説明

画像形成装置

【課題】光により媒体に画像の形成および消去を行う画像形成装置が備える遮光部を小型化する手段を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は媒体9を載置可能な筐体11と、媒体9を挟み筐体11に対向する位置に設けられた光照射バー12を備えている。光照射バー12は開閉可能な遮光板123を有しており、長手方向を横切る方向に定速で搬送されながら媒体9に対し画像を示す光を照射する間には遮光板123が開かれて媒体9の広範囲を遮光する。光照射バー12および遮光板123により遮光されている領域には画像形成電圧が印加され、光の照射された位置の液晶層の配向状態が変更される結果、媒体9に画像の形成が行われる。画像の形成が完了すると、光照射バー12の遮光板123は閉じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧を印加した媒体に画像を示す光を照射することにより、媒体上に画像の形成を行い、また媒体上に形成された画像を消去する技術がある。そのような光による画像形成技術を開示する文献として、例えば特許文献1がある。
【特許文献1】国際公開第2004/068230号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、光により媒体に画像の形成および消去を行う画像形成装置が備える遮光部を小型化する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した目的を達成するために、本発明は、第1の態様として、液晶層と、光の照射により抵抗値が変化する特性を有する光電導体層と、前記液晶層および前記光電導体層を挟み対向する位置に配置された一対の電極層とを有し、画像を示す光の照射を受け当該光が示す画像を形成可能な媒体であって、前記一対の電極層の少なくとも一方は複数のストライプ状のサブ電極層に分割されている媒体を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層の長手方向に沿ったライン状に、前記媒体に対し画像を示す光を照射する照射部と、前記照射部が照射するライン状の光の長手方向を横切る一の方向に、前記保持部に保持された前記媒体の表面に沿って前記照射部を搬送する搬送部と、前記照射部により照射される光が前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの一のサブ電極層に接する光電導体層を照射している間、当該一のサブ電極層と当該一のサブ電極層に対向する位置に配置された電極層との間に電圧を印加する給電部と、前記照射部により照射される光が前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの一のサブ電極層に接する光電導体層を照射している間、当該一のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る遮光部とを備え、前記遮光部は、前記一の方向における長さを変更する機構を備える画像形成装置を提供する。
【0005】
また、本発明は、第2の態様として、液晶層と、光の照射により抵抗値が変化する特性を有する光電導体層と、前記液晶層および前記光電導体層を挟み対向する位置に配置された一対の電極層とを有し、画像を示す光の照射を受け当該光が示す画像を形成可能な媒体であって、前記一対の電極層の少なくとも一方は複数のストライプ状のサブ電極層に分割されている媒体を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層の長手方向に沿ったライン状に、前記媒体に対し画像を示す光を照射する照射部と、前記照射部が照射するライン状の光の長手方向を横切る一の方向に、前記保持部に保持された前記媒体の表面に沿って前記照射部を搬送する第1の搬送部と、前記照射部により照射される光が前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの一のサブ電極層に接する光電導体層を照射している間、当該一のサブ電極層と当該一のサブ電極層に対向する位置に配置された電極層との間に電圧を印加する給電部と、前記照射部により照射される光が前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの一のサブ電極層に接する光電導体層を照射している間、当該一のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る遮光部と、前記一の方向に、前記第1の搬送部による前記照射部の搬送の速度と異なる速度で、前記遮光部を搬送する第2の搬送部とを備える画像形成装置を提供する。
【0006】
