説明

画像処理装置

【課題】 多色の重なりによるカラー印刷の不鮮明を抑制し、彩度の低い領域に対して色味が目立ってしまうことを抑制する。
【解決手段】
印刷装置20は、入力画像データの各画素の彩度が所定彩度値より大きいと判断された場合、同一画素に対応する各色成分値に応じて異なるように、ディザマトリックスの閾値を変化させ、変化された各閾値と、各色成分値との比較結果に基づいて、出力画像データを構成する画素の各色成分値を生成する階調変換部24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、特に、入力画像データの各画素と、ディザマトリックス内の各画素に対応する閾値との比較結果に基づいて、印刷装置の印刷に必要な出力画像データを出力する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ディザマトリックス内の各閾値を用いて、原画像データの階調データを2値化することで、疑似中間調で表現されたデータを生成することが行われている。
【0003】
上記のディザマトリックスを用いて、カラー原画像データを2値化する場合、従来より、以下の手法がある。即ち、色成分ごとに、ドットの配置を変化させたドット分散型ディザマトリックスを用いて、カラー原画像データを2値化することが行われている。
【0004】
この手法によれば、同じドットに複数色重なると、粒状感の上昇、2次色のにごりによる鮮やかさが失われてしまう。また、周期性を目立たなくするには、非常に大きなディザマトリックスを用意する必要があるので、必要とするメモリ量が大きくなってしまう。
【0005】
これに対して、ドット分散型ディザマトリックスとして、色成分毎に各閾値が空間的にシフトした関係にあるようなものがある。このドット分散型ディザマトリックスを用いて、カラー原画像データを2値化すると、オフセット量が固定のため、ドット重なり抑制範囲が限定される。また、ドットの重なりにより1画素当たりの印字量が増加し、裏抜け等が生じやすくなる。
【0006】
このように、従来技術では、同じドットに違う色が重なり合った部分が多くなり、良好な発色が得られず、粒状感の増加が発生する不具合を、必要とするメモリ量を少なくしながら解決することができなかった。このような不具合を、ディザマトリックスを記憶するメモリ容量を削減しながら実現する技術として、特開平7−290737による技術があった。
【0007】
この技術によれば、基本的なディザマトリックスをメモリに記憶する。そして、ディザマトリックスを所定の色成分に適用した後、次の色成分に適用する場合、以下の処理が行われる。即ち、上記所定の色成分の階調値と、所定の最大値とを考慮することを繰り返して、次の色成分に適用するディザマトリックスの閾値を、上記所定の色成分に適用するディザマトリックスの閾値と異なるようにする。
【0008】
これにより、記憶するのは、1つのディザマトリックスでありながら、各色成分にディザマトリックスを適用した結果は、色の重なりを最小限にして、多色の重なりによるカラー印刷の不鮮明(発色不良、粒状感)を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−290737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の従来技術では以下の問題があった。カラー原画像データを2値化する場合、彩度の高い領域は、色の重なりを最小限にして、色味を発生させ、多色の重なりによるカラー印刷の不鮮明(発色不良、粒状感)を抑制する必要があったが、彩度の低い黒灰に近い領域に、適用すると、以下の不都合があった。
【0011】
黒灰に近い領域のような上記彩度の低い領域の代表例としては、例えば、文字領域やキャラクター画像領域がある。このような領域では、基本的には、黒又は灰色として出力しようとする場合や、わずかに赤みや青みを帯びた黒や灰で出力したいような場合がある。このような場合、上記領域に対して、C、M、Yが同じドットに重ならないように、分散されると、C成分等の色合いを持つ画素が目立ってしまい、いわゆるWARM GRAYと呼ばれる色味となる。これにより、必要以上に、赤みや青みを帯びた黒となってしまい、文字領域等の画像性の低下として目立ってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、記憶されている1つのディザマトリックスを用いて、多色の重なりによるカラー印刷の不鮮明(発色不良、粒状感)を抑制するとともに、黒や灰に近い彩度の低い領域に対して、必要以上に、色味が目立ってしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像処理装置(例えば、印刷装置20)は、入力画像データの各画素と、ディザマトリックス内の前記各画素に対応する閾値との比較結果に基づいて、印刷装置20の印刷に必要な出力画像データを出力する画像処理装置であって、前記入力画像データがカラー画像データであるか否かを判断するカラー画像判断手段(例えば、カラー画像判断部243)と、前記カラー画像判断手段によりカラー画像データと判断された前記入力画像データの各画素の彩度が、色味のあるコンポジットブラックの所定彩度値より大きいか否かを判断する所定彩度判断手段(例えば、所定彩度判断部244)と、前記所定彩度判断手段により前記所定彩度値より大きいと判断された場合、前記画素に対応する各色成分値に応じて異なるように、前記画素に対応する閾値を変化させる閾値変更手段(例えば、閾値算出制御部245)と、前記閾値変更手段により変化された各閾値と、各色成分値との比較結果に基づいて、前記出力画像データを構成する前記画素の各色成分値を生成する第1出力画素データ生成手段(シアン比較部246〜ブラック比較部249)と、を備えることを特徴とするものである。
【0014】
