説明

画像形成装置

【課題】反転排紙路で紙詰まりした用紙を容易に取り除く事ができきる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成部13における画像形成処理後のトナー画像に対し定着処理が施された用紙Pを表裏反転する反転搬送路R3の互いに対向した壁面の一方(壁面201)が、装置本体11に開閉可能に設けられた開閉扉20に形成されてなる画像形成装置10であり、開閉扉20の回動支点位置(回動軸本体40の軸心位置)で当該開閉扉20を回動自在に支持する開閉扉支持構造が設けられ、開閉扉支持構造は、開閉扉20が閉止された状態で反転搬送路R3の所定の幅寸法が確保される一方、開閉扉20が開放されることにより反転搬送路R3から離間する方向へ移動するべく構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やファクシミリ装置、さらにはコンピュータに接続されたプリンタ等の画像形成装置に関するものであり、特に定着処理後の用紙を反転状態で排紙するように構成されてなる画像形成装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているような画像形成装置が知られている。この画像形成装置は、画像形成部から定着装置を介し水平方向に向けて搬送されてくるトナー画像定着処理済の用紙を、上方に向かう反転搬送路を介して胴内排紙トレーへ表裏反転状態(いわゆるフェースダウン状態)で排紙するように構成されている。
【0003】
反転搬送路は、装置本体側の壁面と、定着装置より下流側の適所を回動支点として正逆回動することにより開閉可能に装置本体に取り付けられた開閉扉の内壁面との間に形成されいる。
【0004】
従って、反転搬送路で紙詰まりが生じた場合、開閉扉を開放することによって反転搬送路に詰まっている用紙が外部に露出した状態になるため、この外部に露出した用紙を反転搬送路から取り除くことにより紙詰まりが解消される。
【特許文献1】特開平9−328249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、用紙の搬送路は、用紙が通過し得るだけの幅寸法を備えていれば充分であることに加え、装置のコンパクト化を図るために開閉扉は可能な限り反転搬送路の装置本体側の壁面に近づけて設けられるのが好ましいが、あまり近づけ過ぎると開閉扉を開けたときその下端部が定着装置と干渉してしまうことから、通常、回動支点は、定着装置から適度に離間した位置に設けられている。これについては特許文献1のものも同様である。
【0006】
従って、開閉扉が開かれたときに定着装置と干渉しない位置であって、かつ、最大限に定着装置寄りの位置に当該開閉扉の回動支点が設定されるのであるが、それでも開閉扉が開放された状態において当該開閉扉の回動支点より下側の部分が反転搬送路の方向に向けて突出し、この突出した開閉扉の下端部が紙詰まりを起こしている用紙を定着装置に向けて押し付け、用紙が開閉扉と定着装置の壁面とに挟持された状態になるため、詰まった用紙を容易に取り除くことができなくなるという問題点が存在した。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解消するためになされたものであり、反転搬送路で紙詰まりした用紙を容易に取り除くことができ、これによって紙詰まり解消作業の作業性を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、装置本体に開閉扉が開閉可能に設けられてなる画像形成装置において、前記開閉扉の回動支点位置で当該開閉扉を回動自在に支持する開閉扉支持構造が設けられ、前記開閉扉支持構造は、開閉扉が閉止された状態で用紙を反転して排紙する反転搬送路に所定の幅寸法が確保される一方、開放されることにより開閉扉が前記反転搬送路から離間する方向へ移動するべく構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成によれば、開閉扉が閉止された状態で反転搬送路の所定の幅寸法が確保され、これによって定着処理後の用紙を表裏反転して排紙するための反転搬送路が適正に形成される一方、開閉扉が開放された状態では、当該開閉扉は、その下端が反転搬送路から離間する方向へ移動しているため、開放された開閉扉の回動支点位置側と装置本体側の壁面との間に余裕のある空間が形成される。