は、RGB各8ビットで表現されている。第1の色空間変換部32は、所定のプロファイルを用いて、入力画像データをデバイスに依存しない色空間の画像データに変換し、色再現域変換部34に対して出力する。例えば、第1の色空間変換部32は、入力画像を測色値であるCIELAB(L*,a*,b*)色空間に変換する。
【0024】
色再現域変換部34は、後述する変換手法決定部40により決定された変換手法を用いて、画像データを入力色空間の色再現域から出力装置の色再現域に変換する。色再現域は、表示装置又は出力装置が再現できる色の範囲(色域)を表す。また、変換手法は、圧縮・写像関数により実現される。色再現域変換部34は、出力装置の色再現域に変換された画像データを第2の色空間変換部36に対して出力する。
【0025】
第2の色空間変換部36は、出力装置の色再現域に変換された画像データを色再現域変換部34から受け付け、所定のプロファイルを用いて、この画像データを印刷処理に適した表色系のCMYK色空間の画像データに変換し、出力画像データとして出力する。
【0026】
したがって、第1の色空間変換部32、色再現域変換部34及び第2の色空間変換部36は、変換手法決定部40により決定された変換手法を用いて、入力画像を加法混色系の色空間から減法混色系の色空間に色変換する色変換手段を構成する。なお、第1の色空間変換部32及び第2の色空間変換部36は、予め記憶されているLUT(色変換テーブル)を用いて色空間変換処理を行ってもよい。
【0027】
特性取得部38は、表示装置20における加法混色の色再現特性の一部を取得して、変換手法決定部40に対して出力する。例えば、特性取得部38は、加法混色の色再現特性の一部として、無彩色領域の特性を取得する。より具体的には、特性取得部38は、複数の色成分(例えば、RGB)のそれぞれが等しい値である色(無彩色)と、当該無彩色の少なくともいずれかの色成分が変更された色とを表示装置20に表示し、これらの色の中からユーザにより無彩色であるとして選択された色情報を取得し、選択された色情報と無彩色とのずれを算出する。なお、加法混色の特性を取得する手法については、後で詳述する。
【0028】
変換手法決定部40は、特性取得部38により取得された色再現特性に基づいて、入力色空間の色再現域から出力装置の色再現域への変換手法を決定する。具体的には、変換手法決定部40は、色再現特性において示される無彩色のずれ量に応じて、入力色空間から出力色空間へ変換するための色変換係数を決定し、この色変換係数を含む圧縮・写像関数を生成して色再現域変換部34に対して出力する。なお、変換方法を決定する手法については、後で詳述する。
【0029】
図3は、特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法を詳細に説明する図である。
図3に示すように、画像処理プログラム30の特性取得部38は、無彩色と、当該無彩色の少なくともいずれかの色成分が変更された複数の色(比較対象色)とを表示装置20に表示する。
【0030】
例えば、無彩色は、RGBの各色成分が所定値Aである色(R=G=Bである色)であり、比較対象色は、当該無彩色の1又は2の色成分がαだけ変化された値(A−α)である色である。本実施形態では、6つの比較対象色が、前景の色として表示装置20に表示され、無彩色が、比較対象色の背景色として表示される。
【0031】
ユーザは、例えばマウス等の入力装置22を用いて、無彩色であると判定した色の領域をクリックし、当該色を無彩色であると判定したことを入力する。画像処理プログラム30の特性取得部38は、当該入力を受け付け、ユーザにより選択された色情報を取得する。したがって、特性取得部38は、無彩色の色情報と、無彩色として選択された比較対象色との色情報とから、色再現特性を取得する。
【0032】
具体的には、ユーザにより、無彩色が選択された場合、特性取得部38は、表示装置20についての色再現特性の色バランスは保たれていると判断する。また、RGBのうち1の色成分が変化された色が選択された場合、特性取得部38は、加法混色が当該色成分の方向にずれていると判断する。また、RGBのうち2の色成分が変化された色が選択された場合、特性取得部38は、当該2の色成分が加法混色からずれていると判断する。
【0033】
即ち、特性取得部38は、選択された色情報の色成分と無彩色の色成分とを比較し、異なる色成分及び当該色成分の差分(ずれ量)を解析する。したがって、このずれ量が補正されるように、圧縮・写像関数が、変換手法決定部40により決定される。
【0034】
図4は、変換手法決定部40による変換方法を決定する手法を詳細に説明する図である。
図4(A)は、色相の変換を示す図である。図4(A)に示すように、画像処理プログラム30の変換手法決定部40は、特性取得部38により取得された色情報に基づいて算出される色成分を中心として、当該色成分の補色に基づいて色相が変換されるように変換手法を決定する。即ち、加法混色の特性が取得される際、RGBのうち1又は2の色成分が変化された色が選択された場合、変換手法決定部40は、当該色成分を中心とし、ずれ量に応じて色相が変換されるようにする。なお、以降、特性取得部38により取得された色情報を、加法混色の着目点ともいう。
【0035】
例えば、加法混色の着目点が、無彩色の画像データからR成分だけが変化された色である場合、即ち当該色がユーザにより選択された場合、色相の変換の中心は、Rとなる。この場合、色相変換の対象は、RからGまでの領域及びRからBまでの領域であり、変換手法は、当該領域の色相がR成分の補色であるC領域の方向へ変換されるものとなる。ただし、C(シアン)は、R成分と補色の関係であるので、変換されない。また、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の純色領域は、色相変換の対象から外される。
