説明

画像形成方法及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、現像スリーブを用いた画像形成方法で問題となる現像性の改善効果とスキャベンジング効果のトレードオフの問題を解決し、ドット画像の再現性の劣化や画像濃度の低下を改善して、高精細のドット画像を形成できる画像形成方法を提供することであり、又、その画像形成方法を用いた画像形成装置を提供することである。
【解決手段】現像手段が第1スリーブと第2スリーブをこの順に感光体の回転方向に沿って有し、前記露光手段による露光位置から第1スリーブ迄の前記有機感光体の移動時間(td1)が30〜70msecであり、第1スリーブ及び第2スリーブの位置における有機感光体の露光部表面電位を、各々、V1e、V2eとした場合、下記式1、式2の関係を同時に満たすことを特徴とする画像形成方法。
式1 |V1e|≦200V
式2 |V1e−V2e|≦20V

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いる画像形成装置及び画像形成方法に関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成装置及び画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真用の感光体はSe、ヒ素、ヒ素/Se合金、CdS、ZnO等の無機感光体から、公害や製造の容易性等の利点に優れる有機感光体に主体が移り、様々な材料を用いた有機感光体が開発されている。
【0003】
近年では電荷発生と電荷輸送の機能を異なる材料に担当させた機能分離型の感光体が主流となっており、例えば、導電性支持体上に中間層を介して電荷発生層、電荷輸送層を積層した積層型の感光体が広く用いられている(特許文献1)。
【0004】
一方、複写機やプリンターにおいても、高画質のデジタルカラー画像を求める傾向が強い。というのも、現在では電子写真方式の画像形成装置も高速化が進展しており、プロセス速度が400mm/秒以上が要求される印刷分野にも進出しつつあり、この印刷画質に対応した高画質および高安定化が求められている。このような要求に対し、露光スポット径を小さく絞りやすい光源として短波長のレーザー光を用い、高密度のデジタル画像を形成することが提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、このような小スポット径、例えば、露光スポット径が40μm以下で、600dpi以上の高画質画像を形成しようとすると、様々な課題が発生する。
【0006】
その1つが電子写真感光体の潜像を形成する際の課題である。高精細の静電潜像を忠実に再現するためには露光/未露光部の電位コントラストが十分確保されている必要があるが、その為には像露光により発生したキャリアが感光体の表面電荷に到達するまでのキャリアの拡散を押さえることが重要である。高密度画像の潜像劣化は、電荷輸送層の拡散定数(D)とドリフト移動度(μ)との比D/μが大きくなると静電潜像への拡散の効果が無視できず、電荷輸送層の膜厚が大きくなると潜像劣化は大きくなると報告されている(非特許文献1)。
【0007】
電荷輸送層を薄膜化し、静電潜像の拡散を防止する有機感光体は、既に、特許等で提案されている。しかしながら、これらの提案された有機感光体を実際に電子写真画像形成装置を用いて、画像形成すると、画像濃度が低下した不鮮明な画像が出現しやすい。この原因は、電荷輸送層は、耐摩耗性が乏しく、繰り返し画像形成で膜厚減耗が大きく、元々薄層化した電荷輸送層が更に膜厚を減耗すると、感光層の静電容量が小さくなり、帯電電位が低下しやすく、十分な画像電位(帯電電位と残留電位の差)が得られにくい。その結果現像性が低下し、画像濃度が低下することによるものである。特に、高画質を得るために小粒径トナーを用いた現像剤を用いた場合、現像性が低下し、反転現像での画像濃度が十分でなく、鮮鋭性の良い文字画像や写真画像が得られにくいという問題が発生している。
【0008】
上記のような、静電潜像の現像性の低下を改善するには、通常は感光体の線速よりも現像スリーブの線速を大きくして、現像ニップにおけるトナー濃度が不足しないように十分なトナー量をニップ中のスリーブ上に送ることが考えられる。この為には、現像スリーブと感光体の線速比を大きく取る必要があるため、現像スリーブは、感光体の回転よりもより高回転で動かす必要がある。特に、毎分50枚以上の出力枚数が多い画像形成装置においては、円筒状の感光体を高速回転させる必要があり、これに伴って現像スリーブもより高速回転させる必要を生じる。
【0009】
このような高速回転の現像スリーブでは、感光体上に一旦形成されたトナー画像を現像スリーブの磁気ブラシで強く擦過することになり、磁気ブラシでのスキャベンジング効果が強くなりすぎ、ベタのトナー画像部後端に、カスレや横細線の細り等の異常画像を発生することがある。この現象を防止する為、現像スリーブの回転を遅くすると画像濃度が低下するなどの問題が発生し、両者の間にはトレードオフの関係が成立し、大きな課題である。
【0010】
これらの課題を改善するため、1本の感光体に対して複数の現像スリーブを用いる現像方式(以下、多段現像と呼ぶ場合がある)が提案されている(特許文献3)。この方式を用いることで、1本の現像スリーブを用いる場合よりも現像効率を高めることが出来るため、現像スリーブと感光体とで多大な線速比を付ける必要が無くなる。このため、前記した画像上のトレードオフの問題も回避できるようになる。
【0011】
しかしながら、多段現像を用いる場合には新たな問題も発生する。1本目の現像スリーブと2本目の現像スリーブのそれぞれの位置に対応する感光体電位に差が大きいと、即ち、2本目の現像スリーブの位置に対応する感光体電位の低下が大きいと、現像効率を改善する効果は小さくなり、反面、2本目の現像スリーブのスキャベンジング効果が大きくなって、良好なドット画像が得られない。
【0012】
又、複数の現像スリーブを感光体の周囲に配置使用とした場合、感光体上のスペースに余裕がなくなり、その結果、露光手段と現像手段間の時間(td)が短くなり、露光による電位減衰を完結できず、画像濃度が低下しやすいと云う問題も発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−133018号公報
【特許文献2】特開2005−181768号公報
【特許文献3】特開2003−215909号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】日本画像学会誌第38巻第4号296頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題点を解決するために、現像スリーブを用いた画像形成方法で問題となる現像性の改善効果とスキャベンジング効果のトレードオフの問題を解決し、ドット画像の再現性の劣化や画像濃度の低下を改善して、高精細のドット画像を形成できる画像形成方法を提供することであり、又、その画像形成方法を用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
我々は上記問題点について検討を重ねた結果、現像スリーブを用いた画像形成方法で問題となる現像性の改善効果とスキャベンジング効果のトレードオフの問題を解決し、ドット画像の再現性の劣化や画像濃度の低下を改善するには、複数の現像スリーブを用いた現像方式を採用し、各現像スリーブの位置間での感光体の電位変動を小さくし、これら複数の現像スリーブがあたかも1つの現像スリーブとして動作できるようにすることが有効であることを見出し、本願発明を完成した。即ち、本願発明は以下のような構成を有することにより達成される。
【0017】
1.円筒状の有機感光体上に帯電手段により帯電電位を付与し、波長が350〜500nmの範囲の露光手段によりデジタル静電潜像を形成し、該静電潜像を接触二成分反転現像法の現像手段により現像してトナー像を形成し、該トナー像を転写手段により中間転写体を介してあるいは介さずして記録媒体に転写し、その後、記録媒体に転写されたトナー像を定着手段により定着する画像形成方法において、前記現像手段が第1スリーブと第2スリーブをこの順に感光体の回転方向に沿って有し、前記露光手段による露光位置から第1スリーブ迄の前記有機感光体の移動時間(td1)が30〜70msecであり、第1スリーブ及び第2スリーブの位置における有機感光体の露光部表面電位を、各々、V1e、V2eとした場合、下記式1、式2の関係を同時に満たすことを特徴とする画像形成方法。
【0018】
式1 |V1e|≦200V
式2 |V1e−V2e|≦20V
2.前記有機感光体が円筒状の導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を有することを特徴とする前記1に記載の画像形成方法。
【0019】
3.前記電荷輸送層の膜厚が10μm以上、18μm以下であることを特徴とする前記1又は2に記載の画像形成方法。
【0020】
4.前記電荷輸送層が、下記一般式(1)で表される構造式を有する電荷輸送物質を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0021】
【化1】

