説明

画像形成方法

【課題】インクの間欠吐出性に優れた画像形成方法を提供する。
【解決手段】(a)ポリマー粒子、(b)色材、及び(c)水を少なくとも含むインク組成物と、複数の液滴吐出素子、前記複数の液滴吐出素子にそれぞれ供給路を介して連通する共通流路及び前記複数の液滴吐出素子に還流路を介して連通する前記共通循環路を有し、前記共通流路から前記複数の液滴吐出素子にインク組成物が供給され、前記共通循環路に循環するインク循環装置を備えた画像形成装置とを用いて、前記インク組成物を吐出して画像を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インクジェットヘッドに形成された多数のノズルからそれぞれインク滴を打滴することによって記録を行うものであり、記録動作時の騒音が低く、ランニングコストが安く、多種多様な記録媒体に対して高品位な画像を記録できることなどから幅広く利用されている。
【0003】
インクジェット記録方法には、インクと、該インクを凝集させる処理液との2液を反応させてインクを凝集させることにより、インクの定着を促進させる2液反応方法が知られている。
例えば、印字の滲み、印字ムラを抑制することができるインクジェット記録方法として、多価金属塩を含む反応液と、顔料と樹脂エマルジョンとを含むインク組成物とを記録媒体上に付着させるインクジェット記録方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、良好な耐水性と耐汚れ性を有するインクジェットインク組成物として、自己分散性ポリマー粒子を含有するインクジェットインク組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、インクジェット記録方式では、インク中の溶媒が使用温湿度条件で揮発し易いインク(例えば、水を溶媒として用いたインク等)や、分散された不溶性成分や高分子化合物を多く含有するインク(例えば、顔料や樹脂微粒子分散物を用いたインク等)が用いられる場合、印刷中および印刷待機中に、ノズルからインク中の溶媒が揮発してノズル近傍のインクの溶媒濃度が低くなり、インク粘度が上昇するという現象が起きる。ノズル近傍のインク粘度が高くなると、ノズル内部での流体抵抗が大きくなり、吐出インク滴の飛翔体積や飛翔方向にばらつきが生じたり、吐出したりしなくなるなどの吐出不良を起こす。この結果、印刷媒体上のドット位置ずれやドット大きさの誤差、更にはドットの欠けを生じることもある。
【0005】
このような問題に対して、非吐出ノズルと吐出ノズルのインクを印刷中にも常時循環させ、ノズル近傍のインク溶媒の濃度低下を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献3〜6参照)。
【特許文献1】特開平9−207424号公報
【特許文献2】特許第3069543号公報
【特許文献3】特開昭63−41152号公報
【特許文献4】特開平1−108056号公報
【特許文献5】特表2000−512233号公報
【特許文献6】特表2003−505281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法ではインクの間欠吐出性は十分ではなく、また、特許文献3〜6では画像解像性、画像の耐擦性などの画像品質において不十分であった。
本発明は、インクの間欠吐出性に優れた画像形成方法を提供することを目的とし、該目的の達成を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>
(a)ポリマー粒子、(b)色材、及び(c)水を少なくとも含むインク組成物と、複数の液滴吐出素子、前記複数の液滴吐出素子にそれぞれ供給路を介して連通する共通流路及び前記複数の液滴吐出素子に還流路を介して連通する前記共通循環路を有し、前記共通流路から前記複数の液滴吐出素子にインク組成物が供給され、前記共通循環路に循環するインク循環装置を備えた画像形成装置とを用いて、前記インク組成物を吐出して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
<2>
前記ポリマー粒子が、自己分散性ポリマー粒子であることを特徴とする上記<1>に記載の画像形成方法。
<3>
前記自己分散性ポリマー粒子は、カルボキシル基を有し、酸価が25〜100である第1のポリマーを含むことを特徴とする上記<1>または<2>に記載の画像形成方法。
<4>
前記自己分散性ポリマー粒子は、有機溶媒中で合成された前記第1のポリマーを含み、前記第1のポリマー中のカルボキシル基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項にに記載の画像形成方法。
<5>
前記自己分散性ポリマーは、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、前記芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位の含有率が10質量%〜95質量%であることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0008】
<6>
前記色材は、カルボキシル基を有する第2のポリマーに被覆され、水不溶性であることを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<7>
前記第1のポリマーの酸価は、前記第2のポリマーの酸価よりも小さいことを特徴とする上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<8>
前記インク組成物は前記共通流路から前記供給路を介してノズルを有する前記複数の液滴吐出素子に供給され、前記ノズルから吐出されなかった前記インクは前記還流路を介して前記共通循環路に循環することを特徴とする上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
<9>
前記共通流路と前記共通循環路の液体の圧力差を変化させることによって、前記インク組成物の供給量を制御することを特徴とする上記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0009】
<10>
前記供給路が前記圧力室に接続され、前記還流路が前記圧力室と前記ノズルを連通するノズル流路に接続されることを特徴とする上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク組成物の間欠吐出性、及び形成された画像の解像性に優れた画像形成方法を提供することができる。更に、耐テープ剥離性、耐擦性においても優れた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の画像形成方法は、(a)ポリマー粒子、(b)色材及び(c)水を少なくとも含むインク組成物と、複数の液滴吐出素子、前記複数の液滴吐出素子にそれぞれ供給路を介して連通する共通流路及び前記複数の液滴吐出素子に還流路を介して連通する前記共通循環路を有し、前記共通流路から前記複数の液滴吐出素子にインク組成物が供給され、前記共通循環路に循環するインク循環装置を備えた画像形成装置とを用いて、前記インク組成物を吐出して画像を形成することを特徴とする。
本発明は前記構成とすることにより、インク組成物の間欠吐出性、及び形成された画像の解像性に優れた画像形成方法を提供することができる。更に、耐テープ剥離性、耐擦性においても優れた画像形成方法となる。
【0012】
本発明におけるインク組成物及び画像形成装置について以下に説明する。
[インク組成物]
本発明におけるインク組成物は、(a)ポリマー粒子、(b)色材、及び(c)水を少なくとも含むことを特徴とする。
本発明におけるインク組成物(以下、インクともいう。)は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。また、イエロー、マゼンタ、シアン色調インク以外のレッド、グリーン、ブルー、白色インクやいわゆる印刷分野における特色インク(例えば無色)等を用いることができる。
【0013】
((a)ポリマー粒子)
本発明におけるインク組成物は、ポリマー粒子の少なくとも1種を含有するが、間欠吐出性、インクの保存安定性、反応液と接触した際の凝集速度の観点から、好ましくは自己分散性ポリマー粒子である。
【0014】
−自己分散性ポリマー粒子−
ポリマー粒子は、自己分散性ポリマー粒子の少なくとも1種を含有することが好ましい。自己分散性ポリマー粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に、酸性基またはその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの微粒子を意味する。