従って、反転搬送路で紙詰りが生じた場合、開閉扉を開放することで形成される余裕のある空間の存在で、詰まった用紙の取り出し作業が容易になる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記開閉扉支持構造は、前記開閉扉の下端位置から用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に向けて一体的に突設された回動軸と、装置本体側に設けられた前記回動軸を支持する外方に向かって先下がりに傾斜した長孔とを備えて構成され、前記回動軸には、開閉扉が閉止された状態で装置本体内へ向けて横方向に延びるように固定された突起が設けられている一方、前記長孔には、その上部位置に開閉扉が閉止された状態で前記突起が嵌り込む凹溝が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成によれば、開閉扉が開放された状態では、回動軸の突起が長孔の凹溝から外れた状態で当該回動軸が先下がりに形成された長孔の下端部に位置し、これによって反転搬送路の装置反対側の壁面から離間した状態になる一方、開閉扉が閉止されることにより、開閉扉と一体回動する回動軸に設けられた突起が開閉扉の閉止動作に応じて上方が反転搬送路側に寄った長孔上部の凹溝へ掻き上がるようにして嵌り込んでいき、最後に突起が完全に凹溝に嵌り込むことによって開閉扉の閉止状態が安定する。
【0012】
このように、請求項2記載の発明は、開閉扉の開閉動作に応じて回動軸の突起が長孔の凹溝に嵌り込んだり、凹溝から外れたりすることにより開閉扉が閉止された状態で反転搬送路が正常に確保されるとともに、開閉扉が開放された状態で開閉扉と反転搬送路の装置本体側の壁面との間の離間距離が大きくなるようにしているため、開閉扉支持構造を簡単な構造のものとした上で紙詰まりの解消作業を容易に行い得るようになっている。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記開閉扉は、開放された状態で定着処理後の用紙を受ける排紙トレーとして利用されるものであることを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成によれば、定着処理後の用紙を上下反転させずに、いわゆるフェイスアップ状態で排紙するに際し、開閉扉が排紙トレーとして利用されるため、フェイスアップ排紙用の専用の排紙トレーを別途設ける場合に比較し装置コストの低減化に貢献する。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記反転搬送路の上流端は、用紙に両面印刷を施す際に片面の印刷処理が完了した定着処理後の用紙を前記画像形成部へ返送する返送搬送路の上流端に接続されていることを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成によれば、片面の印刷処理が完了した用紙を一旦反転搬送路に送り込んだ後、逆送して返送搬送路へ向かわせ反転処理を施すことにより、当該用紙を他の片面に印刷処理し得る状態(すなわち両面印刷を施し得る状態)で画像形成部へ返送することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、開閉扉の回動支点位置で当該開閉扉を回動自在に支持する開閉扉支持構造は、開閉扉が閉止された状態で前記反転搬送路の所定の幅寸法が確保される一方、開放されることにより開閉扉が前記反転搬送路から離間する方向へ移動するべく構成されているため、まず、開閉扉が閉止された状態で反転搬送路に所定の幅寸法が確保され、これによって定着処理後の用紙を表裏反転して排紙するための反転搬送路を適正に形成することができる。また、開閉扉が開放された状態では、当該開閉扉は反転搬送路から離間する方向へ移動しているため、開放された開閉扉の回動支点位置側と反転搬送路の装置本体側の壁面との間に余裕のある空間を形成することができ、これによって反転搬送路で紙詰りが生じた場合、開閉扉を開放することで形成される余裕のある空間の存在により詰まった用紙の取り出し作業を容易に行なうことができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、開閉扉の開閉動作に応じて回動軸の突起が長孔の凹溝に嵌り込んだり、凹溝から外れたりすることにより開閉扉が閉止された状態で反転搬送路が正常に確保されるとともに、開閉扉が開放された状態で開閉扉と反転搬送路の装置本体側の壁面との間の離間距離を大きくするようにしているため、開閉扉支持構造を簡単な構造のものとした上で紙詰まりの解消作業の作業性を向上させることができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、定着処理後の用