画像処理装置及び色変換テーブル生成方法
【課題】分版印刷時、色抜けや階調段差が目立ちやすい特定色の高彩度部から暗部の階調特性の改善を図る。
【解決手段】複数の特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した複数の分版印刷用の色変換テーブルを備え、指定された特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した分版印刷用の色変換テーブルを用いて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定された特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換して、分版印刷を行う画像処理装置において、分版印刷用の色変換テーブルを、特定色毎に、少なくとも最高彩度から暗部の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成する。
【解決手段】複数の特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した複数の分版印刷用の色変換テーブルを備え、指定された特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した分版印刷用の色変換テーブルを用いて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定された特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換して、分版印刷を行う画像処理装置において、分版印刷用の色変換テーブルを、特定色毎に、少なくとも最高彩度から暗部の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、及び、該画像処理装置で使用される分版印刷用の色変換テーブルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙面上のCAD図面や文書に対して、強調したい個所や訂正した箇所等を墨以外の着色材でペン入れをすることがある。このペン入れした文書をスキャナ等で読み取り電子化し、印刷する際に、再度、プリンタ等で印刷する際に、ペン入れした箇所が目立つように画像処理を行う場合がある。
【0003】
このような用途に対し、省トナーの観点から、フルカラーの入力画像の色情報に対して、所定の色相範囲に含まれる色情報については、通常のフルカラー印刷よりも少ない2種類の色材(例えばマゼンタトナーとブラックトナー)を使用して出力し、当該色相範囲外の色情報は1種類の色材(例えばブラックトナー)で出力する、分版印刷と呼ばれる方法が知られている。
【0004】
しかし、従来は特定色に対する通常印刷との色味差異を防ぐことや共通処理を流用する点から、通常印刷と同様の色変換/墨生成パラメータ及び画像処理を行ってから分版印刷を実施しており、描画後の色版を強制的に削除するため、特に高彩度部から暗部の色に対し、色抜けや階調段差(階調潰れ)が発生する問題があった。
【0005】
例えば、特許文献1には、印字色を指定し、入力されたカラー画像信号をCMY各成分の内いずれか2つを同じ値として、指定印字色を示す多値信号に変換し、この多値信号に墨入れ処理を施して多値CMYK信号を出力する技術が記載されているが、高彩度部から暗部にかけての見た目での階調段差が発生する問題は解消されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分版印刷時において、特定色の高彩度部から暗部の階調特性や視認性を保持しながら色抜けを防ぐことを可能にした画像処理装置、及び、該画像処理装置で使用される分版印刷用の色変換テーブルの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した複数の分版印刷用の色変換テーブルを備え、指定された特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した分版印刷用の色変換テーブルを用いて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定された特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換して、分版印刷を行う画像処理装置であって、前記分版印刷用の色変換テーブルは、特定色毎に、少なくとも最高彩度から暗部の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成されていることを主要な特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像処理装置は、特定色及び該特定色の適用色相範囲を選択する手段と、前記選択された特定色について、最高彩度から最低彩度の、白〜特定色〜黒の階調色からなる目標色データを作成する手段と、前記選択された特定色について、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値を低下させるための補正パラメータを抽出する手段と、標準フルカラーの色情報(以下、入力色情報)を入力する手段と、入力色情報に対して、該入力色情報が、前記選択された特定色の適用色相範囲内の場合には、該入力色情報の明度と彩度に応じて、前記目標色データの階調色を割り当て、特定色の適用色相範囲外の場合には、該入力色情報の明度に応じて、前記目標色データのグレースケールを割り当てることで、出力色データを作成する手段と、前記出力色データについて、前記補正パラメータを用いて明度と彩度を補正し、さらに、該補正後の出力色データについて、明部の階調色に含まれる墨成分を除去して、出力色情報を作成する手段と、前記入力色情報と前記出力色情報とを対応付けて色変換テーブルを生成する手段とを有することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、画像処理装置にて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定され特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換するために用いられる分版印刷用の色変換テーブルを生成する色変換テーブル生成方法であって、コンピュータは、特定色及び該特定色の適用色相範囲を選択するステップと、前記選択された特定色について、最高彩度から最低彩度の、白〜特定色〜黒の階調色からなる目標色データを作成するステップと、前記選択された特定色について、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値を低下させるための補正パラメータを抽出するステップと、標準フルカラーの色情報(以下、入力色情報)を入力するステップと、入力色情報に対して、該入力色情報が、前記選択された特定色の適用色相範囲内の場合には、該入力色情報の明度と彩度に応じて、前記目標色データの階調色を割り当て、特定色の適用色相範囲外の場合には、該入力色情報の明度に応じて、前記目標色データのグレースケールを割り当てることで、出力色データを作成するステップと、前記出力色データについて、前記補正パラメータを用いて明度と彩度を補正し、さらに、該補正後の出力色データについて、明部の階調色に含まれる墨成分を除去して、出力色情報を作成するステップと、前記入力色情報と前記出力色情報とを対応付けて色変換テーブルを生成して記憶装置に記憶するステップとを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
分版印刷用の色変換テーブルは、少なくとも特定色の最高彩度部から暗部の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成されているため、高彩度部から暗部の階調特性や視認性を保持しつつ、分版印刷画像の色抜けを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の画像処理装置の一実施形態の全体構成図である。
【図2】図1中のコンピュータのハードウエア構成図である。
【図3】本画像処理装置が具備する分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットの一実施形態の機能ブロック図である。
【図4】分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットの全体処理フローチャートである。
【図5】目標色データ作成部の詳細処理フローチャートである。
【図6】HSV色空間と目標色データとの関係を示す図である。
【図7】輝度/彩度補正部の詳細処理フローチャートである。
【図8】出力色データ作成部の詳細処理フローチャートである。
【図9】出力色データ作成部での処理イメージを示す図である。
【図10】分版印刷補正部の詳細処理フローチャートである。
【図11】分版印刷補正部での処理イメージを示す図である。
【図12】分版印刷用の色変換テーブルの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の画像処理装置の一実施形態の全体構成図を示す。図1において、100は画像処理装置としてのコンピュータ、200は画像形成装置としてのプリンタであり、両者は有線または無線で接続されている。
【0014】
コンピュータ100は、アプリケーション110、オペレーティングシステム(OS)120、プリンタドライバ130、データ記憶部140を有する。データ記憶部140は、通常印刷用及び分版印刷用の複数の色変換テーブル(LUT)140を格納している。分版印刷用の色変換テーブルは、特定色(例えば、C/M/Y)毎に、該特定色の適用色相範囲分だけ存在する。
