説明

画像処理装置,画像形成装置

【課題】原稿から読み取られた複数の色成分データを含むカラー画像データについて,画像全体の色再現性を損ねることなく,複数の下地色部分の裏写りを防止することのできる画像処理装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】複数の色成分データで表現される複数の色のうち原稿の画像に含まれている頻度が予め設定された高頻度条件を満たす高頻度色を特定して(S1〜S4),その高頻度色ごとに対応して前記高頻度色の近傍の色を該高頻度色に略均一化させるべく前記色成分データ各々を変換するために用いられる個別濃度変換テーブルを生成し(S5),前記高頻度色の近傍の色を表現する前記カラー画像データについて,前記色成分データ各々を,該高頻度色に対応する個別濃度変換テーブルに基づいて変換する(S6〜S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿から複数の色成分データを含むカラー画像データを読み取る画像処理装置,及びその読み取られた色成分データ各々に基づいて画像を形成する画像形成装置に関し,特に,原稿の裏写りを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,スキャナ装置や複写機,ファクシミリ装置,複合機などに搭載される画像処理装置によって,表裏面に画像が形成された原稿の表面の画像のみを読み取る場合,その読み取られた画像に原稿の裏面の画像が写り込む所謂「裏写り」が生じることが問題となっている。そのため,原稿の画像全体の濃度を下げることで裏写りを抑制することが一般的に行われる。しかし,この場合には,裏写り部分ではなく原稿の本来の画像についても濃度が低下することになるという問題が生じる。
これに対し,例えば特許文献1では,濃度及び頻度の関係を二次元で示す濃度ヒストグラムを算出して,その頻度が最も高いものを下地色の濃度と認識し,その下地色の濃度付近の濃度を下地色と同レベルに一律に変換することにより,裏写りを防止することが提案されている。
ここに,図7は,濃度ヒストグラムの一例を示すものである。図7に示すように,濃度ヒストグラムは,画像データに含まれている所定範囲ごとの濃度の頻度を算出し,その濃度及び頻度の関係を示したものである。図7に示す例では,濃度が0〜15の範囲の頻度が最も高いことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3845509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記特許文献1に開示された技術では,原稿の画像データに大きな面積を占める色が複数存在する場合でも,それらのうち最も頻度が高い一つの色の濃度のみを基準に裏写りの防止処理が施されることになるため,他の部分については裏写りを防止することができないという問題が生じる。
また,原稿の画像をカラーで読み取る場合には,複数の色成分データごとに濃度ヒストグラムを算出し,その濃度ヒストグラムごとにおいて最も頻度の高い濃度をその下地色における濃度として特定し,裏写りを防止するように色成分データの変換を行うことが考えられる。しかし,この場合には,画像データ全体において色成分データ各々が変換されることになるため,画像データ全体の色再現性が低下することが問題となる。例えば,R,G,Bの色成分データを含むカラー画像データについて,R色成分の濃度のうち下地色のR色成分の濃度付近の濃度をその下地色の濃度に合わせるように変換すると,裏写り部分ではなく原稿表面に形成された本来の画像に含まれるR色成分の濃度についても下地色に合わせて変換が行われる。そのため,原稿の本来の画像におけるR色成分が強調され或いは抑制されることとなって画像全体の色合いが変化することとなる。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,原稿から読み取られた複数の色成分データを含むカラー画像データについて,画像全体の色再現性を損ねることなく,複数の下地色部分の裏写りを防止することのできる画像処理装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は,原稿の画像を複数の色成分データを含むカラー画像データとして読み取る画像処理装置であって,前記複数の色成分データで表現される複数の色のうち前記原稿の画像に含まれている頻度が予め設定された高頻度条件を満たす高頻度色を特定する高頻度色特定手段と,前記高頻度色特定手段によって特定された高頻度色ごとに対応して,前記高頻度色の近傍の色を該高頻度色に略均一化させるべく前記色成分データ各々を変換するために用いられる個別濃度変換情報を生成する個別濃度変換情報生成手段と,前記高頻度色の近傍の色を表現する前記カラー画像データについて,前記色成分データ各々を,該高頻度色に対応して前記個別濃度変換情報生成手段で生成された前記個別濃度変換情報に基づいて変換する色成分データ変換手段とを備えてなることを特徴として構成される。
