説明

画像処理装置

【課題】自装置の記憶部に画像データを保存できない場合に、無駄な消費電力の発生を抑えて転送先を選定することのできる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置10はネットワーク2に接続されている外部機器(他の各画像処理装置やPC)に情報取得要求Qを送信し、それぞれの電源状態と記憶部の空き容量を取得する。この問い合わせを受けた外部装置は自装置がメインCPUのオフした節電状態であればサブCPUが返信動作を制御する。画像処理装置10は容量不足などにより自装置の記憶部に画像データを保存できないとき、外部機器から取得した情報に基づいて画像データの転送先を選定する。この際、空き容量が足りるものの中で電源状態が通常状態のものを優先的に選定し、節電状態の外部機器を転送先に選定した場合はこれを通常状態に復帰させてから転送を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを保存する機能を備えた画像処理装置に係り、特に画像データをネットワークに接続された他の機器に転送する機能を有する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機などの画像処理装置には、スキャナなどで読み取って得た画像データをハードディスク装置などの記憶部に保存する機能を備えると共に、記憶部が空き容量不足や故障の場合に、保存すべき画像データを他の画像処理装置やホストコンピュータなどの外部機器に転送して退避するものがある。
【0003】
たとえば、下記特許文献1には、ネットワークに接続されている稼動中のホストコンピュータを転送先とする画像処理装置が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、ネットワークに接続されている他の画像処理装置を転送先にすると共に、他の画像処理装置から転送要求を受けたときは、自装置の記憶部の空き容量を調べ、保存可能であれば、転送可能を通知して保存処理を行い、空き容量不足の場合は転送不可を通知する処理を行う画像処理装置が開示されている。この画像処理装置では、転送要求を受けたとき、自装置が節電モード中の場合は節電モードを解除して上記処理を行い、終了後に節電モードに移行するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−234493号公報
【特許文献2】特開2004−303083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の装置では、転送を必要とするとき、ネットワークに接続されている外部機器がすべて節電状態であって稼動中のものがなければ、データを転送退避することができない。
【0007】
また特許文献2に開示の装置では、節電モード中に転送要求を受けた場合は節電モードを解除して対応するが、空き容量を検出するだけのために節電モードを解除する場合もあり、無駄な消費電力が発生してしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、自装置の記憶部に画像データを保存できない場合に、無駄な消費電力の発生を抑えて転送先を選定することのできる画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0010】
[1]メインCPUと、
該メインCPUより消費電力の少ないサブCPUと、
画像データの入力部と、
画像データを記憶する記憶部と、
ネットワーク通信部と、
を備え、
電源状態としてメインCPUとサブCPUが共に稼動する通常状態とメインCPUがオフしサブCPUが稼動する節電状態とを有し、
ネットワークに接続されている複数の他の画像処理装置に問い合わせて各画像処理装置の電源状態と記憶部の空き容量とを取得し、
他の画像処理装置から前記問い合わせを受けた場合は自装置の電源状態と記憶部の空き容量とを前記問い合わせ元の画像処理装置に返信すると共に、少なくとも節電状態で前記問い合わせを受けた場合は前記サブCPUが前記返信の動作を制御し、
前記メインCPUは、画像データを入力して保存するジョブを実行する際に自装置の記憶部に該ジョブの画像データを保存できるか否かを判断し、保存できない場合は、前記問い合わせで取得した情報に基づいて、空き容量が足りている他の画像処理装置を転送先に選定し、該選定した転送先に前記ジョブの画像データを転送すると共に、前記転送先として、空き容量が足りている他の画像処理装置が複数ある場合は、電源状態が通常状態のものを優先的に選定し、通常状態のものがない場合は節電状態のものを選定すると共に節電状態のものを転送先に選定したときはその転送先を通常状態に復帰させてから前記転送を行うように制御し、
前記サブCPUは、通常状態への復帰要求を他の画像処理装置から受けた場合は電源状態を通常状態に復帰させ、
前記メインCPUは、他の画像処理装置から転送されてきた画像データを受信して前記記憶部に記憶させる動作を制御する
ことを特徴とする画像処理装置。
【0011】
上記発明では、画像処理装置はネットワークに接続されている他の各画像処理装置に対して問い合わせを行って、それぞれの電源状態と記憶部の空き容量を取得する。この問い合わせを受けたとき自装置が節電状態であればサブCPUがこの問い合わせに対する返信動作を制御する。これにより、メインCPUを起動せずに問い合わせに対する返信を行うことができる。容量不足などにより自装置の記憶部に画像データを保存できない場合は、前述の取得した情報に基づいて、画像データの転送先を選定する。この際、空き容量が足りるものの中で電源状態が通常状態のものを優先して転送先に選定する。また、転送先が節電状態の場合はこれを通常状態に復帰させてから転送を行う。これにより、節電状態のものも転送先に選定することができる。
【0012】
[2]前記メインCPUは、電源状態に基づいて選定された空き容量の足りる転送先が複数ある場合は、それらの中から、空き容量の大きいものを優先して、転送先を選定する
ことを特徴とする[1]に記載の画像処理装置。
【0013】
上記発明では、電源状態に関して同一条件の転送先候補が複数ある場合は、その中から、空き容量が大きいものを優先的に転送先に選定する。
【0014】
[3]前記メインCPUは、電源状態に基づいて選定された空き容量の足りる転送先が複数ある場合は、それらの中から、データ転送速度の速いものを優先して、転送先を選定する
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の画像処理装置。
【0015】
上記発明では、電源状態に関して同一条件の転送先候補が複数ある場合は、その中から、データ転送速度が速いものを優先的に転送先に選定する。
【0016】
[4]前記メインCPUは、電源状態に基づいて選定された空き容量の足りる転送先が複数ある場合は、それらの中から、節電状態に入ってからの経過時間の長いものを優先して、転送先を選定する
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0017】
上記発明では、電源状態に関して同一条件の転送先候補が複数ある場合は、その中から、節電状態に入ってからの経過時間の長いものを優先的に転送先に選定する。すなわち、使用頻度の低いものを優先的に選定する。
【0018】