上記発明においては、前記所定彩度判断手段により前記所定の彩度より大きくないと判断された場合、前記画素に対応する閾値と、前記画素の各色成分値との比較結果に基づいて、前記出力画像データを構成する前記画素の各色成分値を生成する第2出力画素データ生成手段(シアン比較部246〜ブラック比較部249)とを備えるようにしてもよい。
【0015】
上記発明において、前記カラー画像判断手段によりカラー画像データでないと判断された場合、前記入力画像データの印刷モードを、ピュアブラック印刷モード又はコンポジットブラック印刷モードのいずれかに設定する印刷モード設定手段(例えば、入出力部13,プリンタドライバ部12)と、前記印刷モード設定手段によりコンポジットブラック印刷モードに設定されると、前記入力画像データの各画素に対応する閾値と、前記画素の各色成分値との比較結果に基づいて、前記出力画像データを構成する画素の各色成分値を生成する第3出力画素データ生成手段を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多色の重なりによるカラー印刷の不鮮明(発色不良、粒状感)を抑制するとともに、黒や灰に近い彩度の低い領域に対して、必要以上に、色味が目立ってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の階調変換部の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態のディザマトリックスを示す図である。
【図4】第1の実施形態の印刷方法を説明するためのフローチャート図である。
【図5】第1の実施形態の階調変換処理を説明するためのフローチャート図である。
【図6】第1の実施形態の階調変換処理を説明するためのフローチャート図である。
【図7】第1の実施形態における出力画像データの一例を示す図である。
【図8】第1の実施形態における出力画像データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
『第1の実施形態』
[印刷システムの構成]
【0019】
図1に示すように、印刷システム1は、ユーザインタフェース等の基本操作を行うためのオペレーションシステムが組み込まれ、各種のソフトウェアの実行が可能な端末装置10と、印刷装置20と、これらの間を有線LAN等のネットワークを介して接続する通信部15とを備える。
【0020】
(端末装置)
端末装置10は、アプリケーション部11とプリンタドライバ部12と入出力部13と印刷ジョブデータ送信部14を備える。アプリケーション部11及びプリンタドライバ部12は、端末装置10にインストールされたプログラムが、CPU等により解読等の処理が行われることにより構成される。
【0021】
アプリケーション部11は、文書、画像等の原稿データを生成するプログラムを備えるものである。アプリケーション部11で生成された原稿データは、プリンタドライバ部12に出力される。
【0022】
プリンタドライバ部12は、印刷操作画面、印刷設定画面等の表示を入出力部13の出力機能に行わせ、入出力部13の入力機能を介してユーザから印刷の設定を受け、印刷に関する設定情報や印刷状態を入出力部13の出力機能を介してユーザに通知する。プリンタドライバ部12は、ユーザによって設定された情報と、原稿データに基づいて、印刷ジョブデータ(例えば、PDLデータ)を生成し、端末装置10の印刷ジョブデータ送信部14、通信部15を介して印刷装置20に出力する。
【0023】
入出力部13は、入力機能及び出力機能を備える。入力機能は、キーボード等で構成され、出力機能は、液晶表示モニター等で構成される。入出力部13は、ユーザにより各種のデータの入力を可能とし、この入力データをプリンタドライバ部12又はアプリケーション部11に出力する。また、入出力部13は、プリンタドライバ部12又はアプリケーション部11からの出力結果をユーザに対して通知する。
【0024】
例えば、アプリケーション部11により原稿データが生成された後、ユーザが入出力部13を用いて、原稿データをカラー印刷で印刷する旨を入力すると、プリンタドライバ部12は、印刷ジョブデータに、カラー画像データであることを示す情報を含める。
【0025】
印刷ジョブデータ送信部14は、プリンタドライバ部12から出力された印刷ジョブデータについて、通信部15を介して印刷装置20に送信する。
【0026】
(印刷装置)
印刷装置20は、印刷ジョブデータ受信部21と、RIP処理部22と、RGB−CMYK変換部23と、階調変換部24と、印刷部25とを備える。
【0027】
印刷ジョブデータ受信部21は、印刷ジョブデータ送信部14から送信された印刷ジョブデータを受信するものである。
【0028】
RIP処理部22は、印刷ジョブデータ受信部21により受信された印刷ジョブデータに基づいて、レッド(以下、R)成分、グリーン(以下、G)成分、ブルー(以下、B)成分の所定の解像度のビットマップに展開した結果のラスタデータである展開済み印刷ジョブデータ(以下、展開印刷ジョブデータ)を生成する。ここで、展開印刷ジョブデータにおいては、所定の解像度で展開された各画素(展開印刷ジョブデータ中の各座標位置に対応する)ごとに、R成分の値(例えば、0〜255)、G成分の値(例えば、0〜255)、B成分の値(例えば、0〜255)が対応づけられている。なお、印刷ジョブデータに含まれるカラー印刷の指示情報は、展開印刷ジョブデータに対応づけられる。
【0029】
RGB−CMYK変換部23は、RIP処理部22で生成されたR成分、G成分、B成分の展開印刷ジョブデータを、シアン(以下、C)成分、マゼンタ(以下、M)成分、イエロー(以下、Y)成分、ブラック(以下、K)成分を備える展開印刷ジョブデータに変換する。ここで、展開印刷ジョブデータにおいては、所定の解像度で展開された各座標位置ごとに、C成分の値(例えば、0〜255)、M成分の値(例えば、0〜255)、Y成分の値(例えば、0〜255)、K成分の値(例えば、0〜255)が対応づけられている。