また,本発明は,前記画像処理装置と,前記色成分データ変換手段による変換後の前記色成分データ各々に基づいて画像を形成する画像形成部とを備えてなる画像形成装置として捉えてもよい。
本発明によれば,前記高頻度色特定手段によって特定された一又は複数の前記高頻度色の近傍の色を表現する前記カラー画像データについて,その高頻度色に対応して生成された前記個別濃度変換情報に基づいて前記色成分データ各々が変換されることになるため,前記原稿の画像に含まれる頻度が高い色が複数存在する場合でも,その複数の色各々の箇所における裏写りを防止することができる。また,前記高頻度色の近傍の色を表現する前記カラー画像データのみについて前記個別濃度変換情報に基づく前記色成分データ各々の変換が行われ,他の色を表現する前記カラー画像データについては,前記個別濃度変換情報に基づく前記色成分データ各々の変換が行われないため,画像全体の色再現性も損なわれない。
【0006】
具体的に,前記高頻度色特定手段は,前記複数の色成分データで表現される複数の色を予め定められた所定範囲の色ごとの色群に分類したときに前記原稿の画像に含まれている前記色群ごとの頻度を示す第一の色ヒストグラムを算出する第一の色ヒストグラム算出手段と,前記第一の色ヒストグラム算出手段によって算出された前記第一の色ヒストグラムに基づいて,予め設定された所定頻度以上である高頻度色群を抽出する高頻度色群抽出手段と,前記高頻度色群抽出手段によって抽出された高頻度色群ごとに,該高頻度色群に含まれた色ごとの頻度を示す第二の色ヒストグラムを算出する第二の色ヒストグラム算出手段とを備えてなることが考えられる。そして,前記高頻度色特定手段は,前記第二の色ヒストグラム算出手段によって算出された前記第二の色ヒストグラムに基づいて,前記高頻度色群ごとにおいて最も頻度の高い色を前記高頻度条件を満たす高頻度色として特定する。
また,前記個別濃度変換情報は,前記色成分データにガンマ補正を施すために用いられるガンマテーブルであることも考えられる。なお,前記複数の色成分データは,例えばR(赤),G(緑),B(青)各々の画像データ,又はC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)各々の画像データである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,前記高頻度色特定手段によって特定された一又は複数の前記高頻度色の近傍の色を表現する前記カラー画像データについて,その高頻度色に対応して生成された前記個別濃度変換情報に基づいて前記色成分データ各々が変換されることになるため,前記原稿の画像に含まれる頻度が高い色が複数存在する場合でも,その複数の色各々の箇所における裏写りを防止することができる。また,前記高頻度色の近傍の色を表現する前記カラー画像データのみについて前記個別濃度変換情報に基づく前記色成分データ各々の変換が行われ,他の色を表現する前記カラー画像データについては,前記個別濃度変換情報に基づく前記色成分データ各々の変換が行われないため,画像全体の色再現性も損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る複合機Xの概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係る複合機Xの画像処理部4の要部構成を示すブロック図。
【図3】色ヒストグラムの一例を説明するための図。
【図4】本発明の実施の形態に係る複合機Xで実行される濃度変換処理で生成される濃度変換テーブルの一例を説明するための図。
【図5】本発明の実施の形態に係る複合機Xで実行される濃度変換処理で生成される濃度変換テーブルの一例を説明するための図。
