説明

画像形成方法

【課題】黒色画像の光沢度向上、高画像濃度、定着性向上を実現でき、フェザリングやカラーブリードを低減させることが可能な画像形成方法の提供。
【解決手段】少なくとも水、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び顔料を含有するポリマー微粒子の水分散体からなる、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを併用して、インクジェット記録により黒色画像を記録する画像形成方法であって、少なくとも水、水溶性樹脂、及びコロイダルシリカを含む前処理液を記録媒体全体に付与した後、前記各インクを併用して印字する画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理液とインクジェット記録用インクを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体表面に前処理液を塗布又は吐出したのち、顔料インクを吐出することにより、記録媒体上で顔料を凝集させ高画質化を図るという画像形成方法が既に知られている。
しかし、今までの画像形成方法では、高画像濃度は達成できても、特に黒色画像部の光沢度が出難い傾向にあるため、記録媒体との光沢度差が大きくなり高品位画像とならず、また凝集した顔料(画像)を十分に定着させることができず、特にラインエンジンシステムのような高速搬送時においては、搬送コロなどへの転写汚れが多く発生してしまい、また、フェザリング、カラーブリードの改善効果も不十分という問題があった。
特許文献1には、光沢性の優れた印刷物を得る目的で、アニオン性コロイダルシリカ、アルミナ、及びポリマー粒子からなる群から選ばれる1種以上の粒子を含む塗工インクを用いて、記録媒体に該粒子の塗工量が5g/m以上になるように塗工した後、その塗工処理した部分に、着色剤を含有する水系インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する印刷方法が開示されている。本発明とは、記録媒体に1種以上の粒子を含む塗工インクを用いて塗工した後、その塗工処理した部分に、着色剤を含有する水系インクをインクジェット記録方法により重ねて印刷する点で類似している。しかし、光沢度をカラーインク単色ベタ印刷部の平均値としており、本発明の特徴である4色を併用することにより光沢度の高い黒色画像を得る内容とは異なるため、期待するような高い光沢度を得ることはできない。また塗工インクを塗工した後、一定時間後に水系インクを印刷しても良いとしており、水系インクを印刷した際に塗工インクとの凝集、定着反応に時間がかかるため、搬送コロなどへの転写汚れ、カラーブリード等の問題は解消できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、黒色画像の光沢度向上、高画像濃度、定着性向上を実現でき、フェザリングやカラーブリードを低減させることが可能な画像形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、次の1)〜4)の発明によって解決される。
1) 少なくとも水、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び顔料を含有するポリマー微粒子の水分散体からなる、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを併用して、インクジェット記録により黒色画像を記録する画像形成方法であって、少なくとも水、水溶性樹脂、及びコロイダルシリカを含む前処理液を記録媒体全体に付与した後、前記各インクを併用して印字することを特徴とする画像形成方法。
2) 画像形成部と非画像形成部の60°における光沢度差が10以下であることを特徴とする1)記載の画像形成方法。
3) 前記記録媒体が普通紙であることを特徴とする1)又は2)記載の画像形成方法。
4) 前記前処理液をローラ塗布した後、前記各インクを併用して、ラインヘッド方式により印字することを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、黒色画像の光沢度向上、高画像濃度、定着性向上を実現でき、フェザリングやカラーブリードを低減させることが可能な画像形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明を実施するのに好適なラインインクジェット装置の一例を示す図。
【図2】図1の装置の制御部の概略ブロック説明図。
【図3】ラインインクジェット装置のヘッドユニットのヘッド配列の一例を示す図。
【図4】図3のヘッドユニットに配列しているヘッドの一例を示す図。
【図5】シリアルインクジェット装置の一例を示す図。
【図6】シリアルインクジェット装置の一例を示す図。
【図7】インクカートリッジの一例を示す概略図。
【図8】図7のインクカートリッジのケース(外装)も含めた概略図。
【図9】インクジェット記録装置の一例を示す図。
【図10】記録ヘッドの一例を示す図。
【図11】記録ヘッドの別の例を示す図。
【図12】カートリッジの一例の外観斜視図。
【図13】カートリッジの一例の正断面図。
【図14】カラーブリードの評価に用いた印字状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明では、記録媒体に対し、水溶性樹脂とコロイダルシリカを含む前処理液を付与するので、特に普通紙のような塗工処理のない記録媒体でも光沢度、平滑度の高い高品位用紙とすることができる。また、付与手段としてローラ塗布を採用すると、記録媒体全体に対し、より高粘度の前処理液を、より高濃度、低付着量で塗布することが可能となる。
そして、前処理した後、顔料を用いたインクジェット記録用インク(以下、インクという)を用いてインクジェット記録を行うことにより、インク中の顔料を含有するポリマー微粒子が、前処理液中の水溶性樹脂やコロイダルシリカと反応し、記録媒体表面に留まりやすくなるので、高光沢度、高画像濃度で定着性が向上した高品位画像を得ることができる。なお、前処理とインクジェット記録は、通常の場合、一連の流れの中で行われるが、本発明においても、従来と同様に、一連の流れの中で前処理に引き続いて、なるべく時間を開けずにインクジェット記録を行うことが望ましい。
【0008】
(1)前処理液の組成
本発明で用いる前処理液には、少なくとも水、水溶性樹脂、コロイダルシリカを添加する。
<水溶性樹脂>
水溶性樹脂は、インク中の顔料との反応により定着性を向上させ、印刷物の耐擦性を向上させるために加える。
