説明

画像処理装置及び方法

【課題】 最終画像出力時の画質の低下を招くこと無く、プレビュー時のレスポンスを高速化すること。
【解決手段】 複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する画像処理方法であって、プレビューモードと、出力モードとを切り替える切り替えステップと、プレビューモードに切り替えられた場合に(S11)、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成ステップと(S13)、前記プレビューモードにおいて前記生成ステップで生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う画像処理ステップと(S14)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び方法に関し、デジタル化された画像をルックアップテーブル(LUT)を使って処理する画像処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラなどの撮像装置は、CMOS、CCD等の撮像素子により、被写体光学像を光電変換して得られた撮影画像の電気信号をデジタルデータに変換した、いわゆるRAWデータ(またはRAW画像)を生成する。撮像素子が例えばBayer配列のカラーフィルタによって覆われている場合、RAWデータはベイヤー(Bayer)配列の各色情報を有する画素情報となる。このようなRAWデータに対して、ソフトウェアを用いて、色補間、ガンマ補正、輝度値補正、シャープネス処理などの各種画像処理を行い、例えば、表示装置やプリンタ等の画像出力装置に出力するための画像を再現する。以下、これらの処理を「画像再現処理」と呼ぶ。
【0003】
図1は、一般的な画像再現処理ソフトウェアの機能の一例を示すブロック図である。まず、入力データであるRAW画像101を画像再現処理ソフトウェア108に入力する。入力したRAW画像101には、色補間処理102、ガンマ補正や輝度値補正等の色処理103、シャープネス処理104が施され、ファイル出力(またはプリント出力)107されるか、または、ディスプレイ上にプレビュー表示106される。なお、ディスプレイ上にプレビュー表示される際には、画像再現処理の作業色空間(例えば、AdobeRGB)から、ディスプレイ表示に適した色空間(例えば、sRGB)への変換を行う色空間変換処理105を行ってから表示される。
【0004】
上述した画像再現処理中、ユーザは、指定した処理が画像にどのような効果をもたらすのか、プレビュー表示106された画像を確認しながら作業を進めることができる。そのため、このような作業においては、処理された画像がプレビュー表示106されるまでの時間がユーザの生産性に大きく影響を与えることになる。
【0005】
このような画像再現処理を高速化する手段の一つとして、ルックアップテーブル(LUT)を使った手法が特許文献1に開示されている。この手法では、まず色空間内から代表点を抽出してLUTを生成し、生成したLUT内の点に色変換処理を施し、変換後のLUTと補間処理とを使って、画像全体の色変換処理を行う。この手法により、処理から出力までの時間を短縮し、ユーザの生産性を向上させることができる。
【0006】
【特許文献1】特表平05−502781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LUTがすべての画像処理に適用できるわけではなく、LUTを活用できる処理は、ガンマ補正や輝度値補正などの色処理に代表される、周辺の画素値に影響を受けない画像処理(画素内処理)のみである。逆に、LUTを活用できない処理は、周辺画素の値に影響を受けるような処理(画素間処理)であり、シャープネス処理やノイズ除去処理などが挙げられる。図1の例で言えば、色処理103および色空間変換処理105は、LUTを活用できる処理であり、シャープネス処理104は、LUTを活用できない処理である。
【0008】
このようにLUTを使った高速化が可能な処理の間に、LUTを適用できない画像処理を行う画像再現処理では、LUTを活用した処理が、LUTを適用できない処理の前後に分割されてしまうため、LUTによる高速化の効果が落ちてしまうという問題があった。
【0009】
この高速化効果の低下は、最終的に画像再現処理内容が定まった後に通常行われ、画質が優先される最終画像出力(ファイル出力またはプリント出力)の際には大きな問題にはならないが、即時性が要求される画像再現処理作業中のプレビュー時には、ユーザのストレスや生産性の低下を招いていた。
【0010】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、最終画像出力時の画質の低下を招くこと無く、プレビュー時のレスポンスを高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、 複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する本発明の画像処理装置は、前記複数の画素間処理及び画素内処理が施された画像を確認するためのプレビューモードと、前記処理が施された画像を出力する出力モードとを切り替える切り替え手段と、前記切り替え手段により前記プレビューモードに切り替えられた場合に、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成手段とを有し、前記プレビューモードでは前記生成手段により生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う。
