説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】画像感性値の処理に関する画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】処理対象画像と、所定の感性値が定められた複数の訓練画像との各々のマッチング度を算出するマッチング度算出部と、前記複数の訓練画像から、前記処理対象画像とのマッチング度が最高となる所定数の訓練画像を抽出し、該所定数の訓練画像の選定された感性種別に関する感性値に基づいて、前記処理対象画像の感性値を算出する感性値算出部と、を含む画像処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に関し、特に、画像感性値の処理に関する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像が伝えるのは、情報のみならず、人間の感情などもある。例えば、人間がある画像から温暖を連想したり、寒気を感じたり、ある画像から活気あふれる場面が伝わったり、活気がないさまが伝わったりする。画像に触発される人間の感情は、感性とも称されている。同一画像であっても、観察者によっては異なる感性を体得することがあり、また、同一観察者であっても、異なる状況では、同一画像に対しても異なる感性を体得することがある。しかしながら、通常、同一画像に対しては、大多数の観察者の感性体得は、略同一であるため、画像の感性体得は、計量化することができ、感性の計量化後の値は、感性値(Kansei Score)と称される。
【0003】
インターネット技術の発展に伴い、多くの人がネットワーク上で写真を共有し、自分の感情を分かち合い、他の閲覧者が写真を閲覧後に、自分の所望の感性を体得できるように望んでいる。これにより、画像への計量化の感性の体得、即ち感性値の取得が求められている。また、人々は、自分の手元の写真では所望の感性体得を与えられないと気づくことが多い。このため、写真を公開する前に、所望の感性値に等しくなるような、或いは少なくとも近くなるような画像の調整が必要となる場合がある。また、ユーザが所望の画像感性値を把握している場合でも、普通のユーザは、画像の感性値を所望の感性値に調整可能な簡単かつ自動的な手段を持っていない。
【0004】
特許文献1(US 7170638 B2)には、画像強調手段が提案されている。「鮮明さ」や、「柔らかさ」等の感情表現の選択に応じて、パソコンの編集指令手段により、画像データ用の編集指令を生成している。画像処理のパラメータ及びステップは、入力状況設定手段により、パソコンの表示手段の特徴に応じた調整を行い、処理後の画像を表示手段に表示している。生成された編集指令は、全体感情表現のスクリプトとして実験室に転送される。実験室においては、全体感情表現スクリプトにより、画像データに画像処理を施している。この場合、出力状況設定手段は、出力媒体の特徴に応じて、画像処理のパラメータを変更している。処理された画像データは、出力手段により出力媒体に出力される。該特許文献1は、異なる表示手段の固有の特徴によっては、同一画像への感性体得が、異なる表示手段間で差が生じるという課題について、ユーザが例えば「鮮明さ」ボタンを押すことにより、画像がよりシャープになり、また、場合によっては、満足のいく効果を得るために複数回ボタンを押す必要がある。該特許文献1では、感性値については開示がなく、画像の感性体得の計量化の試みもない。該文献1では、単に、具体的な画像特徴パラメータの算出及び調整処理を対象としており、1種の半自動手段で、ユーザによる所望の結果を得るための複数回の操作が必要となる。
【0005】
特許文献2(US 2010/0074523 A1)には、画像を異なる感性種類に分類する手段が提案されている。該手段は、画像を多解像度表現とし、複数の高周波数帯域のサンプル画像の統合による画像合成を行い、合成された画像のヒストグラムを生成し、ヒストグラムのパターンに応じた画像分類を行う。該特許文献2では、画像ヒストグラムのパターンと画像感性間の直接的なマッピング関係の構築を試みており、換言すると、感性を画像に割り当てられるように、画像特徴から感性体得までの直接的マッピングの構築を試みているが、画像の感性は、微妙でかつ複雑であり、このような直接的に構築された画像特徴から感性体得までのマッピング関係は、正確でない場合が多い。なお、該特許文献2も、画像の感性体得の計量化については言及されておらず、例えば、ある画像を「温暖」に分類したとしても、該画像の「温暖」の程度が提供されておらず、換言すると、「温暖」に関する感性値が提供されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術における前述の問題を鑑みてなされたものであり、従来技術における問題を解決している。本発明の目的は、画像感性値の処理に関する画像処理装置及び画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