【0022】
一般式(1)において、
〜Rは水素原子、ハロゲン原子又は炭素数4以下のアルキル基、アルコキシ基を表し、R、Rはアルキル基又はアリール基を表し、RとRが結合して環構造を形成してもよい。
【0023】
5.前記露光手段の露光スポット径が40μm以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0024】
6.円筒状の有機感光体と、該有機感光体上に帯電電位を付与する帯電手段と、波長が350〜500nmの範囲の露光によりデジタル静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像を接触二成分反転現像法でトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を中間転写体を介してあるいは介さずして記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置において、前記現像手段が第1スリーブと第2スリーブをこの順に感光体の回転方向に沿って有し、前記露光手段による露光位置から第1スリーブ迄の前記有機感光体の移動時間(td1)が30〜70msecであり、第1スリーブ及び第2スリーブの位置における有機感光体の露光部表面電位を、各々、V1e、V2eとした場合、下記式1、式2の関係を同時に満たように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【0025】
式1 |V1e|≦200V
式2 |V1e−V2e|≦20V
【発明の効果】
【0026】
本発明の画像形成方法を用いることにより、現像スリーブを用い、接触現像方式の現像で発生しやすい画像濃度の低下を防止し、有機感光体上の微細な静電潜像を忠実に顕像化し、十分な画像濃度を達成し、ドット再現性が良好な電子写真画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明に係わる画像形成方法を例示した画像形成装置の断面構成図である。
【図2】本願発明に係わる2つの現像スリーブを有する現像手段の断面構成図である。
【図3】本願発明に係わる2つの現像スリーブを有する現像手段の断面構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0029】
本願発明の画像形成方法は、円筒状の有機感光体上に帯電手段により帯電電位を付与し、波長が350〜500nmの範囲の露光手段によりデジタル静電潜像を形成し、該静電潜像を接触二成分反転現像法の現像手段により現像してトナー像を形成し、該トナー像を転写手段により中間転写体を介してあるいは介さずして記録媒体に転写し、その後、記録媒体に転写されたトナー像を定着手段により定着する画像形成方法であり、前記現像手段が第1スリーブと第2スリーブをこの順に感光体の回転方向に沿って有し、前記露光手段による露光位置から第1スリーブ迄の前記有機感光体の移動時間(td1)が30〜70msecであり、第1スリーブ及び第2スリーブの位置における有機感光体の露光部表面電位を、各々、V1e、V2eとした場合、下記式1、式2の関係を同時に満たすことを特徴とする画像形成方法。
【0030】
式1 |V1e|≦200V
式2 |V1e−V2e|≦20V
本願発明の画像形成方法は、上記のような構造を有することにより、複数の現像スリーブを有する現像手段で発生しやすい画像濃度の低下を防止し、有機感光体上の微細な静電潜像を忠実に顕像化し、十分な画像濃度を達成し、ドット再現性が良好な電子写真画像を形成することができる。
【0031】
本願発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置を以下に例示し、該画像形成装置に基づいて本願発明の画像形成方法を説明する。
【0032】
本願発明に係わる画像形成方法のプロセスを下記図1で例示する画像形成装置を用いて説明する。
【0033】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写材搬送手段としての転写材搬送部Dから構成されている。
【0034】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0035】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0036】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0037】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光除電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0038】
帯電手段22には、ワイヤー方式の帯電部材やローラー形状の帯電部材が用いられる。高速帯電にはスコロトロン方式の帯電部材が好ましい。
【0039】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザーダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0040】
本発明の画像形成方法においては、感光体上に800dpi以上のデジタル静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザー又は、発光ダイオード(LED)等を像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜40μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、800dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0041】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0042】
用いられる光ビームとしては半導体レーザーを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0043】
像露光光源(書き込み光源)は、高速露光を行うために、複数のレーザー光源を用いてもよく、アレイ状に配置されたレーザー光源を用いてもよい。
【0044】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0045】
〈トナー〉
本発明の有機感光体上に形成された静電潜像は現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0046】
重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0047】
なお、トナーの体積平均粒径、即ち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜8μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0048】
〈現像剤〉
本発明に係わる現像手段に用いられる現像剤は、少なくともトナーとキャリアを含有した二成分現像剤が用いられる。
【0049】
キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては10〜100μm、より好ましくは15〜50μmのものがよい。
【0050】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0051】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散系キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散系キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0052】
転写材搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写材Pが収納された転写材収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(3)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写材Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写材Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写材Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25、爪分離手段250等によって、転写材P上に転写され、該転写材Pも感光体から分離され、その後、転写材Pは転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送され、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0053】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写材Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写材Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0054】