【0012】
また、複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する本発明の画像処理方法は、前記複数の画素間処理及び画素内処理が施された画像を確認するためのプレビューモードと、前記処理が施された画像を出力する出力モードとを切り替える切り替えステップと、前記切り替えステップにおいて前記プレビューモードに切り替えられた場合に、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成ステップと、前記プレビューモードにおいて前記生成ステップで生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う画像処理ステップとを有する。
【0013】
また、別の構成によれば、複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する本発明の画像処理装置は、前記複数の画素間処理及び画素内処理が施された画像を確認するための、画質を優先した画質優先プレビューモードと、当該処理が施された画像を確認するための、処理速度を優先した速度優先プレビューモードと、前記処理が施された画像を出力する出力モードとを切り替える切り替え手段と、前記切り替え手段により前記速度優先プレビューモードに切り替えられた場合に、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成手段とを有し、前記速度優先プレビューモードでは前記生成手段により生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う。
【0014】
また、複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する本発明の画像処理方法は、前記複数の画素間処理及び画素内処理が施された画像を確認するための、画質を優先した画質優先プレビューモードと、当該処理が施された画像を確認するための、処理速度を優先した速度優先プレビューモードと、前記処理が施された画像を出力する出力モードとを切り替える切り替えステップと、前記切り替えステップにおいて前記速度優先プレビューモードに切り替えられた場合に、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成ステップと、前記速度優先プレビューモードにおいて前記生成ステップで生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う画像処理ステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、最終画像出力時の画質の低下を招くこと無く、プレビュー時のレスポンスを高速化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
本第1の実施形態では、RAWデータの画像再現処理を行う際に、シャープネス処理を施す例について説明する。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施形態の画像再現処理を実行する一般的なシステムの主な構成を示すブロック図である。図2において、入力装置201は、ユーザからの指示や、データを入力する装置で、キーボードやマウスなどのポインティングシステムを含む。表示装置202は、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)や後述するプレビュー画像などを表示する装置で、通常はCRTや液晶ディスプレイなどが用いられる。蓄積装置203は、画像データ及びプログラム等を蓄積する装置で、通常はハードディスクが用いられる。204はCPUで、システム全体の処理を制御する。ROM205とRAM206は、処理に必要なプログラム、データ、作業領域などをCPU204に提供する。また、以降のフローチャートの処理に必要な制御プログラムは、蓄積装置203に格納されているか、ROM205に格納されているものとする。蓄積装置203に格納されている場合は、一旦RAM206に読み込まれてから実行される。なお、上述の構成以外にも様々な構成要素を含むが、ここでは説明は省略する。
【0019】
次に、上記システムで実行される画像再現処理ソフトウェアの機能構成について、図3を参照して説明する。図3において、図1と同様の構成には同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0020】
300は本第1の実施形態におけるソフトウェア、301はルックアップテーブル(LUT)生成処理、302はLUT生成処理によって生成されたLUT1を用いて行う処理、303はLUT生成処理によって生成されたLUT2を用いて行う処理を示している。なお、LUT生成処理301、LUT1及びLUT2については、詳細に後述する。
【0021】
以下、図1に示すシステムで実行される画像再現処理ソフトウェアの処理内容について図4のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
