説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】装置の大型化、コストアップ、生産性の低下を抑制しつつ、光沢差を表現できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置の代表的な構成は、第1のトナー像を形成する画像形成ステーションY、M、C、Kと、記録シートに第1のトナー像を転写する2次転写ロ−ラ9、2次転写対向ローラ73と、第2のトナー像を形成する画像形成ステーションTと、第2のトナー像を担持する定着ベルト21と、定着ベルト21に担持された第2のトナー像を、トナーのホットオフセットする温度以下であってトナーのガラス転移温度(Tg)以上の範囲で設定された温度に加熱する予備加熱ローラ22と、記録シートの第1のトナー像を転写された面に、第2のトナー像を転写する加熱ローラ23、加圧ローラ24と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、またはこれらの機能を複数備えた複合機などの、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を用いた画像形成装置が広く知られている。白黒のみならず、フルカラーの画像形成を行うものも多く商品化されている。また、画像形成装置が様々な分野で使用されるのに伴い、画質に対するニーズも益々高まっている。
【0003】
画像の品位を向上させる要素の1つとして光沢差表現の付与が求められている。具体的には、出力物の面内に光沢の低い部分と高い部分を混在させることである。例えば、文字情報を構成する画像(文書領域)は光沢を低くして読みやすくする。一方、写真やイラストなどの階調画像(グラフィクス領域)は光沢を高くして見栄えを良くする。また、階調画像の中でも部分的に光沢が高い部分を形成して強調した表現にする。
【0004】
このようなニーズに対して、特許文献1では、光沢度の異なる複数種類のトナーを採用する装置が提案されている。この装置は、グラフィクス領域を光沢の高いトナーで形成し、文書領域を光沢の低いトナーで形成することで光沢差のある画像を形成する。
【0005】
さらに特許文献1では、同一記録シートに2回の画像形成をおこなう装置も提案されている。この装置は、1回目にグラフィクス領域を形成して定着した後、2回目に文書領域を形成して定着する。これにより1回目に形成したグラフィクス領域を2回定着して光沢を高くする。
【0006】
【特許文献1】特開平07−129039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような方法で光沢差を再現しようとする場合に以下のような課題があった。
【0008】
2種類の光沢再現の異なるトナーを採用する方式においてには、その装置がフルカラー出力機であればイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーについて最低でも光沢度の異なる2種類のトナーを用意する必要がある。このため、4つの画像形成部が8つになることによる装置の大型化やコストアップしてしまう。また、8色分の画像形成プロセスにより生産性が低下する恐れがある。
【0009】
また2回の画像形成をおこなう方式においても8色分の画像形成プロセスによる生産性低下の恐れがある。
【0010】
そこで、本発明は装置の大型化、コストアップ、生産性の低下を抑制しつつ、光沢差を表現できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、第1のトナー像を形成する第1の画像形成手段と、記録シートに前記第1のトナー像を転写する第1の転写手段と、第2のトナー像を形成する第2の画像形成手段と、前記第2のトナー像を担持する中間転写体と、前記中間転写体に担持された前記第2のトナー像を、トナーのホットオフセットする温度以下であってトナーのガラス転移温度(Tg)以上の範囲で設定された温度に加熱する予備加熱手段と、前記記録シートの前記第1のトナー像を転写された面に、前記第2のトナー像を転写する第2の転写手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る画像形成方法の代表的な構成は、像担持体上にトナー像を形成し、前記像担持体上のトナー像を加熱して溶融し、溶融したトナー像を記録シートに熱転写する画像形成方法であって、記録シートの同一面上に複数の画像を複数回に分けて熱転写を行うときに、各熱転写時の像担持体上でのトナー像の加熱温度はそれぞれ独立に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置の大型化、コストアップ、生産性の低下を抑制しつつ、光沢差を表現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第一実施形態]
