説明

画像形成装置

【課題】印刷物の一部を暗号化によりたとえばスクランブル加工して印刷し、第三者への情報漏洩を防止することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】暗号化された領域には、復号化処理に必要な復号鍵のほかに、その原稿をどの方向の順に何回読み取ればよいのかを示す情報が組み込まれた領域マーカが合成されている。従って、万が一、原稿を第三者が入手したとしても、原稿を読み取る手順を安易には判読できないので、セキュリティを向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナにより読み取られた原稿の画像データ、アプリケーションプログラムにより生成された文書データの各ページの画像データ、外部から送信されてきた画像データ等の画像データをページ単位で用紙に画像として形成することにより印刷し、または表示装置の画面に画像として表示する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、文書の電子化が急速に普及しているが、なんらかの必要性に応じて用紙に印刷物として出力される場合も多い。電子化された文書が電子ファイルシステム等に電子情報として登録されている状態では、電子情報としての登録時に暗号化したり、読み出し時にユーザ個々人を認証する等の情報漏洩対策が採られている。一方、機密情報及び個人情報等の外部への漏洩が許されない文書が印刷物として扱われる場合には、その内容を外部の第三者に見られないようにする必要がある。しかしそのための方法としては、印刷物を鍵のかかる保管庫に保管したり、個々人がそれぞれのデスク等へ持ち運んで個人的に管理したり、また漏洩してはならない情報が部分的に含まれているような場合には印刷物を部分的に目隠しシートで覆う等の物理的方法が採られていた。
【0003】
このような事情から、特許文献1には、印刷物の中の情報的意味を有していない特定の領域にデジタルデータをドットパターンに変換して二次元の面に配置した二次元コードを印刷し、このように印刷された二次元コードを含む印刷物を光学的に読み取った画像の中から二次元コードの印刷領域を抽出して元のデジタルデータを再現する発明が開示されている。
【特許文献1】特開2000−343784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外部への漏洩を防止すべき印刷物を前述したような物理的な手法で管理している場合には、個々人が携帯している間にうっかり置き忘れたり、また保管庫の施錠を忘れたりすることにより第三者の手に渡ったり、第三者に内容を見られたりすることにより容易に内容が漏洩する可能性が高い。一方、上述した特許文献1に開示されている技術では、原稿を光学的に読み取らせることにより第三者も容易に内容を知ることが可能であり、第三者に内容が知られては困るような機密情報に関しては配慮されていない。
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、文書の情報をたとえ第三者が見たとしてもその内容を判読することができず、また一般的な読取装置(スキャナ)で通常の読取処理を行なったのみでは復元できないように暗号化して用紙に形成する、即ち印刷物として出力すると共に、元の状態に復元することが可能な画像形成装置の提供を目的とする。
【0006】
本発明は端的には、これから印刷しようとしている機密情報を含んだ画像データの一部又は全部を暗号化処理(たとえばスクランブル画像化)して印刷するような場合に、そのような画像データが用紙に画像として形成された、即ち印刷された原稿をスキャナ等の読取手段で読み取る際の回数と各読取処理の際の読み取り方向とを組み合わせた読取条件を予め指定した上で印刷物として出力し、この印刷物である原稿の読取処理が予め指定されている読取条件通りに行なわれた場合にのみ、復号化処理が可能になるように構成されている。従って、印刷物の内容からの機密情報の漏洩を効果的に防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、原稿の画像を読み取ってページ単位の画像データを生成する読取手段と、画像データをページ単位で用紙に画像形成する画像形成手段とを備えた画像形成装置において、前記画像形成手段が画像形成すべきページ単位の画像データの内の任意の位置に任意の大きさの領域の指定を受け付ける領域指定受付手段と、該領域指定受付手段が指定を受け付けた任意の領域の画像データを所定の暗号鍵により暗号化する暗号化処理手段と、該暗号化処理手段により暗号化された領域を含むページ単位の暗号化画像データに、前記読取手段による読取回数と各読取時の読取方向とを組み合わせた読取条件を指定する読取条件指定手段と、前記画像形成手段がページ単位の暗号化画像データを用紙に画像形成した原稿を、前記読取条件指定手段により指定された読取条件に従って前記読取手段が読み取ったか否かを判断する判断手段と、前記読取条件指定手段により指定された読取条件に従って原稿が前記読取手段により読み取られたと前記判断手段が判断した場合に、前記読取手段が生成したページ単位の画像データに含まれる暗号化された領域の画像データを前記所定の暗号鍵に対応する復号鍵により復元する復号化処理手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような本発明に係る画像形成装置では、画像形成手段により用紙に画像形成された、即ち印刷された印刷物である原稿を読取手段で読み取る際に、予め指定されている読取回数とそれぞれの読取処理の際の原稿の読取方向とが、実際の読取回数とそれぞれの読取処理の際の原稿の読取方向と一致しなければ、復号化処理が行なわれない。
【0009】
また本発明に係る画像形成装置は上記の画像形成装置の発明において、表示手段を更に備え、ページ単位の暗号化画像データ及び/又は暗号化された領域の画像データが前記復号化処理手段により復元されたページ単位の画像データを画像として前記表示手段に表示させるようにしてあることを特徴とする。
【0010】
このような本発明に係る画像形成装置では上記の画像形成装置において、暗号化された画像データと、この暗号化された画像データから復元された元の画像データとの一方又は双方が用紙に印刷された場合と同様の状態で表示手段に表示される。
【0011】
更に本発明に係る画像形成装置は、ページ単位の暗号化画像データを通信回線を介して外部の画像形成装置へ転送することにより、前記外部の画像形成装置に画像形成させるようにしてあることを特徴とする。
【0012】
このような本発明に係る画像形成装置では前記の画像形成装置において、自身の画像形成手段ではなく外部の画像形成装置により画像データを用紙に形成させることにより印刷が行なわれる。
【0013】
本発明に係る画像形成装置は前記の画像形成装置において、ページ単位の暗号化画像データ及び/又は暗号化された領域の画像データが前記復号化処理手段により復元されたページ単位の画像データを通信回線を介して外部の表示装置へ転送することにより、前記外部の表示装置に画像として表示させるようにしてあることを特徴とする。
【0014】
このような本発明に係る画像形成装置では前記の画像形成装置において、暗号化された画像データと、この暗号化された画像データから復元された元の画像データとの一方又は双方が用紙に形成されて印刷された場合と同様の状態で外部の表示装置に表示される。
【0015】
本発明に係る画像形成装置は、外部の画像形成装置に用紙に画像形成させることが可能なページ単位の画像データを生成する画像データ生成手段を備えた画像形成装置において、前記画像データ生成手段が生成したページ単位の画像データの内の任意の位置に任意の大きさの領域の指定を受け付ける領域指定受付手段と、該領域指定受付手段が指定を受け付けた任意の領域の画像データを所定の暗号鍵により暗号化する暗号化処理手段と、該暗号化処理手段により暗号化された領域を含むページ単位の暗号化画像データを外部の画像形成装置により用紙に画像形成された原稿を外部の読取装置が読み取った場合に、前記暗号化された領域の画像データを前記所定の暗号鍵に対応する復号鍵により復元するための条件として、外部の読取装置による読取回数と各読取時の読取方向とを組み合わせた読取条件を指定する読取条件指定手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
このような本発明に係る画像形成装置では、外部の読取装置により読み取られる際に、予め指定されている読取回数とそれぞれの読取処理の際の原稿の読取方向とが実際の読取回数とそれぞれの読取処理の際の原稿の読取方向と一致しなければ復号化処理が行なわれない原稿を用紙に印刷するための画像データが生成される。
【0017】
また本発明に係る画像形成装置は上記の画像形成装置の発明において、表示手段を更に備え、ページ単位の暗号化画像データを画像として前記表示手段に表示させるようにしてあることを特徴とする。
【0018】
このような本発明に係る画像形成装置では上記の画像形成装置において、暗号化された画像データが用紙に形成されて印刷された場合と同様の状態で表示手段に表示される。
【0019】
更に本発明に係る画像形成装置は前記の画像形成装置において、ページ単位の暗号化画像データを通信回線を介して外部の表示装置へ転送することにより、前記外部の表示装置に画像として表示させるようにしてあることを特徴とする。
【0020】
このような本発明に係る画像形成装置は前記の画像形成装置において、暗号化された画像データが用紙に形成されて印刷された場合と同様の状態で外部の表示装置に表示される。
【0021】
本発明に係る画像形成装置は上記の画像形成装置の各発明において、前記暗号化処理手段は、前記領域指定受付手段が指定を受け付けた領域の画像データを前記所定の暗号鍵で暗号化する際に、前記読取条件指定手段により指定された読取条件を暗号化画像データに含ませるようにしてあることを特徴とする。
【0022】
このような本発明に係る画像形成装置では上記の画像形成装置の各発明において、指定された領域の画像データが暗号化される際に読取条件が暗号化画像データに含まれる。
【0023】
本発明に係る画像形成装置は上記の画像形成装置の各発明において、前記暗号化処理手段は、前記領域指定受付手段が指定を受け付けた領域の画像データを前記所定の暗号鍵で暗号化する際に、前記復号鍵を暗号化画像データに含ませるようにしてあることを特徴とする。
【0024】
このような本発明に係る画像形成装置では上記の画像形成装置の各発明において、指定された領域の画像データが所定の暗号鍵で暗号化される際に、復号化に必要な復号鍵が暗号化画像データに含まれる。
【0025】
本発明に係る画像形成装置は上記の画像形成装置の各発明において、前記領域指定受付手段は矩形の領域の指定を受け付け、前記暗号化処理手段は、前記領域指定受付手段が指定を受け付けた領域の画像データを暗号化する際に、指定を受け付けた矩形の領域の四隅部の内の少なくとも一隅部に上下左右を判定するためのマーカを付加するようにしてあることを特徴とする。
【0026】
このような本発明に係る画像形成装置では上記の画像形成装置の各発明において、指定された矩形の領域の少なくとも一つの隅部に付加されるマーカにより、指定された領域、換言すれば印刷された原稿全体の向きが判明すると共に、読み込み処理時の原稿の傾きの状態も判明する。
【発明の効果】