[5]前記メインCPUは、電源状態に基づいて選定された空き容量の足りる転送先が複数ある場合は、それらの中から、記憶部の書き換え回数の制限が緩いものを優先して、転送先を選定する
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0019】
上記発明では、電源状態に関して同一条件の転送先候補が複数ある場合は、その中から、記憶部の書き換え回数の制限が緩いものを優先的に転送先に選定する。すなわち、転送されたデータを保存による転送先の記憶部の劣化が少ないものを優先する。
【0020】
[6]電源状態が前記通常状態と前記節電状態の他にさらに複数種類ある場合は、前記メインCPUは、前記転送先の選定に際して、空き容量が足りて電源状態が通常状態のものがない場合は、空き容量が足りている中で通常状態への復帰時間の短い電源状態にあるものを優先的に選定する
ことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0021】
上記発明では、節電状態が複数種類ある場合、通常状態への復帰時間がより短い節電状態にあるものを優先的に転送先に選定する。
【0022】
[7]前記問い合わせの結果が登録されるリストが記憶された不揮発メモリを備え、
前記サブCPUは、前記問い合わせを繰り返し行って前記リストを逐次更新し、
前記メインCPUは、前記転送先の選定を前記リストに基づいて行う
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0023】
上記発明では、サブCPUは、問い合わせを繰り返し行い、その問い合わせ結果により不揮発メモリ内のリストを逐次更新し、メインCPUはこのリストを参照して転送先を選定する。
【0024】
[8]前記メインCPUは、前記判断の結果が”保存できない”である場合に、前記問い合わせを行う
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0025】
上記発明では、必要時に問い合わせが行われる。
【0026】
[9]メインCPUと、サブCPUと、ネットワーク通信部と、記憶部とを少なくとも備え電源状態として前記通常状態と前記節電状態とを備え、節電状態ではサブCPUの制御によってネットワーク通信部を通じて情報を送受信する外部機器を、前記他の画像処理装置のように前記転送先の装置として扱う
ことを特徴とする[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0027】
上記発明では、他の画像処理装置以外の外部機器も転送先の候補にされる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る画像処理装置によれば、自装置の記憶部に画像データを保存できない場合に、その画像データを、無駄な消費電力の発生を少なく抑えて転送先を選定して転送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理装置が接続されたネットワークシステムを示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】監視機器リストの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像処理装置から情報取得要求を受信した外部端末のサブCPUの動作を示す流れ図である。
【図6】画像処理装置による監視機器リストの更新処理を示す流れ図である。
【図7】画像処理装置が画像データの保存を伴うジョブを実行する際に行う保存動作であって選定基準A1で転送先を選定する場合の動作を示す流れ図である。
【図8】画像処理装置が画像データの保存を伴うジョブを実行する際に行う保存動作であって選定基準A2で転送先を選定する場合の動作を示す流れ図である。
【図9】画像処理装置が画像データの保存を伴うジョブを実行する際に行う保存動作であって選定基準A3で転送先を選定する場合の動作を示す流れ図である。
【図10】画像処理装置が画像データの保存を伴うジョブを実行する際に行う保存動作であって選定基準A4で転送先を選定する場合の動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置10が接続されたネットワークシステム5の一例を示している。ネットワークシステム5では、複数台の画像処理装置10(以後、MFPとも呼ぶ)と複数台の端末装置30(以後、PCとも呼ぶ)が、LAN(Local Area Network)などのネットワーク2を介して接続されている。
【0032】
画像処理装置10は、画像データを入力しこれをハードディスク装置25などの記憶部に保存(一時保存も含む)する処理を伴うジョブを実行する機能を備えた装置である。本例では、画像処理装置10は、原稿を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷するコピージョブ、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり外部端末へネットワークを通じて送信したりするスキャンジョブ、端末装置30からネットワーク2を通じて受信した印刷データに係る画像を記録紙上に形成して印刷出力するプリントジョブなどのジョブを実行する機能を備えた複合機である。
【0033】
また、画像処理装置10は、画像データを保存する処理を伴うジョブ(たとえば、スキャンジョブやコピージョブ)の実行に際して、自装置の記憶部が空き容量不足や故障などにより利用できない場合は、ネットワーク2を通じて他の画像処理装置10や端末装置30(これらを自装置に対して外部機器と呼ぶものとする)にその画像データを転送して保存し、必要に応じて転送先から呼び戻して利用する機能を備えている。また、他の画像処理装置10から転送された画像データを保存したり、保存した画像データを転送元の画像処理装置10に対して送信して戻したりする機能を備えている。
【0034】
詳細には、画像処理装置10は、ネットワーク2に接続されている他の画像処理装置10や端末装置30などの外部機器に対して、電源状態や記憶部の空き容量などの個体情報を問い合わせ(情報取得要求Qを送信)し、その応答として各外部機器から情報応答Rを受信して取得する。そして、この取得した各外部機器の個体情報に基づいて画像データの転送先を選定する。上記の問い合わせと応答は、たとえば、5分や10分などの設定された一定周期で繰り返し行われる、あるいは、転送が必要となった場合に行われる。
【0035】
端末装置30は、画像処理装置10に対して、スキャンジョブやプリントジョブなどのジョブを投入してその実行を要求する機能、画像処理装置10から転送された画像データを保存したり、保存した画像データを画像処理装置10に対して送信して戻したりする機能を備えた情報処理装置である。端末装置30は、OS(Operating System)プログラムや画像処理装置10のドライバプログラム、文書や画像を作成・編集するアプリケーションプログラムなどがインストールされたパーソナルコンピュータなどで構成される。スキャンジョブやプリントジョブの投入など画像処理装置10に対する各種の要求は画像処理装置10用のドライバプログラムによって行われる。
【0036】
