説明

画像形成装置及び定着装置

【課題】シートからの画像の剥離を抑制する画像形成装置及び定着装置を提供する。
【解決手段】シートを搬送する搬送要素と、前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、前記シート上の前記画像を定着させる定着装置と、を備え、該定着装置は、前記シート上の前記画像を摺擦する摺擦要素を含むことを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置と、シート上の画像を定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに画像を形成する装置として、液体現像剤を用いる画像形成装置が知られている。この種の画像形成装置は、典型的には、シート上に画像を定着させるための定着装置を備える。定着装置は、シート上に転写された液体現像剤中のトナー成分を溶融するために、比較的高い熱を生じさせる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−90116号公報
【特許文献2】特開2009−98474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体現像剤中の成分(キャリア溶液)がシート内に浸透することによって、顔料が分散している高分子化合物がシート表面に析出する特性を有する液体現像剤の使用は、定着装置からの発熱を不要にする。しかしながら、本発明者は、上述の特性を有する液体現像剤を用いて形成された画像は、シートから剥離しやすいという特性を見出した。
【0005】
本発明は、シートからの画像の剥離を抑制する画像形成装置及び定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、シートを搬送する搬送要素と、前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、前記シート上の前記画像を定着させる定着装置と、を備え、該定着装置は、前記シート上の前記画像を摺擦する摺擦要素を含むことを特徴とする(請求項1)。
【0007】
上記構成によれば、画像形成部は、液体現像剤を用いて、搬送装置によって搬送されたシートに画像を形成する。シート上の画像を定着させる定着装置の摺擦要素は、シート上の画像に摩擦力を与える。この結果、画像を形成する液体現像剤中の成分が、シートの表層内に入り込み、画像の剥離が好適に抑制される。
【0008】
上記構成において、前記搬送要素は、前記シートを第1速度で搬送し、前記定着装置は、前記摺擦要素を動作させるため駆動源を含み、前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、前記駆動源は、前記接触面を、前記第1速度と異なる第2速度で移動させることが好ましい(請求項2)。
【0009】
上記構成によれば、搬送要素は、シートを第1速度で搬送する。摺擦要素を動作させるため駆動源は、シート上の画像に接触する摺擦要素の接触面を第1速度と異なる第2速度で移動させる。この結果、画像を形成する液体現像剤中の成分が、シートの表層内に入り込み、画像の剥離が好適に抑制される。
【0010】
上記構成において、前記搬送要素は、前記シートを第1方向に搬送し、前記定着装置は、前記摺擦要素を動作させるため駆動源を含み、前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、前記駆動源は、前記接触面を、前記第1方向とは異なる第2方向へ移動させることが好ましい(請求項3)。
【0011】
上記構成によれば、搬送要素は、シートを第1方向に搬送する。摺擦要素を動作させるため駆動源は、シート上の画像に接触する摺擦要素の接触面を第1方向と異なる第2方向に移動させる。この結果、画像を形成する液体現像剤中の成分が、シートの表層内に入り込み、画像の剥離が好適に抑制される。
【0012】
上記構成において、前記定着装置は、前記摺擦要素を動作させるため駆動源を含み、前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、前記駆動源は、前記接触面を、複数の方向へ移動させることが好ましい(請求項4)。
【0013】
上記構成によれば、駆動源は、摺擦要素の接触面を複数の方向へ移動させる。したがって、シートに対する画像の定着力が好適に高められる。
【0014】
上記構成において、前記駆動源は、前記接触面を往復移動させることが好ましい(請求項5)。
【0015】
上記構成によれば、駆動源は、摺擦要素の接触面を往復移動させる。したがって、シートに対する画像の定着力が好適に高められる。
【0016】
上記構成において、前記搬送要素は、前記シートを第1方向に搬送し、前記駆動源は、前記接触面を、前記第1方向に交差する第1交差方向と該第1交差方向と反対の第2交差方向とへ往復移動させる第1駆動源を含むことが好ましい(請求項6)。
【0017】
上記構成によれば、駆動源は、摺擦要素の接触面を、シートの搬送方向に対して交差する方向に往復移動させる。したがって、シートに対する画像の定着力が好適に高められる。
【0018】
上記構成において、前記搬送要素は、前記シートを第1速度で搬送し、前記駆動源は、前記接触面を、前記第1速度と異なる第2速度で、前記第1方向へ移動させる第2駆動源を含むことが好ましい(請求項7)。
【0019】
上記構成によれば、摺擦要素の接触面は、第1交差方向、第2交差方向及び第1方向の3方向に画像を摺擦する。したがって、シートに対する画像の定着力が好適に高められる。
【0020】
上記構成において、前記駆動源は、前記接触面を前記第1方向と反対方向に移動させる第2駆動源を含むことが好ましい(請求項8)。
【0021】
上記構成によれば、摺擦要素の接触面は、第1交差方向、第2交差方向及び第1方向と反対方向の3方向に画像を摺擦する。したがって、シートに対する画像の定着力が好適に高められる。
【0022】
上記構成において、前記摺擦要素は、前記シートに摺擦される接触筒と、該接触筒を支持するシャフトと、該シャフトを前記第1交差方向へ押圧するカム要素と、を備え、前記第1駆動源は、前記カム要素を回転することが好ましい(請求項9)。
【0023】
上記構成によれば、第1駆動源によって回転されたカム要素は、接触筒を支持するシャフトを第1交差方向へ押圧する。したがって、摺擦要素の接触面は、第1交差方向に適切に摺擦される。
【0024】
上記構成において、前記押圧機構は、前記第2交差方向へ前記シャフトを付勢する付勢要素を含むことが好ましい(請求項10)。
【0025】
上記構成によれば、付勢要素は、接触筒を支持するシャフトを第2交差方向へ付勢する。したがって、カム要素の回転に伴い、接触筒を支持するシャフトは第2交差方向へ移動する。したがって、摺擦要素の接触面は、第1交差方向と第2交差方向とに適切に往復摺擦される。
【0026】
上記構成において、前記シャフトは、前記カム要素に接触する第1端部と、該第1端部と反対側の第2端部と、を含み、前記付勢要素は、前記第2端部に隣接して配設され、前記押圧機構は、前記第2端部に取り付けられた伝達要素を含み、前記第2駆動源は、前記伝達要素を介して、前記シャフトを回転させることが好ましい(請求項11)。
【0027】
上記構成によれば、シャフトは、カム要素に接触する第1端部と、第1端部と反対側の第2端部とを含む。付勢要素は、第2端部に隣接して配設され、シャフトを第2交差方向へ付勢する。押圧機構は、第2端部に取り付けられた伝達要素を含み、第2駆動源は、伝達要素を介して、前記シャフトを回転させる。したがって、接触筒と搬送要素の速度差或いは接触筒の回転方向と搬送要素によって搬送されるシートの搬送方向との差異によって、摺擦要素の接触面は、第1交差方向、第2交差方向とシートの搬送方向に沿う方向に画像を摺擦する。
【0028】
上記構成において、前記シャフトは、前記接触筒を回転可能に支持することが好ましい(請求項12)。
【0029】
上記構成によれば、シャフトは接触筒を回転可能に支持する。したがって、シートの搬送にしたがって、接触筒は回転する。かくして、シートの搬送に対する接触筒の影響が抑制される。
【0030】
上記構成において、前記搬送要素は、前記接触面に向けて圧接される圧接部を含み、前記シートは、前記圧接部と前記接触面との間を通過することが好ましい(請求項13)。
【0031】
上記構成によれば、シートは、接触面に向けて圧接される圧接部と前記接触面との間を通過する。この結果、シート上の画像に適切に摩擦力が加えられる。
【0032】
上記構成において、前記圧接部は、前記シートを搬送する搬送ベルトと、該搬送ベルトを前記摺擦要素に押しつけるバックアップローラと、を含み、前記シートは前記搬送ベルトと前記接触面との間を通過することが好ましい(請求項14)。
【0033】
上記構成によれば、シートは、バックアップローラによって接触面に向けて圧接される搬送ベルトと前記接触面との間を通過する。この結果、シート上の画像に適切に摩擦力が加えられる。
【0034】
上記構成において、前記バックアップローラを前記摺擦要素に対して離接させる離接機構を更に備えることが好ましい(請求項15)。
【0035】
上記構成によれば、離接機構はバックアップローラを摺接要素に対して離接させるので、搬送ベルト及び/又は摺擦要素の不必要な摩耗が避けられる。
【0036】
上記構成において、前記搬送要素は、前記摺擦要素の上流に配設された上流保持ローラを含み、前記バックアップローラは、前記搬送ベルトを前記上流保持ローラに押しつける上流バックアップローラを含むことが好ましい(請求項16)。
【0037】
上記構成によれば、シートは、上流保持ローラと搬送ベルトとの間で適切に挟持される。したがって、摺擦要素によるシートの搬送への影響が好適に低減される。
【0038】
上記構成において、前記搬送要素は、前記摺擦要素の下流に配設された下流保持ローラを含み、前記バックアップローラは、前記搬送ベルトを前記下流保持ローラに押しつける下流バックアップローラを含むことが好ましい(請求項17)。
【0039】
上記構成によれば、シートは、下流保持ローラと搬送ベルトとの間で適切に挟持される。したがって、摺擦要素によるシートの搬送への影響が好適に低減される。
【0040】
上記構成において、前記搬送要素は、前記摺擦要素の上流に配設された上流保持ローラと前記摺擦要素の下流に配設された下流保持ローラとを含み、前記摺擦要素は、前記上流保持ローラと前記下流保持ローラとの間で前記搬送ベルトに押しつけられた摺擦ローラを含み、該摺擦ローラは、前記上流保持ローラと前記下流保持ローラとの間で湾曲した前記搬送ベルトの走行経路を規定することが好ましい(請求項18)。
【0041】
上記構成によれば、摺擦ローラは、上流保持ローラと下流保持ローラとの間で湾曲した搬送ベルトの走行経路を規定する。この結果、比較的長い摺擦時間が確保される。したがって、シートに対する画像の定着力が好適に高められる。
【0042】
上記構成において、前記接触面は、不織布を含むことが好ましい(請求項19)。
【0043】
上記構成によれば、接触面が不織布を含むので、シートと搬送要素との間の摩擦力は、シートの搬送をほとんど妨げない。
【0044】
上記構成において、前記液体現像剤は、前記画像を発色させるための着色粒子と、該着色粒子が分散されるキャリア液と、該キャリア液中に溶解又は膨潤された高分子化合物と、を含むことが好ましい(請求項20)。
【0045】
上記構成によれば、画像を発色させるための着色粒子が分散されたキャリア溶液中の高分子化合物は、画像表面に被膜を形成する。この結果、画像の耐擦過性が向上する。かくして、摺擦要素と画像との間の摩擦に起因する画像の損傷が適切に抑制される。
【0046】
本発明の他の局面に係る定着装置は、液体現像剤を用いて形成された画像を摺擦する摺擦要素を備えることを特徴とする(請求項21)。
【0047】
上記構成によれば、定着装置の摺擦要素は、液体現像剤を用いて形成された画像に摩擦力を与える。この結果、画像を形成する液体現像剤中の成分が、シートの表層内に入り込み、画像の剥離が好適に抑制される。
【発明の効果】
【0048】
上述の如く、本発明に係る画像形成装置及び定着装置は、シートからの画像の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】液体現像剤を用いた転写工程を概略的に示す模式図である。
【図2】図1に示される転写工程後の定着工程の原理を概略的に示す模式図である。
【図3】擦り時間と定着率との関係を概略的に示すグラフである。
【図4】様々な不織布材料に対するスクリーニング試験の結果を概略的に示すグラフである。
【図5】図2に示される定着原理が適用された定着装置を概略的に示す平面図である。
【図6】図5に示される定着装置の概略的な側面図である。
【図7】図5に示される定着装置の概略的な側面図である。
【図8】図5に示される定着装置の原理が適用された画像形成装置を概略的に示す断面図である。