また、本発明は、第3の態様として、上記第2の態様の画像形成装置であって、前記第2の搬送部は、前記照射部が前記第1の搬送部により前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの第1のサブ電極層に沿って搬送されている間中、前記第1のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る位置に前記遮光部を停止させた後、前記照射部が前記第1の搬送部により前記第1のサブ電極層よりも前記一の方向の前方に位置する第2のサブ電極層に沿って搬送されている間に前記第2のサブ電極層よりも前記一の方向の前方に位置する第3のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る位置に前記遮光部を移動させる画像形成装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、第4の態様として、上記第2の態様の画像形成装置であって、前記遮光部は第1の部位と第2の部位を有し、前記第2の搬送部は、前記照射部が前記第1の搬送部により前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの第1のサブ電極層に沿って搬送されている間、前記第1のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る位置に前記遮光部の前記第1の部位を停止させると同時に、前記第1のサブ電極層よりも前記一の方向の前方に位置する第2のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る位置に前記遮光部の前記第2の部位を移動させる画像形成装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、第5の態様として、上記第1乃至4のいずれかの態様の画像形成装置であって、前記遮光部は、前記保持部に保持された前記媒体の表面に接触する端部を備える画像形成装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、第6の態様として、上記第5の態様の画像形成装置であって、前記端部はローラまたはブラシである画像形成装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、第7の態様として、上記第5の態様の画像形成装置であって、前記端部は接触した物体を付着する特性を備える画像形成装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、第8の態様として、上記第5の態様の画像形成装置であって、前記端部は接触した物体に帯電した静電気を除去する特性を備える画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の態様によれば、媒体を外部の光から広範囲に遮光する必要がない時に遮光部を小型化できる。
【0013】
上記第2の態様によれば、照射部と遮光部が独立して搬送されるため、遮光を要する媒体の領域のみを遮光するように遮光部を小型化できる。
【0014】
上記第3の態様によれば、隣接する2枚のサブ電極層の領域を同時に遮光する必要がないため、遮光部を小型化できる。
【0015】
上記第4の態様によれば、隣接する2枚のサブ電極層の領域を照射部がまたいで移動する前後の期間を除き隣接する2枚のサブ電極層の領域を同時に遮光する必要がないため、遮光部を小型化できる。
【0016】
上記第5の態様によれば、媒体の横方向または斜め方向からの光から媒体を遮光することができる。
【0017】
上記第6の態様によれば、遮光部が媒体に沿って搬送される際に媒体の表面を傷つける危険性が低減される。
【0018】
上記第7の態様によれば、画像の形成に伴い、媒体の表面に付着しているほこり、ゴミが除去される。
【0019】
上記第8の態様によれば、画像の形成に伴い、媒体に帯電している静電気が除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(1)第1実施形態
以下に、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる画像形成装置1の外観図である。ただし、図1において、画像形成装置1には画像の形成が行われる面形状の媒体9が複数、束の状態で載置され、これにより画像形成装置1に媒体9が保持されている。なお、以下の説明において単に「筐体11に載置された媒体9」という場合、筐体11に載置された複数の媒体9のうちの最上位置の媒体9を意味するものとする。
【0021】
画像形成装置1は、筐体11と光照射バー12とを備えている。筐体11は、媒体9を複数、束の状態で載置可能なくぼみ領域(保持部)を備えており、媒体9は画像形成置1に保持されている。さらに、筐体11が備えるくぼみ領域の底面は載置された媒体9を押し上げるように、例えばバネにより常に上方に加圧する構造となっている。
【0022】
光照射バー12は、筐体11に媒体9が載置された状態において、媒体9を挟んで筐体11と対向する位置に配置されている。図2は光照射バー12を主方向に見た図である。
【0023】
