画像処理装置及び画像処理方法
【課題】複数種類のインクを用いて画像を形成する場合に、全てのインクにおいて、濃度むらが抑制され、粒状感や濃度不足が弊害とならない画像を出力することが可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行う際、濃度むらが目立ちやすいインクのドット重複率を、濃度むらよりも他の弊害が目立ちやすいインクのドット重複率よりも高く設定する。これにより、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【解決手段】記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行う際、濃度むらが目立ちやすいインクのドット重複率を、濃度むらよりも他の弊害が目立ちやすいインクのドット重複率よりも高く設定する。これにより、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の同一領域に対する記録手段の複数回の相対移動或は複数の記録素子群の相対移動によって同一領域に画像を記録するために、同一領域に対応する多値画像データを処理する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において記録される画像の濃度むらやスジを軽減するための技術として、記録媒体の同一領域に対する記録ヘッドの複数回の記録走査によって上記同一領域に記録すべき画像を完成させるマルチパス記録方式が知られている。しかしながら、マルチパス記録方式を採用したとしても、記録媒体の搬送量の変動などによって、先行する記録走査でのドット記録位置と後続の記録走査でのドット記録位置にズレが生じる場合がある。このようなズレはドット被覆率の変動を招き、これが原因で濃度変動や濃度むら等の画像弊害が生じる。
【0003】
このような画像弊害を軽減するための技術として、2値化前の多値の画像データの段階で画像データを異なる記録走査に対応するように分割し、分割後の多値画像データを夫々独立(無相関)に2値化する方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。図9(A)は、特許文献1の方法によって処理された画像データに基づいて記録されるドットの配置状態を示した図である。図において、黒丸1501は第1の記録走査で記録されるドット、白丸1502は第2の記録走査で記録されるドット、グレーの丸1503は第1の記録走査と第2の記録走査によって重ねて記録されるドットである。
【0004】
このようなドット配置によれば、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群が、主走査方向または副走査方向にずれたとしても、記録媒体に対するドットの被覆率は然程変動しない。その理由は、第1の記録走査で記録されるドットと第2の記録走査で記録されるドットが重なる部分も新たに現れるが、本来重ねて記録されるべき2つのドットが重ならなくなる部分も存在するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−103088号公報
【特許文献2】特開2001−150700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法を用いて積極的にドットを重ね合わせると、粒状感や濃度不足を悪化させる場合がある。例えば、粒状感が目立ちやすいハイライト部分では、図9(B)に示すように、数少ないドット(1701、1702)が互いに一定の距離を保ちながら均等に分散しているのが好ましい。しかし、特許文献1、2に記載の構成では、図9(C)に示すように、ドットが重なる箇所(1603)や隣接して記録される箇所(1601、1602)が所々発生してしまうので、これらドットの塊が目立って粒状感を悪化させてしまうのである。また、最高濃度値が重視される高濃度領域では、あまり多くのドットが重ね合うと白紙領域が露出し、これが濃度不足を招致してしまう。よって、ドットが重なる箇所の割合(ドット重複率)は、出力画像の濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが弊害とならない程度(範囲)に調整することが望まれる。
【0007】
特に、明度の異なる複数種類のインクを用いて画像を記録する場合には、インクそれぞれについて濃度むらや粒状感の目立ち方、また濃度不足の程度は異なる。つまり、濃度むらの抑制、粒状感の低減、濃度不足回避のいずれをどの程度優先すべきかが、インクの種類に応じて異なる。従って、複数色のインクを使用する場合には、インク色に応じてドット重複率を適切に調整することが望まれる。
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている方法では、濃度むらの要因については記載されているが、濃度むらの程度と濃度むら低減処理時の粒状感増加の程度については考慮されていない。その為、一律の濃度むら低減処理が行われ、場合によっては本来存在した濃度むらによる画像劣化よりも、濃度むら低減処理による粒状感増加による画像劣化の方が甚だしいことがあった。さらに、特許文献1、2に開示されている方法では、インクによって濃度むらの程度と濃度むら低減処理時の粒状感増加の程度が異なることについては考慮されていない。その為、インクによっては濃度むらと粒状感のバランスがとれないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものである。よって、目的とするところは、明度の異なる複数種類のインクを用いて画像を形成する場合に、全ての色再現範囲において、濃度むらが抑制され、粒状感や濃度不足が弊害とならない画像を出力することが可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、複数種類のインクを用いてドットを記録するための記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行うために、当該画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、前記複数回の相対移動によって前記画素領域に記録されるべき総ドット数に対する、前記複数回の相対移動によって前記画素領域内の同じ位置に重複して記録されるべきドット数の割合が、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように、前記入力画像データを処理するための処理手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、複数種類のインクを記録するための記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行うために、当該画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、前記複数回の相対移動によって前記画素領域に記録されるべき総ドット数に対する、前記複数回の相対移動によって前記画素領域内の同じ位置に重複して記録されるべきドット数の割合が、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように、前記入力画像データを処理するための処理工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数回の相対移動(あるいは複数の記録素子群)により記録されるドットの重複率を、インク色に応じて適切に制御して画像を出力することが可能となる。これにより、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)は本発明の画像処理として機能するフォトダイレクトプリンタ装置の概観斜視図であり、(B)はプリンタエンジン部の記録部の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明実施形態に係るPDプリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図4】(A)〜(H)は、ドット重複率を説明するための図である。
【図5】本発明で適用可能なマスクの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における分配率とドット重複率の関係を示す図である。
【図7】画像処理の具体例をイメージ化した図である。
【図8】(A)及び(B)は、誤差拡散マトリクスの例を示す図である。
【図9】(A)〜(C)は、ドットの分散状態を説明するための図である。
【図10】量子化処理の工程を説明する為のフローチャートである。
【図11】(A)〜(C)は、記録ヘッドの吐出口配列状態を説明する為の図である。
【図12】第4実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図13】(A)〜(H)は、量子化処理の結果と入力値と対応関係を示す図である。
【図14】量子化(3値化)処理の結果と入力値との対応関係を示す図である。
【図15】第5実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図16】インデックスパターンとドット重複率の関係を説明するための図である。
【図17】記録位置ずれが生じた場合の粒状感と濃度むらの関係を示した図である。
【図18】第2実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図19】イエローインクで記録位置ずれが生じた場合の粒状感と濃度むらの関係を示した図である。
【図20】第3の実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で説明する実施形態は、インクジェット記録装置を例にしているが、本発明は、インクジェット記録装置に限られるものではない。ドットを記録するための記録手段と記録媒体との相対移動中に、記録手段によって記録媒体に画像を記録する方式の装置であれば、インクジェット記録装置以外の装置でも適用可能である。
【0015】
また、記録手段と記録媒体との「相対移動(或は相対走査)」とは、記録媒体に対して記録手段が相対的に移動(走査)する動作、或は、記録手段に対して記録媒体が相対的に移動(搬送)する動作を指す。なお、記録手段とは、1つ以上の記録素子群(ノズル列)或は1つ以上の記録ヘッドを指す。
【0016】
以下で説明する画像処理装置では、記録媒体の同一領域(所定領域)に対する記録手段の複数回の相対移動或は複数の記録素子群の相対移動によって上記同一領域に画像を記録するためのデータ処理を行う。ここで、「同一領域(所定領域)」とは、ミクロ的には「1つの画素領域」を指し、マクロ的には「1回の相対移動で記録可能な領域」を指す。「画素領域(単に「画素」と呼ぶ場合もある)」とは、多値画像データによって階調表現可能な最小単位の領域を指す。一方、「1回の相対移動で記録可能な領域」とは、1回の相対移動中に記録手段が通過する記録媒体上の領域、或はこの領域よりも小なる領域(例えば、1ラスター領域)を指す。
【0017】
<記録装置の概要説明>
図1(A)は、本発明の画像処理として機能するフォトダイレクトプリンタ装置(以下、PDプリンタ)1000の概観斜視図である。PDプリンタ1000は、ホストコンピュータ(PC)からデータを受信して印刷する機能、メモリカード等の記憶媒体に記憶されている画像を直接読取って印刷する機能、またデジタルカメラやPDA等からの画像を受信して印刷する機能を有している。
【0018】
図において、1004は記録済みの用紙を積載可能な排出トレイであり、1003は、本体内部に収納されている記録ヘッドカートリッジ或いはインクタンク等の交換を行う際に、ユーザが開閉することが可能なアクセスカバーである。上ケース1002に設けられた操作パネル1010には、印刷に関する条件(例えば、記録媒体の種類、画像品位等)を各種設定するためのメニュー項目が表示され、ユーザは出力する画像の種類や用途に応じてこれら項目を設定することが出来る。1007は記録媒体を装置本体内へと自動的に給送する自動給送部、1009はメモリカードを装着可能なアダプタが挿入されるカードスロット、1012はデジタルカメラを接続するためのUSB端子である。PD装置1000の後面には、PCを接続するためのUSBコネクタが設けられている。
【0019】
<制御部電気仕様概要>
図2は本発明の実施の形態に係るPDプリンタ1000の制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。図において、3000は制御部(制御基板)を示し、3001は画像処理ASIC(専用カスタムLSI)を示している。3002はDSP(デジタル信号処理プロセッサ)で、内部にCPUを有し、後述する各種制御処理及び、各種画像処理等を担当している。3003はメモリで、DSP3002のCPUの制御プログラムを記憶するプログラムメモリ3003a、及び実行時のプログラムを記憶するRAMエリア、画像データなどを記憶するワークメモリとして機能するメモリエリアを有している。3004はプリンタエンジンで、ここでは、複数色のカラーインクを用いてカラー画像を印刷するインクジェットプリンタのプリンタエンジンが搭載されている。3005はデジタルカメラ(DSC)3012を接続するためのポートとしてのUSBコネクタである。3006はビューワ1011を接続するためのコネクタである。3008はUSBハブ(USB HUB)で、PDプリンタ1000がPC3010からの画像データに基づいて印刷を行う際には、PC3010からのデータをそのままスルーし、USB3021を介してプリンタエンジン3004に出力する。これにより、接続されているPC3010は、プリンタエンジン3004と直接、データや信号のやり取りを行って印刷を実行することができる(一般的なPCプリンタとして機能する)。3009は電源コネクタで、電源3019により、商用ACから変換された直流電圧を入力している。PC3010は一般的なパーソナルコンピュータ、3011は前述したメモリカード(PCカード)、3012はデジタルカメラ(DSC)である。なお、この制御部3000とプリンタエンジン3004との間の信号のやり取りは、前述したUSB3021又はIEEE1284バス3022を介して行われる。
【0020】
<記録部の概要>
図1(B)は、本発明の実施の形態に係るシリアル型のインクジェット記録装置のプリンタエンジン部の記録部の概要を示す斜視図である。記録媒体Pは、自動給送部1007によって搬送経路上に配置された搬送ローラ5001とこれに従動するピンチローラ5002とのニップ部に給送される。その後、記録媒体Pは、搬送ローラ5001の回転によって、プラテン5003上に案内、支持されながら図中矢印A方向(副走査方向)に搬送される。ピンチローラ5002は、不図示のバネ等の押圧手段により、搬送ローラ5001に対して弾性的に付勢されている。これら搬送ローラ5001及びピンチローラ5002が記録媒体搬送方向の上流側にある第1搬送手段の構成要素をなす。
【0021】
プラテン5003は、インクジェット形態の記録ヘッド5004の吐出口が形成された面(吐出面)と対向する記録位置に設けられ、記録媒体Pの裏面を支持することで、記録媒体Pの表面と吐出面との距離を一定の距離に維持する。プラテン5003上に搬送されて記録が行われた記録媒体Pは、回転する排出ローラ5005とこれに従動する回転体である拍車5006との間に挟まれてA方向に搬送され、プラテン5003から排紙トレイ1004に排出される。排出ローラ5005及び拍車5006が記録媒体搬送方向の下流側にある第2搬送手段の構成要素をなす。
【0022】
記録ヘッド5004は、その吐出口面をプラテン5003ないし記録媒体Pに対向させた姿勢で、キャリッジ5008に着脱可能に搭載されている。キャリッジ5008は、キャリッジモータE0001の駆動力により2本のガイドレール5009及び5010に沿って往復移動され、その移動の過程で記録ヘッド5004は記録信号に応じたインク吐出動作を実行する。キャリッジ5008が移動する方向は、記録媒体が搬送される方向(矢印A方向)と交差する方向であり、主走査方向と呼ばれる。これに対し、記録媒体搬送方向は副走査方向と呼ばれている。キャリッジ5008及び記録ヘッド5004の主走査(記録を伴う移動)と、記録媒体の搬送(副走査)とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに対する記録が行われる。
【0023】
図11(A)は、記録ヘッド5004を吐出口形成面から観察した場合の概略図である。図中、51および58は第1および第2シアンノズル列(記録素子群)であり、52および57は第1および第2マゼンタノズル列である。53および56は第1および第2イエローノズル列であり、54および55は第1および第2ブラックノズル列である。各ノズル列の副走査方向における幅はdであり、1回の走査によってdの幅の記録が可能となっている。
【0024】
本実施形態の記録装置はマルチパス記録を実行するので、記録ヘッド5004が1回の記録走査で記録可能な領域に対して、複数回の記録走査によって段階的に画像が形成される。この時、各記録走査の間に記録ヘッド5004の幅dよりも小さな量の搬送動作を行うことにより、個々のノズルのばらつきに起因する濃度むらやすじを更に低減することが出来る。
【0025】
<ドット重複率の制御と濃度むら及び粒状感の関係>
背景技術の項で述べたように、異なる走査や異なる記録素子群で記録されるドット同士がずれて重なると、画像の濃度変動が生じ、これが濃度むらとして知覚される。そこで本発明では、同じ位置(同じ画素や同じサブ画素)に重複して記録すべきドットを予め幾つか用意し、記録位置ずれが生じた際に、隣り合うドットが互いに重なり合い白紙領域を増加させる一方、重複したドットが互いに離れ白紙領域を減少させるようにする。これにより、記録位置ずれによる白紙領域の増と減、即ち濃度の増と減が相殺し合い、画像全体としての濃度変化を抑制することが期待できる。但し、図9(C)でも説明したように、重複したドットを予め用意することは、粒状感を悪化させたり濃度不足を招致したりすることにも繋がる。つまり、予め用意する重複ドット数の調整において、上述した濃度むらと粒状感あるいは濃度不足とはトレードオフの関係にあると言える。
【0026】
しかしながら、上記濃度変化についても粒状感や濃度不足についても、夫々ある程度の許容範囲(人間の視覚特性上、視認されにくい範囲)を有している。よって、この許容範囲内に両者を抑える程度にドット重複率を調整することが出来れば、弊害の目立たない画像を出力することが期待できる。但し、上記許容範囲は、例えばインクの種類や記録媒体の種類、濃度データ値など様々な条件に応じて変化し、適切なドット重複率が常に一定とは限らない。特に複数色のインクを用いてカラー画像を記録する場合には、インクの色、特に明度によって適切なドット重複率も異なる。よって、インク色に応じて、ドットの重複率を制御可能な構成を備えることが望まれる。
【0027】
ここで「ドット重複率」について説明する。「ドット重複率」とは、図4や図16に示す様に、K(Kは1以上の整数)個の画素で構成される単位領域に記録されるべき総ドット数の内、異なる走査或は異なる記録素子群によって同じ画素に重複して記録されるべきドット(重複ドット)数の割合である。なお、同じ画素とは、図4の場合には同じ画素位置を指し、図16の場合にはサブ画素位置を指す。
【0028】
以下、図4を用いて4画素(主走査方向)×3画素(副走査方向)で構成される単位領域に対応した第1プレーンと第2プレーンのドット重複率について説明する。なお「第1プレ−ン」とは第1走査或は第1ノズル群に対応した2値データの集合を表し、「第2プレ−ン」とは第2走査或は第2ノズル群に対応した2値データの集合を表す。また、「1」はドットの記録を示すデータを表し「0」はドットの非記録を示すデータを表す。
【0029】
図4(A)〜(E)では、第1プレーンの「1」の個数が“4”で、第2プレ−ンの「1」の個数も“4”であるため、4画素×3画素で構成される単位領域に記録されるべき総ドット数は“8”となる。一方、同じ画素位置に対応する、第1プレーンと第2プレーンの「1」の個数が、同じ画素に重ねて記録されるべきドット(重なりドット)の数となる。この定義によれば、重なりドット数は、図4(A)の場合に“0”、図4(B)の場合には“2”、図4(C)の場合には“4”、図4(D)の場合には“6”、図4(E)の場合には“8”となる。従って、図4(H)に示すように、図4(A)〜(E)のドット重複率は、夫々、0%、25%、50%、75%、100%となる。さらに、図4(F)は、第1プレーンの記録ドット数“4”で、第2プレ−ンの記録ドット数が“3”で、総ドット数が“7”で、重なりドット数が“6”で、ドット重複率が86%の場合を示している。また、図4(G)は、第1プレーンの記録ドット数“4”で、第2プレ−ンの記録ドット数が“2”で、総ドット数が“6”で、重なりドット数が“2”で、ドット重複率が33%の場合を示している。このように本明細書における「ドット重複率」は、異なる走査或は異なる記録素子群に対応したドットデータを仮想的に重ねた場合のドットデータの重複率である。
【0030】
次に、本実施形態で使用するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)それぞれの、粒状感と濃度むらの程度の違いについて説明する。なお、一般に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)の4色において、互いの明度はK<M<C<Yの関係にある。
【0031】
図17は、記録率150%の単色画像を20%のドット重複率で記録した場合に1画素分の記録位置ずれが生じた場合の粒状感と濃度むらの関係を、各インク色について示した図である。横軸は粒状度を示し、縦軸は、上記1画素分のずれが発生しなかった場合の画像と発生した場合の画像の明度差ΔLを示している。
【0032】
図によれば、濃度むらにおいてK>M>C>Yの関係があり、明度の高いインクほど濃度むらが目立ち難いことがわかる。特に、イエローにおいては、濃度むらが殆ど発生しておらず、記録位置ずれによって濃度変動が発生しにくい、すなわち濃度不足も問題になりにくいと判断することが出来る。また、粒状度についても他のインクに対して十分低い値であることから、イエローについては、ドット重複率を制御するための特別な構成を用意しなくても、従来の一般的な記録方法で十分に対応できると考えられる。
【0033】
一方、イエローよりも濃度むらが目立ちやすい他のインクについても、これらの間で濃度むらの程度は異なっており、それぞれの濃度むらを許容範囲に抑えるために要されるドット重複率も異なる。すなわち、必要以上に粒状感を増大させたり濃度不足を招いたりせずに、濃度むらを許容範囲内に抑えるためのドット重複率はインク色によって異なる。
