説明

画像処理装置

【課題】複数の記憶装置に対するパスワードの入力や管理を簡易にしつつ高いセキュリティを確保し、さらにセキュリティに対する多様なユーザの要求に対応可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】複数のHDD(磁気ディスク装置)32Y、32M、32C、32Kのロック方法を第1、第2の2種類切り替え可能に用意する。第1の方法は、複数のHDDに対して同一のパスワードを使用する。第2の方法は、複数のHDDに対して、一定の解除順序を定めておき、各HDDに、解除の順序が1つ後ろのHDDのパスワードを記憶させる。使用制限を解除するときは、まず、解除の順序が先頭のHDDの使用制限を解除し、その後は、その解除したHDDに記憶されているパスワードを使用して、解除の順序が次のHDDの使用制限を解除することを順次行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを記憶するための不揮発性記憶装置を複数備えた画像処理装置に係わり、特に、複数の不揮発性記憶装置に対する高いセキュリティを確保しつつパスワードの入力や管理を簡易にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像処理装置は、磁気ディスク装置などの大容量の不揮発性記憶装置を搭載しており、これに大量の画像データや個人情報などを格納することが一般化している。
【0003】
しかしながら、磁気ディスク装置などの不揮発性記憶装置は他の機器にも接続可能な汎用性を備えると共に電源をオンオフしてもデータが消えないので、画像処理装置から取り外して他の電子機器(パーソナルコンピュータなど)に接続されると、機密データなどが漏洩してしまう虞がある。
【0004】
そこで、パスワードが認証されるまではデータの読み書き動作を禁止するなどの使用制限をかけることのできる不揮発性記憶装置が増えている。パスワードによる使用制限をかけておくことで、画像処理装置から不揮発性記憶装置が持ち去られた場合でも、保存されているデータが不正に読み出されることが防止される。
【0005】
特許文献1には、このようなパスワードの入力に係わるユーザ負担を軽減するようにしたコンピュータ装置が提案されている。詳細には、BIOS(Basic Input/Output System)に予めパスワードを記憶させておき、システムの立ち上げ時にこのパスワードを自動的に使用して磁気ディスク装置の使用制限を解除するようになっている。
【特許文献1】特開2004−078539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カラー複写機などの画像処理装置は、不揮発性記憶装置を色別に複数台組み込むことが一般的であるため、複数の不揮発性記憶装置に対するパスワードの管理や使用制限の施錠・解除に係わる制御が煩雑になってしまう。たとえば、白黒原稿が多い場合に生じる色毎の使用頻度の差を是正するために不揮発性記憶装置をローテーションさせる場合や、複数の複写機間で不揮発性記憶装置を交換して使用するような場合には、パスワードの管理が極めて煩雑になる。
【0007】
また、パスワードの入力負担を軽減するために、BIOSに記憶させるのと同じようにパスワードを装置内部の不揮発メモリなどに記憶させると、不揮発性記憶装置と一緒にその不揮発メモリが持ち去られた場合に、パスワードによる使用制限が比較的容易に解除されてしまう。この事情は不揮発性記憶装置毎に異なるパスワードを設定しても変わらない。
【0008】
パスワードをユーザに入力させれば上記の問題はないが、セキュリティを高めるために複数の不揮発性記憶装置に異なるパスワードを設定すると、ユーザの入力負担や管理負担が大きくなり、使い勝手がよくない。また、セキュリティの高さをどの程度求めるかはユーザによって異なるので、一律にセキュリティを高めて、その代償として使い勝手が低下することは好ましくない。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、複数の不揮発性記憶装置に対するパスワードの入力や管理を簡易にしつつ高いセキュリティを確保し、さらにセキュリティに対する多様なユーザの要求に対応可能な画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的は以下のいずれかの構成によって達成される。
【0011】
(1)パスワードによって使用制限をかけることが可能な複数の記憶手段を有する画像処理装置において、
複数の記憶手段に対するパスワードを同一にした
ことを特徴とする画像処理装置。
【0012】
(2)パスワードによって使用制限をかけることが可能な複数の記憶手段を有する画像処理装置において、
複数の記憶手段に対して、それらの使用制限を解除する順序を定めておき、
各記憶手段に、解除の順序が1つ後ろの記憶手段のパスワードを記憶させるようにした
ことを特徴とする画像処理装置。
【0013】
