説明

画像形成装置、情報処理装置、画像形成システム、画像形成方法

【課題】消去済みトナーの再発色に起因する情報漏洩を軽減させる技術を提供する。
【解決手段】実施形態の画像形成装置は、印刷対象の情報を入力する入力部と、消去装置で消去することができないトナーで印刷する第1の印刷部と、消去装置で消去することができるトナーで印刷する第2の印刷部と、入力部によって入力される印刷対象の情報のうち、少なくとも予め記憶部に記憶されているキーワードは第1の印刷部で印刷するよう制御し、第1の印刷部で印刷されない情報は第2の印刷部で印刷するように制御する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、情報の漏洩防止の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消去不可能なトナーで印刷を行うユニットと、消去可能なトナーで印刷を行うユニットとを有する画像形成装置が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
消去可能なトナーは消去後であっても温度変化などによって消去済みトナーが再発色する場合がある。機密文書を消去可能なトナーで印刷した後に消去し、外部へ流出する場合、機密情報が再発色して視認可能な状態となり、機密情報が外部に流出するという問題がある。
【0004】
実施形態は上述した問題点を解決するためになされたものであり、消去済みトナーの再発色に起因する情報漏洩を軽減させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
画像形成装置は、印刷対象の情報を入力する入力部と、消去装置で消去することができないトナーで印刷する第1の印刷部と、消去装置で消去することができるトナーで印刷する第2の印刷部と、入力部によって入力される印刷対象の情報のうち、少なくとも予め記憶部に記憶されているキーワードは第1の印刷部で印刷するよう制御し、第1の印刷部で印刷されない情報は第2の印刷部で印刷するように制御する制御部とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】画像形成システムの構成を示す模式図である。
【図2】画像形成装置のブロック図である。
【図3】第1の実施形態の画像形成装置の動作例を示すフローチャートである。
【図4】図4(A)は、ウォーターマークの一例を示す図であり、図4(B)は、地紋印刷を説明する図である。
【図5】第1の実施形態の画像形成装置がページ記述言語を取得する場合の動作例を示すフローチャートである。
【図6】図6(A)は、ページ記述言語の一例を示す図であり、図6(B)は、ラスタ画像の一例を示す図である。
【図7】従来の問題点を示す図である。
【図8】第1の実施形態の画像形成装置を適用した運用例を示す図である。
【図9】第2の実施形態の画像形成装置の動作例を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態の原稿、第1の画像、第2の画像の一例を示す図である。
【図11】第2の実施形態の画像形成装置がページ記述言語を取得する場合の動作例を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態の画像形成装置の動作例を説明するための図である。
【図13】PCがキーワードを判定したときのPDLの一例を示す図である。
【図14】第2の実施形態のPCの、ウォーターマークを有するシートを使用した場合の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に説明する各実施形態では、原稿内に“社外秘”等のキーワードがあるか否かを判定する画像形成システムについて説明する。第1の実施形態では、キーワードが検知された場合、そのページの全面を消去不可能なトナーで印刷し、キーワードが検出されない場合、全面を消去可能なトナーで印刷する画像形成システムについて説明する。また第2の実施形態では、“社外秘”等のキーワードやその領域を消去不可能なトナーで印刷し、その他は消去可能なトナーで印刷する画像形成システムについて説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のシステム構成の一例を示す図である。画像形成システム500は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、FAXやEメールの送受信機能を有するMFP(Multifunction Peripheral)である画像形成装置100と、ユーザが使用する情報処理装置であるPC(Personal computer)200とを有する。画像形成装置100とPC200とはLAN(Local Area Network)300により接続されており、互いに通信可能である。