【0034】
このように、明度の異なる複数種類のインクを用いる場合には、インク色ごとに濃度むらと粒状感や濃度不足のバランスを好適に調整するために、インク色ごとにドット重複率の調整の是非を判断し、インク色ごとにドット重複率を調整することが好ましい。
【0035】
以下、本発明におけるドット重複率を制御するための具体的な画像処理方法について、複数の実施形態を例に説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
図3は、2回の記録走査によって記録媒体の同一領域の画像を完成させる2パスのマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。本実施形態において、多値画像データ入力部(61)、色変換部(62)、分配率設定部60、画像データ分割部(64−1〜4)および量子化処理部(66−1〜8)は、制御部3000に備えられている。
【0037】
外部機器から、多値画像データ入力部61によって、RGBの多値の画像データ(256値)が入力される。この入力画像データ(多値のRGBデータ)は、画素毎に、色変換部62によって、インク色(CMYK)に対応した4組の多値画像データ(インク別多値データ)に変換される。色変換部62には、RGB値とCMYK値とが、一対一で対応付けられた3次元のルックアップテーブル(LUT)が用意されている。そして、このLUTを用いることにより、RGBデータが、インク別多値データ(C,M,Y,K)に一括して変換される。テーブル格子点値から外れる入力値に対しては、近傍の格子点の出力値から補間によって出力値を算出してもよい。
【0038】
以下の処理は、CMYKの夫々について独立に並行して行われる。インク別多値データ(C,M,Y,K)63−1〜4は、それぞれに対応する画像データ分割部64−1〜64−4に送られる。画像データ分割部64−1〜64−4では、分配率設定部60が設定するインク色毎の分配率に従って、多値データ63−1〜4が、第1走査用多値データ(C1、M1、Y1、K1)と第2走査用多値データ(C2,M2,Y2,K2)に分割(変換処理)される。このように、本実施形態では画像データ分割部64−1〜64−4で分割する際の分配率をインク色ごとに異ならせることによって、各色のドット重複率を異ならせる。各色でドット重複率を異ならせるための詳しい変換方法と仕組みについては後述する。
【0039】
各色の画像データ分割部64−1〜4で生成された8種類の多値データ65−1〜8は、夫々の量子化処理部(66−1〜8)において2値化処理(量子化処理)が行われる。
【0040】
ブラックを例に説明すると、量子化処理部66−7では、ブラック第1走査用多値データ65−7(K1)に対し2値化処理(量子化処理)が行われ、ブラック第1走査用2値データ67−7(K1´)が生成される。量子化処理部66−8では、ブラック第2走査用多値データ65−8(K2)に対し2値化処理(量子化処理)が行われ、ブラック第2走査用2値データ67−8(K2´)が生成される。このように、各色2種類ずつの多値データが、それぞれ量子化されて4色分8種類の2値データが生成される。本実施形態において、これら8つの量子化処理部66−1〜8で採用される量子化方式は、一般的な誤差拡散方式とする。
【0041】
この際、同じインクに対する量子化処理部では、2回の走査でドットが記録される画素と一方の走査でのみドットが記録される画素とを適度に混在させるため、異なる拡散マトリクスを採用することが好ましい。例えば量子化処理部66−1、66−3、66−5、66−7では図8(A)で示した拡散マトリクスを用い、量子化処理部66−2、66−4、66−6、66−8では同図(B)で示した拡散マトリクスを用いてもよい。
【0042】
以上の様な量子化処理の結果、K1´とK2´の両方が1である画素にはブラックドットが重複して記録され、K1´とK2´の両方が0である画素にはブラックドットが記録されない。又、K1´とK2´のどちらか一方が1である画素には、ブラックドットが1つだけ記録される。他のインク色のドットについても同じである。
【0043】
量子化処理部66−1〜8によって、2値の画像データC1´、C2´、M1´、M2´、Y1´、Y2´、K1´およびK2´が得られると、これらデータはそれぞれ、IEEE1284バス3022を介して図3で示したプリンタエンジン3004に送られる。
【0044】
プリンタエンジン3004において、2値データK1´(67−7)は、ブラック第1走査2値データ分割処理部68−7に転送される。ブラック第1走査2値データ分割処理部68−7では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。また、2値データK2´(67−8)は、ブラック第2走査2値データ分割処理部68−8に転送される。ブラック第2走査2値データ分割処理部68−8では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。
【0045】
ここで、マスクとは、個々の画素に対して2値画像データの記録の許容(1)または非許容(0)が予め定められたデータの集合体であり、2値画像データと画素毎に論理積演算することで、上記2値画像データを分割することが出来るものである。2値の画像データをN分割する場合、N個のマスクが用いられるのが一般である。2値の画像データを2つの走査のために2分割する本実施形態では、図5に示すような2つのマスク1801、1802が使用される。黒で示される部分が画像データの記録を許容するデータ(1:画像データをマスクしないデータ)であり、白で示される部分は画像データの記録を許容しないデータ(0:画像データをマスクするデータ)である。ここでは、マスク1801はノズル列54の2値データを生成するために利用され、マスク1802はノズル列55の2値データを生成するために利用される。これら2つのマスクは互いに補完の関係を有しているため、これらマスクで分割された2値データ同士は互いに重なることがない。つまり、ブラック第1走査2値データで記録(1)と定められたデータは、2つのノズル列54および55によって、互いに重なることなく、記録媒体に記録される。このような分割処理は、ブラックの第2走査用2値データや他のインク色に対しても同様に行われる。
【0046】
上記分割処理後、ブラック第1走査第1ノズル列2値データ(69−13)は、ブラック第1走査第1ノズル列用バッファ70−13に格納され、ノズル列54によって、第1走査で記録される。また、ブラック第1走査第2ノズル列2値データ(69−14)は、ブラック第1走査第2ノズル列用バッファ70−14に格納され、ノズル列55によって、第1走査で記録される。さらに、ブラック第2走査第1ノズル列2値データ(69−15)は、ブラック第2走査第1ノズル列用バッファ70−15に格納され、ノズル列54によって、第2走査で記録される。さらにまた、ブラック第2走査第2ノズル列2値データ(69−16)は、ブラック第2走査第2ノズル列用バッファ70−16に格納され、ノズル列55によって、第2走査で記録される。他のインク色についても同様である。
【0047】
以下、本実施形態の特徴的なドット重複率を制御するための処理方法を説明する。表1は、本実施形態の画像データ分割部(64−1〜64−4)による第1走査用および第2走査用の多値データへの分配率と、それぞれの多値データに対し一般的な誤差拡散処理を施した場合の、第1走査と第2走査でのドット重複率を示している。
【0048】
表1において記録率(%)とは、単位面積当たりに記録される1色のインクのドット数に相当し、単位面積当たりにドットが記録されていない状態を0%、単位面積当たりに最大数のドットが記録されている状態を100%としている。従って、例えば記録率60%とは、各色の多値データ63−1〜4の最大値(255)に対し60%の値(153)に相当する数のドットが単位面積に記録されている状態を指す。表1では、この様なドット記録率を0〜100%の10段階で示している。
【0049】
分配率(%)とは、記録率によって決まる多値データを第1走査及び第2走査へ分配する割合を示し、分配率の合計は100%となっている。例えば、シアンの多値データ値(C=100)を第1走査用の多値データ(C1=80)と第2走査用の多値データ(C2=20)に分配する際、分配率は(C1:C2=80:20)となる。表1では、この様な分配率を6段階で示している。そして、分配率と記録率の夫々に対応し、一般的な誤差拡散法によって2値化処理した結果のドット重複率を各欄に示している。
【0050】
【表1】
【0051】
図6は、表1をグラフに示した図であり、横軸は記録率、縦軸はドット重複率を示している。表1に示した6段階の分配率の夫々について、記録率に対するドット重複率が傾きの異なる直線で示されている。例えば、第1走査の分配率が100%、第2走査の分配率が0%である場合、全多値データは第1走査のみによって記録される。この場合、ドットが重なり合うことはなく、記録率が上昇してもドット重複率は0%のままである。第2走査の分配率を徐々に上げていくと、記録率に対するドット重複率の傾きは徐々に上がる。そして、分配率が第1走査と第2走査で50%ずつである場合、記録率に対するドット重複率の傾きは最も大きくなり、記録率が100%のときにドット重複率は50%となる。従って、表1や図6に示すような分配率とドット重複率の関係を予め取得しておけば、分配率を調整することにより所望のドット重複率を実現することが出来る。
【0052】
ここで、再度図17を参照するに、本実施形態で使用するインク色においては、比較的明度の高いイエローやシアンインクでは濃度むらが目立ちにくいのに対し、比較的明度の低いブラックやマゼンタインクでは濃度むらが目立ちやすい。よって、本実施形態では、マゼンタやブラックインクのドット重複率をシアンやイエローインクのドット重複率よりも高く設定する。そのために、分配率設定部60は、各色の画像データ分割部64−1〜4に対し異なる分配率でのデータ分割を指示し、夫々の画像データ分割部64−1〜4は、このように指示された分配率に従ってデータ分割を行う。具体的には、ブラック用画像データ分割部64−4における分配率の偏りを、他色の画像データ分割部64−1〜3における分配率の偏りよりも小さく設定する。また、イエロー用画像データ分割部64−3における分配率の偏りを、他色の画像データ分割部64−1、2、4における分配率の偏りよりも大きく設定する。例えば、再度図6を参照するに、ブラックの分配率を50%:50%とし、マゼンタの分配率を60%:40%とし、シアンの分配率を80%:20%とし、イエローの分配率を90%:10%とする。これにより、相対的に明度の高いインクのドット重複率を明度の低いインクのドット重複率よりも低く設定することが可能となる。結果、全インク色において、濃度むらも粒状感も適度に調整された良好な画像を出力することが出来る。
【0053】
なお、表1では、第1走査と第2走査の分配率の和が100%になるようにそれぞれの分配率が定められているが、画像処理の都合や絶対濃度の向上を目的として、第1走査の分配率の和と第2走査の分配率の和を100%以上や100%未満にしても構わない。
【0054】
図7は、図3に示した画像処理の具体例をイメージ化した図である。ここでは、4画素×4画素の計16画素に対応した入力画像データ140を処理する場合を図3に対応付けて説明する。符号A〜Pは、各画素に対応する入力画像データ140のRGB値の組合せを示している。符号AC〜PCは、色分解処理によって得られた各画素に対応するシアンドット用の多値データ141を示している。符号AM〜PMは、色分解処理によって得られた各画素に対応するマゼンタドット用の多値データ142を示している。また、符号AY〜PYは、色分解処理によって得られた各画素に対応するイエロードット用の多値データ143を示している。更に、符号AK〜PKは、色分解処理によって得られた各画素に対応するブラックドット用の多値データ141を示している。
【0055】
図において、シアン用の多値データ141が図3のシアン用多値データ63−1に相当し、マゼンタ用多値データ142がマゼンタドット用の多値データ63−2に相当する。また、イエロー用の多値データ143が図3のイエロー用多値データ63−3に相当し、ブラック用多値データ144がブラックドット用の多値データ63−4に相当する。
【0056】
まず、入力画像データ140(RGBデータ)が、色変換部62に入力されると、色変換部62では、3次元のLUTによって、入力画像データ140(RGBデータ)が、画素毎に色毎の多値データ141(CMYKデータ)に変換される。各色の多値データ(141〜144)は夫々の画像データ分割部64−1〜4に入力され、所定の分配率に従って、画素毎に第1走査用の多値データ(145、147、149、151)と第2走査用の多値データ(146、148、150、152)に変換される。その後、各色の第1走査用の多値画像データ(145、147、149、151)は量子化処理部において誤差拡散処理が施されて、各色の第1走査用の量子化データ(153、155、157、159)が生成される。また、各色の第2走査用の多値画像データ(146、148、150、152)は量子化処理部において誤差拡散処理が施されて、各色の第2走査用の量子化データ(154、156、158、160)が生成される。
【0057】
図7において、各色の第1走査用および第2走査用の量子化データ(153〜160)のうち、「1」のデータはドットの記録(インクの吐出)を示すデータであり、「0」のデータはドットの非記録(インクの非吐出)を示すデータである。50:50のような偏りの少ない分配率に従って分配処理が行われたブラックドットでは、第1走査用多値データ(159)と第2走査用多値データ(160)で、ドットの記録を示すデータ「1」の数がほぼ等しいことが判る。また、同じ画素に重複して記録されるドットの数(4)が、記録されるドットの数(8)のほぼ半分、すなわちドット重複率が50%であることが判る。一方、90:10のような偏りの大きい分配率に従って分配処理が行われたイエロードットでは、第1走査用2値データ(157)と第2走査用2値データ(158)で、ドットの記録を示すデータ「1」の数に偏りがあることがわかる。そして、同じ画素に重複して記録されるドットの数は極めて少ない(本例では0)。すなわちドット重複率が0%に近いことが判る。その後、これら2値データは、マスクパターンを利用した分割処理によって更に分割され、夫々のバッファに格納される。
【0058】
以上説明した本実施形態によれば、複数種類のインク夫々の明度に適したドット重複率を実現するために、インク色に応じた分配率に従って、異なる走査に対応した複数の多値データを生成し、夫々の多値データに対して2値化処理を実行する。これにより、記録位置ずれによる濃度変動に起因した濃度むらがより懸念される明度の低いドット重複率を、より明度の高い他色のドット重複率よりも高く設定することが出来る。つまり、インク色に応じてドット重複率を異ならせることにより、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【0059】
なお、以上の説明では、色変換部62と各色の画像データ分割部64−1〜4を別々に設け、分配部設定部が各色の画像データ分割部64−1〜34に分配率を指示する形態としたが、本実施形態はこのような構成に限定されなくてもよい。色変換処理と分割処理が同時に行われる構成を用意し、RGBの多値データが、C1、C2、M1、M2、Y1、Y2、K1およびK2の8プレーンに一括して変換されるようにしてもよい。このような構成は、例えば、分配率設定部は各色の分配率を色変換/分割処理に指示し、色変換/分割処理では指示された分配率に応じて複数のLUTが用意されているようにすれば実現できる。
【0060】
(第2の実施形態)
図18は、本実施形態における、2回の記録走査によって記録媒体の同一領域の画像を完成させる2パスのマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。本実施形態において、同じ符号で示した構成は第1の実施形態と等しいものとする。
【0061】
本実施形態では、分配率設定部60は設けておらず、各色の画像データ分割部64−1〜4は50:50の比で多値データを2分割する。そして、2分割後の夫々の多値データに対し階調補正処理71−1〜8を実行する。一般に、階調補正処理とは、入力される多値データに基づいて記録した記録媒体上の画像濃度が、当該多値データに線形的に対応付けられるようにするために、多値データに対し補正処理を行うものである。しかし、本例ではこのような役割のほかに、分配率の調整機能も階調補正処理部71−1〜8に持たせる。具体的には、階調補正処理71−1では、均等に2分割された多値データ65−1〜65−8の夫々に対し、階調補正設定部90が設定する補正量に従った1次補正を行う。このとき、階調補正設定部90が、同色インクの2つの多値データ(例えば65−1と65−2)に対し異なる補正量を設定すれば、第1実施形態の図3の構成と同等の効果を実現することが出来る。例えば、50:50に分割された2つ多値データに対し、それぞれ1.2、0.8の補正をかけるように階調補正設定部90が指示すれば、第1の実施形態において60:40の分配比で多値データを分割した場合と同じ効果が得られる。なお、本実施形態においても、上記実施形態と同様、色変換処理と分割処理とが同時に行われる構成を用意することも出来る。
【0062】
(第3の実施形態)
本実施形態では、シアン、マゼンタおよびブラックでは画像データ分割部によってドットット重複率を適切に調整しながらも、イエローではこのような特徴的な処理は行わない方法を説明する。
【0063】
図19は、イエローインクの複数のドット重複率について、1画素分の記録位置ずれが生じた場合の粒状感と濃度むらの関係を、図17と同様に示した図である。ここでは、ドット重複率を0%、20%、40%、60%、80%、および100%とした場合を夫々示している。図からもわかるように、イエローインクについては、ドット重複率を様々に変えたところで、濃度むらや粒状感は殆ど変化が無いことがわかる。すなわち、本発明が課題としている濃度むらや粒状感はイエローインクでは目立ちにくく、また本発明の特徴的な対策を施したところで、その効果も現れ難い。従って、本実施形態では、イエローインクについては、ドット重複率の調整を行うことなく、従来の方法で画像処理を行う。
【0064】
図20は、本実施形態における、2回の記録走査によって同一領域(例えば、画素領域)の画像を完成させるマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。同じ符号で示した処理は、第1の実施形態と等しい処理構成であることを示す。すなわち、シアン、マゼンタおよびブラックについては、画像データ分割部(第1の変換手段)において多値データの分割処理(第1の変換工程)が行われ、量子化処理部(第1の量子化手段)において量子化処理(第1の量子化工程)が行われる。以後の説明はイエロー(Y)のみについて行う。
【0065】
色変換部62によって生成されたイエロー用多値データ63−3(Y)は、第1走査と第2走査に分割されることなく、イエロー用の量子化処理部80(第2の量子化手段)にそのまま入力され、従来の一般的な誤差拡散法による量子化処理が施される。このような量子化処理(第2の量子化工程)の結果、個々の画素はイエロードットを記録する(1)或いは記録しない(0)の2値データにY´に変換される。その後、この画像データY´はIEEE1284バス3022を介してプリンタエンジン3004に送られる。
【0066】
プリンタエンジン3004において、イエロー用2値データ分割処理部81(第2の変換手段)では、予めメモリに記憶されているマスクを利用して4つのプレーンへの分割処理が実行される(第2の変換工程)。ここで各プレーンは、イエロー第1走査第1ノズル列用2値データ、イエロー第1走査第2ノズル列用2値データ、イエロー第2走査第1ノズル列用2値データ、イエロー第2走査第2ノズル列用2値データにそれぞれ相当する。ここで使用するマスクは、互いに補完関係のある4種類のマスクであり、これらマスクで分割された4つの2値データ82−1〜4は互いに重なることがない。従って、イエローにおいては、異なる走査および異なるノズル列によって記録されるドット同士が紙面上で重なる確率が抑えられることになる。
【0067】
マスクを利用した分割処理後、イエロー第1走査第1ノズル列用2値データ(82−1)は、イエロー第1走査第1ノズル列バッファ70−9に格納され、ノズル列53によって、第1走査で記録される。また、イエロー第1走査第2ノズル列用2値データ(82−2)は、イエロー第1走査第1ノズル列バッファ70−10に格納され、ノズル列56によって、第1走査で記録される。また、イエロー第2走査第1ノズル列用2値データ(82−3)は、イエロー第2走査第1ノズル列バッファ70−11に格納され、ノズル列53によって、第2走査で記録される。さらに、イエロー第2走査第2ノズル列用2値データ(82−4)は、イエロー第2走査第2ノズル列バッファ70−12に格納され、ノズル列56によって、第2走査で記録される。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、比較的濃度むらが目立ちやすい、ブラック、シアンおよびマゼンタについては、ドット重複率を調整することにより、濃度変動への耐性を強くした画像を得ることができる。その一方で、イエローについては、従来法と同様の記録法を採用することにより、濃度むらも粒状感も問題とならない通常の画像を出力することが出来る。また、このような本実施形態によれば、イエローのための量子化処理部を1つ分(80)だけ用意すればよいので、第1の実施形態に比べて、処理構成を単純にし、メモリ容量を抑え、処理時間を短縮することが可能となる。特に図1で説明したフォトダイレクトプリンタのように、低価格でメモリ容量が小さい環境の場合には、本実施形態の効果は大きい。
【0069】
なお、以上ではシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色インク構成において、イエローについてのみドット重複率の調整を行わない構成で説明したが、無論本実施形態はこのような構成に限定されるものではない。例えば、イエローのほかにシアンについても、濃度むらが許容できる範囲であることが予め判っていれば、ブラックとマゼンタについてのみドット重複率の調整を行う構成にしてもよい。また、上記4色のほかにライトシアンやライトマゼンタのような明度の高い淡色インク(フォトインク)を用い、これらインクの濃度むらがやはり目立たないような場合には、これらインクについてもドット重複率を調整しないようにすることも出来る。
【0070】