【0015】
図2に、コンピュータ100のハードウエア構成図を示す。図2において、コンピュータ100は、種々の処理を実行するCPU10、該CPU10の処理に必要な各種ソフトウエアやデータなどを格納する記憶装置20、キーボードやマウス等のユーザインタフェース装置30、情報を表示する表示装置40、プリンタ200やその他の外部装置と情報の送受信を制御する通信制御装置50などで構成される。記憶装置20はRAM、ROM、HDDなどの総称である。図1のアプリケーション110、オペ―レションシステム120、プリンタドライバ130は、実際にはCPU10上で動作する。また、図1のデータ記憶部140には、記憶装置20のHDDなどが使用される。
【0016】
図1に戻り、プリンタ200は、プリンタコントローラ210とプリンエンジン220を有する。プリンタコントローラ210は、色変換部211、墨生成部212、濃度変換部213、階調変換部214からなる。該プリンタコントローラ210のハードウエア構成も図2と基本的に同様である。
【0017】
次に、図1の印刷時の動作を説明する。コンピュータ100上のアプリケーション10は、ユーザから処理結果等の画像データの印刷が指示されると、該画像データをオペレーティングシステム120を経由してプリンタドライバ130に送る。ユーザは、分版印刷の場合、出力する特定色(例えば、CMYのいずれか)及び該特定色の適用色相範囲(例えば、全色相、特定色を含めた±30°、特定色を含めた±60°等)を指示する。
【0018】
プリンタドライバ130は、プリンタエンジン220での印刷制御のために画像データに種々の情報を付加するが、色情報(RGB)に関しては、データ記憶部140内の所定の色変換テーブル141を参照し、線形補間等により入力色情報(RGB)を出力色情報(R’G’B’)に変換することで、色変換処理を行う。詳しくは、プリンタドライバ130は、通常印刷においては、データ記憶部140内の通常印刷用(フルカラー印刷用)の色変換テーブルを参照して色変換処理を行い、分版印刷では、データ記憶部140内の、指定された特定色と適用色相範囲に対応する分版印刷用の色変換テーブルを参照して色変換処理を行う。ここで、分版印刷の場合、具体的には、指定された特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した分版印刷用の色変換テーブルを用いて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、指定された特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換する。
【0019】
本発明の特徴は、分版印刷用の色変換テーブルの構成及び生成にあるが、これについては後述する。
【0020】
色変換処理の施された画像データ(以下、RGBデータ)は、プリンタ200側に送られる。プリンタ200のプリンタコントローラ210では、色変換部211が、コンピュータ100側から送付されたRGBデータをCMYデータに変換し、墨生成部212がCMYデータからCMYKデータを生成し、濃度変換部213がCMYKデータに対して濃度変換(γ変換)処理を行い、更に、階調変換部214が濃度変換されたCMYKデータに階調変換処理を順次実施する。
【0021】
そして、プリンタコントローラ210は、通常印刷においては、階調変換部214の階調変換処理で生成されたKトナー版/Cトナー版/Mトナー版/Yトナー版のデータをそのまま印刷データとしてプリンタエンジン220に送出するが、分版印刷においては、生成されたKトナー版/Cトナー版/Mトナー版/Yトナー版のデータから、特定色以外の色版データを削除し、特定色の色版データ/Kデータを印刷データとしてプリンタエンジン220に送出する。
【0022】
プリンタエンジン220は、プリンタコントローラ210から送付された印刷データに基づいて、CMYK4色のトナーによるフルカラー通常印刷、あるいは、CMYのいずれか1色とKのトナーによる分版印刷を行う。
【0023】
なお、図1では、コンピュータ100側が色変換テーブルを保持する構成となっているが、プリンタ200側が色変換テーブルを保持し、プリンタコントローラ210にて、RGBデータをCMYデータへ変換するのに先立って、RGBデータについて色変換処理を行うようにしてもよい。この場合、プリンタ200が画像処理装置を兼ねることになる。
【0024】
次に、本発明の特徴である分版印刷用の色変換テーブルについて説明する。分版印刷では、特定色の高彩度部から暗部にかけての色が、色抜けや階調段差(階調潰れ)の現象が目立ちやすい。そこで、分版印刷用の色変換テーブルは、特定色印刷時の特定色の最高彩度と、特定色のトナーと黒トナーにより生成される最も暗い色の間のグラデーションに対し、見た目での階調段差が生じない程度に、該グラデーションの最高彩度および最も暗い色以外の彩度及び明度が低下するように、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値(RGB値)を当初の値より低下させて構成する。これは、当初の色値に所定の補正パラメータ値(減少率)を乗じることで実現する。減少率は、予め印紙結果の目視等により決定する。これにより、分版印刷時、特定色の高彩度部から暗部の階調特性や視認性を保持しつつ、色抜けを防ぐことが可能になる。
【0025】
なお、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値の低下の度合は、特定色毎に異ならせる。例えば、特定色をYMCKとした場合、低下の度合は、Y>C>Mとする。これにより、明度の高い特定色に対して暗めに印刷できるため、より効果がある。
【0026】
また、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値の低下は、暗部のみの設定としてもよいし、明部および暗部で個々に設定してもよい。この場合、低下の度合は明部<暗部とすればよい。これにより、分版印刷時、特定色の明部側の最高彩度周辺の階調段差(階調潰れ)を軽減できる。
【0027】
以下に、このような構成の分版印刷用の色変換テーブルを生成する装置構成及び方法について説明する。
【0028】
図3は、分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットの一実施形態の機能ブロック図である。該分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットは、一般には図1のコンピュータ100が具備するのが好ましいが、プリンタ200が具備することでもよい。あるいは、別のコンピュータが同様の機能を備えて、そこで生成した色変換テーブルを図1のコンピュータ100やプリンタ200にロードすることでもよい。
【0029】
図3に示すように、本実施形態における分版印刷用の色変換テーブル生成ユニット300は、特定色/色相範囲選択部310、目標色データ作成部320、明部/暗部補正パラメータ抽出部330、色情報入力部340、無彩色/有彩色判定部350、輝度/彩度補正部360、出力色データ作成部370、分版印刷補正部380、変換テーブル化部390で構成される。なお、該分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットのハードウエア構成も図2と基本的に同様である。
【0030】
図4に、本実施形態における分版印刷用の色変換テーブル生成ユニット300の全体的処理フローチャートを示す。なお、図4中、ステップ1004〜1008の処理は、標準フルカラーの全色情報について順次繰り返し実行される。
【0031】
初めに、特定色/色相範囲選択部310、目標色データ作成部320及び明部/暗部補正パラメータ抽出部330の処理・動作を説明する。これらは、特定色及び適用色相範囲が指定される毎に一度だけ動作する。
【0032】
特定色/色相範囲選択部310は、プリンタ出力する特定色を複数の特定色から選択すると共に、入力色情報に対する該特定色の適用色相範囲を、予め定めた複数の組から選択する(ステップ1001)。本実施形態では、特定色はCMYのいずれかを選択し、適用色相範囲は、全色相、特定色を含めた±30°の範囲、特定色を含めた±60°の範囲のいずれかを選択するとする。なお、オペレータ等が直接、特定色及び適用色相範囲を入力することでもよく、この場合には、特定色/色相範囲選択部310を省略することができる。
【0033】
目標色データ作成部320は、特定色/色相範囲選択部310で選択された特定色の情報をもとに、後述の出力色データ作成部370で出力色データを作成するために用いられる目標色データを作成する(ステップ1002)。本実施形態では、HSV色空間(H:色相,S:彩度,V:明るさ)における均等の全色相のデータ(L*a*b値)から、特定色の色相に対応するデータを抽出することで、目標色データを作成するとする。HSV色空間上にて均等のデータ(L*a*b値)は事前に作成して、記憶装置に保持しておくようにする。なお、HSV色空間はHLS色空間としても同様である。
【0034】
図5に、目標色データ作成部320の詳細処理フローチャートを示す。目標色データ作成部320は、特定色/色相範囲選択部310で選択された特定色(CMYのいずれか)の情報を入力する(ステップ2001)。そして、まず、この特定色をHSV色空間の色相(H)に変換する(ステップ2002)。色相(H)は赤を基準に0°〜360°で表わされる。例えば、Y(イエロー)は60度に変換され、C(シアン)は180°に変換され、M(マゼンタ)は300°に変換される。次に、事前に作成済みのHSV色空間における均等の全色相のデータ(L*a*b値)から、特定色の色相に対応するデータ(L*a*b値)を抽出して、特定色に対する目標色データとする(ステップ2003)。最後に、作成して目標色データを記憶装置に保持する(ステップ2004)。