画像特徴から感性値までの直接的マッピングは困難であり、或いは、構築したこのような直接的マッピングは、不正確になることが多いが、画像特徴と特定の感性体得は緊密な関連があることが分かり、例えば、大半の領域がオレンジ色または赤色の画像からは、温暖感が伝わり、多様な色彩を含みかつ色飽和度の高い画像からは、活気感が伝わる。本発明の実施例においては、このような既知の知識により、感性体得に緊密に関連する画像特徴を用いて、予め感性値が定められた訓練画像の集合から、処理対象画像と類似した感性体得の画像を検索し、検索した画像の感性値に基づいて、処理対象画像の感性値を決定することが考えられている。
【0008】
また、ユーザは、処理対象画像の感性値と、所望の感性値との間に一定の差がある場合に、処理対象画像の感性値を調整し、処理対象画像に所望の感性体得を与えられるように、予め処理対象画像に所望の感性値を決定してから、本発明の実施例を実施してもよい。画像特徴から画像感性値までの直接的関係の構築が困難であるため、画像特徴調整用のパラメータの選択が容易ではない。本発明の実施例においては、反復法を用いて、算出された感性値と所望の感性値との直接的な差が大きすぎると、画像調整パラメータを算出し、該画像調整パラメータにより、画像調整を行ってから、画像の感性値を再計算し、このような動作を、画像の感性値が所望の感性値に近づくまで繰り返す。これにより、ユーザは予め感性値を指定するだけでよく、画像の調整工程は、完全に自動で行われる。
【0009】
このため、本発明は、画像の感性体得を評価することができ、計量化された感性値を提供するとともに、画像の感性値をさらに所望の感性値付近に調整可能な画像感性値の処理に関する画像処理装置及び画像処理方法を提供している。
【0010】
本発明の一実施例においては、処理対象画像と、感性値が定められた複数の訓練画像との各々のマッチング度を算出するマッチング度算出部と、前記複数の訓練画像から、前記処理対象画像とのマッチング度が最高となる所定数の訓練画像を抽出し、該所定数の訓練画像の選定された感性種別に関する感性値に基づいて、前記処理対象画像の感性値を算出する感性値算出部と、を備えた画像処理装置を提供している。
【0011】
本発明の他の実施例においては、処理対象画像と、感性値が定められた複数の訓練画像との各々のマッチング度を算出するマッチング度算出ステップと、前記複数の訓練画像から、前記処理対象画像とのマッチング度が最高となる所定数の訓練画像を抽出し、該所定数の訓練画像の選定された感性種別に関する感性値に基づいて、前記処理対象画像の感性値を算出する感性値算出ステップと、を有する画像処理方法を提供している。
【0012】
本発明の実施例によると、ユーザから画像が入力されて感性種別が選定されると、該画像の該感性種別に関する感性値を知ることができ、所望の感性値をさらに指定すると、入力画像が自動調整され、所望の感性表現を有する画像となる。
【0013】
また、本発明の実施例によると、ユーザが、検索エンジンの検索に用いられる画像の感性値を知ることができる。例えば、感性値を用いて画像検索を行うことができ、検索された画像を感性値順に並べ替えることができる。
【0014】
このため、本発明の実施例によれば、ユーザが簡単かつ利便性よく画像の感性値を知ることができ、また、所望の感性表現を有する画像にすることができ、さらに、本発明の実施例は、検索エンジンに用いることができ、検索エンジンにより感性値に関する画像検索を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施例によれば、画像感性値の処理に関する画像処理装置及び画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例による画像処理装置の全体ブロック図である。
【図2】本発明の一実施例によるマッチング度算出部のブロック図である。
【図3】本発明の一実施例による感性値算出部のブロック図である。
【図4】本発明の一実施例による画像調整部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0018】
本発明の実施例においては、感性値向けの画像処理装置及び画像形成方法を提供している。感性は、通常、例えば、「暖かい」と「冷たい」や、「活気気あふれる」と「活気のない」等の互いに反対語の語彙対となっている。先ず、訓練画像の集合が必要となり、ここで、訓練画像の感性値は、異なる感性種別により定められており、例えば、訓練画像は、最も温かい感じの画像はスコア100となり、最も冷たい感じの画像はスコア0となり、他の訓練画像は、暖かさに関して、0から100の間のスコアとなる等のように、暖かさに関して一定範囲内のスコアが与えられている。換言すると、同一集合における訓練画像は、同一感性種別(たとえば、暖かさ)に関する感性値は、一定の範囲内に定められている。また、他の感性種別に関しても訓練画像の定めを行うことができ、例えば、最も活気あふれるさまを表せる訓練画像には、最高のスコアを与え、最も活気のない訓練画像には、最低のスコアを与え、活気あふれるほど、スコアが高くなるようにする。同一集合における訓練画像の異なる感性種別に関する感性値は、同一範囲内に定められても、同一範囲内に定められなくてもよい。その範囲の区間の大きさは、同一でもよく、異なっていてもよい。このため、同一画像の異なる感性種別に関する感性値は異なることがある。同一集合における訓練画像の異なる感性種別に関する感性値を同一範囲内に定めてもよいが、異なる感性種別の正規化処理を行わなくても、本発明の実施例は実施することができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施例による画像処理装置の全体ブロック図である。本実施例による画像処理装置は、入力装置10、メモリ20、表示装置30、及び通信装置40に接続されても良い。画像処理装置は、処理対象画像と、感性値が定められた複数の訓練画像との各々のマッチング度を算出するマッチング度算出部100と、前記複数の訓練画像から、前記処理対象画像とのマッチング度が最高となる所定数の訓練画像を抽出し、該所定数の訓練画像の選定された感性種別に関する感性値に基づいて、前記処理対象画像の感性値を算出する感性値算出部200と、を含む。