【0027】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば、印刷された原稿上の第三者の目に触れると困る機密情報である文章,図面等の部分を任意にスクランブル画像等の暗号化された画像データで隠すことが可能になるので、たとえ印刷された原稿を持ち去られたとしても、どこかに置き忘れたとしても、あるいは盗まれたとしても、情報漏洩を防止することが可能になる。また、そのような原稿を元の状態に復元する際には、暗号化された際に指定されている原稿の読取回数と各読取処理の際の読取方向との組み合わせ通りに読取処理を行なわない限りは元の状態に戻すことができない。従って、暗号化された際に指定された原稿の読取回数と各読取処理の際の読取方向との組み合わせを知っている人物でなければ暗号化された画像を元の状態に復元することができないので、セキュリティが向上する。
【0028】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば上記の画像形成装置において、暗号化された画像データと、この暗号化された画像データから復元された元の画像データとの一方又は双方が用紙に形成されて印刷された場合と同様の状態で表示手段に表示されるので、暗号化された状態及びそれが復元された状態を実際に印刷せずとも確認することが可能になる。
【0029】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば上記の画像形成装置において、自身の画像形成手段ではなく外部の画像形成装置によって画像データを用紙に形成することにより印刷が行なわれるので、通常の印刷用の画像データと同様に一般的な外部の画像形成装置で印刷を行なうことが可能になる。
【0030】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば上記の画像形成装置において、暗号化された画像データと、この暗号化された画像データから復元された元の画像データとの一方又は双方が用紙に形成されて印刷された場合と同様の状態で外部の表示装置に表示されるので、通常の印刷用の画像データと同様に暗号化された状態及びそれが復元された状態を実際に印刷せずとも一般的な外部の表示装置で確認することが可能になる。
【0031】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば、外部の読取装置で読み取る際に、予め指定されている読取回数とそれぞれの読取処理の際の原稿の読取方向とが実際の読取回数とそれぞれの読取処理の際の原稿の読取方向と一致しなければ復号化処理が行なわれない原稿を印刷するために用紙に形成されるべき画像データが生成されるので、スキャナ等の読取装置及びプリンタ等の画像形成装置が外部に接続されたパーソナルコンピュータ等の装置で生成された文書データの各ページに前述の画像形成装置と同様のセキュリティを与えることができる。
【0032】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば上記の画像形成装置において、暗号化された画像データが用紙に形成されて印刷された場合と同様の状態で表示手段に表示されるので、暗号化された状態を実際に印刷せずとも確認することが可能になる。
【0033】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば上記の画像形成装置において、暗号化された画像データが印刷された場合と同様の状態で外部の表示装置に表示されるので、通常の印刷用の画像データと同様に暗号化された状態を実際に印刷せずとも一般的な外部の表示装置で確認することが可能になる。
【0034】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば上記の画像形成装置の各発明において、指定された領域の画像データが暗号化される際に読取条件が暗号化画像データに含まれるので、暗号化した装置以外の装置でも復元することが可能になる。
【0035】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば上記の画像形成装置の各発明において、指定された領域の画像データが所定の暗号鍵で暗号化される際に復号鍵が暗号化画像データに含まれるので、画像データを暗号化した装置以外の装置でも復元することが可能になる。
【0036】
前述のような本発明に係る画像形成装置によれば上記の画像形成装置の各発明において、指定された矩形の領域の少なくとも一つの隅部に付加されるマーカにより、指定された領域、換言すれば印刷された原稿全体の向きが判明すると共に、読み込み処理時の原稿の傾きの状態も判明するので、原稿の向きそのものを正しい向きに変換する処理及び傾きを補正する処理が容易になり、操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係る画像形成装置の構成例の一実施の形態を示すブロック図である。図1には、プリンタ,スキャナ等を含む複合機2が、図2にはプリンタ,スキャナ等は含まないパーソナルコンピュータ(PC)3がそれぞれ本発明に係る画像形成装置の実施の形態として示されている。なお、複合機2とPC3とはネットワークNEにより接続されている。
【0038】
複合機2は、CPU又はMPUを利用した制御部200と、この制御部200に接続された入力部210、出力部220、通信部230、記憶部240等を含んでいる。制御部200は自身及び上述のハードウェア各部の動作を制御する。制御部200は、記憶部240に予め記憶(インストール)されている制御プログラムに従って自身及び複合機2全体を制御することにより、後述するフローチャートに示す処理手順を実行する。
【0039】
入力部210は、たとえばタッチパネル等の操作部211と、たとえば光学スキャナ装置等の読取部212とを含んでいる。従って、入力部210の操作部211は、タッチパネル及び/又はマウス等のポインティングデバイスでのユーザによる操作指示,選択,範囲指定等の入力を受け付ける。また入力部210の読取部212は、光学スキャナ等による光学的スキャン(読取)により、暗号化されていない原稿(以下、非暗号化原稿という)、及び一部の領域又は全体が暗号化された原稿(以下、暗号化原稿という)の画像を光学的に読み取り、ページ単位でデジタルの画像データを取得する。
【0040】
出力部220は、たとえば、液晶ディスプレイ等の表示部221と、たとえば電子写真方式のプリンタである印刷部222とを含んでいる。出力部220は、複合機2の制御部200から出力されるページ単位の画像データを表示部221に1ページの原稿の画像として表示することにより、又は画像形成手段である印刷部222で用紙に形成して1ページの印刷物(原稿)として印刷することにより、ソフトコピー及びハードコピーとして出力する。より具体的には、表示部221は液晶パネル等を利用した表示装置で構成されており、詳細は後述するが、1ページの原稿(印刷物)の画像のプレビュー表示を行なうと共に、それぞれの時点での処理状態に対応した種々のソフトキーのボタンを表示する。なお、本実施の形態では、操作部211を表示部221に重畳させたタッチパネルとして構成することにより、表示部221に表示されたソフトキーのボタンに対応する操作部211の部分をユーザが押すことにより操作する構成としている。
【0041】
印刷部222は、ページ単位の画像データに基づいて暗号化原稿及び非暗号化原稿を適宜の用紙に印刷することにより、画像データをハードコピー出力する。
【0042】
通信部230は、通信回線としてのネットワークNEを介して接続されているPC3と、また図1及び図2には示されていない外部のたとえば他のPC、プリンタ(プリンタ)、スキャナ(読取装置)等との間で通信を行なうことにより、原稿(印刷物)の画像データを送受する。なお、ネットワークNEとしては、LAN,インターネット,通常の電話回線等が利用可能であり、またそれらを相互に接続したネットワークであってもよい。
【0043】
記憶部240は、揮発性のRAM,書き換え可能な不揮発性の記憶装置であるハードディスク装置等の種々の記憶媒体を含んでいる。ハードディスク装置241はたとえば、制御部200のための制御プログラムの記憶等に使用される。揮発性のRAMは一時記憶部242として、制御部200による処理のために必要なデータ、または処理の途中で発生したデータを一時的に記憶する。
【0044】
一時記憶部242には、詳細は後述するが、処理対象の画像データを一時的に記憶するための画像データ記憶部251、「中断」フラグ252、「戻る」フラグ253、「枠移動モード」フラグ254、指定用紙方向記憶部255、指定読取回数記憶部256、読取用紙方向記憶部257、カウント値記憶部258等の記憶領域が設定されており、更にワーキングエリア259も設定されている。なお、指定読取回数記憶部256は暗号化原稿を復号化処理する際のユーザが指定した読取回数の値(指定読取回数値:同一の暗号化原稿を反復して読み取る回数)を記憶する。また指定用紙方向記憶部255は、指定読取回数記憶部256が記憶している指定読取回数値に対応する各読取回数順の暗号化原稿の読取方向に関する情報(指定用紙方向情報)を記憶する。読取用紙方向記憶部257は暗号化原稿が複数回実際に読取処理された場合にそれぞれの読取処理時の読取方向に関する情報(読取方向情報)を順次的に記憶する。カウント値記憶部258は、制御部200による種々の処理に際してカウント処理が必要な場合にカウント値を記憶し、また個々の処理に対応してカウント値の初期値を記憶する。
【0045】
制御部200は自身及び複合機2全体を制御するための機能の他に、暗号化処理部201,マーカ認識部202,復号化処理部203,画像処理部204等のソフトウェア的機能ブロックが含まれる。これらのソフトウェア的機能ブロックはいずれも、記憶部240のハードディスク装置241に予めインストールされている制御プログラムを制御部200が実行することにより実現される機能である。
【0046】
暗号化処理部201は、読取部212により読み取られたページ単位の画像データの内の指定された領域(暗号化指定領域)の画像データを従来公知の暗号化方式で暗号化する。これにより、暗号化指定領域は人間の目では判読できないたとえばスクランブル画像等に置換された領域(暗号化領域)に変換される。なお詳細は後述するが、暗号化指定領域としては処理対象の非暗号化原稿のページ単位の画像データの内の一部を指定することも、複数の部分を指定することも、又はページ全体を指定することも可能である。
【0047】
マーカ認識部202は、読取部212が原稿の画像を読み取って取得したページ単位の画像データ中から後述する領域マーカの画像データを認識する。具体的には、マーカ認識部202は、ページ単位の画像データ中に含まれる領域マーカの画像データを認識してそのページ単位の画像データ上での位置を特定する。このようにして特定された領域マーカの位置に基づいて暗号化指定領域が暗号化された暗号化領域の大きさ及び画像データ全体に対する位置が画像処理部204により特定される。また、マーカ認識部202は、認識した領域マーカに埋め込まれている種々の情報、たとえば詳細は後述するが、復号化処理に必要な暗号化原稿の読取条件(読取回数:指定読取回数値,用紙方向:指定用紙方向情報)及び復号鍵等を認識し、データとして取得する。
【0048】
復号化処理部203は、マーカ認識部202により取得された復号鍵を使用して、暗号化原稿の画像データ中の暗号化領域の画像データを復号化処理して元の画像データに復元する。
【0049】
画像処理部204は全般的な画像処理を行なう。具体的には、マーカ認識部202により特定された領域マーカの位置に基づいて暗号化領域の傾き、換言すれば暗号化原稿の画像データ全体の傾き(読取部212により原稿が読み取られた際の傾き)を補正する処理、上下左右の関係(読取部212により原稿が読み取られた際の方向)を通常の状態にするための暗号化原稿の画像データ全体の回転処理等を行なう。
【0050】
