説明

画像形成装置、画像漏洩防止方法及び画像漏洩防止制御プログラム

【課題】電源遮断時の情報漏洩の発生を防止し、画像データの機密性を確保する。
【解決手段】用紙に画像を形成するための感光体ベルト及び中間転写ベルトを含む作像ユニット及びプロセスコントローラと、感光体ベルト及び中間転写ベルトに形成された像をクリーニングする感光体クリーニングユニット及び中間転写ベルトクリーニングユニットと、所定の記憶領域に画像データ及びジョブファイルを記憶するメモリと、前記記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを前記記憶領域から削除する削除手段と、を備えた画像形成装置において、電源遮断時(ステップS1)、削除手段によって画像データ及びジョブファイルを記憶領域から削除する(ステップS2a)とともに、両クリーニングユニットによって感光体ベルト及び中間転写ベルトに形成された像をクリーニングする(ステップS2b,S2c)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像漏洩防止方法及び画像漏洩防止制御プログラムに係り、特に、機密漏洩防止を考慮した電子写真方式の画像形成装置、この画像形成装置における画像漏洩防止方法及び画像漏洩防止制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像出力処理中、画像処理装置の電源が落とされた場合等に、画像データやジョブファイルを、記憶領域(ハードディスクなど)から削除することにより、機密性を確保する技術として、例えば、特許文献1あるいは2に開示された既に知られている。このうち、特許文献1(特開2006‐139381号公報)には、電源遮断等の状況においても印刷データの機密性を保持することのできるようにするため、画像処理装置において、前記ジョブ情報を記憶する記憶手段と、前記ジョブ情報を前記記憶手段より消去することの要否を示す消去情報を、電源遮断時においても保持する保持手段と、前記ジョブ情報に基づいて画像処理を実行する制御手段と、所定の条件において、前記消去情報に従って、前記記憶手段に記憶されたジョブ情報を消去する消去手段とを備えた発明が開示されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2006−174238号公報)には、処理時間を短縮させつつ画像データ記憶手段内の画像データのセキュリティ性を向上させるため、 前記ジョブ情報を記憶する記憶手段と、前記ジョブ情報を前記記憶手段より消去することの要否を示す消去情報を、電源遮断時においても保持する保持手段と、前記ジョブ情報に基づいて画像処理を実行する制御手段と、所定の条件において、前記消去情報に従って、前記記憶手段に記憶されたジョブ情報を消去する消去手段とを備え、取得した画像データを一旦画像データ記憶手段に格納し、当該画像データを記録出力に適したデータ形式に変換して当該記録形式画像データに基づいて画像形成部で用紙に画像を記録出力した後、当該画像データ記憶手段の画像データを消去する画像形成装置において、前記取得した画像データをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの版毎に前記データ記憶手段に格納し、当該各色の版の画像データを前記記録形式画像データに変換して前記画像形成部で用紙に記録出力し、当該記録出力の完了した前記データ記憶手段の各色の版の画像データのうち少なくともいずれか1色の版の画像データのみを消去するデータ機密処理を実行するようにした発明が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び2記載の発明では、電源遮断時、処理中のジョブは感光体ドラムに静電像やトナー像が形成され、また、転写ベルトにトナー像が形成されたら、記憶領域に保持している画像データ、ジョブファイルのみ消去しても、感光体ドラムや転写ベルトに像が残っているので、情報漏洩が発生してしまう虞がある。 そこで、本発明が解決しようとする課題は、電源遮断時の情報漏洩の発生を防止し、画像データの機密性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、第1の手段は、記録媒体に画像を形成するための像担持体を含む作像手段と、前記像担持体上に形成された像をクリーニングするクリーニング手段と、所定の記憶領域に画像データ及びジョブファイルを記憶する記憶手段と、前記記憶手段の所定の記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを前記記憶領域から削除する削除手段と、を備えた画像形成装置であって、電源遮断時、前記削除手段によって画像データ及びジョブファイルを前記記憶領域から削除するとともに、前記クリーニング手段によって前記像担持体上に形成された像をクリーニングすることを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