【図6】本発明の実施の形態に係る複合機Xで実行される濃度変換処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図7】濃度ヒストグラムの一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず,図1を用いて,本発明の実施の形態に係る複合機Xの概略構成について説明する。
図1に示すように,前記複合機Xは,本発明に係る画像処理装置及び画像形成装置の一例であって,制御部1,操作表示部2,画像読取部3,画像処理部4,画像形成部5などを備えて概略構成されている。なお,複写機も本発明に係る画像形成装置に該当し,スキャナ装置やファクシミリ装置も本発明に係る画像処理装置に該当する。
【0010】
前記制御部1は,CPU及びROM,RAM等の周辺装置を有しており,前記CPUで前記ROMに格納された所定の制御プログラムに従った処理を実行することにより,当該複合機Xを統括的に制御するものである。 前記操作表示部2は,当該複合機Xにおける各種の情報の表示や,ユーザによる入力操作を行うための液晶ディスプレイ,タッチパネル,各種操作キーなどを有している。
前記画像読取部3は,原稿台(不図示)に載置された原稿或いは自動原稿送り装置(ADF,不図示)により搬送された原稿の画像を読み取るCCD等を有している。ここに,前記画像読取部3は,前記原稿の画像をR(赤),G(緑),B(青)の3色の色成分データ(以下,R色成分データ,G色成分データ,B色成分データという)を含むカラー画像データとして読み取るものである。特に,前記画像読取部3は,原稿がモノクロ,カラーのいずれである場合でも,その画像をR,G,B色成分データを含むカラー画像データとして読み取るものである。
前記画像処理部4は,前記画像読取部3によって読み取られたカラー画像データに対して,後述の濃度変換処理(図6のフローチャート参照)や,周知のガンマ補正処理,シェーディング補正処理,平滑・強調処理,CMYK変換処理などの各種画像処理を施す。例えば,前記CMYK変換処理は前記RGB色成分データをCMYK色成分データからなるカラー画像データに変換する処理である。
そして,前記複合機Xにおいて複写処理が実行される場合,前記画像処理部4は,前記画像処理後のカラー画像データを前記画像形成部5に入力する。また,前記複合機Xにおいてスキャン処理が実行される場合,前記画像処理部4は,前記画像処理後のカラー画像データを内部の記憶手段に記憶し,或いはLAN等のネットワークを介して所定の情報処理装置などに送信する。
前記画像形成部5は,感光体ドラムや現像装置などの周知の電子写真方式の画像形成部の構成要素を備えており,給紙カセットから供給された用紙に対し,前記画像処理部4から入力される前記カラー画像データに基づくモノクロ画像又はカラー画像を形成する。
このように構成された前記複合機Xは,前記画像処理部4で実行される後述の濃度変換処理(図6のフローチャート参照)に特徴を有しており,以下,この点について詳説する。
【0011】
ここに,図2は,前記画像処理部4の要部機能を示すブロック図である。
図2に示すように,前記画像処理部4は,濃度変換部41,変換ポイント算出部42,濃度変換テーブル生成部43などを備えている。また,前記画像処理部4は,前記濃度変換部41による変換後のカラー画像データに対してガンマ補正処理,シェーディング補正処理,平滑・強調処理,CMYK変換処理などの各種画像処理を施す画像処理部を有しているが,それらについては従来と異なるところがないため,ここでは説明を省略する。
前記濃度変換部41,前記変換ポイント算出部42,前記濃度変換テーブル生成部43などは,以下で説明する各機能を有する電子回路であっても,或いはMPU等の演算処理部で処理が実行されることにより具現される各処理機能であってもよい。
【0012】
前記濃度変換部41は,前記画像読取部3で読み取られたカラー画像データに含まれる前記R,G,B色成分データを予め設定された濃度変換テーブルに基づいて変換するものである。ここに,前記濃度変換部41が色成分データ変換手段に相当する。なお,本実施の形態では,R,G,B色成分データを変換する場合を例に挙げて説明するが,例えばRGBデータをCMYデータに変換した後,そのC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)各々の画像データを変換する場合にも同様に適用可能である。
但し,前記濃度変換部41は,後述するように前記変換ポイント算出部42によって特定された高頻度色の近傍の色を表現するカラー画像データについて,前記R,G,B色成分データ各々の変換を行い,前記高頻度色を除く他の色を表現するカラー画像データについては,前記R,G,B色成分データの変換を行わない。