【0020】
一実施例による画像処理装置は、画像入力部80をさらに有しても良い。処理対象画像は、ユーザから画像入力部80を介して入力され、ユーザは、所定の各種感性種別から、処理対象画像の感性値の算出のための感性種別を選択する必要がある。入力された画像と訓練画像集合における画像との類似性に関する比較を行い、次に、訓練画像集合から、最も類似するN(Nは、自然数)個の画像を選択し、該N個の画像の訓練画像の予め定められた、選択された感性種別に関する感性値に基づいて、入力画像の選択された感性種別に関する感性値を決定し、得られた感性値を、各種従来技術の手段を用いてユーザに提供することができる。また、ユーザは、1回で複数の感性種別を選択することができ、該画像処理装置は、異なる感性種別に関する処理をそれぞれ行い、入力画像の複数の感性種別に関するそれぞれの感性値を得ることができる。これにより、本実施例による画像処理装置においては、画像感性値を評価可能な機能を実現することができる。
【0021】
一実施例による画像処理装置の改良として、好ましくは、前記処理対象画像の感性値と、選定された感性種別に関する所望の感性値との感性値差分を算出し、該感性値差分が所定閾値を超えたか否かを判断する判断部300と、前記判断部300により、該感性値差分が所定閾値を超えたと判断された場合は、前記処理対象画像を調整し、調整後の前記処理対象画像を新たな前記処理対象画像として、前記マッチング度算出部100に出力する画像調整部400と、をさらに備えることができる。
【0022】
所望の感性値は、ユーザから指定されており、理解すべきことは、所望の感性値は、感性値算出部200から算出された該処理対象画像の感性値と同一感性種別となるか、所望の感性値の属する感性種別が、少なくとも感性値算出部200から算出された複数の感性値の感性種別となる必要がある。なお、ユーザにより入力される所望の感性値は、訓練画像集合における対応する感性種別に関して定められた感性値の範囲内にあることは言うまでもない。また、前記所定の閾値は、ユーザにより指定されてもよく、画像処理装置により設定されてもよい。また、固定したものでもよく、毎回の処理で調整されてもよい。
【0023】
一実施例による画像処理装置は、前記判断部300により、該感性値差分が前記所定閾値以下と判断されると、前記処理対象画像を出力画像として出力する出力部500をさらに有することができる。出力部500から出力される処理対象画像は、実際に選定された感性種別に関する感性値と、ユーザが所望の選定された感性種別に関する感性値との感性値差分が所定の閾値未満になる要求を満たした出力画像となる。
【0024】
一実施例において、選定された感性種別の定められた感性値が、例えば、0〜100の場合、該所定の閾値は、例えば、5、10、20等に設定することができるが、これらの数値は例に過ぎないことは明らかである。感性値差分が該所定の閾値を超えた場合は、画像調整部400において、該感性値差分による画像調整パラメータが算出され、該画像調整パラメータにより画像調整処理が行われ、画像特徴が調整されることになる。ここでは、画像特徴から画像感性値までの直接マッピングの構築を図っておらず、調整された画像特徴の画像を新たな処理対象画像として、マッチング度算出部100へフィードバックし、このような操作を、ある処理中の処理対象画像の感性値と所望の感性値との差分が所定の閾値以下になり、該処理対象画像が出力画像として出力されるまで、繰り返して行っている。
【0025】
図2は、本発明の一実施例によるマッチング度算出部のブロック図である。図2に示されたように、マッチング度算出部100は、処理対象画像をRGB色空間からHSV色空間に変換する変換部120と、HSV色空間から、前記処理対象画像の色ヒストグラムを算出するヒストグラム算出部140と、前記処理対象画像と前記複数の訓練画像の各々との色ヒストグラム距離を算出し、前記複数の訓練画像の各々のマッピング度とするヒストグラム距離算出部160と、を有している。
【0026】
変換部120は、処理対象画像の各画素に対し、各画素のRGB(即ち、赤、緑、青)3原色の画素値を、HSV(Hは、色調(Hue)、Sは、飽和度(Saturation)、Vは、明度(Value)を表す)空間の画素値に変換する。国際色協会(ICC、International Color Consortium)は、RGB、HSV及びその変換方式について具体的な定めがある。RGBからHSVの変換は、例えば、下記式(1)〜(3)から行われるが、他の変換式でも、本発明の実施例の変換部120に用いられることができる。
【数1】