【0009】
画像形成装置100は、装置内のハードウェア機器を統括制御する制御ボード800を有する。制御ボード800は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの演算処理装置であるプロセッサ801を有し、揮発性の記憶装置であるRAM(Random Access Memory)、不揮発性の記憶装置であるROM(Read Only Memory)やHDD(Hard disk drive)を含むメモリ802を有する。また制御ボード800は、外部との通信を制御するNIC(Network Interface Card)803を有する。
【0010】
画像形成装置100は、ユーザからの指示を受付けるキーボード812、および制御内容を表示するとともにユーザからの指示を受付けるタッチパネルディスプレイ811を含むコントロールパネル810を有する。
【0011】
PC200のハードウェア構成は、現存のPCと同様であり、プロセッサ204、メモリ205、NIC206を有し、ユーザからの入力を受付けるキーボード202、マウス203、およびユーザに像を表示するモニター201を有する。NIC803とNIC206とがLAN300を介して互いに通信の制御を行っている。
【0012】
次に画像形成装置100の概略構成を図2に示す。画像形成装置100は、消去装置で消去可能なトナー、および消去装置で消去することができないトナーの2種類のトナーで印刷することができる。
【0013】
画像形成装置100は、LAN300を経由してPC200と接続し、またUSB(Universal Serial Bus)メモリと接続するI/F部10(I/F:Interface)、および原稿画像を読み取るスキャナ部11の2つの入力部を有する。また画像形成装置100は、ユーザが各種操作をするための表示操作部12、全体の制御を司る制御部13を有し、制御プログラムやデータなどを記憶する記憶部14を有する。また画像形成装置100は、I/F部10やスキャナ部11で取得される印刷対象のデータに対して、階調補正やエッジ検出処理等の様々な画像処理を施す画像処理部15を有する。画像処理部15はASIC(Application Specific Integrated Circuit)で実装される。
【0014】
画像形成装置100は、ユーザが使用している消去装置(ここでは消去装置400とする)で消去不可能なトナーでシートに像を形成する第1の印刷部16、消去装置400で消去可能なトナーでシートに像を形成する第2の印刷部17を有する。第1の印刷部16、第2の印刷部17は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナーで印刷する感光体ドラムをそれぞれが有し、これら感光体ドラムはシート搬送方向に個別に配置されている。
【0015】
尚、制御部13はプロセッサ801に対応し、記憶部14はメモリ802に対応する。また表示操作部12はコントロールパネル810に対応し、I/F部10はNIC803を含んだ構成となる。制御部13、メモリ802、I/F部10は制御ボード800に実装される。
【0016】
次に画像形成装置100の動作について説明する。以下の動作説明では、始めにスキャナ部11で原稿画像を読み取り当該画像データに対して処理する例を説明し、次にPC200からページ記述言語のデータを取得し、当該ページ記述言語に対して処理する例を説明する。
【0017】
まずスキャナ部11で原稿を読み取るときの画像形成装置100の動作例を図3のフローチャートに示す。以降に説明するフローチャートの制御部13での各処理は、制御部13が記憶部14に予め導入されているプログラムを演算実行し、また制御部13がデータを記憶部14に記憶させることで実現される。
【0018】
制御部13はスキャナ部11から読み取られた入力画像を入力する(ACT1)。制御部13は、入力画像に予め登録されているキーワードがあるか否かを判定する(ACT2)。
【0019】
ACT2での判定方法について説明する。まず、制御部13は、レイアウト解析を実行して文字列を抽出する。レイアウト解析技術としては公知の技術を利用可能である。次に制御部13は、原稿画像内のヘッダ、あるいはフッタにある文字列を抽出する。制御部13は、例えば原稿画像から抽出した文字列のうち、Y座標がある閾値以下または閾値以上のものに限定することでヘッダ、フッタとみなす。
【0020】