いずれにせよ、比較的濃度むらが問題となりインク色についてはドット重複率をインク色に応じて調整し、比較的濃度むらが問題となりにくいインク色については従来通りの記録方法を採用すれは、本実施形態の効果を得ることが出来る。すなわち、必要以上に処理負担を増加させることなく、各インク色についてドット重複率を適切な範囲に抑え、良好な画像を出力することが可能となる。なお、本実施形態においても、上記実施形態と同様、色変換処理と分割処理とが同時に行われる構成を用意することも出来る。
【0071】
(第4の実施形態)
上記実施形態では、各色の画像データ分割部64−1〜4における分配率を異ならせる、或いは階調補正処理部71−1〜4の補正値を異ならせることにより、量子化処理に入力される多値データに偏りを持たせ、ドット重複率を制御した。これに対し本実施形態では、生成された複数の多値濃度データを量子化する際の量子化処理に特徴を持たせることによって、ドット重複率を制御する。この際、量子化処理に入力される多値データは、均等であってもよいし、上記実施形態のように偏りを有していても良い。すなわち、量子化処理部のみの作用によってドット重複率を調整しても良いし、画像データ分割部や階調補正処理部、および量子化処理部の協働によってドット重複率を調整してもよい。
【0072】
図12は、本実施形態における2回の記録走査によって記録媒体の同一領域の画像を完成させるマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。ここでは、デジタルカメラ3012等の画像入力機器から入力された画像データに対し、図のブロック21〜26までの処理を図2で説明した制御部3000で行うものとする。
【0073】
外部機器から、多値画像データ入力部21によって、RGBの多値の画像データ(256値)が入力される。この入力画像データ(多値のRGBデータ)は、画素毎に、色変換部62によって、インク色(CMYK)に対応した4組の多値画像データ(多値濃度データ)に変換される。以上の処理は上記実施形態と同様である。
【0074】
画像データ分割部24−1〜24−4では、多値データ23−1〜4が、第1走査用多値データ(C1、M1、Y1、K1)と第2走査用多値データ(C2,M2,Y2,K2)に分割(変換処理)される。本実施形態において、各色分割部24−1〜4における分配率は、一律に50:50であればよい。但し、上記実施形態の様に、ドット重複率を制御する為に分配率を調整する方法も併用しても構わない。以下、ブラックの多値データ(K1,K2)を例に説明を進める。なお、本実施形態においても、上記実施形態と同様、色変換処理と分割処理とが同時に行われる構成であってもよい。
【0075】
ブラック用量子化処理部26−4では、ブラック第1走査用多値データ25−7(K1)とブラック第2走査用の多値データ25−8(K2)のそれぞれに対し2値化処理(量子化処理)が行われる。すなわち、各多値データは0または1のどちらかに変換(量子化)されて、ブラック第1走査用の2値データ(K1´)27−7およびブラック第2走査用の2値データ(K2´)27−8となる。この際、K1´とK2´の両方が1である画素にはブラックドットが重複して記録され、K1´とK2´の両方が0である画素にはブラックドットが記録されない。また、K1´とK2´のどちらか一方が1である画素には、ブラックドットが1つだけ記録される。他色の量子化処理部26−1〜3についても同様である。本実施形態では、このような各色の量子化処理部26−1〜4における量子化方法を異ならせることによって、各色のドット重複率を互いに異ならせる。以下、量子化処理部26−1〜4のそれぞれにおいて実行される処理工程を、ブラック(K)を例に図10のフローチャートを用いて説明する。
【0076】
図10において、量子化される2つの対象すなわち2つの入力多値データK1およびK2は、0〜255の値を有している。ここで、K1errおよびK2errは、既に量子化処理が終了した周辺の画素から発生した累積誤差値で、K1ttlおよびK2ttlは入力多値データと累積誤差値を合計した値である。更にフローチャートにおけるK1´およびK2´は、第1記録走査用と第2記録走査用の2値の量子化データを示す。
【0077】
本処理では、2値の量子化データであるK1´やK2´の値を決定する際に用いる閾値(量子化パラメータ)が、K1ttlやK2ttlの値に応じて異なるようになっている。そのためにK1ttlやK2ttlの値に応じて閾値が一義的に決まるようなテーブルが予め用意されている。ここで、K1´を決定する際にK1ttlと比較するための閾値をK1table[K2ttl]とし、K2´を決定する際にK2ttlと比較するための閾値をK2table[K1ttl]とする。K1table[K2ttl]はK2ttlの値によって定まる値であり、K2table[K1ttl]はK1ttlの値によって定まる値である。
【0078】
本処理が開始されると、まずS21において、入力多値データK1およびK2に累積誤差値K1errおよびK2errをそれぞれ加算することにより、K1ttlをおよびK2ttlを算出する。次いで、S22において、下記表2に示されるような閾値テーブルを参照することにより、S21で求めたK1ttlおよびK2ttlから、2つの閾値K1table[K2ttl]及びK2table[K1ttl]を取得する。閾値K1table[K2ttl]は、表2の閾値テーブルの「参照値」としてK2ttlを用いることによって一義的に求められる。閾値K2table[K1ttl]は、表2の閾値テーブルの「参照値」としてK1ttlを用いることによって一義的に求められる。
【0079】
続くS23〜S25においてK1´の値を決定し、S26〜S28においてK2´を決定する。具体的には、S23において、S21で算出したK1ttlがS22で取得した閾値K1table[K2ttl]以上であるか否かを判定する。K1ttlが閾値以上であると判定された場合にはK1´=1とし、この出力値(K1´=1)に応じて累積誤差値K1err(=K1ttl−255)を算出して更新する(S25)。一方、K1ttlが閾値未満であると判定された場合にはK1´=0とし、この出力値(K1´=0)に応じて累積誤差値K1err(=K1ttl)を算出して更新する(S24)。
【0080】
次いで、S26において、S21で算出したK2ttlがS22で取得した閾値K2table[K1ttl]以上であるか否かを判定する。K2ttlが閾値以上であると判定された場合にはK2´=1とし、この出力値(K1´=1)に応じて累積誤差値K2err(=K2ttl−255)を算出して更新する(S28)。一方、K2ttlが閾値未満であると判定された場合にはK2´=0とし、この出力値(K2´=0)に応じて累積誤差値K2err(=K2ttl)を算出して更新する(S27)。
【0081】
その後、S29において、上記のように更新された累積誤差値K1errおよびK2errを、図8(A)或いは(B)に示す誤差拡散マトリクスに従って、未だ量子化処理が終了していない周辺画素に拡散する。本実施形態では、累積誤差値K1errを周辺画素に拡散するために図8(A)に示す誤差拡散マトリクスを用い、累積誤差値K2errを周辺画素に拡散するために図8(B)に示す誤差拡散マトリクスを用いる。
【0082】
このように本実施形態では、第1走査に対応した第1の多値データ(K1ttl)に量子化処理を行うのに用いる閾値(量子化パラメータ)を、第2走査に対応した第2の多値データ(K2ttl)に基づいて決定している。同様に、第2走査に対応した第2の多値データ(K2ttl)に量子化処理を行うのに用いる閾値(量子化パラメータ)を、第1走査に対応した第1の多値データ(K1ttl)に基づいて決定している。つまり、2回の走査のうちの一方の走査に対応した多値データと他方の走査に対応した多値データの両方に基づいて、一方の走査に対応した多値データの量子化処理も、他方の走査に対応した多値データの量子化処理も実行する。これにより、例えば、一方の走査でドットが記録される画素には、他方の走査では同じサイズのドットが極力記録されないようにしたり、反対に積極的に記録したり出来るため、粒状感の悪化や濃度不足とバランスを取りながら、濃度むらを抑制することが出来る。
【0083】
図13(A)は、上記図10のフローチャートに従って、下記表2の閾値テーブルの図13(A)の欄に記述される閾値を用いて量子化処理(2値化処理)を行った結果を入力値(K1ttl及びK2ttl)と対応付けて説明するための図である。K1ttl及びK2ttlは共に0〜255の値を取り得、閾値テーブルの図13(A)の欄に示されるように閾値128を境に記録(1)及び非記録(0)が決定される。図中のポイント221は全くドットを記録しない領域(K1´=0且つK2´=0)と、2つのドットが重なる領域(K1´=1且つK2´=1)の境界点となる。
【0084】
図13(B)は、上記図10のフローチャートに従って下記表2の閾値テーブルの図13(B)の欄に記述される閾値を用いて量子化処理(2値化処理)を行った結果を、入力値(K1ttl及びK2ttl)と対応付けて説明するための図である。ポイント231は、全くドットを記録しない領域(K1´=0且つK2´=0)と1ドットのみを生ずる領域(K1´=1且つK2´=0、或はK1´=0且つK2´=1)との境界である。ポイント232は、2つのドットを重複して記録する領域(K1´=1且つK2´=1)と1ドットのみを生ずる領域(K1´=1且つK2´=0、或はK1´=0且つK2´=1)との境界である。ポイント231と232がある程度の距離を置いて離れていることにより、図13(A)の場合に比べ、どちらか一方のドットが記録される領域が増え、両方のドットが記録される領域が減少している。つまり、図13(B)の場合は、同図(A)の場合よりもドット重複率が低減され、粒状性を低く抑えるのに有利である。図13(A)の様にドット重複率が急峻に変化するポイントが存在すると、階調の僅かな変化によって濃度むらが発生する場合が有り得るが、図13(B)の場合には階調の変化に応じてドット重複率も滑らかに変化していくので、その様な濃度むらも起こり難い。
【0085】
このように、量子化処理を行う際の閾値は記録後のドット重複率に影響を与える。よって、インク色に応じてこれら閾値を異ならせることにより、インク色ごとにドット重複率を調整することが可能となる。例えば、図13(B)に示す量子化処理をシアン用の量子化処理26−1に採用することにより、シアンの低濃度領域で粒状感を低く抑えることができる。また、例えば、図13(E)に示す量子化処理をブラック用の量子化処理26−4に採用することにより、ブラックの中濃度〜高濃度領域で濃度変動を低く抑えることができる。反対に、図13(B)に示す量子化処理をブラック用の量子化処理26−4に採用することにより、ブラックの高濃度領域で濃度不足を回避することができる。また、例えば、図13(E)に示す量子化処理をシアン用の量子化処理26−1に採用することによりシアンの低〜中濃度領域で濃度変動を低く抑えることができる。
【0086】
以下に、異なるドット重複率を実現するための幾つかの閾値例を図13(C)〜(G)を用いて説明する。本実施形態では、このような様々な量子化処理の中から最も適切なドット重複率が得られる量子化処理を、各色の量子化処理26−1〜4のそれぞれに選択的に採用すればよい。なお、図13(C)〜(G)は、上述した図13(A)及び(B)と同様、下記表2に示される閾値テーブルに記述される閾値を用いて量子化した結果(K1´及びK2´)と入力値(K1ttl及びK2ttl)との対応関係を示した図である。
【0087】
図13(C)は、ドット重複率を図13(A)と同図(B)の間の値にするようにした場合を示す図である。ポイント241は図13(A)のポイント221と同図(B)のポイント231の中間点に定められている。また、ポイント242は図13(A)のポイント221と同図(B)のポイント232の中間点に定められている。
【0088】
図13(D)は、同図(B)の場合よりもドット重複率を更に低減するようにした図である。ポイント251は図13(A)のポイント221と同図(B)のポイント231を3:2に外分する点に定められている。また、ポイント252は図13(A)のポイント221と同図(B)のポイント232を3:2に外分する点に定められている。
【0089】
図13(E)は、同図(A)の場合よりもドット重複率を増加させる場合を示している。図13(E)によれば、全くドットを記録しない領域(K1´=0且つK2´=0)から2つのドットを重複して記録する領域(K1´=1且つK2´=1)への遷移が生じ易くなり、ドット重複率を増加させる事が出来る。図13(F)は、ドット重複率を同図(A)と(E)の間の値にするようにした場合を示す図である。図13(G)は同図(E)の場合よりも更にドット重複率を増加させるようにした場合を示している。
【0090】
次に、下記表2に示される閾値テーブルを用いた量子化処理の方法について具体的に説明する。表2は、図13(A)〜(G)に示した処理結果を実現するために、図10で説明したフローチャートのS22において閾値を取得するための閾値テーブルである。
【0091】
ここでは、入力値(K1ttl、K2ttl)が(100、120)で、且つ、閾値テーブルの図13(B)の欄に記述される閾値を用いる場合について説明する。まず、図14のS22では、表2に示される閾値テーブルと、K2ttl(参照値)に基づいて、閾値K1table[K2ttl]を求める。参照値(K2ttl)が「120」であれば、閾値K1table[K2ttl]は「120」となる。同様に、閾値テーブルとK1ttl(参照値)に基づいて、閾値K2table[K1ttl]を求める。参照値(K1ttl)が「100」であれば、閾値K2table[K1ttl]は「101」となる。次いで、図10のS23において、K1ttlと閾値K1table[K2ttl]を比較判定し、この場合、K1ttl(=100)<閾値K1table[K2ttl](=120)であるため、K1´=0(S24)となる。同様に、図10のS26において、K2ttlと閾値K2table[K1ttl]を比較判定し、この場合、K2ttl(=120)≧閾値K2table[K1ttl](=101)であるため、K2´=1(S28)となる。この結果、図13(B)に示されるように、(K1ttl、K2ttl)=(100、120)の場合には、(K1´、K2´)=(0、1)となる。
【0092】
以上のような量子化処理によれば、2回の走査に対応した多値データの両方に基づいて、2回の走査夫々に対応した多値データを量子化することで、2回の走査間でのドット重複率を制御している。これにより、一方の走査で記録されるドットと他方の走査で記録されるドットの重複率をインク色に応じて好適な範囲内に収めることが可能となる。すなわち、インク色に応じてドット重複率を調整することにより、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【0093】
なお、表2では参照値を4おきに示しているが、実際のテーブルにはこの間の値についても(例えば、1〜3)閾値が用意されている。但し、参照値については表2に示したように飛び飛びの値が用意され、その他の値の変換については値の近い参照値から補間処理して求めてもよい。
【0094】
【表2】
【0095】
再び、図12に戻る。ブラック用量子化処理部26−4によって、ブラックに適したドット重複率を実現する2値データK1´およびK2´が得られると、これらデータはそれぞれ、IEEE1284バス3022を介して図3で示したプリンタエンジン3004に送られる。他のインク色についても同様である。以後の処理はプリンタエンジン3004で実行される。
【0096】
プリンタエンジン3004において、2値データK1´(27−7)は、ブラック第1走査2値データ分割処理部28−7に転送される。ブラック第1走査2値データ分割処理部28−7では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。また、2値データK2´(27−8)は、ブラック第2走査2値データ分割処理部28−8に転送される。ブラック第2走査2値データ分割処理部28−8では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。上記分割処理後、ブラック第1走査第1ノズル列2値データ(29−13)は、ブラック第1走査第1ノズル列用バッファ30−13に格納され、ノズル列54によって、第1走査で記録される。また、ブラック第1走査第2ノズル列2値データ(29−14)は、ブラック第1走査第2ノズル列用バッファ30−14に格納され、ノズル列55によって、第1走査で記録される。さらに、ブラック第2走査第1ノズル列2値データ(29−15)は、ブラック第2走査第1ノズル列用バッファ30−15に格納され、ノズル列54によって、第2走査で記録される。さらにまた、ブラック第2走査第2ノズル列2値データ(29−16)は、ブラック第2走査第2ノズル列用バッファ30−16に格納され、ノズル列55によって、第2走査で記録される。他のインク色についても同様である。
【0097】
以上説明した処理によれば、図13(A)〜(G)で示す複数の閾値テーブルの中から適切な閾値テーブルを各インク色で独立に選択し、夫々に適したドット重複率を実現することが出来る。その結果、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【0098】
ところで、量子化の方法は、必ずしも上述したような構成、すなわち閾値と比較することによって記録(1)と非記録(0)が決定される構成でなくてもよい。例えば、2プレーンの場合には、K1ttlおよびK2ttlの両方を参照値とすることによってK1´やK2´が 一義的に記録(1)または非記録(0)に変換されるようなテーブルを用意することも出来る。テーブルの詳細は省略するが、このような多次元のテーブルを利用する場合には、よりシンプルな制御で、且つ、ドット重複率をより自由度の高い状態で制御出来るというメリットが得られる。一方、表2に示したような1次元の閾値テーブルを利用する場合には、より少ないメモリ容量でテーブルを作成することが出来る。また、K1ttlおよびK2ttlの和を参照値とした1次元の閾値テーブルを利用することも出来る。更には、全くテーブルを用いずに分岐と演算のみで2値化(量子化)処理を行うことも可能である。この場合、演算に用いられる何らかの係数が、所望のドット重複率を実現する値に設定されていれば、本実施例の効果を得ることが可能となる。このような場合、上述したテーブルを用意する場合に比べて、更にメモリ容量を小さくする事が出来る。
【0099】
(第5の実施形態)
近年では、主な画像処理は記録解像度よりも低い(粗い)解像度で行い、256階調の多値の画像データをより低い階調のL(Lは3以上)値の多値データに変換した状態で、記録装置のプリンタエンジンに送信する形態が有用されている。この場合、プリンタエンジンでは、受信した低い階調のL値の多値データを、記録解像度に対応した2値データに変換するためのドットパターン(インデックスパターン)をメモリに備えている。以下では、L値化として3値化の例を説明するが、Lの値は3以上の様々な値を取り得ることはいうまでもない。
【0100】
図15は、本実施形態における、2回の記録走査によって同一領域(例えば、画素領域)の画像を完成させるマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。多値画像データ入力部41から各色の画像データ分割部44−1〜4までの処理は、図3や図12と等しい処理である。これ以降の処理は、各色について独立且つ並行に行われるので、これ以後の説明はブラック(K)のみについて行う。なお、本実施形態においても、上記実施形態と同様、色変換処理と分割処理とが同時に行われる構成であってもよい。
【0101】
ブラック用多値データ(K)43−4は、ブラック用画像データ分割部44−4によって、ブラックの第1走査用の多値データ(K1)45−7と第2走査用の多値データ(K2)45−8へデータ分割(変換処理)される。この際、本実施形態では、第1の実施形態や第3実施形態のように、第1走査と第2走査とで分配率に所定の偏りを持たせた状態で多値データを分配(生成)してもよいし、均等に分配(生成)してもよい。
【0102】
ブラック第1走査用多値データ(K1)とブラック第2走査用多値データ(K2)は、ブラック用量子化処理部46−4に入力され、3値のブラック第1走査用量子化データ(K1´)とブラック第2走査用量子化データ(K2´)に変換される。具体的には、第4の実施形態の量子化処理と同様、まず注目画素の2つの多値データK1およびK2に周辺の誤差を累積したK1ttlおよびK2ttlを得る。その後、第1走査用の多値データK1を量子化する際に用いる閾値を、K2ttlに基づいて決定し、第2走査用の多値データK2を量子化する際に用いる閾値を、K1ttlに基づいて決定する。本実施形態の場合、3値に量子化するため、2つの閾値すなわち第1の閾値とこれよりも大きな第2の閾値を用意する。そして、注目画素における入力多値データと累積誤差値を合計した値(合計値:K1ttlやK2ttl)と第1および第2の閾値との大小関係によって、出力値を決定する。すなわち、合計値が第2の閾値以上の場合には出力値は「2」となり、合計値が第一閾値以上で且つ第二閾値未満の場合には出力値は「1」となり、合計値が第1の閾値未満の場合には出力値は「0」となる。
【0103】
このように、K2ttlに基づいて決定された閾値に基づいて、第1走査用の多値データ(K1)を量子化して第1走査用の量子化データK1´を得る。同様に、K1ttlに基づいて決定された閾値を用いて、第2走査用の多値データ(K2)を量子化することで第2走査用の量子化データK2´を得る。第1の閾値と第2の閾値の決定方法としては、2値化の例と同様、第1の閾値テーブルと第2の閾値テーブルを同一の参照値を用いてそれぞれ決定すればよい。以上の処理は、他色の量子化処理部46−1〜3についても同様である。
【0104】
図14は、量子化処理部46−4における量子化(3値化)処理の結果(K1及びK2)と入力値(K1ttl及びK2ttl)との対応関係を、図13と同様に示す図である。図において、K1´とK2´の値は、1回目の記録走査及び2回目の記録走査の夫々で注目画素に記録されるドット数を示している。ここでは、K2ttlを量子化するために用いる第1の閾値を太点線で示し、第2の閾値を太破線で示している。
【0105】
例えば、K1´とK2´の両方が2である注目画素には、1回目の記録走査と2回目の記録走査で2個ずつドットが記録される。また、K1´が1で且つK2´が2である注目画素には、1回目の記録走査で1個ドットが記録され且つ2回目の記録走査で2個ドットが記録される。また、K1´とK2´の両方が0である注目画素にはドットが記録されない。
【0106】
ここでは図14の例しか示していないが、本実施形態においても、上述したような第1の閾値テーブルと第2の閾値テーブルをインク色毎に独立に用意する。これにより、各インク色で量子化後の結果を異ならせ、各インク色でドット重複率をそれぞれ適切に調整することが出来る。
【0107】
