説明

画像形成装置

【課題】複数の現像装置に対して1つ感光体を用いるフルカラー画像形成装置において、低帯電トナーや逆帯電トナーを現像装置から除去するクリーニング動作にかかる時間を短くする。
【解決手段】感光体ドラム1の暗電位と現像バイアスとの電位差を、画像形成時と非画像形成時とで異なったものとし、低帯電トナー及び/又は逆帯電トナーを非画像形成時に現像装置から感光体ドラム1へ移動させて除去するクリーニング動作を、イエロー用現像装置では行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフルカラー画像形成装置に関し、より詳細には複数の現像装置に対して一つの感光体(静電潜像担持体)を用いてフルカラー現像を行う画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター、FAXなどの電子写真方式を用いた画像形成装置では、帯電装置によって感光体表面を一様に帯電した後、露光装置によって、画像情報に基づいて感光体表面を露光し感光体上に静電潜像を形成する。そして現像装置によってこの静電潜像をトナーで可視像化した後、転写装置によって感光体上のトナー像を転写材上に転写する。次に定着装置によって転写材上のトナー像を加熱・加圧して転写材に溶融定着する。
【0003】
現像方法としては、感光体の帯電極性とトナーの帯電極性が同極性か異極性かによって反転現像法と正規現像法に大別される。反転現像法は、感光体の帯電極性と同極性のトナーを用い、現像スリーブ(現像剤担持体)にトナーの帯電極性と同極性の現像バイアス電圧を印加し、露光装置による露光で表面電位の低くなった感光体上の露光部分(静電潜像)にトナーを移動させて現像を行うものである。一方、正規現像法は、感光体の帯電極性と異極性のトナーを用い、帯電電位を維持している感光体上の非露光部分(静電潜像)にトナーを移動させて現像を行うものである。
【0004】
このようないずれの現像方法においても画像形成を長期間にわたって行うと、転写材上の画像以外の背景部分に多数の小さな黒点が現れる、いわゆるカブリ現象が発生する。その原因の一つとして、印字ランニングによる現像剤の劣化が考えられている。低帯電トナーや逆帯電トナーなどの帯電不良トナーが現像装置内に発生し徐々に増大して、この帯電不良トナーによってカブリ現象が発生するのである。
【0005】
そこで特許文献1および特許文献2では、反転現像法を用いた画像形成装置において非画像形成時に、現像バイアスをOFFにするか、画像形成時とは逆極性のバイアスを印加して逆帯電トナーを除去する技術、および感光体の暗電位(非露光部分の電位)と現像バイアスとの電位差を画像形成時よりも大きくして低帯電トナーを除去する技術がそれぞれ提案されている。
【特許文献1】特開平9−127773号公報
【特許文献2】特開2005−115003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年のデジタルカメラなどの急速な普及に伴ってフルカラー画像形成装置が広く使用されつつある。フルカラー画像形成装置では、イエロー(以下「Y」と記すことがある)、マゼンタ(以下「M」と記すことがある)、シアン(以下「C」と記すことがある)の各色トナー、さらに必要によりブラック(以下「B」と記すことがある)のトナーを用いて静電潜像の現像が行われる。フルカラー現像装置にはこのように3つ又は4つの現像装置が備えられているため、前述の低帯電トナーや逆帯電トナーの除去動作(クリーニング動作)はそれぞれの現像装置において行われなければならない。
【0007】
例えばいわゆるタンデム方式のフルカラー画像形成装置のように、各現像装置のそれぞれに感光体が備わっているフルカラー画像形成装置では、前述の低帯電トナーや逆帯電トナーのクリーニング動作は、各現像装置で同時行うことができる。一方、複数の現像装置が1つ感光体を共用するフルカラー画像形成装置の場合には、前記クリーニング動作を同時に行うと現像装置内に違う色のトナーが混入するおそれがあるため、現像装置ごとに順にクリーニング動作を行う必要がある。このため、クリーニング動作に時間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の現像装置が1つ感光体を共用するフルカラー画像形成装置において、低帯電トナーや逆帯電トナーのクリーニング動作にかかる時間を短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明では、少なくともイエロ用現像装置、マゼンタ用現像装置、シアン用現像装置が一つの静電潜像担持体を共用する画像形成装置において、静電潜像担持体の暗電位と現像バイアスとの電位差を、画像形成時と非画像形成時とで異なったものとし、低帯電トナー及び/又は逆帯電トナーを非画像形成時に現像装置から静電潜像担持体へ移動させて除去するクリーニング動作を、イエロー用現像装置では行わない構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像形成装置では、イエロー用現像装置については前述のクリーニング動作を行わないので、複数の現像装置が1つ感光体を共用する従来のフルカラー画像形成装置に比べ、クリーニング動作に要する時間が、現像装置が4つの場合には約3/4、現像装置が3つの場合には約2/3に短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置について図に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0012】
