説明

画像形成状態検査方法、画像形成状態検査装置及び画像形成状態検査用プログラム

【課題】対象物に形成された検査対象画像の画像形成状態の検査精度を向上させることが可能な画像形成状態検査方法、画像形成状態検査装置及び画像形成状態検査用プログラムを提供する。
【解決手段】印字状態検査方法は、飲料容器に印字された数字を撮像する撮像ステップと、該数字の撮像パターンをテンプレートと照合して撮像パターンのテンプレートに対する第1の一致度を算出する第1算出ステップと、該算出された第1の一致度が第1の閾値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、第1の一致度が第1の閾値以上である場合に、撮像パターンを、テンプレートを上下2つに分割した各分割テンプレートと、対応する部分においてそれぞれ照合して撮像パターンの各分割テンプレートに対する第2の一致度をそれぞれ算出する第2算出ステップと、該算出された各第2の一致度が第2の閾値以上であるか否かをそれぞれ判定する第2判定ステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に形成された検査対象画像の画像形成状態を検査するための画像形成状態検査方法、画像形成状態検査装置及び画像形成状態検査用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば飲料容器(対象物)などに印刷された賞味期限などを示す文字の印字状態(画像形成状態)を検査する印字検査装置(画像形成状態検査装置)としてパターンマッチングを利用したものが知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1の印字検査装置では、カメラで印字を撮影し、該撮影した印字の実画像データ(撮像パターン)と予め登録された該印字の標準となる検査文字パターン(基準パターン)とでパターンマッチングを行うことでこれらの類似度(一致度)を算出し、該算出した類似度が予め設定した基準類似度(第1の閾値)に達しているか否かによって合否の判定をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−89379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の印字検査装置では、撮影した印字の実画像データと検査文字パターンとの1回のパターンマッチングを行ったときの類似度が基準類似度に達しているか否かだけで合否の判定を行っているため、その検査精度を向上させる上では改良の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、対象物に形成された検査対象画像の画像形成状態の検査精度を向上させることが可能な画像形成状態検査方法、画像形成状態検査装置及び画像形成状態検査用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、画像形成状態検査方法に係る請求項1に記載の発明は、対象物に形成された検査対象画像を撮像する撮像ステップと、該撮像ステップで撮像された前記検査対象画像の撮像パターンを予め設定された基準パターンと照合して前記撮像パターンの前記基準パターンに対する第1の一致度を算出する第1算出ステップと、該第1算出ステップで算出された前記第1の一致度が予め設定した第1の閾値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、前記第1の一致度が前記第1の閾値以上である場合に、前記撮像パターンを、前記基準パターンを複数に分割した分割基準パターンと、対応する部分においてそれぞれ照合して前記撮像パターンの前記各分割基準パターンに対する第2の一致度をそれぞれ算出する第2算出ステップと、該第2算出ステップで算出された前記各第2の一致度が予め設定した第2の閾値以上であるか否かをそれぞれ判定する第2判定ステップとを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、対象物に形成された検査対象画像の撮像パターンを、基準パターンとの照合で検査した後に、さらに該基準パターンを複数に分割した分割基準パターンとの照合で検査するため、対象物に形成された検査対象画像の画像形成状態の検査精度を向上させることが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の一致度が前記第1の閾値以上である場合には、該第1の一致度の値に基づいて前記第2算出ステップにおける前記基準パターンの分割数を設定することを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、第1の一致度の値に基づいて第2算出ステップにおける基準パターンの分割数を設定するので、より適切な撮像パターンの検査を行うことが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記基準パターンの分割数は、前記第1の一致度の値が大きいときよりも小さいときの方が多くなるように設定されることを要旨とする。