ステップS11では、入力された画像ファイルと、出力形態を取得する。なお、出力形態は、ここでは、プレビュー表示、ファイル出力、プリント出力のいずれかであるものとする。ステップS12では、ステップS11で取得した画像ファイルから抜き出したRAW画像に色補間処理102を施し、ベイヤー(Bayer)配列からRGB画素値に変換する。ステップS13では、LUTに対して画像処理を行って、LUT1またはLUT2を生成する(LUT生成処理301)。このLUTに対する画像処理については、図5を用いて後に詳述する。ステップS14では、ステップS12で取得した色補間処理後の画素値と、ステップS13で画像処理が施されたLUT1またはLUT2を使って、画像処理後の画素値を計算する。このとき、LUT1またはLUT2に保持されている代表点以外の画素値の出力は、補間によって求める。補間方法は、3次元補間であれば、最近傍点による補間、Trilinear内挿、Tricubic内挿などの方法が考えられるが、本発明の補間方法はこれに限られるものでは無い。
【0023】
次に、ステップS15では、ステップS14で得られたLUT1またはLUT2を用いた画像処理後の画像に対して、シャープネス処理104を行う。シャープネス処理104の方法としては、アンシャープマスクを使った方法や、ラプラシアンフィルタなどを使った処理、または、エッジ検出を行い、その結果に対して強調成分を加算する方法等、様々な方法が考えられる。ステップS16では、ステップS11で取得した出力形態に応じた出力を行い(プレビュー表示106またはファイル出力/プリント出力107)、画像再現処理を終了する。
【0024】
次に、図5のフローチャートを参照して、ステップS13で行われるLUTに対する画像処理(LUT生成処理301)の方法について説明する。
【0025】
まず、ステップS21では、LUTの初期化を行う。LUTの初期化を行うと、入力として255を与えると出力値255が、入力値128を与えると出力値128が出力される、図6(a)に示すようなLUTが作成される。なお、図6では説明をわかりやすくするために簡略的にLUTを1次元で表現し、代表点も5点としている。実際には、画像の色成分が3色(RGB, YCbCr, Labなど)であれば3次元LUTとなり、4色(CMYKなど)であれば4次元LUTとなる。また、代表点も多ければ多いほど最終的な出力結果がLUTを使わずに処理した出力結果に近づくことになる。
【0026】
ステップS22では、ステップS21で初期化したLUTに対して、輝度値補正やガンマ補正等の色処理変換を行う。色処理は、ステップS11で取得した画像ファイルの付加情報として指定された色処理でも、ユーザがマウスなどの入力デバイスを用いて、指定した色処理でも良い。この結果、図6(a)のようなLUTが、図6(b)のようなLUTに変換される。ここで生成される図6(b)に示すLUTがLUT2である。
【0027】
次に、ステップS23においてステップS11で取得した出力形態がプレビュー表示かどうかを判断する。プレビュー表示であればステップS24へ進み、それ以外の表示形式の場合にはLUTに対する画像処理(LUT生成処理301)を終了する。ステップS24では、プレビュー表示の際に必要となる、作業色空間をモニタ出力用の色空間へ変換する色空間変換処理を、ステップS22で得たLUT2に対して更に行って、LUT1を生成する。例えば、作業色空間がAdobeRGBで、モニタ出力用色空間がsRGBである場合、ステップS22から出力された色処理変換後のLUT2に対して、AdobeRGBからsRGBへ色空間を変換する色空間変換処理を施し、LUTに対する画像処理(LUT生成処理301)を終了する。このようにして、出力形態に応じてLUT1またはLUT2が生成される。
【0028】
このように、本第1の実施形態の画像再現処理によれば、図1に示す従来例と比較して、プレビュー時のシャープネス処理は色空間変換処理後に行う。従って、色処理と色空間変換処理がLUT1によりまとめて行われるため、プレビュー時の高速化の効果を最大限引き出すことができる。ただし、プレビューの出力結果と、プレビュー以外の時(例えば、ファイル出力やプリント出力時)の出力結果が異なってしまうが、両者の相違点はエッジ部分のみであるため、知覚しにくい。また、例えばAdobeRGBからsRGBへの変換程度であれば、両者の差は非常に小さく、画質に影響を与えるほどではない。
【0029】
上記の通り本第1の実施形態によれば、ファイル出力やプリント出力時には、色処理を反映させたLUT2を作成し、プレビュー表示を行うときには、色処理及び色空間変換処理を反映させたLUT1を作成し、出力形態に応じてLUT1またはLUT2を選択的に用いてすることにより、最終画像出力時の画質の低下を招くこと無く、プレビュー時のレスポンスを高速化することが可能となる。
【0030】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0031】
上記第1の実施形態では、プレビュー表示時にシャープネス処理を常にLUT1による色処理後に行う場合について説明したが、プレビュー時にもファイル出力やプリント出力などの最終出力と同等の画像を見て、色のチェックを行いたい場合もある。そこで、本第2の実施形態では、プレビュー表示時に、速度優先モードと画質優先モードの2つのモードを設ける。