、第1の手段において、機密確保処理を優先にするか、電源遮断時間短縮を優先にするかを予め選択する優先処理選択手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第1の手段において、電源遮断時に、電源遮断操作しているユーザが機密確保処理を実行するかどうかを選択する機密確保処理実行選択手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第1の手段において、印刷ジョブに複数の機密性レベルを設定する機密レベル設定手段と、電源遮断時に、前記設定された機密性レベルと対応させて機密確保処理を行うかどうかを設定する処理実行設定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第1ないし第4のいずれかの手段において、前記電源遮断時、前記クリーニング手段によって前記像担持体上に形成された像をクリーニングするか否かを選択するクリーニング選択手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第5の手段において、前記選択手段は、前記像坦持体に像がある場合のみ、前記クリーニング手段による前記像坦持体のクリーニングを選択することを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第5の手段において、前記像坦持体が感光体又は当該感光体上の画像が転写される転写媒体であることを特徴とする。
【0012】
第8の手段は、記録媒体に画像を形成するための像担持体を含む作像手段と、前記像担持体上に形成された像をクリーニングするクリーニング手段と、所定の記憶領域に画像データ及びジョブファイルを記憶する記憶手段と、前記記憶手段の所定の記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを前記記憶領域から削除する削除手段と、を備えた画像形成装置における画像漏洩防止方法であって、電源遮断時、前記削除手段によって前記所定の記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを削除する工程と、前記クリーニング手段によって前記像担持体上に形成された像をクリーニングする工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
第9の手段は、コンピュータに対して画像形成装置の電源遮断時に画像の漏洩を防止させるための画像漏洩防止制御プログラムであって、電源が遮断されたとき、記憶手段の所定の記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを削除する手順と、電源が遮断される前に像担持体上に形成された像をクリーニングする手順と、を含むことを特徴とする。
【0014】
なお、後述の実施形態では、記録媒体は用紙に、像坦持体は感光体ベルト217及び中間転写ベルト218に、作像手段は作像ユニット6及びプロセスコントローラ7に、クリーニング手段は感光体クリーニングユニット209及び中間転写ベルトクリーニングユニット201に、記憶手段は図示しないメモリに、記憶領域は符号8に、削除手段は判断制御部9及び図示しないメモリコントローラに、画像形成装置は符号100に、優先処理選択手段(例1)、機密確保処理実行選択手段(例2)及び処理実行設定手段(例3)はステップS3に、クリーニング選択手段はステップS4に、感光体は感光体ベルト217に、転写媒体は中間転写ベルト218に、それぞれ対応し、前記削除手段による削除と前記クリーニング手段によるクリーニングは判断制御部9の判断に基づいて図示しないメイン制御部が実行する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電源遮断時の情報漏洩の発生を防止し、画像データの機密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】電源遮断時、機密性確保するための基本制御の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】図3のようにして処理する際、事前に機密性確保処理を実行するかどうかを判断するようにした例を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS3の判断処理における表示パネルに表示されるメッセージと選択画面の表示例を示す図である。