【0010】
通常、第1の一致度の値が大きいときよりも小さいときの方が不良である可能性が高いため、より高い検査精度を必要とする。このため、この構成によれば、基準パターンの分割数は第1の一致度の値が大きいときよりも小さいときの方が多くなるように設定されるため、より一層精度の高い撮像パターンの検査を行うことが可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記各分割基準パターン同士は、隣接する分割基準パターンとの境界部分が互いに重複していることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、各分割基準パターンによって撮像パターンの検査を行う際に、該撮像パターンにおける隣接する各分割基準パターン同士の境界部分と対応する部分が検査漏れすることを抑制することが可能となる。
【0013】
また、画像形成状態検査装置に係る請求項5に記載の発明は、対象物に形成された検査対象画像を撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された前記検査対象画像の撮像パターンを予め設定された基準パターンと照合して前記撮像パターンの前記基準パターンに対する第1の一致度を算出する算出手段と、該算出手段によって算出された前記第1の一致度が予め設定した第1の閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、前記第1の一致度が前記第1の閾値以上である場合に、前記撮像パターンを、前記基準パターンを複数に分割した分割基準パターンと、対応する部分においてそれぞれ照合して前記撮像パターンの前記各分割基準パターンに対する第2の一致度を前記算出手段によってそれぞれ算出させ、該算出された前記各第2の一致度が予め設定した第2の閾値以上であるか否かを前記判定手段によってそれぞれ判定させる制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、請求項1と同様の作用効果を得ることが可能となる。
さらに、画像形成状態検査用プログラムに係る請求項6に記載の発明は、コンピュータに、対象物に形成された検査対象画像を撮像手段によって撮像させる撮像手順と、該撮像手順で撮像された前記検査対象画像の撮像パターンを予め設定された基準パターンと照合して前記撮像パターンの前記基準パターンに対する第1の一致度を算出手段によって算出させる第1算出手順と、該第1算出手順で算出された前記第1の一致度が予め設定した第1の閾値以上であるか否かを判定手段によって判定させる第1判定手順と、前記第1の一致度が前記第1の閾値以上である場合に、前記撮像パターンを、前記基準パターンを複数に分割した分割基準パターンと、対応する部分においてそれぞれ照合して前記撮像パターンの前記各分割基準パターンに対する第2の一致度をそれぞれ前記算出手段によって算出させる第2算出手順と、該第2算出手順で算出された前記各第2の一致度が予め設定した第2の閾値以上であるか否かを前記判定手段によってそれぞれ判定させる第2判定手順とを実行させることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、請求項1と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、対象物に形成された検査対象画像の画像形成状態の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の印字状態検査装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】実施形態の飲料容器の底面図。
【図3】実施形態の印字状態検査装置の制御部内を示すブロック図。
【図4】マッチング検査において、検査領域内をテンプレートマッチングするときの状態を示す模式図。
【図5】マッチング検査において、検査領域内をテンプレートマッチングするときの状態を示す模式図。
【図6】マッチング検査において、検査領域内の数字を各分割テンプレートでそれぞれパターンマッチングするときの状態を示す模式図。
【図7】印字状態検査処理ルーチンを示すフローチャート。
【図8】印字状態検査処理ルーチンを示すフローチャート。
【図9】マッチング検査処理ルーチンを示すフローチャート。