水溶性樹脂としては、処理液の保存安定性や吐出安定性を損なわない範囲で種々のものを用いることができ、例えば水溶性ポリマーやエマルジョン、ラテックス等から自由に選択して用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水溶性樹脂の添加量は、前処理液全量に対して10質量%以上であることが好ましく、光沢度を向上させる観点からは15質量%以上がより好ましい。10質量%以上であれば、画質改善効果が充分に得られる。
【0009】
<コロイダルシリカ>
コロイダルシリカは、インク中の顔料を含有する水不溶性ポリマー微粒子との反応により定着性を向上させるために加える。
コロイダルシリカとしては、凝集効果が高いことから、水に分散した球状シリカの分散体であるシリカゾルが好ましい。具体例としては、スノーテックスAK(日産化学工業社製)、SMR8−17−109SMSG 3CS(グレースジャパン社製)、CEP10AK97002(CABOT社製)などが挙げられる。
コロイダルシリカの添加量は、前処理液全量に対して0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは、1〜30質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。0.1〜40質量%の範囲であれば、凝集による粘度上昇が適切な範囲に収まるし、ヘッドのノズル近傍でのシリカの析出も防止できる。
【0010】
更に前処理液には、酸、多価金属塩、カチオン性物質を加えてもよい。
<酸>
酸は、インク中のポリビニルアルコールとの吸着性向上や、前処理液の粘度調整のために加える。
酸としては、無機酸や有機酸から、適宜選択して使用することができる。
無機酸としては、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、硼酸、炭酸等が挙げられ、有機酸としては、カルボン酸やスルホン酸、アミノ酸等が挙げられる。
これらの中でも、ポリビニルアルコールへの吸着性に優れることから、水中での一次解離定数pKaが5以下の酸が好適であり、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸等が好ましい。
酸の添加量は、インク中に含まれるポリビニルアルコール表面への吸着性向上の点から、前処理液中における多価金属塩との混合比率(重量基準)で、多価金属塩:酸=200:1〜5:1が好ましく、より好ましくは150:1〜8:1である。
【0011】
<多価金属塩>
多価金属塩は、インク中の顔料との反応による定着性向上のために加える。
多価金属塩としては、2価以上の多価金属イオンとこれらの多価金属イオンに結合する陰イオンとからなり、水に可溶なものを用いる。
多価金属イオンの例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などが挙げられる。また、陰イオンとしては、Cl、NO3−、I、Br、ClOなどが挙げられる。
多価金属塩の添加量は、前処理液全量に対して0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは、1〜30質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。0.1〜40質量%の範囲であれば、凝集による粘度上昇が適切な範囲に収まるし、ヘッドのノズル近傍でのシリカの析出も防止できる。
【0012】
<カチオン性物質>
カチオン性物質は、多価金属塩と同様に、インク中の顔料との反応による定着性向上のために加える。
カチオン性物質としてはポリアミン類が好ましく、その具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルオクチルアミン、メチルラウリルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ピペリジン、ピロール、カルバゾール、などが挙げられる。
【0013】
(2)インクの組成
<顔料(着色剤)>
本発明で用いるインクには、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各顔料を含有するポリマー微粒子の水分散体を含有させる。顔料は電荷が中和された際に、より効率的に凝集するので高画質化のために必須である。
ここで、「顔料を含有するポリマー微粒子」とは、ポリマー微粒子中に顔料を封入した状態及び/又はポリマー微粒子の表面に顔料を吸着させた状態を意味する。ただし、インクに含まれる顔料が全てポリマー微粒子に封入及び/又は吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、顔料がエマルジョン中に分散していてもよい。顔料としては、水不溶性又は水難溶性であって、前記ポリマーによって吸着され得る顔料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記「水不溶性又は水難溶性」とは、25℃で水100質量部に対し顔料の溶解量が10質量部以下、好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下であることを意味する。また、「溶解する」とは、目視で水溶液表層又は下層に顔料の分離や沈降が認められないことを意味する。
【0014】
前記顔料を含有するポリマー微粒子の材料となるポリマーとしては、例えば、アリールアルキル基又はアリール基を含むアクリレート由来の構成単位を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、塩生成基含有モノマー、スチレン系マクロマー、疎水性モノマー、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシ基を有していても良い炭素数1〜22(好ましくは炭素数1〜18)のアルキル基を有する(メタ)アクリレート類、スチレン以外の芳香環含有モノマー、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、アルキルメタクリレート系マクロマーに由来する構成単位を含んでいても良い。
前記顔料を含有するポリマー微粒子の体積平均粒子径(D50)は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。0.01μm以上であれば、微粒子の流動性のため文字滲みが大きくなったり、耐光性が低下するようなことはない。また、0.16μm以下であれば、ノズルが目詰まりを起こしたり、発色性が悪くなるようなことはない。
【0015】