【図6】感光体ベルトのクリーニングと中間転写ベルトのクリーニングを実施するかどうかを判断して電源遮断処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】感光体ベルトや中間転写ベルトに画像があるかどうかを判断し、その結果に基づいて感光体ベルト及び中間転写ベルトのクリーニングを実施する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、画像データ出力処理中、画像形成装置の電源遮断時に、記憶領域に記録された機密性の高い画像データを削除するとともに、感光体ドラム、転写ベルトをクリーニングし、感光体ドラムと転写ベルトに像(静電像、トナー像「転写ベルトのみ」)が残ることがないようにしたものである。これにより、機密性の高い機密性高い画像データの漏洩を防ぐことができる。
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を概略的に示す図である。本実施形態に係る画像形成装置は、画像形成部100、画像読み取り部101、画像書き込み部102、及び給紙部103から基本的に構成されている。
【0020】
画像形成部100は、中央部に感光体ベルト217が配置され、この感光体ベルト217の外周に沿って帯電ユニット211、書き込みユニット214、現像ユニット216、中間転写ベルト206、及び感光体クリーニングユニット209が、無端状の感光体ベルト217の回転方向に沿ってこの順で配置されている。感光体ベルト217は1次転写を行う部分で無端状の中間転写ベルト206と接し、感光体ベルト217に対して中間転写ベルト206の背面側に当たる部分に1次転写ユニット220が設けられている。感光体ベルト217と中間転写ベルト206が接する1次転写部と帯電ユニット211の間には、感光体ベルト216の回転方向上流側から感光体クリーニングユニット209と感光体廃トナーボトル210が配置され、帯電ユニット211と現像ユニット216の間に書き込みユニット214からの出ら出射されたレーザ光の書き込み部が設定されている。現像ユニット216は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色それぞれ独立して設けられ、色毎のトナーカートリッジ215を備えている。
【0021】
中間転写ベルト206の内側には、1次転写ユニット220と中間転写廃トナーボトル208が配置され、外周部には、給紙搬送路230を挟んで中間転写ベルト206と接するように2次転写ユニット207が設けられ、中間転写ベルト206の回転方向下流側の1次転写部との間に中間転写ベルトクリーニングユニット201が配置されている。
【0022】
画像読み取り部101は、所謂光学的読み取りを行うスキャナユニット203を含み、画像形成部100の上面に設置され、コンタクトガラス203a上に置かれた原稿画像をスキャナによって読み取り、デジタルデータに変換して画像形成部100の画像処理部2に送る(図2参照)。
【0023】
画像書き込み部102は、色毎に設けられた4個の光源から出射されたレーザ光をポリゴンミラーと結像光学系を使用して感光体ベルト217に書き込むものである。このようなポリゴン走査系に代えて、レーザダイオードアレイによってライン上に書き込むようにすることできる。
【0024】
給紙部103は第1及び第2の給紙トレイ212,213、給紙ユニット212a,213a、垂直搬送路221を備え、垂直搬送路221の前記2次転写部の下流側には定着ユニット205が配置され、定着ユニット205の下流側には排紙ユニット204が設けられている。排紙ユニット204の最後段の排紙ローラの下流は、排紙トレイ219となっている。
【0025】
なお、本実施形態では、感光体ベルト217と中間転写ベルト218を使用したタンデム型の間接転写方式のカラー画像形成装置(カラー複写機)を例示しているが、像坦持体として感光体ドラムでも転写ドラムでも良く、モノクロ画像を形成するものであれば、感光体ベルト若しくは感光体ドラムのみでも良いので、画像形成装置の形式を限定するものではなく、像坦持体を有し、当該像坦持体上に形成された画像を他の媒体に転写する方式のもの全てに適用可能である。
【0026】
大略図1のように構成された画像形成装置では、図示しない操作部によりコピー開始の指示がされると、スキャナユニット203により原稿の読み取りが行われる。読み取られた画像データは各色毎に順番に、書き込みユニット214により感光体ベルト217に書き込まれる。感光体ベル217は帯電ユニット211によって予め均一に帯電されている。書き込みユニット214内のLDユニットから照射されたレーザ光は、感光体ベルト217を照射することにより感光体ベルト217上に各色毎の静電潜像が形成される。感光体ベルト217上に形成された静電潜像は、その色に対応する現像ユニット216により現像され、感光体ベルト217上でトナー像が形成される。
【0027】
感光体ベルト217上に形成されたトナー像は、中間転写ベルトユニット206の中間転写ベルト218上に転写され、中間転写ベルト218に転写したトナー像は更に第1給紙トレイ212又は第2給紙トレイ213から給紙された用紙上に2次転写ユニット207を用いて転写される。用紙上に転写されたトナー像は定着ユニット205により熱定着されて用紙上に固定される。そして、定着ユニット205によってトナー像が熱定着された用紙は排紙ユニット204によって排紙トレイ219上に排紙され、コピー像を用紙上に得ることができる。