【0015】
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、インク組成物に含有されたときのインク凝集速度とインク定着性の観点から、水性媒体中に固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
【0016】
本発明における自己分散性ポリマー粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶媒を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
【0017】
また、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
【0018】
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶媒を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶媒とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
【0019】
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。
【0020】
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
【0021】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
【0022】
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0023】
本発明における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0025】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有し、酸価(mgKOH/g)が25〜100である第1のポリマーを含むことが好ましい。更に前記酸価は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、25〜80であることがより好ましく、30〜65であることが特に好ましい。
酸価が25以上であることで自己分散性の安定性が良好になる。また酸価が100以下であることで、凝集性が向上する。
【0026】
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
【0027】
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。
本発明において前記芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートであることが特に好ましい。
尚、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0029】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位の含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0030】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、例えば、芳香族基含有モノマーからなる構成単位と、解離性基含有モノマーからなる構成単位とから構成することができるが、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んで構成することができる。
【0031】
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
本発明における自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
尚、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定することできる。
【0033】
本発明における自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜90質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜100であって、重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜80質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜95であって、重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
【0034】
以下に、自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−19を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
【0035】
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/45/10)
【0036】
本発明における自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度とインク組成物としたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶媒を用いた溶液重合法がより好ましい。
【0037】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、凝集速度の観点から、有機溶媒中で合成された第1のポリマーを含み、前記第1のポリマーはカルボキシル基を有し、酸価が25〜100であって、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたものであることが好ましい。
すなわち、本発明における自己分散性ポリマー粒子の製造方法は、有機溶媒中で前記第1のポリマーを合成する工程と、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを含むことが好ましい。
【0038】
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):第1のポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程。
工程(2):前記混合物から、前記有機溶媒を除去する工程。
【0039】
前記工程(1)は、まず前記第1のポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶媒に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶媒中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
【0040】
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。
アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
【0041】
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散性ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。本発明の自己分散性ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアニン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散性ポリマー粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0042】
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
【0043】
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散性ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0044】
本発明における自己分散性ポリマー粒子の平均粒径は、10〜400nmの範囲であることが好ましく、10〜200nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。10nm以上の平均粒径であることで製造適性が向上する。また、400nm以下の平均粒径とすることで保存安定性が向上する。
