説明

画像形成装置

【課題】帯電バイアスを可変制御する画像形成装置において、装置のコストアップを招くことなく、被帯電体の磨耗度合いに応じて適切な対応をとる。
【解決手段】画像形成装置10は、表面に静電潜像が形成される回転可能な感光体1と、帯電バイアスの印加を受けて感光体1表面を帯電させる帯電装置2とを備える。制御装置7は、感光体1の回転数と、そのときの帯電バイアスに応じた係数との積の積算値を算出し、算出された積算値に基づいて帯電バイアス等の画像形成条件を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に静電潜像が形成される感光体等の被帯電体と、帯電バイアスの印加を受けて被帯電体の表面を帯電させる帯電装置とを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像形成装置では、使用に伴って被帯電体である感光体の表面が磨耗し、これによって感光体の特性(帯電特性や感光感度等)が変化していく。このため、従来より、感光体の膜厚または膜減り量を推定し、推定結果に応じて画像形成条件(露光量や現像バイアス等)を制御する技術が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、感光体の回転量の積算値に応じて画像形成パラメータを変更するものが開示されている。また、特許文献2には、帯電時に感光体に流れ込む電流を検出し、検出結果に基づいて画像形成条件を設定するものが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−202572号公報
【特許文献2】特開平4−57068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、感光体表面を良好に帯電するための必要最小限の帯電バイアスは、感光体の膜厚や環境温湿度によって異なる。また、帯電バイアスが大きいほど、感光体の磨耗度合いが大きくなる。したがって、感光体の磨耗を少なくして長寿命化を図るためには、帯電バイアスを一定とするのではなく、膜厚や環境温湿度に応じて帯電バイアスを適切に変化させることが好ましい。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、上記帯電バイアスを可変制御する構成に対応することができない。これは、帯電バイアスを可変制御する構成では、単位回転数当たりの膜減り量が一定でなくなり、感光体回転量の積算値が膜減り量を示さなくなるからである。一方、上記特許文献2に記載の技術は、感光体に流れ込む電流を検出するデバイスが必要とされ、コストアップしてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、装置のコストアップを招くことなく、被帯電体の磨耗度合いに応じた適切な対応をとることが可能な画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、表面に静電潜像が形成される回転可能な被帯電体と、帯電バイアスの印加を受けて前記被帯電体の表面を帯電させる帯電装置とを備え、前記帯電バイアスが可変制御される画像形成装置であって、前記被帯電体の回転数と、そのときの帯電バイアスに応じた係数との積の積算値を算出する算出手段と、当該算出手段により算出された積算値に基づいて、画像形成条件を制御する画像形成条件制御手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の好適な態様では、前記画像形成条件制御手段は、前記積算値に応じて前記帯電バイアスを変化させる。
【0010】
また、本発明に係る画像形成装置は、表面に静電潜像が形成される回転可能な被帯電体と、帯電バイアスの印加を受けて前記被帯電体の表面を帯電させる帯電装置とを備え、前記帯電バイアスが可変制御される画像形成装置であって、前記被帯電体の回転数と、そのときの帯電バイアスに応じた係数との積の積算値を算出する算出手段と、当該算出手段により算出された積算値に基づいて、前記被帯電体の寿命に関する情報を報知する報知手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置のコストアップを招くことなく、被帯電体の磨耗度合いに応じた適切な対応をとることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置10の概略構成図である。この画像形成装置10は、電子写真方式を利用して紙等の転写材に画像を印刷するものであり、例えば、デジタル複写機、アナログ複写機、プリンタ、ファクシミリなどである。
【0014】
[画像形成装置全体について]
まず、画像形成装置10の全体的な構成および動作について説明する。なお、電子写真プロセスについては広く知られているので、ここでは簡単に説明することとする。
【0015】