光照射バー12は、筐体11に載置された媒体9に対向する面(底面)に、ライン状に並んだ複数のLED(Light Emitting Diode)とLEDから照射される光を集光しつつ媒体9に向けて透過させるレンズを有するLEDアレイ121を備えている。なお、光照射バー12はLEDアレイ121に代えてライン状に並んだ半導体レーザやレーザROS(Raster Output Scanner)等を有していてもよい。以下の説明において、光照射バー12の長手方向、すなわち図1の両矢印Aの方向を「主方向」と呼び、主方向を横切る方向、すなわち図1の両矢印Bの方向を「副方向」と呼ぶ。
【0024】
光照射バー12の底部の副方向の両側端部には、筐体11に載置され下方から加圧される媒体9を押さえつけるように、一対のローラ122aおよびb(以下、これらを区別する必要がない場合は単に「ローラ122」と呼ぶ)が、副方向に回転可能なように設けられている。光照射バー12の本体はローラ122により媒体9からやや離れた位置に維持され、媒体9に直接接触することはない。ローラ122の素材は、例えば粘着性を有するシリコンゴムであり、媒体9の表面を回転する際に媒体9に付着したほこりやゴミをローラ122側に付着させることで除去する特定を有している。
【0025】
ローラ122aおよびbの各々の軸には、下方から加圧される力が所定の閾値以上であればON信号を継続的に出力し、所定の閾値未満であればOFF信号を継続的に出力する加圧センサ(図示略)が設けられている。また、ローラ122aおよびbの各々の軸には、遮光板123aおよびb(以下、これらを区別する必要がない場合は単に「遮光板123」と呼ぶ)が取り付けられている。
【0026】
遮光板123aおよびbは、光照射バー12の本体に配置されたモータ(図示略)により駆動されるギア(図示略)の回転に応じて、各々独立して軸の回りを回転する機構を有している。加圧センサからON信号が出力されると、遮光板123は図2(a)の矢印C1の方向に回転し図2(b)の状態となる。また、加圧センサからOFF信号が出力されると、遮光板123は図2(b)の矢印C2の方向に回転し図2(a)の状態となる。以下、図2(a)の状態を遮光板123が閉じた状態と呼び、図2(b)の状態を遮光板123が開いた状態と呼ぶ。
【0027】
遮光板123aおよびbには、遮光板123が開いた状態において媒体9に面する側の軸側の辺と向かい合う辺の端部に、遮光ブレード124aおよびb(以下、これらを区別する必要がない場合は単に「遮光ブレード124」と呼ぶ)が取り付けられている。遮光ブレード124の断面は三角形であり、遮光板123が開いた状態において1つの頂点が媒体9に接する。遮光ブレード124の素材は、例えば低摩擦のフッ素樹脂である。
【0028】
なお、光照射バー12の筐体、ローラ122、遮光板123、遮光ブレード124は全て、光を透過しない素材で構成されている。従って、遮光板123が閉じた状態においては図2(a)に示す副方向の長さwの領域が、また遮光板123が開いた状態においては図2(b)に示す副方向の長さWの領域が外部から遮光される。なお、光照射バー12に対し主方向に射し込む光を遮断するように、光照射バー12の本体側面の下部や遮光板123の側面に遮光ブレードや遮光ブラシ等を取り付けるようにしてもよい。
【0029】
光照射バー12の底面には、端子125および端子126が設けられている。端子125および端子126の位置は、LEDアレイ121のLEDが形成するラインの延長線と、筐体11に載置された媒体9の副方向に伸びる2辺の各々とが交わる位置のやや内側である。端子125および端子126は、例えばバネにより媒体9に押し付けられるように加圧されている。そのため、筐体11に媒体9が載置された場合、端子125および端子126はそれぞれ、媒体9の有する一対の電極に接触するようになっている。端子125および端子126は筐体11内に配置された給電部13(図示略)に接続されており、給電部13から供給される電圧を媒体9の一対の電極に印加する。なお、端子125および端子126を例えばローラ形状とし、媒体9との間に生じる摩擦を低減するようにしてもよい。
【0030】
図3は、媒体9の構造を示した図である。媒体9は液晶層91と、ラミネート層93を挟んで液晶層91に接する光電導体層92とを、平板な電極94および電極95で挟み込んだ構造を有している。なお、電極94は液晶層91側に、また電極95は光電導体層92側に、各々配置されている。
【0031】
液晶層91は、コレステリック液晶を内包する多数のマイクロカプセル911と、液晶層91においてマイクロカプセル911を保持するバインダ912とから構成されている。媒体9はこのように液晶をマイクロカプセル911に内包する形で保持しているため、媒体9が歪められても液晶の分子配向が乱れにくく、形成された画像が歪みにくい。なお、バインダ912は例えばポリマー層である。光電導体層92は、光の照射を受けると抵抗値が変化する特性を有する電導体、例えば光の照射により抵抗値が低下する有機光電導体の層である。電極94および電極95のうち、少なくとも液晶層91側に配置される電極94は透明電極である。従って、図3の矢印Dの方向に液晶層91に対し光の照射が可能であるとともに、矢印Dの方向にユーザが画像の形成および消去を視認することができる。
【0032】