【図9】循環装置の部分を除いた画像形成装置の概略断面図である。
【図10】図8に示される画像形成装置の画像形成ユニットの一つを拡大して示す断面図である。
【図11】第2実施形態に係る定着原理を検証するための試験を説明する概略的な模式図である。
【図12】図11に示される試験の結果を示すグラフである。
【図13】第2実施形態に係る定着装置の概略的な平面図である。
【図14】図13に示される定着装置の動作を概略的に示す平面図である。
【図15】図13に示される定着装置の動作を概略的な側面図である。
【図16】図13に示される定着装置の動作を概略的な側面図である。
【図17】第3実施形態に係る定着装置の概略的な側面図である。
【図18】第3実施形態に係る定着装置の概略的な側面図である。
【図19】第4実施形態に係る定着装置の摺擦ローラを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。尚、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、何ら本発明を限定するものではない。
【0051】
<定着原理>
図1は、液体現像剤を用いた画像の転写工程を概略的に説明する図である。図1(a)乃至図1(c)の順に、転写工程が進行する。図1を参照しつつ、シートへの画像の転写並びに転写後の画像が説明される。
【0052】
図1(a)は、像担持体100からシートSへ転写される画像を形成する液体現像剤の液層Lの概略的断面を示す。像担持体100は、例えば、液体現像剤を用いて画像を形成する画像形成装置(例えば、プリンタ、コピー機、ファクシミリ装置やこれらの機能を備える複合機)が備える転写ベルトであってもよい。像担持体100は、画像を形成する液体現像剤の液層LをシートSへの転写位置まで搬送する。
【0053】
転写位置において、シートSは、像担持体100上の液層Lに接触する。画像を形成する液体現像剤の液層Lは、キャリア液Cと、画像を発色させるための着色粒子Pと、キャリア液C中に溶解又は膨潤された高分子化合物Rとを含む。キャリア液C中に分散された着色粒子Pは、シートSに静電気的に引きつけられる。かくして、着色粒子Pは、シートS上に付着し、画像を形成する。尚、着色粒子PのシートSへの引きつけは、例えば、シートSを横切る電界によって達成される。着色粒子PのシートSへの引きつけに関する原理は、後述の画像形成装置に関連して詳述される。
【0054】
図1(b)は、シートSに浸透するキャリア液Cを概略的に示す。比較的低い動粘度を有するキャリア液Cは、シートSに浸透し、浸透層PLをシートSの表層に形成する。シートSへのキャリア液Cの浸透に伴って、液体現像剤の液層L中の高分子化合物Rの濃度は増大する。
【0055】
図1(c)に示される如く、キャリア液Cが更にシートSに浸透すると、液層L中の高分子化合物Rは析出する。上述の如く、着色粒子PのシートSへの静電気的付着は、高分子化合物Rの析出より先に生ずる。したがって、シートSの表面に析出した高分子化合物Rは、シートS上で画像を形成する着色粒子Pの層上に積層された被膜層を形成する。
【0056】
図2は、転写工程後に行われる定着工程を概略的に説明する図である。図2(a)は、定着工程を概略的に示す。図2(b)は、定着工程後のシートSの概略的な断面図である。図1及び図2を用いて、定着工程の原理が説明される。
【0057】
転写工程後、キャリア液Cは、シートSに略浸透され、シートS上に高分子化合物Rと、着色粒子Pとを含む画像層Iが形成される。転写工程において、画像層Iには、像担持体100からシートSへ液層L(画像)を転写する際の圧力及び電界を除いて、物理的な力はほとんど加えられない。このため、定着工程前において、画像層IとシートSとの間の物理的な結合は、比較的弱く、後述されるテープを用いた剥離試験を行うと、画像層Iの顕著な剥離が生ずることとなる。
【0058】
図2(a)には、定着装置及び/又は摺擦要素として例示される摺擦板200が示される。摺擦板200は、例えば、略直方体形状の基板210と、基板210の表面を被覆する不織布220とを備える。本実施形態において、画像層Iに対向する摺擦板200の下面を形成する不織布220の層が接触面として例示される。本実施形態において、不織布220として、ポリプロピレン不織布が用いられる。代替的に、0.10の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトAと称される)、0.13の動摩擦係数を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylen)製の不織布(以下、PTFEフェルトBと称される)、ポリエステルフェルト、ポリエチレンテレフタレート製のフェルト(以下、PETフェルトと称される)、ポリアミドフェルトや羊毛フェルトが不織布220として用いられてもよい。
【0059】
シートS上に形成された画像層I上に載置された摺擦板200は、シートSの上面に沿って画像層I上を移動する。この結果、図2(b)に示される如く、画像層Iの成分(着色粒子P及び/又は高分子化合物R)の一部がシートSの表層内に食い込む(アンカー効果)。かくして、画像層IとシートSとの物理的な結合が強められる。
【0060】
上述の如く、画像層Iの上面は、高分子化合物Rに覆われる。したがって、画像を発色させる着色粒子Pは、高分子化合物Rによって、摺擦板200の摺擦動作から適切に保護される。かくして、摺擦板200の摺擦に起因する画像の損傷は適切に抑制される。
【0061】
<試験例>
図3は、摺擦板200が画像層Iに摺擦移動しているときの期間(擦り時間)と画像層Iの定着率との関係を概略的に示すグラフである。図2及び図3を用いて、擦り時間と定着率との関係が説明される。
【0062】
図3のグラフの横軸に示される擦り時間は、画像層I中の所定の領域が、往復移動している摺擦板200に接触している間の時間長さを表す。
【0063】
図3のグラフの縦軸に示される定着率FRは、以下に示される数式を用いて算出されている。ここで、Dは、画像層I上に帖着されたテープを剥離する前の画像の濃度を表し、Dは、画像層I上に帖着されたテープを剥離した後の画像の濃度を表す。
【0064】
【数1】

【0065】
定着率FRの評価に用いられたテープは、3M社製のメンディングテープであった。メンディングテープは、専用の治具を用いて画像層I上に帖着された。したがって、図3のグラフに表されるデータ点間において、テストサンプル中の画像層Iとメンディングテープとの帖着強度は略一定に保たれている。また、テストサンプル中の画像層Iに打擲されたメンディングテープは、専用の治具を用いて、略一定の剥離角度及び略一定の剥離速度で、画像層Iから剥離された。
【0066】
テストサンプルの画像の濃度は、サカタインクスエンジニアリング株式会社製の分光光度計スペクトロアイを用いて測定された。
【0067】
図3に示される如く、1秒以上、画像層Iが摺擦されると、画像層Iは比較的高い定着率FRを達成することが分かる。また、1秒未満の擦り時間では、画像層Iの定着率FRは急激な増加を示すことが分かる。尚、摺擦板200の重量は、好ましくは、画像層Iの表面の傷の発生が抑制されるように適切に定められる。
【0068】
図4は、様々な種類の不織布220と、定着率FRとの関係を概略的に示すグラフである。図2乃至図4を用いて、不織布220の種類と定着率FRとの関係が説明される。
【0069】
図4の横軸は、不織布220の種類を示す。本試験において、PTFEフェルトA、PTFEフェルトB、ポリプロピレン不織布、ポリエステルフェルト、PETフェルト、ポリアミドフェルト及び羊毛フェルトが示されている。
【0070】
図4の左側の縦軸は、上述の定着率FRを示す。定着率FRは、図4の棒グラフによって表される。尚、本試験で用いられた上述の全ての種類の不織布220は、1秒を超える擦り時間において、比較的高い定着率FRを達成した。したがって、比較的有利な種類の不織布220のスクリーニングのために、図4に示される定着率FRは、0.625秒の擦り時間の下、算出されている。
【0071】
図4の右側の縦軸は、図4中の点によって表される各種類の不織布220の動摩擦係数を示す。低い動摩擦係数は、シートSの搬送への影響の低減及び画像層Iへの損傷の低減の点から有利である。
【0072】
図4に示される如く、PTFEフェルトAは、最も低い動摩擦係数を有するとともに最も高い定着率FRを達成している。したがって、テストされた種類の不織布220のうちPTFEフェルトAが最も有利であるということが分かる。尚、不織布220として、図4に示されていない不織布材料が用いられてもよい。好ましくは、0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料が不織布220として用いられる。0.50以下の動摩擦係数を有する不織布材料は、シートSの搬送への影響及び画像層Iへの損傷を好適に抑制することができる。
【0073】
<定着装置>
図5は、上述の定着原理を用いてシートSに画像層Iを定着する定着装置及び定着装置を通過するシートSを搬送する搬送装置の概略的な平面図である。図2及び図5を用いて定着装置が説明される。
【0074】
定着装置300は、シートSの上面に接触するように配設された摺擦ローラ310を備える。摺擦ローラ310は、シートSの上面に接触する円柱状の接触筒311と、接触筒311の両端面から突出するシャフト312を含む。シャフト312の一方の端部は、ハウジング320に収容されたベアリングによって回転可能に支持される。シャフト312の他方の端部には、ギア321が取り付けられる。図5に示されるシートSの上面には、液体現像剤を用いて画像が形成されている。シートSの上面の画像を摺擦する接触筒311は、摺擦要素として例示される。
【0075】
定着装置300は、ギア321に連結されるモータ330を備える。本実施形態において、接触筒311に回転動作を与えるモータ330は、駆動源として例示される。
【0076】
搬送装置は、定着装置300の上流に配設される上流搬送装置410と、定着装置300の下流に配設される下流搬送装置420とを含む。上流搬送装置410及び下流搬送装置420は、シートSを搬送する搬送要素として例示される。図5には、上流搬送装置410から下流搬送装置420へ向かうベクトルが示されている。図5のベクトルの向きは、シートSの搬送方向を意味する第1方向D1として例示される。また、図5のベクトルの大きさは、シートSの搬送速度を意味する第1速度V1として例示される。上流搬送装置410及び下流搬送装置420は、協働して、シートSを第1方向D1に第1速度V1で搬送する。
【0077】
図6は、定着装置300と搬送装置(上流搬送装置410及び下流搬送装置420)の概略的な側面図である。図2乃至図6を用いて、定着装置300及び搬送装置(上流搬送装置410及び下流搬送装置420)が説明される。
【0078】
上流搬送装置410は、シートSの上面に接触する上側ローラ411と、シートSに接触する下側ローラ412とを含む。上側ローラ411は、一対のジャーナル413,414を含む。ジャーナル413は、ハウジング415に収容されたベアリングに回転可能に支持される。ジャーナル414にはギア416が取り付けられる。
【0079】
上流搬送装置410は、上流モータ417を備える。上流モータ417は、ギア416に連結される。
【0080】
上流搬送装置410は、下側ローラ412を弾性的に支持する上流支持機構430を備える。下側ローラ412は、上流支持機構430に接続されるジャーナル418を含む。
【0081】
上流支持機構430は、ジャーナル418を回転可能に支持する軸受部431と、上流搬送装置410、下流搬送装置420及び定着装置300を支持する支持面Fと軸受部431とに接続する弾性要素432(例えば、コイルバネ)とを含む。弾性要素432によって、上方に押し上げられた下側ローラ412は、上側ローラ411と協働して、シートSを挟持する。この結果、上流モータ417の駆動によって、上側ローラ411と下側ローラ412との間で挟持されたシートSは、定着装置300に向けて搬送される。
【0082】
下流搬送装置420は、シートSの上面に接触する上側ローラ421と、シートSに接触する下側ローラ422とを含む。上側ローラ421は、一対のジャーナル423,424を含む。ジャーナル423は、ハウジング425に収容されたベアリングに回転可能に支持される。ジャーナル424にはギア426が取り付けられる。
【0083】
下流搬送装置420は、下流モータ427を備える。下流モータ427は、ギア426に連結される。
【0084】
下流搬送装置420は、下側ローラ422を弾性的に支持する下流支持機構440を備える。下側ローラ422は、下流支持機構440に接続されるジャーナル428を含む。
【0085】