本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法の第一実施形態について、図を用いて説明する。
【0015】
図1は本実施形態に係る画像形成装置の構成図である。図1に示すように、本実施形態の画像形成装置は、中間転写体を用いた複写機能とプリンタ機能を備えたカラー複合機である。
【0016】
装置の上方に、複写原稿を載置して原稿の画像情報を読み取るための原稿読取装置300が設置されている。原稿読取装置300により読み取られた原稿の画像情報は画像処理され、この画像処理されたデータに応じて後述の露光ユニットが制御される。
【0017】
原稿読取装置300の側方に操作部400が設置されている。操作部400にて後述する画像形成モードの選択/指示が為され、制御装置(CPU)500が後述の画像形成機器、定着器10や透明画像形成装置20を制御する。
【0018】
装置内の上部には、4つの画像形成ステーション(第1の画像形成手段)Y、M、C、Kが略水平に並んで設置されている。これら画像形成ステーションY、M、C、Kは、有彩色トナーを用いて、それぞれ第1のトナー像として、イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像を形成する。なお、各画像形成ステーションの構成は現像剤としてのトナーの色が異なる点を除きほぼ同様である。
【0019】
以下、画像形成ステーションYについて詳述するが、画像形成ステーションM、C、Kも同様である。トナーはガラス転移温度(Tg)が65℃のトナーを使用した。
【0020】
画像形成ステーションYには、像担持体としての感光体(以下、感光ドラム)1が回転可能に設置されている。感光ドラム1の周囲には、帯電ローラ(帯電手段)2、露光ユニット(画像露光手段)3、現像器(現像手段)4、1次転写ローラ(1次転写手段)6、クリーナ(クリーニング手段)5が設置されている。
【0021】
また、感光ドラム1と接するように中間転写ベルト(中間転写体)71が回転可能に設置されている。中間転写ベルト71は、従動ローラ72、2次転写対向ローラ73、駆動モータによって駆動される駆動ローラ74に掛け渡されている。そして、中間転写ベルト71を挟んで感光ドラム1の対向位置に1次転写ローラ6が設けられている。従動ローラ72はテンションローラを兼ねており中間転写ベルト71に所定の張力を与える機能を担っている。2次転写対向ローラ73は中間転写ベルト71を挟んで後述の2次転写ロ−ラ9に対向配置されている。また、2次転写対向ローラ73には、2次転写時に高圧電源から2次転写バイアスが印加される。2次転写ロ−ラ9、2次転写対向ローラ73は、第1の転写手段を構成する。
【0022】
画像形成装置の各画像形成機器はいずれもほぼプロセス速度130mm/秒で動作(回転)する。なお、露光ユニット3は感光ドラム1がプロセス速度で回転するのに対応して露光走査速度が設定されている。
【0023】
中間転写ベルト71の下方には、記録シートを収容するカセット100が設置されている。カセット100に収容された記録シートは、ピックアップローラ101により1枚ずつ分離されて搬送され、複数の搬送ローラ対102を経てレジストローラ8へ搬送される。レジストローラ8は、中間転写ベルト71上のトナー像が2次転写部に突入するタイミングと記録シートが2次転写部に突入するタイミングとが合うように記録シートを送出する。
【0024】
次のこの画像形成部の画像形成動作について説明する。まず、図1の反時計回りに回転する感光ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電され、露光ユニット3から画像信号に応じてレーザ光が照射されて静電潜像が形成される。そして、この静電潜像が現像器4によって現像剤を付着させることにより可視像化される。感光ドラムに形成されたトナー像は1次転写ローラ6に1次転写バイアスが印加されることによって中間転写ベルト71に1次転写される。
【0025】
このような現像までの工程を各画像形成ステーション毎に行い、そして、各色のトナー像が互いに重畳されるように中間転写ベルト上に1次転写される。即ち、各画像形成ステーションによって形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が中間転写ベルト71に重ねて転写されてカラー画像が形成される。
【0026】
その後、2次転写対向ローラ73に2次転写バイアスが印加されることにより、中間転写ベルト71上のトナー像が2次転写部に導入された記録シートに一括して2次転写される。