続いて、抽出した文字列に対して、制御部13はOCR(Optical Character Reader)の処理を実行して文字列を認識する。最後に、制御部13は認識した文字列が予め記憶部14に記憶されている登録済みの文字列と一致するかを判定し、一致する場合にはキーワード有りと判定する。
【0021】
また、キーワードとして記憶部14に画像パターン(例えば、企業のロゴ文字や印章など)が登録されている場合、制御部13は、パターンマッチング技術を用いることで入力画像上に予め登録済みの画像パターンがあるか否かを判定する(パターンマッチング技術としては公知の技術を利用することが可能である)。更には、制御部13が原稿上のバーコード(1次元バーコード、あるいは2次元バーコード)を読み取り、復号化した結果で得られる文字列からキーワードの有無を判定する実装でもよい。
【0022】
図3のフローチャートの説明に戻る。制御部13はACT2の判定でキーワードが無いと判定した場合(ACT3、No)、制御部13は処理対象の画像が消去装置400で消去可能となるように、第2の印刷部17で印刷するように制御する(ACT5)。また一方、キーワードがあると判定した場合(ACT3、Yes)、制御部13は処理対象の画像が消去装置400で消去不可能となるように、第1の印刷部16で印刷するように制御する(ACT4)。
【0023】
その後、給紙カセットからシートが転写部に供給され、シートには入力画像信号に従ってトナーが付着される。
【0024】
全ページ終了していなければ処理はACT1に戻る(ACT6、Noのループ)。
本実施形態では、第1の印刷部16、第2の印刷部17それぞれが各色の感光体ユニットを有する構成とするが、例えば第1の印刷部16、第2の印刷部17が1セット(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の感光体ドラムを共用する構成もある。この構成でのACT4、ACT5の制御方法としては、消去可能なトナーで印刷する場合、感光体ドラムには消去可能トナー用のトナーカートリッジからトナーが供給される。また消去不可能なトナーで印刷する場合、感光ドラムには消去不可能なトナーが格納されているカートリッジからトナーが供給される。
【0025】
なお、上記では制御部13がキーワードの有無を判定するとして説明した。しかし制御部13に限らず画像処理部15がキーワード判定を行うことも可能である。
【0026】
また、検知対象はキーワードに限らず、印章などのマーク、1次元バーコード、QRコードに代表される2次元コードでも適用可能である。また図4(A)に示すような透かしや背景模様等のウォーターマーク、図4(B)に示すように、コピーやスキャンを行った後の印刷物に浮かび上がる地紋印刷にも適用可能である。
【0027】
また、上記では1ページ毎にキーワードの有無を判定し、消去不可能なトナーと消去可能なトナーのいずれで印刷するかを1ページ毎に制御している。しかし、任意のページでキーワードがあった場合にはそれ以降の全ページを消去不可能なトナーで印刷するという例も考えられる。あるいは、全ページの入力画像を記憶部14に蓄えておき、いずれか1ページでもキーワードがあると判定される場合には全ページを消去不可能なトナーで印刷し、キーワードが無ければ全ページを消去可能なトナーで印刷するという実装も考えられる。
【0028】
次に、PC200が印刷対象の画像データをページ記述言語(以下、PDLと称する)に変換し、このPDLに基づき印刷する例について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0029】
制御部13がI/F部10を通して、PC200のプリンタドライバで生成されたPDLを入力する(ACT11)。次に制御部13は、記憶部14に記憶されているフラグデータ(以下、単にフラグと称す)を0でクリアする(ACT12)。このフラグは処理対象のページ(1ページ)の中に、特定のキーワードが有るか否かを示す情報である。
【0030】
制御部13がRIP処理を実行しPDL内の描画コマンドを解釈する(ACT13)。ここでPDLの例を図6(A)に示す。本実施形態のPDLは、「2in1印刷」、「両面印刷」等の印刷対象全体に係る情報が定義されたメタデータ、および個々の描画コマンドの情報が定義された描画部の2つのパートに分かれている。描画コマンドは1つのオブジェクトごとに用意されており、配置や大きさや色等、各オブジェクトを印刷する際の定義情報が含まれている。描画コマンドとして、文字列について文字コマンド、図形についての図形コマンド、画像についてのイメージコマンドの3種のコマンドが設定される。ACT13では次の順で行われる。