【0030】
階調変換部24は、RGB−CMYK変換部23により変換されたC成分、M成分、Y成分、K成分の展開印刷ジョブデータである入力画像データを、入力画像データの階調数より階調数の少ない出力画像データに変換する。なお、本実施形態では、階調変換部24が出力する出力画像データとして、「0」「1」の2値による2階調の出力画像データの場合について説明する。
【0031】
階調変換部24は、カラー画像判断部243と、所定彩度判断部244と、閾値算出制御部245と、ディザマトリックス記憶部241と、閾値読み出し部242と、マゼンタ閾値算出部250と、イエロー閾値算出部251と、ブラック閾値算出部252と、シアン比較部246と、マゼンタ比較部247と、イエロー比較部248と、ブラック比較部249とを備える。
【0032】
カラー画像判断部243は、展開印刷ジョブデータがカラー画像データであるか否かを判断する。具体的には、カラー画像判断部243は、C成分、M成分、Y成分、K成分の展開印刷ジョブデータにカラー印刷指示情報が対応づけられていた場合に、入力画像データがカラー画像データであると判断する。)なお、カラー画像判断部243は、入力画像データのC成分、M成分、Y成分、K成分の成分比率に基づいて、カラー画像データであるか否かを判断してもよい。
【0033】
所定彩度判断部244は、展開印刷ジョブデータがカラー画像データである場合には、展開印刷ジョブデータの各座標位置の彩度が、色味のあるコンポジットブラックの所定彩度値より大きいか否かを判断する。
【0034】
本実施形態では、K成分に他の成分(C、M、Y成分の少なくとも1つ以上)を加えたブラック、グレースケール、ホワイトや、C、M、Y成分を加えたブラック、グレースケール、ホワイトをコンポジットブラックという。本実施形態では、コンポジットブラックとして、C、M、Y、K成分を加えたブラック、グレースケール、ホワイトを例として説明する。
【0035】
所定彩度値について以下、具体的に説明する。例えば、カラー印刷においても、文字領域等は、黒又は灰色として出力しようとする場合や、わずかに赤みや青みを帯びた黒や灰で出力したいような場合がある。このような場合は、K成分のみ、又は、K成分にC成分、M成分、Y成分のいずれか1つ以上を加えるか、C成分、M成分、Y成分の重ね合わせで、黒灰又は青み、赤みを帯びた黒灰を出力させることになる。
【0036】
このとき、予め、実験的に、明度、色相を種々に変化させて、実際の印刷に使用するインク等の記録剤や、記録媒体を用いて、文字領域やキャラクター領域を印刷させて、色味のあるコンポジットブラックが違和感のない彩度を求める。このようにして求めた彩度値が所定彩度判断部244に設定される。なお、カラー原稿中の文字領域やキャラクター画像領域以外の領域との比較に応じて、上記所定彩度値を求めるようにしてもよい。
【0037】
閾値算出制御部245は、各座標位置に対して、所定彩度判断部244により所定彩度値より大きいと判断された場合、各座標位置に対応する各色成分値に応じて異なるように、各座標位置に対応する閾値を変化させる。
【0038】
具体的には、閾値算出制御部245は、所定彩度判断部244により所定彩度より大きいと判断された場合、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)(いわゆる画素に相当する)に対応する各色成分値と比較するディザマトリックスの閾値を変化させるように、マゼンタ閾値算出部250等を制御する。一方、所定彩度判断部244により所定彩度より大きくないと判断された場合、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応する各色成分値と比較するディザマトリックスの閾値を変化させないように、マゼンタ閾値算出部250等を制御する。
【0039】
ディザマトリックス記憶部241は、1つのディザマトリックスを記憶する。本実施形態では、一例として、図3に示すような16×16個のマトリックスに各閾値が配置されたディザマトリックスが記憶されている。
【0040】
閾値読み出し部242は、RGB−CMYK変換部23により変換されたC成分、M成分、Y成分、K成分の展開印刷ジョブデータのうち、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するディザマトリックスの閾値を読み出す。具体的には、閾値読み出し部242は、ディザマトリックスの座標位置と、展開印刷ジョブデータの座標位置との対応付けを行う。閾値読み出し部242は、ディザマトリックスの座標位置(Xi,Yj)に対応する閾値と、座標位置(Xi,Yj)に対応する展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応する成分値を、シアン比較部246に送る。
【0041】
シアン比較部246は、RGB−CMYK変換部23により変換された展開印刷ジョブデータ(入力画像データ)から、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するC成分値と、ディザマトリックスの座標位置(Xi,Yj)に対応する閾値とを比較する。シアン比較部246は、比較の結果、C成分値の方が、閾値よりも大きい場合、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するC成分値「1」を出力し、C成分値の方が、閾値よりも大きくない場合、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するC成分値「0」を出力する。
【0042】