【0028】
感光体ベルト217及び中間転写ベルト218に転写されずに残ったトナーは、感光体クリーニングユニット209あるいは中間転写ベルトクリーニングユニット201によりクリーニングされ、それぞれ感光体廃トナーボトル210及び中間転写廃トナーボトル208に廃トナーとして蓄積される。また、定着ユニット205では定着後の用紙の分離性を良くするために、定着ユニット塗布ユニット202により少量のシリコンオイルが塗布される。
【0029】
図2は本実施形態に係る画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。画像形成装置100の制御構成は、画像処理部2、操作ボード3、電源遮断受付部4、書き込みインタフェース5、作像ユニット6、プロセスコントローラ7、記憶領域8、判断制御部9、記録媒体トレイ10、保存部12を含み、LAN15に対して画像処理部2、電源遮断受付部4、及び保存部12が接続されている。また、シリアルバス14に画像処理部2,書き込みインタフェース5、作像ユニット6、プロセスコントローラ7、記憶領域8、判断制御部9及び記録媒体トレイ10が接続されている。
【0030】
更に、画像処理部2と書き込みインタフェース5、書き込みインタフェース5と作像ユニット6、電源遮断受付部4と判断制御部9、電源遮断受付部4と操作ボード3が相互に通信可能に接続され、更に、操作ボード3は保存部12に対して通信可能に接続され、また、画像処理部2には画像読み取り部101で読み取った画像データが入力され、画像処理部2はこの画像情報を処理し、この処理された画像データに基づいて作像ユニット6によって可視画像が用紙上に形成される。
【0031】
LAN15はパーソナルコンピュータ1と接続され、パーソナルコンピュータ1からの指示情報と画像データを受信して画像形成装置100側に伝え、画像形成装置100の制御情報はLAN15を介してパーソナルコンピュータ1側に通知される。
【0032】
具体的には、画像読み取り部101により原稿の読み取りが行われると、読み取られた画像の画像データは画像処理部2へ転送される。印刷の場合は、パーソナルコンピュータ1から出力したい画像データをLAN15経由で画像処理部2へ転送する。画像処理部2へ転送された画像データは、画像処理部2で圧縮、階調処理、画質アップなどの種々の処理が行われる。処理された画像データはメモリの記憶領域8に保存されるとともに、書き込みインタフェース5にも転送される。書き込みインタフェース5は、処理されたデータ(信号)に対し、パルス幅とパワー変調によりレーザ制御を行う。その後、画像データは作像ユニット6へ送られ、作像ユニット6が用紙(記録媒体)上に再生画像を形成する。
【0033】
プロセスコントローラ7は画像データの流れを制御する。すなわち、画像データが画像形成装置100に送信されてから、印刷ジョブ完了までの進捗を管理する。これにより、作像ユニット6の感光体ベルト217に潜像の形成を開始し、トナー現像して可視化されたトナー像を中間転写ベルトに転写終了するまでのタイミングと中間転写ベルトに像の形成開始から転写を終了するまでのタイミングが分かる。
【0034】
電源遮断要求は操作ボード3あるいはパーソナルコンピュータ1から行われ、電源遮断受付部4で受け付ける。電源遮断受付部4では電源遮断を受け付けたら、判断制御部9へ通知する。判断制御部9は電源遮断時の処理(論理判断含む)を行う。判断制御部9で、画像データ機密性確保処理を行い、当該処理が完了したら、電源遮断受付部4へその旨応答を返し、その後は電源遮断処理を行う。また、操作ボード3あるいはパーソナルコンピュータ1からの入力(設定値など)は保存部2へ保存される。
【0035】
なお、電源遮断処理については、本発明の対象ではないので、ここでの説明は省略する。
【0036】
図3、図4、図6及び図7は判断制御部で実施される処理の処理手順を示すフローチャートで、各フローチャートにおいて同一の処理には同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
図3は電源遮断時、機密性確保するための基本制御の制御手順を示すフローチャートである。同図において、電源遮断が発生し、電源遮断受付部4から電源遮断要求が来ると(ステップS1)、画像データを記憶したメモリの記憶領域8をクリアし(ステップS2a)、感光体ベルト217をクリーニングし(ステップS2b)、同時に中間転写ベルト218をクリーニングする(ステップS2c)。次いで、電源遮断処理を行う制御部(図示しないメインCPU)に電源遮断処理実行可能を通知する(ステップS8)。この通知をもらったら、画像形成装置100の電源遮断処理が開始される。なお、メモリの記憶領域8のクリアは判断制御部9の判断に基づいて図示しないメモリコントローラが実行する。したがって、削除手段は判断制御部9及びメモリコントローラが対応する。