また、自己分散性ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、自己分散性ポリマー粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明の自己分散性ポリマー粒子は、例えば、水性インク組成物に好適に含有させることができ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
(b)色材
本発明におけるインク組成物は、色材の少なくとも1種を含有する。
色材としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である色材であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、顔料であることがより好ましい。
本発明においては、水不溶性の顔料自体または分散剤で表面処理された顔料自体を色材とすることができる。
【0046】
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能であれば、いずれも使用できる。更に、上記顔料を界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理したものや、グラフトカーボン等も勿論使用可能である。上記顔料のうち、特に、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、カーボンブラック系顔料を用いることが好ましい。
【0047】
本発明に用いられる有機顔料の具体的な例を以下に示す。
オレンジ又はイエロー用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
【0048】
マゼンタまたはレッド用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0049】
グリーンまたはシアン用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、米国特許4311775記載のシロキサン架橋アルミニウムフタロシアニン等が挙げられる。
ブラック用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0050】
〜分散剤〜
本発明における着色材が顔料である場合、分散剤によって水系溶媒に分散されていることが好ましい。分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性の分散剤でも非水溶性の分散剤の何れでもよい。
前記低分子の界面活性剤型分散剤(以下、「低分子分散剤」ということがある)は、インクを低粘度に保ちつつ、有機顔料を水溶媒に安定に分散させる目的で添加することができる。ここでいう低分子分散剤は、分子量2000以下の低分子分散剤である。また、低分子分散剤の分子量は、100〜2000が好ましく、200〜2000がより好ましい。
【0051】
前記低分子分散剤は、親水性基と疎水性基とを含む構造を有している。また、親水性基と疎水性基は、それぞれ独立に1分子に1以上含まれていればよく、また、複数種類の親水性基、疎水性基を有していてもよい。また、親水性基と疎水性基を連結するための連結基も適宜有することができる。
【0052】
親水性基としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、あるいはこれらを組み合わせたベタイン型等を挙げることができる。
アニオン性基は、マイナスの電荷を有するものであれば特に制限はないが、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基またはカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基またはカルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。
【0053】
カチオン性基は、プラスの電荷を有するものであれば特に制限はないが、有機のカチオン性置換基であることが好ましく、窒素またはリンを含むカチオン性基であることがより好ましく、窒素を含むカチオン性基であることが更に好ましい。中でも、ピリジニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであることが特に好ましい。
ノニオン性基は、マイナスまたはプラスの電荷を有しないものであれば特に制限はない。例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリグリセリン、糖ユニットの一部等が挙げられる。
【0054】
本発明においては、顔料の分散安定性と凝集性の観点から、親水性基がアニオン性基であることが好ましい。
また、低分子分散剤がアニオン性の親水性基を有する場合、酸性の処理液と接触させて凝集反応を促進させる観点から、そのpKaは3以上であることが好ましい。本発明における低分子分散剤のpKaはテトラヒドロフラン−水=3:2(V/V)溶液に低分子分散剤1mmol/Lに溶解した液を酸あるいはアルカリ水溶液で滴定し、滴定曲線より実験的に求めた値のことである。
理論上、低分子分散剤のpKaが3以上であれば、pH3程度の処理液と接したときに、アニオン性基の50%以上が非解離状態になる。したがって、低分子分散剤の水溶性が著しく低下し、凝集反応が起こる。すなわち、凝集反応性が向上する。この観点から、低分子分散剤が、アニオン性基としてカルボン酸基を有していることが好ましい。
【0055】
一方、疎水性基は、炭化水素系、フッ化炭素系、シリコーン系等のいずれの構造を有するものであってもよいが、特に、炭化水素系であることが好ましい。また、これらの疎水性基は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよい。また疎水性基は、1本鎖状構造、又は2本以上の鎖状構造でもよく、2本鎖状以上の構造である場合は、複数種類の疎水性基を有していてもよい。
【0056】
また、疎水性基は、炭素数2〜24の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜24の炭化水素基がより好ましく、炭素数6〜20の炭化水素基がさらに好ましい。
【0057】
本発明におけるポリマー分散剤のうち水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物を用いることができる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子などが挙げられる。
【0058】
また、天然物を原料として化学修飾した親水性高分子化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子などが挙げられる。
【0059】
また、合成系の水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、顔料の分散安定性と凝集性の観点から、カルボキシル基を含む高分子化合物が好ましく、例えば、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂等のようなカルボキシル基を含む高分子化合物が特に好ましい。
【0061】
ポリマー分散剤のうち非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0062】
本発明におけるポリマー分散剤の重量平均分子量としては、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
【0063】
また、顔料と分散剤との混合質量比(顔料:分散剤)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
【0064】
本発明において着色材として染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを水不溶性着色粒子として用いることができる。染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料を本発明においても好適に用いることができる。また、担体としては、水に不溶または水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料及びこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明においても好適に用いることができる。
染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。分散剤としては上述した分散剤を好適に用いることができる。
【0065】