【図10】変更例において、(a)は正規化相関式、(b)〜(d)はテンプレートの分割に伴う該テンプレートと画素データとの相関値の変化を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をビールやジュースなどの飲料が収容される飲料容器に印字された製造年月日を表す数字の印字状態の検査を行うための印字状態検査装置及び同装置を用いた印字状態検査方法に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、画像形成状態検査装置としての印字状態検査装置11は、対象物としての複数の飲料容器12を上流側から下流側へ向かって順次搬送するベルトコンベア13の真上に配置されている。各飲料容器12は底面12aが上側を向いた状態でベルトコンベア13によって搬送される。図2に示すように、各飲料容器12の底面12aにはインクジェットプリンタ(図示略)によって製造年月日を表す検査対象画像としての複数の数字14(本実施形態では2005年10月24日を表す「05.10.24」)が印字されている。すなわち、製造年月日の「年」、「月」、及び「日」は、それぞれ2桁の数字14によって表されている。
【0020】
図1に示すように、印字状態検査装置11は、該印字状態検査装置11の稼働状態を制御する制御手段としての制御部15を備えている。制御部15は、ベルトコンベア13によって搬送される各飲料容器12を検出する光センサ16と、該光センサ16によって検出された飲料容器12の底面12aの数字14(図2参照)を撮像する撮像手段としてのモノクロームのカメラ17と、数字14が印字不良と判定された飲料容器12をベルトコンベア13上から排除する排除機構18と電気的に接続されている。そして、制御部15は、光センサ16から送信される信号を受信するとともにカメラ17及び排除機構18を駆動制御する。さらに、制御部15には、入力部19及びモニタ20が電気的に接続されている。
【0021】
図3に示すように、制御部15はコンピュータ21を備えており、該コンピュータ21はCPU、ROM及びRAMを備えた構成とされている。そして、コンピュータ21は、ROMに記憶された画像形成状態検査用プログラムとしての印字状態検査用プログラムを実行することで、算出手段としてのマッチング処理部22、判定手段としての判定部23、排除処理部24、及び表示部26を構築し、RAMの一部が記憶部25を構成している。
【0022】
記憶部25には、入力部19から入力される基準パターンとしてのテンプレート30(図4及び図5参照)や分割基準パターンとしての上側分割テンプレート31a(図6参照)及び下側分割テンプレート31b(図6参照)が記憶される。本実施形態では、0〜9までの数字のテンプレート30及び各分割テンプレート31a,31bがそれぞれ記憶部25に記憶されている。各分割テンプレート31a,31bは、テンプレート30を上下にほぼ半分ずつに分割したものであり、これらの境界部分は互いに重複している。すなわち、上側分割テンプレート31aの下端部と下側分割テンプレート31bの上端部とは数画素分(例えば、3〜5画素分)だけ重複している。
【0023】
また、記憶部25には、カメラ17から送信される256階調のグレースケールの数字14の撮像パターン14A(図4参照)の画像データが記憶される。この画像データは、表示部26によりモニタ20に表示される。
【0024】
マッチング処理部22は、記憶部25から撮像パターン14A(図4参照)を読み出した後、この読み出した撮像パターン14Aと対応するテンプレート30を読み出して、テンプレートマッチングを行い、撮像パターン14Aのテンプレート30に対する第1の一致度を算出する。さらに、マッチング処理部22は、第1の一致度を算出した後、記憶部25から各分割テンプレート31a,31bを読み出して撮像パターン14Aとのパターンマッチングを行い、撮像パターン14Aの各分割テンプレート31a,31bに対する第2の一致度をそれぞれ算出する。なお、第1の一致度及び第2の一致度は既知の正規化相関法に基づいて算出される。
【0025】
判定部23は、マッチング処理部22で算出された第1の一致度が予め設定された第1の閾値以上であるか否かを判定するとともに、マッチング処理部22で算出された第2の一致度が予め設定された第2の閾値以上であるか否かを判定する。本実施形態では、第1の閾値及び第2の閾値は共に0.70に設定されている。したがって、第2の閾値は、第1の閾値をテンプレート30の分割数(本実施形態では2)で除した値(本実施形態では0.70÷2=0.35)以上になっている。
【0026】
排除処理部24は、判定部23により第1の一致度が第1の閾値以上でないかまたは第2の一致度が第2の閾値以上でないと判定された場合、すなわち、判定部23により数字14が印字不良であると判定された場合、排除機構18を駆動制御して印字不良のある飲料容器12をベルトコンベア13上から排除する。
【0027】