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概説図を示す。図1の画像形成装置は、一つの感光体ドラムを用いて現像を行うフルカラー画像形成装置であって、図示しない給紙カセット、感光体ドラム1、露光装置2、帯電装置3、各色(Y,M,C,B)のトナーを内蔵した4個の現像装置4〜7、中間転写体12、2次転写ローラ13、定着装置14、画像が転写された転写材8を2次転写ローラ13から定着装置14に搬送する無端ベルトを用いた搬送装置9を備える。
【0013】
この画像形成装置における画像形成処理は、まず帯電装置3よって感光体ドラム1が帯電され、露光装置2によって1色目(例えば「Y」色)に対応する露光が行われ感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。そして、現像装置4によって静電潜像が現像さた後、現像されたトナー画像が中間転写体12に転写される。同様の操作が、2色目〜4色目について行われる。こうして中間転写体12上に形成されたフルカラートナー画像は、図示しない給紙カセットから搬送される転写材8に2次転写ローラ13で転写され、定着装置14によって加熱・加圧されてフルカラートナー画像は転写材8に溶融定着されて外部に排出される。
【0014】
このような画像形成装置において、低帯電トナー及び/又は逆帯電トナーを除去するクリーニング動作は例えば次のようにして行う。以下、正帯電性の感光体ドラムを用いると共に、トナーとキャリアを含有する二成分系現像剤を用いた反転現像方式の画像形成装置を例に説明する。低帯電トナー及び逆帯電トナーを現像装置から感光体ドラムへ移動させるためには、感光体ドラムの暗電位と現像スリーブに印加するの現像バイアスとの電位差を画像形成時よりも大きく又は小さくする。
【0015】
本発明者が行った実験結果を表1に示す。表1のデータは、感光体ドラムの暗電位V0を300Vと一定にして、現像バイアスVdcを120〜260Vまで20Vごとに変化させて現像を行い、転写材のFD(カブリ)値を測定したものである。なお、この実験はC現像装置を用いて行った。またFD値とは、画像形成前の転写材の濃度測定値と、画像形成後の転写材の非画像領域(背景部)の濃度測定値との差であって、FD値が高いほど感光体ドラムの非画像領域(未露光領域)にトナーが移動したことを意味する。なお、現像バイアスVdcが180V(電位差120V)のときが通常の画像形成時の電位である。
【0016】
【表1】

【0017】
表1から理解されるように、電位差(V0−Vdc)が120Vのときを中心に、電位差が大きくなっても小さくなってもFD値は大きくなる。これは、電位差が大きいと、主として逆極性トナーが現像装置から感光体ドラムへ移動し、反対に電位差が小さいと、主として低帯電トナーが現像装置から感光体ドラムへ移動するからである。したがって、前記電位差を大きくする又は小さくすることによって、逆帯電トナー又は低帯電トナーを除去できるようになる。
【0018】
そこで、このような実験結果を利用して、現像装置内で発生・蓄積される逆帯電トナーと低帯電トナーを現像装置から除去するため、非画像形成時に、前記電位差を画像形成時とは異なる値にして各現像装置4,5,6,7においてクリーニング動作を従来は行っていた。図2に従来のタイミングチャートを示す。
【0019】
図2のタイミングチャートから理解されるように、まず感光体ドラムが駆動した後、帯電装置によって感光体ドラム表面が帯電される。ここで通常とは異なって、露光は行われない。すなわち感光体ドラム表面は均一に帯電された状態で現像装置に至る。最初にY現像装置において現像バイアスがオンされ、二成分系の現像剤穂が感光体ドラムに接触する。このときの逆帯電トナーを除去する場合には、電位差が大きくなるように現像バイアスを小さくし、低帯電トナーを除去する場合は、電位差が小さくなるように現像バイアスを大きくする。逆帯電トナーと低帯電トナーの両方を除去する場合には、所定時間電位差を大きくした後、電位差を小さくするといった現像バイアス制御を行えばよい。もちろん電位差を小さくした後、大きくしても構わない。
【0020】
Y現像装置において上記のクリーニング動作が行われている間は、他の現像装置では混色が起こらないようにするために、例えば現像装置を感光体ドラムから離間させて、或いは、現像スリーブへの現像剤供給をストップさせる位置に穂切りローラを移動させて、感光体ドラムに現像穂を接触させないようにする。
【0021】
クリーニン動作時間tは長ければ長いほど、逆帯電トナーや低帯電トナーが現像装置から除去されることになるが、クリーニング時間の短縮化という観点を考慮すればクリーニング動作時間tは少なくとも30秒は行う必要がある。
【0022】
Y現像装置でのクリーニング動作が終了すれば、次にM現像装置において同様のクリーニング動作が行われる。なお、Y現像装置の現像バイアスのオフからM現像装置の現像バイアスのオンまでの間に時間αがあるのは、感光体ドラムへの現像装置の離間・接触や現像穂の接触などの切り換え時間を考慮したものである。このようにして、C現像装置、B現像装置についても同様のクリーニング動作が行われる。
【0023】
以上、4つの現像装置のクリーニング動作に必要な合計時間は、各現像装置におけるクリーニング動作時間(t×4)と、現像装置間の切り換え時間(α×3)の和となる。
【0024】
一方、本発明の画像形成装置では、Y現像装置においてはクリーニング動作を行わないので、クリーニング動作に必要な合計時間は上記説明した従来のものに比べて短縮できる。Y現像装置においてクリーニング動作を行わないのは、白色の転写材上の非画像領域に黄色トナーのカブリが発生しても、目視及び測定器ではそのカブリを識別できず、そのまま放置しても実使用上問題がないという本発明者の知見に基づくものである。