以上は転写材の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写材案内部177が開放され、転写材Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0055】
更に、搬送機構178により転写材Pは下方に搬送され、転写材反転部179によりスイッチバックさせられ、転写材Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0056】
転写材Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写材Pを再給紙し、転写材Pを搬送路40に案内する。
【0057】
再び、上述したように感光体21方向に転写材Pを搬送し、転写材Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0058】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0059】
本願発明の現像手段には2つの現像スリーブを有する。該2つの現像スリーブ(感光体の潜像を現像する現像剤担持体のこと)を有する現像手段の構成を図2の断面構成図を用いて説明する。
【0060】
現像手段23には、感光体ドラム21に対向して、2つの現像スリーブ232A、232Bが感光体に現像剤を介して接触している。現像スリーブは内部に複数の磁石を有した磁石ロール231A、231Bを有し、該磁石ロールの外周を矢印方向に現像スリーブ232A、232Bが回転している。
【0061】
233A、233B、234A、234Bは水車状の翼を有する撹拌部材で、現像剤の撹拌を行っていて、トナーと磁性キャリアとから成る現像剤は撹拌されて摩擦帯電し、キャリア外周にトナーが付着した状態となっていて、回転する現像スリーブ232A、232Bの各周面に磁力によって付着し、現像スリーブ232A、232Bの回転に伴って感光体ドラム21に近接した現像領域へ移動する。
【0062】
現像スリーブ232A、232Bによって現像剤が搬送される間に、層厚規制部材235A、235Bによって所定の現像剤の搬送量となるよう制限がなされ、現像スリーブ232A、232Bには直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアスが印加され、現像領域において感光体ドラム21上の静電潜像部分にトナーが付着して現像が行われる。
【0063】
上記、図2では、図で示したような磁石構造を有する磁石ローラや、その回転方向を示したが、本願発明では、これらの構成については、この図2の構成に限定されるものではない。又、233A、233B、234A、234Bは水車状の翼を有する撹拌部材等も、現像スリーブと同様な、内部に磁石ロールを有する現像剤担持体を用いてもよい。
【0064】
図3は、2つの現像スリーブを有する現像手段の他の構成断面図である。
【0065】
図3の現像手段23では、感光体ドラム21に対向して、内部に複数の磁石を有した磁石ロール231C、231Dと、磁石ロール231C、231D外周を矢示方向に回転する現像スリーブ232C、232Dの2つの現像スリーブを有する。
【0066】
現像スリーブ232C、232Dに近接しては、現像スリーブ232C、232Dに現像剤を供給する現像剤担持体233C、233Dがある。現像剤担持体233C、233Dも、内部に複数の磁石を有した磁石ロール234C、234Dと、磁石ロール234C、234Dの外周を矢示方向に回転する搬送スリーブ235C、235Dとからなっている。
【0067】
236C、236Dは水車状の翼を有する撹拌部材で、現像剤の撹拌を行っていて、トナーと磁性キャリアとから成る現像剤は撹拌されて摩擦帯電し、キャリア外周にトナーが付着した状態となっていて、回転する搬送スリーブ235C、235D周面に磁力によって付着し、搬送スリーブ235C、235Dの回転に伴って移動する。
【0068】
搬送スリーブ235C、235Dの現像スリーブ232C、232Dに最も近接した対向部では、磁石ロール234C、234Dは同磁極の2つの磁石の中間位置となっていて、この中間位置では、磁石ロール231C、231Dは異磁極の磁石が位置している(図3参照)。
【0069】
従って、搬送スリーブ235C、235Dに磁力によって付着していた現像剤は対向部で磁力差によって現像スリーブ232C、232Dの周面に移動し、現像領域へと搬送される。
【0070】
現像スリーブ232C、232Dによって現像剤が搬送される間に、層厚規制部材237C、237Dによって所定の現像剤の搬送量となるよう制限がなされ、現像スリーブ232C、232Dには直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアスが印加され、現像領域において感光体ドラム21上の静電潜像部分にトナーが付着して現像が行われる。
【0071】
又、図3の現像装置は2つの現像スリーブの回転方向が図のように感光体の回転方向に対し、1つはカウンター方向(感光体と現像剤との接触面で、感光体の回転方向に対し、現像スリーブが反対方向に回転していること)、1つはトレイル方向(感光体と現像剤との接触面で、感光体と現像スリーブが並行に回転していること)に回転している。
【0072】
本願発明の現像手段は、2つの円筒状の現像スリーブを有するが、該2つの現像スリーブの直径は、10mm〜40mmが好ましい。又、各現像スリーブ間の間隔は、最近接部において、約0.5mm〜5mmの長さが好ましい。
【0073】
本願発明では、2つの現像スリーブは、あたかも1つの現像スリーブのように動作することが好ましいので、その回転方向、線速等は、複数の現像スリーブ間の差が小さい方が好ましい。但し、現像スリーブに内蔵される現像極の法線磁束密や現像領域の磁石の極性度等は、2つの現像スリーブ間で、変えたりすることも出来る。
【0074】
現像スリーブ線速と感光体線速の関係は、現像スリーブ線速/感光体線速の比は、2.5以下(現像スリーブ線速が、感光体線速の2.0倍以下)が好ましく、2.0倍以下がより好ましい。
【0075】
現像スリーブの線速と感光体の線速の比が2.5倍より大きくなると、感光体上に形成されたトナー像の掻き取り効果(スキャベンジング効果)が大きくなりすぎ、画像濃度が低下しやすい。
【0076】
現像にはDC現像とAC現像の2つの方法があるが、いずれの方法も使用出来、2つのスリーブにおけるバイアス印加条件を変えることも可能である。
【0077】
本願発明に係わる現像手段の現像方式は、接触二成分反転現像法である。
【0078】
ここで、接触二成分とは、現像スリーブ上の現像剤が感光体に接触して現像が行われる方式であり、この現像剤には、少なくとも、トナーとキャリアが含有される二成分現像剤が用いられる現像方式をいう。更に、反転現像方式(露光部にトナー像が形成される)でもある。
【0079】
感光体線速(プロセススピード)は、画像出力に対応して変化するが、本願発明の画像形成方法では300mm/sec以上、700mm/sec以下の高速のプロセススピードに好ましく用いられる。
【0080】
本願発明の画像形成方法においては、露光手段による露光位置から第1スリーブ迄の前記有機感光体の移動時間(td1)は、30〜70msecの範囲である。現像位置での感光体の露光部電位を安定させるためには、このような移動時間(td1)がこのましい。
【0081】
尚、移動時間(td1)は、以下の式から計算できる。
移動時間(td1)=像露光の位置と第1現像スリーブ位置間の距離/プロセススピード
上記式で像露光の位置は、像露光が感光体の表面に当たる位置である。
第1現像スリーブの位置は、感光体と第1現像スリーブの最も接近した位置、図2のM1の位置である。
像露光の位置と第1現像スリーブ位置間の距離は、上記像露光の位置からM1の位置までの感光体表面に沿った距離を表す。
【0082】
一方、式1、式2中のV1e、V2e等の感光体の表面電位は、感光体の軸方向中心部に、露光光により、べた露光部を形成し、該べた露光部の電位を第1、第2の現像スリーブの位置に表面電位計を設置して測定する。測定ポイントは図2および図3に示すように、感光体と現像スリーブが最も接近した位置M1、M2とする。
【0083】
本願発明の画像形成方法では下記式1、式2の関係を同時に満たすことが必要である。
【0084】
式1 |V1e|≦200V
式2 |V1e−V2e|≦20V
上記式1及び式2を同時に満たさない場合は、露光電位と未露光部電位の電位差が小さくなったり、第1現像スリーブと第2現像スリーブの電位差が大きくなりすぎて、第2現像スリーブによるトナー画像のスキャベンジング効果が大きくなりやすく、その結果、画像濃度が不足したり、ドッド再現性が劣化したりして、電子写真画像の低下を引き起こしやすい。
【0085】
図4は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0086】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0087】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0088】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0089】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0090】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0091】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0092】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向に図1の像露光手段で説明した350〜500nmのレーザー光学系などが用いられる。