前記変換ポイント算出部42は,前記R,G,B色成分データで表現される複数の色のうち原稿の画像に含まれている頻度が予め設定された高頻度条件を満たす高頻度色を特定するものである。ここに,前記変換ポイント算出部42が頻度色特定手段に相当する。
そして,前記変換ポイント算出部42は,特定した高頻度色を表現するR,G,B色成分データの濃度値であるPr,Pg,Pb(以下,「変換ポイントPr,Pg,Pb」と称する)を,前記濃度変換部41及び前記濃度変換テーブル生成部43に入力する。
【0013】
ここで,前記変換ポイント算出部42による高頻度色の特定手法の一例について説明する。
まず,前記変換ポイント算出部42は,R,G,B色成分データで表現される複数の色を予め定められた所定範囲の色ごとの色群に分類したときに,原稿の画像におけるその色群ごとの画素の頻度(数)を示す第一の色ヒストグラム(三次元ヒストグラム)を算出する。ここに,係る処理を実行するときの前記変換ポイント算出部42が第一の色ヒストグラム算出手段に相当する。
ここに,図3は,前記第一の色ヒストグラムの一例を示している。
図3に示すように,前記第一の色ヒストグラムは,カラー画像データを構成するR,G,B色成分データ各々の濃度値を三次元に配置したとき,その三次元の濃度値(R,G,B)で示される所定範囲の色を含む色群ごとの頻度を算出したものである。具体的に,図3に示す例は,R,G,B色成分データ各々の値の組み合わせによって表現される256×256×256の16,777,216色を,16×16×16の4096個の色群に分類し,原稿の画像に含まれるその色群ごとの画素の頻度を算出したものである。この場合,前記色群各々に含まれる所定範囲の色は,(R,G,B)=(0〜15,0〜15,0〜15),(16〜31,0〜15,0〜15),(32〜47,0〜15,0〜15),…(239〜255,239〜255,239〜255)となる。
【0014】
次に,前記変換ポイント算出部42は,前記第一の色ヒストグラムに基づいて,前記色群のうち原稿の画像に含まれる頻度が,予め設定された所定頻度以上である高頻度色群を抽出する。ここに,係る処理を実行するときの前記変換ポイント算出部42が高頻度色群抽出手段に相当する。前記所定頻度は,例えばその色が原稿の画像において裏写りが顕著となる程の面積を占めていることを判断するために予め設定されたものである。
このように,前記変換ポイント算出部42は,最も頻度の高い色群のみを特定するものではなく,前記所定頻度以上である高頻度色群を抽出するものであるため,該高頻度色群が複数抽出される場合もある。
【0015】
その後,前記変換ポイント算出部42は,前記高頻度色群ごとに,該高頻度色群に含まれた色ごとの頻度を示す第二の色ヒストグラムを算出する。ここに,係る処理を実行するときの前記変換ポイント算出部42が第二の色ヒストグラム算出手段に相当する。
例えば,図3に示したように,前記第一の色ヒストグラムが,R,G,B色成分データ各々の値により表現される256×256×256の16,777,216色を16×16×16の4096個の色群に分類し,その色群ごとの頻度を算出したものである場合,前記第二の色ヒストグラムは,その色群に含まれた16×16×16の4096の色ごとの頻度を算出したものとなる。
そして,前記変換ポイント算出部42は,前記第二の色ヒストグラムに基づいて,前記高頻度色群ごとにおいて最も頻度の高い色を前記高頻度条件を満たす高頻度色として特定する。このとき,前述したように前記高頻度色群が複数抽出される場合には,ここでも複数の高頻度色が特定されることになる。
このように,前記変換ポイント算出部42では,まず粗レベルの前記第一の色ヒストグラムが算出された後,その中で所定頻度以上である一又は複数の色群が抽出され,その一又は複数の色群についてのみ,より詳細な前記第二の色ヒストグラムが算出される。そのため,初めから全ての色(上記例では16,777,216色)の頻度を示すヒストグラムを算出する場合に比べて処理負担は著しく軽減される。
【0016】
前記濃度変換テーブル生成部43は,前記変換ポイント算出部42によって特定された高頻度色ごとに対応して,前記高頻度色の近傍の色を該高頻度色に略均一化させるべく前記R,G,B色成分データ各々を変換するために用いられる個別濃度変換テーブル(個別濃度変換情報の一例)を生成し,前記濃度変換部41に入力する。ここに,前記濃度変換テーブル生成部43が個別濃度変換情報生成手段に相当する。