【0025】
図3に、本発明にかかる画像形成装置のクリーニング動作のタイミングチャートを示す。図3に示した従来のクリーニング動作のタイミングチャートと大きく異なる点は、Y現像装置においてクリーニング動作を行っていない点である。これにより、クリーニング動作に必要な合計時間は、各現像装置におけるクリーニング動作時間(t×3)と、現像装置間の切り換え時間(α×2)の和となり、従来に比べて(t+α)時間短縮が図れる。
【実施例】
【0026】
FDが特に顕著となる高温/高湿(28℃/80%)環境下で、A4サイズの転写材を5万枚の耐刷後、前述のクリーニング動作を行い、その後FDを測定した。FDの測定にはマクベス社製の反射濃度計「RD918」を用いた。なおクリーニング動作の動作条件は、感光体ドラムの暗電位:300V、現像バイアス:260V、電位差:40V、動作時間t:0、20,30,40secである。従来の画像形成装置の結果を表2に、本発明の画像形成装置の結果を表3にそれぞれ示す。なお、ここでは電位差を小さくして低帯電トナーの除去を行っているが、これは現像装置内における低帯電トナーや逆帯電トナーの発生は、通常はどちらか一方が多く発生するので、その現像装置の特性によってどちらかの制御を行えば通常は足りるからである。
【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
表2及び表3から、FDの許容値は通常0.020以下としているから、本発明及び従来の画像形成装置共に、1つの現像装置におけるクリーニング動作時間tは30秒以上とすべきことがまず理解される。次に、クリーニング動作時間tを30秒とした場合、本発明の画像形成装置ではY現像装置以外の3つの現像装置でクリーニング動作が行われるので、クリーニング動作時間の合計は90秒であるのに対し、従来の画像形成装置ではY現像装置を含む4つの現像装置でクリーニング動作が行われるので、クリーニング動作時間の合計は120秒となる。
【0030】
したがって本発明の画像形成装置によれば従来に比べてクリーニング動作時間を30秒短縮できる。より詳細には、この30秒に、現像装置間の切り換え時間α(おそらく数秒程度)を加えた時間を短縮できる。このように、本発明の画像形成装置では、従来よりも短いクリーニング動作によって従来と同等にFDの悪化を抑えることができるようになる。
【0031】
なお、本発明において、クリーニング動作を行う時期としては、画像形成装置の電源オンから画像形成可能状態に至るまでの間、省エネのためのプレヒート状態(節電状態)からの復帰するまでの間、あるいはジャム処理が終了して画像形成装置を再稼動させるとき、更にはトナーカートリッジ交換方式の現像装置の場合にはトナーカートリッジを交換したときなどを挙げられる。また画像形成装置の印刷枚数を記憶しておくカウンター手段を利用して、例えば1万回の画像形成を行った後の一連の画像形成動作終了後などに行ってもよい。また温度センサ及び湿度センサを装置内に配設し、温度及び湿度によってクリーニング動作時期および動作時間を調整するようにしてもよい。例えば高温/高湿下ではクリーニング動作時間を最も長くし、高温/低湿および低温/高湿下ではクリーニング動作時間を次に長くすることが挙げられる。
【0032】
以上、反転現像方式の画像形成装置を例に説明したが、正規現像方式の画像形成装置についても同様に、感光体の暗電位と現像バイアスとの電位差を変化させることによって低帯電トナー及び逆帯電トナーを現像装置から取り除くことができ、その際、Y現像装置についてはそのようなクリーニング動作を行わないことによって、クリーニング動作時間の短縮が図れる。
【0033】
また本件発明に係る画像形成装置は、少なくともイエロ用現像装置、マゼンタ用現像装置、シアン用現像装置が一つの静電潜像担持体を共用するものであればよく、例えばイエロ用現像装置、マゼンタ用現像装置、シアン用現像装置を回転体に着脱可能に装着し、回転体を回転することによって各現像装置で感光体の表面を選択的に現像する、いわゆるロータリ現像方式であってももちろん構わない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一例を示す概説図である。
【図2】従来のクリーニング動作を示すタイムチャートである。
【図3】本発明で行われるクリーニング動作例のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 感光体ドラム(静電潜像担持体)
3〜7 現像装置
8 転写材
t クリーニング動作時間
12 中間転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともイエロ用現像装置、マゼンタ用現像装置、シアン用現像装置が一つの静電潜像担持体を共用する画像形成装置において、
静電潜像担持体の暗電位と現像バイアスとの電位差を、画像形成時と非画像形成時とで異なったものとし、低帯電トナー及び/又は逆帯電トナーを非画像形成時に現像装置から静電潜像担持体へ移動させて除去するクリーニング動作を、イエロ用現像装置については行わないことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−171607(P2007−171607A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369828(P2005−369828)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】