電極94および電極95の外側には、さらに基板96および基板97が各々配置されており、媒体9の形状を維持している。基板96および基板97のうち、少なくとも液晶層91側に配置される基板96は透明である。基板96および基板97は、例えばPET(PolyEthylene Terephthalate)基板である。また、光電導体層92と電極95の間には光を透過しない黒色層98が設けられている。液晶層91を透過した光は黒色層98に吸収されるため、媒体9のうち液晶層91が光を透過する部分はユーザにとって黒く見える。これに対し、液晶層91が光を反射する部分はユーザにとって液晶の反射光の色(以下、白色であるものとする)に見える。なお、電極95が透明電極である場合、黒色層98は電極95と基板97の間に配置されてもよい。さらに、基板97が透明である場合、黒色層98は基板97の外側に配置されてもよい。
【0033】
なお、本実施形態においては、画像形成装置1の筐体11に載置される媒体9は例えば他の装置により過去に形成された画像の消去(リセット)が行われており、液晶層91に含まれるコレステリック液晶が全てプレーナ配向(後述)となっているものとする。
【0034】
図1を参照しつつ、電極94および電極95の構造をさらに説明する。電極94は、媒体9が筐体11に載置された状態で主方向を長手方向とするストライプ状の複数のサブ電極941に分割されており、サブ電極941の各々は互いに電気的に絶縁されている。なお、以下の説明において、複数のサブ電極941を各々区別する必要がある場合、サブ電極941−1、サブ電極941−2、・・・サブ電極941−n(nはサブ電極941の総数)のように呼ぶ。サブ電極941の各々は、図1において媒体9上の破線で区切られた長方形の位置に、左から順にサブ電極941−1、サブ電極941−2、・・・サブ電極941−nのように配置されている。サブ電極941の副方向の長さLは、図2(b)のWの半分、すなわちL=(W/2)を満たす長さである。
【0035】
電極95は、電極94と異なり、複数のサブ電極に分割されず媒体9の面全体を覆っている。なお、電極95が電極94と同様に複数のサブ電極に分割される構成としてもよい。ただし、その場合、互いに対向するサブ電極は同形、同サイズである必要がある。また、電極95が複数のサブ電極に分割される構成とし、電極94が媒体9の面全体を覆う構成としてもよい。
【0036】
媒体9の副方向に伸びる2辺に沿った縁部には、ライン状の端子9411−1〜端子9411−nと、端子9511が各々設けられている。サブ電極941−1〜端子9411−nの各々は、光照射バー12の端子125が筐体11に載置された媒体9に接触した際に、端子9411−1〜端子9411−nの各々を介して、端子125に接続された給電部13と通電するようになっている。また、電極95は、光照射バー12の端子126が筐体11に載置された媒体9に接触した際に、端子9511を介して、端子126に接続された給電部13と通電するようになっている。
【0037】
給電部13は、筐体11内に配置された制御部16(図示略)の制御のもとで、媒体9に画像を形成するための所定の大きさの電圧(以下、「画像形成電圧」と呼ぶ)を端子125および端子126の間に印加する。
【0038】
画像形成装置1の筐体11内には、給電部13に加え、光照射バー12のLEDアレイ121が有する複数のLEDの各々の端子に選択的に電圧を印加し発光を行わせる駆動部14(図示略)と、光照射バー12を副方向に搬送する搬送部15(図示略)と、給電部13、駆動部14および搬送部15を制御する制御部16(図示略)が設けられている。
【0039】
制御部16はPC(Personal Computer)等の外部のデータ処理装置との間でデータの送受信を行う通信I/F(Interface)(図示略)を有している。制御部16はPC等から画像データを受信すると、まず給電部13を制御し画像形成電圧の供給を開始させる。その後、制御部16は搬送部15を制御し、例えば光照射バー12の定位置である図1の左端位置から矢印B1の方向に光照射バー12の搬送を開始させる。
【0040】
図4は、光照射バー12の搬送される様子を示した図である。以下の説明において、図4の矢印B1の方向を先頭方向、その逆方向を末尾方向と呼ぶ。図4(a)は光照射バー12が定位置に待機している状態を示している。図4(a)の状態において、ローラ122aおよびbはいずれも下方からの加圧を受けないため、遮光板123aおよびbはいずれも閉じている。
【0041】
図4(b)は光照射バー12のローラ122aが媒体9の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。図4(b)の状態において、ローラ122aは下方から加圧されるため遮光板123aが開かれるが、ローラ122bは下方から加圧されないため遮光板123bは閉じられている。
【0042】
図4(c)は光照射バー12のLEDアレイ121が媒体9の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。図4(c)の時点で、媒体9のうちサブ電極941−1の領域が全て遮光されることになる。同時に、端子125が端子9411−1に接触する結果、サブ電極941−1と電極95との間への画像形成電圧の印加が開始される。その状態で、制御部16は画像データに従い駆動部14を制御し、LEDアレイ121が有する複数のLEDの各々から選択的に光の照射を開始させる。