(3)パスワードによって使用制限をかけることが可能な複数の記憶手段を有する画像処理装置において、
複数の記憶手段に対して同一のパスワードを使用する第1管理モードと、
複数の記憶手段に対して、それらの使用制限を解除する順序を定めておき、各記憶手段に、解除の順序が1つ後ろの記憶手段のパスワードを記憶させ、前記解除の順序が先頭の記憶手段の使用制限を解除した後はその解除した記憶手段に記憶されているパスワードを使用して前記解除の順序が次の記憶手段の使用制限を解除することを順次行なう第2管理モードと、
を備え、
記憶手段の使用制限の管理に、前記第1管理モードと前記第2管理モードのいずれを使用するかを切り替え可能にした
ことを特徴とする画像処理装置。
【0014】
上記(1)に係わる発明によれば、複数の記憶手段に対する使用制限を同一のパスワードで行なう。
【0015】
使用制限とは、記憶手段のデータ記憶領域に対して読み書きを禁止すること(以後、ロックとも呼ぶ。)である。所定のパスワードを入力することで記憶手段のロックは解除される。たとえば、ロック解除の状態は装置の電源が切れるまで維持され、データ記憶領域にアクセスする毎にパスワードを入力する必要はない。
【0016】
上記(2)に係わる発明によれば、複数の記憶手段に対してその使用制限を解除する順序を予め定めておき、各記憶手段に、解除の順序が1つ後ろの記憶手段のパスワードを記憶させている。したがって、解除の順序が先頭の記憶手段に対して適切なパスワードを入力してその使用制限を解除し、この記憶手段から入手したパスワードを使用して、解除の順序が次の記憶手段の使用制限を解除することを連鎖的に行なうことになる。順序が末尾の記憶手段の使用制限を解除するまでには、それより順序が手前のすべての記憶手段の使用制限を解除しなければならず、それだけ、セキュリティが向上することになる。
【0017】
上記(3)に係わる発明によれば、複数の記憶手段に対する使用制限を同一のパスワードで行なう第1管理モードと、所定の順序で連鎖的に使用制限を解除する第2管理モードとの切り替えができる。
【発明の効果】
【0018】
複数の記憶手段に対する使用制限を、同一のパスワードで行なうようにした画像処理装置では、たとえば、ユーザがパスワードを入力する場合でもパスワードが1つで済むので、パスワードの管理や入力に係わる煩雑さを軽減することができる。
【0019】
また、複数の記憶手段に対してその使用制限を解除する順序を予め定めておき、各記憶手段に、解除の順序が1つ後ろの記憶手段のパスワードを記憶させるものでは、この解除アルゴリズムを把握している本装置においては、順序が先頭の記憶手段に対する使用制限を解除すれば、以降の記憶手段の使用制限を次々に解除することができる。そのため、複数の記憶手段に異なるパスワードを使用してそれらのセキュリティを高めつつ、ユーザが入力するパスワードや内部の不揮発メモリ上で管理するパスワードが1つで済み、パスワードの管理や入力に係わる利便性を高めることができる。一方、第三者にとっては、順序が末尾の記憶手段の使用制限を解除するまでには、それより順序が手前の記憶手段に対する使用制限を次々に破る必要があるので、解除が非常に困難になり、高いセキュリティを確保することができる。
【0020】
さらに、複数の記憶手段に対する使用制限を同一のパスワードで行なう第1管理モードと、所定の順序で連鎖的に使用制限を解除する第2管理モードとを切り替え可能なものでは、使い勝手とセキュリティ性とのバランスに係わる要求の違いに対応することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係わる画像処理装置10の電気的な概略構成を示している。
【0023】
画像処理装置10は、原稿を読み取ってその複製画像を記録紙上に形成する複写機としての機能の他に、原稿を読み取って対応する画像データを出力するスキャナ機能や受信した印刷データに応じて印刷するプリンタ機能などを備えたカラーデジタル複合機として構成されている。
【0024】
画像形成装置10は、当該装置の動作を統括制御するCPU(中央処理装置)21を備えている。CPU21には、システムバス20を通じてROM(リード・オンリ・メモリ)22、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)23、記憶部24、操作表示部25、ネットワーク制御部26、読取部27、画像形成部28およびバスブリッジ29Y、29M、29C、29Kを介してY色、M色、C色、K色を色別に担当する画像ブロック30Y、30M、30C、30K(図中、破線表示)が接続されている。
【0025】
ROM22は、システムバス20が実行する各種のプログラムや固定データを記憶している。RAM23は、CPU21のワークメモリなどとして利用される。記憶部24は、電源をオフにしても記憶が維持される不揮発メモリである。
【0026】
