説明

画像処理装置

【課題】様々な条件で撮像した場合でもアンビギュイティ(AB)信号の低減を可能にした画像処理装置を得る。
【解決手段】外部からの撮像条件に従い位置情報を算出する信号発生条件出力部1、取得する画像と同周波数帯で撮像された画像を供給するAB信号リファレンス画像供給手段2、信号発生条件出力部1の画像の位置情報をもとにAB信号リファレンス画像供給手段2の画像から対象となる画像を抽出するAB信号リファレンス画像抽出部3、AB信号リファレンス画像抽出部3で抽出した画像をスレッショルドレベルより低いレベルの部分を削除しAB信号フィルタ画像を出力するAB信号フィルタ画像出力部4、AB信号フィルタ画像出力部4のAB信号フィルタ画像と外部からの撮像画像の相関処理を行い相関が高い部分をAB信号と判断し撮像画像からAB信号を削除するAB信号相関処理部5を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成開口レーダ等での画像処理に係わる、画像データベースを利用した画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダ(Synthetic Aperture Rader:以後SARと呼ぶ)の画像処理では、不要なアンビギュイティ信号が発生する。レンジ方向では、観測対象から反射してくる信号(メイン信号)と同時に、観測領域以外から反射してくる信号(アンビギュイティ信号)を受信してしまう。また、アジマス方向では、アジマスアンテナパターンのメインローブ3dB幅内の信号が観測信号(メイン信号)となるが、パルス繰り返し周波数(Pulse Repetition Frequency:以後PRFと呼ぶ)が有限であるために、メインローブ以外の方向からの信号が折返し、不要な信号(アンビギュイティ信号)が発生する。
【0003】
アンビギュイティの抑圧方法として、下記特許文献1に開示された「レーダ装置」では、センサのタイミングパラメータを調整することで、アンビギュイティの低減を実施している。
また、別のアンビギュイティの抑圧方法として、下記特許文献2に開示された「合成開口レーダ装置」では、センサ上で、符号系列にしたがってパルスを位相変調し、前後のパルスから混入するアンビギュイティをアジマス圧縮処理にて抑圧している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−127774号公報(段落0008、図1)
【特許文献2】特開2003−139853号公報(段落0012、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SARの画像処理では、画像上に不要なアンビギュイティ信号が生じる。アンビギュイティ信号の低減策として、従来、位相変調方式が採用されているが、アンビギュイティ信号のパワーを拡散させるため、高いレベルのアンビギュイティ信号に対しては、完全に削除することはできない。また、センサのタイミングパラメータを調整することで、アンビギュイティの低減を行う方法では、観測幅等の撮像パラメータに制限が生じる。
【0006】
この発明は、様々な条件で撮像した場合においても、レンジ方向、アジマス方向のアンビギュイティ信号の低減を可能にした画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、外部からの撮像条件に従って位置情報を算出する信号発生条件出力部と、取得する画像と同周波数帯で撮像された画像を供給するアンビギュイティ信号リファレンス画像供給手段と、前記信号発生条件出力部で求めた画像の位置情報をもとに、アンビギュイティ信号リファレンス画像供給手段の画像から、対象となる画像を抽出するアンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部と、アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部で抽出した画像をスレッショルドレベルより低いレベルの部分を削除して、アンビギュイティ信号フィルタ画像を出力するアンビギュイティ信号フィルタ画像出力部と、アンビギュイティ信号フィルタ画像出力部で出力したアンビギュイティ信号フィルタ画像と外部からの撮像画像の相関処理を行い、相関が高い部分については、アンビギュイティ信号と判断し、撮像画像からアンビギュイティ信号を削除するアンビギュイティ信号相関処理部と、を備えたことを特徴とする画像処理装置にある。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、アンビギュイティ信号に対するメイン信号を含む画像をデータベースとして所有し、データベース上から対象の画像を抽出して、アンビギュイティフィルタ画像を作成し、撮像画像と相関処理を行うことにより、アンビギュイティ信号を削除した画像を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を各実施の形態に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による画像処理装置の構成を示す図である。画像処理装置は、信号発生条件出力部1、アンビギュイティ信号リファレンス画像保存部2、アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部3、アンビギュイティ信号フィルタ画像出力部4、アンビギュイティ信号相関処理部5で構成される。
【0010】
信号発生条件出力部1は、外部から入力される撮像条件からアンビギュイティ信号を発生させた原信号を含む画像の位置情報を算出する。アンビギュイティ信号リファレンス画像保存部2は、取得する画像と同周波数帯で撮像された画像の画像データベースである。
アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部3は、信号発生条件出力部1で求めた画像の位置情報をもとに、アンビギュイティ信号リファレンス画像保存部2の画像データベースから、対象となる画像を抽出する。
【0011】
アンビギュイティ信号フィルタ画像出力部4は、アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部3で抽出した画像をスレッショルドレベルより低いレベルの部分を削除して、アンビギュイティ信号フィルタ画像を出力する。アンビギュイティ信号相関処理部5は、アンビギュイティ信号フィルタ画像出力部4で出力したアンビギュイティ信号フィルタ画像と撮像画像の相関処理を行い、相関が高い部分については、アンビギュイティ信号と判断し、撮像画像からアンビギュイティ信号を削除する。
【0012】
また、図1の各部は詳細には、各種の処理部が組み合わされて構成されているが、ここではこの発明の要旨とする部分を説明する。
【0013】
以下、動作について説明すると、信号発生条件出力部1では、撮像条件からアンビギュイティ信号を発生させた原信号を含む画像の位置情報を算出する。アジマス方向の場合、メイン信号とアンビギュイティ信号の距離Xは次式(1)で表せる。
【0014】
【数1】