表示部26は、判定部23により第1の一致度が第1の閾値以上であるとともに第2の一致度が第2の閾値以上であると判定された場合には、飲料容器12に印字された数字14の印字状態が良好状態であることを示す「GOOD」の文字をモニタ20に表示させる。また、表示部26は、判定部23により第1の一致度が第1の閾値以上でないかまたは第2の一致度が第2の閾値以上でないと判定された場合には、飲料容器12に印字された数字14の印字状態が不良状態であることを示す「NG」の文字をモニタ20に表示させる。
【0028】
次に、本実施形態の制御部15(コンピュータ21)が実行する印字状態検査処理ルーチンについて図7及び図8に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、制御部15はベルトコンベア13が駆動された場合に印字状態検査処理ルーチンを実行する。そして、制御部15は、光センサ16から飲料容器12を検出したときに送信される検出信号を受信すると、カメラ17に対して撮像指示信号を送信する(ステップS1)。すると、光センサ16によって検出された飲料容器12の底面12aに印字された製造年月日を示す数字14がカメラ17によって撮像され、該撮像された撮像パターン14Aの画像データがカメラ17から制御部15に送信される。
【0029】
そして、制御部15は、カメラ17から送信された撮像パターン14Aの画像データを受信すると、該画像データを記憶部25に記憶させる(ステップS2)。続いて、制御部15のマッチング処理部22は、記憶部25から撮像パターン14Aの画像データを読み出し、図4に示すように、該撮像パターン14Aの製造年月日の「年」部分を囲む検査領域Sを設定する(ステップS3)。
【0030】
続いて、制御部15は、後述するマッチング検査処理ルーチンを実行する(ステップS4)。このステップS4のマッチング検査処理ルーチンでは、撮像パターン14Aの製造年月日の「年」部分を囲む検査領域Sのパターンマッチングを対応するテンプレート30及び各分割テンプレート31a,31bを用いて桁(ここでは「0」及び「5」)毎に1つずつ行う。そして、ステップS4のマッチング検査処理ルーチンにおいて、判定部23により第1の一致度が第1の閾値以上であるとともに第2の一致度が第2の閾値以上であると判定された場合には合格フラグがONにされる。一方、ステップS4のマッチング検査処理ルーチンにおいて、判定部23により第1の一致度が第1の閾値以上でないかまたは第2の一致度が第2の閾値以上でないと判定された場合には合格フラグがOFFにされる。
【0031】
続いて、制御部15は、合格フラグがONであるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5の判定結果が否定判定である場合、制御部15の排除処理部24は、検査中の飲料容器12を特定し、該特定した飲料容器12がベルトコンベア13上から排除されるように、排除機構18の駆動を制御する(ステップS6)。その後、制御部15は、表示部26によってモニタ20に「NG」の文字を表示させ(ステップS7)、印字状態検査処理ルーチンを終了する。
【0032】
一方、ステップS5の判定結果が肯定判定である場合、制御部15は、全ての桁の検査が終わったか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8の判定結果が否定判定である場合、制御部15のマッチング処理部22は、次の桁と対応するテンプレート30及び各分割テンプレート31a,31bに切り替えて(ステップS9)、再びステップS4の処理を行う。一方、ステップS8の判定結果が肯定判定である場合、制御部15のマッチング処理部22は、撮像パターン14Aの製造年月日の「月」部分を囲む検査領域Sを設定する(ステップS10)。
【0033】
続いて、制御部15は、後述するマッチング検査処理ルーチンを実行する(ステップS11)。このステップS11のマッチング検査処理ルーチンでは、ステップS4と同様に、撮像パターン14Aの製造年月日の「月」部分を囲む検査領域Sのパターンマッチングを対応するテンプレート30及び各分割テンプレート31a,31bを用いて桁(ここでは「1」及び「0」)毎に1つずつ行う。
【0034】
続いて、制御部15は、合格フラグがONであるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12の判定結果が否定判定である場合、制御部15の排除処理部24は、検査中の飲料容器12を特定し、該特定した飲料容器12がベルトコンベア13上から排除されるように、排除機構18の駆動を制御する(ステップS6)。その後、制御部15は、表示部26によってモニタ20に「NG」の文字を表示させ(ステップS7)、印字状態検査処理ルーチンを終了する。
【0035】