操作表示部25は、ユーザに各種の案内表示や状態表示を行なったり、ユーザから各種の操作を受け付けたりする機能を有する。操作表示部25は、たとえば、表面にタッチパネルを備えた液晶ディスプレイと各種の操作スイッチと、これらを制御する操作部制御CPUなどで構成される。
【0027】
ネットワーク制御部26は、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)などのネットワークを通じて外部のコンピュータ装置などと各種のデータを授受するための回路である。
【0028】
読取部27は、原稿をカラーで読み取り画像データを取り込む機能を有する。読取部27は、原稿を照射する光源と、原稿をその幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーからなる光学経路とを備えている。ラインイメージセンサはCCD(Charge Coupled Device)で構成される。ラインイメージセンサが出力するアナログ画像信号はA/D変換され、デジタルの画像データとして取り込まれる。
【0029】
画像形成部28は、画像データに対応する画像を電子写真プロセスによって記録紙上に形成して出力する機能を果たし、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有するプリンタエンジンである。
【0030】
画像ブロック30Yは、対応するバスブリッジ29Yの下流側に接続された画像バス31Yを備え、これに画像データを保存するための磁気ディスク装置32Yと、メモリ制御部33Yとが接続されている。メモリ制御部33Yの配下には、画像メモリ34Yと圧縮伸張部35Yとが接続されている。
【0031】
メモリ制御部33Yには、読取部27から入力されるY色の画像データYinが入力される。メモリ制御部33Yは、これを圧縮伸張部35Yで圧縮した後、画像メモリ34Yに書き込む機能を有する。また、画像メモリ34Yに格納されている圧縮されたY色の画像データを圧縮伸張部35Yで伸張して画像メモリ34Yに再格納し、この伸張されたY色の画像データを順次読み出して、画像形成部28のY色レーザーユニットへ出力する機能を備えている。
【0032】
さらに、画像メモリ34Yは、画像バス31Y側からのアクセス要求に応じて、画像バス31Y上の画像データを画像メモリ34Yに書き込む機能や、画像メモリ34Yから読み出した画像データを画像バス31Y上へ出力する機能を果たす。
【0033】
画像ブロック30M、画像ブロック30C、画像ブロック30Kは、それぞれ取り扱う画像データの色が相違する他は画像ブロック30Yと同一の構成で、同様に動作するものであり、ここでは、これらの詳細な説明は省略する。なお、画像ブロック30Yの各構成要素と同じ構成要素には、数字が同一であって添え字をYに代えてM、C、Kとした符号を付してある。
【0034】
各色の磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kは読取部27で読み取るなどして得た画像データを保存する記憶手段としての機能を果たす。また、磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32KはATA(AT Attachment)−3規格に準拠し、ロック(パスワードによる使用制限)の設定が可能になっている。
【0035】
ATA−3規格では、32バイト長のパスワードを用いてロックを設定し、そのパスワードを用いてロックを解除する。ロックが設定された磁気ディスク装置ではデータ記憶領域に対するアクセス、すなわちデータの読み書きが禁止される。
【0036】
CPU21は、画像処理や印刷機能の実行を制御するための各種機能の他に、パスワード生成手段51と、ロック設定手段52と、ロック解除手段53としての機能を備えている。
【0037】
パスワード生成手段51は、磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kのロックを設定したり解除したりするためのパスワードを生成する機能を果たす。ここでは32バイトのパスワードを生成するようになっている。パスワードの生成方法には、画像処理装置10の内部情報と記憶部24に保存されているデータとを組み合わせて生成する方法と、ランダムに生成する方法とがある。前者の場合、組み合わせる内部情報と記憶部24のデータとが同一ならば、パスワード生成手段51は常に同じパスワードを生成する。
【0038】
なお、画像処理装置10の内部情報には、たとえば、画像処理装置10の製造番号や機種番号、各磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kの製造番号などがある。すなわち、内部情報とは、画像処理装置10がハードウェア的に書き換え不能に保持している情報である。ROM22などに書き換え不能に記憶してある情報も含まれる。
【0039】