下流支持機構440は、ジャーナル418を回転可能に支持する軸受部441と、上流搬送装置410、下流搬送装置420及び定着装置300を支持する支持面Fと軸受部441とに接続する弾性要素442(例えば、コイルバネ)とを含む。弾性要素442によって、上方に押し上げられた下側ローラ422は、上側ローラ421と協働して、シートSを挟持する。この結果、下流モータ427の駆動によって、上側ローラ421と下側ローラ422との間で挟持されたシートSは、定着装置300から引き出される。
【0086】
図6に示される如く、接触筒311は、シャフト312の周面を取り囲む略円筒形状の弾性層313と、弾性層313の外周面を被覆する不織布層314とを備える。弾性層313は、例えば、スポンジや比較的高い柔軟性を有する他の弾性材料を用いて形成される。不織布層314は、例えば、図4に関連して説明された種類の不織布を用いて形成される。
【0087】
定着装置300は、摺擦ローラ310の下方に配設されたバックアップローラ340を備える。バックアップローラ340は、スポンジや比較的高い柔軟性を有する他の弾性材料を用いて形成される略円筒形状の支持筒341と、支持筒341に挿通される金属製のシャフト342とを含む。
【0088】
定着装置300は、バックアップローラ340を摺擦ローラ310に圧接させる圧接機構350を含む。圧接機構350は、支持筒341の端面から突出したシャフト342の両端部を回転可能に支持する軸受部351と、上流搬送装置410、下流搬送装置420及び定着装置300を支持する支持面Fと軸受部351とに接続する弾性要素352(例えば、コイルバネ)とを含む。
【0089】
弾性要素352は、バックアップローラ340を摺擦ローラ310に向けて付勢する。この結果、不織布層314及び/又は弾性層313は、圧縮変形され、定着装置300を通過するシートSの上面に沿う略平坦な上側ニップ面N1が形成される。同様に、支持筒341の周面は、圧縮変形され、定着装置300を通過するシートSの下面に沿う略平坦な下側ニップ面N2が形成される。本実施形態において、シートSの上面に形成された画像(画像層I)に接触する上側ニップ面N1は、接触面として例示される。また、上側ニップ面N1に向けて圧接される支持筒341は、圧接部として例示される。
【0090】
図6に示される上側ニップ面N1の上方に示されるベクトルは、上側ニップ面N1の移動方向及び大きさを示す。モータ330は、上側ニップ面N1が第1方向D1に移動するように、摺擦ローラ310を回転させる。モータ330の回転数は、上流搬送装置410及び下流搬送装置420によって規定される第1速度V1とは異なる第2速度V2で上側ニップ面N1が移動するように設定される。この結果、シートS上に形成された画像層Iは、上側ニップ面N1と下側ニップ面N2との間を通過する間、上側ニップ面N1に摺擦され、図2に関連して説明された原理に従って定着される。図6に示される第2速度V2は、第1速度V1より大きい。代替的に、第2速度V2は、第1速度V1より小さくてもよい。
【0091】
本実施形態において、第1速度V1と第2速度V2との間の差は、モータ330の回転数と上流モータ417/下流モータ427との回転数との関係及び/又は摺擦ローラ310の直径と上側ローラ411,421の直径との関係を用いて作り出される。本実施形態において、定着装置300、上流搬送装置410及び下流搬送装置420それぞれに対して個別にモータ330,417,427が割り当てられている。代替的に、定着装置300、上流搬送装置410及び下流搬送装置420それぞれは共通のモータを駆動源として駆動されてもよい。共通のモータと、定着装置300、上流搬送装置410及び下流搬送装置420それぞれとの間に形成されるギア機構によって、第1速度V1と第2速度V2との間の差が作り出されてもよい。
【0092】
本実施形態において、上流搬送装置410と下流搬送装置420との間に単一の定着装置300が配設されている。代替的に、上流搬送装置410と下流搬送装置420との間に複数の定着装置300が配設されてもよい。複数の定着装置300は、図3に関連して説明された擦り時間の延長に貢献する。
【0093】
図7は、定着装置300の他の動作を概略的に示す。図5乃至図7を用いて、定着装置300の他の動作が説明される。
【0094】
モータ330は、上側ニップ面N1が第1方向D1とは反対の第2方向D2に移動するように、摺擦ローラ310を回転させてもよい。上述の如く、比較的低い動摩擦係数の不織布層314は、シートSの搬送方向とは逆方向の摺擦ローラ310の回転下において、シートSの安定的な搬送を許容する。
【0095】
<画像形成装置への適用>
図8は、図1乃至図7に関連して説明された定着技術の原理が適用された画像形成装置の概略構成図である。図9は、循環装置の部分を除いたカラープリンタの概略断面図である。図10は、画像形成ユニットの一つを拡大して示す断面図である。図1、図5乃至図10を用いて、画像形成装置が説明される。尚、図8乃至図10に示される画像形成装置はカラープリンタである。代替的に、画像形成装置は、コピー機、ファクシミリ装置、これらの機能を含む複合機やシートS上に画像を形成することができる他の装置であってもよい。
【0096】
図8に示される如く、カラープリンタ1は、画像形成のための様々なユニットや部品が収納される上側本体部1Aと、この上側本体部1Aの下部に配置され、各色用の循環装置LY、LM、LC、LB(混合液体供給システム)が収納される下側本体部1Bとを備える。ここでは、上側本体部1Aと下側本体部1Bとを結ぶ配管類は図示されていない。循環装置LY、LM、LC、LBは、上側本体部1Aにおいて実行される画像形成工程に用いられる液体現像剤を循環させる。循環装置LY、LM、LC、LBの構成・原理に対して、既知の画像形成装置で用いられる液体現像剤用の循環技術が適宜用いられてもよい。
【0097】
図9に示される如く、上側本体部1Aは、画像データに基づいてトナー画像を形成するタンデム式の画像形成部2と、シートSを収容するシート収納部3と、画像形成部2で形成されたトナー画像をシートS上に転写する二次転写部4と、転写されたトナー画像をシートS上に定着させる定着部5と、定着の完了したシートSを排紙する排出部6と、シート収納部3から排出部6までシートSを搬送するシート搬送部7とを含む。本実施形態において、定着部5に対して、図1乃至図7に関連して説明された定着技術の原理が適用される。
【0098】
画像形成部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21のクリーニング部22と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBとを備える。本実施形態において、中間転写ベルト21は、図1に関連して説明された像担持体100に相当する。
【0099】
画像形成部2は、ループ状の中間転写ベルト21を駆動するための駆動ローラ41と、中間転写ベルト21の走行に従って回転する従動ローラ49とを備える。導電性の中間転写ベルト21は、駆動ローラ41と従動ローラ49とに巻回される。中間転写ベルト21の幅は、カラープリンタ1が許容する最大の幅のシートSよりも大きく設定される。本実施形態において、駆動ローラ41は、図5乃至図7に関連して説明された上流搬送装置410の上側ローラ411に相当する。駆動ローラ41によって規定される上方へのシートSの搬送方向は第1方向D1として例示される。また、駆動ローラ41によって規定されるシートSの搬送速度は第1速度V1として例示される。以下の説明において、中間転写ベルト21の循環駆動において外側を向く面は、表面と称され、他方の面は裏面と称される。
【0100】
中間転写ベルト21の近傍で連設された画像形成ユニットFY、FM、FC及びFBは、中間転写ベルト21のクリーニング部22と二次転写部4との間に配置される。画像形成ユニットFY、FM、FC及びFBは、感光体ドラム10と、帯電器11と、露光装置12と、現像装置14と、一次転写ローラ20と、クリーニング装置26と、除電装置13と、除去ローラ30とを備える。尚、画像形成ユニットFY、FM、FC及びFBのうち、最も二次転写部4に近い位置に位置する画像形成ユニットFBは、除去ローラ30を備えていない点を除いて、画像形成ユニットFY、FM及びFCと同様の構成である。
【0101】
各画像形成ユニットFY、FM、FC、FBに対応して、それぞれ循環装置LY、LM、LC、LBが設けられる。循環装置LY、LM、LC、LBは、各色の液体現像剤の供給並びに回収を行う。
【0102】
円柱状の感光体ドラム10の周面は、帯電(本実施形態ではプラス極性に帯電)されたトナーを含むトナー像を担持可能である。中間転写ベルト21に接触する感光体ドラム10は、中間転写ベルト21の走行方向に沿うように回転する。帯電器11は、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる。
【0103】
露光装置12は、例えば、LED光源を有する。露光装置12の光源は、外部の機器から入力される画像データに応じて、一様に帯電された感光体ドラム10の表面に光を照射する。この結果、感光体ドラム10の表面には、静電潜像が形成される。
【0104】
着色粒子P、キャリア液C及び高分子化合物Rを含む液体現像剤を、感光体ドラム10の表面の静電潜像に対向するように保持する現像装置14は、静電潜像に着色粒子P及び高分子化合物Rを付着させる。この結果、静電潜像は着色粒子Pによって発色された画像として現像される。
【0105】
図10に示される如く、現像装置14は、現像容器140、現像ローラ141、供給ローラ142、支持ローラ143、供給ローラ142に圧接されたブレード144、現像ローラ141を清浄化するためのブレード145、液体現像剤を回収するための回収装置146及び現像ローラ141を帯電するための帯電器147を含む。
【0106】
キャリア液C中の着色粒子P及び高分子化合物Rの濃度調整が予め行われた液体現像剤は、供給ノズル278から現像容器140へ供給される。尚、液体現像剤は、供給ローラ142と支持ローラ143との間のニップ部へ向けて供給される。余剰の液体現像剤は支持ローラ143の下方へ落下し、現像容器140の底部において貯留される。貯留された液体現像剤は、パイプ82を通して循環装置LY、LM、LC、LBを用いて回収される。
【0107】
現像容器140の略中央に配置された支持ローラ143は、上方の供給ローラ142に当接し、ニップ部を形成する。供給ローラ142の周面には液体現像剤を保持するための溝が形成される。
【0108】
供給ノズル278から供給される液体現像剤は、支持ローラ143と供給ローラ142との間のニップ部で一時的に滞留される。ニップ部において、供給ローラ142の溝に保持された液体現像剤は、上方の現像ローラ141へ運ばれる。供給ローラ142の周面に圧接されたブレード144は、供給ローラ142に保持される液体現像剤の量を調整する。ブレード144により掻き落とされた余剰の液体現像剤は、現像容器140の底部で受け取られる。
【0109】
現像容器140の上部開口部に配設された現像ローラ141は、供給ローラ142と接する。現像ローラ141と供給ローラ142との間のニップ部において、現像ローラ141の周面が、供給ローラ142と反対方向に移動するように、現像ローラ141及び供給ローラ142の回転方向が定められる。この結果、現像ローラ141の周面には、供給ローラ142の周面に保持された液体現像剤が受け渡される。供給ローラ142の液体現像剤の層厚が適切に調整されているので、現像ローラ141の表面に形成される液体現像剤層は画像の形成に適切な厚さとなる。
【0110】
液体現像剤を受け取った現像ローラ141の表面は、帯電器147の上方を移動する。帯電器147は、着色粒子Pの帯電極性と同極性の帯電電位を与える。この結果、現像ローラ141に担持された液体現像剤中の着色粒子Pは、現像ローラ141の表面側に移動する。
【0111】
帯電器147を通過した現像ローラ141の表面は、感光体ドラム10と接触する。感光体ドラム10の表面の静電潜像の電位と現像ローラ141に印加された現像バイアスとの間の電位差によって、画像データに応じたトナー像が感光体ドラム10表面に形成される。
【0112】
感光体ドラム10と接触した後、現像ローラ141の周面は、ブレード145に接触する。ブレード145は、感光体ドラム10への現像動作を終えた現像ローラ141の表面の液体現像剤を除去する。
【0113】
回収装置146は、ブレード145によって除去された液体現像剤を回収し、循環装置LY、LM、LC、LBのパイプ81へ液体現像剤を送り出す。液体現像剤はブレード145の表面に沿って流下する。液体現像剤の粘度が高いならば、回収装置146は、好ましくは、液体現像剤の送り出しを補助する送り出しローラを備えてもよい。
【0114】