一方、ステップS12の判定結果が肯定判定である場合、制御部15は、全ての桁の検査が終わったか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13の判定結果が否定判定である場合、制御部15のマッチング処理部22は、次の桁と対応するテンプレート30及び各分割テンプレート31a,31bに切り替えて(ステップS14)、再びステップS11の処理を行う。一方、ステップS13の判定結果が肯定判定である場合、制御部15のマッチング処理部22は、撮像パターン14Aの製造年月日の「日」部分を囲む検査領域Sを設定する(ステップS15)。
【0036】
続いて、制御部15は、後述するマッチング検査処理ルーチンを実行する(ステップS16)。このステップS16のマッチング検査処理ルーチンでは、ステップS4と同様に、撮像パターン14Aの製造年月日の「日」部分を囲む検査領域Sのパターンマッチングを対応するテンプレート30及び各分割テンプレート31a,31bを用いて桁(ここでは「2」及び「4」)毎に1つずつ行う。
【0037】
続いて、制御部15は、合格フラグがONであるか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17の判定結果が否定判定である場合、制御部15の排除処理部24は、検査中の飲料容器12を特定し、該特定した飲料容器12がベルトコンベア13上から排除されるように、排除機構18の駆動を制御する(ステップS6)。その後、制御部15は、表示部26によってモニタ20に「NG」の文字を表示させ(ステップS7)、印字状態検査処理ルーチンを終了する。
【0038】
一方、ステップS17の判定結果が肯定判定である場合、制御部15は、全ての桁の検査が終わったか否かを判定する(ステップS18)。ステップS18の判定結果が否定判定である場合、制御部15のマッチング処理部22は、次の桁と対応するテンプレート30及び各分割テンプレート31a,31bに切り替えて(ステップS19)、再びステップS16の処理を行う。一方、ステップS18の判定結果が肯定判定である場合、制御部15は、表示部26によってモニタ20に「GOOD」の文字を表示させ(ステップS20)、印字状態検査処理ルーチンを終了する。
【0039】
次に、本実施形態の制御部15(コンピュータ21)が実行するマッチング検査処理ルーチンについて図9に示すフローチャートに基づき説明する。なお、ここでは撮像パターン14Aの製造年月日の「年」部分を囲む検査領域Sを設定した場合のマッチング検査処理ルーチン(ステップS4)について説明する。
【0040】
このマッチング検査処理ルーチンにおいて、制御部15のマッチング処理部22は、まず、記憶部25から1つ目の桁の数字と対応する「0」のテンプレート30を読み出す(ステップS30)。続いて、マッチング処理部22は、図4及び図5に示すように、この「0」のテンプレート30を検査領域Sにおける左側から右側へ向かって、及び上側から下側へ向かって所定画素分(例えば、1〜3画素分)ずつ順次移動させながら該検査領域S内の全ての位置で第1の一致度を逐次算出する(ステップS31)。
【0041】
続いて、制御部15の判定部23は、ステップS31において算出された各第1の一致度の中で最も大きい値が第1の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS32)。ステップS32の判定結果が否定判定である場合、制御部15は、合格フラグをOFFにした後(ステップS33)、マッチング検査処理ルーチンを終了する。一方、ステップS32の判定結果が肯定判定である場合、マッチング処理部22は、記憶部25から「0」の上側分割テンプレート31a及び下側分割テンプレート31bを読み出す、即ち「0」のテンプレート30を「0」の各分割テンプレート31a,31bに切り替える(ステップS34)。
【0042】
続いて、マッチング処理部22は、図6に示すように、撮像パターン14Aの「0」に対して、対応する部分において「0」の各分割テンプレート31a,31bでそれぞれパターンマッチングを行い、それぞれの第2の一致度を算出する(ステップS35)。すなわち、撮像パターン14Aの「0」のほぼ上側半分を「0」の上側分割テンプレート31aでパターンマッチングを行うとともに、撮像パターン14Aの「0」のほぼ下側半分を「0」の下側分割テンプレート31bでパターンマッチングを行い、上側半分及び下側半分についてそれぞれ第2の一致度を算出する。
【0043】
続いて、判定部23は、ステップS35において算出された各第2の一致度の値が第2の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS36)。ステップS36の判定結果が否定判定である場合、制御部15は、合格フラグをOFFにした後(ステップS33)、マッチング検査処理ルーチンを終了する。一方、ステップS36の判定結果が肯定判定である場合、制御部15は、合格フラグをONにした後(ステップS37)、マッチング検査処理ルーチンを終了する。