ロック設定手段52は、パスワード生成手段51が生成したパスワードを使用して各磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kにロックを設定する役割を果たす。ロック設定手段52は、ロックを設定する際のモードとして、すべての磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kに対して共通のパスワードを使用する「通常ロックモード」と、各磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kに個別のパスワードを使用する「高セキュリティロックモード」との2つのロックモードを備えている。
【0040】
通常ロックモード、高セキュリティロックモードのいずれのロックモードを採用するかはユーザの選択により切り替え可能になっている。詳細には、管理者など特別な権限を有するユーザであることが認証された場合にだけ操作可能に設定画面に移行し、そこで、いずれのロックモードを使用するかを設定できるようになっている。このとき、ロックに使用するパスワードを生成するためのデータ(後述するロックキーA)の入力操作を受け、これを記憶部24に記憶するようになっている。
【0041】
ロック解除手段53は、選択されているロックモードに応じた手順で、各磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kのロックを解除する機能を果たす。
【0042】
図2は、通常ロックモードでのパスワードの生成とこれを用いたロックの設定および解除の動作を示している。記憶部24には、画像処理装置10の内部情報Bと組み合わせてパスワードを生成するためのデータとして8バイトのロックキーAが記憶されている。
【0043】
パスワード生成手段51は、記憶部24からロックキーAを取得し、さらに画像処理装置10の製造番号61から24バイトの内部情報Bを生成し、これらを組み合わせてデータ長32バイトの共通パスワード62を生成する。なお、ロックキーAは暗号化してそのセキュリティを高めるように記憶してもよい。
【0044】
ロック設定手段52は、パスワード生成手段51が生成した共通パスワード62をすべての磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kに対して共通に適用して、これらをロックする(パスP1Y、P1M、P1C、P1K)。
【0045】
また、磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kに設定されたロックの解除が要求された場合にも、ロックを設定する場合と同様にパスワード生成手段51によってロックキーAと内部情報Bとを組み合わせた共通パスワード62を生成する。ロック解除手段53は、この共通パスワード62をすべての磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kに対して共通に適用して、これらのロックを解除する(パスP1Y、P1M、P1C、P1K)。
【0046】
このように、共通パスワード62をロックキーAと内部情報Bとから生成するので、共通パスワード62そのものを記憶部24に記憶させる場合に比べて、セキュリティ性を高めることができる。すなわち、記憶部24と磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kとがセットで盗難された場合でも、ロックを容易に解除することはできない。
【0047】
また、ハードウェアに係わる固有の内部情報Bを利用して共通パスワード62を生成するので、たとえロックキーAが他の装置と同一であっても、ロックキーAと内部情報Bとを組み合わせた共通パスワード62は各画像処理装置10に固有のものになる。したがって、セットで盗難された記憶部24と磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kとを別の画像処理装置に装着しても、その画像処理装置ではロックを解除することができず、データの漏洩が防止される。
【0048】
また、共通パスワード62を用いるものでは、相違するパスワードで各磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kのロックを設定する場合に比べて、パスワードを生成するための処理負担やパスワードの管理負担が軽減される。たとえば、磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32K間で生じる使用頻度の差を是正するために画像処理装置10内で磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kをローテーションさせるような場合でも、パスワードの違いを管理せずに済むので、作業の負担が軽減する。
【0049】
なお、設定したロックは、その後一度電源をオフにしてから電源をオンしたときから有効になる。また、一度、ロックの設定をしておけば、磁気ディスク装置の使用時にロックを解除しても、別途のクリア操作を行なわない限り、電源のオフオンで再びロックされるようになっている。