【0037】
なお、このフローチャートでは、図1に示したように感光体ベルト217及び中間転写ベルト218を用いて多色画像を形成しているので、ステップS2b,S2cで感光体ベルト217及び中間転写ベルト218上の画像をクリーニングしているが、感光体ドラムなどの他の種類の中間画像形成媒体を使用している場合には、それらの媒体の全てについてクリーニングが施されることは言うまでもない。また、フローチャートでは転写ベルトと記しているのは本実施形態では中間転写ベルト218のことである。
【0038】
このようにステップS2a,S2b、S2cのステップで記憶領域8にある画像データやジョブファイルを削除し、感光体ベルト217と中間転写ベルト218をクリーニングしてから電源遮断処理を行うようにすると、画像データの漏洩を防ぐことができる。
【0039】
図4は図3のようにして処理する際、事前に機密性確保処理を実行するかどうかを判断するようにした例を示すフローチャートである。この処理手順では、電源遮断受付部4から電源遮断要求が来ると(ステップS1)、機密各処理を実行するかどうかをチェックし(ステップS3)、機密確保処理を実行する場合には、画像データを記憶したメモリの記憶領域8をクリアし(ステップS2a)、感光体ベルト217をクリーニングし(ステップS2b)、同時に中間転写ベルト218をクリーニングする(ステップS2c)。次いで、電源遮断処理を行う制御部(図示しないメインCPU)に電源遮断処理実行可能を通知する(ステップS8)。この通知をもらったら、画像形成装置100の電源遮断処理が開始される。
【0040】
一方、ステップS3で機密確保処理実施不要であれば、ステップS2a,S2b,S2cの機密確保処理をスキップして、電源遮断可能を通知し(ステップS8)、電源遮断処理を開始する。
【0041】
このように、機密確保処理を実行するかどうかについての判断が事前に行われておれば、機密確保処理不要な場合は、電源遮断時に無駄な処理を避けて処理するので、電源遮断の処理時間を短縮することができる。
【0042】
ステップS3における機密確保処理実施するかどうかの判断手段には種々の態様があるが、簡単な例としては、下記のようなものが挙げられる。
例1) ユーザが事前に設定する。ユーザは図2で示す操作ボード3、あるいはパーソナルコンピュータ1を利用して機密確保処理を実行するかどうかを設定する。設定値は図2の保存部12に保存する。保存部12はデフォールト値を持っており、ユーザが機密確保処理実施の有無を設定したら、設定値はデフォールト値を上書きする。判断制御部9は、保存部12にある設定値で機密確保処理実行するかどうかを判断する。
【0043】
例2) 電源遮断時、機密確保処理を行うか否かを選択するメッセージを操作ボード3の表示パネルあるいはパーソナルコンピュータ1のディスプレイに表示して、ユーザの選択(入力)を求め、ユーザ選択により判断する。
【0044】
図5は表示パネルに表示されるメッセージと選択画面の表示例である。この例では、「機密確保処理実行しますか」3aというメッセージを表示し、その下に、「実施」選択ボタン3bと「実施不要」選択ボタン3cを表示し、ユーザがいずれかの選択ボタン3b,3cを押圧することにより機密確保処理の実施、非実施が選択され、ステップS3の判定がこの選択に基づいて行われる。
【0045】
例3) 印刷ジョブに機密性レベル(公開可レベル、社外機密レベル、社内機密レベルなど)を設定する。電源遮断時、処理中ジョブは一定レベル以上であれば、機密確保処理を行う。どのレベル以上で、機密確保処理を行うかの設定はユーザで決定する(閾値レベル設定)。閾値レベルは、例1に示した方法により設定し、あるいは例2のように選択ボタンにより選択する方法により設定する。
【0046】
図6は、感光体ベルトのクリーニングと中間転写ベルトのクリーニングを実施するかどうかを判断して電源遮断処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
すなわち、電源が遮断されたとき、記録領域8にある画像データを削除すれば、感光体ドラムや転写ベルトに像が残しても良い場合、及び早く電源を遮断するため、記憶領域8にある画像データのみ削除すれば良い場合には、感光体ベルト217と中間転写ベルト218のクリーニングを実施する必要がない。そこで、このような場合、電源遮断時に不要な処理を行わないようにするため、ステップS3で機密確保処理を実行する際に、記憶領域のクリア処理(ステップS2a)と並行して感光体ベルト217と中間転写ベルト218のクリーニングを実施するか否かを判断し(ステップS4)、実施しないと判断した場合にはステップS8の処理にスキップして電源遮断可能を通知し、クリーニングを実施すると判断した場合には、感光体ベルト217のクリーニングと中間転写ベルト218のクリーニングを実行した(ステップS2b,2c)後、電源遮断可能を通知する(ステップS8)。なお、クリーニングを実施するか否かの判断は例えば前記例1あるいは例2に示したような方法で行われる。その他、ここでは特に説明しないが、前記判断は様々の方法で行うことが可能である。