図1において、画像形成装置10は、表面に静電潜像が形成される回転可能な被帯電体として、矢印R方向に回転する感光体1を備えている。ここでは、感光体1は、アルミニウム等の導電性の基体上に電荷発生層(CGL)や電荷輸送層(CTL)等の光導電層が積層された積層型有機感光体ドラムである。ただし、感光体1は、感光体ベルト等、他のタイプのものであっても構わない。
【0016】
感光体1の周囲には、その回転方向(矢印R方向)に沿って、感光体1表面を所定の電位に一様に帯電させる帯電装置2、帯電された感光体1表面に画像に応じた光を照射して静電潜像を形成する露光装置3、トナーにより静電潜像を現像する現像装置4、現像されたトナー像を記録紙(転写材)P上に転写する転写装置(ここでは転写ロール)5、および転写後の感光体1表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置(ここではクリーニングブレードを備えるクリーナ)6が順に配置されている。
【0017】
また、画像形成装置10は、装置全体を制御する制御装置7を備えている。この制御装置7は、感光体1を回転駆動する不図示のモータ、帯電装置2に印加される帯電バイアス、露光装置3による露光量、現像装置4に印加される現像バイアス、転写装置5に印加される転写バイアスなどを制御する。制御装置7は、ここでは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等が搭載された回路基板であり、その機能は、ROM等の記録媒体に格納されたプログラムがCPUにより実行されることによって実現される。
【0018】
上記構成を有する画像形成装置10は、次のように動作する。すなわち、感光体1は、不図示のモータにより矢印R方向に回転駆動される。帯電位置において、帯電装置2は、感光体1表面を例えば−600V〜−800V程度の所定電位に一様に帯電させる。このように一様に帯電された感光体1表面は、感光体1の回転により露光位置に搬送される。
【0019】
露光位置において、露光装置3は、一様に帯電された感光体1表面に対し、形成されるべき画像パターンに応じた光(例えば画像データに基づくレーザ光線)を照射し、画像パターンに応じて感光体1表面を除電して静電潜像を形成する。このように形成された静電潜像は、感光体1の回転により現像位置に搬送される。
【0020】
現像位置において、現像装置4は、静電潜像をトナーにより現像する。具体的には、反転現像にあっては潜像電荷と同極性のトナーを感光体1表面の除電された部分に静電的に付着させ、正規現像にあっては潜像電荷と逆極性のトナーを感光体1表面の除電されていない部分に静電的に付着させ、これにより画像パターンに応じたトナー像を形成する。このように形成されたトナー像は、感光体1の回転により転写位置に搬送される。
【0021】
転写位置において、転写装置5は、感光体1表面に形成されたトナー像を、感光体1の回転に合わせて転写位置に搬送されてくる記録紙P上に転写する。具体的には、転写装置5にはトナーと逆極性の転写バイアスが印加され、感光体1から転写装置5に向かう静電気力によって感光体1表面のトナーが記録紙P上に転移する。転写後の感光体1表面は、感光体1の回転によりクリーニング位置に搬送され、感光体1表面上の残留トナーが除去される。一方、トナー像が転写された記録紙Pは不図示の定着装置へ搬送され、定着装置によって記録紙P上にトナー像が定着させられる。
【0022】
[帯電装置について]
上記の帯電装置2は、帯電バイアスの印加を受けて感光体1の表面を所定の電位に一様に帯電させるものである。この帯電装置2は、低電圧化やオゾン低減等の観点より、感光体1の表面に接触して帯電を行う接触式帯電装置であることが好ましい。接触式帯電装置としては、ロール状、ブラシ状、ブレード状、ベルト状等、様々なタイプのものが利用可能であるが、ここではロール状の帯電ロールである。帯電装置(以下、帯電ロールと称す)2には、電源装置8が電気的に接続されており、電源装置8から帯電ロール2に対して所定の帯電バイアスが印加される。
【0023】
帯電ロールを用いた帯電方式には、直流(DC)電圧に交流(AC)電圧を重畳した帯電バイアスを印加するAC帯電方式と、DC電圧のみを印加するDC帯電方式とがあり、いずれの帯電方式も採用可能であるが、ここではAC帯電方式を用いるものとする。なお、このAC帯電方式は、DC帯電方式と比較して、帯電均一性に優れ高画質が得られるメリットがある一方、感光体1の表層の膜減り(削れ)の度合いが大きいというデメリットがある。
【0024】
帯電ロール2に印加される帯電バイアス、例えばACピーク間電圧値VppやDC電圧値Vdcは、後述するように、感光体1の膜厚、環境温度・湿度、ユーザ設定、またはプロセススピード(感光体1の回転速度)などに応じて可変制御される。
【0025】
[制御装置について]
先述したとおり、感光体1の特性(帯電特性や感光感度)は、その膜厚によって変化する。そこで、制御装置7は、感光体1の膜減り量(削れ量)を推定し、推定結果に基づいて画像形成条件を制御する機能を有する。以下、この機能に係る制御装置7の構成および動作について具体的に説明する。
【0026】