【0035】
図6は、HSV色空間と目標色データの関係を示した図である。図中、紙面と平行する面が特定色の色相面であり、斜線部分が特定色に対する目標色データの領域である。図6に示すように、目標色データは、白〜特定色〜黒の階調色(L*a*b値)で構成され、該階調色は最高彩度(1.0)から最低彩度(0.0)までの全領域をカバーしている。実際には、HSV色空間上の特定色の色相に対応する各代表点の均等色空間値(L*a*b値)が、目標色データとして記憶装置に記憶される。
【0036】
明部/暗部補正パラメータ抽出部330は、特定色/色相範囲選択部310で選択された特定色の情報をもとに、後述の分版印刷補正部380で出力色データの補正に用いられる補正パラメータを抽出する(ステップ1003)。本実施形態では、分版印刷に用いられるCMYそれぞれについて、明部用と暗部用の各補正パラメータが予め記憶装置に保持されているとする。明部/暗部補正パラメータ抽出部330では、記憶装置から特定色(CMYのいずれか)に対応する明部/暗部補正パラメータを読出して分版印刷補正部380に送る。
【0037】
次に、色情報入力部340、無彩色/有彩色判定部350、輝度/彩度補正部360、出力色データ作成部370、分版印刷補正部380及び変換テーブル化部390の処理・動作を説明する。色変換テーブル生成のための基準となる標準フルカラーの色情報(RGB値)は、カラーチャートを読み込むなどして、事前に記憶装置に保持されているとする。
【0038】
色情報入力部340は、記憶装置から標準フルカラーの色情報(RGB値)を順次読み出す(ステップ1004)。該標準フルカラーの色情報(RGB値)は、例えば、(0,0,0),(0,0,16),(0032)・・・(255,255,220),(255,255,240),(255,255,255)などの値である。色情報入力部340にて記憶装置から順次読み出された色情報は、無彩色/有彩色判定部350、輝度/彩度補正部360及び変換テーブル部390に送られる。
【0039】
無彩色/有彩色判定部350は、入力色情報(RGB値)が無彩色か有彩色か判定する(ステップ1005)。具体的には、RGBの値が全て等しい場合、無彩色と判定し、それ以外の場合には有彩色と判定する。無彩色/有彩色判定部350での判定結果は、輝度/彩度補正部360及び出力色データ作成部370に送られる。
【0040】
輝度/彩度補正部360は、入力色情報について、その色相に応じて輝度(明度)及び/又は彩度の補正処理を行う(ステップ1006)。例えば、入力色情報の色相が黄色周辺で且つ明るめの色である場合、プリンタ出力する特定色によっては印刷後の結果が明るめ又は薄めになるため、明るさ(輝度)を低くする補正処理を行う。すなわち、モニタでは明るすぎて薄く印字されてしまう色を、濃く印字することにより、視認性を改善する。
【0041】
図7に、輝度/彩度補正部360の詳細処理フローチャートを示す。輝度/彩度補正処理部360は、色情報入力部340から色情報を入力し(ステップ3001)、該入力色情報のRGB値をHSV値(HLS値でも可)に変換する(ステップ3002)。また、無彩色/有彩色判定部350からの判定結果をもとに入力色情報が有彩色か無彩色か判別する(ステップ3003)。そして、入力色情報が有彩色の場合、色相(H)値に応じて、V(明るさ)とS(彩度)の値を補正する(ステップ3004)。一方、入力色情報が無彩色の場合には、V値のみを補正する(ステップ3005)。補正処理は、単純にVやS値に、それぞれ所定の補正パラメータ(減少率α)を乗算することで行う。必要な補正パラメータは、記憶装置等にあらかじめ保持しておく。輝度/彩度補正部360は、H値と共に、補正後のVS値を出力する(ステップ3006)。
【0042】
出力色データ作成部370は、輝度/彩度補正部360が出力する入力色情報に対応するHSV値を入力して、その補正後のSV値をもとに、目標色データ作成部320にて事前に作成済みの特定色に対応する目標色データから出力色データを作成する(ステップ1007)。図6に示したように、目標色データは、白〜指定色(彩度0.0〜1.0)〜黒の階調色(L*a*b値)からなる。出力色データ作成部370は、補正後のSV値をもとに目標色データの所定の階調色(L*a*b*値)を割り当てることで、出力色データを作成する。
【0043】
図8に、出力色データ作成部370の詳細処理フローチャートを示す。出力色データ作成部370は、輝度/彩度補正部360から入力色情報に対応する補正後のHSV値を入力する(ステップ4001)。次に、特定色/色相範囲選択部310が出力する適用色相範囲情報により、特定色の適用色相範囲が全色か否か判定する(ステップ4002)。いま、特定色の適用色相範囲が全色相以外(例えば、特定色を含めた±30°あるいは±60°の範囲)であるとする。この場合、出力色データ作成部370は、入力されたHSV値のH(色相)の値が、特定色の適用色相範囲内か否か判定する(ステップ4003)。そして、Hの値が特定色の適用色相範囲内であれば、入力されたHSV値のS(彩度)とV(明るさ)の値をもとに、特定色に対応する目標色データの所定の階調色(L*a*b*値)を割り当て、出力色データとする(ステップ4005)。また、Hの値が特定色の適用色相範囲外であれば、入力されたHSV値のSの値を0として、Vの値をもとに、該目標色データのグレースケールの値(L*a*b*値)(ただし、a*,b*=0)を割り当て、出力色データとする(ステップ4006)。
【0044】
一方、特定色の適用色相範囲が全色相の場合には、出力色データ作成部370は、無彩色/有彩色判定部350が出力する無彩色/有彩色の判定結果により、当該入力色情報が有彩色か無彩色かチェックする(ステップ4004)。そして、当該入力色情報が有彩色ならば、入力されたHSV値のSとVの値をもとに、特定色に対応する目標色データの所定の階調色(L*a*b*値)を割り当て、出力色データとする(ステップ4005)。また、当該入力色情報が無彩色ならば、入力されたHSV値のSの値を0として、Vの値をもとに、該目標色データのグレースケールの値(L*a*b*値)(ただし、a*b*=0)を割り当て、出力色データとする(ステップ4006)。
【0045】
その後、出力色データ作成部370は、入力色情報に対して作成した出力色データ(L*a*b*値)を出力する(ステップ4007)。
【0046】
図9に、入力色情報に対応する補正後のSとVの値をもとに、特定色に対応する目標色データの階調色(L*a*b*値)を割り当てる処理イメージを示す。図9の斜線部分は、図6と同様であり、HSV値空間でのある特定色(例えばY色)の色相に対応する目標色データの階調色(L*a*b*値)の分布を示している。いま、入力色情報に対応する補正後のSとVの値が、それぞれSi,Viの場合、A点の階調色(L*a*b*値)が出力色データとなる。なお、グレースケールの場合には、Si=0として、V軸上のVi値に対応する点のL*値(a*,b*=0)を取得するようにする。
【0047】
先に述べたように、実際には、図9の斜線部分は、HSV色空間上の各代表点の均等色空間値(L*a*b*値)の集合である。したがって、Si,Viの値に対応するA点の階調色が存在しない場合もある。この場合には、A点の周辺の階調色をもとに補間処理等でA点の階調色(L*a*b*値)を求めればよい。
【0048】
分版印刷補正部380は、出力色データ作成部370で作成された出力色データ(L*a*b*値)について、明部/暗部補正パラメータ抽出部330から与えられる明部/暗部補正パラメータを用いて彩度および明度を補正し、さらに、明部(白部〜最高彩度部)に混入しているK成分を除去して、分版印刷向けの出力色情報(RGB値)を作成する(ステップ1008)。
【0049】
図10に、分版印刷補正部380の詳細処理フローチャートを示す。分版印刷補正部380は、出力色データ作成部370が出力する出力色データ(L*a*b*値)を入力して(ステップ5001)。該出力色データが有彩色データか否かチェックする(ステップ5002)。ここで、a*,b*=0であれば、当該出力色データは無彩色データ、a*,b*≠0であれば有彩色データである。出力色データが無彩色データの場合、そのL*a*b*値(a*,b*=0)をそのままRGB値に変換し(ステップ5010)、出力色情報とする(ステップ5011)。
【0050】
一方、出力色データが有彩色データの場合には、まず、出力色データ(L*a*b*値)のa*b*の値から彩度(S)値を算出する(ステップ5003)。次に、該出力色データの明度(L*値)をチェックする(ステップ5004)。具体的には、L*値が0.5以上ならば高明度とし、0.5以下ならば低明度とする。なお、L*をVに変換し、該V値を用いて出力色データの明度を判定することでもよい。出力色データが低明度の場合には、明度/暗部補正パラメータから与えられる注目している特定色に対応する暗部補正パラメータを用いて、該出力色データの彩度(S値)及び明度(L*値)を補正する(ステップ5005)。また、出力色データが高明度の場合には、同様に特定色に対応する明部補正パラメータを用いて、該出力色データの彩度(S値)及び明度(L*値)を補正する(ステップ5006)。補正処理は、S値及びL*値に補正パラメータ値(減少率β)を掛けることで行う。
【0051】
例えば、階調段差や色抜けが目立ちやすい低明度では、減少率βは、特定色がシアン(C)の場合にはβ=0.875、特定色がマゼンタ(M)の場合にはβ=0.95、特定色がイエロー(Y)の場合はβ=0.5のように設定する。同様に、高明度に対しても、減少率βをそれぞれ設定する。なお、高明度の減少率βは、低明度のそれよりも大(減少の度合小)に設定する。これらの減少率βは、あらかじめシステム構築等などに印字結果の目視により決定する。明部/暗部補正パラメータ抽出部330は、これらの減少率βから、特定色に対応するものを抽出して分版印刷補正部380に与える。分版印刷補正部380では、出力色データについて、そのS値及びL*値に減少率βを乗じて、色値の変更を行う。出力色データの色値の変更は、階調段差や色抜けが目立ちやすい低明度の場合(L*値<0.5)のみ実施することでもよい。この場合、ステップ5006の処理はスキップされる。