マゼンタ閾値算出部250は、閾値算出制御部245からディザマトリックスの閾値を変化させるように指示された場合、ディザマトリックスの座標位置(Xi,Yj)に対応する閾値から、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するC成分値を差し引いた値を、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するM成分値と比較する閾値として算出する。また、マゼンタ閾値算出部250は、算出した閾値が負の値になった場合、マトリックス内の上限閾値255を加えた値を、上記の閾値として算出する。この閾値が負になった場合に、上限閾値255を加える処理は、後述のイエロー閾値算出部251、ブラック閾値算出部252も同様である。
【0043】
また、マゼンタ閾値算出部250は、閾値算出制御部245からディザマトリックスの閾値を変化させないように指示された場合、ディザマトリックスの座標位置(Xi,Yj)に対応する閾値を、そのまま、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するM成分値と比較する閾値として算出する。閾値算出制御部245からディザマトリックスの閾値を変化させないように指示された場合におけるマゼンタ閾値算出部250による閾値算出処理は、後述のイエロー閾値算出部251、ブラック閾値算出部252の場合も同様である。
【0044】
マゼンタ比較部247は、RGB−CMYK変換部23により変換された展開印刷ジョブデータから、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するM成分値と、マゼンタ閾値算出部250により算出された閾値とを比較し、比較結果に基づいて、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するM成分値を出力する。この出力処理の詳細な説明は、シアン比較部246と同様であるので、省略する。なお、この出力処理は、後述するイエロー比較部248、ブラック比較部249も同様である。
【0045】
イエロー閾値算出部251は、閾値算出制御部245からディザマトリックスの閾値を変化させるように指示された場合、マゼンタ閾値算出部250により算出された閾値から、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するM成分値を差し引いた値を、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するY成分値と比較する閾値として算出する。
【0046】
イエロー比較部248は、RGB−CMYK変換部23により変換された展開印刷ジョブデータから、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するY成分値と、イエロー閾値算出部251により算出された閾値とを比較し、比較結果に基づいて、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するY成分値を出力する。
【0047】
ブラック閾値算出部252は、閾値算出制御部245からディザマトリックスの閾値を変化させるように指示された場合、イエロー閾値算出部251により算出された閾値から、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するY成分値を差し引いた値を、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するK成分値と比較する閾値として算出する。
【0048】
ブラック比較部249は、RGB−CMYK変換部23により変換されたラスタデータから、展開印刷ジョブデータの座標位置(I,J)に対応するY成分値と、ブラック閾値算出部252により算出された閾値とを比較し、比較結果に基づいて、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するK成分値を出力する。
【0049】
なお、所定彩度値より大きいと判断された場合、展開印刷ジョブデータの座標位置に対応する各色成分値に応じて異なるように、ディザマトリックスの閾値を変化させる方法としては、上述の方法は一例であり、他の方法であっても良い。
【0050】
印刷部25は、階調変換部24により変換された出力画像データに基づいて、印刷用紙に印刷処理を施すものであり、例えば、孔版印刷プリンタ、インクジェットプリンタ、電子写真プリンタを用いることができる。具体的な一例としては、インクジェットプリンタについて説明すると、印刷部25は、C成分値、M成分値、Y成分値、K成分値に対応した吐出ヘッドを備えている。また、印刷部25は、印刷用紙を給紙し、吐出ヘッドにより吐出動作が行われた後印刷済み用紙を排出する給排出部を備えている。印刷部25は、階調変換部24により出力された出力画像データの各座標位置ごとのC成分値、M成分値、Y成分値、K成分値に基づいて、給紙部から給紙された印刷用紙に対して、所定位置に原稿データの画像形成を行うように、各吐出ヘッドのインク吐出制御を行う。
【0051】
[印刷方法]
次に、上述の印刷システムを用いた印刷方法を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0052】
端末装置10において、印刷ジョブデータが生成された後、印刷装置20へ送信される(S1)。具体的には、アプリケーション部11により、原稿データが生成される。プリンタドライバ部12は、印刷設定画面等の表示に基づいて入力された情報(例えば、カラー印刷を指示する情報など)と、原稿データから、印刷ジョブデータを生成する。印刷ジョブデータ送信部14は、印刷ジョブデータを、通信部15を介して、印刷装置20に送信する。
【0053】
印刷装置20の印刷ジョブデータ受信部21が、送信されてきた印刷ジョブデータを受信すると(S2)、RIP処理部22に送られる。
【0054】