ブラックインク用の顔料としては、チャンネル法、オイルファーネス法、ファーネス法、アセチレンブラック法、サーマルブラック法など、公知の製造方法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。
その具体例としては、No.2300、No.900、MCF88、No.40、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成社製)、RAVEN1255(コロンビア社製)、REGAL400R、REGAL660R、MOGUL L(以上、キヤボット社製)、Color Black
FW1、Color Black FW18、Color BlackS170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上、デグッサ社製)等の市販品が挙げられるが、その他に、樹脂被覆型顔料等の試作品や自己分散型顔料を用いてもよい。
【0016】
カラーインク用の顔料としては、有機顔料、無機顔料の何れを用いてもよい。
有機顔料の例としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料等が挙げられ、無機顔料の例としては、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられる。特に記録媒体上での定着性の点で、上記顔料を樹脂で被覆した樹脂被覆型顔料が好ましい。
イエローインク用の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、150、153、などが挙げられる。
【0017】
マゼンタインク用の具体例としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2〔パーマネントレッド2B(Ba)〕、48:2〔パーマネントレッド2B(Ca)〕、48:3〔パーマネントレッド2B(Sr)〕、48:4〔パーマネントレッド2B(Mn)〕、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、などが挙げられる。
シアンインク用の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63等が挙げられる。
【0018】
上記顔料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
顔料の含有量は6〜15質量%が好ましく、8〜12質量%がより好ましい。含有量が6質量%以上であれば、着色力の低下により画像濃度が低くなったり、粘度の低下によりフェザリングや滲みが悪化することはなく、15質量%以下であれば、記録装置を放置しておいた場合等に、ノズルが乾燥し易くなって不吐出現象が発生したり、粘度が高くなりすぎて浸透性が低下したり、ドットが広がらないために画像濃度が低下したり、ぼそついた画像になったりすることはない。
【0019】
(3)前処理液とインクの共通組成
本発明で用いる前処理液及びインクには、水及び水溶性有機溶剤の他に、界面活性剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤などの種々の添加剤を加えることができる。
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤は、乾燥によって記録ヘッドのノズルが詰まるのを防止する湿潤剤として、あるいは、前処理液と記録媒体との濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する浸透剤として加える。
水溶性有機溶剤の添加量は、湿潤剤として加える場合には、10〜50質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。含有量が少なすぎると、ノズルが乾燥しやすくなり液滴の吐出不良が発生することがあり、多すぎるとインク粘度が高くなり、適正な粘度範囲を超えてしまうことがある。また、浸透剤として加える場合には、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0020】
湿潤剤として用いる水溶性有機溶剤の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,6−へキサントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類;プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0021】
浸透剤として用いる水溶性有機溶剤の例としては、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤;エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類が挙げられるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0022】
<界面活性剤>
界面活性剤は、表面張力を下げて記録媒体との濡れ性を高め、微粒子層を速やかに形成させると共に、色材を凝集させて画質改善を図るために加える。
界面活性剤の例としては、フッ素系界面活性剤、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリン型化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、下記化学式で示されるものが挙げられる。
【化1】

上記式中、Rfはフッ素含有基を表し、特に炭素数は1〜10のパーフルオロアルキル基が好ましい。具体的には、−CF、−CFCF、−C、−C、などが挙げられるが、これらの中でも、−CF、−CFCFが特に好ましい。また、nは1〜4、mは6〜25、pは1〜4の整数である。
界面活性剤の添加量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。ただし、水よりも高沸点の25℃で液体である成分の合計添加量は20質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がより好ましい。
添加量が0.01質量%未満では、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0023】
<pH調整剤>
pH調整剤は、調合される前処理液やインクに悪影響を及ぼさずにpHを調整することができる材料を用いる。
pH調整剤の例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等が挙げられる。