画像処理装置10および端末装置30は共に複数の電源状態を備えている。ここでは、各部へ通電されて各種の処理を実行可能な通常状態、通常状態より電力消費の少ないスリープ、スリープよりさらに電力消費の少ないシャットダウンなどを備えている。通常状態への復帰に要する時間は、スリープよりシャットダウンの方が長い。
【0037】
図2は、画像処理装置10の概略構成を示している。画像処理装置10は、当該画像処理装置10の動作を統括制御するメインCPU(Central Processing Unit)11と、このメインCPU11に接続されたROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、スキャナ部14と、プリンタ部15と、ファクシミリ部16と、表示部17と、操作部18と、画像処理部19とを備えている。さらに、メインCPU11には、サブCPU21を内部に備えたブリッジ部20が接続されている。ブリッジ部20には、メモリ22と、不揮発メモリ23と、ネットワークI/F部24と、記憶部としてのハードディスク装置25が接続されている。また、画像処理装置10は、当該画像処理装置10の各部へ電力供給する電源部28を備えている。
【0038】
メインCPU11ではOSプログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどが実行される。サブCPU21は、メインCPU11より処理能力が小さく消費電力も少ないCPUである。サブCPU21は、メインCPU11とは別に、OSと関係なく、独立して動作する。
【0039】
メインCPU11は、ブリッジ部20を通じてサブCPU21およびブリッジ部20に接続されている各部へアクセスして情報を授受可能になっている。サブCPU21は、ブリッジ部20を通じてメモリ22、不揮発メモリ23、ネットワークI/F部24、ハードディスク装置25にアクセスでき、メインCPU11とも情報を授受することができる。これにより、たとえば、メモリ22や不揮発メモリ23は、メインCPU11とサブCPU21との間の情報授受の媒体としても使用される。
【0040】
スキャナ部14、プリンタ部15、ファクシミリ部16、表示部17、操作部18、画像処理部19などはメインCPU11によって動作が制御される。たとえば、メインCPU11は、ネットワーク2を通じて端末装置30から受信したプリントジョブに係る印刷をプリンタ部15に行わせるように制御する。
【0041】
電源部28は、商用電源を適宜の電圧に変換して画像処理装置10の各部へ電力を供給する。また、メインCPU11やサブCPU21からの指示に従って、電力を供給するか供給停止するかを電力供給先別に制御する機能を備えている。ここでは、通常状態では全ての部分に電力供給し、スリープ状態では、スキャナ部14、プリンタ部15、ファクシミリ部16(受信部を除く)、表示部17、画像処理部19、ハードディスク装置25への電源供給は停止しその他へは給電する。ただし、スリープ状態では、メインCPU11は能力を低下させて低消費電力で動作する。
【0042】
シャットダウン状態では、メインCPU11も動作を停止する。シャットダウン状態では、サブCPU21、メモリ22、不揮発メモリ23、ネットワークI/F部24には、図示省略のメイン電源スイッチがオフされたり商用電源の供給が停止されたりしない限り給電し、他の部分(メインCPU11も含む)への給電は停止するようになっている。なおスリープ状態は、前述した状態に限定されず、シャットダウン状態より通常状態に近いが、通常状態よりも電力消費が少ない電源状態であればよく、たとえば、RAM13へは給電を継続するがメインCPU11やROM12への給電は停止するといった状態でもよい。
【0043】
ROM12には各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってメインCPU11が処理を実行することでジョブの実行など画像処理装置10の各機能が実現される。RAM13はメインCPU11がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。なお、その他の必要なプログラムはハードディスク装置25からRAM13にロードされて実行される。
【0044】
スキャナ部14は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。スキャナ部14は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0045】
プリンタ部15は、画像データに応じた画像を記録紙上に画像形成する機能を果たす。ここでは、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。画像形成は他の方式でもかまわない。
【0046】
ファクシミリ部16は、ファクシミリ送信および受信に係る動作を制御する。
【0047】
画像処理装置10の操作パネルは表示部17と操作部18を備えて構成される。表示部17は、液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)などで構成され、各種の操作画面、設定画面などを表示する機能を果たす。操作部18は、ユーザからジョブの投入や設定など各種の操作を受け付ける機能を果たす。操作部18は、表示部17の画面上に設けられて押下された座標位置を検出するタッチパネルのほかテンキーや文字入力キー、スタートキーなどを備えて構成される。
【0048】
画像処理部19は、画像の拡大縮小、回転などの処理のほか、印刷データをイメージデータに変換するラスタライズ処理、画像データの圧縮、伸張処理などを行う。
【0049】
メモリ22はサブCPU21のワークメモリとして使用される。不揮発メモリ23は、電源がオフされても記憶内容が破壊されないメモリ(フラッシュメモリ)であり、後述する監視機器リスト50やサブCPU21が実行するプログラムなどが記憶されている。ネットワークI/F部24は、ネットワーク2を通じて端末装置30や他の画像処理装置10などの外部機器と各種のデータを送受信する機能を果たす。ハードディスク装置25は、大容量不揮発の記憶装置であり、プログラムのほか、たとえば、印刷データや画像データの保存に使用される。
【0050】
サブCPU21は、メインCPU11とは別に、OSプログラムに関係なく独自に動作し、メインCPU11の動作あるいは給電が停止するシャットダウン状態でも、サブCPU21は稼動している。画像処理装置10は、サブCPU21が稼動している状態であれば、メモリ22や不揮発メモリ23へのアクセス、ネットワークI/F部24による通信を行うことができる。すなわち、ネットワークI/F部24はサブCPU21によってルーティングされ、OS上のソフトウェアに依存することなく、ネットワーク2を介して端末装置30などの外部装置と通信することができる。
【0051】
画像処理装置10は、たとえば、スキャンジョブは、スキャナ部14で読み取って得た画像データを順次、ハードディスク装置25に保存する処理を行なう。また、コピージョブでは、スキャナ部14で読み取って得た画像データを順次ハードディスク装置25に保存する入力処理と、該入力処理で保存した画像データをハードディスク装置25から順次読み出してプリンタ部15で印刷する出力処理とを行うことで原稿を複写する。
【0052】