【0050】
図3は、高セキュリティロックモードでのパスワードの生成とロックの設定に係わる動作の流れを示している。高セキュリティロックモードでは、各磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kに個別のパスワードを使用すると共に、各磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kにロックを設定する際の順序が予め決めてある。ここでは、「磁気ディスク装置32Y」→「磁気ディスク装置32M」→「磁気ディスク装置32C」→「磁気ディスク装置32K」の順序に設定されている。
【0051】
パスワード生成手段51は、前述の順序の中で先頭の磁気ディスク装置32Yに対するパスワード63Yを生成する。このパスワード63Yの生成方法は、通常モードで共通パスワードを生成した場合と同様である。すなわち、記憶部24からロックキーAを取得し、さらに画像処理装置10の製造番号61から24バイトの内部情報Bを生成し、これらを組み合わせてデータ長32バイトのY色用のパスワード63Yを生成する。
【0052】
また、パスワード生成手段51は、磁気ディスク装置32Mのロックに使用するM色用のパスワード63Mと、磁気ディスク装置32Cのロックに使用するC色用のパスワード63Cと、磁気ディスク装置32Kのロックに使用するK色用のパスワード63Kとをそれぞれランダムに生成する。
【0053】
ロック設定手段52は、Y色の磁気ディスク装置32YにM色用のパスワード63Mを記憶させた(パスP2M)後、パスワード63Yを用いて磁気ディスク装置32Yにロックを設定する(パスP2Y)。次に、M色の磁気ディスク装置32MにC色用のパスワード63Cを記憶させた(パスP3C)後、パスワード63Mを用いて磁気ディスク装置32Mにロックを設定する(パスP3M)。さらにその次に、C色の磁気ディスク装置32CにK色用のパスワード63Kを記憶させた(パスP4K)後、パスワード63Cを用いて磁気ディスク装置32Cにロックを設定する(パスP4C)。そして、最後にパスワード63Kを用いて磁気ディスク装置32Kにロックを設定する(パスP5K)。なお、セキュリティを高めるためにこれらのパスワード63M、63C、63Kを暗号化してから記憶する方法を採ってもよい。
【0054】
図4は、高セキュリティロックモードでのロックの解除に係わる動作を示している。高セキュリティロックモードでのロックの解除は、そのロックが設定されたときの順序と同じ順序で解除するようになっている。
【0055】
パスワード生成手段51は、図3でロックを設定する場合と同様にY色用のパスワード63Yを生成し、ロック解除手段53は、生成されたY色用のパスワード63Yを用いて磁気ディスク装置32Yのロックを解除する(パスP11)。そして、ロック解除手段53は、ロックを解除した磁気ディスク装置32YからM色用のパスワード63Mを取得し、そのパスワード63Mを用いて解除の順序が1つ後ろの磁気ディスク装置32Mのロックを解除する(パスP12)。
【0056】
次に、磁気ディスク装置32MからC色用のパスワード63Cを取得し、そのパスワード63Cを用いて解除の順序が1つ後ろの磁気ディスク装置32Cのロックを解除する(パスP13)。次に、磁気ディスク装置32CからK色用のパスワード63Kを取得し、そのパスワード63Kを用いて解除の順序が1つ後ろの磁気ディスク装置32Kのロックを解除する(パスP14)。
【0057】
上記のように高セキュリティロックモードの場合は、解除の順序が先頭の磁気ディスク装置32Yに設定されているロックを解除することを契機に、予め定めた解除の順序に従って磁気ディスク装置32M、磁気ディスク装置32C、磁気ディスク装置32Kのロックを次々と連鎖的に解除するようになっている。
【0058】
また、解除の順序が最初の磁気ディスク装置32Yに対するパスワード63Yのみを管理すれば、次の磁気ディスク装置のロックを解除するためのパスワードを次々と取得できるので、2番目以降の磁気ディスク装置に対するパスワードを記憶部24に記憶させておいたり、ユーザに入力させたりする必要がなく、パスワードが1つだけの場合と同様の利便性・簡便性が提供される。
【0059】
一方、上記のような解除手順や磁気ディスク装置内でのパスワードの保存場所を把握していない第3者にとっては、順序が末尾の磁気ディスク装置のロックをするまでには、それより順序が手前の磁気ディスク装置に対する使用制限を次々に破る必要があるので、解除が非常に困難になり、高いセキュリティを確保することができる。
【0060】
通常、機密情報などは文書であれ図面であれ、モノクロで表現される場合が多い。そこで、K色用の磁気ディスク装置32Kを解除順序の末尾に設定することで、重要な情報を最もセキュリティ性の高い磁気ディスク装置に自動的に保存することができる。なお、重要文書はモノクロに保存するようにユーザを促したり、操作部に「機密情報」釦を設け、これが操作された場合には、解除の順序が末尾に設定されている磁気ディスク装置にその原稿に係わる画像データを自動保存するように構成してもよい。
