説明

画像処理装置

【課題】表示された3次元対象の解析時に時間節約を可能する。
【解決手段】3次元対象(8)を画像表示装置に3次元表示するように構成されている画像表示モジュールと、操作者が3次元表示内の3次元対象(8)を対話形式で移動、回転およびズームすることを可能にする対話モジュールとを備えた画像処理装置において、画像処理装置が、使用者によって対話モジュールを介して3次元表示の3次元空間内に自由に定めることのできる鏡面を発生しかつ鏡面によって生じさせられた鏡像(9)を画像表示装置の別の表示面上に表示する鏡面発生モジュールを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元画像データセット、特に医用画像化からの3次元画像データセットを拡大表示するために、3D(3次元)対象を画像表示装置に3D表示するように構成されている画像表示モジュールと、操作者が3D表示内の3D対象を対話形式で移動、回転およびズーム(拡大または縮小)することを可能にする対話モジュールとを備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、表示モジュール上に(3D)対象および背景を表示することができるコンピュータグラフィックシステムは知られている。対象の表示は、多様なやり方で、例えば回転、並進またはズームによって操作可能である。対象または背景の現実に近い印象の改善のために、種々の照明状態が表示可能であり、そして他の対象の表面における対象の鏡像も表示可能である。これは、いわゆるビーム追跡アルゴリズム(レイトレーシング)およびこれに基づくラジオシティ法に使用される(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。3D対象の現実に近い表示のために適したコンピュータプログラムは公知である(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
3D対象の3D表示は、多くの技術分野において、例えば医用画像化の分野または科学技術装置の組立において、重要な補助手段である。例えば放射線医および外科医は、手術の診断および計画のために、患者の医用3D画像データセットに基づいてボリュームレンダリング技術(VRT)を用いて患者の関心のある解剖学的領域を3次元透視表示でモニタに可視化する3D可視化装置を使用する。適切な組織の設定によって、医師に対して関心のある構造のみ、例えば検査される範囲もしくは3D画像データセットによって包含される範囲の組織のみを表示することができる。医師は、使用可能な手段により、医師にとって重要な情報をこの3D表示から求めなければならない。これは、例えば血管狭窄、他の血管に対する位置および姿勢などに関係する。
【0004】
このために、可視化装置は一般に対話モジュールを含み、操作者は対話モジュールを介して表示されたボリュームを対話形式で全空間方向に回転、移動またはズームすることができる。診断および計画の際に、これらのステップは何度も繰り返され、関心対象をあらゆる側面から観察することが極めて頻繁に必要である。これらの繰り返し行なわれる対話は、課題設定に応じて非常に時間がかかる。
【非特許文献1】Graphics:Reflection Model,Graphics Lab,Korea Univ.,2004,41 Sheets + 文献目録(http://kucg.korea.ac.kr/〜sjkim/teach/2004/COMP365/lecture/07reflection.ppt)
【非特許文献2】A.Iwansky et al.:Lexikon der Computergraphik und Bildverarbeitung,Vieweg 1994,S.18,56−58,231−234,237,249−250,274,306
【非特許文献3】Persistance of VisionTM Ray−Tracer,POV−RayTM Version 3.lg,User‘s Documentation, POV−Team,1999,S.1−17,23−29,54−69,82,97−101,136−138,177−182,250−256,294−300,317−320
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、表示された3次元対象の解析時に使用者に時間節約を可能にさせる3D対象の3D表示用の画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、3D(3次元)対象を画像表示装置に3D表示するように構成されている画像表示モジュールと、操作者が3D表示内の3D対象を対話形式で移動、回転およびズームすることを可能にする対話モジュールとを備えた画像処理装置において、
画像処理装置が、使用者によって対話モジュールを介して3D表示の3D空間内に自由に定めることのできる鏡面を発生しかつ鏡面によって生じさせられた鏡像を画像表示装置の別の表示面上に表示する鏡面発生モジュールを含むことによって解決される。