また暗号化処理に際して画像処理部204は、暗号化指定領域として指定された領域の画像データを暗号化処理部201に与えて暗号化処理させるためにページ単位の画像データから切り出す処理、暗号化された後の画像データを元の暗号化指定領域に貼り付ける処理(暗号化された画像データが貼り付けられることにより、暗号化指定領域は暗号化領域になる)、領域マーカの画像データを生成して暗号化領域の暗号化された画像データに合成する処理等を行なう。なお、領域マーカには、指定読取回数値及び指定用紙方向情報、更には暗号化領域の暗号化された画像データを復元するための復号鍵等のような、暗号化原稿の画像データを復号化するために必要な種々の情報が埋め込まれる。
【0051】
更に復号化処理に際して画像処理部204は、マーカ認識部202が認識した領域マーカの位置により特定された暗号化領域の暗号化された画像データを復号化処理部203で復号化処理させるためにページ単位の画像データから切り出す処理、復号化された後の画像データを元の暗号化領域に貼り付けることにより暗号化されていないページ単位の画像データ(非暗号化画像データ)を生成する処理等も行なう。
【0052】
PC3は、制御部300、入力部310、通信部330、出力部320、記憶部340等を含んでいることは基本的には複合機2と同様である。但し、このPC3が複合機2と大きく異なる点は、複合機2に備えられている読取部212、マーカ認識部202、復号化処理部203及び印刷部222に相当する構成要素が備えられていない反面、複合機2には備えられていないページデータ生成部305が備えられていることである。また、このような複合機2との相違点に応じて、PC3の一時記憶部342には、複合機2の位置記憶部242の読取用紙方向記憶部257以外の、画像データ記憶部251、「中断」フラグ252、「戻る」フラグ253、「枠移動モード」フラグ254、指定用紙方向記憶部255、指定読取回数記憶部256、カウント値記憶部258及びワーキングエリア259それぞれに対応する画像データ記憶部351、「中断」フラグ352、「戻る」フラグ353、「枠移動モード」フラグ354、指定用紙方向記憶部355、指定読取回数記憶部356、カウント値記憶部358及びワーキングエリア359が設定されている。
【0053】
ページデータ生成部305は、PC3にインストールされている種々のアプリケーションプログラムにより生成された文書データを構成するページ単位の画像データを生成する。ページデータ生成部305が生成したページ単位の画像データは、暗号化処理部301及び画像処理部304により、上述した複合機2の場合と基本的には同様に暗号化処理される。
【0054】
また、PC3は上述のようにして暗号化したページ単位の画像データを通信部330からネットワークNEを介して複合機2へ送信することにより、複合機2の表示部221に画像として表示させたり、また印刷部222に印刷させたりすることもできる。更に、PC3は上述のようにして暗号化したページ単位の画像データを通信部330からネットワークNEを介して他のPC等の外部の端末装置へ送信することにより、その端末装置の表示部に画像として表示させたり、また他の印刷装置へ送信することによりその印刷装置に印刷させたりすることもできる。また更に、PC3はネットワークNEから通信部330を介して受信したページ単位の画像データも、暗号化処理部301及び画像処理部304により上述した複合機2の場合と同様に暗号化処理することが可能である。
【0055】
図3は本発明に係る画像形成装置を利用した場合の画像データ及び印刷物の流れを表した模式図であり、上述した本発明に係る画像形成装置である複合機2及びPC3の他に、パーソナルコンピュータ等の外部の一般の端末装置1及び外部の一般のプリンタ4がネットワークNEを介して接続されている。以下、図3を参照して、本発明に係る画像形成装置を利用した場合の画像データ及び印刷物の流れについて簡単に説明する。
【0056】
複合機2は図1に示す構成から明らかなように、スキャナ機能(コピー機能も含む)、暗号化処理機能、復号化処理機能、印刷機能、表示機能及びネットワーク機能を有している。一方、PC3は図2に示す構成から明らかなように、スキャナ機能、復号化処理機能、及び印刷機能は有していない。しかし、PC3は暗号化処理機能及びネットワーク機能は有している。また、一般の端末装置1はネットワーク機能を有している他、表示装置が接続されている場合には表示機能を有する。また、一般の端末装置1はアプリケーションプログラムにより生成した文書データを構成する個々のページ単位の画像データをネットワーク機能を利用して複合機2又はPC3へ送信することにより暗号化処理を依頼することができる他、複合機2又は一般のプリンタ4へ送信することにより印刷を依頼することが出来る。更に一般のプリンタ4は複合機2又はPC3からネットワーク機能を利用してページ単位の画像データを受信することにより、非暗号化原稿5及び暗号化原稿6を印刷することが可能である。以下に、より具体的に説明する。
【0057】
複合機2は、スキャナ機能により、非暗号化原稿5及び暗号化原稿6のいずれをも読み取ることができる。また複合機2は、印刷機能により、スキャナ機能により読み取った非暗号化原稿5及び暗号化原稿6のいずれをも印刷し、また暗号化原稿6を自身で元の状態に復元した非暗号化原稿5を印刷することもできる。更に複合機2は、ネットワーク機能により、PC3から暗号化画像データ7を受信して印刷機能により暗号化原稿6として印刷したり、暗号化原稿6が元の状態に復元された、または元々暗号化されていない非暗号化画像データ8をPC3又は一般の端末装置1へ送信することもできる。
【0058】
一般のプリンタ4は、PC3から暗号化画像データ7を受信することにより暗号化原稿6を印刷することができる。また、一般の端末装置1は、複合機2から暗号化領域が復元された非暗号化画像データ8を受信して表示装置の画面等に表示することができる。なお、図3には示していないが、一般のプリンタ4は、複合機2から指定領域が暗号化された暗号化画像データ7を受信することにより暗号化原稿6を印刷することも、また複合機2、PC3、一般の端末装置1から非暗号化画像データ8を受信して非暗号化原稿5を印刷することもできる。
【0059】
次に、図4(a) 〜図4(c) の模式図を参照して、本発明の画像形成装置による画像処理の概略について説明する。図4(a) は非暗号化原稿5を、図4(b) はこの非暗号化原稿5の暗号化指定領域16,17を暗号化した暗号化原稿6を示す模式図である。図4(a) に示すように、非暗号化原稿5の内の上端部寄りの矩形の領域と下端部寄りの矩形の領域との二つの領域が暗号化指定領域16,17として指定されることにより、図4(b) に示すようなたとえばスクランブル画像化された暗号化領域14,15を含む暗号化原稿6が生成される。なお、暗号化指定領域16,17は本実施の形態では矩形の領域であり、従って暗号化領域14,15も矩形の領域である。そして、暗号化領域14,15それぞれの隅部には、図4(c) に示すような領域マーカ11,12,13が形成される。
【0060】
領域マーカ11は暗号化領域14(15)の左上隅部に、領域マーカ12は暗号化領域14(15)の右上隅部に、領域マーカ13は暗号化領域14(15)の左下隅部にそれぞれ形成されている。従って、暗号化領域14(15)の右下隅部には領域マーカは形成されていないので、これらの三つの領域マーカ11,12,13のページ単位の画像データ上での位置が判明すれば、暗号化領域14(15)のページ単位の画像データ上での位置及び大きさ、更にはページ単位の画像データそのものの傾き、上下左右の関係(画像の向き)等も容易に判断可能である。
【0061】
図5は、非暗号化原稿5の指定領域を暗号化した暗号化原稿6を作成するためのメインルーチン(暗号化処理のメインルーチン)の処理手順を示すフローチャートである。この暗号化処理は複合機2又はPC3のいずれでも実行可能であるが、以下においては複合機2での処理を主に説明する。なお暗号化処理は、複合機2で実行される場合は制御部200が記憶部240にインストールされている制御プログラムに従って、PC3で実行される場合は制御部300が記憶部340にインストールされている制御プログラムに従って、それぞれ処理される。
【0062】
複合機2において暗号化処理を行なう際は、制御部200が、読取部212の図示しない原稿台に載置された非暗号化原稿5の画像を読取部212に光学的に読み取らせてデジタルの画像データとして取得し、画像データ記憶部251に記憶させる(ステップS11)。なお、PC3において暗号化処理を行なう際は、種々のアプリケーションプログラムで作成された、または他の端末装置1等から受信した文書データの指定されたページの画像データを画像データ記憶部351に記憶させる。また、複合機2において暗号化処理を行なう際にも、他の端末装置1等から受信して画像データ記憶部251に記憶させた文書データの指定されたページの画像データを対象とすることも勿論可能である。
【0063】
以下に説明する暗号化処理の手順は複合機2又はPC3のいずれにおいても基本的に同様であるので、複合機2での場合についてのみ説明する。まず最初に、上述のようにして画像データ記憶部251に記憶されたページ単位の画像データの内のユーザが暗号化したい領域を指定するための暗号化指定領域27の枠をユーザが操作部211を操作して図4に示すように矩形単位で指定する暗号化領域指定処理が実行される(ステップS12)。この処理は図6,図7及び図8の暗号化領域指定処理のサブルーチンのフローチャートとして制御部200により実行される。
【0064】
以下、図6,図7及び図8のフローチャートを参照して暗号化領域指定処理について説明する。まず制御部200は一時記憶部242を暗号化領域指定処理のために初期設定する(ステップS31)。具体的には、制御部200は、「中断」フラグ252及び「枠移動モード」フラグ254の設定を共に「オフ(0)」にする。なお、「中断」フラグ252とは、その時点で実行されている処理を取り消した場合に「オン」に設定されることにより、暗号化処理を続行するか否かを判断するためのフラグである。またこの「中断」フラグ252は後述する読取回数指定処理及び用紙方向指定処理においても使用される。また、制御部200はワーキングエリア259をクリア(何も記憶していない状態)すると共に指定用紙方向記憶部255もクリアする。更に制御部200は、指定読取回数記憶部256に指定読取回数値の初期値として「2」を設定する。以上がステップS31における処理である。但し、ここでは、指定読取回数値の初期値として「2」が設定されているが、この値に限定するのではなく、システム設計上、最適な値を設定することが可能である。
【0065】
次に制御部200は、表示部221に暗号化領域指定画面21を表示する (ステップS32)。図9(a) 〜図9(c) は暗号化領域指定画面21の表示状態の遷移を示す模式図であり、図9(a) は最初のステップS32での処理において表示される初期画面である。この図9(a) に示す初期画面に示されているように、暗号化領域指定画面21の左側寄りのほぼ半分の領域には画像データ記憶部251に記憶されている処理対象の画像データをページ単位の画像として表示するためのプレビュー画面26が設定されており、暗号化指定領域27の範囲を示す枠が表示されている。
【0066】