pH調整剤の添加量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0024】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤は、菌の繁殖を押さえ、保存安定性、画質安定性を高めるために加える。
防腐防黴剤の例としては、ベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
防腐防黴剤の添加量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0025】
<防錆剤>
防錆剤は、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐために加える。
防錆剤の例としては、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
防錆剤の添加量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0026】
(装置)
図1は本発明の実施に用いることができるラインインクジェット装置の一例を示す図である。
インクジェット装置101には、インクを吐出するヘッドを集積したヘッドユニット110K、110C、110M、110Yと、其々のヘッドユニットに対応しヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニット111K、111C、111M、111Y、インクを供給するインクカートリッジ107K、107C、107M、107Y、インクカートリッジからのインクを一部貯蔵し、ヘッドに適切な圧力でインクを供給するサブインクタンク108K、108C、108M、108Yを備えている。
更に媒体を吸着し搬送する搬送ベルト113、搬送ベルトを支える搬送ローラ119、121、搬送ベルトが適切な張力を保つようにコントロールするテンションローラ115、搬送ベルトが適切な平面性を保つためのプラテン124、媒体を吸着するための静電帯電を与える帯電ローラ118からなる搬送機構、媒体をベルトから分離させる分離爪120、排紙するための搬送を行う排紙ローラ116、媒体を押さえる排紙コロ117、排紙した媒体をストックしておく排紙トレイ104からなる排紙機構、印写する媒体をストックする給紙トレイ103、給紙トレイより一枚ずつ媒体を送り出す分離コロ112、送られてきた媒体を帯電ベルトに確実に吸着させるカウンターローラ123、手差しにて給紙した場合に用いられる手差しトレイ105からなる給紙機構を有している。
またメンテナンス後に排出される廃液を回収する廃液タンク109や、装置を操作し装置状態を表示することができる操作パネル106も備えている。
各ヘッドユニットのノズル列は記録媒体の搬送方向に直行するように配列されており、記録領域以上の長さのノズル列を形成している。給紙トレイから媒体が分離コロにて一枚に分離され、加圧コロにて搬送ベルトに密着されることで搬送ベルト上に固定され、ヘッドユニット下を通過する際に記録媒体に液滴を吐出することで、高速に液滴にて記録媒体にパターンニングができ、分離爪にて搬送ベルトから分離され、排紙ローラと排紙コロにて支えられて排紙トレイに記録物が排出される。
【0027】
図3は、図1に示すラインインクジェット装置のヘッドユニットのヘッド配列の一例を示す図である。
ヘッドユニットはヘッド外周部材160にヘッド154A〜154Lを固定しており、各ヘッドはノズルの一部が重複するように千鳥配置で固定されている。
図4は、図3のヘッドユニットに配列しているヘッドの一例を示す図で、ヘッドには、ノズルプレート201に2列の千鳥配置で開口されたノズル200が設けられており、ヘッドとヘッド外周部材との間は充填剤202により密閉されており、ノズル面側からの隙間をなくしている。
また、本発明の実施には、ラインヘッドインクジェット装置に限らず、図5及び図6に示すようなシリアルインクジェット装置を用いても良い。
シリアルインクジェット装置は、図5及び図6に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド130とステー133とでキャリッジ131を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって図6の矢印で示すキャリッジ操作方向に移動走査する。
キャリッジ131には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色の記録用インク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド110を、複数のインク吐出口が主走査方向と交叉する方向になるように配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
また、キャリッジ131には、記録ヘッド110に各色のインクを供給するための各色のサブインクタンク108を搭載している。サブインクタンク108には、記録用インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジからインクが供給されて補充される。
装置本体背面部には、両面給紙ユニット132が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット132は、搬送ベルト113の逆方向回転で戻される用紙を取り込んで反転させて再度カウンターローラ123と搬送ベルト113との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット132の上面には手差しトレイ105が設けられている。
副走査方向への間欠的な用紙搬送動作に応じて、上記主走査モータがキャリッジを走査させ液滴を吐出することにより、ヘッドが用紙に非接触で像を形成することが出来る。
図5中の説明のない符号の部材は、図1と同じ機能の部材である。
【0028】
(前処理機構について)
本発明の実施に用いる装置では前処理液の塗布機構を設けるが、塗布方法はローラ塗布、スプレー塗布、昇華塗布など何れでもよい。一例として図1に画像形成装置に組み込まれたローラ塗布方式を示す。前処理液135は組み上げローラ137によりローラ表面に組み上げられ、膜厚制御ローラ138に転写される。塗布ローラに転写された前処理液は塗布用カウンターローラとの間に通す用紙114に転写され、塗布される。