ここで,前記濃度変換テーブル生成部43は,前記変換ポイント算出部42によって特定された高頻度色が複数である場合には,前記RGB色成分データごとに対応する複数の個別濃度変換テーブルを生成する。以下,前記R,G,B色成分データ各々に対応する個別濃度変換テーブルを個別濃度変換テーブルTr,Tg,Tbと称する。
【0017】
ここに,図4,5は,前記変換ポイント算出部42によって特定された高頻度色が2つである場合に前記濃度変換テーブル生成部43で生成される個別濃度変換テーブルの一例を示す図である。もちろん,ここで生成される前記個別濃度変換テーブルは,前記高頻度色の数に応じて増減する。
図4は,一つ目の高頻度色が,R,G,B各々の色成分の値である変換ポイントPr1,Pg1,Pb1で表現される色である場合に,該高頻度色に対応して生成される個別濃度変換テーブルの一例を示すものであって,(a),(b),(c)は,R,G,B色成分データ各々に対応する個別濃度変換テーブルTr1,Tg1,Tb1を示している。
また,図5は,二つ目の高頻度色が,R,G,B各々の色成分の値である変換ポイントPr2,Pg2,Pb2で表現される色である場合に,該高頻度色に対応して生成される個別濃度変換テーブルの一例を示すものであって,(a),(b),(c)は,R,G,B色成分データ各々に対応する個別濃度変換テーブルTr2,Tg2,Tb2を示している。
【0018】
図4(a)に示すように,前記個別濃度変換テーブルTr1は,前記一つ目の高頻度色に含まれるR色成分の値である変換ポイントPr1を中心とする所定範囲の濃度をその変換ポイントPr1に略均一化させるように変換する際に用いられるものである。
同じく,図4(b),(c)に示すように,前記個別濃度変換テーブルTg1,Tb1は,前記一つ目の高頻度色に含まれるG色成分の値である変換ポイントPg1,B色成分の値である変換ポイントPb1を中心とする所定範囲の濃度をその変換ポイントPg1,Pb1に略均一化させるように変換する際に用いられるものである。また,図5に示す前記個別濃度変換テーブルTr2,Tg2,Tb2についても同様に生成されたものである。
なお,前記濃度変換テーブルは,前記高頻度色の近傍の色を該高頻度色に近似させて略均一化させることにより裏写りを防止し得るものであれば,図4,図5に示す形態に限らない。
【0019】
以下,図6のフローチャートに従って,前記画像処理部4によって実行される濃度変換処理の手順の一例について説明する。なお,図中のS1,S2,…は処理手順(ステップ)の番号を表している。
当該濃度変換処理は,前記画像読取部3によって原稿からカラー画像データが読み取られ,該カラー画像データを構成するR,G,B色成分データが前記画像処理部4に入力されることにより,該画像処理部4によって開始される。
なお,例えば前記制御部1や前記画像処理部4が,前記操作表示部2に対するユーザ操作などに従って,当該濃度変換処理の実行の有無を切り換えること,即ち裏写りを除去するか否かを選択可能な構成であることも考えられる。また,前記変換ポイント算出部42による判断指標として用いられる前記所定頻度についても,前記制御部1や前記画像処理部4が,前記操作表示部2に対するユーザ操作に応じて変更可能であることが望ましい。
【0020】
(ステップS1〜S4)
まず,ステップS1〜S4では,前記画像処理部4の変換ポイント算出部42によって,前述したように原稿の画像における前記高頻度色を特定するための処理が実行される。
具体的に,前記変換ポイント算出部42は,前述したように,前記第一の色ヒストグラム(図3参照)を算出し(S1),その第一の色ヒストグラムに基づいて,予め設定された所定頻度以上の色群を抽出する(S2)。そして,前記変換ポイント算出部42は,抽出された色群ごとに前記第二の色ヒストグラムを算出し(S3),その色群ごとにおいて最も頻度の高い高頻度色を特定する(S4)。
【0021】
(ステップS5〜S6)
次に,ステップS5では,前記画像処理部4の濃度変換テーブル生成部43が,前記変換ポイント算出部42によって特定された高頻度色ごとに対応して,前記個別濃度変換テーブル(図4,図5参照)を生成し,その個別濃度変換テーブルを前記濃度変換部41に入力する。