【0061】
上記した通常ロックモードと高セキュリティロックモードとを切り替え可能に構成することで、使い勝手とセキュリティ性のバランスなどに係わるユーザの異なる要求に対応することができる。また、通常は高セキュリティロックモードの設定にしておき、磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kをローテーションさせたり、交換したりする場合にだけ一時的に通常ロックモードに変更して、作業完了後に再び高セキュリティロックモードに戻すような操作を行なえば、通常使用状態での高い機密性の確保と高いメンテナンス性とを両立させることも可能になる。
【0062】
図5は、画像処理装置10の起動時に実行するロック確認処理の流れを示している。
【0063】
電源オン時には、まず、現時点でロックモードがオンになっているか否かを調べる(ステップS101)。いずれかのロックモードがオンの場合は(ステップS101;Y)、すべての磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kにロックが設定されているか否かを確認する(ステップS102)。
【0064】
ロックモードがオンになっているにもかかわらず、ロックの設定されていない磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kが1つでも存在する場合は(ステップS102;N)、電源がオフにされるまでエラー表示を行なう(ステップS106)。このようなケースは、たとえば、磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kの置き換え、交換、すり替えなどがあった場合に生じる。エラーが表示されるような状態では画像処理装置10を正常に動作させることはできないので、電源オフを待つようにしている。
【0065】
一方、すべての磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kにロックが設定されている場合は(ステップS102;Y)、磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kのロックを解除するロック解除処理を実行する(ステップS103)。そして、ロック解除処理が正常に終了した場合は(ステップS104;Y)、この処理を終了し、通常動作に移行する(エンド)。ロック解除処理でエラーが発生した場合は(ステップS104;N)、解除エラーが発生した旨の表示を電源がオフにされるまで継続して行なう(ステップS106)。
【0066】
また、ロックモードがオフであった場合は(ステップS101;N)、ロックの設定されている磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kが存在するか否かを確認し(ステップS105)、ロックの設定されているものがなければ(ステップS105;N)、正常に本処理を終了して、通常動作に移行する(エンド)。一方、ロックが設定されているものが1つでも存在する場合は(ステップS105;Y)、所定のエラー表示を電源がオフにされるまで継続して行なう(ステップS106)。
【0067】
図6は、図5のステップS103に対応するロック解除処理の流れを詳細に示したものである。
【0068】
特定の管理権限を持っているユーザのみにロック解除の実行を許可するために、操作表示部25からユーザに対して認証情報の入力を求め、入力された認証情報と記憶部24に記憶されているロックキーAとを照合して管理権限を認証する(ステップS201)。入力された認証情報とロックキーAとが一致しない場合は(ステップS201;N)、5回まで再入力を認め(ステップS202;N)、5回連続で不一致になった場合は(ステップS202;Y)、ロック確認処理にエラーの発生を通知するためのエラーフラグをオンにして(ステップS203)、処理を終了する(エンド)。なお、エラーフラグに代えて、エラーの内容を示す情報を上位の処理に引き渡すようにしてもよい。
【0069】
入力された認証情報とロックキーAとが一致した場合は(ステップS201;Y)、現時点で設定されているロックモードの種類を調べる(ステップS204)。通常ロックモードが設定されているときは(ステップS204;Y)、図2で示したような手順でパスワード生成手段51によって共通パスワード62を生成し、この共通パスワード62をすべての磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kに対して共通に使用してこれらのロックを解除する(ステップS205)。エラーなくロックを解除できた場合は(ステップS206;Y)、処理を終了し(エンド)、エラーが発生したときは、エラーフラグをオンにして(ステップS212)、処理を終了する(エンド)。