再び図15を参照する。ブラック用量子化処理部46−4において量子化された3値の画像データ(量子化データ)K1´およびK2´は、プリンタエンジン3004に送信され、ブラック用インデックス展開処理部48−4においてインデックス処理が行われる。他のインク色についても同様である。インデックス展開処理は、L(Lは3以上の整数)値の量子化データを2値化するものであり、量子化処理の一部として捉えることができる。
【0108】
具体的には、ブラック用インデックス展開処理部48−4によって、3値の画像データK1´は第1走査用の2値データK1″(49−7)に変換され、ブラック第1走査2値データ分割処理部50−7に転送される。また、ブラック用インデックス展開処理部48−4によって、3値の画像データK2´は第2走査用の2値データK2″(49−8)に変換され、ブラック第2走査2値データ分割処理部50−8に転送される。インデックス展開処理の詳細は後述する。
【0109】
シアン第1走査2値データ分割処理部50−7では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。シアン第1走査2値データ分割処理部50−7では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。
【0110】
上記分割処理後、ブラック第1走査第1ノズル列2値データ(51−13)は、ブラック第1走査第1ノズル列用バッファ52−13に格納され、ノズル列54によって第1走査で記録される。また、ブラック第1走査第2ノズル列2値データ(51−14)は、ブラック第1走査第2ノズル列用バッファ52−14に格納され、ノズル列55によって第1走査で記録される。また、ブラック第2走査第1ノズル列2値データ(51−15)は、ブラック第2走査第1ノズル列用バッファ52−15に格納され、ノズル列54によって第2走査で記録される。さらに、ブラック第2走査第2ノズル列2値データ(51−16)は、ブラック第2走査第2ノズル列用バッファ52−16に格納され、ノズル列55によって第2走査で記録される。
【0111】
図16は、本実施形態におけるインデックス展開処理およびインデックスパターン(ドットパターン)の例を説明するための図である。本図では、いずれのインク色であれ、2値化される2つの対象すなわち2つの入力多値データは、K1´およびK2´と示している。すなわち、K1´およびK2´は、シアンであればC1´およびC2´に相当し、マゼンタであればM1´およびM2´に相当する。
【0112】
本実施形態のインデックス展開処理部48−1〜4では、1画素に対応する3値の画像データ(K1´、K2´)が、2サブ画素×2サブ画素に対応する2値の画像データ(ドットパターン)に変換される。詳しくは、0〜2のいずれかの値を有する3値の画像データK1´は、第1走査用のドットパターンに変換される。同様に、0〜2のいずれかの値を有する3値の画像データK2´は、第2走査用のドットパターンに変換される。そして、これら第1走査用のドットパターンと第2走査用のドットパターンを重ね合わせたパターン(図中の最も右側に示される「記録媒体上でのドットパターン」)が画素に記録されることになる。なお、第1および第2の走査用のドットパターンに関して、斜線部分はサブ画素へのドットの記録を示すデータ(「1」のデータ)を意味しており、白部分はサブ画素へのドットの非記録を示すデータ(「0」のデータ)を意味している。また、記録媒体上でのドットパターンに関し、黒部分はサブ画素に2ドット記録されることを意味し、斜線部分はサブ画素に1ドット記録されることを意味し、白部分はサブ画素にドットが記録されないことを意味している。
【0113】
ここで、画素に対応する3値以上の画像データをm×nのサブ画素に対応する2値のドットパターンに変換するような画像処理を採用した場合の、ドット重複率について図16を用いて説明する。このような場合の「ドット重複率」とは、複数のサブ画素で構成される1画素領域に記録されるべき総ドット数のうち、異なる走査(あるいは異なる記録素子群)で画素領域内の同じサブ画素位置に重複して記録されるドット数の割合を指す。具体的に説明すると、K1´とK2´の両方が0の場合、第1記録走査でも第2記録走査でもドットは記録されずドット重複率は0である。K1´とK2´のどちらか一方が0の場合、一方の走査でだけドットが記録されるので、ドット重複率は0%のままである。K1´とK2´の両方が1の場合、2サブ画素×2サブ画素の左上のサブ画素に2つのドットが重複して記録されるため、ドット重複率は100%(=2÷2×100)となる。また、どちらか一方が1で他方が2の場合、2サブ画素×2サブ画素のうち左下のサブ画素に2つのドットが重複して記録され、左上のサブ画素に1ドットだけ記録されるため、ドット重複率は67%(=2÷3×100)となる。更に、K1´とK2´の両方が2の場合、サブ画素でドットが重ならないのでドット重複率は0%となる。つまり、図16に示した様な各レベルに1対1で対応するインデックスパターン(ドットパターン)を予め用意しておけば、図14に示した量子化処理でK1´とK2´の組み合わせが決まることにより、画素領域のドットの重複率も一義的に定まる。
【0114】
次に、本実施形態におけるドット重複率と濃度領域との関係について図16を用いて説明する。図16の例では、1画素に最大4ドットまで記録可能となっている。従って、記録率100%とは、1画素内に4ドットが記録された状態をいう。図16の例では、K1´=0且つK2´=0の場合は記録率0%、K1´=1(or0)でK2´=0(or1)の場合は記録率25%、K1´=1且つK2´=1の場合は記録率50%となっている。また、K1´=1(or2)でK2´=2(or1)の場合は記録率75%、K1´=2でK2´=2の場合は記録率100%となっている。そして、記録率0%および25%の低濃度領域ではドット重複率が0%となっており、記録率50%の中濃度領域ではドット重複率が100%となっており、記録率75%および100%の高濃度領域では夫々ドット重複率が67%および0%となっている。
【0115】
このように、インクデックスパターンでは、予め用意しておく第1走査用ドットパターンと第2走査用ドットパターンにおける記録ドットの位置や数を異ならせることにより、各階調における重複率を調整することが出来る。更に、このような第1走査用ドットパターンと第2走査用ドットパターンを、各インク色のインデックス展開処理部48−1〜4で別々に用意することにより、各インク色のドット重複率を異ならせることが出来る。本実施形態では、量子化処理部(46−1〜4)における閾値テーブルを異ならせることでも各インク色のドット重複率を調整することが出来るが、この様なインデックスパターンを異ならせることでもドット重複率を調整することが出来る。例えばブラックについては、図16のように、濃度むらが懸念される中レベル(K1´=K2´=1)でのドット重複率を高く設定し、濃度不足が懸念される高レベル(K1´=K2´=2)でのドット重複率を低く設定することが出来る。同時に、シアンについては、図16とは異なるインデックスパターンを用いることによって、高レベル(C1´=C2´=2)でのドット重複率を高くし、中レベル(C1´=C2´=1)でのドット重複率を低くすることが出来る。つまり、複数の異なるインデックスパターンを用意することによって、インク色に応じた適切なドット重複率を実現することが出来る。
【0116】
以上説明した様に本実施形態によれば、量子化処理部によって低階調化された後の多値データを、記録解像度に対応した2値データに変換する際に用いるドットパターンを、インク色毎に別々に用意する。これにより、インク色それぞれについて、階調レベルごとに適切なドット重複率を実現することが可能となり、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【0117】
(その他の実施形態)
以上説明した実施形態では、図11(A)に示したように、1つのインク色に対し、2つのノズル列を有する構成の記録ヘッドを例に説明してきたが、本発明で使用可能な記録ヘッドはこれに限らない。図11(B)のように、各色について1列ずつのノズル列が配備される構成の記録ヘッドであっても構わない。この場合には、上記実施形態において、マスク処理以降の処理を持たない構成となるが、このような構成であっても、第1の主走査と第2の主走査におけるドット重複率を調整するという本発明の効果を得ることは出来る。
【0118】
また、上記実施形態では、CMYKの4色のインクを用いる形態について説明したが、使用可能なインク色の種類数はこれに限られるものではない。図11(C)に示すように、上記4色の他に淡シアン(Lc)や淡マゼンタインク(Lm)を加えたり、レッドインク(R)やブルーインク(B)等の特色インクを加えたりしてもよい。反対に、本発明は単色インクが使用されるモノカラーモードにも適用可能である。更には、本発明は、カラープリンタのみならず、モノクロプリンタにも適用可能である。また、複数種類のインク(例えばCMYKの4色のインク)全てに上記制御を行うほか、少なくとも2種類のインクのみに上記実施形態の制御を適用するようにしてもよい。 また、上記本実施形態では、2回の相対移動で同一領域(例えば、画素領域)の記録を完成させる、いわゆる2パス記録の例を説明したが、本発明は2パス記録に限定されるものではない。本発明は、3パス以上のMパス記録(Mは2以上の整数)について広く適用可能である。N種類のインクでMパス記録を行う場合、まず、入力画像データ(RGB)から、インク色別のN個の多値濃度データを生成する。その後、個々の多値データそれぞれからM回の相対移動に対応したM組の多値データを生成する。次いで、これらN×M組の多値濃度データを夫々量子化してN個のインク色とM回の相対移動に対応したN×M組の量子化データを生成する。その後、上記N×M組の量子化データに従って、N個のドットサイズそれぞれによるM回の相対移動中に、同一領域の画像を記録すればよい。Mパス記録で、第4や第5の実施形態で説明したドット重複率の制御を行う場合、閾値テーブルは図13や図14で示した2次元ではなく、K1ttl〜KMttlを座標軸とするM次元で示されることになる。
【0119】
また、3パス以上のMパス記録モードでは、M組の多値データを生成することは必須ではなく、Mよりも少ないP(Pは2以上の整数)組の多値データを生成する形態であってもよい。この場合、まずMよりも少ないP組の画像データを生成し、その後P組の濃度データを量子化してP組の量子化データを得る。その後、P組の量子化データの内の少なくとも1組の量子化データを分割してMパス分のM組の量子化データを得ることが出来る。
【0120】
更にまた、上記実施形態では、各記録走査の記録位置ずれの方が2つのノズル列(54、55)の記録位置ずれよりも大きいことを前提に、記録走査間のドット重複率を調整する内容で説明した。しかし、ノズル列間の記録位置ずれの方が記録走査間の記録位置ずれよりも大きい場合には、上記実施形態における画像データの2回の分割工程を逆転させることも出来る。すなわち、各色の画像データ分割部で各ノズル列に対応して多値データを分割してから、マスク処理部において量子化後の2値データを各記録走査に対応して分割することも出来る。このような構成は、例えば図11(A)で示した記録ヘッドを用いながら1パス記録を行う場合にも有効である。
【0121】
以上の実施形態では、量子化までの画像処理を制御部3000で、それ以降の処理をプリンタエンジン3004で実行する構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものでもない。上述したような一連の処理が実行されるのであれば、ハードウエア、ソフトウエアを問わず、いずれの処理手段によって実行される形態であっても本発明の範疇である。
【0122】
以上の実施形態では、画像処理機能を有する制御部3000を備えた記録装置(画像形成装置)を例に、本発明の特徴的な画像処理を実行する画像処理装置を説明してきたが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。本発明の特徴的な画像処理が、プリンタドライバがインストールされたホスト装置(例えば、図3のPC3010)で実行され、量子化処理後あるいは分割処理後の画像データが記録装置に入力されるような構成であっても構わない。このような場合、記録装置に接続されるホスト装置(外部機器)が、本発明の画像処理装置に該当する。
【0123】
本発明は、上述した画像処理の機能を実現するためのコンピュータ可読プログラムを構成するプログラムコード、又はそれを記憶した記憶媒体によっても実現される。この場合、ホスト装置や画像形成装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が上記プログラムコードを読出し実行することによって上述した画像処理が実現されることになる。この様に、上述した画像処理をコンピュータに実行させるための、コンピュータにより読み取り可能なプログラム、あるいは、そのプログラムを記憶した記憶媒体も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
61 多値画像データ入力部
62 色変換部
64 画像データ分割部
66 量子化処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の同一領域に対する記録手段の複数回の相対移動或は複数の記録素子群の相対移動によって同一領域に画像を記録するために、同一領域に対応する多値画像データを処理する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において記録される画像の濃度むらやスジを軽減するための技術として、記録媒体の同一領域に対する記録ヘッドの複数回の記録走査によって上記同一領域に記録すべき画像を完成させるマルチパス記録方式が知られている。しかしながら、マルチパス記録方式を採用したとしても、記録媒体の搬送量の変動などによって、先行する記録走査でのドット記録位置と後続の記録走査でのドット記録位置にズレが生じる場合がある。このようなズレはドット被覆率の変動を招き、これが原因で濃度変動や濃度むら等の画像弊害が生じる。
【0003】
このような画像弊害を軽減するための技術として、2値化前の多値の画像データの段階で画像データを異なる記録走査に対応するように分割し、分割後の多値画像データを夫々独立(無相関)に2値化する方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。図9(A)は、特許文献1の方法によって処理された画像データに基づいて記録されるドットの配置状態を示した図である。図において、黒丸1501は第1の記録走査で記録されるドット、白丸1502は第2の記録走査で記録されるドット、グレーの丸1503は第1の記録走査と第2の記録走査によって重ねて記録されるドットである。
【0004】
このようなドット配置によれば、第1の記録走査で記録されるドット群と第2の記録走査で記録されるドット群が、主走査方向または副走査方向にずれたとしても、記録媒体に対するドットの被覆率は然程変動しない。その理由は、第1の記録走査で記録されるドットと第2の記録走査で記録されるドットが重なる部分も新たに現れるが、本来重ねて記録されるべき2つのドットが重ならなくなる部分も存在するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−103088号公報
【特許文献2】特開2001−150700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法を用いて積極的にドットを重ね合わせると、粒状感や濃度不足を悪化させる場合がある。例えば、粒状感が目立ちやすいハイライト部分では、図9(B)に示すように、数少ないドット(1701、1702)が互いに一定の距離を保ちながら均等に分散しているのが好ましい。しかし、特許文献1、2に記載の構成では、図9(C)に示すように、ドットが重なる箇所(1603)や隣接して記録される箇所(1601、1602)が所々発生してしまうので、これらドットの塊が目立って粒状感を悪化させてしまうのである。また、最高濃度値が重視される高濃度領域では、あまり多くのドットが重ね合うと白紙領域が露出し、これが濃度不足を招致してしまう。よって、ドットが重なる箇所の割合(ドット重複率)は、出力画像の濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが弊害とならない程度(範囲)に調整することが望まれる。
【0007】
特に、明度の異なる複数種類のインクを用いて画像を記録する場合には、インクそれぞれについて濃度むらや粒状感の目立ち方、また濃度不足の程度は異なる。つまり、濃度むらの抑制、粒状感の低減、濃度不足回避のいずれをどの程度優先すべきかが、インクの種類に応じて異なる。従って、複数色のインクを使用する場合には、インク色に応じてドット重複率を適切に調整することが望まれる。
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている方法では、濃度むらの要因については記載されているが、濃度むらの程度と濃度むら低減処理時の粒状感増加の程度については考慮されていない。その為、一律の濃度むら低減処理が行われ、場合によっては本来存在した濃度むらによる画像劣化よりも、濃度むら低減処理による粒状感増加による画像劣化の方が甚だしいことがあった。さらに、特許文献1、2に開示されている方法では、インクによって濃度むらの程度と濃度むら低減処理時の粒状感増加の程度が異なることについては考慮されていない。その為、インクによっては濃度むらと粒状感のバランスがとれないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものである。よって、目的とするところは、明度の異なる複数種類のインクを用いて画像を形成する場合に、全ての色再現範囲において、濃度むらが抑制され、粒状感や濃度不足が弊害とならない画像を出力することが可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、複数種類のインクを用いてドットを記録するための記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行うために、当該画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、前記複数回の相対移動によって前記画素領域に記録されるべき総ドット数に対する、前記複数回の相対移動によって前記画素領域内の同じ位置に重複して記録されるべきドット数の割合が、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように、前記入力画像データを処理するための処理手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、複数種類のインクを記録するための記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行うために、当該画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、前記複数回の相対移動によって前記画素領域に記録されるべき総ドット数に対する、前記複数回の相対移動によって前記画素領域内の同じ位置に重複して記録されるべきドット数の割合が、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように、前記入力画像データを処理するための処理工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数回の相対移動(あるいは複数の記録素子群)により記録されるドットの重複率を、インク色に応じて適切に制御して画像を出力することが可能となる。これにより、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)は本発明の画像処理として機能するフォトダイレクトプリンタ装置の概観斜視図であり、(B)はプリンタエンジン部の記録部の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明実施形態に係るPDプリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図4】(A)〜(H)は、ドット重複率を説明するための図である。
【図5】本発明で適用可能なマスクの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における分配率とドット重複率の関係を示す図である。
【図7】画像処理の具体例をイメージ化した図である。
【図8】(A)及び(B)は、誤差拡散マトリクスの例を示す図である。
【図9】(A)〜(C)は、ドットの分散状態を説明するための図である。
【図10】量子化処理の工程を説明する為のフローチャートである。
【図11】(A)〜(C)は、記録ヘッドの吐出口配列状態を説明する為の図である。
【図12】第4実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図13】(A)〜(H)は、量子化処理の結果と入力値と対応関係を示す図である。
【図14】量子化(3値化)処理の結果と入力値との対応関係を示す図である。
【図15】第5実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図16】インデックスパターンとドット重複率の関係を説明するための図である。
【図17】記録位置ずれが生じた場合の粒状感と濃度むらの関係を示した図である。
【図18】第2実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【図19】イエローインクで記録位置ずれが生じた場合の粒状感と濃度むらの関係を示した図である。
【図20】第3の実施形態における画像処理を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で説明する実施形態は、インクジェット記録装置を例にしているが、本発明は、インクジェット記録装置に限られるものではない。ドットを記録するための記録手段と記録媒体との相対移動中に、記録手段によって記録媒体に画像を記録する方式の装置であれば、インクジェット記録装置以外の装置でも適用可能である。
【0015】
また、記録手段と記録媒体との「相対移動(或は相対走査)」とは、記録媒体に対して記録手段が相対的に移動(走査)する動作、或は、記録手段に対して記録媒体が相対的に移動(搬送)する動作を指す。なお、記録手段とは、1つ以上の記録素子群(ノズル列)或は1つ以上の記録ヘッドを指す。
【0016】