本発明における色材は、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤と含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。
また本発明における色材は、凝集性の観点から、カルボキシル基を有するポリマー分散剤(第2のポリマー)に被覆され、水不溶性であることもまた好ましい。
該ポリマー分散剤は前述のものを挙げることができ、また、ポリマー分散剤により被覆されたポリマー被覆顔料の作製としては、特願2008−032171号明細書[0034]〜[0083]に記載の方法等が挙げられ特に限定されない。
更に本発明においては、凝集性の観点から、前記自己分散性ポリマー粒子の酸価が、前記ポリマー分散剤の酸価よりも小さいことが好ましい。
【0066】
本発明において、色材の平均粒径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、平均粒径が10nm以上であることで、耐光性が良好になる。
また、色材の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、色材の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
【0067】
本発明において、上記色材は1種単独で、また2種以上を組合わせて使用してもよい。
また、色材の含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
【0068】
本発明におけるインク組成物における自己分散性ポリマー粒子の含有量としては、画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
また、本発明におけるインク組成物中の色材と自己分散性ポリマー粒子の含有比率(水不溶性着色粒子/自己分散性ポリマー粒子)としては、画像の耐擦過性などの観点から、1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/4であることがより好ましい。
【0069】
−親水性有機溶媒−
本発明におけるインク組成物は、水を溶媒として含むものであるが、親水性有機溶媒の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。前記親水有機溶剤は乾燥防止剤、浸透促進剤として含有することができる。
乾燥防止剤は、特に、本発明におけるインク組成物をインクジェット方式による画像記録方法に適用する場合、インク噴射口におけるインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。
【0070】
乾燥防止剤は、水より蒸気圧の低い親水性有機溶媒であることが好ましい。乾燥防止剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。中でも、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。また、上記の乾燥防止剤は単独で用いても、2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤は、インク中に、10〜50質量%含有されることが好ましい。
【0071】
また、浸透促進剤は、インクを記録媒体(印刷用紙)により良く浸透させる目的で、好適に使用される。浸透促進剤の具体的な例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。これらの浸透促進剤は、インク組成物中に、5〜30質量%含有されることで、充分な効果を発揮する。また、浸透促進剤は、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で、使用されることが好ましい。
【0072】
また、親水性有機溶媒は、上記以外にも、粘度の調整に用いることができる。粘度の調整に用いることができる親水性有機溶媒の具体的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
尚、親水性有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
−その他の添加剤−
本発明におけるインク組成物は、上記成分に加え、必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。その他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インク組成物の調製時に添加してもよい。
【0074】
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0075】
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を用いることができる。
【0076】
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。これらは水性インク組成物中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤は水性インク組成物の保存安定性を向上させる目的で、該インク組成物がpH6〜10となるように添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0077】
表面張力調整剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。
また、表面張力調整剤の添加量は、インクジェット方式で良好に打滴するために、水性インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整する添加量が好ましく、20〜45mN/mに調整する添加量がより好ましく、25〜40mN/mに調整する添加量がさらに好ましい。一方、インクの付与をインクジェット方式以外の方法で行う場合には、20〜60mN/mの範囲が好ましく、30〜50mN/mの範囲がより好ましい。
インク組成物の表面張力は、例えば、プレート法を用いて測定することができる。
【0078】
界面活性剤の具体的な例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&ChemicaLs社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも用いることができる。
また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等、も使用することができる。
【0079】
本発明におけるインク組成物の粘度としては、インク組成物の付与をインクジェット方式で行う場合、打滴安定性と凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
インク組成物の粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。
【0080】
[反応液]
本発明において、上記インク組成物と接触することで凝集体の形成が可能な反応液(以下、「処理液」ともいう。)を上記インク組成物と共に用いることができる。特に、本発明の画像形成方法において、インク組成物を付与する前にインクジェット記録媒体に予め付与することにより、反応液とインク組成物とを接触させて、インクの凝集体形成を高速に行うことができる。
前記反応液のインクジェット記録媒体への付与は、インク組成物付与の前後のいずれにおいても可能である。
本発明において、反応液のpHは、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜6であることが好ましく、2〜5であることがより好ましく、3〜5であることがさらに好ましい。本発明における処理液は、酸性化合物の少なくとも1種を含んで構成することができる。酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基またはカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩を使用することができる。中でも、水性インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基またはカルボキシル基を有する化合物であることがより好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0081】
本発明におけるカルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0082】
本発明における処理液は、上記酸性化合物に加えて、水系溶媒(例えば、水)を更に含んで構成することができる。