【0032】
図7は、本第2の実施形態における画像再現処理ソフトウェアの機能構成を示すブロック図であり、図3と同様の構成には同じ参照番号を付して説明を省略する。なお、図7に示す画像再現処理ソフトウェアを実行するシステムは、図1を参照して説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0033】
700は本第1の実施形態におけるソフトウェア、701及び702はルックアップテーブル(LUT)生成処理、703はLUT生成処理によって生成されたLUT3を用いて行う処理を示している。LUT生成処理701及び702、LUT3については、詳細に後述する。
【0034】
次に、本第2の実施形態の画像再現処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。なお、図8において、図4と同様の処理を行うステップには同じ参照番号を付している。本第2の実施形態は、ステップS12の色補間処理後にステップS31で行うLUTに対する画像処理の内容と、ステップS15のシャープネス処理後で行うステップS32〜ステップS35の処理が第1の実施形態と異なる。以下、これらの処理について詳細に説明する。
【0035】
まず、ステップS31で行われるLUTに対する画像処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。なお、図9において、図5と同様の処理を行うステップには同じ参照番号を付し、説明を省略する。
【0036】
ステップS22で、ステップS21で初期化されたLUTに対して輝度値補正やガンマ補正等の色処理変換を行い、図6(b)のようなLUT2に変換した後、ステップS41において、ステップS11で取得した出力形態が、速度優先モードのプレビュー表示かどうかの判断を行う。速度優先モードのプレビュー表示であればステップS24に進み、ステップS22で色処理変換されたLUT2に対して、更に色空間変換処理を行ってLUT1を生成し、LUTに対する画像処理を終了する。一方、ステップS41の判断で速度優先モードのプレビューで無ければ(すなわち、画質優先モードのプレビュー表示またはファイル出力やプリント出力の場合)、そのまま処理を終了する。このようにして、出力形態に応じてLUT1またはLUT2が生成される。
【0037】
図8に戻って、ステップS31でLUTの画像処理を終了した後は、続くステップS14において、ステップS31で得られたLUT1またはLUT2を用いて、ステップS12で取得した色補完処理後の画素値に対して画像処理を行い、更にステップS15においてシャープネス処理104を行う。
【0038】
シャープネス処理104後、ステップS32において、ステップS11で取得した出力形態が画質優先モードのプレビュー表示であるかどうかの判断を行う。画質優先モードのプレビュー表示でなければ、ステップS15で必要な処理が終了しているので、ステップS16に進んで、ステップS11で取得した出力形態に応じた出力を行い(速度優先モードのプレビュー表示703またはファイル出力/プリント出力107)、画像再現処理を終了する。
【0039】
一方、出力形態が画質優先モードのプレビュー表示であれば、ステップS33へ進んで、LUTに対して画像処理を行い、LUT3を生成する。ここでの処理を図10を参照して説明する。
【0040】
まずステップS51で、LUTの初期化を行って図6(a)に示すようなLUTを取得し、続いて、ステップS52においてステップS51で初期化したLUTに対し、色空間変換処理を行って、LUT3を生成する。
【0041】
LUT3の生成後、図8のステップS34に進み、LUT3を使ってステップS15でシャープネス処理104が施された画像データに対して色空間変換を行う。ステップS34の後、ステップS16で画像の出力を行い(画質優先モードのプレビュー表示704)、この画像再現処理を終了する。
【0042】
このように、出力形態がプレビュー表示で色空間変換処理が必要な場合、速度優先モードの場合には、ステップS31でLUTを用いて色処理及び色空間処理を共に行うことでプレビュー時のレスポンスを高速化すると共に、画質優先モードの場合には、シャープネス処理104後の画像を出力する直前のステップS34で色空間変換処理を行うことで、ファイル出力やプリント出力などの最終出力と同等の画像を確認することが可能となる。
【0043】
従って、画像処理の大半を速度優先モードで処理し、最終段階で出力する画像の色を確認したい場合に、画質優先モードで確認してから、ファイル出力あるいはプリントアウトをすることで、従来方式に比べて全体的な処理効率を上げることができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、LUTを利用できる処理がとして、ガンマ補正と輝度値補正、および色空間変換を説明したが、本発明はこれらに限るものではなく、例えばホワイトバランス調整等、周囲画素を参照する必要が無く、画素値自身の値を使って変換できる処理であればどのような処理であってもよい。また、LUTを利用できない処理として、シャープネス処理を挙げて説明したが、スタンプ機能やノイズ除去、ぼかし処理など、周囲画素を参照する必要のある処理であれば、どのような処理でもよい。
【0045】