紙を上下反転させずに、いわゆるフェイスアップ状態で排紙するに際し、開閉扉が排紙トレーとして利用されるため、排紙トレーを別途設ける場合に比較し装置コストの低減化に貢献することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、反転搬送路の上流端は、用紙に両面印刷を施す際に片面の印刷処理が完了した定着処理後の用紙を前記画像形成部へ返送する返送搬送路の上流端に接続されているため、片面の印刷処理が完了した用紙を一旦反転搬送路に送り込んだ後、逆送して返送搬送路へ向かわせ反転処理を施すことにより、当該用紙を他の片面に印刷処理し得る状態(すなわち両面印刷を施し得る状態)で画像形成部へ返送することができ、これによって画像形成装置の汎用性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態の概要を示す正面断面視の説明図である。なお、図1において、紙面に直交する方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0022】
図1に示すように、画像形成装置10は、箱形を呈した装置本体11内に、複数枚の用紙Pを貯留可能に構成された用紙貯留部12と、この用紙貯留部12から上流側用紙搬送路R1を介して搬送されてきた用紙Pに対し画像形成処理を施す画像形成部13と、この画像形成部13で画像形成処理が施されることによりトナー画像が転写された用紙Pに対しトナー画像の定着処理を施す定着部14と、この定着部14で定着処理が完了した用紙Pを排紙するべく搬送する排紙搬送部15と、この排紙搬送部15を通って搬送されてきた用紙Pを受ける排紙部16とを備えた基本構成を有している。
【0023】
前記用紙貯留部12には、所定の用紙トレイが設けられ、この用紙トレイに装填された用紙束からピックアップローラ等の用紙繰出し機構を介して1枚ずつの用紙Pが繰り出され、適所に設けられた搬送ローラ17の駆動により上流側用紙搬送路R1を通って画像形成部13に導入されるようになっている。
【0024】
前記画像形成部13には、軸心回りに回転する感光体ドラム、この回転している感光体ドラムの周面に電圧を印加して一様な電荷を形成させる帯電装置、帯電後の感光体ドラムの周面に電送されてきた画像情報に基づく強弱を備えたレーザー光を照射して同周面に静電潜像を形成させる露光装置、この露光装置により形成された感光体ドラム周面の静電潜像にトナーを供給することによってトナー像を形成させる現像装置、この感光体ドラム周面のトナー像を搬送ベルトの周回で運び込まれた用紙Pに転写させる転写ローラ、転写処理後の感光体ドラム周面に残留している残留トナーを取り除いて清浄化処理するクリーニング装置、さらには、クリーニング処理後に残留している感光体ドラム周面の電荷を除去する電荷除去装置等が設けられている。
【0025】
そして、用紙貯留部12から上流側用紙搬送路R1を介して画像形成部13に送り込まれた用紙Pは、搬送ベルトによって搬送されつつ、搬送ベルトを介して感光体ドラムと転写ローラとに挟持された状態で感光体ドラム周面のトナー像が当該用紙Pに転写されるようになっている。転写処理が完了し上面側にトナー像の形成された用紙Pは、画像形成部13の下流端に設けられた搬送ローラ17を介して定着部14へ供給される。
【0026】
前記定着部14は、熱処理によりトナー像を用紙Pに定着させるものであり、内部に通電発熱体などの熱源を備えた定着ローラ141と、下部でこの定着ローラ141と対向配置された加圧ローラ142とを備えて構成され、画像形成部13から送り込まれた用紙Pは、これら回転している定着ローラ141と加圧ローラ142との間にニップ状態で供給されることにより定着処理が施されるようになっている。
【0027】
かかる定着部14には、画像形成部13の下流端から定着ローラ141と加圧ローラ142とによるニップ位置(定着ローラ141と加圧ローラ142とが当接している部分)を介して後述する反転搬送路R3へ向かう下流側用紙搬送路R2が形成されている。
【0028】
前記排紙搬送部15は、定着部14によって定着処理が施された用紙Pを下流側へ向けて送り出すためのものであり、回動軸40回りに正逆回動することによって装置本体11の図1における左側面の開口101を開閉する開閉扉20を備えて構成されている。回動軸40は、開閉扉20の下部から用紙搬送方向に直交する用紙幅方向(図1の紙面に直交する方向)に向けて壁面から互いに反対方向に向けて一体的に突設された状態で装置本体11の後述のフレーム板19(図2、図5)に回動可能に支持され、これによって開閉扉20は、回動軸40回りに正逆一体回動することで、図1に実線で示す閉止姿勢S1と、図1に二点差線で示す開放姿勢S2との間で姿勢変更可能になっている。因みに、開閉扉20の開閉操作は、ユーザーの手作業で行なわれるようになっている。