また、画像処理装置10では、メインCPU11が、自装置のIP(Internet Protocol)アドレス、ハードディスク装置25の空き容量、記憶部の種類、現在の電源状態、ネットワーク速度、節電状態(スリープまたはシャットダウン)へ移行した最新の日時、を、自装置の個体情報として不揮発メモリ23に保存し、かつこれらを最新の状態に更新するようになっている。
【0053】
すなわち、メインCPU11は、IPアドレスが設定あるいは変更されたときそのIPアドレスを不揮発メモリ23に記憶する。また、ハードディスク装置25へのデータ書き込み処理あるいは消去処理を行った場合など、空き容量が変化したとき、その変化後の空き容量で不揮発メモリ23に記憶してある空き容量を更新する。また電源状態が変化するとき、その変化後の電源状態を不揮発メモリ23に書き込む。また、通常状態からスリープまたはシャットダウン状態へ移行するときにその時点の日時を不揮発メモリ23に書き込み更新する。なお、サブCPU21の制御でスリープからシャットダウンへ移行したときはサブCPU21が移行後の電源状態およびその移行した日時を不揮発メモリ23に書き込み更新する。
サブCPU21は他の画像処理装置10から問い合わせ(情報取得要求Q)を受けたとき、不揮発メモリ23に保存されている上記の個体情報を読み出して情報応答Rを作成し返信するようになっている。サブCPU21は、スリープやシャットダウン状態であっても上記の返信動作を制御する。
【0054】
図3は、端末装置30の概略構成の一例を示している。端末装置30は、メインCPU31と、ROM32と、RAM33と、入出力I/F部34と、ブリッジ部40と、サブCPU41と、メモリ42と、不揮発メモリ43と、ネットワークI/F部44と、記憶部45と、電源部48とを備えている。さらに入出力I/F部34を介して、キーボードやマウスなどの入力デバイス35と、液晶ディスプレイなどの表示装置36が接続されている。記憶部45は、ハードディスク装置が使用される場合のほか、ソリッドステートドライブ(SSD)など他の種類の記憶装置が使用される場合がある。
【0055】
ROM32には起動用のプログラムや固定データが記憶される。RAM33には、記憶部45からロードしたプログラムが記憶される。またRAM33は、メインCPU31がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリなどとして使用される。
【0056】
不揮発メモリ43は、電源をオフにしても記憶内容が破壊されないメモリ(フラッシュメモリ)である。ネットワークI/F部44は、ネットワーク2を介して画像処理装置10や他の外部装置と各種のデータを送受信する機能を果たす。記憶部45は、大容量不揮発の記憶装置であり、OSプログラムや画像処理装置10のドライバプログラム、ミドルウェア、各種アプリケーションプログラム、ファイル、データなどが保存される。
【0057】
端末装置30においても、サブCPU41は、メインCPU31より処理能力が小さく消費電力も少ないCPUである。メインCPU31ではOSプログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどが実行される。サブCPU41は、OSプログラムなしで動作し、メインCPU31に比べて、負荷の少ない処理を実行する。
【0058】
メインCPU31は、ブリッジ部40を通じてサブCPU41およびブリッジ部40に接続されている各部へアクセスして情報を授受可能になっている。サブCPU41は、ブリッジ部40を通じてメモリ42、不揮発メモリ43、ネットワークI/F部44、記憶部45にアクセスでき、メインCPU31とも情報を授受することができる。これにより、たとえば、メモリ42や不揮発メモリ43は、メインCPU31とサブCPU41との間の情報授受の媒体としても使用される。
【0059】
電源部48は、商用電源を適宜の電圧に変換して端末装置30の各部へ電力を供給する。また、メインCPU31やサブCPU41からの指示に従って、電力を供給するか供給停止するかを電力供給先別に制御する機能を備えている。ここでは、通常状態では全ての部分に電力供給し、スリープでは、メインCPU31、入出力I/F部34、ROM32、記憶部45への給電は停止する。この状態ではRAM33への給電が継続されており、OS管理状態にあり、通常状態へ電源状態が復帰してメインCPU31が稼動すると、RAM33に記憶されている情報に基づいて直ぐに通常の動作に復帰することができる。
【0060】
シャットダウンではさらにROM32への給電も停止する。シャットダウンにおいても、サブCPU41、メモリ42、不揮発メモリ43、ネットワークI/F部44には、図示省略のメイン電源スイッチがオフされたり商用電源の供給が停止されたりしない限り、給電される。シャットダウンの状態から通常の稼動状態に復帰するためには、メインCPU31はOSの立ち上げ、すなわち、初期化から始めることになる。したがって、通常状態への復帰に要する時間は、スリープよりシャットダウンの方が長い。
【0061】
端末装置30は、シャットダウン状態においてもサブCPU41が稼動している。そして、サブCPU41が稼動している状態であれば、メモリ42や不揮発メモリ43へのアクセス、ネットワークI/F部44による通信を行うことができる。すなわち、ネットワークI/F部44はサブCPU41によってルーティングされ、OS上のソフトウェアに依存することなく、ネットワーク2を介して画像処理装置10などの外部装置と通信することができる。
【0062】
端末装置30では、メインCPU31やサブCPU41が、個体情報として、自装置のIPアドレス、記憶部45の空き容量、記憶部45の種類、現在の電源状態、ネットワーク速度、節電状態(スリープまたはシャットダウン)へ移行した最新の日時、を不揮発メモリ43に保存し、かつこれらを最新の状態に更新するようになっている。
【0063】
すなわち、メインCPU31は、IPアドレスが設定あるいは変更されたときそのIPアドレスを不揮発メモリ43に記憶する。また、記憶部45へのデータ書き込み処理あるいは消去処理を行った場合など、空き容量が変化したとき、その変化後の空き容量で不揮発メモリ43に記憶してある空き容量を更新する。また電源状態が変化するとき、その変化後の電源状態を不揮発メモリ43に書き込む。通常状態からスリープまたはシャットダウン状態へ移行するときにその時点の日時を不揮発メモリ43に書き込み更新する。なお、サブCPU41の制御でスリープからシャットダウンへ移行したときはサブCPU41がその移行後の電源状態および移行した日時を不揮発メモリ23に書き込み更新するようになっている。
【0064】
サブCPU41は画像処理装置10から問い合わせ(情報取得要求Q)を受けたとき、不揮発メモリ43に保存されているこれらの個体情報を読み出して情報応答Rを作成し返信するようになっている。サブCPU41は、スリープやシャットダウン状態であっても上記の返信動作を制御する。
【0065】
図4は、画像処理装置10のサブCPU21が作成して、不揮発メモリ23に記憶し更新する監視機器リスト50の一例を示している。なお、図4は、図1の状態で画像処理装置10aに作成される監視機器リスト50の登録状態となっている。監視機器リスト50には、ネットワーク2に接続されている各外部機器(他の画像処理装置10や端末装置30)の電源状態や記憶部の空き容量などの個体情報が登録される。監視機器リスト50には、外部機器名、IPアドレス、空き容量、電源状態、ネットワーク速度、節電状態移行日時、デバイスの各項目について、外部機器毎に登録される。