【0052】
図11に、分版印刷補正部380での出力色データの補正処理のイメージを示す。ここでは、特定色は比較的明るいイエロー(Y)とする。Yなどの高明度の特定色は、分版印刷前後で色抜けおよび階調段差(階調潰れ)が目立ちやすい。
【0053】
通常のCMYKトナーを使用した印刷では、最高彩度部から暗部に向かうグラデーションに対し、最高彩度部から暗部の中間までは、CMYトナーを使用し、徐々に無彩色になるように色を形成し、また、暗部の中間から暗部までは、CMYKトナーを使用し、徐々に無彩になるように色を形成している。黄色周辺色相では、明度が高いため、最高彩度部から暗部の中間までは通常印刷ではCおよびMのトナー量を多くして印刷することで、色抜け/階調潰れが発生しないが、特定色Yの分版印刷時はYとKトナーのみ使用してCおよびMトナーを使用しないため、図11(a)の太線部(A)で色抜け/階調潰れが目立つようになる。そこで、出力色データに対して、最高彩度〜暗部にかけては、減少率βを係数として、該出力色データの彩度/明度に相当する色値を下げ、図11(b)の太線部(B)の範囲に色値を変更する。これにより、Kトナー量が多く印字されるようになり、色抜け/階調潰れが改善される。
【0054】
なお、図11では、色抜けおよび階調段差が目立ちやすい暗部側の処理のみを記載しているが、明部側の最高彩度周辺の階調潰れが目立つ場合は、同様に減少率βを係数として、出力色データに対して補正処理を実行する。
【0055】
図10に戻り、分版印刷補正部380は、出力色データの彩度及び明度の補正後、彩度値(S値)をa*b*値に逆変換して、L*a*b*値に戻し(ステップ5007)、該L*a*b*値をRGB値に変換する(ステップ5008)。すなわち、HSV値空間上で均等分割された出力色データ(L*a*b*値)について、分版印刷向けに補正された出力色データに対応する色情報(RGB値)を得る。この色情報(RGB値)について、明部(白〜最高彩度色)に混入している微量のK(墨)成分を除去し(ステップ5009)、出力色情報とする(ステップ5011)。
【0056】
分版印刷時、微量のK成分が混入していると、粒状感が悪くなる(視認性が劣化する)。このため、入力色情報の色相が黄色周辺である場合には、特定色によらず、明部のK成分を除去し、また、黄色周辺以外である場合には、白〜特定色の階調色において、K値が所定の値以下(例えば、12/255以下)である場合に、K成分を除去する。具体的には、RGBをCMYに変換し、更に墨生成処理によりCMYKを得、そのK値に対して閾値処理を行うことで、微量のK成分を除去する。そして、再びCMYをRGBに逆変換する。
【0057】
図3の無彩色/有彩色判定部350乃至分版印刷補正部380における処理は、色情報入力部340から出力される標準フルカラーの各色情報(入力色情報)について繰り返される。この結果、分版印刷補正部380からは、標準フルカラーの各色情報(入力色情報)に対して、所定の特定色の分版印刷向けの各色情報(出力色情報)が順次出力される。
【0058】
変換テーブル化部390は、色情報入力部340から出力される標準フルカラーの各入力色情報、及び、分版印刷補正部380から出力される各入力色情報に対応する分版印刷向けの各出力色情報を入力して色変換テーブルを作成する(ステップ1009)。具体的には、入力色情報(RGB)とこれに対応する出力情報(R’G’B’)を対としてルックアップテーブル化する。図12に色変換テーブルの具体例を示す。
【0059】
以上のようにして、ある特定色とその適用色相範囲について、分版印刷用の色変換テーブルが作成されたならば、特定色/色相範囲選択部310では、次の特定色とその適用色相範囲を選択する。これを繰り返すことで、各特定色(例えば、C/M/Y)且つ各適用色相範囲(例えば、全色相特定色を含む±30°、特定色を含む±60°)分の各分版印刷用の色変換テーブルが作成される。
【0060】
図1のデータ記憶部140には、このようして作成された各分版印刷用の色変換テーブルが、通常印刷用の色変換テーブルと共に格納されている。通常印刷用の色変換テーブルの構成は従来と同様である。
【符号の説明】
【0061】
100 コンピュータ
141 色変換テーブル
200 プリンタ
300 分版印刷用の色変換テーブル生成ユニット
310 特定色/色相範囲選択部
320 目標色データ作成部
330 明部/暗部補正パラメータ抽出部
340 色情報入力部
350 無彩色/有彩色判定部
360 輝度/彩度補正部
370 出力色データ作成部
380 分版印刷補正部
390 変換テーブル化部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特許第4217536号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、及び、該画像処理装置で使用される分版印刷用の色変換テーブルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙面上のCAD図面や文書に対して、強調したい個所や訂正した箇所等を墨以外の着色材でペン入れをすることがある。このペン入れした文書をスキャナ等で読み取り電子化し、印刷する際に、再度、プリンタ等で印刷する際に、ペン入れした箇所が目立つように画像処理を行う場合がある。
【0003】
このような用途に対し、省トナーの観点から、フルカラーの入力画像の色情報に対して、所定の色相範囲に含まれる色情報については、通常のフルカラー印刷よりも少ない2種類の色材(例えばマゼンタトナーとブラックトナー)を使用して出力し、当該色相範囲外の色情報は1種類の色材(例えばブラックトナー)で出力する、分版印刷と呼ばれる方法が知られている。
【0004】
しかし、従来は特定色に対する通常印刷との色味差異を防ぐことや共通処理を流用する点から、通常印刷と同様の色変換/墨生成パラメータ及び画像処理を行ってから分版印刷を実施しており、描画後の色版を強制的に削除するため、特に高彩度部から暗部の色に対し、色抜けや階調段差(階調潰れ)が発生する問題があった。
【0005】
例えば、特許文献1には、印字色を指定し、入力されたカラー画像信号をCMY各成分の内いずれか2つを同じ値として、指定印字色を示す多値信号に変換し、この多値信号に墨入れ処理を施して多値CMYK信号を出力する技術が記載されているが、高彩度部から暗部にかけての見た目での階調段差が発生する問題は解消されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分版印刷時において、特定色の高彩度部から暗部の階調特性や視認性を保持しながら色抜けを防ぐことを可能にした画像処理装置、及び、該画像処理装置で使用される分版印刷用の色変換テーブルの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した複数の分版印刷用の色変換テーブルを備え、指定された特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した分版印刷用の色変換テーブルを用いて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定された特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換して、分版印刷を行う画像処理装置であって、前記分版印刷用の色変換テーブルは、特定色毎に、少なくとも最高彩度から暗部の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成されていることを主要な特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像処理装置は、特定色及び該特定色の適用色相範囲を選択する手段と、前記選択された特定色について、最高彩度から最低彩度の、白〜特定色〜黒の階調色からなる目標色データを作成する手段と、前記選択された特定色について、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値を低下させるための補正パラメータを抽出する手段と、標準フルカラーの色情報(以下、入力色情報)を入力する手段と、入力色情報に対して、該入力色情報が、前記選択された特定色の適用色相範囲内の場合には、該入力色情報の明度と彩度に応じて、前記目標色データの階調色を割り当て、特定色の適用色相範囲外の場合には、該入力色情報の明度に応じて、前記目標色データのグレースケールを割り当てることで、出力色データを作成する手段と、前記出力色データについて、前記補正パラメータを用いて明度と彩度を補正し、さらに、該補正後の出力色データについて、明部の階調色に含まれる墨成分を除去して、出力色情報を作成する手段と、前記入力色情報と前記出力色情報とを対応付けて色変換テーブルを生成する手段とを有することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、画像処理装置にて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定され特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換するために用いられる分版印刷用の色変換テーブルを生成する色変換テーブル生成方法であって、コンピュータは、特定色及び該特定色の適用色相範囲を選択するステップと、前記選択された特定色について、最高彩度から最低彩度の、白〜特定色〜黒の階調色からなる目標色データを作成するステップと、前記選択された特定色について、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値を低下させるための補正パラメータを抽出するステップと、標準フルカラーの色情報(以下、入力色情報)を入力するステップと、入力色情報に対して、該入力色情報が、前記選択された特定色の適用色相範囲内の場合には、該入力色情報の明度と彩度に応じて、前記目標色データの階調色を割り当て、特定色の適用色相範囲外の場合には、該入力色情報の明度に応じて、前記目標色データのグレースケールを割り当てることで、出力色データを作成するステップと、前記出力色データについて、前記補正パラメータを用いて明度と彩度を補正し、さらに、該補正後の出力色データについて、明部の階調色に含まれる墨成分を除去して、出力色情報を作成するステップと、前記入力色情報と前記出力色情報とを対応付けて色変換テーブルを生成して記憶装置に記憶するステップとを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