【0093】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0094】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0095】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0096】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0097】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0098】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0099】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0100】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0101】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0102】
次に、本発明の画像形成方法に用いられる有機感光体について詳しく説明する。
【0103】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0104】
本発明の有機感光体の感光層の構成は、導電性支持体上に、少なくとも中間層、電荷発生層、電荷輸送層を有した構成が好ましく、必要により、保護層を有する。以下、これらの構成について、記載する。
【0105】
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としては、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体を用いる。
【0106】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0107】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗10Ω・cm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
【0108】
円筒状導電性支持体の直径(Φ)は、50mm〜200mmが好ましい。
【0109】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、中間層を設けることが好ましい。
【0110】
本発明に用いられる中間層にはN型半導性粒子を含有することが好ましい。該N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
【0111】
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)が好ましく、特に酸化チタンが特に好ましく用いられる。
【0112】
N型半導性粒子は数平均一次粒径が3.0〜200nmの範囲の微粒子を用いる。特に、5nm〜100nmが好ましい。数平均一次粒径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径が3.0nm未満のN型半導性粒子は中間層バインダー中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残電上昇が発生しやすい。一方、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は中間層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸を通してドット画像が劣化しやすい。又、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすく、その結果、ドット画像が劣化しやすい。
【0113】
前記酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等があるが、中でもルチル形酸化チタン顔料又はアナターゼ形酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷の整流性を高め、即ち、電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができ、本発明のN型半導性粒子として最も好ましい。
【0114】
N型半導性粒子はシランカップリング剤や下式で表される反応性有機ケイ素化合物で表面処理したものが好ましい。
【0115】
(R)−Si−(X)4−n
(上式中、Siはケイ素原子、Rは該ケイ素原子に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Xは加水分解性基を表し、nは0〜3の整数を表す。)
上式で表される有機ケイ素化合物において、Rで示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフルオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基を挙げられる。また、Xの加水分解性基としてはメトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン基、アシルオキシ基が挙げられる。
【0116】
また、上式で表される有機ケイ素化合物は、単独でも良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0117】
また、上式で表される有機ケイ素化合物の具体的化合物で、nが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていても良い。同様に、nが2以下の場合、複数のXは同一でも異なっていても良い。又、上式で表される有機ケイ素化合物を2種以上を用いるとき、R及びXはそれぞれの化合物間で同一でも良く、異なっていても良い。
【0118】
本発明に用いられる中間層を形成するために作製する中間層塗布液は前記表面処理酸化チタン等のN型半導性粒子の他にバインダー樹脂、分散溶媒等から構成される。
【0119】
N型半導性粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比(バインダー樹脂の体積を1とすると)で0.5〜2.0倍が好ましい。中間層中でこのような高密度で本発明のN型半導性粒子を用いることにより、中間層の整流性が高まり、膜厚を厚くしても残留電位の上昇やドット画像の劣化を効果的に防止でき、良好な有機感光体を形成することができる。又、このような中間層はバインダー樹脂100体積部に対し、N型半導性粒子を50〜200体積部を用いることが好ましい。
【0120】
一方、これらの粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂が好ましいが、特に以下に示すポリアミド樹脂が好ましい。
【0121】
中間層のバインダー樹脂としてはアルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。有機感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、前記した6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これ以外にも、ダイセル・デグサ(株)製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名で販売されて、ポリアミドを用いることができる。
【0122】
上記ポリアミド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0123】
本発明の中間層の膜厚は0.3〜10μmが好ましい。0.5〜5μmがより好ましい。
【0124】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は単層の構成でもよいが、中間層上に電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した機能分離型の層構成が好ましい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。
【0125】
電荷発生層
本願発明は電荷発生層はバインダー樹脂及び電荷発生物質を含有する。
【0126】
電荷発生層の電荷発生物質(CGM)としては、短波長レーザー光に対して高感度の電荷輸送物質が好ましい。
【0127】
短波長レーザー光に対して高感度の電荷輸送物質としては、フタロシアニン顔料、ハロゲン置換縮合多環顔料等が挙げられるが、中でも、ピランスロン系顔料が短波長光源の波長が350〜500nmの範囲内の半導体レーザー又は発光ダイオードの像露光に十分な感度を有し、好ましい。
【0128】
次に、本願発明に係わるピランスロン系顔料について記載する。
【0129】
ピランスロン系顔料としては、下記一般式(2)の化合物が挙げられる。
【0130】
【化2】