【0066】
外部機器名はネットワーク管理者などが各外部機器(画像処理装置10や端末装置30)に割り当てた名称である。IPアドレスは、外部機器のネットワーク2内のIPアドレスである。空き容量は、外部機器が有する記憶部で利用可能な空き容量を示す。電源状態は、通常状態、スリープ、シャットダウンなどである。ネットワーク速度は、その外部機器がネットワーク2を通じてデータを送受信する際の通信速度(データ転送レート)である。節電状態移行日時は、節電状態(スリープまたはシャットダウン)へ移行した最新の日時である。デバイスは記憶部の種類を示す。記憶部の種類としては、ハードディスク装置(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などがある。SSDは、磁気ディスクの代わりに半導体メモリにデータを記録する記憶装置である。SSDはHDDに比べて、書き換え回数の制限が厳しく、書き換えの上限回数が少ない。
【0067】
図5は、画像処理装置10のサブCPU21から情報取得要求Qを受信した外部機器のサブCPU(他の画像処理装置10のサブCPU21あるいは端末装置30のサブCPU41)が行う動作の流れ図である。外部機器のサブCPU21、41は、情報取得要求Qを受信すると(ステップS101;Yes)、現在の自装置の電源状態や記憶部の空き容量などの個体情報を不揮発メモリ23、43から読み出して取得する(ステップS102)。そして、サブCPU21、41は、該取得した個体情報を含む情報応答Rを作成し、これを先ほど受信した情報取得要求Qの送信元へ送信する(ステップS103)。
【0068】
図6は、画像処理装置10による監視機器リスト50の更新処理を示している。画像処理装置10のサブCPU21は一定時間(たとえば、1分から10分)が経過する毎に(ステップS201;Yes)、ネットワーク2に接続されている全ての外部機器に対して情報取得要求Qを送信する(ステップS202)。その後、各外部機器から送信されてくる情報応答R(固体情報)を受信し(ステップS203)、受信した個体情報に基づいて監視機器リスト50を更新する(ステップS204)。こうして、監視機器リスト50には、ネットワーク2に接続されている各外部機器の個体情報がほぼ最新の状態に更新されて登録される。
【0069】
次に、画像処理装置10が、画像データの保存を伴うジョブ(たとえば、スキャンジョブ)を実行する際に行う保存動作について説明する。該保存動作では、自装置の記憶部の空き容量が不足するとき、空き容量が足りている外部機器の中から転送先を選定し、その転送先に画像データを保存する。基本的には、電源状態が復帰負担(通常状態に復帰するまでの時間や復帰するために増加する消費電力)の少ないものを優先的に転送先に選定(選択)する。なお、保存対象の画像データはスキャナ部14から入力されるものに限定されず、たとえば、端末装置30から受信したプリントジョブ用の画像データなどでもかまわない。
【0070】
転送先の選定基準は複数あり、それぞれについて説明する。
【0071】
<選定基準A1>
図7は、画像処理装置10が、画像データの保存を伴うジョブ(たとえば、スキャンジョブ)を実行する際に行う保存動作であって、転送先を選定基準A1で選定する場合の流れを示している。選定基準A1では、空き容量が足りていることを第1条件とし、その次に優先する第2条件を電源状態(通常状態、スリープ、シャットダウンの順に優先)とし、その次に優先する第3条件を利用可能な空き容量が大きいこと、としている。
【0072】
図7の破線A1で囲った部分が選定基準A1に固有の処理であり、他の部分は他の選定基準と共通の処理である。
【0073】
メインCPU11は、当該ジョブの画像データの保存に必要な容量を算出し(ステップS301)、該画像データの保存にハードディスク装置25の空き容量が足りるか否かを判断する(ステップS302)。空き容量が足りる場合は(ステップS302;No)、不揮発メモリ23に当該ジョブの画像データを保存して(ステップS303)ジョブを終了する。
【0074】
不揮発メモリ23の空き容量が不足する場合は(ステップS302;Yes)、不揮発メモリ23に記憶してある監視機器リスト50を参照して、当該ジョブの画像データの保存に空き容量が足りている外部機器が存在するか否かを判断する(ステップS305(S304はスキップ))。なお、図5の処理を行わずに監視機器リスト50を予め作成しない構成としてもよい。この場合は、ステップS305の手前でステップS304を実行すればよい。
【0075】
すなわち、不揮発メモリ23が容量不足と判断したときに(ステップS302;Yes)、サブCPU21がネットワーク2に接続されている各外部機器に情報取得要求Qを送信して情報応答R(個体情報)を収集し(ステップS304)、この収集した個体情報に基づいて、ステップS305の判断を行うようにすればよい。監視機器リスト50を参照する場合、前回のリスト更新時からの状況変化には対応できないが、ステップS304で必要時に問い合わせを行えば、たとえば、直前に外部端末がネットワークから切断された場合や、IPアドレスが変更されたような場合にも対応することができる。
【0076】
当該ジョブの画像データの保存に空き容量が足りている外部機器が存在しない場合は(ステップS305;No)、ハードディスク装置25の容量不足によってジョブを中断するといったエラーメッセージを表示部17に表示するなどにより、ユーザにエラーを通知して(ステップS306)、ジョブを終了する。
【0077】
空き容量の足りる外部機器が存在する場合は(ステップS305;Yes)、空き容量の足りる外部機器の中で、電源状態が通常状態のものがあるか否かを、監視機器リスト50もしくはステップS304で収集した情報に基づいて判断する(ステップS307)。空き容量の足りる外部機器であって電源状態が通常状態のものが存在するならば(ステップS307;Yes)、空き容量の足りる通常状態の外部機器の中で空き容量が最大のものを転送先に選定し、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS308)、ステップS314へ移行する。なお、転送する画像データには、その画像データを一意に特定可能な識別情報を付与するようになっている。
【0078】
空き容量の足りる外部機器の中で電源状態が通常状態のものが存在しない場合は(ステップS307;No)、空き容量の足りる外部機器の中で電源状態がスリープのものが存在するか否かを判断する(ステップS309)。該当の外部機器が存在する場合は(ステップS309;Yes)、空き容量の足りるスリープ状態の外部機器の中で空き容量が最大のものを転送先に選定し、該転送先に電源状態を通常状態に復帰させる指示を送信して起動する(ステップS310)。復帰後、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS311)、ステップS314へ移行する。
【0079】
空き容量の足りる外部機器の中に電源状態がスリープのものが存在しない場合は(ステップS309;No)、空き容量の足りるシャットダウン状態の外部機器の中で空き容量が最大のものを転送先に選定し、該転送先に電源状態を通常状態に復帰させる指示を送信して起動する(ステップS312)。復帰後、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS313)、ステップS314へ移行する。