一次転写ローラ20は、感光体ドラム10と協働して、中間転写ベルト21を挟む。一次転写ローラ20には、電源(図示せず)から感光体ドラム10上の着色粒子Pとは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧が印加される。一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21にトナーと逆極性の電圧を印加する。この結果、導電性の中間転写ベルト21の表面に着色粒子P及び高分子化合物Rが引き付けられる。かくして、感光体ドラム10に形成された画像は、中間転写ベルト21の表面に転写される。その後、中間転写ベルト21は、トナー像を担持して、シートSまで搬送する。
【0115】
感光体ドラム10から中間転写ベルト21に転写されずに残留した液体現像剤を除去するクリーニング装置26は、搬送スクリュー261と、クリーニングブレード262とを備える。感光体ドラム10の回転軸方向に延びる板状のクリーニングブレード262の端部は、感光体ドラム10の表面に摺接する。クリーニングブレード262は、感光体ドラム10の回転に伴って感光体ドラム10上に残留した液体現像剤を掻き取る。掻き取られた液体現像剤は、クリーニング装置26内に一時的に収容される。クリーニング装置26内の搬送スクリュー261は、残留現像剤を外部へ搬送する。
【0116】
除電用の光源を有する除電装置13は、次の周回による画像形成に備えて、クリーニングブレード262による液体現像剤の除去の後、感光体ドラム10の表面を光源からの光によって除電する。
【0117】
略円柱状の除去ローラ30は、中間転写ベルト21に接触する。画像形成ユニットFYと画像形成ユニットFMとの間に配設された除去ローラ30は、画像形成ユニットFYから中間転写ベルト21に乗り移った液体現像剤からキャリア液Cを除去する。画像形成ユニットFMと画像形成ユニットFCとの間に配設された除去ローラ30は、画像形成ユニットFMから中間転写ベルト21に乗り移った液体現像剤からキャリア液Cを除去する。画像形成ユニットFCと画像形成ユニットFBとの間に配設された除去ローラ30は、画像形成ユニットFCから中間転写ベルト21に乗り移った液体現像剤からキャリア液Cを除去する。上述の如く、画像形成ユニットFBは、除去ローラ30を備えないので、中間転写ベルト21は、図1に示される像担持体100と同様に、キャリア液Cを含む液体現像剤を担持する。
【0118】
図9に示されるように、シートSを収納するシート収納部3は、上側本体部1Aの下部に配置される。シート収納部3は、シートSを収納可能に形成された給紙カセットを含む。
【0119】
中間転写ベルト21上に形成された画像をシートSに転写する二次転写部4は、中間転写ベルト21を駆動する駆動ローラ41に対向して配置された二次転写ローラ42を備える。二次転写ローラ42は、図5乃至図7に関連して説明された上流搬送装置410の下側ローラ412に相当する。二次転写ローラ42は、中間転写ベルト21との間で電界を発生させ、図1に関連して説明された如く、着色粒子PをシートSに引き寄せる。
【0120】
二次転写部4の上側に配置される定着部5は、図1乃至図7に関連して説明された定着技術の原理を利用して、シートSにトナー像を定着させる。したがって、定着部5は、図5乃至図7に関連して説明された摺擦ローラ310と、バックアップローラ340とを備える。上述の如く、シートS上の画像に対する摺擦ローラ310の摺擦により、好適に定着処理がなされることとなる。加えて、摺擦ローラ310は、画像全体を摺擦するのに十分な幅を有するので、摺擦ローラ310との接触により、画像の光沢が一様に変動される。この結果、シートS上の画像が、その後、使用者により触れられても、画像の光沢の局所的な変化が好適に抑制される。
【0121】
カラープリンタ1の上部に配置される排出部6には、定着部5でトナー像が定着されたシートSが排出される。複数の搬送ローラ組を備えるシート搬送部7は、シート収納部3から二次転写部4、定着部5及び排出部6の順にシートSを搬送する。
【0122】
<液体現像剤>
液体現像剤は、上述の如く、電気絶縁性のキャリア液Cとキャリア液C中に分散された着色粒子Pとを含む。また、液体現像剤は高分子化合物Rを含有する。好ましくは、液体現像剤は、測定温度25℃において、30〜400mPa・sの粘度を有する。より好ましくは、液体現像剤の粘度(測定温度25℃)は、40〜300mPa・sであり、さらに好ましくは50〜250mPa・sである。
【0123】
<キャリア液>
液体キャリアの役割を果たす電気絶縁性のキャリア液Cは、液体現像剤の電気絶縁性を高める。電気絶縁性のキャリア液Cとしては、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。さらに前記物性に加えて、後述の高分子化合物Rを溶解させることができるもの(高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの)が好ましく用いられる。
【0124】
また、液体現像剤全体の粘度(測定温度25℃)が30〜400mPa・sとなるように、キャリア液Cの粘度・種類・配合量を適宜調整・選択される。液体現像剤の粘度は、キャリア液Cとして用いられる有機溶剤と後述される高分子化合物Rとの組み合わせによっても左右される。したがって、所望の液体現像剤の粘度及び選択される高分子化合物Rの種類に合わせて有機溶剤の種類及び配合量が適宜決定される。
【0125】
このような電気絶縁性の有機溶剤としては、例えば、常温で液体の脂肪族炭化水素や植物油が挙げられる。
【0126】
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素又はそれらの混合物が好ましい。例えば、脂肪族炭化水素として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタンが用いられる。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤及び揮発性が相対的に低い有機溶剤(例えば、沸点が200℃以上のもの)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィンが好ましく用いられる。
【0127】
また、植物油として、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油が挙げられる。なかでもトール油脂肪酸が好ましく用いられる。
【0128】
キャリア液Cとして、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートール FA−1P」、「ハートール FA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」、「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」が用いられてもよい。
【0129】
本実施形態では、高分子化合物Rがキャリア液Cに溶解する限り、キャリア液Cとして、高分子化合物Rの溶解度が相対的に高いもの(高分子化合物Rの良溶媒)のみを用いてもよく、又は、高分子化合物Rの溶解度が相対的に低いもの(高分子化合物Rの貧溶媒)を混合して用いてもよい。尚、キャリア液Cの種類に応じて、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)は、過度に高くならないように適切に調整される。例えば、トール油脂肪酸といった植物性の油は、流動パラフィンのような脂肪族炭化水素と比べると、一般に、導電率が高い。したがって、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させるために、キャリア液Cとして上述の油類を含むときは、導電率の調整は、比較的慎重に行われることが好ましい。
【0130】
上述の油類の含有量が多いキャリア液Cは、高分子化合物Rの溶解度の点で有利である一方で、導電率の点で不利となる。油類の含有量が少ないキャリア液Cは、導電率の点で有利である一方で、高分子化合物Rの溶解度の点で不利となる。
【0131】
キャリア液C中の上述の油類の含有量は、液体現像剤中に含まれる高分子化合物Rの種類や含有量に依存する。好適な油類の含有量として、例えば、2〜80質量%、より好ましくは、5〜60質量%が挙げられる。2質量%未満では、高分子化合物Rをキャリア液Cに良好に溶解させることが困難となる。また、80質量%を超えると、キャリア液C全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くなる。過度に高い液体現像剤の導電率は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。
【0132】
本実施形態では、液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。したがって、トール油脂肪酸といった上述の油類に高分子化合物Rを溶解させることにより得られた溶液(以下、「樹脂溶液」と称される)に高電気抵抗の脂肪族炭化水素を混合することにより、キャリア液C全体の導電率(液体現像剤の導電率)を例えば200pS/cm以下に調整することが好ましい。
【0133】
<着色粒子>
本実施形態では、着色粒子Pとして、顔料そのものが用いられる。顔料そのものを含む液体現像剤は、図1乃至図7に関連して説明された非加熱方式の定着工程を可能にする。この結果、熱エネルギや光エネルギをほとんど消費することなく、着色粒子Pとしての顔料が記録媒体に定着される。
【0134】
本実施形態における顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料が特に限定することなく用いられる。
【0135】
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラックといったアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキが挙げられる。
【0136】
液体現像剤中の顔料の含有量は、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0137】
液体現像剤中の顔料の平均粒子径すなわち体積基準の中位径(D50)は、0.1〜1.0μmが好ましい。0.1μm未満の平均粒子径を有する顔料は、例えば、画像濃度の低下を引き起こす。1.0μmを超える平均粒子径を有する顔料は、例えば、定着性の低下を引き起こす。ここで、体積基準の中位径(D50)とは、一般に、粒度分布が求められている1群の粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたときの累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
【0138】
<分散安定剤>
本実施形態に係る液体現像剤は、液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有していてもよい。本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」が好適である。その他、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」も好ましく用いられ得る。
【0139】
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、1〜10質量%程度、好ましくは、2〜6質量%程度である。
【0140】
<高分子化合物>
本実施形態に係る液体現像剤に含有される高分子化合物Rは、有機高分子化合物である。キャリア液Cに溶解性を有する有機高分子化合物として、液体現像剤の粘度を上げ、且つ、画像形成におけるにじみ発生を抑制できる材料が選択される。有機高分子化合物として、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラールが例示される。好ましくは、有機高分子化合物として、スチレン系エラストマーが用いられる。高分子化合物Rとしては、単一種の有機高分子化合物が用いられてもよいし、或いは、複数種の有機高分子化合物が用いられてもよい。
【0141】
なお、本実施形態に係る液体現像剤では、有機高分子化合物は、キャリア液Cに溶解される。キャリア液Cに溶解している有機高分子化合物は、ゲルの状態であってもよい。有機高分子化合物の種類や分子量によっては、キャリア液C中で相互に絡み合ったゲル状の有機高分子化合物が得られる。ゲル状の有機高分子化合物は、比較的低い流動性を有する。例えば、有機高分子化合物の濃度が高い場合、有機高分子化合物とキャリア液Cとの親和性が低い場合、或いは、気温が低い場合には、ゲル状の有機高分子化合物が得られやすい。一方、キャリア液C中での相互の絡み合いが少ない有機高分子化合物は、比較的流動性が高い溶液となる。
【0142】
液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量は、有機高分子化合物の種類応じて、適切に決定される。有機高分子化合物の含有量は、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。