RIP処理部22がRIP処理をした後、RGB−CMYK変換部23がRGB−CMYK変換を行う(S3)。具体的には、RIP処理部22は、印刷ジョブデータに基づいて、R成分、G成分、B成分、K成分に所定の解像度のビットマップに展開して展開印刷ジョブデータを生成する。RGB−CMYK変換部23は、RIP処理部22で生成されたR成分、G成分、B成分の展開印刷ジョブデータを、C成分、M成分、Y成分、K成分を備える展開印刷ジョブデータに変換する。
【0055】
階調変換部24は、RGB−CMYK変換部23により変換されたC成分、M成分、Y成分、K成分の展開印刷ジョブデータ(以下、入力画像データという)を、256階調の入力画像データを2階調の出力画像データに変換する(S4)。この処理の詳細な説明は後述する。
【0056】
印刷部25は、階調変換部24により変換された出力画像データに基づいて、印刷用紙に印刷処理を施した印刷物を出力する(S5)。
【0057】
次に、階調変換部24による階調変換処理を図5、図6に示すフローチャート図を用いて、詳細に説明する。カラー画像判断部243が、入力画像データがカラー画像データであるか否かを判断し、カラー画像データであると判断された場合、本階調変換処理が行われる。
【0058】
閾値読み出し部242は、ディザマトリックス記憶部241から、ディザマトリックスを読み出し、設定処理を行う(S41)。本階調変換処理では、図3に示したディザマトリックスを用いて説明を行う。このディザマトリックスにおいては、X方向位置(0,1,・・・・,15)、Y方向位置(0,1,・・・・,15)のマトリックスに対して、各々閾値が設定されている。閾値読み出し部242は、読み出したディザマトリックスの座標位置と、入力画像データの座標位置との対応付けを行う。例えば、図3のようなディザマトリックスの場合、ディザマトリックスの各座標位置(Xi,Yj)と、入力画像データの各座標位置(I,J)を対応づける。そして、閾値読み出し部242は、ディザマトリックスの各座標位置と対応づけられた入力画像データの座標位置を保持しておく(例えば、(I,J)=(0,0)、(1,0)・・・・・・(15,15))。
【0059】
閾値読み出し部242は、入力画像データの全ての座標位置について各色成分値の出力処理が終了したか否かを判断する(S42)。入力画像データの全ての座標位置について各色成分値の出力処理が終了した場合には、本階調変換処理を終了する。入力画像データの全ての座標位置について各色成分値の出力処理が終了していない場には、ステップS44の処理が行われる。
【0060】
閾値読み出し部242は、ディザマトリックスの各座標位置(Xi,Yj)と、入力画像データの各座標位置(I,J)を対応づけた場合に、対応づけた全ての座標位置に対して、各色成分値の出力処理が終了したか否かを判断する(S43)。対応づけた各座標位置について各色成分値の出力処理が終了した場合には、ステップS44の処理が行われる。対応づけた各座標位置について各色成分値の出力処理が終了してない場には、ステップS45の処理が行われる。
【0061】
閾値読み出し部242は、読み出したディザマトリックスの座標位置と、入力画像データの各座標位置との対応付けを再度行う(S44)。具体的には、閾値読み出し部242は、入力画像データの各座標位置(I,J)に対応して読み出すディザマトリックス閾値の座標位置(Xi、Yi)をXi=I mod 16、Yi=J mod 16(modは剰余)となるように、求める。閾値読み出し部242は、再度の対応付け処理の後は、ステップS42の処理を行う。
【0062】
閾値読み出し部242は、ディザマトリックスの閾値を適用する入力画像データの対象座標位置(I,J)に対応するディザマトリックスの座標位置(Xi,Yj)を取得し、上記座標位置(Xi,Yj)に対応する閾値を読み出す。そして、閾値読み出し部242は、上記座標位置(Xi,Yj)に対応する閾値と、入力画像データの対象座標位置(I,J)を、シアン比較部246に送る(S45)。
【0063】
具体的には、閾値読み出し部242は、ディザマトリックス座標位置(0,0)(1,0)・・・・)の順序に従って、上記座標位置に対応する閾値(129,178・・・・)と、入力画像データの対象座標位置((0,0)(1,0)・・・・)をシアン比較部246及びマゼンタ閾値算出部250に送る。
【0064】
閾値読み出し部242は、入力画像データの対象座標位置に対応する各色成分値を設定する(S46)。具体的には、閾値読み出し部242は、初めに、座標位置として、(0,0)を設定し、座標位置(0,0)に対応する色成分値(C成分値〜K成分値)を、それぞれシアン比較部246〜ブラック比較部249に設定させる。また、後述するステップS62で、閾値読み出し部242により対象座標位置が再設定された場合、再設定された座標位置の色成分値を設定し直す。
【0065】
所定彩度判断部244は、ステップS46で設定された対象座標位置の各色成分値に基づいて、対象座標位置の彩度を算出し、算出した彩度が所定彩度値より大きいか否かを判断する(S47)。算出した彩度が、所定彩度値より大きい場合には、ステップS48の処理を行う。算出した彩度が、所定彩度値より大きくない場合には、ステップS56の処理を行う。
【0066】
閾値算出制御部245は、ディザマトリックスの閾値を変化させるように指示する閾値変化指示データを、マゼンタ閾値算出部250、イエロー閾値算出部251、ブラック閾値算出部252に送る(S48)。
【0067】