【0080】
ステップS314では、転送した画像データを、必要に応じて転送先から呼び戻して使用する。呼び戻す画像データは転送時に付加した識別情報で指定する。コピージョブの場合、当該ジョブの実行中に転送先から画像データを呼び戻してプリント出力する。スキャンジョブの場合は、保存した画像データの出力要求を受けたとき、転送先から呼び戻す。
【0081】
転送先の外部機器は、転送されてきた画像データをこれに付加された識別情報と関連付けて記憶部に記憶する。また、画像処理装置10から画像データの指定を含む画像データの呼び戻し要求を受けたときは、その指定された画像データを当該呼び戻し要求元の画像処理装置10へ送信する。
【0082】
このように、選定基準A1では、空き容量が足りている外部機器の中で電源状態が通常状態のものを優先的に転送先に選定するので、スリープやシャットダウン状態の外部機器を通常状態に復帰させる頻度が少なくなり、消費電力の無駄を低減できる。また、スリープやシャットダウン状態の外部機器を通常状態に復帰させる場合に比べて、転送開始までの時間を短縮できる。また、第3条件を、空き容量最大のもの、としているので、第1、第2条件を満たすものの中で空き容量に余裕のある外部機器が優先的に転送先に選定される。
【0083】
<選定基準A2>
図8は、画像処理装置10が画像データの保存を伴うジョブを実行する際に行う保存動作であって、転送先を選定基準A2で選定する場合の流れを示している。選定基準A2では、空き容量が足りていることを第1条件とし、その次に優先する第2条件を電源状態(通常状態、スリープ、シャットダウンの順に優先)とし、その次に優先する第3条件をネットワーク速度が速い、としている。第1条件、第2条件は選定基準A1と同じである。
【0084】
図7と同一処理の部分には同一のステップ番号を付してあり、それらの説明は省略する。図8の破線A2で囲った部分が選定基準A2に固有の処理である。
【0085】
空き容量の足りる外部機器が存在する場合は(ステップS305;Yes)、空き容量の足りる外部機器の中で、電源状態が通常状態のものがあるか否かを、監視機器リスト50もしくはステップS304で収集した情報に基づいて判断する(ステップS331)。空き容量の足りる外部機器であって電源状態が通常状態のものが存在するならば(ステップS331;Yes)、空き容量の足りる通常状態の外部機器の中でネットワーク速度(転送速度)が最大のものを転送先に選定し(ステップS332)、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS333)、ステップS314へ移行する。
【0086】
空き容量の足りる外部機器の中で電源状態が通常状態のものが存在しない場合は(ステップS331;No)、空き容量の足りる外部機器の中で電源状態がスリープのものが存在するか否かを判断する(ステップS334)。該当の外部機器が存在する場合は(ステップS334;Yes)、空き容量の足りるスリープ状態の外部機器の中でネットワーク速度が最大のものを転送先に選定し、該転送先に電源状態を通常状態に復帰させる指示を送信して起動する(ステップS335)。復帰後、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS336)、ステップS314へ移行する。
【0087】
空き容量の足りる外部機器の中に電源状態がスリープのものが存在しない場合は(ステップS334;No)、空き容量の足りるシャットダウン状態の外部機器の中でネットワーク速度が最大のものを転送先に選定し、該転送先に電源状態を通常状態に復帰させる指示を送信して起動する(ステップS337)。復帰後、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS338)、ステップS314へ移行する。
【0088】
このように、選定基準A2では、空き容量が足りている外部機器の中で電源状態が通常状態のものを優先的に転送先に選定するので、スリープやシャットダウン状態の外部機器を通常状態に復帰させる頻度が少なくなり、消費電力の無駄を低減できる。また、スリープやシャットダウン状態の外部機器を通常状態に復帰させる場合に比べて、転送開始までの時間を短縮できる。また、第3条件を、ネットワーク速度が最大、としているので、第1、第2条件を満たすものの中でネットワーク速度が最大の外部機器が優先的に転送先に選定され、転送時間を短縮する(データ転送時のオーバーヘッドを軽減する)ことができる。
【0089】
<選定基準A3>
図9は、画像処理装置10が画像データの保存を伴うジョブを実行する際に行う保存動作であって、転送先を選定基準A3で選定する場合の流れを示している。選定基準A3では、空き容量が足りていることを第1条件とし、その次に優先する第2条件を電源状態(通常状態、スリープ、シャットダウンの順に優先)とし、その次に優先する第3条件を、節電状態が長いものを優先する、としている。第1条件、第2条件は選定基準A1、A2と同じである。
【0090】
図7と同一処理の部分には同一のステップ番号を付してあり、それらの説明は省略する。図9の破線A3で囲った部分が選定基準A3に固有の処理である。
【0091】
空き容量の足りる外部機器が存在する場合は(ステップS305;Yes)、空き容量の足りる外部機器の中で、電源状態が通常状態のものがあるか否かを、監視機器リスト50もしくはステップS304で収集した情報に基づいて判断する(ステップS351)。空き容量の足りる外部機器であって電源状態が通常状態のものが存在するならば(ステップS351;Yes)、現在日時と節電状態に入った日時とを比較して、節電状態の継続時間を算出する(ステップS352)。すなわち、各外部機器について、現在日時と図4の監視機器リスト50に登録されている節電状態移行日時、あるいはステップS304で取得した「節電状態(スリープまたはシャットダウン)へ移行した最新の日時」との差分を節電状態の継続時間として求める。節電状態の継続時間が長いものは、使用頻度が低く、他のタスク(ジョブ)で使用されることが少ないと想定される。
【0092】
空き容量の足りる通常状態の外部機器の中で節電状態の継続時間が最長のものを転送先に選定し(ステップS353)、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS354)、ステップS314へ移行する。
【0093】
空き容量の足りる外部機器の中で電源状態が通常状態のものが存在しない場合は(ステップS351;No)、空き容量の足りる外部機器の中で電源状態がスリープのものが存在するか否かを判断する(ステップS355)。該当の外部機器が存在する場合は(ステップS355;Yes)、現在日時と節電状態に入った日時とを比較して、節電状態の継続時間を算出する(ステップS356)。そして、空き容量の足りるスリープ状態の外部機器の中で節電状態の継続時間が最長のものを転送先に選定し、該転送先に電源状態を通常状態に復帰させる指示を送信して通常状態に起動する(ステップS357)。その後、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS358)、ステップS314へ移行する。