そして,ステップS6では,前記画像処理部4の濃度変換部41が,前記個別濃度変換テーブルと,前記変換ポイント算出部42から入力された高頻度色を表現するR,G,B色成分データの変換ポイントPr,Pg,Pbとに基づいて,読み取られた原稿の画像の一画素ごとのカラー画像データの濃度変換を開始する。
【0022】
(ステップS7)
具体的に,まずステップS7において,前記濃度変換部41は,前記高頻度色のいずれかの近傍の色を表現するカラー画像データであるか否かを判断する。
ここで,前記高頻度色のいずれかの近傍の色を表現するものであると判断された場合(S7のYes側),処理はステップS8に移行し,前記高頻度色のいずれかの近傍の色を表現するものでない場合には(S7のNo側),処理はステップS9に移行する。例えば,図4,図5に示して説明したように,変換ポイントPr1,Pg1,Pb1で表現される高頻度色と,変換ポイントPr2,Pg2,Pb2で表現される高頻度色とのいずれかの近傍の色のカラー画像データが入力された場合(S7のYes側),処理がステップS8に移行する。
従って,前記高頻度色のいずれかの近傍の色を表現するものでないカラー画像データについては,後述のステップS8における前記個別濃度変換テーブルに基づくR,G,B色成分データの変換が行われない。もちろん,予め初期値として設定された所定の変換テーブルなどに基づいて濃度変換を行っても構わない。
【0023】
(ステップS8)
一方,ステップS8では,そのカラー画像データについて,前記R,G,B色成分データ各々を,該高頻度色に対応して前記ステップS5で前記濃度変換テーブル生成部42によって生成された前記個別濃度変換テーブルに基づいて変換する。
例えば,図4に示した変換ポイントPr1,Pg1,Pb1で表現される高頻度色の近傍の色のカラー画像データが入力された場合には,その高頻度色に対応して前記ステップS5で生成された前記個別濃度変換テーブルTr1,Tg1,Tb1に基づいて,前記R,G,B色成分データが変換される。同じく,図5に示した変換ポイントPr2,Pg2,Pb2で表現される高頻度色の近傍の色のカラー画像データが入力された場合には,その高頻度色に対応して前記ステップS5で生成された前記個別濃度変換テーブルTr2,Tg2,Tb2に基づいて,前記R,G,B色成分データが変換される。
【0024】
(ステップS9)
その後,前記濃度変換部41は,前記画像読取部3で読み取られた一枚の原稿の全てのカラー画像データについて前記ステップS7〜S8の処理が実行されたか否かを判断する(S9)。ここで,全て終了するまでの間は(S9のNo側),処理は前記ステップS7に戻され,全て終了すると(S9のYes側),当該濃度変換処理は終了して前記画像処理部4は次のカラー画像データを待ち受けることとなる。
なお,前記画像処理部4では,前述したように,前記濃度変換処理で変換された後のカラー画像データに対して,ガンマ補正処理やシェーディング補正処理,平滑・強調処理,CMYK変換処理などの各種画像処理が施される。
【0025】
以上説明したように,前記複合機Xでは,前記ステップS4で特定された一又は複数の前記高頻度色の近傍の色を表現するカラー画像データについて,その高頻度色に対応して生成された前記個別濃度変換テーブルに基づいて前記色成分データ各々が変換されることになるため,前記原稿の画像に含まれる頻度が高い色が複数存在する場合,即ち読み取られた原稿の画像のうち裏写りが生じていると考えられる箇所が複数存在する場合でも,その複数の色各々の箇所における裏写りを防止することができる。
また,前記高頻度色の近傍の色を表現する前記カラー画像データのみについて前記個別濃度変換テーブルに基づく前記色成分データ各々の変換が行われ,他の色を表現する前記カラー画像データについては,前記個別濃度変換テーブルに基づく前記色成分データ各々の変換が行われないため,画像全体の色再現性も損なわれない。
【実施例】
【0026】
ところで,前記実施の形態で説明した濃度補正処理(図6)は,前記画像処理部4において前記ガンマ補正処理とは独立して実行されるものであるとして説明した。一方,前記濃度補正処理がガンマ補正処理を兼ねたものであってもよい。
この場合には,前記濃度変換テーブル生成部42が,前記高頻度色ごとに対応して,前記R,G,B色成分データごとに対応する個別ガンマテーブル(個別濃度変換情報の一例)を生成し,その個別ガンマテーブルを前記濃度変換部41に入力する。このとき生成される前記個別ガンマテーブルは,前記個別濃度変換テーブル(図4,図5参照)と同様に,前記高頻度色の付近の色を該高頻度色に略均一化させることができる入出力特性を実現するものである。