【0029】
また、開閉扉20が開放姿勢S2に姿勢設定された状態では、その上面が下流側用紙搬送路R2より下位に位置するようにレベル設定され、これによって定着部14から導出された用紙Pは、そのまま直進して転写面が上向きになった状態(すなわちフェースアップ)のままで当該開閉扉20に受けられるようになされている。すなわち、開閉扉20は、開放姿勢S2に姿勢設定された状態では、フェースアップ排紙トレイの役割を果たすようになっているのである。
【0030】
そして、排紙搬送部15には、閉止姿勢S1に姿勢設定された開閉扉20の壁面201と、この壁面201と対向した定着部14のニップ位置より上部の装置本体側壁面111との間に定着処理後の用紙Pを排紙部16へ向かわせるための反転搬送路R3が形成されているとともに、前記ニップ位置より下方側における開閉扉20の壁面201と定着部14における開閉扉20と対向した筐体壁面(装置本体11側の壁面)143との間に用紙Pを画像形成部13へ返送するための返送搬送路R4の上流端部が形成されている。
【0031】
前記返送搬送路R4は、用紙Pに対して両面印刷処理を施すときに使用されるものである。すなわち、片面(表面)の転写処理が完了した用紙Pに定着処理が施された後、当該用紙Pを一旦反転搬送路R3に導入し、引き続き反転搬送路R3に設けられている搬送ローラ17を逆駆動することによって返送搬送路R4へ導き入れ、当該返送搬送路R4の下流端から上流側用紙搬送路R1へ導入することによって表裏反転させ、この表裏反転した用紙Pを画像形成部13へ導入することによって裏面側に転写処理が施されるようになっている。両面の印刷処理が完了した用紙Pは、反転搬送路R3を通って排紙部16へ排紙されることになる。
【0032】
前記排紙部16は、反転搬送路R3を通り排紙ローラ18の駆動で排紙された用紙Pを受けるためのものであり、フェイスダウン排紙トレイ161を備えている。このフェイスダウン排紙トレイ161に排紙された用紙Pは、反転搬送路R3を通って搬送方向が折り返されることから、転写面が下面になった(すなわちフェイスダウンになった)表裏反転状態になっている。
【0033】
図2は、本発明に係る開閉扉支持構造の一実施形態を説明するための開閉扉20の部分斜視図であり、(イ)は分解斜視図、(ロ)は組み立て斜視図である。また、図3および図4は、図2に示す開閉扉20の断面図であり、図3は、開閉扉20が閉止姿勢S1に姿勢設定された状態、図4は、開閉扉20が開放姿勢S2に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。なお、図2〜図4において、X−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0034】
開閉扉20は、図2において上下方向に延びた左右方向一対の側板21(図2においては右方の側板21のみを示している)と、これら一対の側板21の下端部間に架設された角材状の下部フレーム22と、同上端部間に架設された角材状の上部フレーム23(図3)と、これら下部フレーム22および上部フレーム23間並びに前記一対の側板21間に架設された矩形状の表面板24と、前記下部フレーム22と上部フレーム23との間に架設された状態でこの表面板24から後方に向かって突設された左右方向複数枚のガイドフィン25とを備えて構成されている。
【0035】
前記複数枚のガイドフィン25は、いずれも図3に示すように、上部と下部とが装置本体11の内方に向かうことによって凹の円弧状に形成され、全体的に弓状に形状設定されている。かかるガイドフィン25の後方縁面によって、反転搬送路R3および返送搬送路R4における開閉扉20側の壁面201が形成されている。
【0036】
一方、装置本体11内の前端下部位置には、開閉扉20を支持するための左右方向一対のフレーム板19(図2には右側のフレーム板19のみを示している)が設けられ、開閉扉20は、これら一対のフレーム板19と開閉扉20とに亘って形成された開閉扉支持構造30によって開閉可能に支持されている。
【0037】
前記開閉扉支持構造30は、図2の(イ)に示すように、各側板21の下端部から互いに反対方向へ向けて一体的に突設された左右方向一対の回動軸40と、各フレーム板19の前方下部で回動軸40に対応して穿設された左右方向一対の傾斜長孔(長孔)50とを備えて構成されている。
【0038】