【0143】
有機高分子化合物の含有量が1質量%未満であると、液体現像剤における十分な粘度が得られず、画像形成におけるにじみ発生が十分に抑制できない可能性がある。また、有機高分子化合物の含有量が10質量%を超えると、シートSの表面上に留まる有機高分子化合物による被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。
【0144】
以下、本実施形態において好適に使用できる有機高分子化合物が更に説明される。
【0145】
(環状オレフィン共重合体)
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィン骨格を主鎖に有し、環境負荷物質を含まない、非晶性で熱可塑性のオレフィン系樹脂であり、透明性、軽量性、低吸水性等に優れる。本実施形態においては、環状オレフィン共重合体は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する有機高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
【0146】
本実施形態で使用可能な環状オレフィン共重合体として、例えば、(1)環状オレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、(2)環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物、(3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物が挙げられる。
【0147】
上述の環状オレフィンとして、以下の物質が例示される。
(a)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;
(b)シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンといった1環の環状オレフィン;
(c)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった2環の環状オレフィン;
(d)トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン;
(e)トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンとの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;
(f)5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン;
(g)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン;
(h)8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;
(i)テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセン);
(j)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;
(k)シクロペンタジエンの4量体といった多環の環状オレフィン。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0148】
上述のα−オレフィンとしては、炭素数が2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンが好ましい。α−オレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンが例示される。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0149】
本実施形態においては、環状オレフィンの重合方法、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法、及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0150】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体の構造には、格別な制限はない。環状オレフィン共重合体の構造は、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0151】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体としては、例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、又は、テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体が好ましく用いられる。環状オレフィン共重合体として、特に、ノルボルネンとエチレンとの共重合体がより好ましい。共重合体中のノルボルネンの含有率は、60〜82質量%が好ましく、60〜79質量%がより好ましく、60〜76質量%がさらに好ましく、60〜65質量%が一層好ましい。ノルボルネン含有率が60質量%未満であると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が低くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜の造膜性が低下する可能性がある。ノルボルネン含有率が82質量%を超えると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が高くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する可能性がある。また、キャリア液Cへの環状オレフィン共重合体の溶解度が過度に低くなる可能性がある。
【0152】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体として、市販されているものが使用されてもよい。例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体として、トパス・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)TB」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)8007」(ノルボルネン含有率:約65質量%)、「TOPAS(登録商標)5013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6015」(ノルボルネン含有率:約79質量%)、「TOPAS(登録商標)6017」(ノルボルネン含有率:約82質量%)が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0153】
(スチレン系エラストマー)
本実施形態で使用できるスチレン系エラストマーとしては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。スチレン系エラストマーとして、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体が挙げられる。ブロック共重合体として、例えば、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAとし、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBとしたときに、化学式1で表される構造を有するブロック共重合体が挙げられる。
【0154】
【化1】

【0155】
上述のブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンが挙げられる。
【0156】
重合体ブロックAは、上述の芳香族ビニル化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、スチレン及び/又はα−メチルスチレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0157】
上述のブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物として、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンが挙げられる。
【0158】
上述のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物として、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。
【0159】
重合体ブロックBは、上述のオレフィン系化合物及び上述の共役ジエン化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン及び/又はイソプレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0160】
上述のブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体が挙げられる。
【0161】
本実施形態で使用されるスチレン系エラストマーとして、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが化学式2で表される構造を有するスチレン−ブタジエン系エラストマー(SBS)が好ましい。
【0162】
【化2】

【0163】
スチレン−ブタジエン系エラストマーは、スチレンモノマーと、共役ジエン化合物であるブタジエンとを共重合させることにより得られる。好ましいスチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレンが例示される。
【0164】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布において、数平均分子量Mnは、好ましくは、1,000〜100,000の範囲内であり(化学式1参照)、より好ましくは、2,000〜50,000の範囲内である。また、重量平均分子量Mwは、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲内であり、より好ましくは、10,000〜500,000の範囲内である。その場合に、重量平均分子量Mwが2,000〜200,000の範囲内、好ましくは3,000〜150,000の範囲内に、少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。
【0165】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーは、(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の比の値は、好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.0以下である。
【0166】
上述のスチレン−ブタジエン系エラストマーにおけるスチレン含有量(重合体ブロックAの含有量)は、好ましくは、5〜75質量%の範囲内であり(化学式2参照)、より好ましくは、10〜65質量%の範囲内である。スチレン含有量が5質量%未満であると、スチレン系エラストマーの被膜のガラス転移温度が低くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜の造膜性が低下する傾向となる。スチレン含有量が75質量%を超えると、スチレン系エラストマーの被膜の軟化点が高くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する傾向となる。
【0167】
本実施形態において、スチレン系エラストマーとして、市販されているものを使用することができる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311、シェル社製の「クレイトン」、旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)」T411、T413、T437や「タフプレン(登録商標)」A、315P 等、JSR社製の「JSR TR1086」、「JSR TR2000」、「JSR TR2250」、「JSR TR2827」;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物として、JSR社製の「ダイナロン」6200P、4600P、1320P 等;スチレン−エチレン共重合体として、ダウ・ケミカル社製の「インデックス」等;組成物として、アロン化成社製の「アロンAR」、三菱化学社製の「ラバロン」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311はスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である。