【0094】
空き容量の足りる外部機器の中に電源状態がスリープのものが存在しない場合は(ステップS355;No)、現在日時と節電状態に入った日時とを比較して、節電状態の継続時間を算出する(ステップS359)。そして、空き容量の足りるシャットダウン状態の外部機器の中で節電状態の継続時間が最長のものを転送先に選定し、該転送先に電源状態を通常状態に復帰させる指示を送信して通常状態に起動する(ステップS360)。その後、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS361)、ステップS314へ移行する。
【0095】
このように、選定基準A3では、空き容量が足りている外部機器の中で電源状態が通常状態のものを優先的に転送先に選定するので、スリープやシャットダウン状態の外部機器を通常状態に復帰させる頻度が少なくなり、消費電力の無駄を低減できる。また、スリープやシャットダウン状態の外部機器を通常状態に復帰させる場合に比べて、転送開始までの時間を短縮できる。また、第3条件を、節電状態の継続時間が最長、としているので、第1、第2条件を満たすものの中で節電状態の継続時間が最長のもの、すなわち、使用頻度が低く、他のジョブ(タスク)で使用されることが少ないであろう外部機器、を優先的に転送先に選定するので、転送先の外部機器は、その処理能力を、転送されてくるデータの受信・保存に注力でき、効率よく転送することができる。また、使用頻度が少なければ、記憶部の使用も少ないと想定されるので、データの長期退避先として使用することができる。
【0096】
<選定基準A4>
図10は、画像処理装置10が画像データの保存を伴うジョブを実行する際に行う保存動作であって、転送先を選定基準A4で選定する場合の流れを示している。選定基準A4では、空き容量が足りていることを第1条件とし、その次に優先する第2条件を電源状態(通常状態、スリープ、シャットダウンの順に優先)とし、その次に優先する第3条件を、データ書き換え回数の制限が緩い記憶部を優先する、としている。ここでは、記憶部の種類としてHDDとSSDが存在するものとし、第3条件は、HDDを優先的に選定する、である。第1条件、第2条件は選定基準A1、A2と同じである。
【0097】
図7と同一処理の部分には同一のステップ番号を付してあり、それらの説明は省略する。図10の破線A4で囲った部分が選定基準A4に固有の処理である。
【0098】
空き容量の足りる外部機器が存在する場合は(ステップS305;Yes)、空き容量の足りる外部機器の中で、電源状態が通常状態のものがあるか否かを、監視機器リスト50もしくはステップS304で収集した情報に基づいて判断する(ステップS371)。空き容量の足りる外部機器であって電源状態が通常状態のものが存在するならば(ステップS371;Yes)、その中で記憶部(デバイス)の種類がHDDである外部機器を優先的に転送先に選定する(ステップS372)。すなわち、空き容量の足りる通常状態の外部機器の中に、記憶部がHDDのものがあればそれを転送先に選定し、HDDのものがなければ、他の種類のもの(ここでは、SSDのもの)を転送先に選定する。そして、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS373)、ステップS314へ移行する。
【0099】
空き容量の足りる外部機器の中で電源状態が通常状態のものが存在しない場合は(ステップS371;No)、空き容量の足りる外部機器の中で電源状態がスリープのものが存在するか否かを判断する(ステップS374)。該当の外部機器が存在する場合は(ステップS374;Yes)、その中で記憶部(デバイス)の種類がHDDである外部機器を優先的に転送先に選定し、該転送先に電源状態を通常状態に復帰させる指示を送信して通常状態に起動する(ステップS375)。その後、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS376)、ステップS314へ移行する。
【0100】
空き容量の足りる外部機器の中に電源状態がスリープのものが存在しない場合は(ステップS374;No)、その中で記憶部(デバイス)の種類がHDDである外部機器を優先的に転送先に選定し、該転送先に電源状態を通常状態に復帰させる指示を送信して通常状態に起動する(ステップS377)。その後、該転送先へ当該ジョブの画像データを転送して(ステップS378)、ステップS314へ移行する。
【0101】
このように、選定基準A4では、空き容量が足りている外部機器の中で電源状態が通常状態のものを優先的に転送先に選定するので、スリープやシャットダウン状態の外部機器を通常状態に復帰させる頻度が少なくなり、消費電力の無駄を低減できる。また、スリープやシャットダウン状態の外部機器を通常状態に復帰させる場合に比べて、転送開始までの時間を短縮できる。また、第3条件を、記憶部の種類がHDDのものを優先、としているので、第1、第2条件を満たすものの中で、データの書き換え回数の制限が緩いものが優先され、転送先の記憶部、特に記憶部がSSDの場合に、その劣化を少なく抑えることができる。
【0102】
なお、各外部機器は、サブCPUを有するので、自装置の電源状態がスリープからシャットダウンに変化したことなども認識でき、複数段階の電源状態を情報応答Rとして返信することができる。また、サブCPUが情報取得要求Qに対する情報応答Rの返信動作を制御するので、スリープやシャットダウン状態であってもメインCPUを起動することなく情報応答Rを返信することができる。
【0103】
また、選定した転送先がスリープやシャットダウン状態の場合はこれを通常状態に復帰させて画像データを転送するので、空き容量の足りる外部機器がすべてスリープやシャットダウン状態であっても画像データを転送・退避することができる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0105】
たとえば、実施の形態では、ステップS302で容量不足の判断を行ったが、故障など他の理由で記憶部データを保存できない場合も、容量不足と同様に扱えばよい。また、選定基準にける第3条件は実施の形態で例示したものに限定されない。たとえば、転送先でのデータのバック体制を基準としてもよい。たとえば、ミラーリングするなどデータ損失の可能性が低い(安全性の高い)ものを優先するような基準でもよい。
【0106】
また、実施の形態では選定基準A1〜A4を個別に示したが、これらを組み合わせた選定基準としてもよい。たとえば、選定基準A2の第3条件を選定基準A1の第4条件として、選定基準A3の第3条件を選定基準A1の第5条件として、選定基準A4の第3条件を選定基準A1の第6条件としてさらに加えるようにしてもよい。すなわち、ステップS308、S310、S312で空き容量が最大(最大のものと同程度に大きい)のものが複数あれば(選定基準A1の第3条件)、第4条件により、それらの中でネットワーク速度が速いものを選定し、ネットワーク速度が最速の(最速のものと同程度に速い)ものが複数あれば、さらに第5条件により選定する、というようにしてもよい。
【0107】
実施の形態では、外部機器として、他の画像処理装置10および端末装置30を例示したが、記憶部を備えて転送に対応可能な機器であれば、サーバなど他の種類の装置であってもかまわない。また、外部機器は、端末装置30などを含まずに、他の画像処理装置10のみとしてもよい。たとえば、ネットワーク2に複数台の画像処理装置10を接続し、それらの間でのみ転送するようなシステムでもよい。