シアン比較部246は、シアン比較処理及びシアン成分値の出力処理を行う(S49)。シアン比較部246は、RGB−CMYK変換部23により変換された入力画像データの対象座標位置(I,J)に対応するC成分値と、ディザマトリックスの座標位置(Xi,Yj)に対応する閾値とを比較する。シアン比較部246は、比較の結果、C成分値の方が、閾値よりも大きい場合、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するC成分値「1」を出力し、C成分値の方が、閾値よりも小さい場合、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するC成分値「0」を出力する。そして、シアン比較部246は、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するC成分値を出力したことを、閾値読み出し部242に出力する。この処理は、後述のマゼンタ比較・出力処理、イエロー比較・出力処理、ブラック比較・出力処理でも同様である。
【0068】
マゼンタ閾値算出部250は、閾値変化指示データに基づいて、入力画像データの対象座標位置のマゼンタ成分値に適用する閾値を変化させる(S50)。具体的には、マゼンタ閾値算出部250は、ディザマトリックスの座標位置(Xi,Yj)に対応する閾値から、入力画像データの対象座標位置(I,J)に対応するC成分値を差し引いた値を、入力画像データの対象座標位置(I,J)に対応するM成分値と比較する閾値として算出する。
【0069】
マゼンタ比較部247は、マゼンタ比較処理及びマゼンタ成分値の出力処理を行う(S51)。マゼンタ比較部247は、RGB−CMYK変換部23により変換された入力画像データの対象座標位置(I,J)に対応するM成分値と、マゼンタ閾値算出部250により算出された閾値とを比較し、比較結果に基づいて、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するM成分値を出力する。
【0070】
イエロー閾値算出部251は、閾値変化指示データに基づいて、対象座標位置のY成分値に適用する閾値を変化させる(S52)。具体的には、イエロー閾値算出部251は、マゼンタ閾値算出部250により算出された閾値から、対象座標位置(I,J)に対応するM成分値を差し引いた値を、対象座標位置(I,J)に対応するY成分値と比較する閾値として算出する。
【0071】
イエロー比較部248は、イエロー比較処理及びイエロー成分値の出力処理を行う(S53)。イエロー比較部248は、RGB−CMYK変換部23により変換された入力画像データから、対象座標位置(I,J)に対応するY成分値と、イエロー閾値算出部251により算出された閾値とを比較し、比較結果に基づいて、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するY成分値を出力する。
【0072】
ブラック閾値算出部252は、閾値変化指示データに基づいて、対象座標位置のK成分値に適用する閾値を変化させる(S54)。具体的には、ブラック閾値算出部252は、イエロー閾値算出部251により算出された閾値から、対象座標位置(I,J)に対応するY成分値を差し引いた値を、対象座標位置(I,J)に対応するK成分値と比較する閾値として算出する。
【0073】
ブラック比較部249は、ブラック比較処理及びブラック成分値の出力処理を行う(S55)。ブラック比較部249は、RGB−CMYK変換部23により変換された入力画像データから、対象座標位置(I,J)に対応するY成分値と、ブラック閾値算出部252により算出された閾値とを比較し、比較結果に基づいて、出力画像データの座標位置(I,J)に対応するK成分値を出力する。そして、閾値読み出し部242は、出力画像データの(I,J)に対応する各色成分値を出力したことを、シアン比較部246〜ブラック比較部249から取得すると、ステップS62の処理へ移行する。
【0074】
図7に、入力画像データとして、全座標位置に対応する色成分値が、C成分値16、M成分値32、Y成分値48の場合に、上記ディザマトリックスを適用してS48〜S55の処理により得られた出力画像データを示す(本図では、K成分は省略)。
【0075】
ステップS56では、閾値算出制御部245は、ディザマトリックスの閾値を変化させないように指示する閾値不変化指示データを、マゼンタ閾値算出部250、イエロー閾値算出部251、ブラック閾値算出部252に送る。これにより、マゼンタ閾値算出部250、イエロー閾値算出部251、ブラック閾値算出部252では、入力画像データの対象座標位置の各色成分値に適用する閾値をそのままマゼンタ比較部247、イエロー比較部248、ブラック比較部249に送る。
【0076】
シアン比較部246〜ブラック比較部249は、シアン〜ブラック比較処理及びシアン〜ブラック成分値の出力処理を行う(S57〜S60)。そして、ステップS62の処理へ移行する。
【0077】
閾値読み出し部242は、入力画像データの対象座標位置をX方向にシフトして設定する(S62)。例えば、対象座標位置が、(0,0)に設定されていた場合に、上述のS48〜S55の処理が終了した場合、対象座標位置を(1,0)に設定する。また、対象座標位置が、(15,0)に設定されていた場合に、上述のS48〜S55の処理が終了した場合、対象座標位置を(0,1)に設定する。即ち、ディザマトリックスは、ラスタデータに対して、X方向にシフトして適用した後、適用開始位置に戻って、Y方向にシフトした後、X方向にシフトして適用していく。
【0078】
なお、ステップS44においては、以下のような処理を行っても良い。具体的には、閾値読み出し部242は、入力画像データの座標位置を、X方向に16シフトして、読み出したディザマトリックスの座標位置と対応づける(ディザマトリックス座標位置(Xi,Yj)を入力画像データの座標位置(I+16,J)に対応づける)。そして、ディザマトリックス座標位置(Xi,Yj)に対応づける入力画像データの座標位置がX方向の端になった場合、次にディザマトリックス座標位置(Xi,Yj)は、入力画像データの座標位置(I,J+16)に対応づける。即ち、ディザマトリックスは、入力画像データの座標位置に対して、X方向にシフトして適用した後、適用開始位置に戻って、Y方向にシフトした後、X方向にシフトして適用していく。
【0079】