【0168】
(セルロースエーテル)
セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が、例えば、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい。セルロースエーテルの被膜は、強靭性並びに熱安定性に優れている。
【0169】
本実施形態で使用可能なセルロースエーテルとして、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースといったアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースといったヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースといったヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースといったカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースといったカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース;が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、アルキルセルロースが好ましく、アルキルセルロースのうちでも、エチルセルロースが好ましい。
【0170】
本実施形態においては、セルロースエーテルとして、市販されているものを使用することができる。例えば、エチルセルロースとして、日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」、「エトセル(登録商標)STD7」、「エトセル(登録商標)STD10」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0171】
(ポリビニルブチラール)
本実施形態において使用できるポリビニルブチラール(ブチラール樹脂:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール)は、化学式3に示すように、水酸基を有し、親水性のビニルアルコール単位と、ブチラール基を有し、疎水性のビニルアセタール単位と、アセチル基を有し、ビニルアルコール単位とビニルアセタール単位との中間の性質の酢酸ビニル単位との共重合体である。本実施形態に係る液体現像剤においては、ブチラール化度(親水性部と疎水性部との割合を定めたもの)が60〜85mol%のポリビニルブチラールが被膜形成能(造膜性)に優れる点で好ましい。ポリビニルブチラールは、非極性溶剤に対して溶解性を示すビニルアセタール単位と、紙等の記録媒体に対して結着性を向上させるビニルアルコール単位とを有するため、キャリア液C及び記録媒体の両方に対して高い親和性を有する。
【0172】
【化3】

【0173】
本実施形態で使用し得るポリビニルブチラールとしては、特に限定されない。ポリビニルブチラールとして、例えば、ヘキスト社製の「Mowital(登録商標)」B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H;積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)」BL−1(ブチラール化度:63±3mol%)、BL-2(同:63±3mol%)、BL−S(同:70mol%以上)、BL−L、BH−3(同:65±3mol%)、BM−1(同:65±3mol%)、BM-2(同:68±3mol%)、BM−5(同:63±3mol%)、BM−S;電気化学工業社製の「デンカブチラール」#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−Cが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0174】
(製造方法)
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液C、顔料、有機高分子化合物、及び、必要に応じて分散安定剤を、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ロッキングミルを用いて(ジルコニアビーズ等を用いるメディア分散型機でもよい)、必要に応じて数分〜10数時間かけて、十分に溶解又は混合・分散させることにより、製造することができる。
【0175】
上述の混合・分散により、顔料が微細に粉砕される。上述の如く、液体現像剤中の顔料の平均粒子径(D50)が、好ましくは、0.1〜1.0μmとなるように、混合・分散の時間や回転数を調整する。分散時間が過度に短いと、あるいは回転数が過度に少ないと、顔料の平均粒子径(D50)が1.0μmを超え、上述の如く、定着性が低下する可能性がある。分散時間が過度に長いと、あるいは回転数が過度に多いと、顔料の平均粒子径(D50)が0.1μm未満となり、上述の如く、不十分な現像性に起因する画像濃度の低下が引き起こされる。
【0176】
本実施形態において、キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させた後、顔料(必要に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させることにより、液体現像剤を製造してもよく、あるいは、樹脂溶液(キャリア液Cに有機高分子化合物を溶解させたものをいう)と、顔料分散体(キャリア液Cに顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させたものをいう)とをそれぞれ予め調製しておいて、これらを適宜の混合比(質量比)で混合することにより、液体現像剤を製造してもよい。
【0177】
なお、顔料の平均粒子径(D50)を算出するために、顔料の粒度分布が測定される。顔料の粒度分布は、例えば、以下に示される手法により測定される。
【0178】
製造された液体現像剤又は調製された顔料分散体を所定量サンプリングし、液体現像剤又は顔料分散体に用いられているキャリア液Cと同じキャリア液Cで10〜100倍(体積)に希釈し、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」を用いてフロー方式により、顔料の粒度分布が測定される。
【0179】
また、製造された液体現像剤の粘度は、測定温度25℃において、CBC社製の振動式粘度計「VISCOMATE VM−10A−L」を用いて測定される。
【0180】
(第2実施形態)
<定着原理>
以下、第2実施形態に係る定着原理が説明される。第2実施形態の定着原理は、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響に関連する。尚、第1実施形態に関連して説明された定着原理は、第2実施形態の定着原理に好適に適用される。したがって、第1実施形態に関連する説明と重複する説明は省略される。以下の説明において、第1実施形態と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下において説明されない要素に対し、第1実施形態に係る説明が好適に援用される。
【0181】
<試験例>
図11は、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響を調べるための試験方法を概略的に説明する模式図である。図11(a)乃至図11(d)は、本実施形態に係る試験条件をそれぞれ例示する。
【0182】
本試験において、画像層Iが形成されたシートSが用意された。第1実施形態で関連して説明された試験と同様に、画像層Iは、摺擦板200によって摺擦される。画像層Iに対する摺擦は、図11(a)乃至図11(d)に示される4つの条件でなされた。尚、他の試験条件は、第1実施形態に関連して説明された試験と同様である。
【0183】
第1の試験条件(図11(a))において、画像層Iは、第1試験方向(右から左)に摺擦された。摺擦期間は5秒間であった。摺擦回数は、80回であった。
【0184】
第2の試験条件(図11(b))において、画像層Iは、第1試験方向及び第1試験方向と反対の第2試験方向(左から右)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向の摺擦回数及び第2試験方向の摺擦回数はそれぞれ40回であった。
【0185】
第3の試験条件(図11(c))において、画像層Iは、第1試験方向、第2試験方向並びにこれらに直交する第3試験方向(下から上)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向の摺擦回数及び第2試験方向の摺擦回数はそれぞれ27回であった。第3試験方向の摺擦回数は26回であった。
【0186】
第4の試験条件(図11(d))において、画像層Iは、第1試験方向、第2試験方向、第3試験方向及び第3試験方向と反対の第4試験方向(上から下)に摺擦された。摺擦期間は合計で5秒間であった。第1試験方向乃至第4試験方向の摺擦回数はそれぞれ20回であった。
【0187】
図12は、図11に関連して説明された試験条件下で得られた定着率FRを示すグラフである。図12のグラフの横軸は、図11に関連して説明された摺擦方向の数を示す。図12のグラフの縦軸は、シートS上の画像層Iの定着率FRを示す。図12に示される定着率FRの算出手法は、第1実施形態に関連して説明された算出手法に従う。図11及び図12を用いて、摺擦方向の数が与える定着率FRへの影響が説明される。
【0188】
図12に示される如く、摺擦方向の増加に伴って、定着率FRは直線的に増加した。図11(a)に関連して説明された第1試験条件の下において、定着率FRは56%であった。図11(b)に関連して説明された第2試験条件の下において、定着率FRは73%であった。図11(c)に関連して説明された第3試験条件の下において、定着率FRは84%であった。図11(d)に関連して説明された第3試験条件の下において、定着率FRは94%であった。
【0189】
図12に示されるグラフから、摺擦方向の増加は、比較的短期間の摺擦で高い定着率FRをもたらすことが分かる。
【0190】
<定着装置>
図13は、図11(c)に示された3方向の摺擦動作を行うように形成された定着装置300Aを概略的に示す平面図である。図11及び図13を用いて、定着装置300Aが説明される。
【0191】
定着装置300Aは、第1実施形態に関連して説明された摺擦ローラ310を備える。摺擦ローラ310は、画像層Iに接触する円柱状の接触筒311と、接触筒311を支持するシャフト312を含む。シャフト312は、第1端部315と、第1端部315と反対側の第2端部316とを含む。
【0192】
定着装置300Aは、シャフト312の第2端部316に取り付けられたギア321と、ギア321に連結されるモータ330と、を備える。モータ330は、ギア321を介して、シャフト312を回転させる。この結果、接触筒311は、シャフト312と一体的に回転する。本実施形態において、モータ330は、第2駆動源として例示される。また、ギア321は、伝達要素として例示される。
【0193】
定着装置300Aは、シャフト312を回転可能に支持する一対のスラストベアリング317を備える。一対のスラストベアリング317は、シャフト312の第1端部315と接触筒311との間及びギア321と接触筒311との間にそれぞれ配設される。スラストベアリング317は、シャフト312の回転のみならず、シャフト312の軸方向の変位も許容する。
【0194】
定着装置300Aは、シャフト312の第1端部315に接触するように配設されたカムギア318と、カムギア318に接続されるモータ319とを含む。シャフト312に対して偏心して配設されたカムギア318は、モータ319に噛み合う周面361と、シャフト312の第1端部315に接触する押圧面362とを含む。押圧面362は、シャフト312の第2端部316に向けて徐々に肉厚となる。図13に示されるベクトルは、シートSの搬送方向を意味する第1方向D1を例示する。モータ319は、カムギア318を、シャフト312に対して偏心回転させる。この結果、シャフト312及び接触筒311は、第1方向D1に直交する第1交差方向T1に押圧・変位する。本実施形態において、カムギア318は、カム要素として例示される。また、モータ319は、第1駆動源として例示される。
【0195】