【0036】
図4(B)は、色相と色相の変換量との関係を示す図である。図4(B)に示すように、変換手法決定部40は、入力色空間の1次色(R,G,B)に近い色ほど色相の変換量を小さくなるように変換手法を決定する。また、加法混色の着目点が、無彩色の画像データのR成分に所定値だけ加算された色である場合、色相の変化量はプラスとなり、選択された色が、無彩色の画像データのR成分から所定値だけ減じられた色である場合、色相の変化量はマイナスとなる。
【0037】
このようにして、変換手法決定部40は、色相の変化の方向及び変化量を決定し、この変化及び変化量を反映する圧縮・写像関数を生成する。
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係る画像処理装置10による画像処理(S10)のフローチャートを示す。
図5に示すように、ステップ100(S100)において、画像処理装置10上で動作する画像処理プログラム30の特性取得部38は、無彩色及び比較対象色を表示装置20に表示する。ユーザは、表示された色の中から無彩色を選択し、当該色の領域を入力装置22を用いて入力する。例えば、ユーザは、当該色の領域をマウスを用いてクリックする。
【0039】
ステップ102(S102)において、特性取得部38は、ユーザにより選択された色情報を取得したか否かを判定する。特性取得部38は、色情報を取得した場合にはS104の処理に進み、そうでない場合にはS102の処理に戻る。
【0040】
ステップ104(S104)において、特性取得部38は、選択された色情報と無彩色とのずれを算出して、無彩色領域の特性を取得する。より具体的には、特性取得部38は、選択された色情報と無彩色との間で異なる色成分とそのずれ量を解析する。
【0041】
ステップ106(S106)において、画像処理プログラム30の変換手法決定部40は、取得された特性に基づいて、圧縮・写像関数を決定する。決定された圧縮・写像関数は、メモリ14及び記憶装置16の少なくともいずれかに格納される。
【0042】
ステップ108(S108)において、画像処理プログラム30の色再現域変換部34は、変換手法決定部40により決定された圧縮・写像関数を用いて、色再現域を変換する。具体的には、色再現域変換部34は、入力画像データ(RGB)が第1の色空間変換部32により色空間を変更されて生成された画像データの色再現域を変換して、第2の色空間変換部36に対して出力する。この画像データは、第2の色空間変換部36により印刷に適した例えばCMYK色空間に変換されて出力画像データとして出力される。
【0043】
このように、加法混色の特性が取得され、圧縮・写像関数が決定され、この圧縮・写像関数が色再現域に用いられる。このため、無彩色特性が補正されるので、表示装置20で視認される色の印象をプリンタ等の出力装置で再現することができる。
【0044】
次に、図6乃至図9を用いて、加法混色の特性を取得する手法の異なる実施例を説明する。
図6は、特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法の第2の実施例を示す図である。
図6に示すように、本実施例では、比較対象色は、無彩色の背景として表示され、無彩色は、前景の色として比較対象色の内側に表示される。なお、無彩色及び比較対象色の画素値は、第1の実施例と同様である。したがって、ユーザは、このように表示された無彩色の領域及び比較対象色の領域から、無彩色であると判定した色の領域を入力装置22を用いて入力する。
【0045】
図7は、特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法の第3の実施例を示す図である。
図7(A)に示すように、本実施例では、無彩色gは、中心に表示され、比較対象色a−f及びa’−f’は、無彩色gの周囲に表示される。ここで、無彩色gは、R=G=Bである色であり、比較対象色a−fは、無彩色の色成分のうち少なくともいずれかの色成分がαだけ変更された色であり、比較対象色a’−f’は、無彩色の色成分のうち少なくともいずれかの色成分がβ(β>α)だけ変更された色である。
【0046】
より具体的には、比較対象色a−fは、無彩色gの外側に、色相方向に配置されて表示される。また、比較対象色a’−f’は、比較対象色a−fのさらに同心円外側に、色相方向に配置されて表示される。
【0047】
また、図7(B)に示されるように、画像処理プログラム30の特性取得部38は、複数の比較対象色を表示装置20に表示する。このように、無彩色gは、表示されなくてもよい。この場合、ユーザは、表示された比較対象色a−f及びa’−f’の領域から、無彩色であると判定した色の領域を入力する。
【0048】
図8は、特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法の第4の実施例を示す図である。
図8に示すように、画像処理プログラム30の特性取得部38は、複数の無彩色と、当該無彩色の少なくともいずれかの色成分が変更された色とが表示装置20に表示する。本実施例では、複数の濃度の無彩色a1−aN(本例では、N=7)及び各濃度の無彩色に対応する比較対象色b1−bNが表示される。ここで、無彩色a1−a7は、R=G=Bである色であり、無彩色a1の濃度が最も高く、Nの値が大きくなるのど、濃度は低くなる。また、濃度が低くなるほど、表示される面積は大きくなる。比較対象色b1−b7は、対応する無彩色a1−a7の色成分のうち少なくともいずれかの色成分が所定値αからβの範囲で変更された色である。