【0027】
トナー像が転写された記録シートPは、定着器10により定着処理され、あるいはそのままに透明画像形成装置20に搬送されて透明トナー像が形成されて機外に排出される。
【0028】
(定着器)
記録シートの搬送方向において2次転写部の下流側には、定着器(定着手段)10が設置されている。
【0029】
この定着器10には、定着部材としての定着ローラ11と、これに圧接して定着ニップを形成するニップ形成部材としての加圧ローラ12が設置されている。定着ローラ11と加圧ローラ12間の圧力は総圧50kgとされている。
【0030】
定着ローラ11は、Al、Feなどの芯金上に弾性層としてのゴム層、トナー離型層としてのフッ素樹脂層が積層された構造とされており、中空の芯金の内部には加熱源としてのハロゲンヒータが設置されている。この加熱源としては、例えば、電磁誘導加熱を使った所謂IH方式などの他の方式のものを使うことも可能である。
【0031】
また、定着ローラ11は、駆動ギア列を介して駆動モータと接続されており、この駆動モータからの駆動力により回転する。
【0032】
加圧ローラ12は、定着ローラ11と同様に、芯金上に弾性層としてのゴム層、トナー離型層としてのフッ素樹脂層が積層された構造とされており、中空の芯金の内部には加熱源としてのハロゲンヒータが設置されている。この加熱源としては、例えば、電磁誘導加熱を使った所謂IH方式などの他の方式のものを使うことも可能である。
【0033】
この加圧ローラ12は定着ローラ11に従動回転する構成とされており定着ローラ11と共に回転する。
【0034】
また、定着ローラ11と加圧ローラ12の表面近傍には、それぞれの温度を検出する検出手段としてのサーミスタが設置されている。そして、定着ローラ11と加圧ローラ12に内蔵されたそれぞれのハロゲンヒータへの通電はこの両サーミスタの出力に応じて制御装置(CPU)により制御される。本例では、定着ローラ11の定着温度は180℃に設定され、加圧ローラ12の定着温度は150℃に設定され、これを維持するように制御装置により温調される。
【0035】
本例の定着器10は2次転写部から搬送されてきた記録シート上のトナー像を定着ニップにて加熱、加圧することにより記録シートに定着処理する構成となっている。
【0036】
また、定着器10(定着ニップ)から送出される際の記録シートの温度(記録シート分離温度)は高温(約90〜110℃)を維持したままとなっている。つまり、本例の定着器10は、記録シートが定着ニップを通過し終わるとほぼ同時に定着器から記録シートが分離される、高温分離方式とされている。
【0037】
なお、上述においてはローラ対を用いた定着器を例に説明したが、定着側と加圧側の少なくとも一方にベルトを用いた構成としても何ら構わない。
【0038】
(透明画像形成装置)
本例では、記録シートへ高光沢画像を追加形成するモードの際には透明画像形成装置20により記録シートの画像面に透明トナー画像を追加形成することにより画像の高光沢化を図っている。
【0039】
透明画像形成装置20は、装置内の上部に、画像形成ステーション(第2の画像形成手段)Tを設けている。画像形成ステーションTは、透明トナー(無色なトナー)を用いて、透明トナー像(第2のトナー像)を形成する。
【0040】
透明画像形成装置20は、定着ベルト(中間転写体)21を備え、この定着ベルト21の周囲に回転方向に沿って感光ドラム201、予備加熱ローラ(予備加熱手段)22、加熱ローラ23、加圧ローラ24、冷却ローラ(冷却手段)25を有している。
【0041】
加熱ローラ23と加圧ローラ24は、第2の転写手段を構成し、定着ベルト21を挟んで定着ニップを形成する。感光ドラム201の周囲には先述の画像形成ステーションY同様に、帯電ローラ202、露光ユニット203、現像器204、1次転写ローラ206、クリーナ205が設置されている。記録シート搬送方向においては上流からレジストローラ28、定着ニップの順に配置されている。
【0042】
現像器204は透明トナーを使用してトナー像を現像するもので、透明トナーとキャリアを含む2成分現像剤を使用している。ここで透明トナーとはカラートナーと同様に熱可塑性樹脂で構成されるもので着色顔料を含まない、実質的に無色透明なトナーである。透明トナーはカラートナーと同様にガラス転移温度(Tg)が65℃の物を使用した。またキャリアを用いない1成分現像剤を使用しても実施可能である。
【0043】
定着ベルト21は、感光ドラム201に形成された透明トナー像を担持する像担持体としての機能と、定着ベルト21上に転写されたトナー像を加熱して記録シートPに定着する為の定着部材としての機能を持つ。
【0044】