・PDL内の描画コマンドを、1コマンドごとに取得する。
・取得した描画コマンド内の区切り文字(本例では”/”文字)で区切られた各プロパティを取得する。当該オブジェクトが「円形」、「長方形」等の図形コマンドやイメージコマンド(コマンド先頭文字列が「画像」)である場合は、色、大きさ等のプロパティが取得され、文字コマンドである場合はその文字列のコード、フォントサイズ、色、フォント種別等のプロパティが取得される。
【0031】
次に制御部13は、フラグが設定されているか否か(フラグが0以外の値か否か)を判定する(ACT14)。フラグが設定されている場合(ACT14、Yes)、処理はACT18までスキップする。
【0032】
フラグが設定されていない場合(ACT14、No)、制御部13は、当該描画コマンド内に特定のキーワードが有るか否かを判定する(ACT15)。
【0033】
ACT15の処理について説明する。描画コマンドが文字コマンドである場合、制御部13は文字コマンドを解釈した後にプロパティ内の文字列コードを取得し、当該文字列が登録済みのキーワードであるか否かを判定する。また描画コマンドが図形コマンド、イメージコマンドである場合、制御部13は一旦プロパティに基づき当該図形やイメージ画像を作成し、上記同様に画像パターンとのパターンマッチングを実施する。
【0034】
キーワードが無い場合(ACT16、No)、処理はACT18へ進み、キーワードがある場合(ACT16、Yes)、制御部13はフラグを設定する(0以外の値にセットする)。
【0035】
次に制御部13は、描画コマンドに従いレンダリング処理を実行しラスタ画像を描画する(ACT18)。図6(B)にACT18で作成されるラスタ画像の一例を示す。
【0036】
制御部13は、各描画コマンドそれぞれをラスタ画像に描画し、ページ内の全描画コマンドの解釈が終了したかの判定を行う(ACT19)。ページ内の全ての描画コマンドについて処理が完了していない場合(ACT19、No)、処理はACT13に戻り、処理が完了している場合(ACT19、Yes)、制御部13は、次にフラグが設定されているかの判定を行う(ACT20)。
【0037】
フラグが設定されている場合(ACT20、Yes)、本ページは指定キーワードを含むため、制御部13は、全面を消去不可トナーで印刷するように、すなわち第1の印刷部で印刷されるように制御する。反対にフラグが設定されていない場合(ACT20、No)、指定キーワードが含まれないため、制御部13は、全面を消去可能トナーで印刷するように、すなわち第2の印刷部で印刷されるように制御する(ACT22)。この制御方法は上記のACT4、ACT5と同様である。
【0038】
全ページの処理が終了していない場合(ACT23、No)、処理はACT12に戻り次のページの処理が続行される。
【0039】
なお、本例では毎ページの処理開始時にフラグをクリアしている。しかし、フラグをクリアしないことで(すなわちACT23がNoの場合、ACT13に戻るように処理)、任意のページでキーワードが現れた場合にはそれ以降のページ全てを消去不可能トナーで印刷することも可能である。また、ラスタ画像を一旦記憶装置に蓄えておき、全ページのキーワード有無の判定が終了してから印刷することで、全ページを消去不可トナーもしくは消去可能トナーで印刷することも可能である。すなわち、キーワードがある場合は全ページが第1の印刷部16で印刷され、キーワードが無い場合は全ページが第2の印刷部17で印刷される。
【0040】
ここで、従来の態様と第1の実施形態の態様とを比較する。図7は従来の問題点を示しており、機密情報が含まれる原稿を消去装置400で消去可能なトナーで印刷(またはコピー)し、印刷したシートを、再利用を目的として消去装置400で消去する状況について示す図である。消去直後ではシートには像が形成されていない。このシートが他の用途で再使用される際、外部に渡る場合もある。外部に渡った場合において、その後低温環境等の状況下に置かれると、消去したトナーが再発現し機密情報が外部へ流出する可能性がある。
【0041】
図8(A)は、画像形成装置100を用いて機密情報を印刷する場合の態様を示す図である。画像形成装置100は、機密情報については消去装置400で消去不可能なトナーを用いて印刷するため、ユーザが消去装置400で消去を試みても、印刷内容が消去されない。よって、ユーザは当該シートには機密情報が記されていることを視認できるため、外部への機密情報の流出を防止することができる。
【0042】
一方、図8(B)のように機密情報を含まないシートについては、消去装置400で消去可能なトナーが用いられるため、消去装置400により印刷内容が消去され、再使用が可能となる。