前記回動軸40は、円柱状の回動軸本体41と、この回動軸本体41の周面から径方向に向かって突設された被案内突起(突起)42とからなっている。前記回動軸本体41の軸心位置に開閉扉20の回動支点が形成されている。前記被案内突起42は、歯車の歯のように、先端に向かって先細りに形成され、周方向一対の傾斜面421を有している。かかる回動軸40は、開閉扉20が図3に示すように、閉止姿勢S1に姿勢設定された状態で、図2の(イ)に示すように、被案内突起42が後方に向かって若干先下がりになるように側板21から突設されている。
【0039】
前記傾斜長孔50は、図2の(イ)に示すように、孔幅寸法が回動軸本体41の直径より僅かに大きめに寸法設定されているとともに、後方から前方に向かって先下がりになるように傾斜して形成されている。かかる傾斜長孔50には、後方の傾斜縁面の上部位置から後方に向かって先下がりに傾斜した凹溝51が凹設されている。この凹溝51は、前記被案内突起42の横断面(回動軸本体41の軸心と直交する面)形状と略相似形を呈し、かつ、被案内突起42の横断面形状より若干大きめに形状設定されているとともに、凹溝51の互いに対向した縁面には、被案内突起42の傾斜面421に対応した傾斜縁面511がそれぞれ設けられている。
【0040】
そして、回動軸本体41が傾斜長孔50に嵌入され、かつ、傾斜長孔50の最下位に位置した状態では、図5の(ロ)に示すように被案内突起42が傾斜長孔50の傾斜縁面511より下方の後部縁部と干渉することから、開閉扉20が必然的に開放姿勢S2に姿勢設定されるようになっている。そして、開閉扉20が開放姿勢S2に姿勢設定された状態で被案内突起42の先端が傾斜長孔50の下側の傾斜縁面511より若干上方に位置するように被案内突起42および凹溝51が相対的に形状設定されている。
【0041】
従って、開閉扉20が開放姿勢S2に姿勢設定された状態(図4)から、開閉扉20を閉じることによって当該開閉扉20を閉止姿勢S1へ姿勢変更させることにより、図5の(ロ)に示すように、被案内突起42の下側の傾斜面421が凹溝51の下側の傾斜縁面511と噛合し、これによって被案内突起42が凹溝51の下側の傾斜縁面511を掻き上る状態になるため、結局回動軸40は、この掻き上り動作に追随して傾斜長孔50内を上方に向けて移動し、最終的には、図5の(イ)に示すように、回動軸本体41が傾斜長孔50の最上位側に位置するとともに、被案内突起42が凹溝51に嵌り込んだ状態になる。
【0042】
これに対し、開閉扉20が閉止姿勢S1に姿勢設定されている状態において、当該開閉扉20を開放すると、回動軸本体41が軸心回りに反時計方向に向けて回動することにより、図5の(イ)に示すように、被案内突起42の先端が凹溝51の上側の傾斜縁面511と干渉し、これによって回動軸本体41に下方へ向かう力が作用するため、回動軸本体41は、傾斜長孔50の下方に向かって移動する。従って、開閉扉20が完全に解放された状態では、回動軸40が、図5の(ロ)に示すように、傾斜長孔50の最下位に位置した状態に戻ることになる。
【0043】
なお、本実施形態においては、開閉扉20は、装置本体11の図略のフレームに当止することにより、図5の(ロ)に実線で示すように、被案内突起42が傾斜長孔50の後方の縁部に当接させるようにしているが、たとえ開閉扉20をフレームに当接させなくても、図5の(ロ)に二点差線で示すように、開閉扉20が実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで僅かに回動すると、被案内突起42がストッパの役割を果たして傾斜長孔50の前側の縁部に当止し、これによって開閉扉20の開放姿勢S2が維持される。従って、わざわざ開閉扉20の開放姿勢S2を維持するためのストッパを別途設ける必要がなくなり、その分装置コストの低減化に貢献することができる。
【0044】
一方、装置本体11における開口101の上縁部の位置には、開閉扉20が閉止姿勢S1に姿勢設定された状態を係止する係止部材102が設けられている。この係止部材102は、図4に示すように、U字状のばね部材によって形成され、横向きにした状態でU字状の先端の開いた部分が装置本体11の内側に向くように、開口101の上縁部に固定されている。そして、開閉扉20が閉止姿勢S1に姿勢設定された状態(すなわち閉じられた状態)で、図3に示すように、当該係止部材102が弾性変形することによる押圧力で開閉扉20の閉止姿勢S1が維持されるようになっている。
【0045】