図8に、入力画像データとして、全座標位置に対応する色成分値が、C成分値128、M成分値144、Y成分値160の場合に、上記ディザマトリックスを適用してS56〜S60の処理により得られた出力画像データを示す(本図では、K成分は省略)。
【0080】
[作用効果]
本発明の実施形態によれば、入力画像データが、カラー画像データと判断された場合に、入力画像データの各座標位置(各画素)の彩度が、色味のあるコンポジットブラックの所定彩度値より大きいか否かを判断し、所定彩度値より大きいと判断された場合、上記座標位置に対応する各色成分値に応じて異なるように、上記座標位置に対応する閾値を変化させ、変化された各閾値と、各色成分値との比較結果に基づいて、出力画像データを構成する上記座標位置の各色成分値を生成する。このため、カラー画像データにおいては、減色系の混色であるため、同じ座標位置に異なる色が重なり合った部分が多くなると、良好な発色が得られず、不鮮明さによってカラー印刷の品質を下げてしまうことがあり、これは、特に彩度の比較的高い部分で目立ってしまう。これに対しては、本実施形態では、特に彩度の比較的高い部分では、対象座標位置の各色成分に応じて、ディザマトリックスの閾値を固定でなく、異なるようにしているので、上記の不都合を回避することができる。
【0081】
また、所定彩度値より大きいと判断された場合、上述のようにしているので、色味があるコンポジットブラック程度の彩度の低い部分で、同じ座標位置に各色成分が、分散されないようにすることが可能である。この結果、必要以上に、赤みや青みを帯びた黒となってしまい、文字領域等の画像性の低下として目立ってしまうことを防止することができる。その具体的な一例としては、以下の通りである。
【0082】
即ち、所定彩度値より大きくないと判断された場合、上記座標位置に対応する閾値と、上記座標位置の各色成分値との比較結果に基づいて、出力画像データを構成する上記座標位置の各色成分値を生成する。このため、カラー印刷においても、文字領域等は、黒又は灰色として出力しようとする場合や、わずかに赤みや青みを帯びた黒や灰で出力したいような場合、以下のようにすることができる。即ち、色味があるコンポジットブラック程度の彩度の低い部分では、対象座標位置の各色成分に拘わらず、ディザマトリックスの閾値を固定にしているので、同じ座標位置に各色成分が重なるようにしている。この結果、C成分等の色合いを持つ座標位置が目立つことや、必要以上に赤みや青みを帯びた黒となってしまうこともなく、文字領域等の画像性の低下として目立ってしまうこともない。
【0083】
従って、1つのディザマトリックスを用いて、多色の重なりによるカラー印刷の不鮮明(発色不良、粒状感)を抑制するとともに、黒や灰に近い彩度の低い領域に対して、必要以上に、色味が目立ってしまうことを抑制することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、所定彩度値より大きくないと判断された場合、上述のように、同一座標位置の各色成分値に対して、ディザマトリックスの閾値を変化させないようにしたが、これに限定されない。例えば、展開印刷ジョブデータ中、半分の領域に対しては、同一座標位置の各色成分値に対して、ディザマトリックスの閾値を変化させるようにし、残り半分の領域に対しては、同一座標位置の各色成分値に対して、ディザマトリックスの閾値を変化させないようにしてもよい。この場合、半分の領域は、乱数等を用いて、確率的に決めるようにしてもよい。
【0085】
また、所定彩度値より大きくないと判断された場合、オブジェクト領域に応じて、同一座標位置の各色成分値に対して、ディザマトリックスの閾値を変化させるか否か決めるようにしてもよい。例えば、写真オブジェクト、文字オブジェクト、イラストオブジェクトのうち、写真オブジェクト、イラストオブジェクトの領域は、上記閾値を変化させるようにし、文字オブジェクトの領域は、上記閾値を変化させるようにしてもよい。このようにしても、多色の重なりによるカラー印刷の不鮮明(発色不良、粒状感)を抑制するとともに、黒や灰に近い彩度の低い領域に対して、色味が目立ってしまうことを抑制することが可能である。そして、黒や灰に近い彩度の低い領域のうち、オブジェクト領域に応じて、色味が目立ってしまうことに対する抑制を変化させることができる。
【0086】
『第2の実施形態』
本実施形態では、原稿データをモノクロ印刷で行い、かつ、コンポジットブラック印刷モードが指定された場合に、カラー画像データと同様に、座標位置ごとに各色成分値を有することになる。この場合に、CMYK色成分に適用するディザマトリックスの閾値の設定の仕方について説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一又は類似の構成、処理は同一符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0087】
(印刷システムの構成)
アプリケーション部11により原稿データが生成された後、ユーザが入出力部13を用いて、原稿データをモノクロ印刷で印刷する旨を入力すると、プリンタドライバ部12は、入出力部13に対して、コンポジットブラック印刷モードか、ピュアブラック印刷モードかを選択するように指示する画面を出力する。ユーザがコンポジットブラック印刷モードを選択すると、プリンタドライバ部12は、印刷ジョブデータに、モノクロ印刷モード、コンポジットブラック印刷モードを含める。
【0088】
閾値算出制御部245は、展開印刷ジョブデータにモノクロ画像データであって、コンポジットブラック印刷モードが対応づけられている場合、展開印刷ジョブデータの各座標位置に対応する各色成分値に応じて、各座標位置に対応する閾値を変化させないようにする。
【0089】
(印刷方法)