また、暗号化領域指定画面21の右側寄りのほぼ半分の領域には、暗号化指定領域27の枠を操作するボタン類として、移動の際に使用される「枠移動モード」ボタン101,「上指標」ボタン102U,「下指標」ボタン102D,「左指標」ボタン102L,「右指標」ボタン102Rと、暗号化領域指定処理そのものの手順を指示するための「追加」ボタン104,「取消」ボタン105,「次へ」ボタン106の各ボタン類がそれぞれ表示されている。なお、図9(b) に示すように、暗号化領域指定画面21の右側寄りの部分は、暗号化指定領域27の枠のサイズ変更の際に使用される「上辺上指標」ボタン103UU、「上辺下指標」ボタン103UD、「下辺上指標」ボタン103DU、「下辺下指標」ボタン103DD、「左辺左指標」ボタン103LL、「左辺右指標」ボタン103LR、「右辺左指標」ボタン103RL、「右辺右指標」ボタン103RRと、暗号化領域指定処理そのものの手順を指示するための「追加」ボタン104,「取消」ボタン105,「次へ」ボタン106の各ボタン類がそれぞれ表示される状態に切り換えられる。図9(a) に示す表示状態と図9(b) に示す表示状態とは後述するように、「枠移動モード」ボタン101の操作に応じて切換られる。
【0067】
なお、制御部200は、暗号化領域指定画面21を表示する際には、画像データ記憶部251に記憶されている処理対象の画像データをプレビュー画面26にページ単位の画像として表示するが、この画像上にユーザが暗号化を行ないたい領域を指定するための暗号化指定領域27の枠を破線で表示する(ステップS33)。この破線は初期状態ではプレビュー画面26の全体の外郭と一致して表示される。但し、後述するように暗号化指定領域27は任意に拡大・縮小、及び移動が可能であるので、ユーザが目視で確認し易い状態であれば適宜の位置でよい。
【0068】
図10は暗号化指定領域27の枠の表示部221の画面上での表示のための座標系を示す模式図である。図10に示すように、表示部221の画面上に設定されたX−Y座標系上の座標値で暗号化指定領域27の枠の4頂点(LT:左上、RT:右上、LB:左下、RB:右下)が表わされている。従って、暗号化指定領域27の枠の移動及び拡大・縮小はこれらの4頂点(LT、RT、LB、RB)の座標値の変更により可能になる。なお、以下の説明においては、暗号化指定領域27の移動及び拡大・縮小の際の座標値の上限値及び下限値に対するリミット処理は公知であるのでその説明では省略する。
【0069】
図9(a) 〜図9(c) において暗号化領域指定画面21の右側寄りの部分の中央に「黒丸(●)」又は「白丸(○)」で表示されている「枠移動モード」ボタン101は、暗号化指定領域27の枠全体を移動させるための「枠移動」モードが設定されているのか、または枠のいずれかの一辺のみを移動させることにより暗号化指定領域27を拡大・縮小させるための「枠拡大・縮小」モードが設定されているのかを表すと共に、その切換を行なうためのボタンである。なお、図6,図7及び図8のフローチャートでは、「枠移動」モードが設定されている場合は「枠移動モード」フラグ254をオン(1)として、「枠拡大・縮小」モードが設定されている場合は「枠移動モード」フラグ254をオフ(0)としてそれぞれ示されている。このような「枠移動」モードのオン/オフは「枠移動モード」ボタン101と連動しており、「枠移動モード」フラグ254の設定状態として記憶される。
【0070】
次に制御部200は、その時点で「枠移動」モードが「オン」であるか(又はオフであるか)否か、即ち「枠移動モード」フラグ254の設定状態を判断する(ステップS34)。「枠移動モード」フラグ254が「オン」、即ち「枠移動モード」ボタン101の表示状態が黒丸(●)である場合は(ステップS34でYES)、暗号化領域指定画面21は図9(a) に示す暗号化指定領域27の移動が可能な表示状態である。従ってこの場合には、制御部200は、「上指標」ボタン102U、「下指標」ボタン102D、「左指標」ボタン102L、「右指標」ボタン102Rのいずれかが押されたか否かを判断する(ステップS35,S36,S37,S38)。
【0071】
「上指標」ボタン102Uが押された場合は(ステップS35でYES)、制御部200は暗号化指定領域27を上へ移動することが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の4頂点(LT、RT、LB、RB)のY座標をそれぞれ1ポイント減少させることにより、暗号化指定領域27の枠全体をプレビュー画面26内で上へ移動させるための座標値を計算する(ステップS39)。「下指標」ボタン102Dが押された場合は(ステップS36でYES)、制御部200は暗号化指定領域27を下へ移動することが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の4頂点(LT、RT、LB、RB)のY座標をそれぞれ1ポイント増加させることにより、暗号化指定領域27の枠全体をプレビュー画面26内で下へ移動させるための座標値を計算する(ステップS40)。
【0072】
更に、「左指標」ボタン102Lが押された場合は(ステップS37でYES)、制御部200は暗号化指定領域27を左へ移動することが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の4頂点(LT、RT、LB、RB)のX座標をそれぞれ1ポイント減少させることにより、暗号化指定領域27の枠全体をプレビュー画面26内で左へ移動させるための座標値を計算する(ステップS41)。「右指標」ボタン102Rが押された場合は(ステップS38でYES)、制御部200は暗号化指定領域27を右へ移動することが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の4頂点(LT、RT、LB、RB)のX座標をそれぞれ1ポイント増加させることにより、暗号化指定領域27の枠全体をプレビュー画面26内で右へ移動させるための座標値を計算する(ステップS42)。
【0073】
以上のような暗号化指定領域27の枠のX座標値及びY座標値の計算後、制御部200はステップS33へ処理を戻すことによって、プレビュー画面26に移動後の暗号化指定領域27の枠を再度表示する(ステップS33)。
【0074】
「上指標」ボタン102U,「下指標」ボタン102D,「左指標」ボタン102L,「右指標」ボタン102Rのいずれも操作されなかった場合は(ステップS35,S36,S37,S38のいずれもNO)、制御部200は「追加」ボタン104,「次へ」ボタン106,「取消」ボタン105,「枠移動モード」ボタン101のいずれかが押されたか否かを判断する(ステップS43,S44,S45,S46)。
【0075】
「追加」ボタン104が押された場合は(ステップS43でYES)、制御部200はその時点でプレビュー画面26上で指定されている枠が暗号化指定領域27の枠として確定したものとしてそのX座標とY座標の値を一時記憶部242のワーキングエリア259に記憶させる(ステップS47)。そして制御部200は確定した暗号化指定領域27を図9(c) に示すようにたとえばグレー表示することによって、指定済みの暗号化指定領域28として表示する(ステップS48)。これによって、指定済みの暗号化指定領域28は、次に追加して指定される暗号化指定領域27の枠と容易に区別可能になる。この後、制御部200は処理をステップS32へ戻すことによって、図9(c) に示すように次の暗号化指定領域27の枠をプレビュー画面26のグレー表示された指定済み暗号化指定領域28以外の領域に表示する。
【0076】
「次へ」ボタン106が押された場合は(ステップS44でYES)、ユーザが暗号化指定領域の指定を終了して次の処理へ進みたい場合であるので、制御部200はその時点の暗号化指定領域27の枠のX座標とY座標の値を一時記憶部242のワーキングエリア259に記憶させ(ステップS49)、暗号化領域指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへリターンする。「取消」ボタン105が押された場合は(ステップS45でYES)、ユーザが暗号化指定領域の指定をやり直す場合であるので、制御部200は「中断」フラグ252の設定を「オン」にし(ステップS50)、暗号化領域指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへリターンする。
【0077】
「枠移動モード」ボタン101が押された場合は(ステップS46でYES)、ユーザが暗号化指定領域27の枠を移動させる操作を止めて拡大・縮小を行なう場合(又はその逆)であるので、制御部200は「枠移動モード」フラグ254の設定を逆に、即ち「オン」から「オフ」へ、又は「オフ」から「オン」へ切り換える(ステップS51)。この後、制御部200はステップS33へ処理を戻す。従ってこの場合、ステップS34において「枠移動モード」フラグが「オフ」、即ち「枠移動モード」ボタン101が白丸(○)で表示されていると判断された場合には(ステップS34でNO)、暗号化領域指定画面21は図9(b) に示す暗号化指定領域27の拡大・縮小が可能な表示状態である。従ってこの場合には、制御部200は、「上辺上指標」ボタン103UU,「上辺下指標」ボタン103UD,「下辺上指標」ボタン103DU,「下辺下指標」ボタン103DD,「左辺左指標」ボタン103LL,「左辺右指標」ボタン103LR,「右辺左指標」ボタン103RL,「右辺右指標」ボタン103RRのいずれかが押されたか否かを判断する(ステップS52,S53,S54,S55,S56,S57,S58,S59)。
【0078】
「上辺上指標」ボタン103UUが押された場合は(ステップS52でYES)、制御部200は暗号化指定領域27をその枠の上辺を上方へ移動させて拡大させることが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の上側の両頂点LT及びRTのY座標を1ポイント減少させることにより、暗号化指定領域27の上辺を上方向へ移動させて上側へ拡大させるための座標値を計算する(ステップS60)。
【0079】
「上辺下指標」ボタン103UDが押された場合は(ステップS53でYES)、制御部200は暗号化指定領域27をその枠の上辺を下方へ移動させて縮小させることが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の上側の両頂点LT及びRTのY座標を1ポイント増加させることにより、暗号化指定領域27の上辺を下方向へ移動させて上側を縮小させるための座標値を計算する(ステップS61)。
【0080】
「下辺上指標」ボタン103DUが押された場合は(ステップS54でYES)、制御部200は暗号化指定領域27をその枠の下辺を上方へ移動させて縮小させることが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の下側の両頂点LB及びRBのY座標を1ポイント減少させることにより、暗号化指定領域27の下辺を上方向へ移動させて下側を縮小させるための座標値を計算する(ステップS62)。
【0081】
「下辺下指標」ボタン103DDが押された場合は(ステップS55でYES)、制御部200は暗号化指定領域27をその枠の下辺を下方へ移動させて拡大させることが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の下側の両頂点LB及びRBのY座標を1ポイント増加させることにより、暗号化指定領域27の下辺を下方向へ移動させて下側へ拡大させるための座標値を計算する(ステップS63)。
【0082】
「左辺左指標」ボタン103LLが押された場合は(ステップS56でYES)、制御部200は暗号化指定領域27をその枠の左辺を左方へ移動させて拡大させることが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の左側の両頂点LT及びLBのX座標を1ポイント減少させることにより、暗号化指定領域27の左辺を左方向へ移動させて左側へ拡大させるための座標値を計算する(ステップS64)。
【0083】