処理液の酸性化合物の含有量としては、凝集効果の観点から、処理液の全質量に対して、5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい
【0083】
また、本発明に用いることができる高速凝集性を向上させる反応液の好ましい一例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した反応液を挙げることができる。液体組成物の成分として、多価金属塩として周期表の2A属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウムとカルシウム);周期表の3B属の遷移金属(例えば、ランタン);周期表の3A属からのカチオン(例えば、アルミニウム);ランタニド類(例えば、ネオジム);及びポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体、を挙げることができる。好ましい例として、カルシウムとマグネシウムを挙げることができる。カルシウム又はマグネシウムの対塩として好ましく採用されるアニオンは、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩を挙げることができる。処理液への添加量として、当該塩は約1〜約10重量%、好ましくは約1.5〜約7重量%、より好ましくは約2〜約6重量%の範囲の量で処理液中に存在させることができる。
【0084】
また処理液は、本発明の効果を害しない範囲内で、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられ、前述の水性インク組成物に含まれるその他の添加剤の具体的な例に示したものが適用できる。
【0085】
本発明における処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。
【0086】
本発明の画像形成方法は、前述のインク組成物と、複数の液滴吐出素子、前記複数の液滴吐出素子にそれぞれ供給路を介して連通する共通流路及び前記複数の液滴吐出素子に還流路を介して連通する前記共通循環路を有し、前記共通流路から前記複数の液滴吐出素子にインク組成物が供給され、前記共通循環路に循環するインク循環装置を備えた画像形成装置とを用いて、前記インク組成物を吐出して画像を形成することを特徴とする。
即ち、本発明は、前記インク組成物と本発明における前記特定の画像形成装置を用いることにより、インク組成物の間欠吐出性に優れた画像形成方法を提供するものである。
【0087】
(画像形成装置)
本発明における画像形成装置は、複数の液滴吐出素子、前記複数の液滴吐出素子にそれぞれ供給路を介して連通する共通流路及び前記複数の液滴吐出素子に還流路を介して連通する前記共通循環路を有し、前記共通流路から前記複数の液滴吐出素子にインク組成物が供給され、前記共通循環路に循環するインク循環装置を備えたことを特徴とする。
前記構成とすること以外は、特に限定されず公知のその他の装置を備える画像形成装置とすることができる。
本発明において、前記本発明の画像形成方法の構成とすることにより、使用するインク組成物は常に循環されるため、待機していて使用していないノズルにおいてもノズル近傍のインク組成物粘度が高くなることなく、吐出不良を防止することができる。特に、前述のインク組成物を用いて、間欠吐出した際の不良を顕著に防止することができる。
【0088】
〔インク循環系の構成〕
本発明における画像形成装置の一実施形態であるインクジェット記録装置のインク循環系について説明する。
【0089】
図1は、インクジェット記録装置のインク循環系を示した概略図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置10のインク循環系は、記録ヘッド50(50A)、インクタンク100、サブタンク102、溶媒濃度検出器104、溶媒添加装置106、及び脱気装置108から主に構成され、インクタンク100からサブタンク102を介して記録ヘッド50にインク供給が行われ、記録ヘッド50に形成される複数のノズル64からそれぞれインク滴が吐出されるとともに、記録ヘッド50に供給されたインクの一部はヘッド内部を循環してサブタンク102に戻される。
以下、各部の構成について説明する。
【0090】
インクタンク100とサブタンク102を接続する流路110にはポンプ112が設けられている。ポンプ112によって、インクタンク100内のインクがサブタンク102に供給される。ポンプ112はサブタンク102内のインク量が一定となるように制御が行われている。サブタンク102にはインク温度調節用加熱冷却器114が内蔵されており、インク温度調整用加熱冷却器114によってサブタンク102内のインクが所定温度となるように温調することでインク粘度を下げている。例えば、記録ヘッド50内部のインク温度を検出する温度センサ(不図示)が設けられ、記録ヘッド50内部のインク温度が所定温度(例えば55℃)となるように(即ち、所望のインク粘度となるように)、インク温度調整用加熱冷却器114を制御する態様がある。
【0091】
サブタンク102と記録ヘッド50は、第1及び第2の流路116、118により接続されている。記録ヘッド50に形成される共通流路52の一端に形成される第1の供給口54を介して第1の流路116が接続されるとともに、共通流路52の他端に形成される第2の供給口56を介して第2の流路118が接続される。第1の流路116はサブタンク102から記録ヘッド50にインク供給を行うための供給流路であり、ポンプ120及びフィルタ122が設けられる。一方、第2の流路118は記録ヘッド50に供給されたインクの一部をサブタンク102に戻すための循環流路であり、ポンプ124が設けられる。
【0092】
ポンプ120によってサブタンク102内のインクは第1の流路116からフィルタ122を介して記録ヘッド50に供給される。フィルタ122の細かさ(メッシュサイズ)はノズル径よりも小さいことが好ましく、サブタンク102から記録ヘッド50内部に混入した異物がノズル目詰まりを起こすことを未然に防止することができる。例えば、ノズル径よりも10%程度小さなメッシュサイズのフィルタが用いられる。
【0093】
記録ヘッド50に供給されたインクの一部は、共通流路52を経由して、ポンプ124によって第2の流路118からサブタンク102に戻される。図示は省略するが、第2の流路118には、ポンプ124より上流側(記録ヘッド50側)に真空脱気装置を設置する態様もある。
【0094】
共通流路52に連通する各圧力室58にはそれぞれノズル64との連通路であるノズル流路62が設けられている。ノズル流路62には還流路72が設けられ、還流路72を介して共通循環路70に連通している。共通循環路70は不図示の接続流路(図3中符号71として記載)を介して回収口74に連通しており、回収口74にはポンプ132に繋がる流路130が接続されている。
【0095】
図2は、記録ヘッド50の内部構造の一例を示した模式図である。図2に示すように、記録ヘッド50には、インク滴の吐出口となるノズル64、圧力室58、供給路60、及び圧力室58の壁面を構成する振動板66を変形させる圧電素子68を含む液滴吐出素子80が複数設けられている。なお、記録ヘッド50の詳細構成については後で説明するが、記録ヘッド50は複数のヘッドユニットを並べて構成されるものであり、各ヘッドユニットに多数の液滴吐出素子80がマトリクス状(2次元的)に配列されている。
【0096】
各圧力室58はそれぞれ供給路60を介して共通流路52に連通しており、共通流路52から各圧力室58に対してそれぞれ対応する供給路60を介してインク供給が行われる。供給路60は、圧力室58から共通流路52への逆流を抑える供給絞りとしても機能する。また、各圧力室58にはそれぞれノズル流路62を介してノズル64が連通している。
【0097】
各圧力室58の壁面を構成する振動板66上には圧電素子68が設けられている。圧電素子68に駆動電圧を印加すると、振動板66の変形に応じて圧力室58の容積が変化する。圧力室58の容積が増加する方向に振動板66が変形すると、ノズル64に形成されるメニスカスがインク流入側(圧力室58側)に引き込まれるとともに、共通流路52内のインクが供給路60を介して圧力室58に吸い込まれリフィルが行われる。一方、圧力室58の容積が減少する方向に振動板66が変形すると、ノズル64のメニスカスはインク吐出側(圧力室58とは反対側)に押し出され、ノズル64からインク滴が吐出される。特に、引きと押しの間隔を圧力室58とインクの流体的な共振周期の1/4にすることが好ましく、引きと押しの振動が重ね合わされて大きな変位を得られ、容易にインク吐出を行うことが可能となる。
【0098】