【0027】
ここで、r、g、bは、それぞれ該画素のR(赤)、G(緑)、B(青)成分の画素値であり、maxは、max(r,g,b)で、即ち、該画素r、g、b値中の最大値であり、minは、min(r,g,b)で、即ち、該画素r、g、b値中の最小値であり、h、s、vは、それぞれ該画素のH(色調)、S(飽和度)、V(明度)成分の画素値である。
【0028】
ヒストグラム算出部140は、処理対象画像の色ヒストグラムを算出する。処理対象画像のH成分が、H_Bins個のレベルで、値が、0〜H_Bins-1であり、S成分がS_Bins個のレベルで、値が0〜S_Bins-1であり、V成分がV_Bins個のレベルで、値が0〜V_Bins-1であり、H_Bins、S_Bins、V_Binsとも自然数であるとする。このようにして、色ヒストグラム全体が有する画像レベル(即ち、ヒストグラムの柱)の数Total_Binsは、以下の式(4)から得られる。
【数2】

【0029】
処理対象画像の各画素の解析を行い、該画素のHSV空間における画素値が(h,s,v)である。該画素の画像レベルが、hxS_BinsxV_Bins+sxV_Bins+vであるとする。換言すると、全処理対象画像の各画素の遍歴を行い、各画素を画像レベルがhxS_BinsxV_Bins+sxV_Bins+vである柱に割り当て、1回割り当てると、該柱の値に1が加算される。また、例えば、sxH_BinsxV_Bins+hxV_Bins+V等の他の方式で、画素の画像レベルを決定してもよい。例として、H_Bins = 18,S_Bins = 8,V_Bins = 4とすることができる。また、設計のニーズや傾向に応じて、HSVに、例えば、8、16、10等の他のレベル数をそれぞれ与えてもよい。
【0030】
ヒストグラム距離算出部160は、入力された処理対象画像と訓練画像集合における全訓練画像とのマッチングを行い、例えば、下記式(5)により、処理対象画像とある訓練画像間の色ヒストグラム距離
【数3】