「左辺右指標」ボタン103LRが押された場合は(ステップS57でYES)、制御部200は暗号化指定領域27をその枠の左辺を右へ移動させて縮小させることが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の左側の両頂点LT及びLBのX座標を1ポイント増加させることにより、暗号化指定領域27の左辺を右方向へ移動させて左側を縮小させるための座標値を計算する(ステップS65)。
【0084】
「右辺左指標」ボタン103RLが押された場合は(ステップS58でYES)、制御部200は暗号化指定領域27をその枠の右辺を左方へ移動させて縮小させることが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の右側の両頂点RT及びRBのX座標を1ポイント減少させることにより、暗号化指定領域27の右辺を左方向へ移動させて右側を縮小させるための座標値を計算する(ステップS66)。
【0085】
「右辺右指標」ボタン103RRが押された場合は(ステップS59でYES)、制御部200は暗号化指定領域27をその枠の右辺を右方へ移動させて拡大させることが指示されたと判断する。この場合、制御部200は暗号化指定領域27の枠の右側の両頂点RT及びRBのX座標を1ポイント増加させることにより、暗号化指定領域27の右辺を右方向へ移動させて右側へ拡大させるための座標値を計算する(ステップS67)。
【0086】
以上のような暗号化指定領域27の枠のX座標値及びY座標値の計算後、制御部200はステップS33へ処理を戻すことによって、プレビュー画面26に拡大・縮小後の暗号化指定領域27の枠を再度表示する(ステップS33)。
【0087】
「上辺上指標」ボタン103UU,「上辺下指標」ボタン103UD,「下辺上指標」ボタン103DU,「下辺下指標」ボタン103DD,「左辺左指標」ボタン103LL,「左辺右指標」ボタン103LR,「右辺左指標」ボタン103RL,「右辺右指標」ボタン103RRのいずれも押されなかった場合は(ステップS52,S53,S54,S55,S56,S57,S58,S59でいずれもNO)、制御部200は「追加」ボタン104,「次へ」ボタン106,「取消」ボタン105,「枠移動モード」ボタン101のいずれかが押されたか否かを判断する(ステップS43,S44,S45、S46)。
【0088】
この「枠移動モード」フラグ254が「オフ」の場合においても、「枠移動モード」ボタン101,「追加」ボタン104,「取消」ボタン105,「次へ」ボタン106のいずれかが押されたか否かの判断とそれに対応する処理とは前述した「枠移動モード」フラグ254が「オン」の場合と同様であるので、その説明は省略する。いずれにしろ、「次へ」ボタン106又は「取消」ボタン105が押されることにより(ステップS44又はS45でYES)、制御部200はこの暗号化領域指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへ処理をリターンさせる。
【0089】
以上のような暗号化領域指定処理のサブルーチンから図5の暗号化処理のメインルーチンへリターンした場合には、制御部200は「中断」フラグ252の設定を確認する(ステップS13)。「中断」フラグ252が「オン」である場合、即ちユーザが暗号化処理を中断した場合は(ステップS13でYES)、制御部200は一時記憶部242のワーキングエリア259をクリアし、指定読取回数記憶部256に指定読取回数値として「2」を設定し、指定用紙方向記憶部255の記憶内容をクリアし(ステップS22)、暗号化処理を終了する。「中断」フラグ252が「オフ」である場合は(ステップS13でNO)、制御部200は次に復号化処理時に何回その暗号化原稿6を読み取る必要があるのかを指定する処理(読取回数指定処理)を行なう(ステップS14)。この読取回数指定処理は図11のフローチャートにサブルーチンとして示されている。
【0090】
以下、図11のフローチャートを参照して読取回数指定処理について説明する。まず制御部200は「中断」フラグ252及び「戻る」フラグ253の設定をそれぞれ「オフ」にする(ステップS71及びS72)。なお、「戻る」フラグ253とは、制御部200がその時点で実行中の処理(この場合は読取回数指定処理)を中断し、一つ前の処理(この場合は暗号化領域指定処理)に戻る場合に「オン」に設定しておくフラグである。「戻る」フラグ253は、後述する用紙方向指定処理でも使用される。
【0091】
次に制御部200はカウント値記憶部258に指定読取回数記憶部256が記憶している指定読取回数値を設定する(ステップS73)。ここで、指定読取回数記憶部256が記憶している指定読取回数値をカウント値記憶部258に設定する理由は、後述する用紙方向指定処理(ステップS17)から「戻る」ボタンで暗号化処理のメインルーチンへリターンした場合に、前回に設定されていた指定読取回数値から修正するためである。
【0092】
次に制御部200は、表示部221に図12にその模式図を示すような読取回数指定画面22を表示する(ステップS74)。この読取回数指定画面22には、その時点で指定されている読取回数を示す指定読取回数表示部29,「上指標」ボタン107U,「下指標」ボタン107D,「取消」ボタン105,「次へ」ボタン106,「戻る」ボタン108が表示される。このような読取回数指定画面22が表示されると、制御部200は、「上指標」ボタン107U,「下指標」ボタン107Dのいずれかが押されたか否かを判断する(ステップS75,S76)。
【0093】
「上指標」ボタン107Uが押された場合は(ステップS75でYES)、制御部200はカウント値記憶部258が記憶しているカウント値を「1」インクリメントする(ステップS77)。「下指標」ボタン107Dが押された場合は(ステップS76でYES)、制御部200はカウント値記憶部258が記憶しているカウント値を「1」デクリメントする(ステップS78)。いずれの場合も制御部200はステップS75へ処理を戻すので、上述のようにして増減されたカウント値は読取回数指定画面22に表示されることになる。なお、カウント値記憶部258が記憶するカウント値の上限値、下限値に対するリミット処理は公知であるのでその説明では省略する。
【0094】
ところで、指定読取回数記憶部256にはこの場合、指定読取回数値の初期値として「2」が設定されているので、読取回数指定画面22が最初に表示された時点では指定読取回数表示部29には「2」が表示されることになる。しかし、上述のような操作により、指定読取回数値を初期値である「2」からユーザは任意に増減させることができる。
【0095】
「次へ」ボタン106が押された場合は(ステップS75,S76で共にNO,ステップS79でYES)、ユーザが読取回数の指定を終了した場合であるので、制御部200はカウント値記憶部258がその時点で記憶しているカウント値を指定読取回数記憶部256に指定読取回数値として記憶させ(ステップS80)、読取回数指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへリターンする。これにより、指定読取回数記憶部256には、その時点で処理対象にされている原稿が暗号化原稿6として復号化される際の読取回数の指定値(指定読取回数値)が記憶される。
【0096】
「取消」ボタン105が押された場合は(ステップS79でNO,S81でYES)、制御部200は「中断」フラグ252の設定を「オン」にし(ステップS82)、読取回数指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへリターンする。「戻る」ボタン108が押された場合は(ステップS81でNO,S83でYES)、制御部200は「戻る」フラグ253の設定を「オン」にし(ステップS84)、読取回数指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへリターンする。
【0097】
以上のようにして読取回数指定処理が終了すると、制御部200は図5に示す暗号化処理のメインルーチンへ処理を戻す。読取回数指定処理から暗号化処理のメインルーチンへリターンした場合は、制御部200はまず「中断」フラグ252の設定を確認する(ステップS15)。
【0098】
「中断」フラグ252の設定が「オン」である場合、即ちユーザが暗号化処理を中断した場合は(ステップS15でYES)、制御部200は一時記憶部242のワーキングエリア259をクリアし、指定読取回数記憶部256に指定読取回数値として「2」を設定し、指定用紙方向記憶部255の記憶内容をクリアし(ステップS22)、暗号化処理を終了する。一方、「中断」フラグ252の設定が「オフ」である場合は(ステップS15でNO)、制御部200は次に「戻る」フラグ253の設定を確認する(ステップS16)。「戻る」フラグ253の設定が「オン」である場合、即ちユーザが読取回数指定処理を中断してその前の暗号化領域指定処理をやり直す場合は(ステップS16でYES)、制御部200はステップS12へ処理を戻し、前述した暗号化領域指定処理以降の処理手順を再度実行する。一方、「戻る」フラグ253の設定が「オフ」である場合は(ステップS16でNO)、制御部200は次の用紙方向指定処理を実行する(ステップS17)。なおこの用紙方向指定処理は図13のフローチャートにサブルーチンとして示されている。
【0099】
以下、図13のフローチャートを参照して用紙方向指定処理について説明する。制御部200はまず、「中断」フラグ252及び「戻る」フラグ253の設定を共に「オフ」にし、更にカウント値記憶部258が記憶しているカウント値を「1」に設定する(ステップS101,S102,S103)。そして、制御部200は図14(a) 〜図14(c) の模式図に示すように、表示部221に用紙方向指定画面23を表示する(ステップS104)。
【0100】
図14(a) 〜図14(c) は用紙方向指定画面23の表示状態の遷移を示す模式図であり、図14(a) はステップS104において表示される初期画面を示している。用紙方向指定画面23の上部寄りの部分には方向順序表示画面30が表示され、同下部寄りの部分には「上指標」ボタン111U,「下指標」ボタン111D,「左指標」ボタン111L,「右指標」ボタン111R,「取消」ボタン105,「戻る」ボタン108が表示される。なお、図14(a) に示す用紙方向指定画面23の初期画面では、3回の内の1回目であること、具体的には、先の読取回数指定処理において読取回数が「3回」に指定された場合の1回目の読取時の原稿(用紙)の読取方向の指定を行なうための画面であることが表示されている。
【0101】
また、図15(a) 〜図15(d) は方向順序表示画面30に表示される各指標マークを示す模式図である。図15(a) に示されている上指標マーク31Uは、ユーザが原稿(用紙)の上端部を読取部212の原稿台にユーザから見て上側(奥側)に位置させて載置することを指定するために「上指標」ボタン111Uを押した場合に方向順序表示画面30に表示される。図15(b) に示されている下指標マーク31Dは、ユーザが原稿(用紙)の上端部を読取部212の原稿台にユーザから見て下側(手前側)に位置させて載置することを指定するために「下指標」ボタン111Dを押した場合に方向順序表示画面30に表示される。図15(c) に示されている左指標マーク31Lは、ユーザが原稿(用紙)の上端部を読取部212の原稿台にユーザから見て左側に位置させて載置することを指定するために「左指標」ボタン111Lを押した場合に方向順序表示画面30に表示される。
図15(d) に示されている右指標マーク31Rは、ユーザが原稿(用紙)の上端部を読取部212の原稿台にユーザから見て右側に位置させて載置することを指定するために「右指標」ボタン111Rを押した場合に方向順序表示画面30に表示される。但し、いずれの場合も、原稿 (用紙)はユーザから見た状態では裏返しで読取部212の原稿台に載置される。