【0131】
(一般式(2)中、nは1〜6の整数)
一般式(2)の化合物で、置換Brの数、nは1〜6個であり、これらBrの置換位置は下記一般式(3)のR〜R14の位置に置換可能である。
【0132】
【化3】

【0133】
しかしながら、Brの置換位置を正確に特定する手段は、確立されておらず、置換位置の正確な特定は困難である。
【0134】
又、前記一般式(2)の化合物は下記の合成例で示すように、置換Brの数、nが複数の混合体として得られ、これら混合体を電荷発生層の電荷発生物質として使用することが好ましい。
【0135】
以下に、本発明に係わる前記一般式(2)で表される化合物の合成例を記載する。
【0136】
合成例1
CGM−1(n=1〜3の混合物)
8,16−ピランスレンジオン:5.0g、ヨウ素:0.25gをクロロ硫酸:50gに溶解し、臭素3.0gを滴下した。50℃にて3時間加熱撹拌し、室温まで冷却後、氷500gにあけた。濾過、水洗した後乾燥し、顔料粗品6.8gを得た。顔料粗品5.0gをパイレックス(登録商標)ガラスチューブに入れ、このチューブを、チューブの長さに沿って約440℃〜約20℃の温度勾配(1mの長さで、約440℃〜約20℃の温度勾配をつけた)を生ずる炉の内側に置いた。ガラスチューブ内を約1×10−2Paに減圧し、精製すべき顔料粗品が置かれた位置を約440℃に加熱した。生成した蒸気をチューブの低温側に移動、凝縮させ、約300〜380℃の間の領域に凝縮した昇華物(CGM−1)2.4gを得た。
【0137】
CGM−1のマススペクトル測定の結果、n=1〜3の混合物であり、n=1/n=2/n=3のピーク強度比は11/59/30であった。
【0138】
合成例2
CGM−2(n=3〜5の混合物)
8,16−ピランスレンジオン:5.0g、ヨウ素:0.25gをクロロ硫酸:50gに溶解し、臭素5.9gを滴下した。70℃にて5時間加熱撹拌し、室温まで冷却後氷500gにあけた。濾過、水洗した後乾燥し、顔料粗品8.5gを得た。顔料粗品5.0gをパイレックス(登録商標)ガラスチューブに入れ、このチューブを、チューブの長さに沿って約460℃〜約20℃の温度勾配(1mの長さで、約460℃〜約20℃の温度勾配をつけた)を生ずる炉の内側に置いた。ガラスチューブ内を約1×10−2Paに減圧し、精製すべき顔料粗品が置かれた位置を約460℃に加熱した。生成した蒸気をチューブの低温側に移動、凝縮させ、約300〜400℃の間の領域に凝縮した昇華物3.3gを得た。
【0139】
マススペクトル測定の結果、n=3〜5の混合物であり、n=3/n=4/n=5のピーク強度比は16/67/17であった。
【0140】
合成例3
CGM−3(n=3〜6の混合物)
8,16−ピランスレンジオン:5.0g、ヨウ素:0.25gをクロロ硫酸:50gに溶解し、臭素5.9gを滴下した。75℃にて6時間加熱撹拌し、室温まで冷却後氷500gにあけた。濾過、水洗した後乾燥し、顔料粗品8.7gを得た。顔料粗品5.0gをパイレックス(登録商標)ガラスチューブに入れ、このチューブを、チューブの長さに沿って約480℃〜約20℃の温度勾配(1mの長さで、約480℃〜約20℃の温度勾配をつけた)を生ずる炉の内側に置いた。ガラスチューブ内を約1×10−2Paに減圧し、精製すべき顔料粗品が置かれた位置を約480℃に加熱した。生成した蒸気をチューブの低温側に移動、凝縮させ、約300〜420℃の間の領域に凝縮した昇華物(CGM−3)3.0gを得た。
【0141】
CGM−3のマススペクトル測定の結果、n=3〜6の混合物であり、n=3/n=4/n=5/n=6のピーク強度比は17/51/27/5であった。
【0142】
本願発明に係わる縮合多環顔料で、上記一般式(2)以外の電荷発生物質としては、下記に例示するような化合物が挙げられる。
【0143】
【化4】