【0070】
ロックモードに高セキュリティロックモードが設定されている場合は(ステップS204;N)、図4で示したような手順でロックを解除する。すなわち、パスワード生成手段51によって解除の順序が先頭の磁気ディスク装置32Yに対するパスワード63Yを生成し、このパスワード63Yを使用して磁気ディスク装置32Yのロックを解除する(ステップS207)。解除でエラーが生じたときは(ステップS208;N)、エラーフラグをオンにして(ステップS212)、処理を終了する(エンド)。
【0071】
解除の順序が先頭の磁気ディスク装置32Yのロック解除に成功した場合は(ステップS208;Y)、その磁気ディスク装置に記憶されているパスワードを取得し、このパスワードを使用して解除の順序が次の磁気ディスク装置のロックを解除する(ステップS209)。解除でエラーが生じたときは(ステップS210;N)、エラーフラグをオンにして(ステップS212)、処理を終了する(エンド)。
【0072】
解除が成功した場合は(ステップS210;Y)、すべての磁気ディスク装置のロックを解除したかを調べ(ステップS211)、未解除のものが残っているときは(ステップS211;N)、ステップS209に戻って解除の順序が次の磁気ディスク装置のロックを解除する。すべての磁気ディスク装置のロック解除が完了した場合は(ステップS211;Y)、本処理を終了する(エンド)。
【0073】
上記の処理では、ロックキーAに対応する情報をユーザに認証情報として入力させるようにしたので、ユーザはロックキーAと認証情報とを別々に管理する必要がなくなり、利便性が向上する。なお、認証情報とロックキーAとを別々の情報として管理するように構成してもよい。こうすれば、より一層セキュリティを高めることができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0075】
実施の形態では、ロックキーAを記憶部24に保存しておき、これを利用して共通パスワード62やパスワード63Yを生成したが、必要になる都度、ユーザにパスワードの入力を求め、これをロックキーAの代わりに使用してもよい。これにより、共通パスワード62やパスワード63Yの生成に使用するデータが記憶部24に存在しなくなり、磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kと記憶部24とをセットで盗難された場合でも、記憶部24の記憶内容からパスワードを推測できなくなり、セキュリティ性が向上する。
【0076】
なお、実施の形態では、ロックキーAのデータ長を8バイトに内部情報Bのデータ長を24バイトに設定したが、それぞれのデータ長はこれに限定されず、合計のデータ長が32バイトになればよい。たとえば、ロックキーAのデータ長を短くすれば、操作表示部25からの認証情報の入力を簡略化できる。逆にロックキーAのデータ長を長くすれば、ユーザ認証がより厳密になる。また、ロックキーAと内部情報Bとを組み合わせてパスワードを生成するようにしたが、パスワードそのものを記憶部24に記憶させてもよい。
【0077】
実施の形態では、画像データを保存する磁気ディスク装置32Y、32M、32C、32Kにロックを設定したが、ロック対象の磁気ディスク装置は画像データの保存するものに限定されない。また、パスワードによって使用制限をかけることが可能であれば磁気ディスク装置以外の記憶装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係わる画像処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる画像処理装置において通常ロックモードが設定されたときのロック設定および解除の動作を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる画像処理装置において高セキュリティロックモードが設定されたときのロック設定の動作を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる画像処理装置において高セキュリティロックモードが設定されたときのロック解除の動作を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる画像処理装置が起動時にロック設定の有無を判断するロック確認処理を示す流れ図である。
【図6】本発明の実施の形態に係わる画像処理装置の磁気ディスク装置に設定されているロックを解除するロック解除処理を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0079】
10…画像処理装置
20…システムバス
21…CPU
22…ROM
23…RAM
24…記憶部
25…操作表示部
26…ネットワーク制御部
27…読取部
28…画像形成部
29C…C色用バスブリッジ
29K…K色用バスブリッジ
29M…M色用バスブリッジ
29Y…Y色用バスブリッジ