【0102】
制御部200はまずこれらの「上指標」ボタン111U,「下指標」ボタン111D,「左指標」ボタン111L,「右指標」ボタン111Rのいずれかが押されたか否かを判断する(ステップS105,S106,S107,S108)。
【0103】
「上指標」ボタン111Uが押された場合は(ステップS105でYES)、制御部200は原稿の上端部を上向き(奥)に載置することが指定されたと判断する。この場合、制御部200は図15(a) に示す上指標マーク31Uを方向順序表示画面30に表示し(ステップS109)、指定用紙方向記憶部255に「上方向」の情報を記憶させる(ステップS110)。
【0104】
「下指標」ボタン111Dが押された場合は(ステップS106でYES)、制御部200は原稿の上端部を下向き(手前)に載置することが指定されたと判断する。この場合、制御部200は図15(b) に示す下指標マーク31Dを方向順序表示画面30に表示し(ステップS111)、指定用紙方向記憶部255に「下方向」の情報を記憶させる(ステップS112)。
【0105】
「左指標」ボタン111Lが押された場合は(ステップS107でYES)、制御部200は原稿の上端部を左向きに載置することが指定されたと判断する。この場合、制御部200は図15(c) に示す左指標マーク31Lを方向順序表示画面30に表示し、(ステップS113)、指定用紙方向記憶部255に「左方向」の情報を記憶させる(ステップS114)。
【0106】
「右指標」ボタン111Rが押された場合は(ステップS108でYES)、制御部200は原稿の上端部を右向きに載置することが指定されたと判断する。この場合、制御部200は図15(d) に示す右指標マーク31Rを方向順序表示画面30に表示し(ステップS115)、指定用紙方向記憶部255に「右方向」の情報を記憶させる(ステップS116)。なお、図14(b) には、1回目の読取時の読取方向として「右方向」が指定された状態が例示されている。また、図14(b) に示す用紙方向指定画面23では、次が2回目の読取時の読取方向の指定であること、具体的には、先の読取回数指定処理において指定された「3回」の読取回数の内の1回目の読取時の原稿(用紙)の読取方向の指定が完了してこれから2回目の読取時の原稿(用紙)の読取方向の指定を行なうための画面であることが表示されている。
【0107】
上述のように「上指標」ボタン111U,「下指標」ボタン111D,「左指標」ボタン111L,「右指標」ボタン111Rのいずれかが押された場合は、制御部200はカウント値記憶部258が記憶しているカウント値を「1」インクリメントする(ステップS117)。そして、制御部200はカウント値記憶部258が記憶しているインクリメントした後のカウント値を図14(a) 〜図14(c) に示されているように「n回目」の「n」として表示する。
【0108】
また、制御部200は、カウント値記憶部258が記憶しているインクリメントした後のカウント値と指定読取回数記憶部256が記憶している指定読取回数値とを比較し(ステップS118)、カウント値記憶部258が記憶しているカウント値が指定読取回数記憶部256が記憶している指定読取回数値(この例では「3」)を超えている場合、即ち読取回数指定処理において指定された指定読取回数分の用紙方向指定が完了している場合は(ステップS118でYES)、用紙方向指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへリターンする。一方、カウント値記憶部258が記憶しているインクリメント後のカウント値が指定読取回数記憶部256が記憶している指定読取回数値以下である場合、即ち読取回数指定処理において指定された指定読取回数分の用紙方向指定が完了していない場合は(ステップS118でNO)、制御部200はステップS105へ処理を戻し、再度、いずれかのボタンが押されたか否かを判断する前述の処理を反復する。
【0109】
「上指標」ボタン111U,「下指標」ボタン111D,「左指標」ボタン111L,「右指標」ボタン111Rのいずれも押されない場合(ステップS105,S106,S107,S108でいずれもNO)、制御部200は「戻る」ボタン108,「取消」ボタン105のいずれかが押されたか否かを判断する(ステップS119,S120)。
【0110】
「戻る」ボタン108が押された場合は(ステップS119でYES)、制御部200は「戻る」フラグ253の設定を「オン」にし(ステップS121)、この用紙方向指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへリターンする。「取消」ボタン105が押された場合は(ステップS120でYES)、制御部200は「中断」フラグ252の設定を「オン」にし(ステップS122)、用紙方向指定処理を終了して暗号化処理のメインルーチンへリターンする。
【0111】
なお、図14(c) に示す用紙方向指定画面23においては上述のような用紙方向指定処理の結果、方向順序表示画面30には、右指標マーク31R、下指標マーク31D、上指標マーク31Uの順に3個の指標マークが表示された状態が示されている。即ち、この図14(c) に示す方向順序表示画面30は、ユーザが原稿(用紙)を1回目は右向きに、2回目は下向きに、3回目は上向きに読み取らせることを指定したことを表示している。また、図14(c) には3回の指定読取回数に対して「4回目」が表示されている。従ってこの場合にはステップS118での判断結果が「YES」になるので、暗号化処理のメインルーチンへ自動的に処理が戻されることになる。
【0112】
以上のようにして図13のフローチャートに示す用紙方向指定処理のサブルーチンから図5のフローチャートに示す暗号化処理のメインルーチンへリターンすると、制御部200はまず「中断」フラグ252の設定を確認する(ステップS18)。「中断」フラグ252の設定が「オン」である場合、即ちユーザが暗号化処理を中止した場合は(ステップS18でYES)、制御部200は一時記憶部242のワーキングエリア259をクリアし、指定読取回数記憶部256に指定読取回数値として「2」を設定し、指定用紙方向記憶部255の記憶内容をクリアし(ステップS22)、暗号化処理を終了する。しかし、「中断」フラグ252が「オフ」である場合は(ステップS18でNO)、制御部200は次に「戻る」フラグ253の設定を確認する(ステップS19)。
【0113】
「戻る」フラグ253が「オン」である場合、即ちユーザが用紙方向指定処理を中断してその前の読取回数指定処理をやり直す場合は(ステップS19でYES)、制御部200はステップS14へ処理を戻して前述した読取回数指定処理以降の処理手順を再度実行する。これにより、ユーザは読取回数の指定から操作をやり直すことが可能になる。一方、「戻る」フラグ253が「オフ」である場合は(ステップS19でNO)、制御部200はステップS20へ処理を進めて以下のような画像データの暗号化処理を実行する。
【0114】
制御部200は、画像データ記憶部251に記憶されている処理対象のページ単位の画像データの内の暗号化領域指定処理において指定された暗号化指定領域16(17)の画像データを暗号化処理部201へ送って所定の暗号鍵を使用しての従来公知の暗号化方式で暗号化させる。また制御部200は、指定読取回数記憶部256及び指定用紙方向記憶部255が記憶している情報(指定読取回数値,指定用紙方向情報)、更には上記の暗号鍵に対応する復号鍵を埋め込んだ領域マーカ11,12,13の画像データを画像処理部204に生成させる。そして制御部200は、暗号化処理部201が暗号化した暗号化指定領域16(17)の画像データ(暗号化されたたとえばスクランブル画像等のような画像データ)の四隅部の内の所定の隅部(本実施の形態では右下隅部を除く三隅部)に、画像処理部204が生成した領域マーカ11,12,13の画像データを合成させる。このようにして領域マーカ11,12,13の画像データが合成された暗号化画像データは画像データ記憶部251に記憶されている処理対象のページ単位の画像データの暗号化指定領域16(17)に貼り付けられる。この結果、暗号化指定領域16(17)は暗号化領域14(15)になる。
【0115】
以下、領域マーカについて具体的に説明する。図4(c) に示すように、暗号化領域14(15)の四隅部の内の三隅部には、領域マーカ11(左上),12(右上),13(左下)の画像が合成される。これらの領域マーカ11,12,13は暗号化領域14(15)の範囲を示すのみならず、各領域マーカ11,12,13の画像内には読取回数指定処理において指定された復号化処理時の読取回数の値(指定読取回数値)、用紙方向指定処理において指定された復号化処理時の暗号化原稿6の各読取時の読取方向を示す情報(指定用紙方向情報)、更には復号化処理に使用するための復号鍵が人の目では判読不可能な状態で埋め込まれている。
【0116】
以上のようにして暗号化された暗号化原稿6の画像データ(暗号化画像データ7)を制御部200は画像データ記憶部251から読み出して印刷部222に与えることにより、適宜の用紙に印刷させることができる(ステップS21)。一方、PC3では、図3に示すように、種々のアプリケーションプログラムにより生成された文書データのページ単位の画像データが暗号化処理部301により上述の複合機2の場合と同様に暗号化され、ページデータ生成部305によりページ単位で暗号化された暗号化画像データ7に変換される。この暗号化画像データ7は、たとえばネットワークNEを通じて複合機2、一般のプリンタ4へ送信され(ステップS21)、適宜の用紙に暗号化原稿6として印刷される。また、PC3で生成された暗号化画像データ7は、PC3の表示部321は勿論のこと、複合機2の表示部221に画像として表示可能であり、また一般の端末装置1の表示装置にも画像として表示可能である。
【0117】
次に、以上のようにして印刷された暗号化原稿6の復号化処理について説明する。なお、暗号化原稿6の復号化処理は複合機2においてのみ可能であり、PC3においては実行できない。但し、PC3において作成された暗号化原稿6であっても複合機2に読み取らせることにより、復号化処理することは可能である。
【0118】
複合機2が暗号化原稿6を復号化処理する場合には、暗号化原稿6の読取回数と、各読取時の暗号化原稿6の読取方向、具体的には読取部212の図示しない原稿台212Pに暗号化原稿6を載置する際の方向が重要な、換言すればユーザを認証するためのキーとなる。図16は暗号化原稿6を読取部212の原稿台212Pに載置する際の用紙方向の定義を説明するための模式図である。
【0119】
一般的にスキャナ等に原稿を読み取らせる際は画像が形成されている面(以下、この面を表面、逆側の面を裏面という)を原稿台212P側へ向けて原稿を載置するので、ユーザには原稿の裏面が見える状態になる。従って、図16(a) 〜図16(d) では原稿を裏面から見た場合に表面に形成されている画像を透視した状態を示している。原稿台212Pへの原稿の置き方には、図16(a) に示すように、原稿(暗号化原稿6)の上端部を原稿台212Pにユーザから見て上側(奥側)に位置させて載置する方法、図16(b) に示すように、原稿(暗号化原稿6)の上端部を原稿台212Pにユーザから見て下側(手前側)に位置させて載置する方法、図16(c) に示すように、原稿(暗号化原稿6)の上端部を原稿台212Pにユーザから見て左側に位置させて載置する方法、図16(d) に示すように、原稿(暗号化原稿6)の上端部を原稿台212Pにユーザから見て右側に位置させて載置する方法(以下、順に上下左右という)の4通りがある。なお、図16(a), (b), (c), (d)に示されているそれぞれの状態の原稿を以下においては上向き原稿6U、下向き原稿6D、左向き原稿6L、右向き原稿6Rとする。