本例では、定着ベルト21は基材としてポリイミドなどの熱硬化性樹脂を用いているが、他の耐熱性樹脂を使うこともできる。そして、この基材上に弾性層としての耐熱性のあるシリコンゴム層が形成されている。なお、シリコンゴムの代わりにフッ素ゴムなども利用可能である。さらに、シリコンゴム層上にトナー離型層としてフッ素樹脂層が形成されている。
【0045】
また、定着ベルト21の厚さは、薄過ぎるとベルト自身の強度が不十分となり、厚過ぎるとベルトを加熱するために必要な熱量が多くなりトナーへの加熱や溶融定着が不十分になる恐れがある。そこで、本例では、定着ベルト21の厚さが、100〜300μmの範囲のものを用いている。
【0046】
定着ベルト21の電気抵抗が高いと、転写帯電によってチャージアップを起こしてしまってトナー画像の飛び散り、転写不良を発生させる恐れがあり、定着ベルト21の除電手段が必要になる。このため、定着ベルト21は、体積抵抗を1×1013Ω・cm以下、表面抵抗1×1015Ω/□以下とする。抵抗率の測定はJISK6911に従い23℃50%の環境下でアドバンテスト社製の超高抵抗計R8340を用い、主電極の外径φ50mm、ガード電極の内径φ70mmを使用して測定した。測定条件は印加電圧を100V、充電時間を60秒にして測定した。
【0047】
実施例では厚み80μmのポリイミドの上にシリコンゴム層を100μm設け、表面にPFAをコートして全体の厚みを200μmとし、体積抵抗を5×10Ω・cm、表面抵抗1×1011Ω/□とした。
【0048】
定着ベルト21の表面性は出力画像の仕上がりに大きく影響する。表面粗さが小さいと定着ベルト21表面の傷が画像に現れやすくなり、表面粗さが高いと出力画像の光沢が得られない。本実施例ではJISZ8741鏡面光沢度−測定方法により60°光沢度で約40〜60%、JISB0601表面性状による表面粗さRzを約1μmのベルトを採用した。
【0049】
定着ベルト21は予備加熱ローラ22、加熱ローラ23、冷却ローラ25により回転可能に掛け回されており、本例では加熱ローラ23が定着ベルト21を駆動する駆動ローラとしての機能を担っている。
【0050】
予備加熱ローラ22は熱伝導性の良い金属製の中空シャフトで構成されている。予備加熱ローラ22の内部に加熱源としてのハロゲンヒータが設置されている。予備加熱ローラ22と対向する定着ベルト21の外面近傍に、予備加熱ローラ22付近での定着ベルト21の温度を検出する検出手段としてのサーミスタが設置されている。このサーミスタの出力を基に制御装置(CPU)がハロゲンヒータへの通電を可変することによって、定着ベルト21の予備加熱ローラ22に巻きつけられた部分での温度が一定となるように制御されている。
【0051】
加熱ローラ23は熱伝導性の良い金属製の芯金とこの上に弾性層としてのゴム層が設けられた中空のローラとされている。ゴム層を持たない金属ローラのみでも構わない。詳細には、芯金は、直径44mm、厚さ5mmのアルミニウム製の中空パイプにより構成され、ゴム層はJIS−A硬度が50度、厚さ300μmのシリコンゴムにより構成される。加熱ローラ23の内部には加熱源としてのハロゲンヒータが設置されている。この加熱源としては、例えば、電磁誘導加熱を使った所謂IH方式のものを使うことも可能である。
【0052】
また、加熱ローラ23と対向する定着ベルト21の外面近傍に、定着ベルト21の温度を検出する検出手段としてのサーミスタが設置されている。このサーミスタの出力を基に、制御装置(CPU)がハロゲンヒータへの通電を可変することによって、加熱ローラ23に巻きつけられた部分での定着ベルト21の温度が130℃を維持するように制御されている。ここで加熱ローラ23の温度をある程度低めに設定することで定着器10により定着処理された記録シートP上のトナー画像が再溶融してしまって光沢が上がったりホットオフセットしてしまうのを防止できる。
【0053】
この定着ベルト21を挟んで加熱ローラ23と対向する位置に加圧ローラ24が回転可能に設置されている。加圧ローラ24は定着ベルト21に従動回転する構成とされている。
【0054】
この加圧ローラ24は金属製の芯金とこの上に弾性層としてのゴム層が設けられた中空のローラとされている。このゴム層は厚さ3mmのシリコンゴムにより構成されている。本例では、加圧ローラの内部にもハロゲンヒータなどの加熱源を設置し、加熱ローラ23とともにメディアの加熱を行っている。この加熱源としては、例えば、電磁誘導加熱を使った所謂IH方式など他の方式のものを使うことも可能である。
【0055】
加圧ローラ24は加熱ローラ23と共に定着ベルト21を挟み込むように総圧50kg(490N)で加圧されている。即ち、この加圧ローラ24は定着ベルト21との間でニップを形成する機能を担っており、このときの定着ニップの記録シート搬送方向に沿った長さ(ニップ幅)は5mmとされている。