分版印刷用の色変換テーブルは、少なくとも特定色の最高彩度部から暗部の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成されているため、高彩度部から暗部の階調特性や視認性を保持しつつ、分版印刷画像の色抜けを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の画像処理装置の一実施形態の全体構成図である。
【図2】図1中のコンピュータのハードウエア構成図である。
【図3】本画像処理装置が具備する分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットの一実施形態の機能ブロック図である。
【図4】分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットの全体処理フローチャートである。
【図5】目標色データ作成部の詳細処理フローチャートである。
【図6】HSV色空間と目標色データとの関係を示す図である。
【図7】輝度/彩度補正部の詳細処理フローチャートである。
【図8】出力色データ作成部の詳細処理フローチャートである。
【図9】出力色データ作成部での処理イメージを示す図である。
【図10】分版印刷補正部の詳細処理フローチャートである。
【図11】分版印刷補正部での処理イメージを示す図である。
【図12】分版印刷用の色変換テーブルの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の画像処理装置の一実施形態の全体構成図を示す。図1において、100は画像処理装置としてのコンピュータ、200は画像形成装置としてのプリンタであり、両者は有線または無線で接続されている。
【0014】
コンピュータ100は、アプリケーション110、オペレーティングシステム(OS)120、プリンタドライバ130、データ記憶部140を有する。データ記憶部140は、通常印刷用及び分版印刷用の複数の色変換テーブル(LUT)140を格納している。分版印刷用の色変換テーブルは、特定色(例えば、C/M/Y)毎に、該特定色の適用色相範囲分だけ存在する。
【0015】
図2に、コンピュータ100のハードウエア構成図を示す。図2において、コンピュータ100は、種々の処理を実行するCPU10、該CPU10の処理に必要な各種ソフトウエアやデータなどを格納する記憶装置20、キーボードやマウス等のユーザインタフェース装置30、情報を表示する表示装置40、プリンタ200やその他の外部装置と情報の送受信を制御する通信制御装置50などで構成される。記憶装置20はRAM、ROM、HDDなどの総称である。図1のアプリケーション110、オペ―レションシステム120、プリンタドライバ130は、実際にはCPU10上で動作する。また、図1のデータ記憶部140には、記憶装置20のHDDなどが使用される。
【0016】
図1に戻り、プリンタ200は、プリンタコントローラ210とプリンエンジン220を有する。プリンタコントローラ210は、色変換部211、墨生成部212、濃度変換部213、階調変換部214からなる。該プリンタコントローラ210のハードウエア構成も図2と基本的に同様である。
【0017】
次に、図1の印刷時の動作を説明する。コンピュータ100上のアプリケーション10は、ユーザから処理結果等の画像データの印刷が指示されると、該画像データをオペレーティングシステム120を経由してプリンタドライバ130に送る。ユーザは、分版印刷の場合、出力する特定色(例えば、CMYのいずれか)及び該特定色の適用色相範囲(例えば、全色相、特定色を含めた±30°、特定色を含めた±60°等)を指示する。
【0018】
プリンタドライバ130は、プリンタエンジン220での印刷制御のために画像データに種々の情報を付加するが、色情報(RGB)に関しては、データ記憶部140内の所定の色変換テーブル141を参照し、線形補間等により入力色情報(RGB)を出力色情報(R’G’B’)に変換することで、色変換処理を行う。詳しくは、プリンタドライバ130は、通常印刷においては、データ記憶部140内の通常印刷用(フルカラー印刷用)の色変換テーブルを参照して色変換処理を行い、分版印刷では、データ記憶部140内の、指定された特定色と適用色相範囲に対応する分版印刷用の色変換テーブルを参照して色変換処理を行う。ここで、分版印刷の場合、具体的には、指定された特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した分版印刷用の色変換テーブルを用いて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、指定された特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換する。
【0019】
本発明の特徴は、分版印刷用の色変換テーブルの構成及び生成にあるが、これについては後述する。
【0020】
色変換処理の施された画像データ(以下、RGBデータ)は、プリンタ200側に送られる。プリンタ200のプリンタコントローラ210では、色変換部211が、コンピュータ100側から送付されたRGBデータをCMYデータに変換し、墨生成部212がCMYデータからCMYKデータを生成し、濃度変換部213がCMYKデータに対して濃度変換(γ変換)処理を行い、更に、階調変換部214が濃度変換されたCMYKデータに階調変換処理を順次実施する。
【0021】
そして、プリンタコントローラ210は、通常印刷においては、階調変換部214の階調変換処理で生成されたKトナー版/Cトナー版/Mトナー版/Yトナー版のデータをそのまま印刷データとしてプリンタエンジン220に送出するが、分版印刷においては、生成されたKトナー版/Cトナー版/Mトナー版/Yトナー版のデータから、特定色以外の色版データを削除し、特定色の色版データ/Kデータを印刷データとしてプリンタエンジン220に送出する。
【0022】
プリンタエンジン220は、プリンタコントローラ210から送付された印刷データに基づいて、CMYK4色のトナーによるフルカラー通常印刷、あるいは、CMYのいずれか1色とKのトナーによる分版印刷を行う。
【0023】
なお、図1では、コンピュータ100側が色変換テーブルを保持する構成となっているが、プリンタ200側が色変換テーブルを保持し、プリンタコントローラ210にて、RGBデータをCMYデータへ変換するのに先立って、RGBデータについて色変換処理を行うようにしてもよい。この場合、プリンタ200が画像処理装置を兼ねることになる。
【0024】
次に、本発明の特徴である分版印刷用の色変換テーブルについて説明する。分版印刷では、特定色の高彩度部から暗部にかけての色が、色抜けや階調段差(階調潰れ)の現象が目立ちやすい。そこで、分版印刷用の色変換テーブルは、特定色印刷時の特定色の最高彩度と、特定色のトナーと黒トナーにより生成される最も暗い色の間のグラデーションに対し、見た目での階調段差が生じない程度に、該グラデーションの最高彩度および最も暗い色以外の彩度及び明度が低下するように、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値(RGB値)を当初の値より低下させて構成する。これは、当初の色値に所定の補正パラメータ値(減少率)を乗じることで実現する。減少率は、予め印紙結果の目視等により決定する。これにより、分版印刷時、特定色の高彩度部から暗部の階調特性や視認性を保持しつつ、色抜けを防ぐことが可能になる。
【0025】
なお、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値の低下の度合は、特定色毎に異ならせる。例えば、特定色をYMCKとした場合、低下の度合は、Y>C>Mとする。これにより、明度の高い特定色に対して暗めに印刷できるため、より効果がある。
【0026】
また、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値の低下は、暗部のみの設定としてもよいし、明部および暗部で個々に設定してもよい。この場合、低下の度合は明部<暗部とすればよい。これにより、分版印刷時、特定色の明部側の最高彩度周辺の階調段差(階調潰れ)を軽減できる。
【0027】
以下に、このような構成の分版印刷用の色変換テーブルを生成する装置構成及び方法について説明する。
【0028】
図3は、分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットの一実施形態の機能ブロック図である。該分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットは、一般には図1のコンピュータ100が具備するのが好ましいが、プリンタ200が具備することでもよい。あるいは、別のコンピュータが同様の機能を備えて、そこで生成した色変換テーブルを図1のコンピュータ100やプリンタ200にロードすることでもよい。