【0043】
本実施形態の構成によって、機密情報が存在する電子データをプリントする際には、消去不可トナーで全面が印刷される。更に、PDLを用いた例は、文字認識処理(OCR処理)ではなくコマンドの解析によりキーワードの有無を判定することができるため、誤判定の危険性が小さい。これにより、ユーザの不注意で機密情報が記録されたシートが外部に流出され機密情報が漏えいするリスクを軽減することが可能となる。
【0044】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、キーワードやキーワードを含む領域のみを消去不可能なトナーを用いて印刷し、キーワード以外やキーワードを含む領域以外は消去可能なトナーを用いて印刷する実装について説明する。尚、画像形成システムの構成、PCおよび画像形成装置の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
【0045】
第2の実施形態における画像形成装置100の動作例を説明する。以下の動作説明でも第1の実施形態と同様に、まずスキャナ部11で原稿画像を読み取り、当該画像データに対して処理する例を説明し、次にPC200からPDLを取得し、当該PDLに対して処理する例を説明する。
【0046】
図9は、第2の実施形態における画像形成装置100のスキャナ部11で原稿画像を読み取る場合の動作例を示すフローチャートである。
【0047】
制御部13は、スキャナ部11から読み取られた入力画像を入力し(ACT31)、入力画像を複製して第2の画像を作成する(ACT32)。制御部13は、入力画像にレイアウト解析を実行して、入力画像のヘッダ部、フッタ部から文字や図形、画像を切り出し、部分画像を作成する(ACT33)。レイアウト解析技術としては公知の技術を利用可能である。
【0048】
制御部13は、各部分画像が予め登録されているキーワードであるか否かを判定する(ACT34)。ACT34の判定方法の詳細は下の通りとなる。
【0049】
部分画像が文字画像である場合、制御部13はOCR処理を実行し文字列を認識する。認識した文字列が予め記憶部14に記憶されている文字列と一致する場合、制御部13はキーワードと判定する。またキーワードとして画像パターン(例えば、企業のロゴ文字や印章など)を登録している場合には、制御部13は、パターンマッチング技術を用いることで、入力画像上に予め登録済みの画像パターンがあるか否かを判定する(パターンマッチング技術としては公知の技術を利用することが可能である)。
【0050】
更には、第1の実施形態と同様に原稿上のバーコード(1次元バーコード、あるいは2次元バーコード)を読み取り復号化した結果、得られた文字列からキーワードの有無を判定することも考えられる。
【0051】
ここでキーワードと判定された部分画像に対して、次のACT35、ACT36の処理が実行される。
【0052】
制御部13は、部分画像を入力画像で配置されていたのと同じ位置、同じ大きさ(幅・高さ)で第1の画像に配置する(ACT35)。尚、第1の画像は初期状態では何も描かれていない画像データである。制御部13は、第2の画像の、当該部分画像が配置されていた位置を白く塗りつぶす(ACT36)。
【0053】
全ての部分画像に対してACT32〜ACT36の処理が繰り返し実行される(ACT37、Noのループ)。
【0054】
このようにして作成された第1の画像、第2の画像の一例を図10に示す。原画像上の例えば”社外秘”等のキーワードを含む領域は、第1の画像上に描かれる。一方第2の画像上では、キーワードの領域以外の部分画像が描画され、キーワードを含んだ領域については白く塗りつぶされる。
【0055】
次に制御部13は、第1の画像を第1の印刷部16で印刷するように制御し(ACT38)、第2の画像を第2の印刷部17で印刷するように制御する(ACT39)。このようにすることで、キーワードを含む第1の画像は消去不可能なトナーで印刷され、キーワードを含まない第2の画像は消去可能なトナーで印刷される。
【0056】
感光体ドラムが1セットのみ(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)である場合の具体的な制御方法を以下に記す。以下の動作は制御部13による制御に基づき行われる。
1.感光体ドラムに消去不可能トナー用のトナーカートリッジから消去不可能なトナーを供給する。
2.給紙カセットからシートを転写部に供給し、シートには第1の画像に従って消去不可能なトナーが付着される。
3.消去不可能なトナーが付着したシートは、現時点では排出されず、感光ドラムに消去可能なトナーが供給される。