【0120】
図17(a) 〜図17(e) 及び図18(f) ,図18(g) は、暗号化原稿6の復号化処理を行なう際に複合機2の表示部221に表示される復号化処理画面24の表示状態の遷移を示す模式図であり、復元に成功した場合の状態を図17(a) 〜図17(e) に、失敗した場合の状態を図17(a) 〜図17(c) 及び図18(f) ,図18(g) に示している。なお、正しい復号化処理の手順としては、図19(a) 〜図19(c) の模式図は、正しい復号化処理の暗号化原稿の読取手順の一例を示す模式図である。以下においては、読取回数が3回で、それぞれの読取時に暗号化原稿6が原稿台212Pに載置される方向が順に右、下、上、即ち1回目の読取時には右向き原稿6Rが、2回目の読取時には下向き原稿6Dが、3回目の読取時には上向き原稿6Uが読み取られるようにすればよい場合を一例として説明する。
【0121】
図20及び図21は暗号化原稿6の復号化処理のための処理手順を示すフローチャートであり、暗号化原稿6中の暗号化領域14の暗号化されている画像データを復号化処理して元の画像データに復元して印刷することにより、または表示装置(表示部)に表示させることにより、暗号化領域14の内容が人の目で判読可能になるようにする。以下、この図20及び図21に示すフローチャートを参照して、暗号化原稿6の復号化処理について説明する。
【0122】
複合機2において復号化処理を開始する際に、制御部200はまず、カウント値記憶部258が記憶しているカウント値をクリア、即ち「0」にする (ステップS201)。この復号化処理に際しては、カウント値記憶部258が記憶しているカウント値は、暗号化原稿6を実際に何回読み取ったかをカウントするために使用される。従って、復号化処理の開始時点では上記のように「0」がカウント値として設定される必要がある。
【0123】
次に制御部200は、読取用紙方向記憶部257の記憶内容である指定用紙方向情報をクリアする(ステップS202)。読取用紙方向記憶部257は暗号化原稿6を実際に読み取る都度、原稿6が原稿台212Pに置かれていた方向に関する情報(指定用紙方向情報)を順次的に記憶しておくための記憶領域であるので、復号化処理の初期設定としては何も記憶していない状態にする必要がある。次に制御部200は復号化処理画面24を表示部221に表示する(ステップS203)。なお、ステップS 203においては、図17(a) の模式図に示されている復号化処理画面24の初期画面が表示される。
【0124】
復号化処理画面24には、図17(a) 〜図17(d) 及び図18(f) に示すように、上部寄りの部分に方向順序表示画面30が表示され、下部寄りの部分に「読取」ボタン109,「取消」ボタン105,「終了」ボタン110が表示される。なお、図17(a) に示す復号化処理画面24の初期画面では、「1回目」の読取処理であること、具体的には、先の読取回数指定処理において指定された「3回」の指定読取回数の内の1回目の読取処理を行なうための画面であることが表示されている。
【0125】
次に、制御部200は、原稿(暗号化原稿6)がユーザによって原稿台212Pに載置(セット)されたことを確認する(ステップS204)。この確認は、原稿台212Pに備えられている図示しないセンサにより可能である。ところで、暗号化原稿6を原稿台212Pに載置する方向はその暗号化原稿6を作成したユーザ自身(又はその暗号化原稿6を作成したユーザから知らされているユーザ)のみが知っているので、ユーザは暗号化原稿6を1回目の読み取りの際の正しい方向、換言すれば、用紙方向指定処理において1回目の用紙方向としてユーザ自身が指定した方向で原稿台212Pに載置する。
【0126】
原稿台212Pに暗号化原稿6が載置された後、制御部200は「読取」ボタン109,「取消」ボタン105,「終了」ボタン110のいずれかが押されたか否かを判断する(ステップS205,S206,S207)。そして、「読取」ボタン109が押された場合は(ステップS205でYES)、制御部200は原稿台212Pに載置されている暗号化原稿6の画像を読取部212に読み取らせ、ページ単位の画像データを生成させて画像データ記憶部251に記憶させる(ステップS208)。次に制御部200は、上述のようにして画像データ記憶部251に記憶された画像データに含まれる領域マーカ11,12,13の画像データをマーカ認識部202に認識させる(ステップS209)。
【0127】
領域マーカ11,12,13は一つの暗号化領域14(15)の矩形の領域の四隅部の内の所定の三隅部にのみ形成されている。これらの三つの領域マーカ11,12,13の位置をマーカ認識部202がまず最初に認識することにより、暗号化領域14の四隅部の内のいずれの三隅部に領域マーカ11,12,13が形成されているかが判明し、これによって暗号化領域14(15)の向き、即ち読み取った暗号化原稿6の読取方向が判明する。従って、次に制御部200は、必要であれば、暗号化領域14の上部が画像としての上部になるように、画像データ記憶部251に記憶されているページ単位の画像データ全体を一旦読み出して画像処理部204に回転処理させてページ単位の画像データの上部が上側に位置する正しい方向にし(ステップS210)、正しい方向にされた暗号化画像データを画像データ記憶部251に記憶させる(ステップS211)。但し、2回目以降の原稿6の読み取りの際には、方向は異なってはいるが実際は同一の原稿を読み取っているので、画像データを画像データ記憶部251に記憶させる必要も、画像データを回転させる必要もない。
【0128】
また、制御部200は、正しい方向にされた画像データ上の3つの領域マーカ11,12,13の位置から暗号化領域14(15)の大きさ及びページ単位の画像データ(暗号化原稿6)上での位置も判明するので、それらの情報を一時記憶部242のワーキングエリア259に記憶させる(ステップS212)。また、各領域マーカ11,12,13に埋め込まれている情報からは復号化処理に際して必要な種々の情報が読み出されるので、制御部200はそれらの情報を一時記憶部242に記憶させる(ステップS213)。
【0129】
このステップS213において一時記憶部242に記憶される情報は以下の通りである。原稿が暗号化された際に指定された指定読取回数値及び指定用紙方向情報がマーカ認識部202により読み出されるので、制御部200はそれぞれを指定読取回数記憶部256及び指定用紙方向記憶部255に記憶させる。更に、暗号化原稿6の暗号化領域14(15)が暗号化された際に使用された暗号鍵に対応する復号鍵がマーカ認識部202により読み出されてワーキングエリア259に記憶される。
【0130】
次に制御部200は、先に暗号化領域14の方向を判断した際に得られた画像データの方向、即ち原稿が原稿台212Pに載置されて読取部212により実際に読み取られた際の方向を読取方向情報として読取用紙方向記憶部257に記憶させる(ステップS214)。
【0131】
なお、復号鍵は、複合機2側にも、将来のシステム拡張のため、または個別対応等で予備として予め備えられてはいるが、原則としては暗号化原稿6の領域マーカから得た復号鍵が優先して使用される。また、領域マーカ11,12,13の位置関係は、暗号化原稿6を読み取った際の暗号化原稿6の傾きの程度を判断するためにも使用可能である。
【0132】
なお、同一の暗号化原稿6の2回目以降の読み取りに際しては、方向が異なってはいても実際は同一の原稿を読み取っているので、実際の読取方向(読取方向情報)のみを読取回数と対応させて読取用紙方向記憶部257に記憶させるのみでもよい。
【0133】
次に、制御部200は、読み取られた暗号化原稿6がどの方向で原稿台212Pに載置されていたかをユーザに示すために、方向順序表示画面30に図15に示した上指標マーク31U,下指標マーク31D,左指標マーク31L,右指標マーク31Rの内の、読取用紙方向記憶部257に記憶されている読取方向情報に対応するマークで表示する(ステップS215)。
【0134】
以上のようにして暗号化原稿6の1回目の読み取り及びそれに関連する種々の処理が終了すると、制御部200はカウント値記憶部258が記憶しているカウント値を「1」インクリメントし(ステップS216)、ステップS204へ処理を戻して次回の読取処理を待機する状態になる。この状態では図17(b) に示すように、復号化処理画面24にはこれから「2回目」の読取処理が行なわれることをユーザに示すための表示が行なわれる。この後、暗号化原稿6が原稿台212Pに再度載置されて「読取」ボタン109が押されれば、上述同様の処理が処理が行なわれる。従って、ユーザが同一の暗号化原稿6を向きを変えて原稿台212Pに載置しつつ反復して読取部212に読み取らせれば、復号化処理画面24は図17(b) に示す状態から図17(c) 及び図17(d) に示す状態へ、または図17(c) 及び図18(f) に示すような状態へ遷移する。
【0135】
従って、1回目の読み取りが終了した時点では図17(b) に示すように、右指標マーク31Rのみが表示されるが、2回目以降の読み取りが終了する都度、順次的に図17(c),図17(d) 又は図18(f) に示すように、指標マーク31U,31D,31L,31Rの内のいずれかが方向順序表示画面30に順次的に追加して表示される。ユーザはこのような方向順序表示画面30に順次的に追加して表示される指標マークを視認することにより、自身が覚えている読取回数の指定回数及びそれぞれの読取時の読取方向を確認することができる。
【0136】
ところで、「読取」ボタン109が押されずに「終了」ボタン110が押された場合は(ステップS205,S206でNO、ステップS207でYES)、制御部200は復号化処理に必要な回数の読取が行なわれたか否かを判断する (ステップS217)。具体的には、マーカ領域11,12,13に埋め込まれている情報から先に得られて指定読取回数記憶部256に記憶されている指定読取回数値と実際の読取回数、即ちカウント値記憶部258に記憶されているカウント値とが比較される。
【0137】
読取部212が実際に暗号化原稿6を読み取った回数、即ちカウント値記憶部258が記憶しているカウント値が復号化処理に必要な読取回数、即ち指定読取回数記憶部256が記憶している指定読取回数値と一致している場合は(ステップS217でYES)、制御部200は指定用紙方向記憶部255が記憶している指定用紙方向情報(領域マーカに埋め込まれている情報から得られた、用紙方向指定処理において指定された用紙方向の順序)と読取用紙方向記憶部257が記憶している読取方向情報(原稿を複数回実際に読み取った際の用紙方向の順序)とを比較し(ステップS218)、一致するか否かを判断する。この結果、指定用紙方向情報と読取方向情報とが一致している場合は(ステップS218でYES)、制御部200は暗号化原稿6の復号化処理を行なう(ステップS220)。
【0138】
復号化処理の手順は具体的には以下の通りである。制御部200は先に領域マーカ11,12,13から得られて一時記憶部242のワーキングエリア259に記憶されている復号鍵を使用して、画像データ記憶部251に記憶されているページ単位の画像データ中の暗号化領域14(15)の暗号化された画像データを復号化処理して元の画像データに復元し、復元した画像データを元の暗号化領域14(15)の部分に貼り付ける。この際、同一の暗号化原稿6に複数の暗号化領域が存在し、それぞれの暗号化領域に対応して異なる復号鍵が必要な場合には、それぞれの暗号化領域内の領域マーカ11,12,13からそれぞれに必要な復号鍵が得られる。従ってそのような場合には、制御部200は必要に応じた復号鍵を使用してそれぞれの暗号化領域の画像データを復号化処理する。
【0139】