【0144】
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として上記のように、ハロゲン置換縮合多環顔料を用いる。特に、前記一般式(2)のピランスロン系化合物を電荷発生物質を用いることが好ましい。このハロゲン置換縮合多環系顔料の電荷発生物質以外に、必要により、他の電荷発生物質を併用してもよいが、併用の場合でも、少なくとも50質量%以上はハロゲン置換縮合多環系顔料を用いることが好ましい。
【0145】
一方、電荷発生層のバインダー樹脂として、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が用いられるが、中でも、ポリビニルブチラールと塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体を併用することが好ましい。
【0146】
バインダー樹脂と電荷発生物質の顔料との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し、顔料100〜500質量部が好ましく、100〜300質量部が特に好ましい。又、電荷発生層の膜厚は0.2μm〜2μmが好ましい。
【0147】
電荷発生層の分散塗布溶媒としては、ケトン系溶媒が好ましい。例えば、2−ブタノン、シクロヘキサン、アセトン、メチルイソブチルケトン等が好ましい。また、これら溶媒にエステル系溶媒、或いはエーテル系溶媒を混合して用いてもよい。例えば、酢酸エチル、酢酸t−ブチル等或いはテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0148】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により無機微粒子や酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0149】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては平均分子量が1万以上、2.5万以下の熱可塑性樹脂が用いられる。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が用いられるが、中でも、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0150】
電荷輸送物質(CTM)としては、公知の電荷輸送物質を用いることができるが、本願発明では、短波長のレーザー光等に対し、透過性のよい電荷輸送物質を用いることが好ましい。短波長のレーザー光等に対し、透過性のよい電荷輸送物質として、前記一般式(1)の化合物を用いることが好ましい。該電荷輸送物質は、350〜500nmの波長領域に吸収が小さく、350〜500nmの波長領域の像露光の露光光を遮ることなく電荷発生層に到達させ、又、電荷輸送層中で、光露光による電荷トラップの発生もなく、電荷発生層からの正孔キャリアを効率よく感光体の表面まで輸送することができる。
【0151】
一般式(1)中、(R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数4以下のアルキル基又はアルコキシ基を表すが、中でも、Rが炭素数4以下のアルキル基が好ましい。
【0152】
前記一般式(1)の電荷輸送物質の具体例としては、下記のような化合物例が挙げられる。
【0153】
【化5】