4.当該シートに前記第2の画像に従って消去可能なトナーが付着される。
5,消去不可能、消去可能なトナーが付着したシートが排出される。
ACT32〜ACT39までの処理が、全ページの印刷が完了するまで実行される(ACT40、Noのループ)。
【0057】
このような構成をとることにより、第1の実施形態と同様に、消去可能なインクでコピーされた機密文書がユーザの不注意で外部に漏えいする危険を軽減することができる。更に、機密レベル(たとえば、「社外秘」、「部門外秘」等)を示すキーワード以外は消去されるので、同じ機密レベルの文書を印刷するのであればそのシートをリサイクルして再利用することが可能となる。
【0058】
次に画像形成装置100がPC200からPDLを取得し、取得したPDLに対して印刷制御する動作例を図11のフローチャートに示す。
【0059】
制御部13は、I/F部10を通して、PC200のプリンタドライバで生成されたページ記述言語(PDL)を入力する(ACT51)。
【0060】
制御部13は、RIP処理を実行しPDL内の描画コマンドを解釈し(ACT52)、それぞれを消去非対象の第1の画像(ラスタ画像)と消去対象の第2の画像(ラスタ画像)のいずれかに描画する(ACT53〜ACT56)。
【0061】
ACT53からACT56まで処理については、図12も参照しつつ説明する。図12は、各処理で生成される原画像データ、PDL、第1の画像、第2の画像の一例を示す図である。
【0062】
描画コマンドが文字コマンドである場合、制御部13は文字コマンドを解釈して文字コードを調べ、登録済みのキーワードであるか否かを判定する(ACT53)。登録済みキーワードであれば(ACT54、Yes)、制御部13は当該文字コードを第1の画像に描画し(ACT55)、キーワードで無ければ(ACT54、No)、第2の画像に描画する(ACT56)。
【0063】
図形コマンド、イメージコマンドについては、第1の実施形態と同様に、画像パターンとのパターンマッチングを実施することでキーワードか否かを判定する(ACT53)。対象の描画コマンドが登録済みの画像パターンを示していると判定される場合(ACT54、Yes)、制御部13は、その描画コマンドを解釈した結果の画像を、消去非対象である第1の画像に描画し(ACT55)、異なる場合(ACT54、No)、制御部13は消去対象である第2の画像に描画する(ACT56)。
【0064】
ただし、従来技術では同じ画素に重ね描きされる場合には、先に描画されている画像は消えて後から描画される画像のみ描画される。しかし、画像形成装置で従来技術と同様にオブジェクトを重ね合わせた場合、印刷後の画像を消去すると“社外秘”、“機密”など重要なキーワードが読めなくなる可能性がある。そこで、先に消去対象である第2の画像と同じ画素位置に消去非対象の第1の画像が描画された場合に限り、第2の画像上の画素を白画素で置き換える。反対に第1の画像上の画素を白画素に置き換えることはしない。これにより、シート上の同じ位置に消去不可能なトナーと消去可能なトナーが打たれる機会を減らしつつ、重要なキーワードは確実に消去不可能なトナーで印刷されるようにする。
【0065】
同一ページ内の全ての描画コマンドについて、上記処理が繰り返し実行される(ACT57、Noのループ)。
【0066】
制御部13は、第1の画像を消去不可能なトナーで印刷し(ACT58)、第2の画像を消去可能なトナーで印刷するように制御する(ACT59)。すなわち制御部13は、第1の印刷部16が第1の画像を印刷するように制御し、第2の印刷部17が第2の画像を印刷するように制御する。ここでの制御方法が上記の通りである。
【0067】
現在処理しているページが最終ページでなければACT52に戻る(ACT60、Noのループ)。
【0068】
なお、上記例においては画像形成装置100の制御部13がRIPとして、PDLの各描画コマンドを解釈し描画する際に描画されている文字や画像を消去不可能なトナーで印刷すべきか、消去可能なトナーで印刷すべきかを判定した。しかし、この判定はPC200のプロセッサ204がプリンタドライバのプログラムを演算実行することでも実現可能である。すなわちPC200のプロセッサ(プリンタドライバ)がアプリケーションから出力される電子画像データ(GDI)をもとに、PDLを生成する際に、GDI内のフォントデータを解釈し、メモリ205に予め記憶されているキーワードであるか否かを判定し、消去可能なトナーと不可能なトナーのどちらを使用するかを示すシンボルを埋め込んだPDLを生成する。
【0069】