【0049】
ユーザは、表示された色の領域から、無彩色であると判定した色の領域を入力する。したがって、比較対象色の領域が、ユーザにより無彩色であると判定された場合、画像処理装置10は、この比較対象色の色成分と当該比較対象色に対応する無彩色の色成分とに基づいて、無彩色領域の特性を取得する。
【0050】
図9は、特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法の第5の実施例を示す図である。
図9(A)に示すように、画像処理プログラム30の特性取得部38は、複数の比較対象色と当該比較対象色の補色とを表示装置20に表示する。本実施例では、比較対象色a−c及び当該比較対象色a−cの補色a’−c’が表示される。ここで、比較対象色a−fは、無彩色の色成分のうち少なくともいずれかの色成分がβだけ変更された色である。ユーザは、複数の比較対象色とその補色の組のそれぞれにおいて、どちらが無彩色に近いかを判断し、無彩色であると判定した色の領域を入力する。
【0051】
画像処理装置10が入力を受け付けると、図9(B)に示すように、選択された複数の色が表示される。したがって、ユーザは、表示された複数の色の中で最も無彩色に近い色を判断し、その色の領域を入力する。画像処理装置10は、選択された色と当該色に対応する無彩色とに基づいて、無彩色領域の特性を取得する。
【0052】
なお、比較対象色に対応する無彩色が、比較対象色及びその補色とともに表示されてもよい。この場合、ユーザは、無彩色、比較対象色及びその補色の中から、無彩色であると判定する色を選択する。
【0053】
次に、変換方法を決定する手法の異なる実施例を説明する。
本実施例では、取得された色情報とデバイスに依存しない色空間における無彩色情報とに基づいて、変換方法が決定される。より具体的には、ユーザにより無彩色と判定された色情報と、Lab表色系においてa*=b*=0である色情報とに基づいて、変換方法が決定される。
【0054】
図10は、変換手法決定部40による変換方法を決定する手法の異なる実施例を示す図である。
図10(A)は、無彩色であると判定された色情報A,Bと、この色情報に対応する無彩色Ag,Bgとが、Lab表色系において表示される図である。例えば、色情報A,Bは、無彩色の画像データからR成分だけが変化された色であり、色情報AのR成分は128であり、色情報BのR成分は100である。無彩色Ag,Bgは、a*=b*=0である色情報であり、それぞれ色A,Bと同値のL*を有する色情報である。
【0055】
図10(A)に示すように、変換量δは、色情報A,Bと無彩色Ag,Bgとのずれ量に基づいて算出される。ここで、白及び黒の変換量は、略0である。したがって、変換量δは、図中の破線で示される。
【0056】
図10(B)は、a*b*平面における色情報の変換を示す図である。図10(B)に示すように、色情報が、Aのデータを含む場合(色成分Rが128である場合)、この色情報は、Aに対応する変化量δだけ変換される。同様に、色情報が、Bのデータを含む場合(色成分Rが100である場合)、この色情報は、Bに対応する変化量だけ変換される。
【0057】
図10(C)は、Lab表色系における色情報の変換を示す図である。図10(C)において、ハッチングされた面は、加法混色の着目点の値を持つ面である。例えば、色情報がAのデータ(R=128)を含む面である。図10(C)に示すように、本実施例では、この面内は、メッシュ状に細分化され、このメッシュの各格子点に対して、図10(B)に示される変換の特性が設定される。即ち、各格子点において、圧縮・写像関数が決定される。画像処理装置10は、このようにして決定される圧縮・写像関数を用いて、色再現域の変換を行う。
【0058】
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置10を説明する。
本実施形態に係る画像処理装置10は、表示装置20等の入力デバイスのプロファイルに基づいて加法混色の色再現特性を取得する点で、第1の実施形態に係る画像処理装置10とは異なる。プロファイルは、表示装置20などのデバイスの色再現特性を記述するファイルであり、例えば、ICC(International Color Consortium)により定義されるICCプロファイル形式である。
【0059】
より具体的には、画像処理プログラム30の特性取得部38は、入力デバイスのプロファイルと予め決められたプロファイル(例えば、基準モニタのプロファイル)との比較結果から補正対象の色情報を取得する。比較対象は、例えば、色相、彩度等である。
【0060】
図11は、プロファイルに基いて解析されたトーンカーブを例示する図である。
図11に例示するように、入力デバイスのプロファイルが解析された結果、G成分及びB成分のカーブは、γ=2.2のカーブと略一致している一方、R成分のカーブは、γ=2.2のカーブからずれていることがある。
【0061】
この場合、画像処理プログラム30の特性取得部38は、R成分がずれている特性を取得する。このように、画像処理装置10は、プロファイルを解析することにより、無彩色からずれている色成分及びそのずれ量を取得する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態に係る画像処理装置10のハードウェア構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像処理装置10上で動作する画像処理プログラム30の構成を示すブロック図である。
【図3】特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法を詳細に説明する図である。