塗布ローラに転写する前処理液の塗膜量は、膜厚制御ローラ138と塗布ローラ136とのニップ厚を制御することにより制御する。また前処理剤を塗布したくないときには、前処理剤を塗布ローラに残さないように、可動ブレード134を塗布ローラに押し付け、塗布ローラ表面の前処理剤を掻き取ることが出来る。これにより前処理液が塗布ローラに残留して乾燥し増粘することや、塗布ローラとカウンターローラとの固着、塗布ムラなどの機能障害を未然に防ぐことができる。なお、139は塗布用カウンターローラ、140は前処理液カートリッジである。
このようなローラ塗布以外に、インクジェット方式によるスプレー塗布も可能である。図5や図6のようなインクジェット装置では、インクを前処理液と交換することにより、同一プロセスで塗布することができ、塗布量や塗布位置の制御を高精度かつ容易に行うことが出来る。
何れの方式を用いても、前処理液を任意の位置に任意の量だけ塗布することが出来る。
【0029】
(制御部)
次に、図1に示すラインインクジェット装置の制御部の概要について、図2の全体ブロック説明図を参照して説明する。
この制御部300は、装置全体の制御を司るCPU301と、CPU301が実行するプログラム、本発明において使用する所定インク吐出に対するノズル面汚染度合の値及びノズル面汚染許容閾値、駆動波形データ、その他の固定データを格納するROM302と、画像データ等を一時格納するRAM303と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)304と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC305とを備えている。
また、この制御部300は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのホストインターフェース(ホストI/F)306と、記録ヘッド154の圧力発生手段を駆動制御するための駆動波形を生成するヘッド駆動制御部307と、媒体搬送モータ309を駆動するための媒体搬送モータ駆動制御部308と、ヘッドユニット(キャリッジ)移動モータ311を駆動するためのヘッドユニット移動モータ駆動部310と、維持ユニット移動モータ313を駆動するための維持ユニット移動モータ駆動制御部312と、インク経路の電磁弁315を開閉制御するためのインク経路バルブ制御部314、キャップ吸引モータ317やインク供給モータ318の駆動を制御する送液吸引モータ駆動制御部316と、搬送ベルト113の移動量及び移動速度に応じた検知信号を出力するエンコーダや、環境温度及び環境湿度(いずれか一方でも良い)を検出するセンサ323からの検知信号、サブインクタンクのインク量検知信号、各種センサ(不図示)からの検知信号を入力するためのI/O322などを備えている。この制御部300には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作/表示部106が接続されている。
【0030】
制御部300は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの印刷データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F306で受信する。
そして、CPU301は、ホストI/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、記録ヘッド154のヘッド幅の1ページ分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッド駆動制御部307に送出する。
そして、CPU301は、ホストI/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッド駆動制御部307に画像データを転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM302にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしても良い。
ヘッド駆動制御部307は、ページ単位で入力される記録ヘッド154の1ページ分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて選択的に記録ヘッド154の圧力発生手段に印加して記録ヘッド154を駆動する。
また、前処理液をローラ塗工する場合、塗布ローラなどの塗工用ローラ群の駆動制御が必要となるため、塗工用モータ制御部と、制御されるモータ、制御用のセンサ(不図示)が存在する。
さらにインクジェットで前処理液を吐出して塗工する場合は、他のインクと異なる維持動作を行わないと、混色によるノズル詰まりの危険性が存在する。そのため維持ユニット移動モータは、インク用とは別に前処理用のものを設けることが望ましい。
【0031】
(インクカートリッジ)
インクカートリッジは、記録用インクおよび前処理液を容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有する。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができるが、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものが好適である。
図7にインクカートリッジの一例を示す。また、図8は、図7のインクカートリッジのケース(外装)も含めた図である。
図8に示すように、インクカートリッジ240は、インク注入口242からインク袋241内にインクを充填し排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給される。
インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、図8に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース244内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
インクカートリッジは、本発明で用いるブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを収容し、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができる。
【0032】
上記以外の本発明の画像形成方法の実施に用いることができるインクジェット記録装置の例について図1〜図5により説明する。これは後述する実施例7及び比較例6で用いたものである。