図5、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS46の処理の後、S56〜S62の処理が行われ、ステップS47〜S55の処理は行われない。また、第1実施形態での印刷方法の説明において、コンポジットブラック印刷モードが指定されたモノクロ画像データが入力画像データとなる。
【0090】
[作用効果]
本実施形態によれば、モノクロ画像データであって、コンポジットブラック印刷モードが指定された場合、入力画像データの各座標位置(各画素)に対応する閾値と、上記座標位置の各色成分値との比較結果に基づいて、出力画像データを構成する座標位置の各色成分値を生成する。このため、第1の実施形態と同じく、文字領域等は、黒又は灰色として出力しようとする場合や、わずかに赤みや青みを帯びた黒や灰で出力したいような場合、ディザマトリックスの閾値を同一座標位置の各色成分に応じて固定にしている。この結果、同じ座標位置に各色成分が重なるようになる。これにより、C成分等の色合いを持つ座標位置が目立つことや、必要以上に赤みや青みを帯びた黒となってしまうこともなく、文字領域等の画像性の低下として目立ってしまうこともない。さらに、同じ座標位置に各色成分が重なるようにしているので、モノクロ印刷で必要な黒濃度の向上を図ることができる。
【0091】
『変形例』
(1)上述の実施形態では、ディザマトリックスの各閾値と、入力画像データの各座標位置のC成分値〜K成分値を比較して、出力画像データとして、2値化したデータを出力していたが、これに限られず、3値以上の多値化したデータを出力するようにしてもよい。
【0092】
この場合、公知文献(Jomal of Elctronic
Imaging 8(3) 311-312(July 1999)の式(1)を参照すれば、p=256、q=6とし、i(x,y):入力階調値(C成分値など)、o(x,y):出力階調値、M(x,y):閾値とした場合、
【0093】
O(x,y)=INT[ i(x,y)/51+M(x,y)/256 ]**********(1)
【0094】
で示すことができる。この(1)式を満たすように階調変換部24を構成すれば、2値以上の多値化したデータを出力することが可能となる。
【0095】
(2)上述の実施形態では、入力画像データから出力画像データへは、N画素からN画素への変換であったが、入力画像データから出力画像データへは、1画素からN画素への変換による面積階調方式であってもよい。また、この場合、階調変換部24の構成を、擬似的に階調を維持するように構成するようにしてもよい。
【0096】

(3)第2の実施形態において、C〜K記録剤(トナー、インク)の残量を検知する手段が備えられても良い。そして、K残量が所定値より少なくなった場合に、コンポジットブラック印刷を自動的に行うようにしてもよい。
【0097】
(4)また、本発明を第1の実施形態及び第2の実施形態等によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10 端末装置
11 アプリケーション部
12 プリンタドライバ部
13 入出力部
14 印刷ジョブデータ送信部
15 通信部
20 印刷装置
21 印刷ジョブデータ受信部
22 RIP処理部
23 RGB−CMYK変換部
24 階調変換部
241 ディザマトリックス記憶部
242 閾値読み出し部
243 カラー画像判断部
244 所定彩度判断部
245 閾値算出制御部
246〜249 シアン比較部、マゼンタ比較部、イエロー比較部、ブラック比較部
250〜252 マゼンタ閾値算出部、イエロー閾値算出部、ブラック閾値算出部
25 印刷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データの各画素と、ディザマトリックス内の前記各画素に対応する閾値との比較結果に基づいて、印刷装置の印刷に必要な出力画像データを出力する画像処理装置であって、
前記入力画像データがカラー画像データであるか否かを判断するカラー画像判断手段と、
前記カラー画像判断手段によりカラー画像データと判断された前記入力画像データの各画素の彩度が、色味のあるコンポジットブラックの所定彩度値より大きいか否かを判断する所定彩度判断手段と、
前記所定彩度判断手段により前記所定彩度値より大きいと判断された場合、前記画素に対応する各色成分値に応じて異なるように、前記画素に対応する閾値を変化させる閾値変更手段と、
前記閾値変更手段により変化された各閾値と、各色成分値との比較結果に基づいて、前記出力画像データを構成する前記画素の各色成分値を生成する第1出力画素データ生成手段と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記所定彩度判断手段により前記所定の彩度より大きくないと判断された場合、前記画素に対応する閾値と、前記画素の各色成分値との比較結果に基づいて、前記出力画像データを構成する前記画素の各色成分値を生成する第2出力画素データ生成手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記カラー画像判断手段によりカラー画像データでないと判断された場合、前記入力画像データの印刷モードを、ピュアブラック印刷モード又はコンポジットブラック印刷モードのいずれかに設定する印刷モード設定手段と、
前記印刷モード設定手段によりコンポジットブラック印刷モードに設定されると、前記入力画像データの各画素に対応する閾値と、前記画素の各色成分値との比較結果に基づいて、前記出力画像データを構成する画素の各色成分値を生成する第3出力画素データ生成手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−216933(P2012−216933A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79734(P2011−79734)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】