【0056】
また、加圧ローラ24の外面近傍に、加圧ローラ24の温度を検出する検出手段としてのサーミスタが設置されている。このサーミスタの出力を基に制御装置(CPU)がハロゲンヒータへの通電を可変することによって、加圧ローラ24の温度が90℃を維持するように制御されている。
【0057】
加熱ローラ23の下流側の定着ベルト21に対向して冷却装置26、冷却ローラ25を配置している。
【0058】
冷却装置26は冷却ファンを用いており、この冷却ファンにより定着ベルト21を冷却する構成とされている。
【0059】
冷却ローラ25は内部にエアーを通すことで温度を下げて冷却ローラ25に架けられた定着ベルト21を冷却している。
【0060】
冷却装置26、冷却ローラ25は、定着ベルト21が転写部に到達するまでに、トナーや感光ドラムが熱の影響を受けない温度まで冷却されるようにその冷却能力が設定されている。本実施例では冷却ローラ25通過後の定着ベルト21が50℃以下になるように設定した。
【0061】
なお、冷却装置26や冷却ローラ25の冷却方法としては、上述した例に限らず、水などの冷媒を内包したヒートパイプ、ヒートシンクやペルチェ素子を接触させて冷却する構成としても良い。また、冷却装置の設置箇所を定着ベルト21の両面に設置し、定着ベルト21の両面側から冷却するようにしても構わない。
【0062】
予備加熱ローラ22は、定着ベルト21に担持されたトナー像を、トナーのホットオフセットする温度以下であってトナーのガラス転移温度(Tg)以上の範囲で設定された温度(予備加熱温度)に加熱する。予備加熱ローラ22の温度と記録シートP上に定着された透明トナー画像の60°光沢度の関係を図7に示す。このように、予備加熱温度を変えることで定着後の透明トナーの光沢度を変えることができる。
【0063】
(透明画像形成装置の動作)
次に、透明画像形成装置20の動作について説明する。
【0064】
定着器10により定着処理されて約70℃の状態にある記録シートPが透明画像形成装置20に導入されると、記録シートはレジストローラ28で待機する。
【0065】
感光ドラム201、定着ベルト21は、いずれもほぼプロセス速度130mm/秒で動作(回転)する。
【0066】
前述のフルカラー画像形成部と同様のプロセスで感光ドラム1に形成された透明トナー画像は、転写部で転写ローラ206に約20μAの転写バイアスを印加することで定着ベルト21表面に転写される。
【0067】
〔光沢差モード(1)〕
光沢差モード(1)においては予備加熱ローラ22を70℃を維持するように設定する。定着ニップでは加熱ローラ23と加圧ローラ24が130℃に制御されているが、通紙時の紙表面温度は100℃程度であり、ホットオフセットが発生する180℃よりも十分に低くなっている。
【0068】
定着ベルト21は、予備加熱ローラ22を通過する際にTg以上、具体的には約70℃まで加熱されて透明トナー像は弱溶融、軟化する。このようにTg以上に加熱することで加熱ローラ23の温度が低めに設定されていても予備加熱で透明トナーが弱溶融しているので記録シートPには定着可能である。
【0069】
定着ベルト21上の透明トナー像の位置と同期してレジストローラ28が駆動して記録シートPが定着ニップに送り込まれる。
【0070】
定着ベルト上では透明トナー像は十分に溶融していなく、ほぼ加熱ローラ23の熱によって記録シートPに熱転写されるので低光沢なトナー画像を形成する。このときのカラートナー画像部の光沢度は約30%、透明トナー部の光沢度は約20%であった。このようにして記録シート上のフルカラー画像中に、先に形成された個所よりも部分的に約10%低光沢なパターンを形成できる。
【0071】
〔光沢差モード(2)〕
光沢差モード(2)においては予備加熱ローラ22を120℃を維持するように設定する。加熱ローラ23と加圧ローラ24は、光沢差モード(1)と同様に130℃に設定した。
【0072】
定着ベルト21は予備加熱ローラ22を通過する際にTg以上、具体的には約120℃まで加熱されて透明トナー像は溶融、軟化する。これにより加熱ローラ23の温度が低めに設定されていても透明トナーが記録シートPには定着可能である。
【0073】
定着ベルト上で十分に溶融している透明トナー像は、記録シートPに熱転写される際に定着ベルト21の表面性に倣って平滑、高光沢なトナー画像を形成する。このときのカラートナー画像部の光沢度は約30%、透明トナー部の光沢度は約40%であった。このようにして記録シート上のフルカラー画像中に、先に形成された個所よりも部分的に約10%高光沢なパターンを形成できる。