本発明の有利な実施態様は次の通りである。
鏡面発生モジュールが、鏡像を3D(3次元)表示の対話式変更時に同期して追跡するように構成されている(請求項2)。
鏡面発生モジュールが、各鏡面を、画像表示装置の1つの異なる表示面に結び付けるように構成され、当該表示面に付属の鏡像が表示される(請求項3)。
画像表示モジュールが、ボリュームレンダリング技術による3D表示を透視投影または正投影で発生するように構成されている(請求項4)。
画像表示モジュールが、画像表示装置としての3Dモニタに3D対象を3D表示するように構成されている(請求項5)。
【0007】
本発明による画像処理装置は、公知のように、3D画像データセットからの3D対象を画像表示装置に3D表示するように構成されている画像表示モジュールと、操作者が3D表示内の3D対象を対話形式で移動、回転およびズーム(拡大または縮小)することを可能にする対話モジュールとを有する。画像処理装置は、使用者によって対話モジュールを介して3D表示の3D空間内に自由に定めることのできる鏡面を発生しかつ鏡面によって生じさせられた鏡像を画像表示装置の別の表示面上に表示する鏡面発生モジュールを含む。
【0008】
したがって、本発明による画像処理装置の使用時に、使用者は3D表示の3D空間内に1つ又は複数の鏡面の位置および方位を設定することができる。鏡面の鏡像によって、画像表示装置の異なる表示区画において、表示された3D対象の背面または側面の細部が付加的に可視化される。3D表示内の3D対象の解析時に従来必要であり繰り返し行なわれる多数の対話はもはや行なわれなくてもよいので、使用者は相応に時間を節約する。鏡面の適切な設定によって、同時に、ちょうど表示されているビュー画像の背面の細部が可視化され、それによって使用者はこれらの細部を認識するために3D対象をもはや対話形式で回転させる必要がない。
【0009】
3D表示とは、本出願においては、3次元表示に適した3D画像表示装置における本物の3次元表示でも、あるいは画像表示方式によって対象の3次元的な印象を発生させる従来の画像表示装置、例えば従来のモニタにおける画像表示でもよいと理解すべきである。これは透視表示および/または適切なボリュームレンダリング技術またはサーフェイスレンダリング技術によって達成することができる。いずれの場合にも、使用者は、あらゆる側面から観察できるようにするために、表示された3D対象を移動、回転およびズームすることができる。3Dモニタの使用は表示改善をもたらす。なぜならば、付加的な深部情報に基づいて、より良好な空間的関係が伝えられるからである。
【0010】
対話は、公知のようにグラフィックユーザインターフェースを介して適切な入力装置、例えばマウスにより行なわれる。このユーザインターフェースおよび付属の入力装置を介して、使用者は、3D表示の3D空間内における所望の鏡面の位置および姿勢も決定する。
【0011】
本発明による画像処理装置の一実施態様においては、画像表示モジュールが、表示装置の画面を複数の区画に分割するように構成され、これらの区画の1つにおいて3D画像データセットの3D表示が行なわれる。画像化医療技術においてしばしばそうであるように、他の区画においては他のビュー画像が表示可能である。この実施態様では、1つ又は複数の他の区画に、鏡面によって発生させられた鏡像が表示される。各区画つまり各表示面は1つの異なる鏡面に結びつけられている。鏡像は、3D表示の対話式変更時に特に同期して追跡もしくは更新される。それにより、非常に簡単に、関心のある3D対象の多数の細部が同時に表示可能である。
【0012】
もちろん、鏡像は3D表示内において付加的に可視化することもできる。しかしながら、非常に多数の鏡面の場合にこれは見通しのきかない表示をもたらし得る。
【0013】
本発明による画像処理装置は、一方では、例えばコンピュータ断層撮影、磁気共鳴断層撮影またはその他の断層撮影画像化法の3D画像データセットの可視化のための画像化医療技術の分野において使用される。本発明による画像処理装置は、他方では、3D対象が透視投影画の形で3次元可視化され、あるいは、CAD−CAM応用の場合におけるように、正投影画の形でも3次元可視化されるあらゆる非医療上の課題設定において一般的に使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、図面を参照しながら実施例に基づいて本発明による画像処理装置をもう一度手短に説明する。
図1は本発明による画像処理装置の概略図を示し、
図2は本発明による画像処理装置により発生させ得るような画像表示を概略的に示す。
【0015】
図1は本発明による画像処理装置1の概略図を示す。画像処理装置1は、画像表示モジュール2、対話モジュール3ならびに鏡面発生モジュール4を含む。画像処理装置1は、好ましくは1つのコンピュータ内で実現され、コンピュータ内では表示すべき対象の3D画像データセットが記憶装置に格納されている。画像処理装置はモニタ5ならびにキーボード6およびコンピュータマウス7に接続され、これらを介して使用者はモニタ5に表示された画像の移動、回転およびズーム(拡大・縮小)を行なうことができ、かつ鏡面の位置および方位を入力することができる。