以下、本発明に係る開閉扉支持構造30の作用について、図5を基に、必要に応じて図1〜図4を参照しながら説明する。図5は、開閉扉支持構造30の作用を説明するための説明図であり、(イ)は、開閉扉20が閉止姿勢S1に姿勢設定された状態、(ロ)は、開閉扉20が開放姿勢S2に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。なお、図5におけるYによる方向表示は図2の場合と同様(すなわち−Yが前方、+Yが後方を示す)である。また、図5の(イ)には、比較例として回動軸本体41が凹溝51の上部位置に留まったまま当該回動軸本体41回りに反時計方向に回動して開放された状態を二点差線で示している。
【0046】
まず、開閉扉20が、図5の(イ)に実線で示すように、直立した閉止姿勢S1に姿勢設定された状態では、回動軸40の回動軸本体41が傾斜長孔50の上部位置に位置設定され、回動軸40の被案内突起42が傾斜長孔50の凹溝51に嵌り込み、これによって開閉扉20の閉止姿勢S1に対する姿勢設定が安定した状態になっている。
【0047】
そして、開閉扉20が閉止姿勢S1に姿勢設定された状態では、当該開閉扉20の後方側の壁面201と定着部14(図1)の筐体壁面143との間に返送搬送路R4が形成され、これによって両面刷処理時の片面印刷が完了した用紙Pがこの返送搬送路R4を通って画像形成部13(図1)へ戻される得るようになっている。
【0048】
この状態で、当該開閉扉20を開放するべく当該開閉扉20を回動軸本体41回りに反時計方向へ向けて回動させると、回動軸本体41と一体の被案内突起42が回動軸本体41の軸心回りに反時計方向へ向けて共回りし、当該被案内突起42の上側の傾斜面421が傾斜長孔50の上側の傾斜縁面511と干渉するため、回動軸本体41は、このときの反力によって傾斜長孔50内を下方に向かって移動する。
【0049】
開閉扉20の開放動作を継続することにより開閉扉20が開放姿勢S2に姿勢設定されたときには、図5の(ロ)に示すように、被案内突起42が凹溝51から抜け出すとともに、回動軸本体41が傾斜長孔50の下部位置にまで下降した状態になる。
【0050】
そして、開閉扉20が開放姿勢S2に姿勢設定された状態では、開閉扉20の下端の後方先端に形成された先端角部(開閉扉20の回動支点位置側)202と、定着部14の筐体壁面143との間の距離は、開閉扉20が閉止姿勢S1に姿勢設定されていたときより大きくなっている(すなわち用紙Pが通過するべき隙間が広くなっている)。
【0051】
従って、開閉扉20が閉止姿勢S1に姿勢設定された状態において、たとえ返送搬送路R4で紙詰まりが発生しても、開閉扉20を開いて開放姿勢S2に姿勢変更することにより、定着部14の筐体壁面143と開閉扉20の先端角部202との間の隙間が広くなるため、詰まった用紙Pを容易に取り出すことができる。
【0052】
これに対し、フレーム板19に傾斜長孔50が設けられずに回動軸本体41を挿通する円孔が設けられているだけである場合には、閉止姿勢S1に姿勢設定されていた開閉扉20が開放された状態では、開閉扉20は、図5の(イ)に二点差線で示すように、その先端角部202が定着部14の筐体壁面143と干渉した状態になるため、返送搬送路R4に紙詰まりが生じている場合、詰まった用紙Pは、先端角部202と定着部14の筐体壁面143との単に挟持された状態になり、容易に取り出すことができないという不都合が生じるのである。
【0053】
ついで、開放姿勢S2に姿勢設定された開閉扉20を閉じるに際しては、開閉扉20を回動軸本体41回りに時計方向に手作業で回動させればよい。そうすると、回動軸40の軸心回りの時計方向に向かう回動によって、回動軸40の被案内突起42が傾斜長孔50の下側の傾斜縁面511を掻き上っていくため、回動軸本体41が傾斜長孔50に案内されつつ当該傾斜長孔50内を上昇し、これによって開閉扉20が閉じられた状態(閉止姿勢S1に姿勢設定された状態)では、被案内突起42が凹溝51に嵌り込んだ、図5の(イ)に示す状態に戻ることになる。
【0054】
以上詳述したように、本発明に係る画像形成装置10は、画像形成部13における画像形成処理後のトナー画像に対し定着処理が施された用紙Pを表裏反転する反転搬送路R3の互いに対向した壁面の一方(壁面201)が、装置本体11に開閉可能に設けられた開閉扉20に形成されてなるものであり、開閉扉20の回動支点位置(回動軸本体41の軸心位置)で当該開閉扉20を回動自在に支持する開閉扉支持構造30が設けられ、開閉扉支持構造30は、開閉扉20が閉止された状態で反転搬送路R3の所定の幅寸法が確保される一方、開閉扉20が開放されることにより反転搬送路R3から離間する方向へ移動するべく構成されている。
【0055】