【0074】
〔均一光沢モード〕
均一光沢モードでは、予備加熱ローラ22を100℃を維持するように設定する。加熱ローラ23と加圧ローラ24は、光沢差モード(1)(2)と同様に130℃に設定した。
【0075】
定着ベルト21は予備加熱ローラ22を通過する際にTg以上、具体的には約100℃まで加熱されて透明トナー像は半溶融、軟化する。定着ベルト上で半溶融した透明トナー像は、記録シートPに熱転写される。このようにしてカラートナー部も透明トナー部も光沢度が約30%となり、記録シート上のフルカラー画像中に、先に形成された個所とほぼ同じ光沢のパターンを形成できる。
【0076】
(画像形成装置の操作)
画像形成装置を操作するには図3に示す画像形成装置の操作部400の操作画面あるいは図4に示すパソコンのプリンタドライバ画面から「光沢差プリント」や「均一光沢プリント」を指示しておこなう。これによって透明画像形成装置20を動作させるか否かを選択する。予備加熱ローラ22の設定温度は、指定されたプリントモードに応じて変更可能である。
【0077】
光沢差プリントや均一光沢プリントを指定した場合には、記録シートPは定着ニップを通って経路Aに排出される。光沢差プリントや均一光沢プリントを指定しない場合には、記録シートPは定着ニップを通らずに経路Bに排出される。
【0078】
[第二実施形態]
次に本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法の第二実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
図2は本実施形態に係る画像形成装置の構成図である。図2に示すように、本実施形態の画像形成装置は、上記第一実施形態の定着器10と加熱ローラ23及び加圧ローラ24の定着ニップとの間の搬送経路に、冷却ファン(冷却手段)27を設けたものである。
【0080】
フルカラー画像形成部の定着工程において、厚紙の定着や両面の定着などの条件によっては記録シートPに加わる熱量が多くなり、フルカラー画像形成後に透明画像形成装置20に導入される記録シートPの温度が高くなる。この場合、加熱ローラ23を通過する時にフルカラー画像が再溶融することにより光沢が上がりすぎてしまったり、ホットオフセットしてしまう恐れがある。
【0081】
本実施形態では、記録シートPは、定着ニップに搬送される前に冷却ファン27により冷却される。このとき、記録シートPにすでに定着されたフルカラートナー像は、トナーのガラス転移温度(Tg)よりも十分に低い温度、具体的には、約50℃以下まで冷却される。このため、定着ニップにおいてその一部は軟化、溶融するが十分には溶けきらないので高光沢にはならない。またフルカラートナー像のホットオフセットも起こらない。
【0082】
[第三実施形態]
次に本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法の第三実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
図5は本実施形態に係る画像形成装置の構成図である。図5に示すように、本実施形態の画像形成装置は、黒トナーを用いた単色画像形成装置と透明画像形成装置を一体的に構成したものである。上記第一実施形態のフルカラー画像形成部、定着ベルト21に変えて、黒色の画像形成部を設け、黒色のトナー像を記録シートPに直接転写する。各画像形成機器のプロセス速度は、いずれもほぼ130mm/secとした。
【0084】
黒トナー画像形成後に定着器を設けず、透明画像形成装置の定着部において黒トナーと透明トナーを一括で定着する。そのため、加熱ローラ23の温度を黒トナーも定着できるように180℃とし、加圧ローラ24の温度を150℃とし、予備加熱ローラ22の温度は100℃とした。
【0085】
本実施形態でも上記第一実施形態と同様のトナーを使用し、上記設定で十分に軟化、溶融すると共に、ホットオフセットは発生しない。
【0086】
このような構成とすることで、予備加熱ローラ22で加熱された透明トナーの方が黒トナーよりも溶融して、定着後に高光沢となり、黒トナーのみの領域との光沢差がある出力物が得られる。
【0087】
以上説明したように、上記実施形態の画像形成によると、図8に示すように記録シートP上で色トナーT1の上から透明トナーT2を形成することで透明トナーT2による色トナーT1と光沢度の異なるパターンの形成が可能となる。
【0088】
[第四実施形態]
次に本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法の第四実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0089】