が求められる。
【数4】

ここで、
【数5】

は、処理対象画像の色ヒストグラムであり、次元がTotal_Bins(画像レベル数、即ち、ヒストグラム柱の数)であるベクトルであり、
【数6】

は、ある訓練画像の色ヒストグラムであり、これも次元がTotal_Binsであるベクトルであり、処理対象画像と訓練画像は、同様の方式で、ヒストグラムが決められる。Tは、ベクトルの転置を表す。Aは、行数がTotal_Binsで、列数がTotal_Binsである行列であり、行列Aにおけるi行目のj列目の要素が、
【数7】

であり、i、jは、自然数であり、1〜Total_Binsの自然数であり、
【数8】

は、以下のように定義される。
【数9】

ここで、
【数10】

であり、
【数11】

でり、
【数12】

であり、
【数13】

は、調整可能なパラメータで、例として、
【数14】

は、2、
【数15】

は、1とすることができる。
【数16】

は、設計ニーズや傾向に応じて、他の値を用いてもよく、例えば、それぞれ3、0.3等にすることができ、また、
【数17】

は、以下のように定義されてもよい。
【数18】

式中、
【数19】

であり、
【数20】

であり、
【数21】

であり、
【数22】

は、調整可能なパラメータであり、例として、
【数23】

は、2、
【数24】

は、1、
【数25】

は、1にすることができる。
【数26】

は、設計のニーズや傾向に応じて、他の値を用いてもよく、例えば、それぞれ1.5、0.3、0.5等にすることができる。
【0031】
図3は、本発明の一実施例による感性値算出部200のブロック図である。図3に示すように、感性値算出部200は、並べ替え部220と、抽出部240と、算出部260とを含む。並べ替え部220は、集合における全訓練画像と処理対象画像との色ヒストグラム距離を、大きくなる順に並べ替える。抽出部240は、距離が最も近くなる前のN(Nは、自然数)個の訓練画像を抽出する。Nは、調整可能なパラメータであり、例えば、5や、10等にすることができる。次に、算出部260は、検索されたNの訓練画像の感性値により、処理対象画像の感性値を算出(決定)する。前述のように、1訓練画像は、異なる感性種別に属性する感性値を有することがあり、この場合は、ユーザにより選定された感性種別が必要となり、訓練画像のユーザ選定の感性種別に属する感性値により算出を行うことになる。
【0032】
各種ルートで処理対象画像の感性値を算出することができ、例えば、検索されたN個の訓練画像の感性値の平均を求め、平均値を、処理対象画像の感性種別に関する感性値とすることができ、また、N個の訓練画像における最大及び最小の感性値のいくつかの訓練画像は考慮せず、他の訓練画像の感性値の平均を求め、平均値を処理対象画像の感性値としてもよく、前記平均値を求める方法の代わりに、中間値を取る方法等を用いることができる。要するに、様々な方法により、処理対象画像の感性値を決定することができる。
【0033】
さらに、本発明の実施例による画像処理装置は、ユーザから入力される所望の感性値を受信するようにしてもよく、ここで、処理対象画像について、ユーザは、所望の感性値に属する感性種別を、少なくとも感性値算出部200から算出された感性値に属する感性種別に指定する必要があることが分かる。以下、処理対象画像の感性値の算出処理、及び感性値による処理対象画像の調整処理は、すべてユーザによる感性種別の決定がなされたという前提で行われる。
【0034】
判断部300は、処理対象画像の感性値
【数27】

と所望の感性値
【数28】

との差分を算出し、下記式(6)のように、該差分の絶対値を、感性値差分
【数29】

とすることができる。
【数30】

該感性値差分
【数31】

と所定の閾値との比較を行い、該感性値差分
【数32】

が所定の閾値以下になると、処理対象画像を出力部500に転送し、出力部500から出力画像として出力される。該感性値差分
【数33】

が所定の閾値を越えた場合は、処理対象画像を画像調整部400に転送し、画像特徴の調整が行われる。
【0035】
図4は、本発明の一実施例による画像調整部400のブロック図である。図4に示されたように、前記画像調整部400は、前記感性値差分から、画像調整パラメータを算出する画像調整パラメータ算出部420と、前記画像調整パラメータを用いて、前記処理対象画像の各画素値を調整する画素調整部440と、調整後の前記処理対象画像を新たな前記処理対象画像として、前記マッチング度算出部に出力する反復部460と、を有している。
【0036】
画像調整パラメータ算出部420は、例えば、下記式(7)から、画像調整パラメータ
【数34】

を算出することができる。
【数35】

ここで、αは、調整可能なパラメータであり、例えば、予め0.5に設定されてもよく、0.3、0.7、1、1.5等の他の値に設定されてもよい。予め訓練画像の感性値の範囲を決定することによる影響は、ここで調整され、例えば、
【数36】