【0044】
なお、撮像パターン14Aの製造年月日の「月」部分を囲む検査領域Sを設定した場合及び撮像パターン14Aの製造年月日の「日」部分を囲む検査領域Sを設定した場合のマッチング検査処理ルーチン(ステップS11及びステップS16)については、上述した撮像パターン14Aの製造年月日の「年」部分を囲む検査領域Sを設定した場合のマッチング検査処理ルーチン(ステップS4)と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
また、本実施形態では、ステップS31が第1算出ステップ及び第1算出手順を構成し、ステップS32が第1判定ステップ及び第1判定手順を構成し、ステップS35が第2算出ステップ及び第2算出手順を構成し、ステップS36が第2判定ステップ及び第2判定手順を構成している。
【0046】
上述したように、本実施形態のマッチング検査処理ルーチンでは、撮像パターン14Aの各数字に対して、テンプレート30でパターンマッチングを行った後、さらにテンプレート30よりも面積の小さい各分割テンプレート31a,31bでパターンマッチングを行っている。この場合、図6に示すように、例えば、撮像パターン14Aの「5」の下端部に印字の欠けた不良部分Kが存在していた場合には、テンプレート30でのパターンマッチングの際の該テンプレート30に対する不良部分Kの占める割合よりも、下側分割テンプレート31bでのパターンマッチングの際の該下側分割テンプレート31bに対する不良部分Kの占める割合の方が格段に大きくなる。このため、第1の閾値と第2の閾値とが同じ値であることから、テンプレート30での検査よりも各分割テンプレート31a,31bでの検査の方が、検査の合格条件が厳しくなる。
【0047】
したがって、テンプレート30でのパターンマッチングで第1の一致度が第1の閾値以上であったとしても、各分割テンプレート31a,31bでのパターンマッチングで第2の一致度が第2の閾値に達しない場合には不合格となることから、より精度の高い撮像パターン14A(製造年月日を表す数字14の印字状態)の検査を実現できる。
【0048】
以上詳述した実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)飲料容器12に印字された製造年月日を表す数字14の撮像パターン14Aを、テンプレート30との照合で検査した後に、さらに該テンプレート30を上下2つに分割した各分割テンプレート31a,31bとの照合でより条件の厳しい検査を行うため、数字14の印字状態の検査精度を向上させることができる。すなわち、テンプレート30でのパターンマッチングを行った後に、該テンプレート30よりも単位面積の小さい各分割テンプレート31a,31bで撮像パターン14Aのパターンマッチングを再度行うことで、不良部分が強調されて発見しやすくなるので、従来に比べて検査精度を格段に向上させることができる。
【0049】
(2)各分割テンプレート31a,31b同士は、これらの境界部分が互いに重複している。このため、各分割テンプレート31a,31bによって撮像パターン14Aの検査(パターンマッチング)を行う際に、該撮像パターン14Aにおける各分割テンプレート31a,31b同士の境界部分と対応する部分が検査漏れすることを抑制することができる。加えて、各分割テンプレート31a,31b同士の境界部分で画素が分割されることも抑制することができる。
【0050】
(3)マッチング検査処理ルーチンにおけるステップS32(第1判定ステップ)またはステップS36(第2判定ステップ)で否定判定がなされた印字状態が不合格の数字14が印字された飲料容器12が、印字状態検査処理ルーチンのステップS6で特定されてベルトコンベア13上から排除される。このため、印字状態が不合格の数字14が印字された飲料容器12と印字状態が合格の数字14が印字された飲料容器12とを確実に区別することができる。
【0051】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・マッチング検査処理ルーチンにおいて、第1の一致度が第1の閾値以上である場合には、該第1の一致度の値に基づいてステップS34におけるテンプレート30の分割数を設定するようにしてもよい。この場合、テンプレート30を3つ、4つ、あるいは5つ以上に分割した分割テンプレートを必要な分だけ記憶部25に記憶させておき、第1の一致度の値に応じて適切な分割テンプレートを選択して切り替えればよい。このようにすれば、テンプレート30の分割数が多くなるほどパターンマッチングを行う際の単位面積が小さくなってより細かい不良の発見が可能となり、より適切で精度の高い撮像パターン14A(製造年月日を表す数字14の印字状態)の検査を行うことができる。また、撮像パターン14Aのうち良品としたい部分については、テンプレート30でパターンマッチングを行った後に、分割テンプレートで再度パターンマッチングを行わないようにすれば、検査時間を短縮することができる。