図6は本実施形態に係る画像形成装置の構成図である。図6に示すように、本実施形態の画像形成装置は、4色のトナーを使用するフルカラープリンターである。本実施形態の画像形成装置は、上記第一実施形態の透明画像形成装置20、定着器10を省略している。そして、従動ローラ72に変えて予備加熱ローラ22を設け、2次転写対向ローラ73に変えて加熱ローラ23を設け、2次転写ロ−ラ9に変えて加圧ローラ24を設けたものである。
【0090】
本実施形態の画像形成装置は、記録シートPの同一面に複数の画像を複数回に分けて熱転写を行う。各熱転写時の中間転写ベルト71に担持されたトナー像の加熱温度はそれぞれ独立に設定可能である。
【0091】
感光体1上にトナー像を形成して中間転写ベルト71に1次転写するまでの工程は、上記第一実施形態のフルカラー画像形成装置と同様である。中間転写ベルト71は予備加熱ローラ22と加熱ローラ23に架けられている。1次転写されたトナー像は、中間転写ベルト71の上で予備加熱ローラ22により加熱、溶融され、加熱ローラ23、加圧ローラ24により記録シートPに熱転写される。加熱ローラ23は180℃に、加圧ローラ24の温度を150℃に設定した。
【0092】
〔均一光沢モード〕
均一光沢モードでは予備加熱ローラ22を100℃を維持するように設定して中間転写ベルト71上に1次転写されたトナー像を軟化溶融させてから記録シートPに熱転写するようにした。
【0093】
〔光沢差モード〕
光沢差のある画像を形成するモードにおいては、まず均一光沢モードと同様の条件で画像形成した記録シートPを搬送経路切り替え手段31を経由して経路(再搬送路)Cへと搬送する。そして、トナー像を転写された記録シートPを定着ニップへ再度搬送し、記録シートPの同一面に再び画像形成をする。
【0094】
このとき予備加熱ローラ22を120℃(1回目のトナー像の熱転写時とは異なる設定温度)を維持するように設定することで、中間転写ベルト71上に1次転写されたトナー像を十分に軟化溶融させてから記録シートPに熱転写する。
【0095】
このようにすることで先に(1回目に)形成されたトナー像よりも高光沢な画像を、先に(1回目に)形成されたトナー像の上側に重ねて形成することができる。
【0096】
一方、予備加熱ローラ22を70℃を維持するように設定することで、中間転写ベルト71上に1次転写されたトナー像をあまり溶かさずに記録シートPに熱転写することも可能である。このようにすることで先に(1回目に)形成されたトナー像よりも低光沢な画像を、先に(1回目に)形成されたトナー像の上側に重ねて形成することができる。
【0097】
本実施形態では、記録シート搬送経路に冷却手段を設けていないが、必要に応じて第二実施形態に記載したように、記録シート搬送経路上で記録シートを冷却することで2回目の定着時に画像不良を防止することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第一実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図2】第二実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図3】画像形成装置の操作部の操作画面の説明図である。
【図4】プリンタドライバ操作画面の説明図である。
【図5】第三実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図6】第四実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図7】加熱温度と光沢度の関係のグラフである。
【図8】記録シート面でのトナー構造の説明図である。
【符号の説明】
【0099】
T1…色トナー
T2…透明トナー
P…記録シート
Y〜K…画像形成ステーション(第1の画像形成手段)
T…画像形成ステーション(第2の画像形成手段)
1…感光体
2…一次帯電器
3…露光手段
4…現像器
5…クリーナー
6…一次転写帯電器
8…レジストローラ
9…二次転写ローラ(第1の転写手段)
10…定着器
11…定着ローラ
12…加圧ローラ
20…透明画像形成装置
21…定着ベルト(中間転写体)
22…予備加熱ローラ(予備加熱手段)
23…加熱ローラ(第2の転写手段)
24…加圧ローラ(第2の転写手段)
25…冷却ローラ
26…冷却ファン
27…冷却ファン(冷却手段)
28…レジストローラ
71…中間転写ベルト
72…従動ローラ
73…バックアップローラ(第1の転写手段)
74…駆動ローラ
100…カセット
101…ピックアップローラ
102…搬送ローラ対
201…感光体
202…一次帯電器
203…露光手段
204…現像器