【0154】
【化6】

【0155】
【化7】

【0156】
【化8】

【0157】
【化9】

【0158】
【化10】

【0159】
一般式(1)で表される化合物を合成するには、ビフェニル基を有するトリフェニルアミンを種々のケトン化合物と酸触媒にて反応することにより、合成する事ができる。また、下記一般式(4)で表されるジアミノ体とハロゲン化アリールを種々の合成法によって合成することもできる。
【0160】
【化11】

【0161】
一般式(4)中、Arは、置換基を有しても良いフェニル基又は、一般式(1)に於ける置換基を有するビフェニル基を表し、R、R10は、一般式(1)のRおよびRと同意義である。
【0162】
これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0163】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0164】
電荷輸送層の合計膜厚は、電荷輸送層中での電荷キャリアの拡散を小さくし、ドット再現性を劣化させない為には、膜厚は薄い方が好ましいが、帯電電位の保持性能も考慮すると、10〜18μmが好ましい。
【0165】
又、電荷輸送層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。感光体の表面層は帯電時の活性ガス、例えばNOxやオゾン等で酸化されやすく、画像ボケが発生しやすいが、酸化防止剤を共存させることにより、画像ボケの発生を防止することが出来る。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。
【0166】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【実施例】
【0167】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0168】
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0169】
中間層
洗浄済み円筒状アルミニウム基体(外径φ:100mm)の切削加工により十点表面粗さRz:0.61μmに加工した)上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚5μmの中間層を形成した。
【0170】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0171】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:「CM8000(東レ社製の共重合ポリアミド)」 1部
ルチル形酸化チタン(一次粒径35nm;末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンで表面処理を行い、疎水化度を33に調製した酸化チタン顔料) 5.6部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比) 10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0172】
電荷発生層:CGL
電荷発生物質(CGM):例示化合物CGM−2 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0173】
電荷輸送層(CTL)
電荷輸送物質(例示化合物CTM−6) 225部
ポリカーボネート樹脂「PCZ−200」(三菱ガス化学製) 300部
酸化防止剤 「BHT−F」(武田薬品製) 3部
テトラヒドロフラン/トルエン=4/1(v/v) 2000部
シリコンオイル「KF−96」(信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚11.0μmの電荷輸送層を形成し、感光体1を作製した。
【0174】
感光体2〜3の作製
感光体1の作製において、電荷輸送層の膜厚をそれぞれ15、18μmにし、感光体2及び3を作製した。
【0175】
感光体4〜8の作製
感光体1の作製において、電荷輸送層のCTM及び膜厚を表1のように変更して、感光体4〜8を作製した。
【0176】
感光体9、10の作製
感光体1の作製において、電荷輸送層の膜厚をそれぞれ8μm、22μmにして、感光体9及び10を作製した。
【0177】
感光体11の作製
感光体1の作製において、電荷輸送層のCTMを下記構造のCTM−Hに変更して、感光体11を作製した。
【0178】
【表1】