定着装置300Aは、シャフト312の第2端部316に隣接して配設されたコイルスプリング363を備える。コイルスプリング363は、第2端部316に取り付けられたギア321を第1交差方向と反対方向の第2交差方向T2に付勢する。本実施形態において、コイルスプリング363は、付勢要素として例示される。
【0196】
図14は、モータ319による摺擦ローラ310の往復移動を示す。図14の上図は、カムギア318に接近した接触筒311を有する定着装置300Aの概略的な平面図である。図14の下図は、カムギア318から離間した接触筒311を有する定着装置300Aの概略的な平面図である。図11、図13及び図14を用いて、定着装置300Aが更に説明される。
【0197】
上述の如く、カムギア318は、シャフト312に対して、偏心して配設される。図14において、カムギア318とシャフト312との偏心量は符号「e」を用いて表されている。図14の上図に示される如く、カムギア318の薄肉部分にシャフト312の第1端部315が当接するとき、接触筒311は、カムギア318に接近する。図14の下図に示される如く、カムギア318の肉厚部分にシャフト312の第1端部315が当接するとき、接触筒311はカムギア318から離間する。図14において、接触筒311の第1交差方向T1又は第2交差方向T2の変位量は符号「M」を用いて表されている。
【0198】
図14の下図に示される如く、接触筒311がカムギア318から離間したとき、コイルスプリング363は、圧縮される。その後、シャフト312の第1端部315がカムギア318の押圧面362上で移動し、第1端部315とカムギア318の押圧面362との当接位置がカムギア318の肉厚部分に移動すると、コイルスプリング363は伸長する。かくして、コイルスプリング363は、シャフト312の第1端部315とカムギア318との間の接触を適切に維持する。この結果、モータ319によるカムギア318の回転に起因する接触筒311の往復移動が適切に達成される。
【0199】
図15は、定着装置300A及び定着装置300Aと協働してシートS上の画像層Iを定着する搬送装置の概略的な側面図である。図15(a)は、定着装置300A及び搬送装置を全体的に表す。図15(b)は、摺擦ローラ310周囲の拡大図である。図4、図13及び図15を用いて、定着装置300Aが更に説明される。
【0200】
搬送装置は、定着装置300Aの上流に配設される上流搬送装置410Aと、定着装置300Aの下流に配設される下流搬送装置420Aとを含む。上流搬送装置410A及び下流搬送装置420Aは、第1実施形態と同様に、シートSを搬送する搬送要素として例示される。
【0201】
搬送装置は、上流搬送装置410Aと下流搬送装置420Aとの間に配設される中間搬送ユニット450を備える。本実施形態において、上流搬送装置410A及び下流搬送装置420Aに加えて、中間搬送ユニット450も搬送要素として例示される。
【0202】
上流搬送装置410Aは、第1実施形態と同様に上側ローラ411及び下側ローラ412を備える。上流搬送装置410Aは、中間搬送ユニット450へのシートSの搬送を安定化させるための上側ガイド板461と、上側ガイド板461の下方に配設される下側ガイド板462とを備える。上側ローラ411と下側ローラ412とによって搬送されたシートSは、上側ガイド板461及び下側ガイド板462に案内され、中間搬送ユニット450へ供給される。
【0203】
下流搬送装置420Aは、第1実施形態と同様に上側ローラ421及び下側ローラ422を備える。下流搬送装置420Aは、中間搬送ユニット450から上側ローラ421と下側ローラ422との間に形成されるニップ部へのシートSの搬送を安定化させるための上側ガイド板463と、上側ガイド板463の下方に配設される下側ガイド板464とを備える。中間搬送ユニット450によって搬送されたシートSは、上側ガイド板463及び下側ガイド板464に案内され、上側ローラ421と下側ローラ422との間のニップ部へ供給される。
【0204】
図15には、定着装置300Aとして、摺擦ローラ310の接触筒311及びシャフト312が概略的に示されている。接触筒311は、第1実施形態と同様に、シャフト312の周面を取り囲む略円筒形状の弾性層313と、弾性層313の外周面を被覆する不織布層314とを備える。弾性層313は、例えば、スポンジや比較的高い柔軟性を有する他の弾性材料を用いて形成される。不織布層314は、例えば、図4に関連して説明された種類の不織布を用いて形成される。
【0205】
中間搬送ユニット450は、駆動ローラ451と、従動ローラ452と、駆動ローラ451と従動ローラ452との間で延びる無端ベルト453とを含む。シートSは、上流搬送装置410Aから無端ベルト453上に送り出される。駆動ローラ451は、無端ベルト453を周回させ、シートSをその後、下流搬送装置420Aに向けて搬送する。従動ローラ452は、無端ベルト453の周回に応じて回転する。図15中に示されるベクトルの向きは、シートSの搬送方向を意味する第1方向として例示される。また、図15中のベクトルの大きさは、シートSの搬送速度を意味する第1速度V1として例示される。本実施形態において、無端ベルト453は搬送ベルトとして例示される。
【0206】
中間搬送ユニット450は、バックアップローラ340Aと、バックアップローラ340Aに接続されるシリンダ装置350Aと、を備える。シリンダ装置350Aは、バックアップローラ340Aを摺擦ローラ310に対して離接させる。本実施形態において、シリンダ装置350Aは、離接機構として例示される。代替的に、バックアップローラ340Aを摺擦ローラ310に対して離接させることができる他の機構が離接機構として用いられてもよい。
【0207】
シリンダ装置350Aは、市販されるシリンダ装置と同様に、外殻体353と、外殻体353に対して出没可能に形成されたロッド354とを備える。ロッド354は、バックアップローラ340Aを回転可能に支持する先端部を含む。ロッド354は、例えば、外殻体353内に供給される作動流体(例えば、オイルや空気)によって、外殻体353から押し出される。この結果、バックアップローラ340Aは、摺擦ローラ310に向けて変位する。摺擦ローラ310に向けて変位したバックアップローラ340Aは、無端ベルト453を摺擦ローラ310に押しつける。かくして、摺擦ローラ310の周面は、変形され、第1実施形態と同様に、定着装置300Aを通過するシートSの上面に沿う上側ニップ面N1となる。また、バックアップローラ340Aの周面に沿って変形した無端ベルト453の外面は、下側ニップ面N2となる。本実施形態において、シートSの上面に形成された画像(画像層I)に接触する上側ニップ面N1は、接触面として例示される。また、バックアップローラ340A及び無端ベルト453は、圧接部として例示される。
【0208】
中間搬送ユニット450によって搬送されるシートSは、無端ベルト453と摺擦ローラ310との間を通過する。図13に関連して説明されたモータ330は、上側ニップ面N1が第1方向D1に第1速度V1とは異なる第2速度V2で移動するように摺擦ローラ310を回転させる。本実施形態において、第2速度V2は、第1速度V1より大きく設定される。代替的に、第2速度V2は、第1速度V1より小さくともよい。
【0209】
図13に関連して説明されたように、カムギア318の回転により上側ニップ面N1は、第1交差方向T1及び第2交差方向T2に往復移動する。更に、第1方向D1におけるシートSと上側ニップ面N1の速度差により、第1方向D1における画像層Iへの摺擦が達成される。本実施形態において、モータ330は、上側ニップ面N1を第1方向D1へ移動させる。代替的に、モータ330は、上側ニップ面N1を第1方向D1と反対の第2方向へ移動させてもよい。更に、代替的に、定着装置300Aからモータ330及びギア321が除去されてもよい。このとき、画像層Iに対する摺擦は、第1交差方向T1及び第2交差方向T2への接触筒311の往復移動により達成される。この場合、シャフト312は、好ましくは、接触筒311を回転可能に支持する。
【0210】
図16は、シートSが中間搬送ユニット450を通過した後の定着装置300A及び搬送装置の概略的な側面図である。図15及び図16を用いて、定着装置300A及び搬送装置が更に説明される。
【0211】
上流搬送装置410Aは、スイッチレバー465を備える。スイッチレバー465は、下側ローラ412に隣接して配設される回動シャフト466と、回動シャフト466から延出するアーム467とを含む。アーム467は、上側ローラ411と下側ローラ412との間のニップ部の下流において上側ガイド板461と下側ガイド板462とによって規定される搬送路PSを横切る基準位置(図16参照)と、基準位置に対して傾斜した傾斜位置(図15(a)参照)との間で回動する。
【0212】
基準位置に存するアーム467は、上側ローラ411と下側ローラ412とによって送り出されたシートSの先頭縁によって傾斜位置に回動する。回動シャフト466には、捻りコイルバネといった付勢要素(図示せず)が取り付けられる。付勢要素は、アーム467を基準位置に戻すようにスイッチレバー465を付勢する。かくして、上流搬送装置410Aから中間搬送ユニット450へのシートSの搬送が完了すると、アーム467は付勢要素によって基準位置に戻される。
【0213】
アーム467が傾斜位置に到達したとき、スイッチレバー465は、シリンダ装置350Aの外殻体353への作動流体の流入出を制御する流体制御装置(図示せず)に第1トリガ信号を出力する。流体制御装置は、第1トリガ信号に基づき、外殻体353内に作動流体を流入させ、ロッド354を外殻体353から伸長させる。この結果、バックアップローラ340Aは、摺擦ローラ310に接近する。アーム467が基準位置に到達したとき、スイッチレバー465は、流体制御装置に第2トリガ信号を出力する。流体制御装置は、第2トリガ信号に基づき、外殻体353から作動流体を排出させ、ロッド354を外殻体353内に没入される。この結果、図16に示される如く、バックアップローラ340A及び無端ベルト453は、摺擦ローラ310から離間する。かくして、無端ベルト453と摺擦ローラ310間の不必要な摺擦が抑制される。
【0214】
第2実施形態に係る定着装置300A、定着装置300AへのシートSの搬送を担う搬送装置(上流搬送装置410A、中間搬送ユニット450及び下流搬送装置420A)は、第1実施形態に関連して説明された定着装置300並びに搬送装置に代えて、図8乃至図10に関連して説明されたカラープリンタ1に好適に組み込まれる。
【0215】
(第3実施形態)
<定着装置>
図17及び図18は、第3実施形態に係る定着装置及び搬送装置を概略的に示す側面図である。以下、第2実施形態と相違する特徴が説明される。したがって、第2実施形態に関連する説明と重複する説明は省略される。以下の説明において、第2実施形態と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下において説明されない要素に対し、第2実施形態に係る説明が好適に援用される。図3、図17及び図18を用いて、第3実施形態に係る定着装置及び搬送装置が説明される。
【0216】
搬送装置は、定着装置300Aの上流に配設される上流搬送装置410Aと、定着装置300Aの下流に配設される下流搬送装置420Aとを含む。上流搬送装置410A及び下流搬送装置420Aは、第2実施形態と同様に、シートSを搬送する搬送要素として例示される。
【0217】
搬送装置は、上流搬送装置410Aと下流搬送装置420Aとの間に配設される中間搬送ユニット450Bを備える。本実施形態において、上流搬送装置410A及び下流搬送装置420Aに加えて、中間搬送ユニット450Bも搬送要素として例示される。
【0218】
中間搬送ユニット450Bは、駆動ローラ451と、従動ローラ452と、駆動ローラ451と従動ローラ452との間で延びる無端ベルト453とを含む。シートSは、上流搬送装置410Aから無端ベルト453上に送り出される。駆動ローラ451は、無端ベルト453を周回させ、シートSをその後、下流搬送装置420Aに向けて搬送する。従動ローラ452は、無端ベルト453の周回に応じて回転する。
【0219】
中間搬送ユニット450Bは、駆動ローラ451と従動ローラ452との間に配設される上流バックアップローラ343及び下流バックアップローラ344を備える。中間搬送ユニット450Bは、上流バックアップローラ343と下流バックアップローラ344とを回転可能に支持するフレーム349を更に備える。フレーム349は、第2実施形態と関連して説明されたシリンダ装置350Aと同様の離接機構によって、無端ベルト453を摺擦ローラ310に近接させ、或いは、摺擦ローラ310から離間させる。無端ベルト453の摺擦ローラ310に対する近接及び離間は、第2実施形態と同様に、上流搬送装置410Aに設けられたスイッチレバー465によって制御される。また、摺擦ローラ310は、第2実施形態に関連して説明された機構によって、シートS上の画像層Iに対して3方向の摺擦を施与する。本実施形態において、上流バックアップローラ343及び下流バックアップローラ344は、第2実施形態に関連して説明されたバックアップローラ340Aと同様の役割を担う。