図1に示されるように、制御装置7は、その機能ブロックとして、膜減り量算出部7a、膜減り量保持部7b、および画像形成条件制御部7cを有する。
【0027】
膜減り量算出部7aは、感光体1の回転数と、そのときの帯電バイアスに応じた係数との積の積算値を算出するものであり、実質的に言えば、感光体1の膜減り量を推定するものである。
【0028】
この膜減り量算出部7aによる膜減り量の推定の考え方は、次のとおりである。感光体1は、その回転に伴いクリーニング装置6等との摺擦によって表層が削れていく。このときの膜減りの度合いは帯電バイアス(特にACピーク間電圧Vpp)が大きいほど大きく、単位回転数当たりの膜減り量は、帯電バイアスbの関数α(b)として表すことができる。したがって、感光体1が回転数Δnだけ回転したときの膜減り量は、回転数Δnと、その回転時の帯電バイアスbに対応する単位回転数当たりの膜減り量α(b)との積Δn・α(b)で表すことができ、この積Δn・α(b)を感光体1の使用開始から現時点まで積算していけば、感光体1の初期膜厚からの膜減り量を求めることができる。そこで、膜減り量算出部7aは、推定膜減り量として、感光体1の回転数と、そのときの帯電バイアスに応じた係数との積の積算値を算出する。
【0029】
ここで、上記帯電バイアスに応じた係数は、帯電バイアス(具体的には、ACピーク間電圧値Vpp、DC電圧値Vdc、またはこれらの組み合わせ等)に応じた膜減りの度合いを示す係数であり、例えば実験により得られる単位回転数当たりの膜減り量(μm/1回転)である。なお、当該係数として、帯電バイアス値そのものを用いることも可能である。
【0030】
また、上記積算値を算出することには、実質的に上記積算値を示す値を算出することが含まれる。例えば、感光体1の回転時間(または走行距離)と上記係数との積の積算値を算出することが含まれる。
【0031】
また、膜減り量算出部7aは、実質的に上記積算値を示す値を結果として算出することができればよく、その具体的な計算方法は特に限定されない。例えば、膜減り量算出部7aは、下記式(1)、(2)のように、積算値yとして、上記係数を感光体1の回転数や回転時間で積分した積分値を求めることができる。
【0032】
【数1】

【0033】
【数2】

【0034】
上記式(1)において、nは感光体1の使用開始からの回転数であり、b(n)は回転数nの時点における帯電バイアスであり、α{b(n)}は回転数nの時点における帯電バイアスに応じた係数であり、nは現時点(膜減り量推定時点)の回転数である。また、上記式(2)において、tは感光体1の使用開始からの回転時間であり、b(t)は回転時間tの時点における帯電バイアスであり、α{b(t)}は回転時間tの時点における帯電バイアスに応じた係数であり、tは現時点(膜減り量推定時点)の回転時間である。
【0035】
また例えば、膜減り量算出部7aは、下記式(3)のように、帯電バイアス毎の係数と回転数との積を合計して、積算値yを求めてもよい。
【0036】
【数3】

【0037】
上記式(3)において、i(0〜k)は各帯電バイアスを区別するための添え字であり、bはi番目の帯電バイアスであり、α(b)は帯電バイアスbに応じた係数であり、Nは帯電バイアスbが印加された状態での累積回転数である。
【0038】
本実施の形態では、膜減り量算出部7aは、上記式(3)を用いて推定膜減り量y(μm)を算出するものとする。ここでは、上記式(3)においてk=25であり、帯電バイアスbは[Vdc=0V,Vpp=0V]、b(i=1〜25)は[Vdc=−700V,Vpp=(1350+10×i)V]である。係数α(b)は、予め実験により求められた単位回転数当たりの膜減り量(μm/1回転)であり、予め設定された定数である。累積回転数Nは、膜減り量算出部7aによって計数され、所定の回転数保持領域に格納され、感光体1が新品に交換されると0にクリアされる。
【0039】
膜減り量保持部7bは、膜減り量算出部7aにより算出された積算値を保持する不揮発性の記憶領域であり、例えばNVRAM(Non Volatile RAM)等により実現される。本実施の形態では、膜減り量保持部7bは、上記積算値として膜減り量算出部7aにより算出された推定膜減り量y(μm)を保持する。
【0040】
画像形成条件制御部7cは、膜減り量保持部7bに保持されている積算値に基づいて画像形成条件を制御するものであり、実質的に言えば、膜減り量算出部7aにより算出された推定膜減り量に基づいて画像形成条件を制御するものである。本実施の形態では、画像形成条件制御部7cは、推定膜減り量yに応じて帯電バイアスを変化させる。具体的には、感光体1の膜厚が薄くなるほど放電開始電圧が低くなるので、推定膜減り量の増加に伴ってACピーク間電圧Vppが小さくなるように、帯電ロール2に印加されるACピーク間電圧値Vppを段階的に変化させる。より具体的には、画像形成条件制御部7cは、図2に示される推定膜減り量と帯電バイアスとの対応テーブルを予め保持しており、この対応テーブルに従って帯電バイアスを段階的に切り替える。
【0041】