【0052】
さらに、上記の場合、テンプレート30の分割数を、第1の一致度の値が大きいときよりも小さいときの方が多くなるように設定するようにしてもよい。このようにすれば、より一層精度の高い撮像パターン14Aの検査を行うことができる。なぜなら、通常、第1の一致度の値が大きいときよりも小さいときの方が不良である可能性が高いため、より高い検査精度を必要とするからである。すなわち、第1の一致度の値が第1の閾値に近づくほど、合否の判定をより厳格に行わなければならないからである。
【0053】
ここで、具体的にテンプレート(ここでは数字の「0」)の分割に伴う該テンプレートと画素データ(ここでは数字の「0」)との相関値(一致度)の変化を図10に基づいて説明する。なお、相関値は、図10(a)に示した既知の正規化相関式によって求められる。
【0054】
図10(b)に示すように、通常のテンプレートXを用いて左上部分に不良部分のある通常の画素データYのパターンマッチングを行った場合の相関値は0.81であった。次に、図10(c)に示すように、テンプレートX及び画素データYを上下2つに等分割したそれぞれの上半分(2分割)をテンプレートX1及び画素データY1(不良部分を含む)とし、テンプレートX1を用いて画素データY1のパターンマッチングを行った場合の相関値は0.68であった。次に、図10(d)に示すように、テンプレートX1及び画素データY1を左右2つに等分割したそれぞれの左半分(4分割)をテンプレートX2及び画素データY2(不良部分を含む)とし、テンプレートX2を用いて画素データY2のパターンマッチングを行った場合の相関値は0.38であった。
【0055】
このように、テンプレートと画素データとのパターンマッチングを、通常の場合、2分割の場合、4分割の場合・・・というように順次複数回行うことで、単位面積あたりの不良部分の占める割合が段階的に大きくなるので、検査精度を段階的に高くすることができる。したがって、検査対象や検査目的に応じて段階的に検査精度(検査回数)を調節することができる。
【0056】
・各分割テンプレート31a,31b同士は、これらの境界部分が必ずしも互いに重複している必要はない。
・各分割テンプレート31a,31b同士の重複部分の大きさを調節できるようにしてもよい。
【0057】
・分割テンプレートは、テンプレートを3つ、4つ、或いは5つ以上に分割したものであってもよい。この場合、分割の仕方は、左右に2分割したり十字状に4分割したりしてもよく、あるいは斜め方向に分割してもよい。
【0058】
・各分割テンプレートの大きさ(面積)が互いに異なるようにテンプレートを分割してもよい。この場合、テンプレートでの検査よりも各分割テンプレートでの検査の方が、検査の合格条件が厳しくなるように、各分割テンプレートのテンプレートに対する面積の縮小割合に応じて第2の閾値を該各分割テンプレート毎に設定することが好ましい。
【0059】
・第1の閾値及び第2の閾値は、必ずしも同じ値に設定する必要はない。
・検査対象画像は、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アルファベットなどの数字14以外の文字、あるいは図形、記号、絵などであってもよい。
【0060】
・印字状態検査装置11は、製造年月日以外の文字や図形の検査、ひいては印刷物全般の印字状態の検査に用いてもよい。
・上記実施形態では、マッチング処理部22、判定部23、排除処理部24、及び表示部26をCPUがプログラムを実行して構築されるソフトウェアにより実現したが、これらをICなどのハードウェアにより構成してもよい。さらに、これらをソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される構成にしてもよい。
【0061】
さらに、上記各実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記第2の閾値は、前記第1の閾値を前記基準パターンの分割数で除した値以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成状態検査方法。
【0062】
この構成によれば、分割基準パターンとの照合による検査対象画像の撮像パターンの検査条件が基準パターンとの照合による検査対象画像の撮像パターンの検査条件よりも厳しくなるので、対象物に形成された検査対象画像の画像形成状態の検査精度を確実に向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