図9のインクジェット記録装置1は、本体筐体2に、前処理液及びインクを収納したカートリッジ20が搭載され、このカートリッジ20から前処理液及びインクが、キャリッジ18に搭載された記録ヘッド(インクジェットヘッド)に供給される。ここで、カートリッジ20は前処理液用と色毎のインク用が分離された状態で取り付けられている。記録ヘッドは、主走査モータ26の駆動により、キャリッジ18を介して主走査方向に移動する。すなわち、主走査モータ26が駆動すると、タイミングベルト23が走行し、タイミングベルト23に固定されたキャリッジ18がガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。一方、記録媒体は、副走査モータ17の駆動により、副走査方向に間欠的に送られる。このようにして記録ヘッドの主走査及び記録媒体の副走査を行いながら、記録媒体に対し、記録ヘッドから前処理液を吐出した後、記録ヘッドからインクを吐出することにより、記録媒体表面上に画像を形成することができる。
【0033】
図10は、記録ヘッドの一例のノズル面の拡大図である。前処理液が吐出されるノズル30が縦方向に設けられ、ノズル31、32、33、34からはそれぞれイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクが吐出される。
また、図11のように、記録ヘッドのノズルを全て横方向に並べて構成することも可能である。図中のノズル35、40は前処理液の吐出ノズルであり、ノズル36、37、38、39からは、それぞれイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクが吐出される。このような態様の記録ヘッドでは、前処理液の吐出ノズルが左右の端に設けられているため、記録ヘッドがキャリッジ上を往復する往路、復路のいずれにおいても印字が可能である。すなわち、往路、復路のいずれにおいても前処理液を先に付着させて、その上からカラーインクを付着させること、あるいは、その逆が可能であり、記録ヘッドの移動方向の違いによる画像濃度差が生じない。
【0034】
上記インクジェット記録装置は、カートリッジを取り替えることにより前処理液とインクの補充が可能である。また、このカートリッジは記録ヘッドと一体化されたものであってもよい。
図12、図13に、前処理液及びインクを収納可能なカートリッジの一例を示す。このカートリッジは前処理液とインクのいずれも収納することができる。
41はカートリッジ筐体、42は液吸収体、43はケース、44は上蓋部材、45は液供給口、46はシールリング、47は大気解放口、48は溝、50はキャップ部材、51は液漏れ防止用突部、53はキャップ部材の突状部、55はシール部材、71はカートリッジ位置決め部、81はカートリッジ着脱用突状部、81aはカートリッジ着脱用指掛け部、82はカートリッジ着脱用窪み部、Aは液吸収体42と上蓋部材44の間の空間である。
インクと前処理液とは、記録ヘッドから同一箇所に重ねて吐出されることが最も好ましい。しかし、本発明では、例えば、前処理液を間引いて付与し、滲み等によって拡大した前処理液の上にインクを重ねたり、画像の輪郭部だけに前処理液を付与し、その上にインクの一部を重ねても十分効果が得られる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの
実施例により何ら限定されるものではない。
【0036】
合成例1
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。
次いで、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
次いで、65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液800gを得た。
【0037】
調製例1
−カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子の水分散体の調製−
上記ポリマー溶液28gとカーボンブラック(MONARCH880/Cabot社製)26g、1mol/Lの水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、イオン交換水30gを十分に攪拌した後、三本ロールミルを用いて混練した。
得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水の一部を留去し、固形分20質量%の黒色のポリマー微粒子の水分散体を得た。
このポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50)は85nmであった。
【0038】
調製例2
カーボンブラック(トーカブラック#7240/東海カーボン株式会社製)150gを濃度2mol/Lの過硫酸ナトリウム水溶液3L中に添加し、60℃で10時間攪拌して酸化処理した。次いで限外濾過を行い、残塩分を取り除いた。
その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8に調整し、余剰の塩類除去するため更に限外濾過を行い、得られた水溶液に精製水を加えて固形分が20質量%となるよう調整した。得られたカーボンブラックの水分散体について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50)は70nmであった。
【0039】
調整例3
−銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子の水分散体の調製−
調製例1のカーボンブラックを、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)に変えた点以外は、調製例1と同様にして、青色のポリマー微粒子の水分散体を得た。
このポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50)は93nmであった。
【0040】
調整例4
−ジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子の水分散体の調製−
調製例1のカーボンブラックを、C.I.ピグメントレッド122に変えた点以外は、調製例1と同様にして、赤紫色のポリマー微粒子の水分散体を得た。
このポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50)は127nmであった。
【0041】
調整例5
−モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子の水分散体の調製−
調製例1のカーボンブラックを、C.I.ピグメントイエロー74に変えた点以外は、調製例1と同様にして、黄色のポリマー微粒子の水分散体を調製した。
このポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50)は76nmであった。