インク吐出が行われる際、圧力室58内のインクはインク吐出側であるノズル流路62に流れるだけでなく、インク供給側である供給路60にもその一部が流れる。圧力室58からノズル流路62に向かうインク流量と供給路60に向かうインク流量は、それぞれの流路抵抗、イナータンスの比で決まる。一般的なインクジェットヘッドでは、ほぼ1対1となるように各部の寸法が決められている。
【0099】
図3は、記録ヘッド50の詳細構造を示した平面図である。図4は、記録ヘッド50の一部を示した断面図(図3中7−7線に沿う断面図)である。なお、図3では、圧力室58の配置構成に対する理解を容易にするために、振動板66や圧電素子68の図示を省略している。本実施形態の記録ヘッド50は、図3及び図4に示すヘッドユニット51を複数個並べて構成されるものである。もちろん、1つのヘッドユニット51からヘッドが構成されていてもよい。
【0100】
図3に示すように、ヘッドユニット51には、ノズル64や圧力室58を含む液滴吐出素子80がマトリクス状(2次元的)に配列されている。共通流路52は各圧力室58が形成される領域全体に渡って形成されており、共通流路52に開口する第1及び第2の供給口54、56がそれぞれ3つずつ設けられている。
【0101】
また、ヘッドユニット51には、複数の共通循環路70が圧力室列59毎に設けられている。各共通循環路70にはそれぞれ対応する圧力室列59の各圧力室58が連通している。詳しくは、図2に示すように、各圧力室58はそれぞれ対応するノズル流路62及び還流路72を介して連通している。複数の共通循環路70は連通流路71を介して1つに繋がっており、連通流路71には3つの回収口74が形成されている。
【0102】
図4に示すように、圧力室58の壁面を構成する振動板66上には個別電極69を備えた圧電素子68が設けられている。振動板66は少なくとも表面に電極層(導電層)が形成された導電性基板が用いられ、圧電素子68の共通電極を兼ねている。圧電素子68にはチタン酸ジルコン酸鉛(ピエゾ)等の圧電体が好適に用いられる。
また、振動板66上の圧電素子68を覆うように保護カバー67が設けられており、共通流路52内のインクに対する圧電素子68やその他配線部材(不図示)の絶縁保護が図られている。
【0103】
このように構成される記録ヘッド50において、図3に示すように、共通流路52の上流側に形成される第1の供給口54におけるインクの圧力をP1、その下流側に形成される第2の供給口56におけるインクの圧力をP2、共通循環路70の一端(より詳しくは連通流路71)に形成される回収口74におけるインクの圧力をP3としたとき、次式
P1>P2>P3の関係が成立するように各圧力P1、P2、P3が設定又は制御されているとき、共通流路52の上流側から下流側に向かうインクの流れが形成されるとともに、共通流路52から供給路60、圧力室58、ノズル流路62、還流路72を経由して共通循環路70に向かうインクの流れが形成される。なお、一般的に共通流路52の流路断面積は大きく、その流体抵抗は小さいため、第1及び第2の供給口54、56間の圧力差△Pは数百〜数kPa程度である。
【0104】
共通流路52内を流れるインクの単位時間あたりの流量は、第1及び第2の供給口54、56間のインクの圧力差(P1−P2)と共通流路52の流体抵抗から決定することができる。共通流路52の流量は、記録ヘッド50の発熱による温度変化を制御できる量であるとともに、共通流路52内に気泡が入った場合に気泡を流せる流量に設定することが好ましい。どちらの条件も流量を多くすればその条件を満たすことができる。ただし、共通流路52内に乱流が発生しない範囲に設定する必要があるが、一般的なインクジェットヘッドの発熱量と寸法では、まず解がない状態にはならないと考えられる。
【0105】
例えば、ヘッド全吐出状態(描画用に最大周波数、最大吐出体積で吐出を続けた場合の吐出)での単位時間あたりのインク消費量の10〜20倍程度が現実的な流速である。2〔pl〕を40〔kHz〕で吐出するヘッドが1200〔dpi〕のノズル密度をもち、1ユニットあたり2インチの長さであると、2×2×1200×40000〔pl/sec〕=0.192〔ml/sec〕がインク消費量となるので共通流路52を流れるインク量は2〜4〔ml/sec〕程度にする。
【0106】
また、ポンプ120、124によって各供給口54、56に付与される圧力P1、P2は、記録ヘッド50の各ノズル64の開口部に形成されるメニスカスを僅かに引き込むように弱い負圧となっており、大気圧に対し、−20〜−60〔mmHO〕となっている。
【0107】
一般に、インクジェットヘッドでは、非吐出中のノズルからインクが漏れないように、ノズル部分のインクを、大気圧に対して多少の負圧にすることが一般に行われる。その負圧が強すぎるとメニスカスの表面張力が圧力に負けてノズルから空気を吸い込んでしまう。例えば、直径18〔μm〕のノズルに表面張力35〔mN/m〕のインクを使った場合、表面張力の最大値は1.98×10−6〔N〕になるのでノズル単位面積あたりでは8〔kN/m〕となる。これは換算すると81〔gf/cm〕であるため、負圧が、−810〔mmHO〕の状態でメニスカスとつりあい、これ以上になるとメニスカスが壊れる。しかし、実際のヘッドでは、多数のノズルがあるため、ノズル部分の工作精度、表面粗さや、ノズル部分の撥水処理の欠陥、さらには振動などが原因で、この計算値より低い背圧でメニスカスが壊れる場合が多い。実際に、実験では、前記のような不安定要因のため、必ずしも安定した結果は得られないが、−100〜−400〔mmHO〕で壊れる例が多い。そこで、実験から、マージンを見て、背圧の上限は−60〔mmHO〕に設定している。一方で、下限は、気圧、温度などの環境変化や振動によって、背圧をかけているにもかかわらずインクが漏れたりしないように−20〔mmHO〕に設定している。いずれの値も、理論的に求めた値ではなく、実験に基づく安定した性能を得られる範囲である。
【0108】
図1に戻り、記録ヘッド50の回収口74には流路130が接続されている。流路130にはポンプ132が設けられており、回収口74と反対側の端部はリザーバタンク134に接続されている。共通流路52から供給路60、圧力室58、ノズル流路62、還流路72、共通循環路70を循環してきたインクは、ポンプ132によって回収口74から流路130を通ってリザーバタンク134に回収される。
【0109】
リザーバタンク134とサブタンク102を接続する流路136には、上流側(リザーバタンク134側)から下流側(サブタンク102側)に向かって、溶媒濃度検出器104、溶媒添加装置106、脱気装置108、ポンプ138、及びフィルタ140が順に設けられている。
【0110】
リザーバタンク134内に回収されたインクを流路136を介してサブタンク102に戻す際、まず、溶媒濃度検出器104によって、インクの密度、粘度、流速変化、電気伝導度等から溶媒濃度の検出が行われる。続いて、溶媒添加装置106によって、溶媒濃度検出器104による検出結果に応じて、溶媒タンク144内の溶媒が流路136内のインクに添加される。これにより、圧力室58やノズル流路62を経由した循環インク、特にノズル付近で増粘したインクを適正な粘度に回復することができる。なお、後述するように、溶媒濃度検出器104により検出された溶媒濃度は溶媒濃度制御部(図示無し)に送られ、溶媒濃度制御部によって溶媒添加装置106の駆動が行われる。
【0111】
更に、真空ポンプ146が接続された脱気装置108によってインク中の溶存空気量を減らす処理(脱気処理)が行われる。なお、サブタンク102と記録ヘッド50を接続する第2の流路118のポンプ124より上流側(記録ヘッド50側)に真空脱気装置を設ける場合は、脱気装置108は省略される。
【0112】
脱気装置108により脱気処理が行われたインクは、ポンプ138によってフィルタ140を介してサブタンク102に戻される。その後、インクタンク100から供給されるインクとともに、記録ヘッド50に対して再び供給される。
【0113】
図1に示したインク循環系の構成によれば、ポンプ132と、溶媒添加装置106や脱気装置108との間にリザーバタンク134が配置されるので、ポンプ132により回収口74に付与される圧力P3に溶媒添加や脱気などの再生処理の影響を与えないようにすることができる。
【0114】
(作用)
本発明における画像形成装置の一実施形態であるインクジェット記録装置のインク循環系の作用を図5を用いて説明する。
【0115】
図5は、共通流路52から供給路60を経由して共通循環路70に流れるインクの流れを説明するインクフローの説明図である。
【0116】