【0029】
図3に示すように、本実施形態における分版印刷用の色変換テーブル生成ユニット300は、特定色/色相範囲選択部310、目標色データ作成部320、明部/暗部補正パラメータ抽出部330、色情報入力部340、無彩色/有彩色判定部350、輝度/彩度補正部360、出力色データ作成部370、分版印刷補正部380、変換テーブル化部390で構成される。なお、該分版印刷用の色変換テーブル生成ユニットのハードウエア構成も図2と基本的に同様である。
【0030】
図4に、本実施形態における分版印刷用の色変換テーブル生成ユニット300の全体的処理フローチャートを示す。なお、図4中、ステップ1004〜1008の処理は、標準フルカラーの全色情報について順次繰り返し実行される。
【0031】
初めに、特定色/色相範囲選択部310、目標色データ作成部320及び明部/暗部補正パラメータ抽出部330の処理・動作を説明する。これらは、特定色及び適用色相範囲が指定される毎に一度だけ動作する。
【0032】
特定色/色相範囲選択部310は、プリンタ出力する特定色を複数の特定色から選択すると共に、入力色情報に対する該特定色の適用色相範囲を、予め定めた複数の組から選択する(ステップ1001)。本実施形態では、特定色はCMYのいずれかを選択し、適用色相範囲は、全色相、特定色を含めた±30°の範囲、特定色を含めた±60°の範囲のいずれかを選択するとする。なお、オペレータ等が直接、特定色及び適用色相範囲を入力することでもよく、この場合には、特定色/色相範囲選択部310を省略することができる。
【0033】
目標色データ作成部320は、特定色/色相範囲選択部310で選択された特定色の情報をもとに、後述の出力色データ作成部370で出力色データを作成するために用いられる目標色データを作成する(ステップ1002)。本実施形態では、HSV色空間(H:色相,S:彩度,V:明るさ)における均等の全色相のデータ(L*a*b値)から、特定色の色相に対応するデータを抽出することで、目標色データを作成するとする。HSV色空間上にて均等のデータ(L*a*b値)は事前に作成して、記憶装置に保持しておくようにする。なお、HSV色空間はHLS色空間としても同様である。
【0034】
図5に、目標色データ作成部320の詳細処理フローチャートを示す。目標色データ作成部320は、特定色/色相範囲選択部310で選択された特定色(CMYのいずれか)の情報を入力する(ステップ2001)。そして、まず、この特定色をHSV色空間の色相(H)に変換する(ステップ2002)。色相(H)は赤を基準に0°〜360°で表わされる。例えば、Y(イエロー)は60度に変換され、C(シアン)は180°に変換され、M(マゼンタ)は300°に変換される。次に、事前に作成済みのHSV色空間における均等の全色相のデータ(L*a*b値)から、特定色の色相に対応するデータ(L*a*b値)を抽出して、特定色に対する目標色データとする(ステップ2003)。最後に、作成して目標色データを記憶装置に保持する(ステップ2004)。
【0035】
図6は、HSV色空間と目標色データの関係を示した図である。図中、紙面と平行する面が特定色の色相面であり、斜線部分が特定色に対する目標色データの領域である。図6に示すように、目標色データは、白〜特定色〜黒の階調色(L*a*b値)で構成され、該階調色は最高彩度(1.0)から最低彩度(0.0)までの全領域をカバーしている。実際には、HSV色空間上の特定色の色相に対応する各代表点の均等色空間値(L*a*b値)が、目標色データとして記憶装置に記憶される。
【0036】
明部/暗部補正パラメータ抽出部330は、特定色/色相範囲選択部310で選択された特定色の情報をもとに、後述の分版印刷補正部380で出力色データの補正に用いられる補正パラメータを抽出する(ステップ1003)。本実施形態では、分版印刷に用いられるCMYそれぞれについて、明部用と暗部用の各補正パラメータが予め記憶装置に保持されているとする。明部/暗部補正パラメータ抽出部330では、記憶装置から特定色(CMYのいずれか)に対応する明部/暗部補正パラメータを読出して分版印刷補正部380に送る。
【0037】
次に、色情報入力部340、無彩色/有彩色判定部350、輝度/彩度補正部360、出力色データ作成部370、分版印刷補正部380及び変換テーブル化部390の処理・動作を説明する。色変換テーブル生成のための基準となる標準フルカラーの色情報(RGB値)は、カラーチャートを読み込むなどして、事前に記憶装置に保持されているとする。
【0038】
色情報入力部340は、記憶装置から標準フルカラーの色情報(RGB値)を順次読み出す(ステップ1004)。該標準フルカラーの色情報(RGB値)は、例えば、(0,0,0),(0,0,16),(0032)・・・(255,255,220),(255,255,240),(255,255,255)などの値である。色情報入力部340にて記憶装置から順次読み出された色情報は、無彩色/有彩色判定部350、輝度/彩度補正部360及び変換テーブル部390に送られる。
【0039】
無彩色/有彩色判定部350は、入力色情報(RGB値)が無彩色か有彩色か判定する(ステップ1005)。具体的には、RGBの値が全て等しい場合、無彩色と判定し、それ以外の場合には有彩色と判定する。無彩色/有彩色判定部350での判定結果は、輝度/彩度補正部360及び出力色データ作成部370に送られる。
【0040】
輝度/彩度補正部360は、入力色情報について、その色相に応じて輝度(明度)及び/又は彩度の補正処理を行う(ステップ1006)。例えば、入力色情報の色相が黄色周辺で且つ明るめの色である場合、プリンタ出力する特定色によっては印刷後の結果が明るめ又は薄めになるため、明るさ(輝度)を低くする補正処理を行う。すなわち、モニタでは明るすぎて薄く印字されてしまう色を、濃く印字することにより、視認性を改善する。
【0041】
図7に、輝度/彩度補正部360の詳細処理フローチャートを示す。輝度/彩度補正処理部360は、色情報入力部340から色情報を入力し(ステップ3001)、該入力色情報のRGB値をHSV値(HLS値でも可)に変換する(ステップ3002)。また、無彩色/有彩色判定部350からの判定結果をもとに入力色情報が有彩色か無彩色か判別する(ステップ3003)。そして、入力色情報が有彩色の場合、色相(H)値に応じて、V(明るさ)とS(彩度)の値を補正する(ステップ3004)。一方、入力色情報が無彩色の場合には、V値のみを補正する(ステップ3005)。補正処理は、単純にVやS値に、それぞれ所定の補正パラメータ(減少率α)を乗算することで行う。必要な補正パラメータは、記憶装置等にあらかじめ保持しておく。輝度/彩度補正部360は、H値と共に、補正後のVS値を出力する(ステップ3006)。
【0042】
出力色データ作成部370は、輝度/彩度補正部360が出力する入力色情報に対応するHSV値を入力して、その補正後のSV値をもとに、目標色データ作成部320にて事前に作成済みの特定色に対応する目標色データから出力色データを作成する(ステップ1007)。図6に示したように、目標色データは、白〜指定色(彩度0.0〜1.0)〜黒の階調色(L*a*b値)からなる。出力色データ作成部370は、補正後のSV値をもとに目標色データの所定の階調色(L*a*b*値)を割り当てることで、出力色データを作成する。
【0043】
図8に、出力色データ作成部370の詳細処理フローチャートを示す。出力色データ作成部370は、輝度/彩度補正部360から入力色情報に対応する補正後のHSV値を入力する(ステップ4001)。次に、特定色/色相範囲選択部310が出力する適用色相範囲情報により、特定色の適用色相範囲が全色か否か判定する(ステップ4002)。いま、特定色の適用色相範囲が全色相以外(例えば、特定色を含めた±30°あるいは±60°の範囲)であるとする。この場合、出力色データ作成部370は、入力されたHSV値のH(色相)の値が、特定色の適用色相範囲内か否か判定する(ステップ4003)。そして、Hの値が特定色の適用色相範囲内であれば、入力されたHSV値のS(彩度)とV(明るさ)の値をもとに、特定色に対応する目標色データの所定の階調色(L*a*b*値)を割り当て、出力色データとする(ステップ4005)。また、Hの値が特定色の適用色相範囲外であれば、入力されたHSV値のSの値を0として、Vの値をもとに、該目標色データのグレースケールの値(L*a*b*値)(ただし、a*,b*=0)を割り当て、出力色データとする(ステップ4006)。
【0044】
一方、特定色の適用色相範囲が全色相の場合には、出力色データ作成部370は、無彩色/有彩色判定部350が出力する無彩色/有彩色の判定結果により、当該入力色情報が有彩色か無彩色かチェックする(ステップ4004)。そして、当該入力色情報が有彩色ならば、入力されたHSV値のSとVの値をもとに、特定色に対応する目標色データの所定の階調色(L*a*b*値)を割り当て、出力色データとする(ステップ4005)。また、当該入力色情報が無彩色ならば、入力されたHSV値のSの値を0として、Vの値をもとに、該目標色データのグレースケールの値(L*a*b*値)(ただし、a*b*=0)を割り当て、出力色データとする(ステップ4006)。
【0045】
その後、出力色データ作成部370は、入力色情報に対して作成した出力色データ(L*a*b*値)を出力する(ステップ4007)。
【0046】
図9に、入力色情報に対応する補正後のSとVの値をもとに、特定色に対応する目標色データの階調色(L*a*b*値)を割り当てる処理イメージを示す。図9の斜線部分は、図6と同様であり、HSV値空間でのある特定色(例えばY色)の色相に対応する目標色データの階調色(L*a*b*値)の分布を示している。いま、入力色情報に対応する補正後のSとVの値が、それぞれSi,Viの場合、A点の階調色(L*a*b*値)が出力色データとなる。なお、グレースケールの場合には、Si=0として、V軸上のVi値に対応する点のL*値(a*,b*=0)を取得するようにする。