【0042】
−インクの作製−
下記処方のインク組成物を調製し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過してブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを作製した。
なお、フッ素系界面活性剤(化学式I)には、Omnova社製Polyfox PF−151Nを用いた。その構造を次に示す。
【化2】

(上記式中、Rfは、−CFCFであり、nは1〜4、mは6〜25、pは1〜4の整数である。)
【0043】
<ブラックインク組成物>
・調製例1のポリマー微粒子の水分散体 … 7.0質量%(固形分として)
・3−メチル−1,3−ブタンジオール … 16.0質量%
・グリセリン … 8.0質量%
・化学式(I)の界面活性剤 … 1.0質量%
・イオン交換水 … 68.0質量%

<シアンインク組成物>
・調製例3のポリマー微粒子の水分散体 … 15.0質量%(固形分として)
・3−メチル−1,3−ブタンジオール … 23.0質量%
・グリセリン … 8.0質量%
・化学式(I)の界面活性剤 … 1.0質量%
・イオン交換水 … 53.0質量%

<マゼンタインク組成物>
・調製例4のポリマー微粒子の水分散体 … 15.0質量%(固形分として)
・3−メチル−1,3−ブタンジオール … 23.0質量%
・グリセリン … 8.0質量%
・化学式(I)の界面活性剤 … 1.0質量%
・イオン交換水 … 53.0質量%

<イエローインク組成物>
・調製例5のポリマー微粒子の水分散体 … 15.0質量%(固形分として)
・3−メチル−1,3−ブタンジオール … 23.0質量%
・グリセリン … 8.0質量%
・化学式(I)の界面活性剤 … 1.0質量%
・イオン交換水 … 53.0質量%

【0044】
実施例1〜7、比較例1〜6
表1、表2の各前処理液欄に示した材料を混合して、実施例及び比較例で用いる各前処理液を調製した。
これらの前処理液と前述した各インクを用い、実施例1〜6及び比較例1〜6については、図1に示すインクジェットプリンタを用いて印字を行った。即ち、前処理液をローラ塗布した後、引き続いてインクジェット記録による印字を行った。また実施例7、比較例6については、図9〜図13に示す装置を用いて前処理液をインクジェット法で付与した後、引き続いてインクジェット記録による印字を行った。
なお、表1、表2の記録媒体欄の「普通紙」は「NBSリコー社製:マイペーパー」である。また、実施例6で用いた「印刷用紙」は次のようにして作製した。
【0045】
−支持体の作製−
下記配合の0.3質量%スラリーを長網抄紙機で抄造し、坪量79g/mの支持体を作製した。なお、抄紙工程のサイズプレス工程で、酸化澱粉水溶液を固形分付着量が片面当り、1.0g/mになるように塗布した。
・広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)…80質量部
・針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)…20質量部
・軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121、奥多摩工業社製)…10質量部
・硫酸アルミニウム…1.0質量部
・両性澱粉(商品名:Cato3210、日本NSC株式会社製)…1.0質量部
・中性ロジンサイズ剤(商品名:NeuSize M−10、ハリマ化成社製)
…0.3質量部
・歩留まり向上剤(商品名:NR−11LS、ハイモ社製)…0.02質量部
【0046】
−印刷用紙の作製−
粒子径2μm以下の粒子の割合が97質量%のクレー(顔料)70質量部、平均粒子径1.1μmの重質炭酸カルシウム30質量部、接着剤としてのガラス転移温度(Tg)が−5℃のスチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン8質量部、リン酸エステル化澱粉1質量部、及び助剤としてのステアリン酸カルシウム0.5質量部を加え、更に水を加えて固形分濃度60質量%の塗工液を調製した。
得られた塗工液を、上記支持体の両面に、片面当りの固形分付着量が8g/mになるように、ブレードコーターを用いて塗工し、熱風乾燥した後、段スーパーカレンダー処理を行い、印刷用紙を作製した。
【0047】
上記実施例及び比較例の印字操作において、次のようにして特性を評価した。
<画像濃度>
前処理した各記録媒体に、解像度1200dpiでブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色を併用したコンポジットブラックのベタ印字を行い、印字乾燥後、反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製)を用いて画像濃度を測定した。
このときの付着量は9.5g/mであった。
【0048】
<スミア定着性>
画像濃度の場合と同様にして印字を行った後、3時間以上経過したところで、クロックメータ(東洋精機社製)に装着した白綿布(東洋精機社製)を用いて、印字したベタ画像部を10往復させ、白綿布に付着したインクの汚れを目視で観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
ランク5…汚れが全くない。
ランク4…汚れがわずかにある。
ランク3…汚れがあるが、実用上問題なし。
ランク2…汚れがやや顕著に認められる。
ランク1…汚れが顕著に認められる。
【0049】
<拍車痕の評価>
画像濃度の場合と同様にして印字を行った際の、各画像プリントの拍車痕の程度を目視で観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:全く認められない。
○:かすかに認められる。
×:明確に拍車痕が認められる。
【0050】
<フェザリング>
画像濃度の場合と同様にして印字を行った際の黒文字部分を観察し、ランク見本と比較して下記基準で画質評価を行った。
〔評価基準〕
ランク5…滲み出しが全くない。
ランク4…滲み出しがわずかにある。
ランク3…滲み出しがあるが、実用上問題なし。
ランク2…滲み出しがやや多い。
ランク1…滲み出しが多い。
【0051】
<カラーブリード>
画像濃度の場合と同様にして図14に示すようなベタ印字を行い、黒ベタ部(左)とイエローベタ部(右)の境界部分を観察し、ランク見本と比較して、下記基準で画質評価を行った。
〔評価基準〕
ランク5…混色が全くない。
ランク4…混色が僅かに有る。
ランク3…混色があるが、実用上問題なし。
ランク2…混色がやや多い。
ランク1…混色が多い。
【0052】