【0015】
ここで、Vは衛星速度、RSCはスラントレンジ、fはPRF、mは次数、λはパルスの送信波波長(1/f)である。
【0016】
また、レンジ方向の場合、メイン信号とアンビギュイティ信号の距離については、図2を用いて説明する。メイン信号の発生場所S(ファー側)、S(ニア側)のスラントレンジR、Rと、アンビギュイティ信号発生場所AのスラントレンジRの関係は、次式(2)(3)で表せる。
【0017】
【数2】

【0018】
ここで、cは光速、fPf,fPnは発生場所S、SでのPRF、mは次数である。RとfPf、RとfPnの関係は、PRFの設定条件(タイミングウィンドウと呼ぶ)によって決定できる。PRFは一般的に
・送受信が重複しないこと、
・センサの直下からの反射波を受信しないこと、
・受信信号が前後のパルスの受信信号と重複しないこと、
・ドップラー帯域を満足すること、
という条件を満足するよう、以下(4)(5)(6)の式で算出される。
【0019】
【数3】

【0020】
ここで、nは第1設定パルス数、τはパルス幅、nは第2設定パルス数、Hは対地高度、rovsmpはオーバサンプル率、fdopはドップラ周波数である。
【0021】
そしてスラントレンジRとなるようなRとfPf、RとfPnを計算又は予め用意しておいたルックアップテーブル等によって抽出する。求めたスラントレンジR,R,Rをグラントレンジに変換し、メイン信号とアンビギュイティ信号の距離XRf,XRnを算出する。
【0022】
アンビギュイティ信号リファレンス画像保存部2に保存されている画像データベースは、取得する画像と同周波数帯で撮像された画像とする。例えば、全地球範囲のデータを保有することで、いかなる条件の画像においても対応可能となる。
【0023】
アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部3では、アンビギュイティ信号リファレンス画像保存部2に保存されている画像データベースの中から、信号発生条件出力部1で出力した信号とアンビギュイティ信号の距離の関係を用いて、アンビギュイティ信号リファレンス画像を抽出する。
【0024】
アンビギュイティ信号フィルタ画像出力部4では、アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部3で抽出した画像を所定のスレッショルドレベルより低いレベルの部分を削除して、アンビギュイティ信号フィルタ画像を出力する。スレッショルドレベルは、アンビギュイティ信号を誤検出しないように調整する。
【0025】
アンビギュイティ信号相関処理部5では、アンビギュイティ信号フィルタ画像出力部4で出力したアンビギュイティ信号フィルタ画像と装置外部の撮像手段(図示省略)からの撮像画像の相関処理を行い、相関が高い部分については、アンビギュイティ信号と判断し、撮像画像からアンビギュイティ信号を削除した撮像画像を生成して出力する。
【0026】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による画像処理装置の構成を示す図である。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。上記実施の形態1では、アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部3において、アンビギュイティ信号リファレンス画像保存部2に保存されている画像データベースの中から、信号発生条件出力部1で出力した信号とアンビギュイティ信号の距離の関係を用いて、アンビギュイティ信号リファレンス画像を抽出していた。
【0027】