【0047】
先に述べたように、実際には、図9の斜線部分は、HSV色空間上の各代表点の均等色空間値(L*a*b*値)の集合である。したがって、Si,Viの値に対応するA点の階調色が存在しない場合もある。この場合には、A点の周辺の階調色をもとに補間処理等でA点の階調色(L*a*b*値)を求めればよい。
【0048】
分版印刷補正部380は、出力色データ作成部370で作成された出力色データ(L*a*b*値)について、明部/暗部補正パラメータ抽出部330から与えられる明部/暗部補正パラメータを用いて彩度および明度を補正し、さらに、明部(白部〜最高彩度部)に混入しているK成分を除去して、分版印刷向けの出力色情報(RGB値)を作成する(ステップ1008)。
【0049】
図10に、分版印刷補正部380の詳細処理フローチャートを示す。分版印刷補正部380は、出力色データ作成部370が出力する出力色データ(L*a*b*値)を入力して(ステップ5001)。該出力色データが有彩色データか否かチェックする(ステップ5002)。ここで、a*,b*=0であれば、当該出力色データは無彩色データ、a*,b*≠0であれば有彩色データである。出力色データが無彩色データの場合、そのL*a*b*値(a*,b*=0)をそのままRGB値に変換し(ステップ5010)、出力色情報とする(ステップ5011)。
【0050】
一方、出力色データが有彩色データの場合には、まず、出力色データ(L*a*b*値)のa*b*の値から彩度(S)値を算出する(ステップ5003)。次に、該出力色データの明度(L*値)をチェックする(ステップ5004)。具体的には、L*値が0.5以上ならば高明度とし、0.5以下ならば低明度とする。なお、L*をVに変換し、該V値を用いて出力色データの明度を判定することでもよい。出力色データが低明度の場合には、明度/暗部補正パラメータから与えられる注目している特定色に対応する暗部補正パラメータを用いて、該出力色データの彩度(S値)及び明度(L*値)を補正する(ステップ5005)。また、出力色データが高明度の場合には、同様に特定色に対応する明部補正パラメータを用いて、該出力色データの彩度(S値)及び明度(L*値)を補正する(ステップ5006)。補正処理は、S値及びL*値に補正パラメータ値(減少率β)を掛けることで行う。
【0051】
例えば、階調段差や色抜けが目立ちやすい低明度では、減少率βは、特定色がシアン(C)の場合にはβ=0.875、特定色がマゼンタ(M)の場合にはβ=0.95、特定色がイエロー(Y)の場合はβ=0.5のように設定する。同様に、高明度に対しても、減少率βをそれぞれ設定する。なお、高明度の減少率βは、低明度のそれよりも大(減少の度合小)に設定する。これらの減少率βは、あらかじめシステム構築等などに印字結果の目視により決定する。明部/暗部補正パラメータ抽出部330は、これらの減少率βから、特定色に対応するものを抽出して分版印刷補正部380に与える。分版印刷補正部380では、出力色データについて、そのS値及びL*値に減少率βを乗じて、色値の変更を行う。出力色データの色値の変更は、階調段差や色抜けが目立ちやすい低明度の場合(L*値<0.5)のみ実施することでもよい。この場合、ステップ5006の処理はスキップされる。
【0052】
図11に、分版印刷補正部380での出力色データの補正処理のイメージを示す。ここでは、特定色は比較的明るいイエロー(Y)とする。Yなどの高明度の特定色は、分版印刷前後で色抜けおよび階調段差(階調潰れ)が目立ちやすい。
【0053】
通常のCMYKトナーを使用した印刷では、最高彩度部から暗部に向かうグラデーションに対し、最高彩度部から暗部の中間までは、CMYトナーを使用し、徐々に無彩色になるように色を形成し、また、暗部の中間から暗部までは、CMYKトナーを使用し、徐々に無彩になるように色を形成している。黄色周辺色相では、明度が高いため、最高彩度部から暗部の中間までは通常印刷ではCおよびMのトナー量を多くして印刷することで、色抜け/階調潰れが発生しないが、特定色Yの分版印刷時はYとKトナーのみ使用してCおよびMトナーを使用しないため、図11(a)の太線部(A)で色抜け/階調潰れが目立つようになる。そこで、出力色データに対して、最高彩度〜暗部にかけては、減少率βを係数として、該出力色データの彩度/明度に相当する色値を下げ、図11(b)の太線部(B)の範囲に色値を変更する。これにより、Kトナー量が多く印字されるようになり、色抜け/階調潰れが改善される。
【0054】
なお、図11では、色抜けおよび階調段差が目立ちやすい暗部側の処理のみを記載しているが、明部側の最高彩度周辺の階調潰れが目立つ場合は、同様に減少率βを係数として、出力色データに対して補正処理を実行する。
【0055】
図10に戻り、分版印刷補正部380は、出力色データの彩度及び明度の補正後、彩度値(S値)をa*b*値に逆変換して、L*a*b*値に戻し(ステップ5007)、該L*a*b*値をRGB値に変換する(ステップ5008)。すなわち、HSV値空間上で均等分割された出力色データ(L*a*b*値)について、分版印刷向けに補正された出力色データに対応する色情報(RGB値)を得る。この色情報(RGB値)について、明部(白〜最高彩度色)に混入している微量のK(墨)成分を除去し(ステップ5009)、出力色情報とする(ステップ5011)。
【0056】
分版印刷時、微量のK成分が混入していると、粒状感が悪くなる(視認性が劣化する)。このため、入力色情報の色相が黄色周辺である場合には、特定色によらず、明部のK成分を除去し、また、黄色周辺以外である場合には、白〜特定色の階調色において、K値が所定の値以下(例えば、12/255以下)である場合に、K成分を除去する。具体的には、RGBをCMYに変換し、更に墨生成処理によりCMYKを得、そのK値に対して閾値処理を行うことで、微量のK成分を除去する。そして、再びCMYをRGBに逆変換する。
【0057】
図3の無彩色/有彩色判定部350乃至分版印刷補正部380における処理は、色情報入力部340から出力される標準フルカラーの各色情報(入力色情報)について繰り返される。この結果、分版印刷補正部380からは、標準フルカラーの各色情報(入力色情報)に対して、所定の特定色の分版印刷向けの各色情報(出力色情報)が順次出力される。
【0058】
変換テーブル化部390は、色情報入力部340から出力される標準フルカラーの各入力色情報、及び、分版印刷補正部380から出力される各入力色情報に対応する分版印刷向けの各出力色情報を入力して色変換テーブルを作成する(ステップ1009)。具体的には、入力色情報(RGB)とこれに対応する出力情報(R’G’B’)を対としてルックアップテーブル化する。図12に色変換テーブルの具体例を示す。
【0059】
以上のようにして、ある特定色とその適用色相範囲について、分版印刷用の色変換テーブルが作成されたならば、特定色/色相範囲選択部310では、次の特定色とその適用色相範囲を選択する。これを繰り返すことで、各特定色(例えば、C/M/Y)且つ各適用色相範囲(例えば、全色相特定色を含む±30°、特定色を含む±60°)分の各分版印刷用の色変換テーブルが作成される。
【0060】
図1のデータ記憶部140には、このようして作成された各分版印刷用の色変換テーブルが、通常印刷用の色変換テーブルと共に格納されている。通常印刷用の色変換テーブルの構成は従来と同様である。
【符号の説明】
【0061】
100 コンピュータ
141 色変換テーブル
200 プリンタ
300 分版印刷用の色変換テーブル生成ユニット
310 特定色/色相範囲選択部
320 目標色データ作成部
330 明部/暗部補正パラメータ抽出部
340 色情報入力部
350 無彩色/有彩色判定部
360 輝度/彩度補正部
370 出力色データ作成部
380 分版印刷補正部
390 変換テーブル化部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特許第4217536号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した複数の分版印刷用の色変換テーブルを備え、指定された特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した分版印刷用の色変換テーブルを用いて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定された特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換して、分版印刷を行う画像処理装置であって、
前記分版印刷用の色変換テーブルは、特定色毎に、少なくとも最高彩度から暗部の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルは、特定色毎に、さらに明部から最高彩度の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルは、更に明部の色値に墨成分が含まれないように設定されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置において、複数の特定色はシアン、マゼンタ、イエローであり、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下する度合いは、イエロー>シアン>マゼンタであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルを生成する手段を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルを生成する手段は、
特定色及び該特定色の適用色相範囲を選択する手段と、