【0108】
転送先の候補とする外部機器は、ネットワーク上で検索してもよいし、予めそれぞれの画像処理装置10に登録しておいてもよい。
【0109】
実施の形態では画像処理装置10が複合機の場合を例に説明したが、画像データを記憶部に保存(一時保存を含む)する処理を含むジョブの実行機能を備えてネットワーク接続に可能な装置であれば、複写機やスキャナ装置など他の種類の画像処理装置であってもかまわない。
【0110】
実施の形態では、画像処理装置10や端末装置30の電源状態を通常状態、スリープ、シャットダウンの3つの状態に区別して取得したが、より細かく区別してもよい。たとえば、電源状態を、
S0:通常動作、
S1:メインCPUを省電力化するスリープ状態、
S2:OSがサポートによるサスペンド状態、
S3:メモリ以外への給電をほぼ停止するサスペンド状態(Suspend-To-RAM)、
S4:メモリの内容をハードディスク装置に保存後、メモリへの給電も停止するサスペンド状態(Suspend-To-Disk)、
S5:シャットダウン状態、
に分けて管理している場合に、これらS0〜S5を区別して電源状態を取得し、S0の近い電源状態のものを優先的に転送先に選定するように制御してもよい。すなわち、復帰負担(復帰までの時間や復帰するために増加する消費電力)の少ないものを優先的に転送先に選定するようにすればよい。
【0111】
通常状態では、情報取得要求Qに対する情報応答Rの返信動作をメインCPUが制御するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
2…ネットワーク
5…ネットワークシステム
10、10a…画像処理装置(MFP)
11…メインCPU
12…ROM
13…RAM
14…スキャナ部
15…プリンタ部
16…ファクシミリ部
17…表示部
18…操作部
19…画像処理部
20…ブリッジ部
21…サブCPU
22…メモリ
23…不揮発メモリ
24…ネットワークI/F部
25…ハードディスク装置
28…電源部
30…端末装置(PC)
31…メインCPU
32…ROM
33…RAM
34…入出力I/F部
35…入力デバイス
36…表示装置
40…ブリッジ部
41…サブCPU
42…メモリ
43…不揮発メモリ
44…ネットワークI/F部
45…記憶部
48…電源部
50…監視機器リスト
Q…情報取得要求
R…情報応答

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインCPUと、
該メインCPUより消費電力の少ないサブCPUと、
画像データの入力部と、
画像データを記憶する記憶部と、
ネットワーク通信部と、
を備え、
電源状態としてメインCPUとサブCPUが共に稼動する通常状態とメインCPUがオフしサブCPUが稼動する節電状態とを有し、
ネットワークに接続されている複数の他の画像処理装置に問い合わせて各画像処理装置の電源状態と記憶部の空き容量とを取得し、
他の画像処理装置から前記問い合わせを受けた場合は自装置の電源状態と記憶部の空き容量とを前記問い合わせ元の画像処理装置に返信すると共に、少なくとも節電状態で前記問い合わせを受けた場合は前記サブCPUが前記返信の動作を制御し、
前記メインCPUは、画像データを入力して保存するジョブを実行する際に自装置の記憶部に該ジョブの画像データを保存できるか否かを判断し、保存できない場合は、前記問い合わせで取得した情報に基づいて、空き容量が足りている他の画像処理装置を転送先に選定し、該選定した転送先に前記ジョブの画像データを転送すると共に、前記転送先として、空き容量が足りている他の画像処理装置が複数ある場合は、電源状態が通常状態のものを優先的に選定し、通常状態のものがない場合は節電状態のものを選定すると共に節電状態のものを転送先に選定したときはその転送先を通常状態に復帰させてから前記転送を行うように制御し、
前記サブCPUは、通常状態への復帰要求を他の画像処理装置から受けた場合は電源状態を通常状態に復帰させ、
前記メインCPUは、他の画像処理装置から転送されてきた画像データを受信して前記記憶部に記憶させる動作を制御する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記メインCPUは、電源状態に基づいて選定された空き容量の足りる転送先が複数ある場合は、空き容量の大きいものを優先することを絞込み条件の1つとして転送先を選定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記メインCPUは、電源状態に基づいて選定された空き容量の足りる転送先が複数ある場合は、データ転送速度の速いものを優先することを絞込み条件の1つとして転送先を選定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記メインCPUは、電源状態に基づいて選定された空き容量の足りる転送先が複数ある場合は、節電状態に入ってからの経過時間の長いものを優先することを絞込み条件の1つとして転送先を選定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記メインCPUは、電源状態に基づいて選定された空き容量の足りる転送先が複数ある場合は、記憶部の書き換え回数の制限が緩いものを優先することを絞込み条件の1つとして転送先を選定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
電源状態が前記通常状態と前記節電状態の他にさらに複数種類ある場合は、前記メインCPUは、前記転送先の選定に際して、空き容量が足りて電源状態が通常状態のものがない場合は、空き容量が足りている中で通常状態への復帰時間の短い電源状態にあるものを優先的に選定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記問い合わせの結果が登録されるリストが記憶された不揮発メモリを備え、
前記サブCPUは、前記問い合わせを繰り返し行って前記リストを逐次更新し、
前記メインCPUは、前記転送先の選定を前記リストに基づいて行う
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記メインCPUは、前記判断の結果が”保存できない”である場合に、前記問い合わせを行う
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項9】
メインCPUと、サブCPUと、ネットワーク通信部と、記憶部とを少なくとも備え電源状態として前記通常状態と前記節電状態とを備え、節電状態ではサブCPUの制御によってネットワーク通信部を通じて情報を送受信する外部機器を、前記他の画像処理装置のように前記転送先の装置として扱う
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119986(P2012−119986A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268591(P2010−268591)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】