以下で説明する画像処理装置では、記録媒体の同一領域(所定領域)に対する記録手段の複数回の相対移動或は複数の記録素子群の相対移動によって上記同一領域に画像を記録するためのデータ処理を行う。ここで、「同一領域(所定領域)」とは、ミクロ的には「1つの画素領域」を指し、マクロ的には「1回の相対移動で記録可能な領域」を指す。「画素領域(単に「画素」と呼ぶ場合もある)」とは、多値画像データによって階調表現可能な最小単位の領域を指す。一方、「1回の相対移動で記録可能な領域」とは、1回の相対移動中に記録手段が通過する記録媒体上の領域、或はこの領域よりも小なる領域(例えば、1ラスター領域)を指す。
【0017】
<記録装置の概要説明>
図1(A)は、本発明の画像処理として機能するフォトダイレクトプリンタ装置(以下、PDプリンタ)1000の概観斜視図である。PDプリンタ1000は、ホストコンピュータ(PC)からデータを受信して印刷する機能、メモリカード等の記憶媒体に記憶されている画像を直接読取って印刷する機能、またデジタルカメラやPDA等からの画像を受信して印刷する機能を有している。
【0018】
図において、1004は記録済みの用紙を積載可能な排出トレイであり、1003は、本体内部に収納されている記録ヘッドカートリッジ或いはインクタンク等の交換を行う際に、ユーザが開閉することが可能なアクセスカバーである。上ケース1002に設けられた操作パネル1010には、印刷に関する条件(例えば、記録媒体の種類、画像品位等)を各種設定するためのメニュー項目が表示され、ユーザは出力する画像の種類や用途に応じてこれら項目を設定することが出来る。1007は記録媒体を装置本体内へと自動的に給送する自動給送部、1009はメモリカードを装着可能なアダプタが挿入されるカードスロット、1012はデジタルカメラを接続するためのUSB端子である。PD装置1000の後面には、PCを接続するためのUSBコネクタが設けられている。
【0019】
<制御部電気仕様概要>
図2は本発明の実施の形態に係るPDプリンタ1000の制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。図において、3000は制御部(制御基板)を示し、3001は画像処理ASIC(専用カスタムLSI)を示している。3002はDSP(デジタル信号処理プロセッサ)で、内部にCPUを有し、後述する各種制御処理及び、各種画像処理等を担当している。3003はメモリで、DSP3002のCPUの制御プログラムを記憶するプログラムメモリ3003a、及び実行時のプログラムを記憶するRAMエリア、画像データなどを記憶するワークメモリとして機能するメモリエリアを有している。3004はプリンタエンジンで、ここでは、複数色のカラーインクを用いてカラー画像を印刷するインクジェットプリンタのプリンタエンジンが搭載されている。3005はデジタルカメラ(DSC)3012を接続するためのポートとしてのUSBコネクタである。3006はビューワ1011を接続するためのコネクタである。3008はUSBハブ(USB HUB)で、PDプリンタ1000がPC3010からの画像データに基づいて印刷を行う際には、PC3010からのデータをそのままスルーし、USB3021を介してプリンタエンジン3004に出力する。これにより、接続されているPC3010は、プリンタエンジン3004と直接、データや信号のやり取りを行って印刷を実行することができる(一般的なPCプリンタとして機能する)。3009は電源コネクタで、電源3019により、商用ACから変換された直流電圧を入力している。PC3010は一般的なパーソナルコンピュータ、3011は前述したメモリカード(PCカード)、3012はデジタルカメラ(DSC)である。なお、この制御部3000とプリンタエンジン3004との間の信号のやり取りは、前述したUSB3021又はIEEE1284バス3022を介して行われる。
【0020】
<記録部の概要>
図1(B)は、本発明の実施の形態に係るシリアル型のインクジェット記録装置のプリンタエンジン部の記録部の概要を示す斜視図である。記録媒体Pは、自動給送部1007によって搬送経路上に配置された搬送ローラ5001とこれに従動するピンチローラ5002とのニップ部に給送される。その後、記録媒体Pは、搬送ローラ5001の回転によって、プラテン5003上に案内、支持されながら図中矢印A方向(副走査方向)に搬送される。ピンチローラ5002は、不図示のバネ等の押圧手段により、搬送ローラ5001に対して弾性的に付勢されている。これら搬送ローラ5001及びピンチローラ5002が記録媒体搬送方向の上流側にある第1搬送手段の構成要素をなす。
【0021】
プラテン5003は、インクジェット形態の記録ヘッド5004の吐出口が形成された面(吐出面)と対向する記録位置に設けられ、記録媒体Pの裏面を支持することで、記録媒体Pの表面と吐出面との距離を一定の距離に維持する。プラテン5003上に搬送されて記録が行われた記録媒体Pは、回転する排出ローラ5005とこれに従動する回転体である拍車5006との間に挟まれてA方向に搬送され、プラテン5003から排紙トレイ1004に排出される。排出ローラ5005及び拍車5006が記録媒体搬送方向の下流側にある第2搬送手段の構成要素をなす。
【0022】
記録ヘッド5004は、その吐出口面をプラテン5003ないし記録媒体Pに対向させた姿勢で、キャリッジ5008に着脱可能に搭載されている。キャリッジ5008は、キャリッジモータE0001の駆動力により2本のガイドレール5009及び5010に沿って往復移動され、その移動の過程で記録ヘッド5004は記録信号に応じたインク吐出動作を実行する。キャリッジ5008が移動する方向は、記録媒体が搬送される方向(矢印A方向)と交差する方向であり、主走査方向と呼ばれる。これに対し、記録媒体搬送方向は副走査方向と呼ばれている。キャリッジ5008及び記録ヘッド5004の主走査(記録を伴う移動)と、記録媒体の搬送(副走査)とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに対する記録が行われる。
【0023】
図11(A)は、記録ヘッド5004を吐出口形成面から観察した場合の概略図である。図中、51および58は第1および第2シアンノズル列(記録素子群)であり、52および57は第1および第2マゼンタノズル列である。53および56は第1および第2イエローノズル列であり、54および55は第1および第2ブラックノズル列である。各ノズル列の副走査方向における幅はdであり、1回の走査によってdの幅の記録が可能となっている。
【0024】
本実施形態の記録装置はマルチパス記録を実行するので、記録ヘッド5004が1回の記録走査で記録可能な領域に対して、複数回の記録走査によって段階的に画像が形成される。この時、各記録走査の間に記録ヘッド5004の幅dよりも小さな量の搬送動作を行うことにより、個々のノズルのばらつきに起因する濃度むらやすじを更に低減することが出来る。
【0025】
<ドット重複率の制御と濃度むら及び粒状感の関係>
背景技術の項で述べたように、異なる走査や異なる記録素子群で記録されるドット同士がずれて重なると、画像の濃度変動が生じ、これが濃度むらとして知覚される。そこで本発明では、同じ位置(同じ画素や同じサブ画素)に重複して記録すべきドットを予め幾つか用意し、記録位置ずれが生じた際に、隣り合うドットが互いに重なり合い白紙領域を増加させる一方、重複したドットが互いに離れ白紙領域を減少させるようにする。これにより、記録位置ずれによる白紙領域の増と減、即ち濃度の増と減が相殺し合い、画像全体としての濃度変化を抑制することが期待できる。但し、図9(C)でも説明したように、重複したドットを予め用意することは、粒状感を悪化させたり濃度不足を招致したりすることにも繋がる。つまり、予め用意する重複ドット数の調整において、上述した濃度むらと粒状感あるいは濃度不足とはトレードオフの関係にあると言える。
【0026】
しかしながら、上記濃度変化についても粒状感や濃度不足についても、夫々ある程度の許容範囲(人間の視覚特性上、視認されにくい範囲)を有している。よって、この許容範囲内に両者を抑える程度にドット重複率を調整することが出来れば、弊害の目立たない画像を出力することが期待できる。但し、上記許容範囲は、例えばインクの種類や記録媒体の種類、濃度データ値など様々な条件に応じて変化し、適切なドット重複率が常に一定とは限らない。特に複数色のインクを用いてカラー画像を記録する場合には、インクの色、特に明度によって適切なドット重複率も異なる。よって、インク色に応じて、ドットの重複率を制御可能な構成を備えることが望まれる。
【0027】
ここで「ドット重複率」について説明する。「ドット重複率」とは、図4や図16に示す様に、K(Kは1以上の整数)個の画素で構成される単位領域に記録されるべき総ドット数の内、異なる走査或は異なる記録素子群によって同じ画素に重複して記録されるべきドット(重複ドット)数の割合である。なお、同じ画素とは、図4の場合には同じ画素位置を指し、図16の場合にはサブ画素位置を指す。
【0028】
以下、図4を用いて4画素(主走査方向)×3画素(副走査方向)で構成される単位領域に対応した第1プレーンと第2プレーンのドット重複率について説明する。なお「第1プレ−ン」とは第1走査或は第1ノズル群に対応した2値データの集合を表し、「第2プレ−ン」とは第2走査或は第2ノズル群に対応した2値データの集合を表す。また、「1」はドットの記録を示すデータを表し「0」はドットの非記録を示すデータを表す。
【0029】
図4(A)〜(E)では、第1プレーンの「1」の個数が“4”で、第2プレ−ンの「1」の個数も“4”であるため、4画素×3画素で構成される単位領域に記録されるべき総ドット数は“8”となる。一方、同じ画素位置に対応する、第1プレーンと第2プレーンの「1」の個数が、同じ画素に重ねて記録されるべきドット(重なりドット)の数となる。この定義によれば、重なりドット数は、図4(A)の場合に“0”、図4(B)の場合には“2”、図4(C)の場合には“4”、図4(D)の場合には“6”、図4(E)の場合には“8”となる。従って、図4(H)に示すように、図4(A)〜(E)のドット重複率は、夫々、0%、25%、50%、75%、100%となる。さらに、図4(F)は、第1プレーンの記録ドット数“4”で、第2プレ−ンの記録ドット数が“3”で、総ドット数が“7”で、重なりドット数が“6”で、ドット重複率が86%の場合を示している。また、図4(G)は、第1プレーンの記録ドット数“4”で、第2プレ−ンの記録ドット数が“2”で、総ドット数が“6”で、重なりドット数が“2”で、ドット重複率が33%の場合を示している。このように本明細書における「ドット重複率」は、異なる走査或は異なる記録素子群に対応したドットデータを仮想的に重ねた場合のドットデータの重複率である。
【0030】
次に、本実施形態で使用するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)それぞれの、粒状感と濃度むらの程度の違いについて説明する。なお、一般に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)の4色において、互いの明度はK<M<C<Yの関係にある。
【0031】
図17は、記録率150%の単色画像を20%のドット重複率で記録した場合に1画素分の記録位置ずれが生じた場合の粒状感と濃度むらの関係を、各インク色について示した図である。横軸は粒状度を示し、縦軸は、上記1画素分のずれが発生しなかった場合の画像と発生した場合の画像の明度差ΔLを示している。
【0032】
図によれば、濃度むらにおいてK>M>C>Yの関係があり、明度の高いインクほど濃度むらが目立ち難いことがわかる。特に、イエローにおいては、濃度むらが殆ど発生しておらず、記録位置ずれによって濃度変動が発生しにくい、すなわち濃度不足も問題になりにくいと判断することが出来る。また、粒状度についても他のインクに対して十分低い値であることから、イエローについては、ドット重複率を制御するための特別な構成を用意しなくても、従来の一般的な記録方法で十分に対応できると考えられる。
【0033】
一方、イエローよりも濃度むらが目立ちやすい他のインクについても、これらの間で濃度むらの程度は異なっており、それぞれの濃度むらを許容範囲に抑えるために要されるドット重複率も異なる。すなわち、必要以上に粒状感を増大させたり濃度不足を招いたりせずに、濃度むらを許容範囲内に抑えるためのドット重複率はインク色によって異なる。
【0034】
このように、明度の異なる複数種類のインクを用いる場合には、インク色ごとに濃度むらと粒状感や濃度不足のバランスを好適に調整するために、インク色ごとにドット重複率の調整の是非を判断し、インク色ごとにドット重複率を調整することが好ましい。
【0035】
以下、本発明におけるドット重複率を制御するための具体的な画像処理方法について、複数の実施形態を例に説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
図3は、2回の記録走査によって記録媒体の同一領域の画像を完成させる2パスのマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。本実施形態において、多値画像データ入力部(61)、色変換部(62)、分配率設定部60、画像データ分割部(64−1〜4)および量子化処理部(66−1〜8)は、制御部3000に備えられている。
【0037】
外部機器から、多値画像データ入力部61によって、RGBの多値の画像データ(256値)が入力される。この入力画像データ(多値のRGBデータ)は、画素毎に、色変換部62によって、インク色(CMYK)に対応した4組の多値画像データ(インク別多値データ)に変換される。色変換部62には、RGB値とCMYK値とが、一対一で対応付けられた3次元のルックアップテーブル(LUT)が用意されている。そして、このLUTを用いることにより、RGBデータが、インク別多値データ(C,M,Y,K)に一括して変換される。テーブル格子点値から外れる入力値に対しては、近傍の格子点の出力値から補間によって出力値を算出してもよい。
【0038】
以下の処理は、CMYKの夫々について独立に並行して行われる。インク別多値データ(C,M,Y,K)63−1〜4は、それぞれに対応する画像データ分割部64−1〜64−4に送られる。画像データ分割部64−1〜64−4では、分配率設定部60が設定するインク色毎の分配率に従って、多値データ63−1〜4が、第1走査用多値データ(C1、M1、Y1、K1)と第2走査用多値データ(C2,M2,Y2,K2)に分割(変換処理)される。このように、本実施形態では画像データ分割部64−1〜64−4で分割する際の分配率をインク色ごとに異ならせることによって、各色のドット重複率を異ならせる。各色でドット重複率を異ならせるための詳しい変換方法と仕組みについては後述する。
【0039】
各色の画像データ分割部64−1〜4で生成された8種類の多値データ65−1〜8は、夫々の量子化処理部(66−1〜8)において2値化処理(量子化処理)が行われる。
【0040】
ブラックを例に説明すると、量子化処理部66−7では、ブラック第1走査用多値データ65−7(K1)に対し2値化処理(量子化処理)が行われ、ブラック第1走査用2値データ67−7(K1´)が生成される。量子化処理部66−8では、ブラック第2走査用多値データ65−8(K2)に対し2値化処理(量子化処理)が行われ、ブラック第2走査用2値データ67−8(K2´)が生成される。このように、各色2種類ずつの多値データが、それぞれ量子化されて4色分8種類の2値データが生成される。本実施形態において、これら8つの量子化処理部66−1〜8で採用される量子化方式は、一般的な誤差拡散方式とする。
【0041】
この際、同じインクに対する量子化処理部では、2回の走査でドットが記録される画素と一方の走査でのみドットが記録される画素とを適度に混在させるため、異なる拡散マトリクスを採用することが好ましい。例えば量子化処理部66−1、66−3、66−5、66−7では図8(A)で示した拡散マトリクスを用い、量子化処理部66−2、66−4、66−6、66−8では同図(B)で示した拡散マトリクスを用いてもよい。
【0042】
以上の様な量子化処理の結果、K1´とK2´の両方が1である画素にはブラックドットが重複して記録され、K1´とK2´の両方が0である画素にはブラックドットが記録されない。又、K1´とK2´のどちらか一方が1である画素には、ブラックドットが1つだけ記録される。他のインク色のドットについても同じである。
【0043】
量子化処理部66−1〜8によって、2値の画像データC1´、C2´、M1´、M2´、Y1´、Y2´、K1´およびK2´が得られると、これらデータはそれぞれ、IEEE1284バス3022を介して図3で示したプリンタエンジン3004に送られる。
【0044】
プリンタエンジン3004において、2値データK1´(67−7)は、ブラック第1走査2値データ分割処理部68−7に転送される。ブラック第1走査2値データ分割処理部68−7では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。また、2値データK2´(67−8)は、ブラック第2走査2値データ分割処理部68−8に転送される。ブラック第2走査2値データ分割処理部68−8では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。
【0045】
ここで、マスクとは、個々の画素に対して2値画像データの記録の許容(1)または非許容(0)が予め定められたデータの集合体であり、2値画像データと画素毎に論理積演算することで、上記2値画像データを分割することが出来るものである。2値の画像データをN分割する場合、N個のマスクが用いられるのが一般である。2値の画像データを2つの走査のために2分割する本実施形態では、図5に示すような2つのマスク1801、1802が使用される。黒で示される部分が画像データの記録を許容するデータ(1:画像データをマスクしないデータ)であり、白で示される部分は画像データの記録を許容しないデータ(0:画像データをマスクするデータ)である。ここでは、マスク1801はノズル列54の2値データを生成するために利用され、マスク1802はノズル列55の2値データを生成するために利用される。これら2つのマスクは互いに補完の関係を有しているため、これらマスクで分割された2値データ同士は互いに重なることがない。つまり、ブラック第1走査2値データで記録(1)と定められたデータは、2つのノズル列54および55によって、互いに重なることなく、記録媒体に記録される。このような分割処理は、ブラックの第2走査用2値データや他のインク色に対しても同様に行われる。
【0046】
上記分割処理後、ブラック第1走査第1ノズル列2値データ(69−13)は、ブラック第1走査第1ノズル列用バッファ70−13に格納され、ノズル列54によって、第1走査で記録される。また、ブラック第1走査第2ノズル列2値データ(69−14)は、ブラック第1走査第2ノズル列用バッファ70−14に格納され、ノズル列55によって、第1走査で記録される。さらに、ブラック第2走査第1ノズル列2値データ(69−15)は、ブラック第2走査第1ノズル列用バッファ70−15に格納され、ノズル列54によって、第2走査で記録される。さらにまた、ブラック第2走査第2ノズル列2値データ(69−16)は、ブラック第2走査第2ノズル列用バッファ70−16に格納され、ノズル列55によって、第2走査で記録される。他のインク色についても同様である。
【0047】
以下、本実施形態の特徴的なドット重複率を制御するための処理方法を説明する。表1は、本実施形態の画像データ分割部(64−1〜64−4)による第1走査用および第2走査用の多値データへの分配率と、それぞれの多値データに対し一般的な誤差拡散処理を施した場合の、第1走査と第2走査でのドット重複率を示している。
【0048】
表1において記録率(%)とは、単位面積当たりに記録される1色のインクのドット数に相当し、単位面積当たりにドットが記録されていない状態を0%、単位面積当たりに最大数のドットが記録されている状態を100%としている。従って、例えば記録率60%とは、各色の多値データ63−1〜4の最大値(255)に対し60%の値(153)に相当する数のドットが単位面積に記録されている状態を指す。表1では、この様なドット記録率を0〜100%の10段階で示している。
【0049】
分配率(%)とは、記録率によって決まる多値データを第1走査及び第2走査へ分配する割合を示し、分配率の合計は100%となっている。例えば、シアンの多値データ値(C=100)を第1走査用の多値データ(C1=80)と第2走査用の多値データ(C2=20)に分配する際、分配率は(C1:C2=80:20)となる。表1では、この様な分配率を6段階で示している。そして、分配率と記録率の夫々に対応し、一般的な誤差拡散法によって2値化処理した結果のドット重複率を各欄に示している。
【0050】
【表1】
【0051】
図6は、表1をグラフに示した図であり、横軸は記録率、縦軸はドット重複率を示している。表1に示した6段階の分配率の夫々について、記録率に対するドット重複率が傾きの異なる直線で示されている。例えば、第1走査の分配率が100%、第2走査の分配率が0%である場合、全多値データは第1走査のみによって記録される。この場合、ドットが重なり合うことはなく、記録率が上昇してもドット重複率は0%のままである。第2走査の分配率を徐々に上げていくと、記録率に対するドット重複率の傾きは徐々に上がる。そして、分配率が第1走査と第2走査で50%ずつである場合、記録率に対するドット重複率の傾きは最も大きくなり、記録率が100%のときにドット重複率は50%となる。従って、表1や図6に示すような分配率とドット重複率の関係を予め取得しておけば、分配率を調整することにより所望のドット重複率を実現することが出来る。
【0052】
ここで、再度図17を参照するに、本実施形態で使用するインク色においては、比較的明度の高いイエローやシアンインクでは濃度むらが目立ちにくいのに対し、比較的明度の低いブラックやマゼンタインクでは濃度むらが目立ちやすい。よって、本実施形態では、マゼンタやブラックインクのドット重複率をシアンやイエローインクのドット重複率よりも高く設定する。そのために、分配率設定部60は、各色の画像データ分割部64−1〜4に対し異なる分配率でのデータ分割を指示し、夫々の画像データ分割部64−1〜4は、このように指示された分配率に従ってデータ分割を行う。具体的には、ブラック用画像データ分割部64−4における分配率の偏りを、他色の画像データ分割部64−1〜3における分配率の偏りよりも小さく設定する。また、イエロー用画像データ分割部64−3における分配率の偏りを、他色の画像データ分割部64−1、2、4における分配率の偏りよりも大きく設定する。例えば、再度図6を参照するに、ブラックの分配率を50%:50%とし、マゼンタの分配率を60%:40%とし、シアンの分配率を80%:20%とし、イエローの分配率を90%:10%とする。これにより、相対的に明度の高いインクのドット重複率を明度の低いインクのドット重複率よりも低く設定することが可能となる。結果、全インク色において、濃度むらも粒状感も適度に調整された良好な画像を出力することが出来る。