<光沢度>
画像濃度の場合と同様にして、記録媒体に解像度1200dpiでベタ印字を行った。印字乾燥後、アトラス社製光沢度計Micro−Gross60°を用いて、画像部及び非画像部の60°光沢を測定した。なお、画像部と非画像部の光沢度差は10以下であることが好ましく、より好ましくは7以下である。
【0053】
<耐マーカー性>
画像濃度の場合と同様にして、記録媒体に解像度600dpiでベタ印字を行った。
印字乾燥後、蛍光マーカー(三菱鉛筆社製、PROPUS2)で印字部をなぞり、顔料が取れることによって発生する汚れ具合を目視観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
ランク5:色落ちによる汚れが全くみられない。
ランク4:色落ちによる汚れが殆どみられない。
ランク3:若干の汚れが見られる。
ランク2:汚れが見られる。
ランク1:マーカーに沿って汚れが広がっている。
【0054】
【表1】

【表2】

【0055】
上記比較例1は前処理液を用いない場合、比較例2〜4は前処理液にコロイダルシリカと水溶性樹脂の少なくとも一方を含まない場合、比較例5〜6は、インク中の顔料がポリマー微粒子の水分散体でない場合である。
上記結果から分かるように、実施例では比較例に比べて、黒色画像の光沢度向上、高画像濃度、定着性向上を実現でき、フェザリングやカラーブリードなどを低減させることができた。
【符号の説明】
【0056】
1 インクジェット記録装置
2 本体筐体
17 副走査モーター
18 キャリッジ
20 記録液カートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
26 主走査モーター
30 前処理液が吐出されるノズル
31 記録液が吐出されるノズル
32 記録液が吐出されるノズル
33 記録液が吐出されるノズル
34 記録液が吐出されるノズル
35 前処理液が吐出されるノズル
36 記録液が吐出されるノズル
37 記録液が吐出されるノズル
38 記録液が吐出されるノズル
39 記録液が吐出されるノズル
40 前処理液が吐出されるノズル
41 カートリッジ筐体
42 液吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 液供給口
46 シールリング
47 大気解放口
48 溝
50 キャップ部材
51 液漏れ防止用突部
53 キャップ部材の突状部
55 シール部材
71 カートリッジ位置決め部
81 カートリッジ着脱用突状部
81a カートリッジ着脱用指掛け部
82 カートリッジ着脱用窪み部
A 空間
101 インクジェット装置
102 分離パッド
103 給紙トレイ
104 排紙トレイ
105 手差しトレイ
106 操作パネル
107K インクカートリッジ
107C インクカートリッジ
107M インクカートリッジ
107Y インクカートリッジ
108 サブタンク
108K サブインクタンク
108C サブインクタンク
108M サブインクタンク
108Y サブインクタンク
109 廃液タンク
110 記録ヘッド
110K ヘッドユニット
110C ヘッドユニット
110M ヘッドユニット
110Y ヘッドユニット
111K メンテナンスユニット
111C メンテナンスユニット
111M メンテナンスユニット
111Y メンテナンスユニット
112 分離コロ
113 搬送ベルト
114 用紙
115 テンションローラ
116 排紙ローラ
117 排紙コロ
118 帯電ローラ
119 搬送ローラ
120 分離爪
121 搬送ローラ
122 給紙押さえ部材
123 カウンターローラ
124 プラテン
130 ガイドロッド
131 キャリッジ
132 両面給紙ユニット
133 ステー
134 可動ブレード
135 前処理液
136 塗布ローラ
137 組み上げローラ
138 膜厚制御ローラ
139 塗布用カウンターローラ
140 前処理液カートリッジ
154 記録ヘッド
154A〜154L ヘッド
160 ヘッド外周部材
200 ノズル列(千鳥配列)
201 ノズルプレート
202 充填剤
240 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジ外装
300 制御部
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 NVRAM
305 ASIC
306 ホストI/F
307 ヘッド駆動制御部
308 媒体搬送モータ駆動制御部
309 媒体搬送モータ
310 ヘッドユニット移動モータ駆動制御部
311 ヘッドユニット移動モータ
312 維持ユニット移動モータ制御部
313 維持ユニット移動モータ
314 インク経路バルブ制御部
315 電磁弁
316 送液吸引モータ駆動制御部
317 キャップ吸引モータ
318 ヘッドインク供給ポンプのモータ
319 搬送ベルト
320 キャップ吸引経路
321 インク供給経路
322 センサからの検知信号を入力するためのI/O
323 センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2007-253357号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び顔料を含有するポリマー微粒子の水分散体からなる、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを併用して、インクジェット記録により黒色画像を記録する画像形成方法であって、少なくとも水、水溶性樹脂、及びコロイダルシリカを含む前処理液を記録媒体全体に付与した後、前記各インクを併用して印字することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
画像形成部と非画像形成部の60°における光沢度差が10以下であることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記記録媒体が普通紙であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記前処理液をローラ塗布した後、前記各インクを併用して、ラインヘッド方式により印字することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−40750(P2012−40750A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183278(P2010−183278)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】