前記選択された特定色について、最高彩度から最低彩度の、白〜特定色〜黒の階調色からなる目標色データを作成する手段と、
前記選択された特定色について、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値を低下させるための補正パラメータを抽出する手段と、
標準フルカラーの色情報(以下、入力色情報)を入力する手段と、
入力色情報に対して、該入力色情報が、前記選択された特定色の適用色相範囲内の場合には、該入力色情報の明度と彩度に応じて、前記目標色データの階調色を割り当て、特定色の適用色相範囲外の場合には、該入力色情報の明度に応じて、前記目標色データのグレースケールを割り当てることで、出力色データを作成する手段と、
前記出力色データについて、前記補正パラメータを用いて明度と彩度を補正し、さらに、該補正後の出力色データについて、明部の階調色に含まれる墨成分を除去して、出力色情報を作成する手段と、
前記入力色情報と前記出力色情報とを対応付けて色変換テーブルを生成する手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルを生成する手段は、
入力色情報について、有彩色か無彩色化を判定する手段と、
入力色情報について、有彩色の場合には輝度と彩度を補正し、無彩色の場合には輝度を補正する手段と、
をさらに有し、
前記出力色データを作成する手段は、前記補正された入力色情報を入力して出力色データの作成処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
画像処理装置にて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定され特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換するために用いられる分版印刷用の色変換テーブルを生成する色変換テーブル生成方法であって、
コンピュータは、
特定色及び該特定色の適用色相範囲を選択するステップ、
前記選択された特定色について、最高彩度から最低彩度の、白〜特定色〜黒の階調色からなる目標色データを作成するステップ、
前記選択された特定色について、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値を低下させるための補正パラメータを抽出するステップ、
標準フルカラーの色情報(以下、入力色情報)を入力するステップ、
入力色情報に対して、該入力色情報が、前記選択された特定色の適用色相範囲内の場合には、該入力色情報の明度と彩度に応じて、前記目標色データの階調色を割り当て、特定色の適用色相範囲外の場合には、該入力色情報の明度に応じて、前記目標色データのグレースケールを割り当てることで、出力色データを作成するステップ、
前記出力色データについて、前記補正パラメータを用いて明度と彩度を補正し、さらに、該補正後の出力色データについて、明部の階調色に含まれる墨成分を除去して、出力色情報を作成するステップ、
前記入力色情報と前記出力色情報とを対応付けて色変換テーブルを生成して記憶装置に記憶するステップ、
を実行することを特徴とする色変換テーブル生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の色変換テーブル生成方法において、
コンピュータは、
入力色情報について、有彩色か無彩色化を判定するステップ、
入力色情報について、有彩色の場合には輝度と彩度を補正し、無彩色の場合には輝度を補正するステップ、
をさらに実行し、
前記出力色データを作成するステップは、前記補正された入力色情報を入力として出力色データの作成処理を行うことを特徴とする色変換テーブル生成方法。
【請求項1】
複数の特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した複数の分版印刷用の色変換テーブルを備え、指定された特定色、該特定色の適用色相範囲に対応した分版印刷用の色変換テーブルを用いて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定された特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換して、分版印刷を行う画像処理装置であって、
前記分版印刷用の色変換テーブルは、特定色毎に、少なくとも最高彩度から暗部の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルは、特定色毎に、さらに明部から最高彩度の間のグラデーションについて、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下するように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルは、更に明部の色値に墨成分が含まれないように設定されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置において、複数の特定色はシアン、マゼンタ、イエローであり、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値が低下する度合いは、イエロー>シアン>マゼンタであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルを生成する手段を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルを生成する手段は、
特定色及び該特定色の適用色相範囲を選択する手段と、
前記選択された特定色について、最高彩度から最低彩度の、白〜特定色〜黒の階調色からなる目標色データを作成する手段と、
前記選択された特定色について、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値を低下させるための補正パラメータを抽出する手段と、
標準フルカラーの色情報(以下、入力色情報)を入力する手段と、
入力色情報に対して、該入力色情報が、前記選択された特定色の適用色相範囲内の場合には、該入力色情報の明度と彩度に応じて、前記目標色データの階調色を割り当て、特定色の適用色相範囲外の場合には、該入力色情報の明度に応じて、前記目標色データのグレースケールを割り当てることで、出力色データを作成する手段と、
前記出力色データについて、前記補正パラメータを用いて明度と彩度を補正し、さらに、該補正後の出力色データについて、明部の階調色に含まれる墨成分を除去して、出力色情報を作成する手段と、
前記入力色情報と前記出力色情報とを対応付けて色変換テーブルを生成する手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理装置において、前記分版印刷用の色変換テーブルを生成する手段は、
入力色情報について、有彩色か無彩色化を判定する手段と、
入力色情報について、有彩色の場合には輝度と彩度を補正し、無彩色の場合には輝度を補正する手段と、
をさらに有し、
前記出力色データを作成する手段は、前記補正された入力色情報を入力して出力色データの作成処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
画像処理装置にて、入力色情報について、指定された特定色の適用色相範囲の有彩色の入力色情報は該特定色の出力色情報に変換し、前記指定され特定色の適用色相範囲内の無彩色の入力色情報及び適用色相範囲外の入力色情報はグレーの出力色情報に変換するために用いられる分版印刷用の色変換テーブルを生成する色変換テーブル生成方法であって、
コンピュータは、
特定色及び該特定色の適用色相範囲を選択するステップ、
前記選択された特定色について、最高彩度から最低彩度の、白〜特定色〜黒の階調色からなる目標色データを作成するステップ、
前記選択された特定色について、出力色情報の彩度及び明度に相当する色値を低下させるための補正パラメータを抽出するステップ、
標準フルカラーの色情報(以下、入力色情報)を入力するステップ、
入力色情報に対して、該入力色情報が、前記選択された特定色の適用色相範囲内の場合には、該入力色情報の明度と彩度に応じて、前記目標色データの階調色を割り当て、特定色の適用色相範囲外の場合には、該入力色情報の明度に応じて、前記目標色データのグレースケールを割り当てることで、出力色データを作成するステップ、
前記出力色データについて、前記補正パラメータを用いて明度と彩度を補正し、さらに、該補正後の出力色データについて、明部の階調色に含まれる墨成分を除去して、出力色情報を作成するステップ、
前記入力色情報と前記出力色情報とを対応付けて色変換テーブルを生成して記憶装置に記憶するステップ、
を実行することを特徴とする色変換テーブル生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の色変換テーブル生成方法において、
コンピュータは、
入力色情報について、有彩色か無彩色化を判定するステップ、
入力色情報について、有彩色の場合には輝度と彩度を補正し、無彩色の場合には輝度を補正するステップ、
をさらに実行し、
前記出力色データを作成するステップは、前記補正された入力色情報を入力として出力色データの作成処理を行うことを特徴とする色変換テーブル生成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−249133(P2012−249133A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120071(P2011−120071)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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