【0016】
3D画像データセットの読み取り後、この3D画像データセットによって含まれる対象の透視VRT表示をモニタ5に表示するために、この3D画像データセットが先ず画像表示モジュール2において処理される。この表示は一般に予め定められた又は使用者によって予め与えられた視点および大きさで行なわれる。この3D表示において、使用者は、今や、表示された対象の背面ビュー画像および側面ビュー画像を付加的に得るために、対象自体を回転させる必要なしに、3D空間において自由に鏡面を定めることができる。使用者による設定後に鏡面発生モジュール4において発生され、かつ表示中、例えば元の3D表示中に挿入されるこれらの鏡面によって、関心対象の背面および側面の細部が付加的に可視化される。
【0017】
これらの鏡面によって生じさせられる1つ又は複数の鏡像の表示は、図2に具体的に示されているように、モニタの他の表示区画において行なわれる。この図においては、わかりやすさのために、単純な形状の1つの3次元対象8のみが示されている。更に、モニタの表示面がここでも2つの表示区画10,11に分けられている。左側の区画10においては、3D画像データセットから得られた3次元対象8の表示が、図示されているように、相応の透視表示で行なわれる。使用者は、例えば鏡面12を、この画像表示の3D空間内においてこの対象の背後に、対象から発生された鏡像が鏡像9として対象の背面を表示するように置く。
【0018】
この鏡像は、本例では、左側の表示区画10における対象8の元の3D表示と共に、右側の表示区画11にも現われる。なお、左側の区画10における表示は省略されてもよい。多区画表示は、特に、1よりも多い鏡面が使用者によって定められる場合に有利である。この場合に、鏡像による3D対象の元の3D表示に過大な負担をかけることなく、多数の区画に応じて同時に全ての鏡像を表示することができる。
【0019】
この画像表示装置により、使用者は、画像表示内の3D対象の繰り返しの回動もしくは回転なしに、関心対象の背面および側面の細部を付加的に可視化することができるので、使用者は全体として対象の検査に時間をほとんど必要としない。付加的に個々の細部の空間的関係をこのようにして容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による画像処理装置を示す概略図
【図2】本発明による画像処理装置により発生させ得る画像表示を示す概略図
【符号の説明】
【0021】
1 画像処理装置
2 画像表示モジュール
3 対話モジュール
4 鏡面発生モジュール
5 モニタ
6 キーボード
7 コンピュータマウス
8 3次元対象
9 鏡像
10 左側の表示区画
11 右側の表示区画
12 鏡面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元対象(8)を画像表示装置(5)に3次元表示するように構成されている画像表示モジュール(2)と、操作者が3次元表示内の3次元対象(8)を対話形式で移動、回転およびズームすることを可能にする対話モジュール(3)とを備えた画像処理装置において、
画像処理装置が、使用者によって対話モジュール(3)を介して3次元表示の3次元空間内に自由に定めることのできる鏡面を発生しかつ鏡面によって生じさせられた鏡像(9)を画像表示装置(5)の別の表示面上に表示する鏡面発生モジュール(4)を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
鏡面発生モジュール(4)が、鏡像(9)を3次元表示の対話式変更時に同期して追跡するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
鏡面発生モジュール(4)が、各鏡面を、画像表示装置(5)の1つの異なる表示面に結び付けるように構成され、当該表示面に付属の鏡像(9)が表示されることを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
画像表示モジュール(2)が、ボリュームレンダリング技術による3次元表示を透視投影または正投影で発生するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像表示モジュール(2)が、画像表示装置(5)としての3次元モニタに3次元対象(8)を3次元表示するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−272889(P2007−272889A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81734(P2007−81734)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】