【0053】
なお、表1では、第1走査と第2走査の分配率の和が100%になるようにそれぞれの分配率が定められているが、画像処理の都合や絶対濃度の向上を目的として、第1走査の分配率の和と第2走査の分配率の和を100%以上や100%未満にしても構わない。
【0054】
図7は、図3に示した画像処理の具体例をイメージ化した図である。ここでは、4画素×4画素の計16画素に対応した入力画像データ140を処理する場合を図3に対応付けて説明する。符号A〜Pは、各画素に対応する入力画像データ140のRGB値の組合せを示している。符号AC〜PCは、色分解処理によって得られた各画素に対応するシアンドット用の多値データ141を示している。符号AM〜PMは、色分解処理によって得られた各画素に対応するマゼンタドット用の多値データ142を示している。また、符号AY〜PYは、色分解処理によって得られた各画素に対応するイエロードット用の多値データ143を示している。更に、符号AK〜PKは、色分解処理によって得られた各画素に対応するブラックドット用の多値データ141を示している。
【0055】
図において、シアン用の多値データ141が図3のシアン用多値データ63−1に相当し、マゼンタ用多値データ142がマゼンタドット用の多値データ63−2に相当する。また、イエロー用の多値データ143が図3のイエロー用多値データ63−3に相当し、ブラック用多値データ144がブラックドット用の多値データ63−4に相当する。
【0056】
まず、入力画像データ140(RGBデータ)が、色変換部62に入力されると、色変換部62では、3次元のLUTによって、入力画像データ140(RGBデータ)が、画素毎に色毎の多値データ141(CMYKデータ)に変換される。各色の多値データ(141〜144)は夫々の画像データ分割部64−1〜4に入力され、所定の分配率に従って、画素毎に第1走査用の多値データ(145、147、149、151)と第2走査用の多値データ(146、148、150、152)に変換される。その後、各色の第1走査用の多値画像データ(145、147、149、151)は量子化処理部において誤差拡散処理が施されて、各色の第1走査用の量子化データ(153、155、157、159)が生成される。また、各色の第2走査用の多値画像データ(146、148、150、152)は量子化処理部において誤差拡散処理が施されて、各色の第2走査用の量子化データ(154、156、158、160)が生成される。
【0057】
図7において、各色の第1走査用および第2走査用の量子化データ(153〜160)のうち、「1」のデータはドットの記録(インクの吐出)を示すデータであり、「0」のデータはドットの非記録(インクの非吐出)を示すデータである。50:50のような偏りの少ない分配率に従って分配処理が行われたブラックドットでは、第1走査用多値データ(159)と第2走査用多値データ(160)で、ドットの記録を示すデータ「1」の数がほぼ等しいことが判る。また、同じ画素に重複して記録されるドットの数(4)が、記録されるドットの数(8)のほぼ半分、すなわちドット重複率が50%であることが判る。一方、90:10のような偏りの大きい分配率に従って分配処理が行われたイエロードットでは、第1走査用2値データ(157)と第2走査用2値データ(158)で、ドットの記録を示すデータ「1」の数に偏りがあることがわかる。そして、同じ画素に重複して記録されるドットの数は極めて少ない(本例では0)。すなわちドット重複率が0%に近いことが判る。その後、これら2値データは、マスクパターンを利用した分割処理によって更に分割され、夫々のバッファに格納される。
【0058】
以上説明した本実施形態によれば、複数種類のインク夫々の明度に適したドット重複率を実現するために、インク色に応じた分配率に従って、異なる走査に対応した複数の多値データを生成し、夫々の多値データに対して2値化処理を実行する。これにより、記録位置ずれによる濃度変動に起因した濃度むらがより懸念される明度の低いドット重複率を、より明度の高い他色のドット重複率よりも高く設定することが出来る。つまり、インク色に応じてドット重複率を異ならせることにより、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【0059】
なお、以上の説明では、色変換部62と各色の画像データ分割部64−1〜4を別々に設け、分配部設定部が各色の画像データ分割部64−1〜34に分配率を指示する形態としたが、本実施形態はこのような構成に限定されなくてもよい。色変換処理と分割処理が同時に行われる構成を用意し、RGBの多値データが、C1、C2、M1、M2、Y1、Y2、K1およびK2の8プレーンに一括して変換されるようにしてもよい。このような構成は、例えば、分配率設定部は各色の分配率を色変換/分割処理に指示し、色変換/分割処理では指示された分配率に応じて複数のLUTが用意されているようにすれば実現できる。
【0060】
(第2の実施形態)
図18は、本実施形態における、2回の記録走査によって記録媒体の同一領域の画像を完成させる2パスのマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。本実施形態において、同じ符号で示した構成は第1の実施形態と等しいものとする。
【0061】
本実施形態では、分配率設定部60は設けておらず、各色の画像データ分割部64−1〜4は50:50の比で多値データを2分割する。そして、2分割後の夫々の多値データに対し階調補正処理71−1〜8を実行する。一般に、階調補正処理とは、入力される多値データに基づいて記録した記録媒体上の画像濃度が、当該多値データに線形的に対応付けられるようにするために、多値データに対し補正処理を行うものである。しかし、本例ではこのような役割のほかに、分配率の調整機能も階調補正処理部71−1〜8に持たせる。具体的には、階調補正処理71−1では、均等に2分割された多値データ65−1〜65−8の夫々に対し、階調補正設定部90が設定する補正量に従った1次補正を行う。このとき、階調補正設定部90が、同色インクの2つの多値データ(例えば65−1と65−2)に対し異なる補正量を設定すれば、第1実施形態の図3の構成と同等の効果を実現することが出来る。例えば、50:50に分割された2つ多値データに対し、それぞれ1.2、0.8の補正をかけるように階調補正設定部90が指示すれば、第1の実施形態において60:40の分配比で多値データを分割した場合と同じ効果が得られる。なお、本実施形態においても、上記実施形態と同様、色変換処理と分割処理とが同時に行われる構成を用意することも出来る。
【0062】
(第3の実施形態)
本実施形態では、シアン、マゼンタおよびブラックでは画像データ分割部によってドットット重複率を適切に調整しながらも、イエローではこのような特徴的な処理は行わない方法を説明する。
【0063】
図19は、イエローインクの複数のドット重複率について、1画素分の記録位置ずれが生じた場合の粒状感と濃度むらの関係を、図17と同様に示した図である。ここでは、ドット重複率を0%、20%、40%、60%、80%、および100%とした場合を夫々示している。図からもわかるように、イエローインクについては、ドット重複率を様々に変えたところで、濃度むらや粒状感は殆ど変化が無いことがわかる。すなわち、本発明が課題としている濃度むらや粒状感はイエローインクでは目立ちにくく、また本発明の特徴的な対策を施したところで、その効果も現れ難い。従って、本実施形態では、イエローインクについては、ドット重複率の調整を行うことなく、従来の方法で画像処理を行う。
【0064】
図20は、本実施形態における、2回の記録走査によって同一領域(例えば、画素領域)の画像を完成させるマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。同じ符号で示した処理は、第1の実施形態と等しい処理構成であることを示す。すなわち、シアン、マゼンタおよびブラックについては、画像データ分割部(第1の変換手段)において多値データの分割処理(第1の変換工程)が行われ、量子化処理部(第1の量子化手段)において量子化処理(第1の量子化工程)が行われる。以後の説明はイエロー(Y)のみについて行う。
【0065】
色変換部62によって生成されたイエロー用多値データ63−3(Y)は、第1走査と第2走査に分割されることなく、イエロー用の量子化処理部80(第2の量子化手段)にそのまま入力され、従来の一般的な誤差拡散法による量子化処理が施される。このような量子化処理(第2の量子化工程)の結果、個々の画素はイエロードットを記録する(1)或いは記録しない(0)の2値データにY´に変換される。その後、この画像データY´はIEEE1284バス3022を介してプリンタエンジン3004に送られる。
【0066】
プリンタエンジン3004において、イエロー用2値データ分割処理部81(第2の変換手段)では、予めメモリに記憶されているマスクを利用して4つのプレーンへの分割処理が実行される(第2の変換工程)。ここで各プレーンは、イエロー第1走査第1ノズル列用2値データ、イエロー第1走査第2ノズル列用2値データ、イエロー第2走査第1ノズル列用2値データ、イエロー第2走査第2ノズル列用2値データにそれぞれ相当する。ここで使用するマスクは、互いに補完関係のある4種類のマスクであり、これらマスクで分割された4つの2値データ82−1〜4は互いに重なることがない。従って、イエローにおいては、異なる走査および異なるノズル列によって記録されるドット同士が紙面上で重なる確率が抑えられることになる。
【0067】
マスクを利用した分割処理後、イエロー第1走査第1ノズル列用2値データ(82−1)は、イエロー第1走査第1ノズル列バッファ70−9に格納され、ノズル列53によって、第1走査で記録される。また、イエロー第1走査第2ノズル列用2値データ(82−2)は、イエロー第1走査第1ノズル列バッファ70−10に格納され、ノズル列56によって、第1走査で記録される。また、イエロー第2走査第1ノズル列用2値データ(82−3)は、イエロー第2走査第1ノズル列バッファ70−11に格納され、ノズル列53によって、第2走査で記録される。さらに、イエロー第2走査第2ノズル列用2値データ(82−4)は、イエロー第2走査第2ノズル列バッファ70−12に格納され、ノズル列56によって、第2走査で記録される。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、比較的濃度むらが目立ちやすい、ブラック、シアンおよびマゼンタについては、ドット重複率を調整することにより、濃度変動への耐性を強くした画像を得ることができる。その一方で、イエローについては、従来法と同様の記録法を採用することにより、濃度むらも粒状感も問題とならない通常の画像を出力することが出来る。また、このような本実施形態によれば、イエローのための量子化処理部を1つ分(80)だけ用意すればよいので、第1の実施形態に比べて、処理構成を単純にし、メモリ容量を抑え、処理時間を短縮することが可能となる。特に図1で説明したフォトダイレクトプリンタのように、低価格でメモリ容量が小さい環境の場合には、本実施形態の効果は大きい。
【0069】
なお、以上ではシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色インク構成において、イエローについてのみドット重複率の調整を行わない構成で説明したが、無論本実施形態はこのような構成に限定されるものではない。例えば、イエローのほかにシアンについても、濃度むらが許容できる範囲であることが予め判っていれば、ブラックとマゼンタについてのみドット重複率の調整を行う構成にしてもよい。また、上記4色のほかにライトシアンやライトマゼンタのような明度の高い淡色インク(フォトインク)を用い、これらインクの濃度むらがやはり目立たないような場合には、これらインクについてもドット重複率を調整しないようにすることも出来る。
【0070】
いずれにせよ、比較的濃度むらが問題となりインク色についてはドット重複率をインク色に応じて調整し、比較的濃度むらが問題となりにくいインク色については従来通りの記録方法を採用すれは、本実施形態の効果を得ることが出来る。すなわち、必要以上に処理負担を増加させることなく、各インク色についてドット重複率を適切な範囲に抑え、良好な画像を出力することが可能となる。なお、本実施形態においても、上記実施形態と同様、色変換処理と分割処理とが同時に行われる構成を用意することも出来る。
【0071】
(第4の実施形態)
上記実施形態では、各色の画像データ分割部64−1〜4における分配率を異ならせる、或いは階調補正処理部71−1〜4の補正値を異ならせることにより、量子化処理に入力される多値データに偏りを持たせ、ドット重複率を制御した。これに対し本実施形態では、生成された複数の多値濃度データを量子化する際の量子化処理に特徴を持たせることによって、ドット重複率を制御する。この際、量子化処理に入力される多値データは、均等であってもよいし、上記実施形態のように偏りを有していても良い。すなわち、量子化処理部のみの作用によってドット重複率を調整しても良いし、画像データ分割部や階調補正処理部、および量子化処理部の協働によってドット重複率を調整してもよい。
【0072】
図12は、本実施形態における2回の記録走査によって記録媒体の同一領域の画像を完成させるマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。ここでは、デジタルカメラ3012等の画像入力機器から入力された画像データに対し、図のブロック21〜26までの処理を図2で説明した制御部3000で行うものとする。
【0073】
外部機器から、多値画像データ入力部21によって、RGBの多値の画像データ(256値)が入力される。この入力画像データ(多値のRGBデータ)は、画素毎に、色変換部62によって、インク色(CMYK)に対応した4組の多値画像データ(多値濃度データ)に変換される。以上の処理は上記実施形態と同様である。
【0074】
画像データ分割部24−1〜24−4では、多値データ23−1〜4が、第1走査用多値データ(C1、M1、Y1、K1)と第2走査用多値データ(C2,M2,Y2,K2)に分割(変換処理)される。本実施形態において、各色分割部24−1〜4における分配率は、一律に50:50であればよい。但し、上記実施形態の様に、ドット重複率を制御する為に分配率を調整する方法も併用しても構わない。以下、ブラックの多値データ(K1,K2)を例に説明を進める。なお、本実施形態においても、上記実施形態と同様、色変換処理と分割処理とが同時に行われる構成であってもよい。
【0075】
ブラック用量子化処理部26−4では、ブラック第1走査用多値データ25−7(K1)とブラック第2走査用の多値データ25−8(K2)のそれぞれに対し2値化処理(量子化処理)が行われる。すなわち、各多値データは0または1のどちらかに変換(量子化)されて、ブラック第1走査用の2値データ(K1´)27−7およびブラック第2走査用の2値データ(K2´)27−8となる。この際、K1´とK2´の両方が1である画素にはブラックドットが重複して記録され、K1´とK2´の両方が0である画素にはブラックドットが記録されない。また、K1´とK2´のどちらか一方が1である画素には、ブラックドットが1つだけ記録される。他色の量子化処理部26−1〜3についても同様である。本実施形態では、このような各色の量子化処理部26−1〜4における量子化方法を異ならせることによって、各色のドット重複率を互いに異ならせる。以下、量子化処理部26−1〜4のそれぞれにおいて実行される処理工程を、ブラック(K)を例に図10のフローチャートを用いて説明する。
【0076】
図10において、量子化される2つの対象すなわち2つの入力多値データK1およびK2は、0〜255の値を有している。ここで、K1errおよびK2errは、既に量子化処理が終了した周辺の画素から発生した累積誤差値で、K1ttlおよびK2ttlは入力多値データと累積誤差値を合計した値である。更にフローチャートにおけるK1´およびK2´は、第1記録走査用と第2記録走査用の2値の量子化データを示す。
【0077】
本処理では、2値の量子化データであるK1´やK2´の値を決定する際に用いる閾値(量子化パラメータ)が、K1ttlやK2ttlの値に応じて異なるようになっている。そのためにK1ttlやK2ttlの値に応じて閾値が一義的に決まるようなテーブルが予め用意されている。ここで、K1´を決定する際にK1ttlと比較するための閾値をK1table[K2ttl]とし、K2´を決定する際にK2ttlと比較するための閾値をK2table[K1ttl]とする。K1table[K2ttl]はK2ttlの値によって定まる値であり、K2table[K1ttl]はK1ttlの値によって定まる値である。
【0078】
本処理が開始されると、まずS21において、入力多値データK1およびK2に累積誤差値K1errおよびK2errをそれぞれ加算することにより、K1ttlをおよびK2ttlを算出する。次いで、S22において、下記表2に示されるような閾値テーブルを参照することにより、S21で求めたK1ttlおよびK2ttlから、2つの閾値K1table[K2ttl]及びK2table[K1ttl]を取得する。閾値K1table[K2ttl]は、表2の閾値テーブルの「参照値」としてK2ttlを用いることによって一義的に求められる。閾値K2table[K1ttl]は、表2の閾値テーブルの「参照値」としてK1ttlを用いることによって一義的に求められる。
【0079】
続くS23〜S25においてK1´の値を決定し、S26〜S28においてK2´を決定する。具体的には、S23において、S21で算出したK1ttlがS22で取得した閾値K1table[K2ttl]以上であるか否かを判定する。K1ttlが閾値以上であると判定された場合にはK1´=1とし、この出力値(K1´=1)に応じて累積誤差値K1err(=K1ttl−255)を算出して更新する(S25)。一方、K1ttlが閾値未満であると判定された場合にはK1´=0とし、この出力値(K1´=0)に応じて累積誤差値K1err(=K1ttl)を算出して更新する(S24)。
【0080】
次いで、S26において、S21で算出したK2ttlがS22で取得した閾値K2table[K1ttl]以上であるか否かを判定する。K2ttlが閾値以上であると判定された場合にはK2´=1とし、この出力値(K1´=1)に応じて累積誤差値K2err(=K2ttl−255)を算出して更新する(S28)。一方、K2ttlが閾値未満であると判定された場合にはK2´=0とし、この出力値(K2´=0)に応じて累積誤差値K2err(=K2ttl)を算出して更新する(S27)。
【0081】
その後、S29において、上記のように更新された累積誤差値K1errおよびK2errを、図8(A)或いは(B)に示す誤差拡散マトリクスに従って、未だ量子化処理が終了していない周辺画素に拡散する。本実施形態では、累積誤差値K1errを周辺画素に拡散するために図8(A)に示す誤差拡散マトリクスを用い、累積誤差値K2errを周辺画素に拡散するために図8(B)に示す誤差拡散マトリクスを用いる。
【0082】
このように本実施形態では、第1走査に対応した第1の多値データ(K1ttl)に量子化処理を行うのに用いる閾値(量子化パラメータ)を、第2走査に対応した第2の多値データ(K2ttl)に基づいて決定している。同様に、第2走査に対応した第2の多値データ(K2ttl)に量子化処理を行うのに用いる閾値(量子化パラメータ)を、第1走査に対応した第1の多値データ(K1ttl)に基づいて決定している。つまり、2回の走査のうちの一方の走査に対応した多値データと他方の走査に対応した多値データの両方に基づいて、一方の走査に対応した多値データの量子化処理も、他方の走査に対応した多値データの量子化処理も実行する。これにより、例えば、一方の走査でドットが記録される画素には、他方の走査では同じサイズのドットが極力記録されないようにしたり、反対に積極的に記録したり出来るため、粒状感の悪化や濃度不足とバランスを取りながら、濃度むらを抑制することが出来る。
【0083】
図13(A)は、上記図10のフローチャートに従って、下記表2の閾値テーブルの図13(A)の欄に記述される閾値を用いて量子化処理(2値化処理)を行った結果を入力値(K1ttl及びK2ttl)と対応付けて説明するための図である。K1ttl及びK2ttlは共に0〜255の値を取り得、閾値テーブルの図13(A)の欄に示されるように閾値128を境に記録(1)及び非記録(0)が決定される。図中のポイント221は全くドットを記録しない領域(K1´=0且つK2´=0)と、2つのドットが重なる領域(K1´=1且つK2´=1)の境界点となる。
【0084】
図13(B)は、上記図10のフローチャートに従って下記表2の閾値テーブルの図13(B)の欄に記述される閾値を用いて量子化処理(2値化処理)を行った結果を、入力値(K1ttl及びK2ttl)と対応付けて説明するための図である。ポイント231は、全くドットを記録しない領域(K1´=0且つK2´=0)と1ドットのみを生ずる領域(K1´=1且つK2´=0、或はK1´=0且つK2´=1)との境界である。ポイント232は、2つのドットを重複して記録する領域(K1´=1且つK2´=1)と1ドットのみを生ずる領域(K1´=1且つK2´=0、或はK1´=0且つK2´=1)との境界である。ポイント231と232がある程度の距離を置いて離れていることにより、図13(A)の場合に比べ、どちらか一方のドットが記録される領域が増え、両方のドットが記録される領域が減少している。つまり、図13(B)の場合は、同図(A)の場合よりもドット重複率が低減され、粒状性を低く抑えるのに有利である。図13(A)の様にドット重複率が急峻に変化するポイントが存在すると、階調の僅かな変化によって濃度むらが発生する場合が有り得るが、図13(B)の場合には階調の変化に応じてドット重複率も滑らかに変化していくので、その様な濃度むらも起こり難い。
【0085】
このように、量子化処理を行う際の閾値は記録後のドット重複率に影響を与える。よって、インク色に応じてこれら閾値を異ならせることにより、インク色ごとにドット重複率を調整することが可能となる。例えば、図13(B)に示す量子化処理をシアン用の量子化処理26−1に採用することにより、シアンの低濃度領域で粒状感を低く抑えることができる。また、例えば、図13(E)に示す量子化処理をブラック用の量子化処理26−4に採用することにより、ブラックの中濃度〜高濃度領域で濃度変動を低く抑えることができる。反対に、図13(B)に示す量子化処理をブラック用の量子化処理26−4に採用することにより、ブラックの高濃度領域で濃度不足を回避することができる。また、例えば、図13(E)に示す量子化処理をシアン用の量子化処理26−1に採用することによりシアンの低〜中濃度領域で濃度変動を低く抑えることができる。