従って、開閉扉20が閉止された状態で反転搬送路R3の所定の幅寸法が確保され、これによって定着処理後の用紙Pを表裏反転して排紙するための反転搬送路R3が適正に形成される一方、開閉扉20が開放された状態では、当該開閉扉20の先端角部202は反転搬送路R3から離間する方向へ移動しているため、先端角部202と装置本体11側の壁面(定着部14の筐体壁面143)との間に余裕のある空間が形成される。従って、反転搬送路R3位置で紙詰りが生じた場合(実施形態では返送搬送路R4で詰りが生じた場合)、開閉扉20を開放することで形成される余裕のある空間の存在で、詰まった用紙Pの取り出し作業を容易に行なうことができる。
【0056】
そして、開閉扉支持構造30は、開閉扉20の下端位置から用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に向けて一体的に突設された回動軸40と、装置本体11側に設けられた回動軸40を支持する外方に向かって先下がりに傾斜した傾斜長孔50とを備えて構成され、回動軸40には、開閉扉20が閉止された状態で装置本体11内へ向けて横方向に延びるように固定された被案内突起42が設けられている一方、傾斜長孔50には、その上部位置に開閉扉20が閉止された状態で被案内突起42が嵌り込む凹溝51が設けられているため、開閉扉20が開放された状態では、回動軸40の被案内突起42が傾斜長孔50の凹溝51から外れた状態で当該回動軸40が前方に向かって先下がりに形成された傾斜長孔50の下端部に位置し、これによって反転搬送路R3の装置反対側の壁面から離間した状態になる一方、開閉扉20が閉止されることにより、開閉扉20と一体回動する回動軸40に設けられた被案内突起42が開閉扉20の閉止動作に応じて上方が反転搬送路R3側に寄った傾斜長孔50上部の凹溝51へ掻き上がるようにして嵌り込んでいき、最後に被案内突起42が完全に凹溝51に嵌り込み、これによって開閉扉20の閉止状態を安定させることができるとともに、開閉扉20の壁面201と定着部14の筐体壁面143との間に用紙Pを通過させる返送搬送路R4が形成される。
【0057】
このように、開閉扉20の開閉動作に応じて回動軸40の被案内突起42が傾斜長孔50の凹溝51に嵌り込んだり、凹溝51から外れたりすることにより開閉扉20が閉止された状態で反転搬送路R3が正常に確保されるとともに、開閉扉20が開放された状態で開閉扉20と反転搬送路R3の装置本体11側の壁面との間の離間距離を大きくするようにしているため、開閉扉支持構造30を簡単な構造のものとした上で紙詰まりの解消作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、開閉扉20は、開放された状態で定着処理後の用紙Pを受ける排紙トレーとして利用し得るようにしているため、定着処理後の用紙Pを上下反転させずに、いわゆるフェイスアップ状態で排紙するに際し、開閉扉20が排紙トレーとして利用され、これによって排紙トレーを別途設ける場合に比較し装置コストの低減化に貢献することができる。
【0059】
さらに、本実施形態においては、反転搬送路R3の上流端は、用紙Pに両面印刷を施す際に片面の印刷処理が完了した定着処理後の用紙Pを画像形成部13へ返送する返送搬送路R4の上流端に接続されているため、片面の印刷処理が完了した用紙Pを一旦反転搬送路R3に送り込んだ後、逆送して返送搬送路R4へ向かわせ反転処理を施すことにより、当該用紙Pを他の片面に印刷処理し得る状態(すなわち両面印刷を施し得る状態)で画像形成部へ返送することが可能になり、画像形成装置10の汎用性を向上させることができる。
【0060】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0061】
(1)上記の実施形態においては、画像形成装置10として原稿画像の読み取りを行ない得ない(すなわち所定のコンピュータや単能機としてのスキャナーから電送された画像情報を基に印刷する)プリンタが採用されているが、本発明は、画像形成装置10がプリンタであることに限定されるものではなく、原稿読み取り装置を備えた複写機や、電話回線を介して画像情報の遣り取りを行なうファクシミリ装置であってもよい。
【0062】
(2)上記の実施形態においては、装置本体11に両面印刷用として片面印刷が完了した用紙Pを画像形成部13へ返送するための返送搬送路R4は設けられているが、本発明は、装置本体11に返送搬送路R4を設けることに限定されるものではなく、画像形成装置10を、片面印刷のみを対象とした単能機とする場合には、特に返送搬送路R4を設ける必要はない。
【0063】