は差分であることから、感性値の数値範囲が、該差分の大きさに影響を与えることはなく、数値範囲の大きさが、例えば、100か150かの影響も、αにより調整することができる。前述のように、訓練画像集合の決定時に、異なる感性種類の正規化処理を行わなくとも、本発明の実施例は実行可能であるが、容易にするために、同一集合における訓練画像の異なる感性種類に関する感性値は、同一範囲に決定することができる。
【0037】
画素調整部440は、例えば、下記式(8)〜(10)により、処理対象画像の各画素に対し、該画素r、g、bの値をそれぞれr′、g′、b′に調整することができる。
【数37】

【0038】
代替方法として、画素調整部440は、例えば、下記式(11)〜(13)により、処理対象画像の各画素に対し、該画素r、g、bの値をそれぞれr″、g″、b″に調整することもできる。
【数38】

【0039】
さらに、画素調整部440は、処理対象画像の各画素のh、s、v値の処理により、画像特徴の調整を行ってもよい。例えば、画素調整部440は、下記式(14)〜(16)により、画素のh、s、v値を、それぞれh′、s′、v′に調整することができる。
【数39】

【0040】
また、ICCが規定の任意の、HSV色空間からRGB色空間への変換方法により、画像画素のHSV値を、RGB値に変換することができる。
【0041】
また、異なる感性種類に異なる調整方式を用いることを考慮し、同一の調整方式により、各種感性種類に関する調整を行い、調整後の前記処理すべき対象を取得してもよい。
【0042】
反復部460の動作により、判断部30による、あるループにおける感性値差分が所定の閾値以下になったとの判断になるまで、調整後の前記処理すべき対象の反復処理を行う。
【0043】
本発明の他の実施例においては、処理対象画像と、感性値が定められた複数の訓練画像との各々のマッチング度を算出するマッチング度算出部100によるマッチング度算出ステップと、前記複数の訓練画像から、前記処理対象画像とのマッチング度が最高となる所定数の訓練画像を抽出し、該所定数の訓練画像の選定された感性種別に関する感性値に基づいて、前記処理対象画像の感性値を算出する感性値算出部200による感性値算出ステップと、を有する前記画像処理装置により実行される画像形成方法を提供している。
【0044】
前記画像処理方法においては、さらに、前記処理対象画像の感性値と、選定された感性種別に関する所望の感性値との感性値差分を算出し、該差分が所定閾値を超えたか否かを判断する判断部300による判断ステップと、前記判断ステップにより、該感性値差分が所定閾値を超えたと判断された場合は、前記処理対象画像を調整し、調整後の前記処理対象画像を新たな前記処理対象画像として、前記マッチング度算出ステップに出力する画像調整部400による画像調整ステップと、を有する。
【0045】
前記マッチング度算出ステップは、処理対象画像をRGB色空間からHSV色空間に変換する変換部120による変換ステップと、HSV色空間から、前記処理対象画像の色ヒストグラムを算出するヒストグラム算出部140によるヒストグラム算出ステップと、前記処理対象画像と前記複数の訓練画像の各々との色ヒストグラム距離を算出し、前記複数の訓練画像の各々のマッピング度とするヒストグラム距離算出部160によるヒストグラム距離算出ステップと、を有する。
【0046】
前記画像調整ステップは、前記感性値差分から、画像調整パラメータを算出する画像調整パラメータ算出部420による画像調整パラメータ算出ステップと、前記画像調整パラメータを用いて、前記処理対象画像の各画素値を調整する画素調整部440による画素調整ステップと、調整後の前記処理対象画像を新たな前記処理対象画像として、前記マッチング度算出ステップに出力する反復部460による反復ステップと、を有する。
【0047】
前記画像処理方法は、前記判断ステップにより、該感性値差分が前記所定閾値以下と判断されると、前記処理対象画像を出力画像として出力する、出力部500による出力ステップをさらに有する。
【0048】
なお、本明細書における一連の動作は、ハードウェアや、ソフトウェアや、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせから実行することができる。ソフトウェアにより該一連の動作を実行時には、コンピュータプログラムを専用ハードウェアのコンピュータに内蔵されたメモリにインストールし、コンピュータにより該コンピュータプログラムを実行させてもよい。或いは、コンピュータプログラムを各種処理が実行可能な汎用コンピュータにインストールし、コンピュータにより該コンピュータプログラムを実行させてもよい。
【0049】
例えば、コンピュータプログラムを記録媒体であるハードディスクやROMに予め保存するか、一時または永久的にコンピュータプログラムをフロッピや、CD−ROMや、MOや、DVDや、磁気ディスクや、半導体メモリ等のような移動記録媒体に記憶(記録)することができ、このような移動記録媒体をパッケージとして提供してもよい。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、本発明の趣旨を離脱しない限り、本発明に対するあらゆる変更は本発明の範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象画像と、所定の感性値が定められた複数の訓練画像との各々のマッチング度を算出するマッチング度算出部と、