そして,前記濃度変換部41は,前記高頻度色のいずれかの近傍の色を表現するカラー画像データについては,そのカラー画像データに含まれた前記R,G,B色成分データ各々に対して,前記濃度変換テーブル42で生成された前記個別ガンマテーブルに基づいてガンマ補正処理を施し,その他の色を表現するカラー画像データについては,そのカラー画像データに含まれた前記R,G,B色成分データ各々に対して,例えば予め初期値として設定された初期ガンマテーブルに基づいてガンマ補正処理を施す。
これにより,前記画像処理部4では,前記ガンマ補正処理において,前記高頻度色の近傍の色を表現するカラー画像データについて,前記個別濃度変換テーブルに基づく濃度変換を行うことによって,裏写りを防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:制御部
2:操作表示部
3:画像読取部
4:画像処理部
5:画像形成部
41:濃度変換部
42:変換ポイント算出部
43:濃度変換テーブル生成部
S1,S2,…:処理手順(ステップ)番号
Tr1,Tr2,Tg1,Tg2,Tb1,Tb2:濃度変換テーブル
Pr1,Pr2,Pg1,Pg2,Pb1,Pb2:変換ポイント
X:複合機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を複数の色成分データを含むカラー画像データとして読み取る画像処理装置であって,
前記複数の色成分データで表現される複数の色のうち前記原稿の画像に含まれている頻度が予め設定された高頻度条件を満たす高頻度色を特定する高頻度色特定手段と,
前記高頻度色特定手段によって特定された高頻度色ごとに対応して,前記高頻度色の近傍の色を該高頻度色に略均一化させるべく前記色成分データ各々を変換するために用いられる個別濃度変換情報を生成する個別濃度変換情報生成手段と,
前記高頻度色の近傍の色を表現する前記カラー画像データについて,前記色成分データ各々を,該高頻度色に対応して前記個別濃度変換情報生成手段で生成された前記個別濃度変換情報に基づいて変換する色成分データ変換手段と,
を備えてなることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記高頻度色特定手段が,
前記複数の色成分データで表現される複数の色を予め定められた所定範囲の色ごとの色群に分類したときに前記原稿の画像に含まれている前記色群ごとの頻度を示す第一の色ヒストグラムを算出する第一の色ヒストグラム算出手段と,前記第一の色ヒストグラム算出手段によって算出された前記第一の色ヒストグラムに基づいて,予め設定された所定頻度以上である高頻度色群を抽出する高頻度色群抽出手段と,前記高頻度色群抽出手段によって抽出された高頻度色群ごとに,該高頻度色群に含まれた色ごとの頻度を示す第二の色ヒストグラムを算出する第二の色ヒストグラム算出手段とを備えてなり,
前記第二の色ヒストグラム算出手段によって算出された前記第二の色ヒストグラムに基づいて,前記高頻度色群ごとにおいて最も頻度の高い色を前記高頻度条件を満たす高頻度色として特定するものである請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記個別濃度変換情報が,前記色成分データにガンマ補正を施すために用いられるガンマテーブルである請求項1又は2のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数の色成分データが,R(赤),G(緑),B(青)各々の画像データ,又はC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)各々の画像データである請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置と,前記色成分データ変換手段による変換後の前記色成分データ各々に基づいて画像を形成する画像形成部とを備えてなる画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−155620(P2011−155620A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17431(P2010−17431)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】