PC200の一連の動作を説明する。PC200のプロセッサ204は、各アプリケーションで作成される電子データ内のオブジェクトを取得する。当該オブジェクトは、文字列情報の場合は文字列のフォントデータ、画像データや図形データである場合は、ラスタ画像である。またプロセッサ204は、メモリ205から事前に記憶されている1つまたは複数のキーワードを取得し、オブジェクトがキーワードであるか否かの判定を行う。文字列の場合はコードが一致またはコードを含んでいるかの判定、画像、図形データの場合は上述のようにパターンマッチング処理を用いた判定となる。当該オブジェクトがキーワードである場合は、例えば「消去不可能トナー」のシンボルを付与して描画コマンドを作成する。一方、キーワードで無い場合、プロセッサ204は例えば「消去可能トナー」のシンボルを付与して描画コマンドを作成する。プロセッサ204は、このように作成したPDLを画像形成装置100に印刷対象の情報として送信する。
【0070】
PC200が作成するPDLの例を図13に示す。図13のPDLは図12で示す原稿データからPC200で変換されるPDLである。画像形成装置100の制御部13は、各描画コマンド内に含まれるシンボルを取得することで、いずれのトナーで印刷するかを制御する。すなわち、制御部13は、「消去不可能トナー」のシンボルを含む描画オブジェクトについては第1の画像に描画して第1の印刷部16で印刷されるように制御し、「消去可能トナー」のシンボルを含む描画オブジェクトについては第2の画像に描画して第2の印刷部17で印刷されるように制御する。
【0071】
また、原稿内のキーワードのみを判定するのではなく、例えば、“極秘”“社外秘”などのウォーターマークを有する特定のシートが選択されたか否か、あるいは地紋印刷などの特定モードが選択されたか否かをPC200のプロセッサ204が判定することで、消去可能なトナーと消去不可能なトナーのいずれで印刷するかを画像形成装置100の制御部13が制御する実装も考えられる。図14を参照しつつ説明する。PC200のプロセッサ204は、アプリケーションが出力する電子データ(GDI)のオブジェクト(図14の原稿)には、消去可能なトナーを指定するシンボルを付加し、PC200(プリンタドライバ)に予め登録されているウォーターマークや地紋などを印刷するためのオブジェクトには、消去不可能なトナーを指定するシンボルを付加する。
【0072】
尚、第1の印刷部16、第2の印刷部17の印刷順については、これに限定されるものではない。
【0073】
また、上記では1ページ毎にキーワードの有無を判定し、消去不可能なトナーと消去可能なトナーのいずれで印字するかを制御していた。しかし、例えばあるページでキーワードがあった場合にはそのページの消去非対象の第1の画像を記憶部14に記憶しておき、それ以降でキーワードが無い場合、すなわち以降のページでは第1の画像が全面白画像のページである場合、記憶しておいた第1の画像を以降のページの第1の画像として扱い、消去不可能なトナーで印刷するという例も考えられる。このような実装をすることで、キーワードがあったページ以降のページにも消去不可能なトナーでキーワードが印刷される。
【0074】
あるいは、全ページの第1の画像と第2の画像とを記憶部14に蓄えておき、いずれか1ページでもキーワードがあると判定された場合には、キーワードが無く第1の画像が全面白画像であるページに対し、キーワードがあったページの第1の画像を消去不可能なトナーで印刷するという例も考えられる。このような実装をすることで、キーワードがあるジョブについては、全ページ消去不可能なトナーでキーワードが印刷される。
【0075】
本実施形態の構成をとることにより、第1の実施形態と同様にユーザの不注意で情報が漏えいすることを軽減することができる。更に、機密レベル(たとえば「社外秘」、「部門外秘」)を示すキーワード以外は消去されるので、同じ機密レベルの文書を印刷するのであればそのシートをリサイクルして再利用することが可能となる。
【0076】
更に、PDLを用いる場合、画像形成装置100がいずれの印刷部で印刷するかを判断せずに、指定済みのシンボルにより印刷を制御することが可能であるので、誤識別のリスクを軽減することが可能である。
【0077】
第1、第2の各実施形態でのトナーは、複合機、ファクシミリ、複写機、プリンタ等でハードコピーを得るためのトナーはもちろん、印刷用インク、印刷リボン、インクジェットインク等の記録、表示材料をも含む。
【0078】
以上に詳述したように、この明細書に記載の技術によれば、機密情報のキーワードは消去不可トナーで印刷されるため、機密情報が印刷されていたことにユーザが気づかずに情報漏洩させる過ちを軽減させることが可能である。
【0079】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0080】