図5において、インクタンク(図示なし)より供給されたインクは、まず共通流路(供給側)52に流れる。次に、共通流路(供給側)52から個別の圧力室58へ供給路60を通じてインクが供給される。この供給路60はイナータンスが大きくなるように設計されており、吐出時にインクが共通流路(供給側)52へ逆流するのを防いでいる。圧力室58に導入されたインクは、圧力素子(アクチュエータ)68の駆動にともなってノズルより吐出される。また、圧力素子(アクチュエータ)68の動作とは別に共通流路(供給側)52と共通循環路(循環側)70の圧力差により圧力室58から共通循環路(循環側)70へと循環路72を通してインクは流れる。この循環路は吐出時のインクが共通循環路(循環側)70へ流れるの防ぐためにイナータンスが大きくなるように設計されている。共通循環路(循環側)70に流れたインクはインクタンクへと帰還する。
インクの流れは、下記表1のようになる。
循環における流れは、共通流路(供給側)と共通循環路(循環側)の液体の圧力差によって生じる。また、吐出における流れは圧力素子(アクチュエータ)の発生圧力によって生じる。この急激な流れは、イナータンスの大きな供給路と循環路には殆んど流れが発生しない。
【0117】
【表1】

【0118】
上記のようにインクは常時循環していることにより、インクの乾燥による物性変化を抑制し、上記インク循環系を有する本願発明の画像形成方法はインクの間欠吐出性に優れた画像形成方法とすることができる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0120】
<実施例1>
〜インク組成物の調製〜
[顔料(色材)分散液の調製]
(ポリマー分散剤PD−1の調製)
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成製)4部、ブレンマーPP−500(日本油脂製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、メチルエチルケトン24部の混合溶液を調液した。
一方、滴下ロートに、スチレン14部、ステアリルメタクリレート24部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成製)9部、ブレンマーPP−500(日本油脂製)9部、メタクリル酸10部、2−メルカプトエタノール0.13部、メチルエチルケトン56部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を入れ、混合溶液を調液した。
そして、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部をメチルエチルケトン12部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤(PD−1)溶液を得た。
【0121】
得られたポリマー分散剤溶液の一部について、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8220GPCにて、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製)を3本直列につなぎ重量平均分子量を測定した。その結果、単離された固形分は、ポリスチレン換算で重量平均分子量が25,000であった。酸価は計
算値で100mgKOH/gであった。
【0122】
(シアン分散液の調製)
次に、得られたポリマー分散剤溶液を固形分換算で5.0g、シアン顔料Pigment Blue 15:3(大日精化製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1
mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス製)で1000rpm、6時間分散した。得られた顔料分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が約12%になるまで濃縮した。
その後、顔料分散液に対して8000rpm、30分間の遠心処理を行い、沈殿物として残留した粗大粒子を除去した。上澄みの吸光度を測定し、顔料濃度を決定した。
上記のようにして、色材としてのシアン分散液C1を調液した。得られたシアン分散液C1の平均粒径は81nmであった。
【0123】
【化1】

【0124】
[自己分散性ポリマー粒子の調製]
−合成例1−
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。
次に、重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L
NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。なお、下記に示した化合物例(B−01)の各構成単位の数字は質量比を表す。以下、各構造式に関しても同様である。
【0125】
【化2】

【0126】
−合成例2−
合成例1の化合物例(B−01)の合成において、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0gの代わりに、下記化合物例の各構成単位が、それぞれの構造式における質量比となるように使用するモノマーの種類およびその混合量を変更したこと以外は合成例1と同様にして、下記自己分散性ポリマー粒子(B−02)〜(B−05)、(B−15)〜(B−19)の分散液を得た。
得られた(B−02)〜(B−05)、(B−15)〜(B−19)の物性を表2に示した。なお、いずれも自己乳化ポリマーの中和度は、解離性基1モルに対して0.75モル等量となるように、1mol/L NaOH水溶液の量を調整した。
【0127】
【化3】

【0128】
【化4】

【0129】
尚、アクリル酸量を3%(酸価:23)あるいは15%(酸価:117)に変更した下記構造式を有するポリマー微粒子を作製したところ、該ポリマー微粒子は自己分散することができなかった。
【0130】
【化5】

【0131】
[乳化重合によるポリマー粒子の調製]
攪拌装置、還流冷却管を装着した1リットル三口フラスコに、パイオニンA−43s(竹本油脂社製、乳化剤)8.1g、蒸留水236.0gを入れ、窒素気流下70℃に加熱攪拌した。スチレン6.2g、n−ブチルアクリレート3.5g、アクリル酸0.3g、過硫酸アンモニウム1.0g、蒸留水40gを添加し、30分間攪拌した後、スチレン117.8g、n−ブチルアクリレート66.5g、アクリル酸5.7gからなるモノマー溶液を2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、過硫酸アンモニウム0.5g、蒸留水20gからなる水溶液を加え、70℃で4時間攪拌した後、85℃に昇温して更に2時間攪拌を続けた。反応液を冷却し、濾過することで、下記化合物例(BH−1)で表されるポリマー粒子の分散液を得た。得られたポリマー粒子の物性を表2に示した。
【0132】
【化6】

【0133】
【表2】

【0134】
[インク組成物の調製]
上記で得られた色材分散液(分散液C1)および自己分散性ポリマー粒子(B−01)を用いて、下記インク組成となるように各成分を混合して、インク組成物を調液した。調液したインク組成物をプラスチック製ディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μフィルター(ミリポア社製Millex−SV、直径25mm)で濾過して、インクC−1とした。
(インクC−1の組成)
シアン顔料(ピグメントブルー15:3) : 4%
ポリマー分散剤 PD−1 : 2%
自己分散性ポリマー粒子B−01 : 8%
サンニックスGP250(三洋化成工業製、親水性有機溶媒) :15%
ジエチレングリコール(和光純薬製、親水性有機溶媒) :10%
オルフィンE1010(日信化学製、界面活性剤) : 1%
イオン交換水 :55%
【0135】
下記表3のインク組成となるようにインク組成を変更した以外はインクC−1と同様にしてインクC−2〜12を得た。
【0136】
【表3】

【0137】
(処理液の調製)
下記表の組成になるように各成分を混合して前処理液を調液した。
【0138】
【表4】

【0139】
<評価>
(インクジェット記録装置)
インクジェット記録装置は、下記の設定条件に設定された図1に記載のインクジェット記録装置を用いた。但し、溶媒濃度検出器104、溶媒添加装置106、フィルタ140を用いない装置とした。
<設定条件>
・サブタンク102内のインク温度:25℃
・フィルタ122:メッシュサイズ5μm
・ヘッドユニット51:ノズル径18μm、120dpi、1ユニット2cmの長さ
・圧電素子68:チタン酸ジルコン酸鉛(ピエゾ)
・共通流路52を流れるインク量:2〜4ml/sec
【0140】
(画像形成)
記録媒体(特菱アートN 坪量104.7g/m 三菱製紙(株)製)を500mm/秒で所定方向に直線的に移動可能なステージ上に固定し、これに上記で得た前処理液をワイヤーバーコーターで約5g/mの塗布量となるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた。