【0220】
中間搬送ユニット450Bは、摺擦ローラ310の上流に配設された上流保持ローラ345及び下流保持ローラ346を備える。上流保持ローラ345は、上流バックアップローラ343に対応して配設される。下流保持ローラ346は、下流バックアップローラ344に対応して配設される。
【0221】
スイッチレバー465の傾斜位置への移動に応じて、上流バックアップローラ343は、無端ベルト453を上流保持ローラ345に押しつける。また、スイッチレバー465の傾斜位置への移動に応じて、下流バックアップローラ344は、無端ベルト453を下流保持ローラ346に押しつける。この結果、上流バックアップローラ343/上流保持ローラ345と下流バックアップローラ344/下流保持ローラ346との間の無端ベルト453は、摺擦ローラ310の周面に押しつけられる。かくして、摺擦ローラ310は、フレーム349に向けて湾曲した無端ベルト453の走行経路を規定する。この結果、摺擦ローラ310とシートS上の画像層Iとの間の比較的長い摺擦時間が確保される。このことは、図3に関連して説明された如く、定着率FRの向上に好適に寄与する。
【0222】
摺擦ローラ310がシートS上の画像層Iを摺擦している間、シートSは、上流バックアップローラ343と上流保持ローラ345との間並びに下流バックアップローラ344と下流保持ローラ346との間で適切に保持される。第2実施形態に関連して説明された如く、摺擦ローラ310は、シートSの搬送方向に対して直交する方向にも往復摺擦される。上流バックアップローラ343、上流保持ローラ345、下流バックアップローラ344及び下流保持ローラ346によるシートSの挟持は、シートSの搬送方向に対して直交する方向にも往復摺擦に起因するシートSの搬送不良を抑制する。
【0223】
本実施形態において、シートSは、上流バックアップローラ343、上流保持ローラ345、下流バックアップローラ344及び下流保持ローラ346によって挟持されている。代替的に、シートSは、上流バックアップローラ343及び上流保持ローラ345のみによって挟持されてもよい。更に、代替的に、シートSは、下流バックアップローラ344及び下流保持ローラ346のみによって挟持されてもよい。
【0224】
(第4実施形態)
<摺擦ローラ>
図19は、第4実施形態に関連して説明される摺擦ローラを概略的に示す。図19(a)は、摺擦ローラの概略的な断面図である。図19(b)は、摺擦ローラの概略的な平面図である。第4実施形態に関連して説明される摺擦ローラは、上述の実施形態に示された摺擦ローラ310に代えて好適に適用される。
【0225】
本実施形態において、摺擦ローラ310Cは、硬質のシャフト312C(例えば、金属製のシャフト)と、シャフト312Cの周面に螺旋状に巻回される不織布帯314Cとを備える。不織布帯314Cは、例えば、図4に関連して説明された不織布から形成されてもよい。
【0226】
本実施形態において、バックアップローラ340Cは、シャフト312Cよりも軟質の弾性材料から形成される。バックアップローラ340Cがシャフト312Cに圧接されたとき、バックアップローラ340Cは弾性変形し、バックアップローラ340Cと摺擦ローラ310Cとの間に適切なニップ部が形成される。上述の実施形態に関連した定着原理により、バックアップローラ340Cと摺擦ローラ310Cとの間を通過するシートSに対する摺擦が施与される。かくして、シートS上の画像層Iの定着が好適に達成される。
【産業上の利用可能性】
【0227】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機などの各種の画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0228】
1・・・・・・・・・・・・・・・カラープリンタ(画像形成装置)
2・・・・・・・・・・・・・・・画像形成部
5・・・・・・・・・・・・・・・定着部(定着装置)
200・・・・・・・・・・・・・摺擦板(定着装置/摺擦要素)
220・・・・・・・・・・・・・不織布
300・・・・・・・・・・・・・定着装置
311・・・・・・・・・・・・・接触筒(摺擦要素)
312,312C・・・・・・・・シャフト
314・・・・・・・・・・・・・不織布層(不織布)
315・・・・・・・・・・・・・第1端部
316・・・・・・・・・・・・・第2端部
318・・・・・・・・・・・・・カムギア(カム要素)
319・・・・・・・・・・・・・モータ(駆動源:第1駆動源)
321・・・・・・・・・・・・・ギア(伝達要素)
330・・・・・・・・・・・・・モータ(駆動源:第2駆動源)
340,340A,340C・・・バックアップローラ
341・・・・・・・・・支持筒(圧接部)
343・・・・・・・・・・・・・上流バックアップローラ
344・・・・・・・・・・・・・下流バックアップローラ
345・・・・・・・・・・・・・上流保持ローラ
346・・・・・・・・・・・・・下流保持ローラ
350A・・・・・・・・・・・・シリンダ装置(離接機構)
363・・・・・・・・・・・・・コイルスプリング(付勢要素)
410・・・・・・・・・・・・・上流搬送装置(搬送要素)
420・・・・・・・・・・・・・下流搬送装置(搬送要素)
453・・・・・・・・・・・・・無端ベルト(搬送ベルト)
C・・・・・・・・・・・・・・・キャリア液
D1・・・・・・・・・・・・・・第1方向
D2・・・・・・・・・・・・・・第2方向
I・・・・・・・・・・・・・・・画像層(画像)
N1・・・・・・・・・・・・・・上側ニップ面(接触面)
P・・・・・・・・・・・・・・・着色粒子
R・・・・・・・・・・・・・・・高分子化合物
S・・・・・・・・・・・・・・・シート
T1・・・・・・・・・・・・・・第1交差方向
T2・・・・・・・・・・・・・・第2交差方向
V1・・・・・・・・・・・・・・第1速度
V2・・・・・・・・・・・・・・第2速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送要素と、
前記シートに、液体現像剤を用いて、画像を形成する画像形成部と、
前記シート上の前記画像を定着させる定着装置と、を備え、
該定着装置は、前記シート上の前記画像を摺擦する摺擦要素を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送要素は、前記シートを第1速度で搬送し、
前記定着装置は、前記摺擦要素を動作させるため駆動源を含み、
前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、
前記駆動源は、前記接触面を、前記第1速度と異なる第2速度で移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送要素は、前記シートを第1方向に搬送し、
前記定着装置は、前記摺擦要素を動作させるため駆動源を含み、
前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、
前記駆動源は、前記接触面を、前記第1方向とは異なる第2方向へ移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着装置は、前記摺擦要素を動作させるため駆動源を含み、
前記摺擦要素は、前記シート上の前記画像に接触する接触面を含み、
前記駆動源は、前記接触面を、複数の方向へ移動させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動源は、前記接触面を往復移動させることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送要素は、前記シートを第1方向に搬送し、
前記駆動源は、前記接触面を、前記第1方向に交差する第1交差方向と該第1交差方向と反対の第2交差方向とへ往復移動させる第1駆動源を含むことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送要素は、前記シートを第1速度で搬送し、
前記駆動源は、前記接触面を、前記第1速度と異なる第2速度で、前記第1方向へ移動させる第2駆動源を含むことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記駆動源は、前記接触面を前記第1方向と反対方向に移動させる第2駆動源を含むことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記摺擦要素は、
前記シートに摺擦される接触筒と、
該接触筒を支持するシャフトと、
該シャフトを前記第1交差方向へ押圧するカム要素と、を備え、
前記第1駆動源は、前記カム要素を回転することを特徴とする請求項7又は8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記押圧機構は、前記第2交差方向へ前記シャフトを付勢する付勢要素を含むことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記シャフトは、前記カム要素に接触する第1端部と、該第1端部と反対側の第2端部と、を含み、
前記付勢要素は、前記第2端部に隣接して配設され、
前記押圧機構は、前記第2端部に取り付けられた伝達要素を含み、
前記第2駆動源は、前記伝達要素を介して、前記シャフトを回転させることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記シャフトは、前記接触筒を回転可能に支持することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記搬送要素は、前記接触面に向けて圧接される圧接部を含み、
前記シートは、前記圧接部と前記接触面との間を通過することを特徴とする請求項2乃至12いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記圧接部は、前記シートを搬送する搬送ベルトと、該搬送ベルトを前記摺擦要素に押しつけるバックアップローラと、を含み、
前記シートは前記搬送ベルトと前記接触面との間を通過することを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記バックアップローラを前記摺擦要素に対して離接させる離接機構を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記搬送要素は、前記摺擦要素の上流に配設された上流保持ローラを含み、
前記バックアップローラは、前記搬送ベルトを前記上流保持ローラに押しつける上流バックアップローラを含むことを特徴とする請求項14又は15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記搬送要素は、前記摺擦要素の下流に配設された下流保持ローラを含み、
前記バックアップローラは、前記搬送ベルトを前記下流保持ローラに押しつける下流バックアップローラを含むことを特徴とする請求項14乃至16いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記搬送要素は、前記摺擦要素の上流に配設された上流保持ローラと前記摺擦要素の下流に配設された下流保持ローラとを含み、
前記摺擦要素は、前記上流保持ローラと前記下流保持ローラとの間で前記搬送ベルトに押しつけられた摺擦ローラを含み、
該摺擦ローラは、前記上流保持ローラと前記下流保持ローラとの間で湾曲した前記搬送ベルトの走行経路を規定することを特徴とする請求項14又は15に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記接触面は、不織布を含むことを特徴とする請求項1乃至18いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記液体現像剤は、前記画像を発色させるための着色粒子と、該着色粒子が分散されるキャリア液と、該キャリア液中に溶解又は膨潤された高分子化合物と、を含むことを特徴とする請求項1乃至19いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項21】
液体現像剤を用いて形成された画像を摺擦する摺擦要素を備える定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−53428(P2012−53428A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237189(P2010−237189)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】