【0048】
その他の各処理は、図4に示したフローチャートと同様であるので、説明は省略する。
【0049】
このように、図6に示した処理手順では、ベルトクリーニングの有無をチェックし、感光体ベルト(ドラム)217、転写ベルト218のクリーニングを実施する必要のない場合、機密性をそこまで確保する必要がない場合、電源を早く遮断し、かつ、感光体ベルトクリーニング及び転写ベルトクリーニングをしなくても良い場合、ユーザにとって必要でないクリーニングという無駄な処理を行わないので、電源遮断時間の短縮と余分な負荷供給削減を行うことができる。
【0050】
図7は感光体ベルトや中間転写ベルトに画像があるかどうかを判断し、その結果に基づいて感光体ベルト及び中間転写ベルトのクリーニングを実施する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0051】
電源遮断時、処理中のジョブがない場合、あるいは処理中ジョブがあっても、感光体ベルト(ドラム)217に静電像あるいはトナー像がない場合、また、中間転写ベルト218にトナー像がない場合には、これらのベルト217,218に対してクリーニング処理を行う必要がない。
【0052】
そこで、図7のフローチャートに示した処理手順では、図6のフローチャートのステップS4の後段に、感光体ベルト217に像があるか否かを判断するステップ(ステップS6)と、中間転写ベルト218に像があるか否かを判断するステップ(ステップS5)を設け、この判断結果に応じてベルトクリーニングの実施の是非を判断するようにした。すなわち、ステップS4でクリーニングが実施される場合に、中間転写ベルト218にトナー像があるかどうかを判断し(ステップS5)、トナー像がある場合のみ中間転写ベルト218のベルトクリーニングを実施する(ステップS2c)。
【0053】
これと並行して、感光体ベルト217上に像(静電像、トナー像)があるかどうかを判断し(ステップS6)、像がある場合のみ感光体ベルト217のベルトクリーニングを実施する(ステップS2b)。ステップS5,S6で像がなければ、クリーニングすることなく、ステップS8に飛んで、電源遮断可能を制御部に通知する。
【0054】
なお、感光体ベルト217あるいは中間転写ベルト218上に像があるかどうかは、作像ユニット6による作像プロセスをプロセスコントローラ7で制御し、また、印刷ジョブの進捗を管理しているので、プロセスコントローラ7で判定することができる。この判定は、例えば、作像ユニット6で使用されているセンサ情報、作像ユニット6を動作させる回路の電圧及び電流に関する情報、プロセス制御で使用されるASIC値変換などの情報で確定することができる。
【0055】
このようにステップS5,S6で中間転写ベルト218、感光体ベルト217上に像があると判断されたときのみクリーニングを実施するので、電源遮断時に無駄な処理を行うことなく、電源遮断時間の短縮、及び余分な負荷供給削減が可能となる。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、
1)電源遮断時、感光体ベルト217及び中間転写ベルト218上の像をクリーニングするので、感光体ベルト217及び中間転写ベルト218上の像から画像データが漏洩するのを防止することができる。
2)ユーザは予め機密確保処理を実行するかどうかを選択し、機密確保処理不要な場合は、電源遮断時に無駄な処理を避けるので、電源遮断時間を短縮することができる。
3)電源遮断操作するユーザはその時点で、機密確保処理を優先するか、電源遮断時間短縮するかの選択ができるので、ユーザのニーズにあった機密漏洩防止が可能になる。
4)印刷ジョブの機密レベルに基づいて機密確保処理を行うことにより、機密性高い画像データのみに対して機密性確保処理を実行し、電源遮断時に無駄な処理を避けるので、電源遮断時間を短縮することができる。
5)感光体ベルト217及び中間転写ベルト218のクリーニングを実施する必要のない場合、言い換えれば、機密性を感光体ベルト217あるいは中間転写ベルト218上の画像まで確保する必要がなく、画像データを削除するのみで十分な場合には、像クリーニングという無駄な処理を行わないようにするので、電源遮断時間の短縮化、及び余分の負荷供給の削減が可能となる。電源を早く遮断したい場合であって、かつ感光体ベルト217及び中間転写ベルト218のクリーニングをしなくても良い場合に特に有効である。
6)感光体ベルト217及び/又は中間転写ベルト218に像があるときのみクリーニングを実施するので、電源遮断時に無駄な処理を行いことがなく、電源遮断時間の短縮化、及び余分な負荷供給の削減が可能となる。
などの効果を奏する。