「終了」ボタン110が押されたにも拘わらずステップS217での読取回数の比較結果が一致しなかった場合は(ステップS217でNO)、暗号化原稿6を作成したユーザ以外の不正なユーザが暗号化原稿6を復号化処理しようとしていると判断される。従ってこのような場合には、制御部200はエラー発生として、復号化処理画面24に図18(g) の模式図に示すようなエラーメッセージ32を表示する(ステップS219)。制御部200はエラーメッセージ32を表示した後、図18(g) に示されている「確認」ボタン112が押されたことを確認した上で、復号化処理を行なわずにこの復号化処理を終了する。
【0140】
一方、用紙方向の順序が一致しない場合には(ステップS218でNO)、制御部200はやはりエラー発生として、復号化処理画面24に図18(g) の模式図に示すようなエラーメッセージ32を表示する(ステップS219)。制御部200はエラーメッセージ32を表示した後、図18(g) に示されている「確認」ボタン112が押されたことを確認した上で、復号化処理を行なわずにこの復号化処理を終了する。
【0141】
読取回数が一致し、用紙方向の順序も一致したとしても(ステップS217及びS218で共にYES)、暗号化領域14(15)が汚損していたり、改竄されていたりして正しく復号化処理できない場合もあり得る(ステップS221でNO)。このような場合には制御部200はやはりエラー発生として、復号化処理画面24に図18(g) の模式図に示すようなエラーメッセージ32を表示する(ステップS219)。制御部200はエラーメッセージ32を表示した後、図18(g) に示されている「確認」ボタン112が押されたことを確認した上で、復号化処理を行なわずにこの復号化処理を終了する。
【0142】
暗号化領域14(15)が正しく復号化処理できた場合には(ステップS221でYES)、復号化後の非暗号化画像データ8を非暗号化原稿5としてを印刷するのか、または非暗号化画像データ8のままで別の端末装置へ転送するのかをユーザに選択させるための「印刷」ボタン113及び「転送」ボタン114、更には「取消」ボタン105を制御部200が復号化処理画面24に図17(e) に示す模式図のように表示する(ステップS222)。
【0143】
以上により復号化処理そのものは終了するが、「印刷」ボタン113が押された場合には、制御部200は復号化された非暗号化画像データ8を印刷部222に与えることにより、適宜の用紙に印刷物(非暗号化原稿5)として印刷させる。また、「転送」ボタン114が押された場合には、制御部200は非暗号化画像データ8を一般的な電子ファイル形式であるpdf 形式、tiff形式等のファイルとして、ユーザが別途指定した端末装置へ転送する。
【0144】
なお、図17(e) に示す画面において「取消」ボタン105が押された場合は、制御部200はエラーとして、図18(g) に示すようなエラーメッセージ32を表示し、「確認」ボタン112が押されるのを確認した上で復号化処理を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明に係る画像形成装置の構成例の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の構成例の一実施の形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置を利用した場合の画像データ及び印刷物の流れを表した模式図である。
【図4】本発明の画像形成装置による画像処理の概略を説明するための模式図である。
【図5】本発明の画像形成装置が非暗号化原稿の指定領域を暗号化した暗号化原稿を作成するためのメインルーチン(暗号化処理のメインルーチン)の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の画像形成装置による暗号化領域指定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の画像形成装置による暗号化領域指定処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の画像形成装置による暗号化領域指定処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の画像形成装置の暗号化領域指定画面の表示状態の遷移を示す模式図である。
【図10】本発明の画像形成装置の暗号化指定領域の枠の表示部の画面上での表示のための座標系を示す模式図である。
【図11】本発明の画像形成装置による読取回数指定処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明の画像形成装置の読取回数指定画面の模式図である。
【図13】本発明の画像形成装置による用紙方向指定処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の画像形成装置の用紙方向指定画面の表示状態の遷移を示す模式図である。
【図15】本発明の画像形成装置が方向順序表示画面に表示する各指標マークを示す模式図である。
【図16】本発明の画像形成装置が暗号化原稿を読取部の原稿台に載置する際の用紙方向の定義を説明するための模式図である。
【図17】本発明の画像形成装置が暗号化原稿の復号化処理を行なう際の復号化処理画面表示状態の遷移を示す模式図である。
【図18】本発明の画像形成装置が暗号化原稿の復号化処理を行なう際の復号化処理画面表示状態の遷移を示す模式図である。
【図19】本発明の画像形成装置による正しい復号化処理の暗号化原稿の読取手順の一例を示す模式図である。
【図20】本発明の画像形成装置による暗号化原稿の復号化処理のための処理手順を示すフローチャートである。
【図21】本発明の画像形成装置による暗号化原稿の復号化処理のための処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0146】
1 外部の端末装置
2 複合機
3 PC(パーソナルコンピュータ)
4 外部のプリンタ
5 非暗号化原稿
6 暗号化原稿
7 暗号化画像データ
8 非暗号化画像データ
14 暗号化指定領域
15 暗号化指定領域
16 暗号化領域
17 暗号化領域
200,300 制御部
201,301 暗号化処理部
202 マーカ認識部
203 復号化処理部
204,304 画像処理部
212 読取部
221,321 表示部
222 印刷部
251,351 画像データ記憶部
255,355 指定用紙方向記憶部
256,356 指定読取回数記憶部
257 読取用紙方向記憶部
258,358 カウント値記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取ってページ単位の画像データを生成する読取手段と、画像データをページ単位で用紙に画像形成する画像形成手段とを備えた画像形成装置において、
前記画像形成手段が画像形成すべきページ単位の画像データの内の任意の位置に任意の大きさの領域の指定を受け付ける領域指定受付手段と、
該領域指定受付手段が指定を受け付けた任意の領域の画像データを所定の暗号鍵により暗号化する暗号化処理手段と、
該暗号化処理手段により暗号化された領域を含むページ単位の暗号化画像データに、前記読取手段による読取回数と各読取時の読取方向とを組み合わせた読取条件を指定する読取条件指定手段と、
前記画像形成手段がページ単位の暗号化画像データを用紙に画像形成した原稿を、前記読取条件指定手段により指定された読取条件に従って前記読取手段が読み取ったか否かを判断する判断手段と、
前記読取条件指定手段により指定された読取条件に従って原稿が前記読取手段により読み取られたと前記判断手段が判断した場合に、前記読取手段が生成したページ単位の画像データに含まれる暗号化された領域の画像データを前記所定の暗号鍵に対応する復号鍵により復元する復号化処理手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
表示手段を更に備え、
ページ単位の暗号化画像データ及び/又は暗号化された領域の画像データが前記復号化処理手段により復元されたページ単位の画像データを画像として前記表示手段に表示させるようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
ページ単位の暗号化画像データを通信回線を介して外部の画像形成装置へ転送することにより、前記外部の画像形成装置に画像形成させるようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
ページ単位の暗号化画像データ及び/又は暗号化された領域の画像データが前記復号化処理手段により復元されたページ単位の画像データを通信回線を介して外部の表示装置へ転送することにより、前記外部の表示装置に画像として表示させるようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
外部の画像形成装置に用紙に画像形成させることが可能なページ単位の画像データを生成する画像データ生成手段を備えた画像形成装置において、
前記画像データ生成手段が生成したページ単位の画像データの内の任意の位置に任意の大きさの領域の指定を受け付ける領域指定受付手段と、
該領域指定受付手段が指定を受け付けた任意の領域の画像データを所定の暗号鍵により暗号化する暗号化処理手段と、
該暗号化処理手段により暗号化された領域を含むページ単位の暗号化画像データを外部の画像形成装置により用紙に画像形成された原稿を外部の読取装置が読み取った場合に、前記暗号化された領域の画像データを前記所定の暗号鍵に対応する復号鍵により復元するための条件として、外部の読取装置による読取回数と各読取時の読取方向とを組み合わせた読取条件を指定する読取条件指定手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
表示手段を更に備え、
ページ単位の暗号化画像データを画像として前記表示手段に表示させるようにしてあること
を特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
ページ単位の暗号化画像データを通信回線を介して外部の表示装置へ転送することにより、前記外部の表示装置に画像として表示させるようにしてあることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記暗号化処理手段は、前記領域指定受付手段が指定を受け付けた領域の画像データを前記所定の暗号鍵で暗号化する際に、前記読取条件指定手段により指定された読取条件を暗号化画像データに含ませるようにしてあることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記暗号化処理手段は、前記領域指定受付手段が指定を受け付けた領域の画像データを前記所定の暗号鍵で暗号化する際に、前記復号鍵を暗号化画像データに含ませるようにしてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記領域指定受付手段は矩形の領域の指定を受け付け、
前記暗号化処理手段は、前記領域指定受付手段が指定を受け付けた領域の画像データを暗号化する際に、指定を受け付けた矩形の領域の四隅部の内の少なくとも一隅部に上下左右を判定するためのマーカを付加するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2007−194962(P2007−194962A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11708(P2006−11708)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】