11…画像形成状態検査装置としての印字状態検査装置、12…対象物としての飲料容器、14…検査対象画像としての数字、14A…撮像パターン、15…制御手段としての制御部、17…撮像手段としてのカメラ、21…コンピュータ、22…算出手段としてのマッチング処理部、23…判定手段としての判定部、30…基準パターンとしてのテンプレート、31a…分割基準パターンとしての上側分割テンプレート、31b…分割基準パターンとしての下側分割テンプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に形成された検査対象画像を撮像する撮像ステップと、
該撮像ステップで撮像された前記検査対象画像の撮像パターンを予め設定された基準パターンと照合して前記撮像パターンの前記基準パターンに対する第1の一致度を算出する第1算出ステップと、
該第1算出ステップで算出された前記第1の一致度が予め設定した第1の閾値以上であるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記第1の一致度が前記第1の閾値以上である場合に、前記撮像パターンを、前記基準パターンを複数に分割した分割基準パターンと、対応する部分においてそれぞれ照合して前記撮像パターンの前記各分割基準パターンに対する第2の一致度をそれぞれ算出する第2算出ステップと、
該第2算出ステップで算出された前記各第2の一致度が予め設定した第2の閾値以上であるか否かをそれぞれ判定する第2判定ステップと
を備えたことを特徴とする画像形成状態検査方法。
【請求項2】
前記第1の一致度が前記第1の閾値以上である場合には、該第1の一致度の値に基づいて前記第2算出ステップにおける前記基準パターンの分割数を設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成状態検査方法。
【請求項3】
前記基準パターンの分割数は、前記第1の一致度の値が大きいときよりも小さいときの方が多くなるように設定されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成状態検査方法。
【請求項4】
前記各分割基準パターン同士は、隣接する分割基準パターンとの境界部分が互いに重複していることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の画像形成状態検査方法。
【請求項5】
対象物に形成された検査対象画像を撮像する撮像手段と、
該撮像手段によって撮像された前記検査対象画像の撮像パターンを予め設定された基準パターンと照合して前記撮像パターンの前記基準パターンに対する第1の一致度を算出する算出手段と、
該算出手段によって算出された前記第1の一致度が予め設定した第1の閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記第1の一致度が前記第1の閾値以上である場合に、前記撮像パターンを、前記基準パターンを複数に分割した分割基準パターンと、対応する部分においてそれぞれ照合して前記撮像パターンの前記各分割基準パターンに対する第2の一致度を前記算出手段によってそれぞれ算出させ、該算出された前記各第2の一致度が予め設定した第2の閾値以上であるか否かを前記判定手段によってそれぞれ判定させる制御手段と
を備えたことを特徴とする画像形成状態検査装置。
【請求項6】
コンピュータに、
対象物に形成された検査対象画像を撮像手段によって撮像させる撮像手順と、
該撮像手順で撮像された前記検査対象画像の撮像パターンを予め設定された基準パターンと照合して前記撮像パターンの前記基準パターンに対する第1の一致度を算出手段によって算出させる第1算出手順と、
該第1算出手順で算出された前記第1の一致度が予め設定した第1の閾値以上であるか否かを判定手段によって判定させる第1判定手順と、
前記第1の一致度が前記第1の閾値以上である場合に、前記撮像パターンを、前記基準パターンを複数に分割した分割基準パターンと、対応する部分においてそれぞれ照合して前記撮像パターンの前記各分割基準パターンに対する第2の一致度をそれぞれ前記算出手段によって算出させる第2算出手順と、
該第2算出手順で算出された前記各第2の一致度が予め設定した第2の閾値以上であるか否かを前記判定手段によってそれぞれ判定させる第2判定手順と
を実行させるための画像形成状態検査用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−112398(P2011−112398A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266723(P2009−266723)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000128131)株式会社エヌテック (16)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【出願人】(593205831)東邦商事株式会社 (14)
【Fターム(参考)】