なお、本実施の形態では、積算値に基づいて帯電バイアスを制御することとしたが、露光装置3の露光量や現像バイアス等、他の画像形成条件を積算値に基づいて制御することとしてもよい。例えば、感光体1の膜厚が薄くなるほど感光体1の感光感度が低下するので、積算値の増加に伴って露光量が大きくなるように、露光装置3による露光量を変化させるとよい。
【0042】
図3は、制御装置7の動作を説明するためのタイミングチャートである。以下、図3を用いて、上記構成を有する制御装置7の動作の一例を具体的に説明する。なお、ここでは、膜減り量保持部7bには、現時点において推定膜減り量y=7.00μmが保持されているものとする。
【0043】
図3の時刻t0において、制御装置7は、不図示のユーザインタフェースを介してユーザからコピー開始の指示を受け付けると、不図示のモータをオンして感光体1の回転駆動を開始させる。このとき、帯電バイアスはbすなわちオフとなっている。
【0044】
ついで、時刻t0からt1までの非画像形成期間において、画像形成条件制御部7cは、膜減り量保持部7bから推定膜減り量yを読み出し、予め設定された対応テーブルを参照して、推定膜減り量y=7.00μmに対応する帯電バイアスb13(Vdc=−700V,Vpp=1480V)を特定する。そして、画像形成条件制御部7cは、特定された帯電バイアスb13に対して、環境温湿度、ユーザ設定、プロセススピード等の補正要因に基づく補正を行い、最終的な帯電バイアスを決定する。本実施の形態では、画像形成条件制御部7cは、不図示の湿度センサの出力に基づき、予め設定されたテーブルまたは計算式に従って、湿度が基準より高い場合には、基準との差分に応じて帯電バイアスをb13→b12→・・・と下げていき、湿度が基準より低い場合には、基準との差分に応じて帯電バイアスをb13→b14→・・・と上げていく。ここでは、湿度は基準より低く、帯電バイアスはb13からb15に変更されたものとする。
【0045】
ついで、時刻t1において、画像形成条件制御部7cは、上記決定された帯電バイアスb15の印加を電源装置8に指示する。これにより、帯電ロール2には電源装置8から帯電バイアスb15(Vdc=−700V,Vpp=1500V)が印加され、感光体1表面は約−700Vに一様に帯電される。この後、時刻t2までの期間において画像形成が行われる。
【0046】
そして、時刻t2において、画像形成条件制御部7cは、帯電バイアスをbすなわちオフにする。
【0047】
時刻t2からt3までの非画像形成期間において、膜減り量算出部7aは、回転数保持領域に格納されている帯電バイアス毎の累積回転数N(i=0〜25)の更新処理を行う。具体的には、膜減り量算出部7aは、回転数保持領域から帯電バイアスbの累積回転数Nを読み出し、読み出された累積回転数Nに、回転時間{(t1−t0)+(t3−t2)}に対応する感光体1の回転数を加算して新たな累積回転数Nを求め、これを回転数保持領域に書き込む。また、回転数保持領域から帯電バイアスb15の累積回転数N15を読み出し、読み出された累積回転数N15に、回転時間(t2−t1)に対応する感光体1の回転数を加算して新たな累積回転数N15を求め、これを回転数保持領域に書き込む。なお、回転時間に対応する回転数は、プロセススピードおよび感光体1の周長に基づいて求められる。そして、膜減り量算出部7aは、更新後の累積回転数Nを上記式(3)に代入して推定膜減り量yを算出し、これを新たな推定膜減り量として膜減り量保持部7bに書き込む。この新たな推定膜減り量yは、次の印刷ジョブにおいて画像形成条件制御部7cに利用されることとなる。
【0048】
以上、1回の印刷ジョブにおける制御装置7の動作について説明したが、このように制御装置7が動作することにより、感光体1の使用開始から寿命到達までの長い期間でみると、感光体1の使用に伴ってACピーク間電圧値Vppは図4,5に示されるように遷移する。図4は、膜減り量の増加に伴うACピーク間電圧値Vppの変化の様子を示し、図5は、感光体1の回転数の増加に伴うACピーク間電圧値Vppの変化の様子を示している。なお、図4,5には、環境等に基づく補正前のACピーク間電圧値Vppが示されている。
【0049】
以上のとおり、本実施の形態では、表面に静電潜像が形成される回転可能な被帯電体と、帯電バイアスの印加を受けて被帯電体の表面を帯電させる帯電装置とを備える画像形成装置において、被帯電体の回転数と、そのときの帯電バイアスに応じた係数との積の積算値を算出し、算出された積算値に基づいて画像形成条件を制御する。このため、本実施の形態によれば、所定条件(被帯電体の摩耗度合い、環境温湿度、ユーザ設定等)に基づいて帯電バイアスが可変制御される場合であっても、電流検出器等の特別のデバイスを用いることなく、被帯電体の摩耗度合いに応じて適切な画像形成条件を設定することができる。すなわち、装置のコストアップを招くことなく、被帯電体の摩耗度合いに応じた適切な対応をとることができる。