10 I/F部、11 スキャナ部、12 表示操作部、13 制御部、14 記憶部、15 画像処理部、16 第1の印刷部、17 第2の印刷部、100 画像形成装置、200 PC、300 LAN、400 消去装置、500 画像形成システム、800 制御ボード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の情報を入力する入力部と、
消去装置で消去することができないトナーで印刷する第1の印刷部と、
前記消去装置で消去することができるトナーで印刷する第2の印刷部と、
前記入力部によって入力される印刷対象の情報のうち、少なくとも予め記憶部に記憶されているキーワードは第1の印刷部で印刷するよう制御し、前記第1の印刷部で印刷されない情報は前記第2の印刷部で印刷するように制御する制御部と
を有する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記入力部は、印刷対象の情報として画像情報を入力し、
前記制御部は、予め記憶部に記憶されているキーワードが前記画像情報の中に存在するか否かを判定し、キーワードが存在する場合、前記画像情報が前記第1の印刷部で印刷されるように制御し、キーワードが存在しない場合、前記画像情報が前記第2の印刷部で印刷されるように制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
1つまたは複数のキーワードが記憶された記憶部と、
前記記憶部からキーワードを取得し、印刷対象の電子画像データ内のオブジェクトが前記キーワードを含むオブジェクトであるか否かを、オブジェクトごとに判定し、キーワードを含むオブジェクトである場合、消去不可能なトナーで印刷することを示すシンボルを前記オブジェクトの描画コマンドに付加して、前記印刷対象の電子画像データのページ記述言語を作成する制御部と
を有する情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、キーワードを含むオブジェクトでないと判定する場合、前記シンボルとは異なる、消去可能なトナーで印刷することを示すシンボルを前記オブジェクトの描画コマンドに付加して、前記印刷対象の電子画像データのページ記述言語を作成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
印刷対象の情報を作成し、該印刷対象の情報を送信する情報処理装置と、
前記印刷対象の情報を受信し、該印刷対象の情報のうち、少なくとも予め記憶部に記憶されているキーワードを、消去することができないトナーで印刷する第1の印刷部を用いて印刷し、前記第1の印刷部で印刷されない情報を、消去することができるトナーで印刷する第2の印刷部を用いて印刷する画像形成装置と、
を有する画像形成システム。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成システムにおいて、
前記情報処理装置は、印刷対象の情報として画像情報を作成して送信し、
前記画像形成装置は、前記画像情報を受信し、予め記憶部に記憶されているキーワードが前記画像情報中に存在するか否かを判定し、キーワードが存在する場合、前記画像情報を前記第1の印刷部を用いて印刷し、キーワードが存在しない場合、前記画像情報を前記第2の印刷部を用いて印刷することを特徴とする画像形成システム。
【請求項7】
印刷対象の情報を入力し、
前記入力される印刷対象の情報のうち、少なくとも予め記憶部に記憶されているキーワードは、消去装置で消去することができないトナーで印刷する第1の印刷部で印刷し、
前記第1の印刷部で印刷されない情報は、前記消去装置で消去することができるトナーで印刷する第2の印刷部で印刷する、
画像形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成方法において、
印刷対象の情報として画像情報を入力し、
予め記憶部に記憶されているキーワードが前記画像情報の中に存在するか否かを判定し、
キーワードが存在する場合、前記画像情報が前記第1の印刷部で印刷され、
キーワードが存在しない場合、前記画像情報が前記第2の印刷部で印刷されることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−37885(P2012−37885A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171015(P2011−171015)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】