その後、前記インクジェット記録装置を、固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量2.4pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×600dpiの吐出条件にて、シアンインクをライン方式で吐出し、シアン色の画像を印字した。
画像の印字直後、50℃で3秒間乾燥させ、更に60℃に加熱された一対の定着ローラ間を通過させ、ニップ圧0.20MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施し、評価サンプルを得た。
なお、定着ローラは、内部にハロゲンランプが内装されたSUS製の円筒体の芯金の表面がシリコーン樹脂で被覆された加熱ロールと、該加熱ローラに圧接する対向ロールとで構成されたものである。
【0141】
尚、インク循環なしの条件では、図1の流路130を物理的に塞いで、還流路72を経由して共通循環路70に向かうインクの流れをなくして画像形成を行った。
【0142】
(画像解像性評価)
上記インク組成物、上記インクジェット記録装置を用いて、上記画像形成方法にてステージの移動方向と平行の細線画像を形成した。線幅を2ドット幅、隣あった線の間隔を2ドット幅とし、光学顕微鏡で観察し、下記の基準で評価した。
−評価基準−
A:線幅の不均一性や、隣り合った線の繋がりが無く良好である。
B:インク滴が記録媒体上で合一して線幅が不均一となるが、隣り合った線は繋がらない。
C:隣り合った線が繋がっている。
【0143】
(間欠吐出性評価)
上記で得られたインク組成物を用いて、以下のようにしてインクの間欠吐出性を評価した。尚、評価環境は、25℃50%RHであった。
上記で調製したインク組成物を1分間連続吐出した後に、60分間吐出を休止した。その後に、再度画像を形成した。
評価は、下記評価項目の合否に基づき、下記評価基準で判定した。画像ムラは光学顕微鏡を用いて目視観察した。尚、吐出率とは、「(吐出が認められるノズル数/全ノズル数)×100(%)」とした。
−評価項目−
(1)吐出率が全ノズルの90%以上である。
(2)吐出の曲がりが認められるノズルが全ノズルの10%未満である。
(3)ベタ画像において画像ムラが見られない。
【0144】
−評価基準−
A:3項目とも合格の場合
B:2項目が合格の場合
C:2項目以上が不合格の場合
【0145】
(定着性評価)
上記インク組成物を用いて50%ベタ画像を印画した後に、25℃60%RHに調整した室内において24時間放置した。得られたサンプルについて、下記の耐テープ剥離性、耐擦性の評価を行った。
<耐テープ剥離性>
住友スリーエム(株)社製メンディングテープ(巾18mm)を印画部に貼り付けた。ついで1cm/秒の速度でテープを剥がし、テープへのインクの付着状態を下記評価基準で評価した。
−評価基準−
A:テープへのインクの付着は認められなかった。
B:テープへのインクの付着が僅かに認められるが実用上問題のない範囲だった。
C:テープへのインクの付着が顕著に認められる。
【0146】
<耐擦性>
2cm四方の50%ベタ画像を印画した直後、記録していない記録媒体(記録に用いたものと同じ記録媒体)を重ねて荷重150kg/mをかけて10往復擦り、記録画像についた傷と、前記記録していない記録媒体(未使用サンプル)の白地部分へのインクの転写度合いを目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
−評価基準−
A:インクの転写は全くなかった。
B:記録画像に僅かに傷が認められるが、インクの転写はほとんど目立たなかった。
C:記録画像の傷が顕著である、及び/又はインクの転写が顕著である。
【0147】
【表5】

【0148】
表5から明らかな通り、本発明におけるインクとインク循環装置を備えた画像形成装置を用いた実施例は、間欠吐出性に優れ、解像性に良好な画像が得られた。一方、比較例は評価項目の1つ以上が劣っていることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】インクジェット記録装置のインク循環系を示した概略図である。
【図2】記録ヘッド50の内部構造の一例を示した模式図である。
【図3】記録ヘッド50の詳細構造を示した平面図である。
【図4】記録ヘッド50の一部を示した断面図(図3中7−7線に沿う断面図)である。
【図5】共通流路52から供給路60を経由して共通循環路70に流れるインクの流れを説明するインクフローの説明図である。
【符号の説明】
【0150】
10 インクジェット記録装置、 50(50A) 記録ヘッド、 51 ヘッドユニット、 52 共通流路、 54 第1の供給口、 56 第2の供給口、 58 圧力室、 59 圧力室列、 60 供給路、 62 ノズル流路、 64 ノズル、 66 振動板、 68 圧電素子、 69 個別電極、 70 共通循環路、 71 接続流路、 71 連通流路、 72 還流路、 74 回収口、 80 液滴吐出素子、 100 インクタンク、 102 サブタンク、 104 溶媒濃度検出器、 106 溶媒添加装置、 108 脱気装置、 110、130、136 流路、 112、120、124、132、138 ポンプ、 114 インク温度調節用加熱冷却器、 116、118 第1及び第2の流路、 122、140 フィルタ、 134 リザーバタンク、 144 溶媒タンク、 146 真空ポンプ、 P1 第1の供給口54におけるインクの圧力、 P2 第2の供給口56におけるインクの圧力、 P3 回収口74におけるインクの圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマー粒子、(b)色材及び(c)水を少なくとも含むインク組成物と、複数の液滴吐出素子、前記複数の液滴吐出素子にそれぞれ供給路を介して連通する共通流路及び前記複数の液滴吐出素子に還流路を介して連通する前記共通循環路を有し、前記共通流路から前記複数の液滴吐出素子にインク組成物が供給され、前記共通循環路に循環するインク循環装置を備えた画像形成装置とを用いて、前記インク組成物を吐出して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記ポリマー粒子が、自己分散性ポリマー粒子であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記自己分散性ポリマー粒子は、カルボキシル基を有し、酸価が25〜100である第1のポリマーを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記自己分散性ポリマー粒子は、有機溶媒中で合成された前記第1のポリマーを含み、前記第1のポリマー中のカルボキシル基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記自己分散性ポリマーは、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、前記芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位の含有率が10質量%〜95質量%であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記色材は、カルボキシル基を有する第2のポリマーに被覆され、水不溶性であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記第1のポリマーの酸価は、前記第2のポリマーの酸価よりも小さいことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記インクは前記共通流路から前記供給路を介してノズルを有する前記複数の液滴吐出素子に供給され、前記ノズルから吐出されなかった前記インクは前記還流路を介して前記共通循環路に循環することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記共通流路と前記共通循環路の液体の圧力差を変化させることによって、前記インクの供給量を制御することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記供給路が前記圧力室に接続され、前記還流路が前記圧力室と前記ノズルを連通するノズル流路に接続されることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−76233(P2010−76233A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246529(P2008−246529)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】