【0086】
以下に、異なるドット重複率を実現するための幾つかの閾値例を図13(C)〜(G)を用いて説明する。本実施形態では、このような様々な量子化処理の中から最も適切なドット重複率が得られる量子化処理を、各色の量子化処理26−1〜4のそれぞれに選択的に採用すればよい。なお、図13(C)〜(G)は、上述した図13(A)及び(B)と同様、下記表2に示される閾値テーブルに記述される閾値を用いて量子化した結果(K1´及びK2´)と入力値(K1ttl及びK2ttl)との対応関係を示した図である。
【0087】
図13(C)は、ドット重複率を図13(A)と同図(B)の間の値にするようにした場合を示す図である。ポイント241は図13(A)のポイント221と同図(B)のポイント231の中間点に定められている。また、ポイント242は図13(A)のポイント221と同図(B)のポイント232の中間点に定められている。
【0088】
図13(D)は、同図(B)の場合よりもドット重複率を更に低減するようにした図である。ポイント251は図13(A)のポイント221と同図(B)のポイント231を3:2に外分する点に定められている。また、ポイント252は図13(A)のポイント221と同図(B)のポイント232を3:2に外分する点に定められている。
【0089】
図13(E)は、同図(A)の場合よりもドット重複率を増加させる場合を示している。図13(E)によれば、全くドットを記録しない領域(K1´=0且つK2´=0)から2つのドットを重複して記録する領域(K1´=1且つK2´=1)への遷移が生じ易くなり、ドット重複率を増加させる事が出来る。図13(F)は、ドット重複率を同図(A)と(E)の間の値にするようにした場合を示す図である。図13(G)は同図(E)の場合よりも更にドット重複率を増加させるようにした場合を示している。
【0090】
次に、下記表2に示される閾値テーブルを用いた量子化処理の方法について具体的に説明する。表2は、図13(A)〜(G)に示した処理結果を実現するために、図10で説明したフローチャートのS22において閾値を取得するための閾値テーブルである。
【0091】
ここでは、入力値(K1ttl、K2ttl)が(100、120)で、且つ、閾値テーブルの図13(B)の欄に記述される閾値を用いる場合について説明する。まず、図14のS22では、表2に示される閾値テーブルと、K2ttl(参照値)に基づいて、閾値K1table[K2ttl]を求める。参照値(K2ttl)が「120」であれば、閾値K1table[K2ttl]は「120」となる。同様に、閾値テーブルとK1ttl(参照値)に基づいて、閾値K2table[K1ttl]を求める。参照値(K1ttl)が「100」であれば、閾値K2table[K1ttl]は「101」となる。次いで、図10のS23において、K1ttlと閾値K1table[K2ttl]を比較判定し、この場合、K1ttl(=100)<閾値K1table[K2ttl](=120)であるため、K1´=0(S24)となる。同様に、図10のS26において、K2ttlと閾値K2table[K1ttl]を比較判定し、この場合、K2ttl(=120)≧閾値K2table[K1ttl](=101)であるため、K2´=1(S28)となる。この結果、図13(B)に示されるように、(K1ttl、K2ttl)=(100、120)の場合には、(K1´、K2´)=(0、1)となる。
【0092】
以上のような量子化処理によれば、2回の走査に対応した多値データの両方に基づいて、2回の走査夫々に対応した多値データを量子化することで、2回の走査間でのドット重複率を制御している。これにより、一方の走査で記録されるドットと他方の走査で記録されるドットの重複率をインク色に応じて好適な範囲内に収めることが可能となる。すなわち、インク色に応じてドット重複率を調整することにより、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【0093】
なお、表2では参照値を4おきに示しているが、実際のテーブルにはこの間の値についても(例えば、1〜3)閾値が用意されている。但し、参照値については表2に示したように飛び飛びの値が用意され、その他の値の変換については値の近い参照値から補間処理して求めてもよい。
【0094】
【表2】
【0095】
再び、図12に戻る。ブラック用量子化処理部26−4によって、ブラックに適したドット重複率を実現する2値データK1´およびK2´が得られると、これらデータはそれぞれ、IEEE1284バス3022を介して図3で示したプリンタエンジン3004に送られる。他のインク色についても同様である。以後の処理はプリンタエンジン3004で実行される。
【0096】
プリンタエンジン3004において、2値データK1´(27−7)は、ブラック第1走査2値データ分割処理部28−7に転送される。ブラック第1走査2値データ分割処理部28−7では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。また、2値データK2´(27−8)は、ブラック第2走査2値データ分割処理部28−8に転送される。ブラック第2走査2値データ分割処理部28−8では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。上記分割処理後、ブラック第1走査第1ノズル列2値データ(29−13)は、ブラック第1走査第1ノズル列用バッファ30−13に格納され、ノズル列54によって、第1走査で記録される。また、ブラック第1走査第2ノズル列2値データ(29−14)は、ブラック第1走査第2ノズル列用バッファ30−14に格納され、ノズル列55によって、第1走査で記録される。さらに、ブラック第2走査第1ノズル列2値データ(29−15)は、ブラック第2走査第1ノズル列用バッファ30−15に格納され、ノズル列54によって、第2走査で記録される。さらにまた、ブラック第2走査第2ノズル列2値データ(29−16)は、ブラック第2走査第2ノズル列用バッファ30−16に格納され、ノズル列55によって、第2走査で記録される。他のインク色についても同様である。
【0097】
以上説明した処理によれば、図13(A)〜(G)で示す複数の閾値テーブルの中から適切な閾値テーブルを各インク色で独立に選択し、夫々に適したドット重複率を実現することが出来る。その結果、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【0098】
ところで、量子化の方法は、必ずしも上述したような構成、すなわち閾値と比較することによって記録(1)と非記録(0)が決定される構成でなくてもよい。例えば、2プレーンの場合には、K1ttlおよびK2ttlの両方を参照値とすることによってK1´やK2´が 一義的に記録(1)または非記録(0)に変換されるようなテーブルを用意することも出来る。テーブルの詳細は省略するが、このような多次元のテーブルを利用する場合には、よりシンプルな制御で、且つ、ドット重複率をより自由度の高い状態で制御出来るというメリットが得られる。一方、表2に示したような1次元の閾値テーブルを利用する場合には、より少ないメモリ容量でテーブルを作成することが出来る。また、K1ttlおよびK2ttlの和を参照値とした1次元の閾値テーブルを利用することも出来る。更には、全くテーブルを用いずに分岐と演算のみで2値化(量子化)処理を行うことも可能である。この場合、演算に用いられる何らかの係数が、所望のドット重複率を実現する値に設定されていれば、本実施例の効果を得ることが可能となる。このような場合、上述したテーブルを用意する場合に比べて、更にメモリ容量を小さくする事が出来る。
【0099】
(第5の実施形態)
近年では、主な画像処理は記録解像度よりも低い(粗い)解像度で行い、256階調の多値の画像データをより低い階調のL(Lは3以上)値の多値データに変換した状態で、記録装置のプリンタエンジンに送信する形態が有用されている。この場合、プリンタエンジンでは、受信した低い階調のL値の多値データを、記録解像度に対応した2値データに変換するためのドットパターン(インデックスパターン)をメモリに備えている。以下では、L値化として3値化の例を説明するが、Lの値は3以上の様々な値を取り得ることはいうまでもない。
【0100】
図15は、本実施形態における、2回の記録走査によって同一領域(例えば、画素領域)の画像を完成させるマルチパス記録を行う場合の画像処理を説明するためのブロック図である。多値画像データ入力部41から各色の画像データ分割部44−1〜4までの処理は、図3や図12と等しい処理である。これ以降の処理は、各色について独立且つ並行に行われるので、これ以後の説明はブラック(K)のみについて行う。なお、本実施形態においても、上記実施形態と同様、色変換処理と分割処理とが同時に行われる構成であってもよい。
【0101】
ブラック用多値データ(K)43−4は、ブラック用画像データ分割部44−4によって、ブラックの第1走査用の多値データ(K1)45−7と第2走査用の多値データ(K2)45−8へデータ分割(変換処理)される。この際、本実施形態では、第1の実施形態や第3実施形態のように、第1走査と第2走査とで分配率に所定の偏りを持たせた状態で多値データを分配(生成)してもよいし、均等に分配(生成)してもよい。
【0102】
ブラック第1走査用多値データ(K1)とブラック第2走査用多値データ(K2)は、ブラック用量子化処理部46−4に入力され、3値のブラック第1走査用量子化データ(K1´)とブラック第2走査用量子化データ(K2´)に変換される。具体的には、第4の実施形態の量子化処理と同様、まず注目画素の2つの多値データK1およびK2に周辺の誤差を累積したK1ttlおよびK2ttlを得る。その後、第1走査用の多値データK1を量子化する際に用いる閾値を、K2ttlに基づいて決定し、第2走査用の多値データK2を量子化する際に用いる閾値を、K1ttlに基づいて決定する。本実施形態の場合、3値に量子化するため、2つの閾値すなわち第1の閾値とこれよりも大きな第2の閾値を用意する。そして、注目画素における入力多値データと累積誤差値を合計した値(合計値:K1ttlやK2ttl)と第1および第2の閾値との大小関係によって、出力値を決定する。すなわち、合計値が第2の閾値以上の場合には出力値は「2」となり、合計値が第一閾値以上で且つ第二閾値未満の場合には出力値は「1」となり、合計値が第1の閾値未満の場合には出力値は「0」となる。
【0103】
このように、K2ttlに基づいて決定された閾値に基づいて、第1走査用の多値データ(K1)を量子化して第1走査用の量子化データK1´を得る。同様に、K1ttlに基づいて決定された閾値を用いて、第2走査用の多値データ(K2)を量子化することで第2走査用の量子化データK2´を得る。第1の閾値と第2の閾値の決定方法としては、2値化の例と同様、第1の閾値テーブルと第2の閾値テーブルを同一の参照値を用いてそれぞれ決定すればよい。以上の処理は、他色の量子化処理部46−1〜3についても同様である。
【0104】
図14は、量子化処理部46−4における量子化(3値化)処理の結果(K1及びK2)と入力値(K1ttl及びK2ttl)との対応関係を、図13と同様に示す図である。図において、K1´とK2´の値は、1回目の記録走査及び2回目の記録走査の夫々で注目画素に記録されるドット数を示している。ここでは、K2ttlを量子化するために用いる第1の閾値を太点線で示し、第2の閾値を太破線で示している。
【0105】
例えば、K1´とK2´の両方が2である注目画素には、1回目の記録走査と2回目の記録走査で2個ずつドットが記録される。また、K1´が1で且つK2´が2である注目画素には、1回目の記録走査で1個ドットが記録され且つ2回目の記録走査で2個ドットが記録される。また、K1´とK2´の両方が0である注目画素にはドットが記録されない。
【0106】
ここでは図14の例しか示していないが、本実施形態においても、上述したような第1の閾値テーブルと第2の閾値テーブルをインク色毎に独立に用意する。これにより、各インク色で量子化後の結果を異ならせ、各インク色でドット重複率をそれぞれ適切に調整することが出来る。
【0107】
再び図15を参照する。ブラック用量子化処理部46−4において量子化された3値の画像データ(量子化データ)K1´およびK2´は、プリンタエンジン3004に送信され、ブラック用インデックス展開処理部48−4においてインデックス処理が行われる。他のインク色についても同様である。インデックス展開処理は、L(Lは3以上の整数)値の量子化データを2値化するものであり、量子化処理の一部として捉えることができる。
【0108】
具体的には、ブラック用インデックス展開処理部48−4によって、3値の画像データK1´は第1走査用の2値データK1″(49−7)に変換され、ブラック第1走査2値データ分割処理部50−7に転送される。また、ブラック用インデックス展開処理部48−4によって、3値の画像データK2´は第2走査用の2値データK2″(49−8)に変換され、ブラック第2走査2値データ分割処理部50−8に転送される。インデックス展開処理の詳細は後述する。
【0109】
シアン第1走査2値データ分割処理部50−7では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。シアン第1走査2値データ分割処理部50−7では、予めメモリに記憶されているマスクを利用してブラックインクを吐出可能な2つのノズル列54および55に対する分割処理が実行される。
【0110】
上記分割処理後、ブラック第1走査第1ノズル列2値データ(51−13)は、ブラック第1走査第1ノズル列用バッファ52−13に格納され、ノズル列54によって第1走査で記録される。また、ブラック第1走査第2ノズル列2値データ(51−14)は、ブラック第1走査第2ノズル列用バッファ52−14に格納され、ノズル列55によって第1走査で記録される。また、ブラック第2走査第1ノズル列2値データ(51−15)は、ブラック第2走査第1ノズル列用バッファ52−15に格納され、ノズル列54によって第2走査で記録される。さらに、ブラック第2走査第2ノズル列2値データ(51−16)は、ブラック第2走査第2ノズル列用バッファ52−16に格納され、ノズル列55によって第2走査で記録される。
【0111】
図16は、本実施形態におけるインデックス展開処理およびインデックスパターン(ドットパターン)の例を説明するための図である。本図では、いずれのインク色であれ、2値化される2つの対象すなわち2つの入力多値データは、K1´およびK2´と示している。すなわち、K1´およびK2´は、シアンであればC1´およびC2´に相当し、マゼンタであればM1´およびM2´に相当する。
【0112】
本実施形態のインデックス展開処理部48−1〜4では、1画素に対応する3値の画像データ(K1´、K2´)が、2サブ画素×2サブ画素に対応する2値の画像データ(ドットパターン)に変換される。詳しくは、0〜2のいずれかの値を有する3値の画像データK1´は、第1走査用のドットパターンに変換される。同様に、0〜2のいずれかの値を有する3値の画像データK2´は、第2走査用のドットパターンに変換される。そして、これら第1走査用のドットパターンと第2走査用のドットパターンを重ね合わせたパターン(図中の最も右側に示される「記録媒体上でのドットパターン」)が画素に記録されることになる。なお、第1および第2の走査用のドットパターンに関して、斜線部分はサブ画素へのドットの記録を示すデータ(「1」のデータ)を意味しており、白部分はサブ画素へのドットの非記録を示すデータ(「0」のデータ)を意味している。また、記録媒体上でのドットパターンに関し、黒部分はサブ画素に2ドット記録されることを意味し、斜線部分はサブ画素に1ドット記録されることを意味し、白部分はサブ画素にドットが記録されないことを意味している。
【0113】
ここで、画素に対応する3値以上の画像データをm×nのサブ画素に対応する2値のドットパターンに変換するような画像処理を採用した場合の、ドット重複率について図16を用いて説明する。このような場合の「ドット重複率」とは、複数のサブ画素で構成される1画素領域に記録されるべき総ドット数のうち、異なる走査(あるいは異なる記録素子群)で画素領域内の同じサブ画素位置に重複して記録されるドット数の割合を指す。具体的に説明すると、K1´とK2´の両方が0の場合、第1記録走査でも第2記録走査でもドットは記録されずドット重複率は0である。K1´とK2´のどちらか一方が0の場合、一方の走査でだけドットが記録されるので、ドット重複率は0%のままである。K1´とK2´の両方が1の場合、2サブ画素×2サブ画素の左上のサブ画素に2つのドットが重複して記録されるため、ドット重複率は100%(=2÷2×100)となる。また、どちらか一方が1で他方が2の場合、2サブ画素×2サブ画素のうち左下のサブ画素に2つのドットが重複して記録され、左上のサブ画素に1ドットだけ記録されるため、ドット重複率は67%(=2÷3×100)となる。更に、K1´とK2´の両方が2の場合、サブ画素でドットが重ならないのでドット重複率は0%となる。つまり、図16に示した様な各レベルに1対1で対応するインデックスパターン(ドットパターン)を予め用意しておけば、図14に示した量子化処理でK1´とK2´の組み合わせが決まることにより、画素領域のドットの重複率も一義的に定まる。
【0114】
次に、本実施形態におけるドット重複率と濃度領域との関係について図16を用いて説明する。図16の例では、1画素に最大4ドットまで記録可能となっている。従って、記録率100%とは、1画素内に4ドットが記録された状態をいう。図16の例では、K1´=0且つK2´=0の場合は記録率0%、K1´=1(or0)でK2´=0(or1)の場合は記録率25%、K1´=1且つK2´=1の場合は記録率50%となっている。また、K1´=1(or2)でK2´=2(or1)の場合は記録率75%、K1´=2でK2´=2の場合は記録率100%となっている。そして、記録率0%および25%の低濃度領域ではドット重複率が0%となっており、記録率50%の中濃度領域ではドット重複率が100%となっており、記録率75%および100%の高濃度領域では夫々ドット重複率が67%および0%となっている。
【0115】
このように、インクデックスパターンでは、予め用意しておく第1走査用ドットパターンと第2走査用ドットパターンにおける記録ドットの位置や数を異ならせることにより、各階調における重複率を調整することが出来る。更に、このような第1走査用ドットパターンと第2走査用ドットパターンを、各インク色のインデックス展開処理部48−1〜4で別々に用意することにより、各インク色のドット重複率を異ならせることが出来る。本実施形態では、量子化処理部(46−1〜4)における閾値テーブルを異ならせることでも各インク色のドット重複率を調整することが出来るが、この様なインデックスパターンを異ならせることでもドット重複率を調整することが出来る。例えばブラックについては、図16のように、濃度むらが懸念される中レベル(K1´=K2´=1)でのドット重複率を高く設定し、濃度不足が懸念される高レベル(K1´=K2´=2)でのドット重複率を低く設定することが出来る。同時に、シアンについては、図16とは異なるインデックスパターンを用いることによって、高レベル(C1´=C2´=2)でのドット重複率を高くし、中レベル(C1´=C2´=1)でのドット重複率を低くすることが出来る。つまり、複数の異なるインデックスパターンを用意することによって、インク色に応じた適切なドット重複率を実現することが出来る。
【0116】
以上説明した様に本実施形態によれば、量子化処理部によって低階調化された後の多値データを、記録解像度に対応した2値データに変換する際に用いるドットパターンを、インク色毎に別々に用意する。これにより、インク色それぞれについて、階調レベルごとに適切なドット重複率を実現することが可能となり、全ての色再現領域において、濃度むら、粒状感および濃度不足のいずれもが回避された良好な画像を出力することが可能となる。
【0117】
(その他の実施形態)
以上説明した実施形態では、図11(A)に示したように、1つのインク色に対し、2つのノズル列を有する構成の記録ヘッドを例に説明してきたが、本発明で使用可能な記録ヘッドはこれに限らない。図11(B)のように、各色について1列ずつのノズル列が配備される構成の記録ヘッドであっても構わない。この場合には、上記実施形態において、マスク処理以降の処理を持たない構成となるが、このような構成であっても、第1の主走査と第2の主走査におけるドット重複率を調整するという本発明の効果を得ることは出来る。
【0118】
また、上記実施形態では、CMYKの4色のインクを用いる形態について説明したが、使用可能なインク色の種類数はこれに限られるものではない。図11(C)に示すように、上記4色の他に淡シアン(Lc)や淡マゼンタインク(Lm)を加えたり、レッドインク(R)やブルーインク(B)等の特色インクを加えたりしてもよい。反対に、本発明は単色インクが使用されるモノカラーモードにも適用可能である。更には、本発明は、カラープリンタのみならず、モノクロプリンタにも適用可能である。また、複数種類のインク(例えばCMYKの4色のインク)全てに上記制御を行うほか、少なくとも2種類のインクのみに上記実施形態の制御を適用するようにしてもよい。 また、上記本実施形態では、2回の相対移動で同一領域(例えば、画素領域)の記録を完成させる、いわゆる2パス記録の例を説明したが、本発明は2パス記録に限定されるものではない。本発明は、3パス以上のMパス記録(Mは2以上の整数)について広く適用可能である。N種類のインクでMパス記録を行う場合、まず、入力画像データ(RGB)から、インク色別のN個の多値濃度データを生成する。その後、個々の多値データそれぞれからM回の相対移動に対応したM組の多値データを生成する。次いで、これらN×M組の多値濃度データを夫々量子化してN個のインク色とM回の相対移動に対応したN×M組の量子化データを生成する。その後、上記N×M組の量子化データに従って、N個のドットサイズそれぞれによるM回の相対移動中に、同一領域の画像を記録すればよい。Mパス記録で、第4や第5の実施形態で説明したドット重複率の制御を行う場合、閾値テーブルは図13や図14で示した2次元ではなく、K1ttl〜KMttlを座標軸とするM次元で示されることになる。
【0119】
また、3パス以上のMパス記録モードでは、M組の多値データを生成することは必須ではなく、Mよりも少ないP(Pは2以上の整数)組の多値データを生成する形態であってもよい。この場合、まずMよりも少ないP組の画像データを生成し、その後P組の濃度データを量子化してP組の量子化データを得る。その後、P組の量子化データの内の少なくとも1組の量子化データを分割してMパス分のM組の量子化データを得ることが出来る。
【0120】