具体的に言えば、感光体1の膜減り量を、特別なデバイスの追加なしに良好に推定することができ、感光体1の膜厚に応じた適切な画像形成パラメータを設定することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、積算値に応じて帯電バイアスを変化させるので、被帯電体の摩耗度合いに応じて帯電バイアスを適切な大きさに制御することができる。このため、帯電バイアスを一定とする場合と比較して、被帯電体の摩耗を低減させることができ、被帯電体の長寿命化を図ることができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更することができる。例えば、上記実施の形態では、制御装置7は、積算値に基づいて画像形成条件を制御するが、積算値に基づいて被帯電体の寿命に関する情報を報知してもよい。この構成における一態様では、制御装置7は、膜減り量算出部7aにより算出された推定膜減り量が所定のライフエンド膜減り閾値を超えたとき、感光体1の寿命が尽きた旨を画面表示等によりユーザに報知する。また別の態様では、制御装置7は、推定膜減り量に基づいて残存寿命(残りの印刷可能枚数等)を推定し、この残存寿命を画面表示等によりユーザに報知する。さらに別の態様では、制御装置7は、推定膜減り量を通信回線を介してメーカ等のサービスセンターに報知する。
【0052】
また、上記実施の形態では、帯電バイアスのAC成分を定電圧制御することとしたが、定電流制御することも可能である。この場合、膜減り量算出部7aは、感光体1の回転数と、そのときのAC電流値に応じた係数との積の積算値を算出すればよい。また、画像形成条件制御部7cは、積算値に基づいてAC電流値を変化させればよい。また、DC帯電方式とすることもでき、この場合、膜減り量算出部7aは、感光体1の回転数と、そのときのDC電圧値に応じた係数との積の積算値を算出すればよい。また、画像形成条件制御部7cは、積算値に基づいてDC電圧値を変化させればよい。また、AC帯電方式において、積算値の増加に応じてACピーク間電圧を低下させるとともに、帯電DC電圧および現像DC電圧を低下させてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、推定膜減り量に基づいて帯電バイアス等の画像形成条件を制御することとしたが、初期膜厚値と推定膜減り量とから推定膜厚を求め、この推定膜厚に基づいて画像形成条件を制御してもよい。
【0054】
また、感光体1を含むプロセスユニットが装置本体に着脱可能に装着される構成においては、膜減り量保持部7bは当該プロセスユニットに設けられることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】推定膜減り量と帯電バイアスとの対応テーブルを示す図である。
【図3】制御装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】膜減り量の増加に伴うACピーク間電圧値Vppの変化の様子を示す図である。
【図5】感光体の回転数の増加に伴うACピーク間電圧値Vppの変化の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 感光体、2 帯電装置(帯電ロール)、3 露光装置、4 現像装置、5 転写装置、6 クリーニング装置、7 制御装置、7a 膜減り量算出部、7b 膜減り量保持部、7c 画像形成条件制御部、8 電源装置、10 画像形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に静電潜像が形成される回転可能な被帯電体と、帯電バイアスの印加を受けて前記被帯電体の表面を帯電させる帯電装置とを備え、前記帯電バイアスが可変制御される画像形成装置であって、
前記被帯電体の回転数と、そのときの帯電バイアスに応じた係数との積の積算値を算出する算出手段と、
当該算出手段により算出された積算値に基づいて、画像形成条件を制御する画像形成条件制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記画像形成条件制御手段は、前記積算値に応じて前記帯電バイアスを変化させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
表面に静電潜像が形成される回転可能な被帯電体と、帯電バイアスの印加を受けて前記被帯電体の表面を帯電させる帯電装置とを備え、前記帯電バイアスが可変制御される画像形成装置であって、
前記被帯電体の回転数と、そのときの帯電バイアスに応じた係数との積の積算値を算出する算出手段と、
当該算出手段により算出された積算値に基づいて、前記被帯電体の寿命に関する情報を報知する報知手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−47630(P2007−47630A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233989(P2005−233989)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】