また、最終出力(上記実施の形態の例ではファイル出力/プリント出力107)時とプレビュー表示時共に、同じ数の代表点を有するLUTを生成したが、最終出力の場合にプレビュー表示時よりも代表点の数を多くしてもよい。また、プレビュー表示時においても、画質優先モードの場合に速度優先モードよりも代表点の数を多くするようにしてもよい。
【0046】
更に、最終出力(上記実施の形態の例ではファイル出力/プリント出力107)時や画質優先モードのプレビュー表示時にも輝度値補正やガンマ補正等の色処理をLUTを用いて行うものとして説明したが、LUTを用いずに行うようにすることも可能である。
【0047】
<他の実施形態>
本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。ここでプログラムコードを記憶する記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、CD−ROM、CD−R、DVD、光ディスク、光磁気ディスク、MOなどが考えられる。また、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)やWAN(ワイド・エリア・ネットワーク)などのコンピュータネットワークを、プログラムコードを供給するために用いることができる。
【0048】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0049】
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明した図4及び図5または図8乃至図10に示すフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の画像再現処理ソフトウェアの主要構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態において画像再現処理ソフトウェアを実施するシステムの主な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における画像再現処理ソフトウェアの機能構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における画像再現処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるLUTに対する画像処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるLUTが変換された様子を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における画像再現処理ソフトウェアの機能構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における画像再現処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態におけるLUTに対する画像処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態におけるLUTに対する画像処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
101 RAW画像
102 色補間処理
103 色処理
104 シャープネス処理
105、603 色処理システム
106 プレビュー表示
107 ファイル出力、プリント処理
108、300、700 画像再現処理ソフトウェア
301、701、702 LUT生成
302 LUT1
303 LUT2
703 速度優先モードのプレビュー表示
704 画質優先モードのプレビュー表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する画像処理装置であって、
前記複数の画素間処理及び画素内処理が施された画像を確認するためのプレビューモードと、前記処理が施された画像を出力する出力モードとを切り替える切り替え手段と、
前記切り替え手段により前記プレビューモードに切り替えられた場合に、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成手段とを有し、
前記プレビューモードでは前記生成手段により生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する画像処理装置であって、
前記複数の画素間処理及び画素内処理が施された画像を確認するための、画質を優先した画質優先プレビューモードと、当該処理が施された画像を確認するための、処理速度を優先した速度優先プレビューモードと、前記処理が施された画像を出力する出力モードとを切り替える切り替え手段と、
前記切り替え手段により前記速度優先プレビューモードに切り替えられた場合に、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成手段とを有し、
前記速度優先プレビューモードでは前記生成手段により生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記画質優先プレビューモードでは、処理後に得られる画像の画質が高くなる順番で前記複数の画素内処理及び前記複数の画素間処理を行い、