205…クリーナー
206…一次転写帯電器
300…原稿読取装置
400…操作部
500…制御装置(CPU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトナー像を形成する第1の画像形成手段と、
記録シートに前記第1のトナー像を転写する第1の転写手段と、
第2のトナー像を形成する第2の画像形成手段と、
前記第2のトナー像を担持する中間転写体と、
前記中間転写体に担持された前記第2のトナー像を、トナーのホットオフセットする温度以下であってトナーのガラス転移温度(Tg)以上の範囲で設定された温度に加熱する予備加熱手段と、
前記記録シートの前記第1のトナー像を転写された面に、前記第2のトナー像を転写する第2の転写手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記予備加熱手段の設定温度は、指定されたプリントモードに応じて変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の転写手段と前記第2の転写手段の間に設けられ、前記第1のトナー像を定着する定着手段と、
前記定着手段と前記第2の転写手段の間に設けられ、記録シート上の第1のトナー像の温度をトナーのガラス転移温度(Tg)以下に冷却する冷却手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1のトナー像の形成に用いられる第1のトナーは有彩色トナーであり、
前記第2のトナー像の形成に用いられる第2のトナーは無色なトナーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
トナー像を形成する画像形成手段と、
前記トナー像を担持する中間転写体と、
前記中間転写体に担持された前記トナー像を、トナーのホットオフセットする温度以下であってトナーのガラス転移温度(Tg)以上の範囲で設定された温度に加熱する予備加熱手段と、
記録シートに前記トナー像を転写する転写手段と、
前記トナー像を転写された記録シートを前記転写手段へ再度搬送する前記トナー像を再搬送路と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
像担持体にトナー像を形成し、前記像担持体に形成したトナー像を加熱して溶融し、溶融したトナー像を記録シートに熱転写する画像形成方法であって、
記録シートの同一面に複数の画像を複数回に分けて熱転写を行うときに、各熱転写時の像担持体に担持されたトナー像の加熱温度はそれぞれ独立に設定することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
像担持体にトナー像を形成し、前記像担持体に形成したトナー像を加熱して溶融し、溶融したトナー像を記録シートに熱転写する画像形成方法であって、
第1のトナーで構成される第1のトナー像を記録シートに熱転写した後に、第2のトナーで構成される第2のトナー像を記録シートの同一面に熱転写する時には、第1のトナー像の熱転写時とは異なる設定温度で加熱してから記録シートに熱転写することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
第1のトナーで構成される第1のトナー像を記録シートに転写した後に、第2のトナーで構成される第2のトナー像を記録シートの同一面に転写する画像形成方法であって、
前記第2のトナー像の温度を、前記第2のトナー像を転写する転写部に記録シートを搬送するときの前記第1のトナー像の温度よりも高い温度に加熱してから前記第2のトナー像を記録シートに定着する画像形成方法。
【請求項9】
第1のトナーで構成される第1のトナー像を記録シートに転写した後に、第2のトナーで構成される第2のトナー像を記録シートの同一面に転写する画像形成方法であって、
前記第1のトナー像が第1のトナーのガラス転移温度(Tg)以下の状態で、記録シートを第2のトナー像の転写部に搬送し、
前記第2のトナー像を第2のトナーのトナーのガラス転移温度(Tg)以上であってホットオフセットする温度以下に加熱してから記録シートに熱転写する画像形成方法。
【請求項10】
第1のトナーは有彩色トナーであり、第2のトナーは無色なトナーであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−32935(P2010−32935A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197157(P2008−197157)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】