(3)上記の実施形態においては、開閉扉20に片面印刷時の用紙Pの印刷面を上向きにして排紙する場合の、いわゆるフェイスアップ排紙トレイとしての機能を持たせているが、本発明は、開閉扉20にフェイスアップ排紙トレイとしての機能を持たせていることに限定されるものではなく、開閉扉20とは別に専用のフェイスアップ排紙トレイを設けるようにしてもよい。
【0064】
(4)上記の実施形態においては、画像形成部13において1つの感光体ドラムのみが採用され、この1つの感光体ドラムによって用紙Pに対し単色の転写処理(モノトーン印刷処理)が施されるのか、或いは各種の色(例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4食)毎に感光体ドラムが採用され、これら複数の感光体ドラムによって用紙Pにカラー印刷が施される、いわゆるタンデム方式のものであるのかについては特に説明していないが、このことは、本願発明がいずれの印刷処理にも適用可能であることを暗に示している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態の概要を示す正面断面視の説明図である。
【図2】本発明に係る開閉扉支持構造の一実施形態を説明するための開閉扉の部分斜視図であり、(イ)は分解斜視図、(ロ)は組み立て斜視図である。
【図3】図2に示す開閉扉の断面図であり、開閉扉が閉止姿勢に姿勢設定された状態を示している。
【図4】図2に示す開閉扉の断面図であり、開閉扉が開放姿勢に姿勢設定された状態を示している。
【図5】開閉扉支持構造の作用を説明するための説明図であり、(イ)は、開閉扉が閉止姿勢に姿勢設定された状態、(ロ)は、開閉扉が開放姿勢に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0066】
10 画像形成装置
11 装置本体
12 用紙貯留部
13 画像形成部
14 定着部
141 定着ローラ
142 加圧ローラ
143 筐体壁面
15 排紙搬送部
16 排紙部
161 フェイスダウン排紙トレイ
17 搬送ローラ
18 排紙ローラ
19 フレーム板
20 開閉扉
201 壁面
202 先端角部
21 側板
22 下部フレーム
23 上部フレーム
24 表面板
25 ガイドフィン
30 開閉扉支持構造
40 回動軸
41 回動軸本体
42 被案内突起
421 傾斜面
50 傾斜長孔
51 凹溝
511 傾斜縁面
P 用紙
R1 上流側用紙搬送路
R2 下流側用紙搬送路
R3 反転搬送路
R4 返送搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に開閉扉が開閉可能に設けられてなる画像形成装置において、
前記開閉扉の回動支点位置で当該開閉扉を回動自在に支持する開閉扉支持構造が設けられ、
前記開閉扉支持構造は、開閉扉が閉止された状態で用紙を反転して排紙する反転搬送路に所定の幅寸法が確保される一方、開放されることにより開閉扉が前記反転搬送路から離間する方向へ移動するべく構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記開閉扉支持構造は、前記開閉扉の下端位置から用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に向けて一体的に突設された回動軸と、装置本体側に設けられた前記回動軸を支持する外方に向かって先下がりに傾斜した長孔とを備えて構成され、
前記回動軸には、開閉扉が閉止された状態で装置本体内へ向けて横方向に延びるように固定された突起が設けられている一方、前記長孔には、その上部位置に開閉扉が閉止された状態で前記突起が嵌り込む凹溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記開閉扉は、開放された状態で定着処理後の用紙を受ける排紙トレーとして利用されるものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記反転搬送路の上流端は、用紙に両面印刷を施す際に片面の印刷処理が完了した定着処理後の用紙を前記画像形成部へ返送する返送搬送路の上流端に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−201335(P2006−201335A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11265(P2005−11265)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】