30C…C色用画像ブロック
30K…K色用画像ブロック
30M…M色用画像ブロック
30Y…Y色用画像ブロック
31C…C色用画像バス
31K…K色用画像バス
31M…M色用画像バス
31Y…Y色用画像バス
32C…C色を担当する磁気ディスク装置
32K…K色を担当する磁気ディスク装置
32M…M色を担当する磁気ディスク装置
32Y…Y色を担当する磁気ディスク装置
33C…C色用メモリ制御部
33K…K色用メモリ制御部
33M…M色用メモリ制御部
33Y…Y色用メモリ制御部
34C…C色用画像メモリ
34K…K色用画像メモリ
34M…M色用画像メモリ
34Y…Y色用画像メモリ
35C…C色用圧縮伸張部
35K…K色用圧縮伸張部
35M…M色用圧縮伸張部
35Y…Y色用圧縮伸張部
51…パスワード生成手段
52…ロック設定手段
53…ロック解除手段
61…画像処理装置の製造番号
62…共通パスワード
63Y…Y色用のパスワード
63M…M色用のパスワード
63C…C色用のパスワード
63K…K色用のパスワード
Cin…読取部から入力されるC色の画像データ
Kin…読取部から入力されるK色の画像データ
Min…読取部から入力されるM色の画像データ
Yin…読取部から入力されるY色の画像データ
Cout…プリンタ部へ出力するC色の画像データ
Kout…プリンタ部へ出力するK色の画像データ
Mout…プリンタ部へ出力するM色の画像データ
Yout…プリンタ部へ出力するY色の画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスワードによって使用制限をかけることが可能な複数の記憶手段を有する画像処理装置において、
複数の記憶手段に対するパスワードを同一にした
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
パスワードによって使用制限をかけることが可能な複数の記憶手段を有する画像処理装置において、
複数の記憶手段に対して、それらの使用制限を解除する順序を定めておき、
各記憶手段に、解除の順序が1つ後ろの記憶手段のパスワードを記憶させるようにした
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
解除の順序が先頭の記憶手段の使用制限を解除した後は、その解除した記憶手段に記憶されているパスワードを使用して前記解除の順序が次の記憶手段の使用制限を解除することを順次行なう
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
パスワードによって使用制限をかけることが可能な複数の記憶手段を有する画像処理装置において、
複数の記憶手段に対して同一のパスワードを使用する第1管理モードと、
複数の記憶手段に対して、それらの使用制限を解除する順序を定めておき、各記憶手段に、解除の順序が1つ後ろの記憶手段のパスワードを記憶させ、前記解除の順序が先頭の記憶手段の使用制限を解除した後はその解除した記憶手段に記憶されているパスワードを使用して前記解除の順序が次の記憶手段の使用制限を解除することを順次行なう第2管理モードと、
を備え、
記憶手段の使用制限の管理に、前記第1管理モードと前記第2管理モードのいずれを使用するかを切り替え可能にした
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
各記憶手段の使用制限に使用するパスワードを相違させた
ことを特徴とする請求項2、3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記解除の順序が先頭の記憶手段に対するパスワードを、パスワードによる使用制限のない記憶手段に保存した
ことを特徴とする請求項2、3、4または5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
ユーザから入力された情報と当該画像処理装置の内部情報とに基づいてパスワードを生成するパスワード生成手段を有し、このパスワード生成手段が生成したパスワードを記憶手段の使用制限に使用する
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記ユーザから入力された情報は、当該画像処理装置の使用権を認証するための認証情報であり、前記使用権の認証のために入力された情報をパスワードの生成に兼用する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像記憶手段は磁気ディスク装置である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−268293(P2006−268293A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83866(P2005−83866)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】