前記複数の訓練画像から、前記処理対象画像とのマッチング度が最高となる所定数の訓練画像を抽出し、該所定数の訓練画像の選定された感性種別に関する感性値に基づいて、前記処理対象画像の感性値を算出する感性値算出部と、を含む画像処理装置。
【請求項2】
前記処理対象画像の感性値と、前記選定された感性種別に関する所望の感性値との感性値差分を算出し、該感性値差分が所定閾値を超えたか否かを判断する判断部と、
前記判断部により、前記感性値差分が前記所定閾値を超えたと判断された場合は、前記処理対象画像を調整し、調整後の前記処理対象画像を新たな前記処理対象画像として、前記マッチング度算出部に出力する画像調整部と、を更に含む請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記マッチング度算出部は、
前記処理対象画像をRGB色空間からHSV色空間に変換する変換部と、
前記HSV色空間から、前記処理対象画像の色ヒストグラムを算出するヒストグラム算出部と、
前記処理対象画像と、前記複数の訓練画像の各々との色ヒストグラム距離を算出して、前記複数の訓練画像の各々のマッピング度とするヒストグラム距離算出部と、を含む請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像調整部は、
前記感性値差分により、画像調整パラメータを算出する画像調整パラメータ算出部と、
前記画像調整パラメータを用いて、前記処理対象画像の各画素値を調整する画素調整部と、
調整後の前記処理対象画像を新たな前記処理対象画像として、前記マッチング度算出部に出力する反復部と、を含む請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判断部により、前記感性値差分が前記所定閾値以下と判断されると、前記処理対象画像を出力画像として出力する出力部を更に含む請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
処理対象画像と、所定の感性値が定められた複数の訓練画像との各々のマッチング度を算出するマッチング度算出ステップと、
前記複数の訓練画像から、前記処理対象画像とのマッチング度が最高となる所定数の訓練画像を抽出し、該所定数の訓練画像の選定された感性種別に関する感性値に基づいて、前記処理対象画像の感性値を算出する感性値算出ステップと、を含む画像処理方法。
【請求項7】
前記処理対象画像の感性値と、前記選定された感性種別に関する所望の感性値との感性値差分を算出し、該感性値差分が所定閾値を超えたか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにより、前記感性値差分が前記所定閾値を超えたと判断された場合は、前記処理対象画像を調整し、調整後の前記処理対象画像を新たな前記処理対象画像として、前記マッチング度算出ステップに出力する画像調整ステップと、を更に含む請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記マッチング度算出ステップは、
前記処理対象画像をRGB色空間からHSV色空間に変換する変換ステップと、
前記HSV色空間から、前記処理対象画像の色ヒストグラムを算出するヒストグラム算出ステップと、
前記処理対象画像と、前記複数の訓練画像の各々との色ヒストグラム距離を算出して、前記複数の訓練画像の各々のマッピング度とするヒストグラム距離算出ステップと、を含む請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記画像調整ステップは、
前記感性値差分により、画像調整パラメータを算出する画像調整パラメータ算出ステップと、
前記画像調整パラメータを用いて、前記処理対象画像の各画素値を調整する画素調整ステップと、
調整後の前記処理対象画像を新たな前記処理対象画像として、前記マッチング度算出ステップに出力する反復ステップと、を含む請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記判断ステップにより、前記感性値差分が前記所定閾値以下と判断されると、前記処理対象画像を出力画像として出力する出力ステップをさらに有する請求項7に記載の画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−174273(P2012−174273A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33304(P2012−33304)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】