前記生成手段は、前記切り替え手段により前記画質優先プレビューモードに切り替えられた場合に、前記複数の画素内処理の内、前記画素間処理により分割される処理毎にルックアップテーブルを生成することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記出力モードでは、処理後に得られる画像の画質が高くなる順番で前記複数の画素内処理及び前記複数の画素間処理を行い、
前記生成手段は、前記切り替え手段により前記出力モードに切り替えられた場合に、前記複数の画素内処理の内、前記画素間処理により分割される処理毎にルックアップテーブルを生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画素内処理は、ガンマ補正と輝度値補正、色空間変換、ホワイトバランス処理のいずれかを含み、前記画素間処理は、色補間処理、シャープネス処理、スタンプ機能、ノイズ除去、ぼかし処理のいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する画像処理方法であって、
前記複数の画素間処理及び画素内処理が施された画像を確認するためのプレビューモードと、前記処理が施された画像を出力する出力モードとを切り替える切り替えステップと、
前記切り替えステップにおいて前記プレビューモードに切り替えられた場合に、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成ステップと、
前記プレビューモードにおいて前記生成ステップで生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う画像処理ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
複数の画素からなる画像に対して、各画素の画素データを用いて当該画素を処理する複数の画素内処理と、複数画素の画素データを用いて各画素を処理する複数の画素間処理とを実行し、前記複数の画素間処理の少なくとも1つを前記複数の画素内処理の間に実行する画像処理方法であって、
前記複数の画素間処理及び画素内処理が施された画像を確認するための、画質を優先した画質優先プレビューモードと、当該処理が施された画像を確認するための、処理速度を優先した速度優先プレビューモードと、前記処理が施された画像を出力する出力モードとを切り替える切り替えステップと、
前記切り替えステップにおいて前記速度優先プレビューモードに切り替えられた場合に、前記画素間処理の前後に実行される前記複数の画素内処理を反映させたルックアップテーブルを生成する生成ステップと、
前記速度優先プレビューモードにおいて前記生成ステップで生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う画像処理ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
前記画質優先プレビューモードでは、処理後に得られる画像の画質が高くなる順番で前記複数の画素内処理及び前記複数の画素間処理を行い、
前記切り替えステップにおいて前記画質優先プレビューモードに切り替えられた場合に、前記複数の画素内処理の内、前記画素間処理により分割される処理毎にルックアップテーブルを生成する第2の生成ステップと、
前記画質優先プレビューモードにおいて前記第2の生成ステップで生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う第2の画像処理ステップと
を更に有することを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記出力モードでは、処理後に得られる画像の画質が高くなる順番で前記複数の画素内処理及び前記複数の画素間処理を行い、
前記切り替えステップにおいて前記出力モードに切り替えられた場合に、前記複数の画素内処理の内、前記画素間処理により分割される処理毎にルックアップテーブルを生成する第3の生成ステップと、
前出力モードにおいて前記第3の生成ステップで生成されたルックアップテーブルを用いて前記複数の画素内処理を行う第2の画像処理ステップと
を更に有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記画素内処理は、ガンマ補正と輝度値補正、色空間変換、ホワイトバランス処理のいずれかを含み、前記画素間処理は、色補間処理、シャープネス処理、スタンプ機能、ノイズ除去、ぼかし処理のいずれかを含むことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれかに記載の画像処理方法を実現するためのプログラムコードを有することを特徴とする情報処理装置が実行可能なプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記憶したことを特徴とする情報処理装置が読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−13474(P2007−13474A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190507(P2005−190507)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】