【0179】
表1中の、CTM−G、CTM−Hは、下記化合物を表す。
【0180】
【化12】

【0181】
評価
基本的に図1の構成を有するプリンターに前記した各感光体を搭載し、感光体、感光体の線速及び図2のM1とM2間の感光体の表面に沿った距離を表2のように組み合わせて評価した。
【0182】
評価は、20℃50%RHの条件で、印字率7.0%のA4画像を中性紙のA4紙に5万枚等の画出し耐刷試験を行い、その後、下記の評価を行った。評価条件(プロセス条件)を下記に示す。
【0183】
評価条件
感光体の線速:外径100mmφの感光体を用い、表2のように感光体の線速を300mm/sec〜600mm/secの間に設定した。
【0184】
帯電電位:スコロトロン帯電器を用い、感光体の表面電位を表1のように設定
露光条件:405nmの半導体レーザー使用、レーザービーム径30μmで、1200dpiの露光を行う。
【0185】
現像手段:図2の構成を有し、現像スリーブには外径20mmφの2本の円筒状現像スリーブを用いた。
【0186】
露光から第1の現像スリーブ位置M1までの感光体の表面に沿った距離(Le−s)を20mm又は25mmに設定した。
【0187】
第1の現像スリーブと第2の現像スリーブの位置の距離(図2のM1とM2間の感光体の表面に沿った距離:Ls−s):表2のよう25mmに設定した。
【0188】
現像条件:接触反転現像
現像バイアス:DCにAC重畳して印加した。
【0189】
現像スリーブ線速/感光体線速の比:1.8
現像剤:接触2成分現像剤(平均粒径30μmの樹脂コートフェライトキャリアと平均粒径6μmのトナーを用いた2成分現像剤)
転写条件
転写部材として図1に記載の転写搬送ベルト装置(トナー像が直接転写紙に転写される)を用いた。
【0190】
クリーニング条件
クリーニングブレードを用いた。
【0191】
除電:帯電前光除電あり
各感光体と評価条件の組み合わせNo.を表2に示す。
【0192】
画像評価
カブリ
前記環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験後に評価した。カブリ濃度はべた白画像をマクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。該反射濃度は相対濃度(印刷していないA4紙の濃度を0.000とする)で評価した。
【0193】
◎:濃度が0.010未満(良好)
○:濃度が0.010以上、0.020以下(実用上問題ないレベル)
×:濃度が0.020より高い(実用上問題となるレベル)。
【0194】
画像濃度
マクベス社製RD−918を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。耐刷試験後の残留電位が増加すると、画像濃度が低下する。
【0195】
◎:黒ベタ画像が1.2より高い(良好)
○:黒ベタ画像が1.0以上、1.2以下(実用上問題なし)
×:黒ベタ画像が1.0未満(実用上問題あり)
ドット画像の再現性
上記評価の中で、像露光光源に405nmの半導体レーザーのビーム径を、40μm、30μm、15μmと変化させ、各々、800dpi、1200dpi、2400dpiの露光を行って、各感光体の高密度のドット再現性(トナー像)を評価した。
【0196】
評価基準は下記で行った。
【0197】
ハーフトーン画像を作製して評価した。
【0198】
◎:800dpi〜2400dpi迄、各dpiのハーフトーン画像が明瞭に(各ドットが独立して)再現されている(高画質特性が非常に良好)。
【0199】
○:800dpi〜1200dpi迄、各dpiのハーフトーン画像が明瞭に再現されているが、2400dpiのハーフトーン画像は明瞭さ(各ドットの独立性)が不十分(高画質特性が良好)。
【0200】
△:800dpiのハーフトーン画像が明瞭に再現されているが、1200及び2400dpiのハーフトーン画像は明瞭さが不十分(高画質特性がやや不十分)。
【0201】
×:800dpi、1200及び2400dpiのハーフトーン画像は明瞭さが不十分(高画質特性が不十分)。
【0202】
以上の結果を表2に示す。
【0203】
【表2】

【0204】
表2の結果より、本願発明の構成を有する組み合わせNo.1〜10及び12,13、14は、各評価において良好な評価結果を得ているが、本願発明の構成から外れた組み合わせNo.11、15では、即ち、組み合わせNo.11では、式1及び式2の条件が外れており、画像濃度及びドット再現性が劣化しており、組み合わせNo.15では、式2の条件が外れて、画像濃度及びドット再現性が劣化している。
【符号の説明】
【0205】
1 画像形成装置
21 感光体
22 帯電手段
23 現像手段
24 転写極
25 分離極
26 クリーニング装置
30 露光光学系
45 転写搬送ベルト装置
50 定着手段
250 分離爪ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の有機感光体上に帯電手段により帯電電位を付与し、波長が350〜500nmの範囲の露光手段によりデジタル静電潜像を形成し、該静電潜像を接触二成分反転現像法の現像手段により現像してトナー像を形成し、該トナー像を転写手段により中間転写体を介してあるいは介さずして記録媒体に転写し、その後、記録媒体に転写されたトナー像を定着手段により定着する画像形成方法において、前記現像手段が第1スリーブと第2スリーブをこの順に感光体の回転方向に沿って有し、前記露光手段による露光位置から第1スリーブ迄の前記有機感光体の移動時間(td1)が30〜70msecであり、第1スリーブ及び第2スリーブの位置における有機感光体の露光部表面電位を、各々、V1e、V2eとした場合、下記式1、式2の関係を同時に満たすことを特徴とする画像形成方法。
式1 |V1e|≦200V
式2 |V1e−V2e|≦20V
【請求項2】
前記有機感光体が円筒状の導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記電荷輸送層の膜厚が10μm以上、18μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記電荷輸送層が、下記一般式(1)で表される構造式を有する電荷輸送物質を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【化1】

一般式(1)において、
〜Rは水素原子、ハロゲン原子又は炭素数4以下のアルキル基、アルコキシ基を表し、R、Rはアルキル基又はアリール基を表し、RとRが結合して環構造を形成してもよい。
【請求項5】
前記露光手段の露光スポット径が40μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
円筒状の有機感光体と、該有機感光体上に帯電電位を付与する帯電手段と、波長が350〜500nmの範囲の露光によりデジタル静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像を接触二成分反転現像法でトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を中間転写体を介してあるいは介さずして記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置において、前記現像手段が第1スリーブと第2スリーブをこの順に感光体の回転方向に沿って有し、前記露光手段による露光位置から第1スリーブ迄の前記有機感光体の移動時間(td1)が30〜70msecであり、第1スリーブ及び第2スリーブの位置における有機感光体の露光部表面電位を、各々、V1e、V2eとした場合、下記式1、式2の関係を同時に満たように構成したことを特徴とする画像形成装置。
式1 |V1e|≦200V
式2 |V1e−V2e|≦20V

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−191486(P2011−191486A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57226(P2010−57226)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】