【図4】変換手法決定部40による変換方法を決定する手法を詳細に説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像処理装置10による画像処理(S10)のフローチャートを示す。
【図6】特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法の第2の実施例を示す図である。
【図7】特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法の第3の実施例を示す図である。
【図8】特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法の第4の実施例を示す図である。
【図9】特性取得部38による加法混色の特性を取得する手法の第5の実施例を示す図である。
【図10】変換手法決定部40による変換方法を決定する手法の異なる実施例を示す図である。
【図11】プロファイルに基いて解析されたトーンカーブを例示する図である。
【符号の説明】
【0063】
10 画像処理装置
12 CPう
14 メモリ
16 記憶装置
18 通信装置
20 表示装置
22 入力装置
30 画像処理プログラム
32 第1の色空間変換部
34 色再現域変換部
36 第2の色空間変換部
38 特性取得部
40 変換手法決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置における加法混色の色再現特性の一部を取得する特性取得手段と、
前記特性取得手段により取得された色再現特性に基づいて、入力色空間の色再現域から出力装置の色再現域への変換手法を決定する変換手法決定手段と
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記特性取得手段は、無彩色領域の色再現特性を取得する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記特性取得手段は、複数の色成分のそれぞれが等しい値である色と、当該色の少なくともいずれかの色成分が変更された色とが表示装置に表示された結果に基づいて選択された色情報を取得する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記特性取得手段は、複数の色成分のそれぞれが等しい値である色の少なくともいずれかの色成分が変更された複数の色が表示装置に表示された結果に基づいて選択された色情報を取得する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記特性取得手段は、複数の色成分のそれぞれが等しい値である複数の色と、当該色の少なくともいずれかの色成分が変更された色とが表示装置に表示された結果に基づいて選択された色情報を取得する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記特性取得手段は、複数の色成分のそれぞれが等しい値である色の少なくともいずれかの色成分が変更された色と、当該色の補色とが表示装置に表示された結果に基づいて選択された色情報を取得する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記特性取得手段は、入力デバイスのプロファイルと予め決められたプロファイルとの比較結果から補正対象の色情報を取得する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記変換方法決定手段は、前記特性取得手段により取得された色情報に基づいて算出される色成分を中心として、当該色成分の補色に基づいて色相が変換されるように変換手法を決定する
請求項3乃至7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記変換方法決定手段は、入力色空間の1次色に近い色ほど色相の変換量を小さくする
請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記変換方法決定手段は、前記特性取得手段により取得された色情報と、デバイスに依存しない色空間における無彩色情報とに基づいて変換手法を決定する
請求項3乃至7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記変換方法決定手段は、入力色空間から出力色空間へ変換するための色変換係数を決定する
請求項1乃至10のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記変換手法決定手段により決定された変換手法を用いて、入力画像を加法混色系の色空間から減法混色系の色空間に色変換する色変換手段をさらに有する
請求項1乃至11のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項13】
コンピュータを含む画像処理装置において、
表示装置における加法混色の色再現特性の一部を取得する特性取得ステップと、
前記取得された色再現特性に基づいて、入力色空間の色再現域から出力装置の色再現域への変換手法を決定する変換手法決定ステップと
を前記画像処理装置のコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−147492(P2009−147492A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320464(P2007−320464)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】