この実施の形態2では、アンビギュイティ信号リファレンス画像として、アンビギュイティ信号リファレンス画像取得用撮像機構2aを設け、これにより直接撮像した画像を入力して用いる。なおアンビギュイティ信号リファレンス画像取得用撮像機構2aは衛星等も含む場合があることから図3において画像処理装置の枠の外側に記載されているが、実際にはアンビギュイティ信号リファレンス画像保存部2の代わりにこの発明の画像処理装置を構成する一構成要素である。また、実施の形態1のアンビギュイティ信号リファレンス画像取得用撮像機構2a、実施の形態2のアンビギュイティ信号リファレンス画像取得用撮像機構2aが、アンビギュイティ信号リファレンス画像供給手段を構成する。
【0028】
アンビギュイティ信号リファレンス画像取得用撮像機構2aでのレンジ方向におけるリファレンス画像取得の撮像方法は、SCAN SAR(Synthetic Aperture Radar)方式よる撮像、複数アンテナによる撮像、マルチビームによる撮像があげられる。アジマス方向におけるリファレンス画像取得の撮像方法は、同一条件で広い観測幅を取得することである。また、両方向におけるリファレンス画像取得の撮像方法として、複数衛星により画像取得を行う方法が挙げられる。このように構成しても、相当する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態1による画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】この発明による画像処理装置の動作を説明するための図である。
【図3】この発明の実施の形態2による画像処理装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 信号発生条件出力部、2 アンビギュイティ信号リファレンス画像保存部、2a アンビギュイティ信号リファレンス画像取得用撮像機構、3 アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部、4 アンビギュイティ信号フィルタ画像出力部、5 アンビギュイティ信号相関処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの撮像条件に従って位置情報を算出する信号発生条件出力部と、
取得する画像と同周波数帯で撮像された画像を供給するアンビギュイティ信号リファレンス画像供給手段と、
前記信号発生条件出力部で求めた画像の位置情報をもとに、アンビギュイティ信号リファレンス画像供給手段の画像から、対象となる画像を抽出するアンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部と、
アンビギュイティ信号リファレンス画像抽出部で抽出した画像をスレッショルドレベルより低いレベルの部分を削除して、アンビギュイティ信号フィルタ画像を出力するアンビギュイティ信号フィルタ画像出力部と、
アンビギュイティ信号フィルタ画像出力部で出力したアンビギュイティ信号フィルタ画像と外部からの撮像画像の相関処理を行い、相関が高い部分については、アンビギュイティ信号と判断し、撮像画像からアンビギュイティ信号を削除するアンビギュイティ信号相関処理部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
アンビギュイティ信号リファレンス画像供給手段が、取得する画像と同周波数帯で撮像された画像を格納した画像データベースであるアンビギュイティ信号リファレンス画像保存部からなることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
アンビギュイティ信号リファレンス画像供給手段が、アンビギュイティ信号リファレンス画像として、直接撮像した画像を入力するアンビギュイティ信号リファレンス画像取得用撮像機構からなることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−66224(P2010−66224A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235215(P2008−235215)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】