更にまた、上記実施形態では、各記録走査の記録位置ずれの方が2つのノズル列(54、55)の記録位置ずれよりも大きいことを前提に、記録走査間のドット重複率を調整する内容で説明した。しかし、ノズル列間の記録位置ずれの方が記録走査間の記録位置ずれよりも大きい場合には、上記実施形態における画像データの2回の分割工程を逆転させることも出来る。すなわち、各色の画像データ分割部で各ノズル列に対応して多値データを分割してから、マスク処理部において量子化後の2値データを各記録走査に対応して分割することも出来る。このような構成は、例えば図11(A)で示した記録ヘッドを用いながら1パス記録を行う場合にも有効である。
【0121】
以上の実施形態では、量子化までの画像処理を制御部3000で、それ以降の処理をプリンタエンジン3004で実行する構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものでもない。上述したような一連の処理が実行されるのであれば、ハードウエア、ソフトウエアを問わず、いずれの処理手段によって実行される形態であっても本発明の範疇である。
【0122】
以上の実施形態では、画像処理機能を有する制御部3000を備えた記録装置(画像形成装置)を例に、本発明の特徴的な画像処理を実行する画像処理装置を説明してきたが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。本発明の特徴的な画像処理が、プリンタドライバがインストールされたホスト装置(例えば、図3のPC3010)で実行され、量子化処理後あるいは分割処理後の画像データが記録装置に入力されるような構成であっても構わない。このような場合、記録装置に接続されるホスト装置(外部機器)が、本発明の画像処理装置に該当する。
【0123】
本発明は、上述した画像処理の機能を実現するためのコンピュータ可読プログラムを構成するプログラムコード、又はそれを記憶した記憶媒体によっても実現される。この場合、ホスト装置や画像形成装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が上記プログラムコードを読出し実行することによって上述した画像処理が実現されることになる。この様に、上述した画像処理をコンピュータに実行させるための、コンピュータにより読み取り可能なプログラム、あるいは、そのプログラムを記憶した記憶媒体も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
61 多値画像データ入力部
62 色変換部
64 画像データ分割部
66 量子化処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のインクを用いてドットを記録するための記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行うために、当該画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記複数回の相対移動によって前記画素領域に記録されるべき総ドット数に対する、前記複数回の相対移動によって前記画素領域内の同じ位置に重複して記録されるべきドット数の割合が、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように、前記入力画像データを処理するための処理手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記処理手段は、
前記入力画像データを前記複数種類のインクそれぞれに対応する複数種類のインク別多値データに分配する手段と、
該複数種類のインク別多値データのそれぞれを前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する変換手段と、
前記複数種類のインクそれぞれに対応する前記複数の多値データそれぞれについて量子化する量子化手段と
を備え、
前記処理手段は、前記変換手段および前記量子化手段の少なくとも一方において、前記割合を前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異ならせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで前記割合を異ならせるために、前記複数種類のインク別多値データから変換された前記複数の多値データ値の比の偏りが前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように前記複数種類のインク別多値データを変換することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数種類のインクそれぞれについての前記複数回の相対移動に対応する前記複数の多値データは、前記複数回の相対移動のうちの少なくとも1回の相対移動に対応した第1の多値データと、前記複数回の相対移動のうちの他の少なくとも1回の相対移動に対応した第2の多値データを含み、
前記量子化手段は、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで前記割合が異なるように、前記複数種類のインクそれぞれについて、前記第1の多値データに基づいて前記第2の多値データを量子化処理すると共に前記第2の多値データに基づいて前記第1の多値データを量子化処理することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記量子化処理は誤差拡散処理であり、
前記量子化手段は、前記複数種類のインクそれぞれについて、前記第1の多値データに誤差拡散処理を行う場合に用いる閾値を前記第2の多値データに基づいて決定し、決定された閾値を用いて前記第1の多値データを量子化し、且つ、前記第2の多値データに誤差拡散処理を行う場合に用いる閾値を前記第1の多値データに基づいて決定し、決定された閾値を用いて前記第2の多値データを量子化することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記量子化手段は、(i)前記複数種類のインクそれぞれについて、L(Lは3以上の整数)値の量子化処理によって前記複数回の相対移動に対応した複数のL値の量子化データを生成する手段と、(ii)前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで前記割合が異なるように、前記複数種類のインクそれぞれについて、前記複数のL値の量子化データそれぞれをドットパターンによって2値の量子化データに変換する手段と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記複数種類のインクには、シアン、マゼンタ、ブラックおよびイエローが含まれ、前記処理手段は、シアン、マゼンタおよびブラックの前記割合がイエローの前記割合よりも大きくなるように前記入力画像データを処理することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記処理手段は、前記複数種類のインクのうち、より明度の低いインクの前記割合がより明度の高いインクの前記割合よりも大きくなるように前記入力画像データを処理することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記処理手段は、
前記入力画像データを前記複数種類のインクそれぞれに対応する複数種類のインク別多値データに分配する手段と、
該複数種類のうち所定の種類のインクに対応するインク別多値データを前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する第1の変換手段と、
前記第1の変換手段によって得られた前記複数の多値データそれぞれについて量子化する第1の量子化手段と、
前記複数種類のうち前記所定の種類以外のインクに対応するインク別多値データを量子化する第2の量子化手段と、
前記第2の量子化手段によって得られた量子化データを、前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する第2の変換手段と、
を備え、
前記処理手段は、前記第1の変換手段および前記第1の量子化手段の少なくとも一方において、前記割合を前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異ならせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記複数種類のうち前記所定の種類以外のインクは、イエローインクまたはフォトインクであることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記複数種類のうち前記所定の種類以外のインクは、前記所定の種類のインクよりも明度が高いことを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1乃至11のいずれかに記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするコンピュータ可読プログラム。
【請求項13】
複数種類のインクを記録するための記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行うために、当該画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記複数回の相対移動によって前記画素領域に記録されるべき総ドット数に対する、前記複数回の相対移動によって前記画素領域内の同じ位置に重複して記録されるべきドット数の割合が、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように、前記入力画像データを処理するための処理工程を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
前記処理工程は、
前記入力画像データを前記複数種類のインクそれぞれに対応する複数種類のインク別多値データに分配する工程と、
該複数種類のインク別多値データのそれぞれを前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する変換工程と、
前記複数種類のインクそれぞれに対応する前記複数の多値データそれぞれについて量子化する量子化工程と
を有し、
前記処理工程は、前記変換工程および前記量子化工程の少なくとも一方において、前記割合を前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異ならせることを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記複数種類のインクには、シアン、マゼンタ、ブラックおよびイエローが含まれ、前記処理工程は、シアン、マゼンタおよびブラックの前記割合がイエローの前記割合よりも大きくなるように前記入力画像データを処理することを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記処理工程は、前記複数種類のインクのうち、より明度の低いインクの前記割合がより明度の高いインクの前記割合よりも大きくなるように前記入力画像データを処理することを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項17】
前記処理工程は、
前記入力画像データを前記複数種類のインクそれぞれに対応する複数種類のインク別多値データに分配する工程と、
該複数種類のうち所定の種類のインクに対応するインク別多値データを前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する第1の変換工程と、
前記第1の変換工程によって得られた前記複数の多値データそれぞれについて量子化する第1の量子化工程と、
前記複数種類のうち前記所定の種類以外のインクに対応するインク別多値データを量子化する第2の量子化工程と、
前記第2の量子化手段によって得られた量子化データを、前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する第2の変換工程と、
を有し、
前記処理工程は、前記第1の変換工程および前記第1の量子化工程の少なくとも一方において、前記割合を前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異ならせることを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項1】
複数種類のインクを用いてドットを記録するための記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行うために、当該画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記複数回の相対移動によって前記画素領域に記録されるべき総ドット数に対する、前記複数回の相対移動によって前記画素領域内の同じ位置に重複して記録されるべきドット数の割合が、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように、前記入力画像データを処理するための処理手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記処理手段は、
前記入力画像データを前記複数種類のインクそれぞれに対応する複数種類のインク別多値データに分配する手段と、
該複数種類のインク別多値データのそれぞれを前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する変換手段と、
前記複数種類のインクそれぞれに対応する前記複数の多値データそれぞれについて量子化する量子化手段と
を備え、
前記処理手段は、前記変換手段および前記量子化手段の少なくとも一方において、前記割合を前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異ならせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで前記割合を異ならせるために、前記複数種類のインク別多値データから変換された前記複数の多値データ値の比の偏りが前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように前記複数種類のインク別多値データを変換することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数種類のインクそれぞれについての前記複数回の相対移動に対応する前記複数の多値データは、前記複数回の相対移動のうちの少なくとも1回の相対移動に対応した第1の多値データと、前記複数回の相対移動のうちの他の少なくとも1回の相対移動に対応した第2の多値データを含み、
前記量子化手段は、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで前記割合が異なるように、前記複数種類のインクそれぞれについて、前記第1の多値データに基づいて前記第2の多値データを量子化処理すると共に前記第2の多値データに基づいて前記第1の多値データを量子化処理することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記量子化処理は誤差拡散処理であり、
前記量子化手段は、前記複数種類のインクそれぞれについて、前記第1の多値データに誤差拡散処理を行う場合に用いる閾値を前記第2の多値データに基づいて決定し、決定された閾値を用いて前記第1の多値データを量子化し、且つ、前記第2の多値データに誤差拡散処理を行う場合に用いる閾値を前記第1の多値データに基づいて決定し、決定された閾値を用いて前記第2の多値データを量子化することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記量子化手段は、(i)前記複数種類のインクそれぞれについて、L(Lは3以上の整数)値の量子化処理によって前記複数回の相対移動に対応した複数のL値の量子化データを生成する手段と、(ii)前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで前記割合が異なるように、前記複数種類のインクそれぞれについて、前記複数のL値の量子化データそれぞれをドットパターンによって2値の量子化データに変換する手段と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記複数種類のインクには、シアン、マゼンタ、ブラックおよびイエローが含まれ、前記処理手段は、シアン、マゼンタおよびブラックの前記割合がイエローの前記割合よりも大きくなるように前記入力画像データを処理することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記処理手段は、前記複数種類のインクのうち、より明度の低いインクの前記割合がより明度の高いインクの前記割合よりも大きくなるように前記入力画像データを処理することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記処理手段は、
前記入力画像データを前記複数種類のインクそれぞれに対応する複数種類のインク別多値データに分配する手段と、
該複数種類のうち所定の種類のインクに対応するインク別多値データを前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する第1の変換手段と、
前記第1の変換手段によって得られた前記複数の多値データそれぞれについて量子化する第1の量子化手段と、
前記複数種類のうち前記所定の種類以外のインクに対応するインク別多値データを量子化する第2の量子化手段と、
前記第2の量子化手段によって得られた量子化データを、前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する第2の変換手段と、
を備え、
前記処理手段は、前記第1の変換手段および前記第1の量子化手段の少なくとも一方において、前記割合を前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異ならせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記複数種類のうち前記所定の種類以外のインクは、イエローインクまたはフォトインクであることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記複数種類のうち前記所定の種類以外のインクは、前記所定の種類のインクよりも明度が高いことを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1乃至11のいずれかに記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするコンピュータ可読プログラム。
【請求項13】
複数種類のインクを記録するための記録手段と記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体の画素領域に記録を行うために、当該画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記複数回の相対移動によって前記画素領域に記録されるべき総ドット数に対する、前記複数回の相対移動によって前記画素領域内の同じ位置に重複して記録されるべきドット数の割合が、前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異なるように、前記入力画像データを処理するための処理工程を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
前記処理工程は、
前記入力画像データを前記複数種類のインクそれぞれに対応する複数種類のインク別多値データに分配する工程と、
該複数種類のインク別多値データのそれぞれを前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する変換工程と、
前記複数種類のインクそれぞれに対応する前記複数の多値データそれぞれについて量子化する量子化工程と
を有し、
前記処理工程は、前記変換工程および前記量子化工程の少なくとも一方において、前記割合を前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異ならせることを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記複数種類のインクには、シアン、マゼンタ、ブラックおよびイエローが含まれ、前記処理工程は、シアン、マゼンタおよびブラックの前記割合がイエローの前記割合よりも大きくなるように前記入力画像データを処理することを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記処理工程は、前記複数種類のインクのうち、より明度の低いインクの前記割合がより明度の高いインクの前記割合よりも大きくなるように前記入力画像データを処理することを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項17】
前記処理工程は、
前記入力画像データを前記複数種類のインクそれぞれに対応する複数種類のインク別多値データに分配する工程と、
該複数種類のうち所定の種類のインクに対応するインク別多値データを前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する第1の変換工程と、
前記第1の変換工程によって得られた前記複数の多値データそれぞれについて量子化する第1の量子化工程と、
前記複数種類のうち前記所定の種類以外のインクに対応するインク別多値データを量子化する第2の量子化工程と、
前記第2の量子化手段によって得られた量子化データを、前記複数回の相対移動に対応する複数の多値データに変換する第2の変換工程と、
を有し、
前記処理工程は、前記第1の変換工程および前記第1の量子化工程の少なくとも一方において、前記割合を前記複数種類のインクの明度に応じて少なくとも2種類のインクで異ならせることを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−201206(P2011−201206A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72193(P2010−72193)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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