【0057】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲により規定される範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
6 作像ユニット
7 プロセスコントローラ
8 記憶領域
9 判断制御部
100 画像形成装置
201 中間転写ベルトクリーニングユニット
209 感光体クリーニングユニット
217 感光体ベルト
218 中間転写ベルト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2006‐139381号公報
【特許文献2】特開2006−174238号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成するための像担持体を含む作像手段と、
前記像担持体上に形成された像をクリーニングするクリーニング手段と、
所定の記憶領域に画像データ及びジョブファイルを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段の所定の記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを前記記憶領域から削除する削除手段と、
を備えた画像形成装置であって、
電源遮断時、前記削除手段によって画像データ及びジョブファイルを前記記憶領域から削除するとともに、前記クリーニング手段によって前記像担持体上に形成された像をクリーニングすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置であって、
機密確保処理を優先にするか、電源遮断時間短縮を優先にするかを予め選択する優先処理選択手段を備えていること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像形成装置であって、
電源遮断時に、電源遮断操作しているユーザが機密確保処理を実行するかどうかを選択する機密確保処理実行選択手段を備えていること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1記載の画像形成装置であって、
印刷ジョブに複数の機密性レベルを設定する機密レベル設定手段と、
電源遮断時に、前記設定された機密性レベルと対応させて機密確保処理を行うかどうかを設定する処理実行設定手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記電源遮断時、前記クリーニング手段によって前記像担持体上に形成された像をクリーニングするか否かを選択するクリーニング選択手段を備えていること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置であって、
前記クリーニング選択手段は、前記像坦持体に像がある場合のみ、前記クリーニング手段による前記像坦持体のクリーニングを選択すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5記載の画像形成装置であって、
前記像坦持体が感光体又は当該感光体上の画像が転写される転写媒体であること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
記録媒体に画像を形成するための像担持体を含む作像手段と、
前記像担持体上に形成された像をクリーニングするクリーニング手段と、
所定の記憶領域に画像データ及びジョブファイルを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段の所定の記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを前記記憶領域から削除する削除手段と、
を備えた画像形成装置における画像漏洩防止方法であって、
電源遮断時、前記削除手段によって前記所定の記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを削除する工程と、
前記クリーニング手段によって前記像担持体上に形成された像をクリーニングする工程と、
を含むことを特徴とする画像漏洩防止方法。
【請求項9】
コンピュータに対して画像形成装置の電源遮断時に画像の漏洩を防止させるための画像漏洩防止制御プログラムであって、
電源が遮断されたとき、記憶手段の所定の記憶領域に記憶された画像データ及びジョブファイルを削除する手順と、
電源が遮断される前に像担持体上に形成された像をクリーニングする手順と、
を含むことを特徴とする画像漏洩防止制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−118222(P2012−118222A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266870(P2010−266870)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】