【0043】
図4(d)は光照射バー12のローラ122bが媒体9の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。図4(d)の状態において、ローラ122bも下方から加圧されるため遮光板123bが開かれる。
【0044】
図4(e)は光照射バー12のLEDアレイ121がサブ電極941−1の領域の先頭方向の端部およびサブ電極941−2の領域の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。図4(e)の時点で、サブ電極941−1およびサブ電極941−2の領域が共に全て遮光されることになる。その状態で、端子125が端子9411−1から離れ、端子9411−2に接触する結果、サブ電極941−1と電極95との間への画像形成電圧の印加が終了し、サブ電極941−2と電極95との間への画像形成電圧の印加が開始される。なお、LEDアレイ121からの選択的な光の照射は継続される。
【0045】
図4(f)は光照射バー12のLEDアレイ121がサブ電極941−2の領域の先頭方向の端部およびサブ電極941−3の領域の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。図4(f)の時点で、サブ電極941−2およびサブ電極941−3の領域が共に全て遮光されることになる。その状態で、端子125が端子9411−2から離れ、端子9411−3に接触する結果、サブ電極941−2と電極95との間への画像形成電圧の印加が終了し、サブ電極941−3と電極95との間への画像形成電圧の印加が開始される。なお、LEDアレイ121からの選択的な光の照射は継続される。
【0046】
図4を参照しつつ上述した動作が後続のサブ電極941に関し繰り返される。上記のように光照射バー12が媒体9上を移動する間、遮光板123aおよびbが開くため、画像形成電圧の印加が行われているサブ電極941の領域は常に外部の光から遮断されることになる。
【0047】
上記のような構成を備える画像形成装置1により媒体9に画像が形成される仕組みを以下に説明する。図5は電極94と電極95との間に印加する電圧と、電極94と電極95との間に挟まれるマイクロカプセル911に内包されているコレステリック液晶の電場方向の入射光に関する反射率との関係を示したグラフである。
【0048】
コレステリック液晶は、印加される電圧に応じて、液晶のダイレクタが描く螺旋の軸が電場方向とほぼ平行となり入射光の反射率が高い配向状態であるプレーナ配向(以下、「P配向」と呼ぶ)、螺旋の軸が電場方向とほぼ垂直となり入射光の反射率が低い配向状態であるフォーカルコニック配向(以下、「F配向」と呼ぶ)、ダイレクタが電場方向に揃った配向状態であるホメオトロピック配向(以下、「H配向」と呼ぶ)の3つの配向状態をとる。これらの配向状態のうち、P配向およびF配向は電圧を切っても安定であり、すなわちメモリ性を有する。一方、H配向は不安定であり、電圧を急速に落とすとP配向に、また電圧を緩やかに落とすとF配向に移行した後、安定となる。
【0049】
図5(a)はマイクロカプセル911内のコレステリック液晶が、電極94と電極95の間に電圧を印加しない状態でP配向である場合に、電極94と電極95の間に電圧を印加した後に電圧を急速に落とした場合の、印加する電圧と電圧を落とした後のコレステリック液晶の反射率との関係を示している。図5(a)において、破線のグラフは光電導体層92に対する光の照射がない場合の電圧と反射率の関係を示し、実線のグラフは光電導体層92に対し所定の強さの光が照射されている場合の電圧と反射率の関係を示している。
【0050】
光の照射がない場合、電圧の上昇に伴い、P配向のコレステリック液晶は電圧V1u付近を閾値電圧としてF配向に移行する。その後、F配向のコレステリック液晶は電圧V2u付近を閾値電圧としてH配向に移行する。光の照射がある場合、電圧の上昇に伴うコレステリック液晶の配向状態の変化は光の照射がない場合と同様であるが、P配向からF配向に移行する閾値電圧およびF配向からH配向に移行する閾値電圧が光の照射がない場合と比較して低い。すなわち、それらの閾値電圧はそれぞれ電圧V1e(ただし、V1e<V1u)および電圧V2e(ただし、V2e<V2u)となる。これは、電極94と電極95の間の電圧は一定であるが、光の照射により光電導体層92の抵抗値が低下する結果、液晶層91に含まれるコレステリック液晶にかかる電圧が上昇するためである。
【0051】
図5(b)はマイクロカプセル911内のコレステリック液晶が、電極94と電極95の間に電圧を印加しない状態でF配向である場合に、電極94と電極95の間に電圧を印加した後に電圧を急速に落とした場合の、印加する電圧と電圧を落とした後のコレステリック液晶の反射率との関係を示している。図5(b)において、破線のグラフは光電導体層92に対する光の照射がない場合の電圧と反射率の関係を示し、実線のグラフは光電導体層92に対し所定の強さの光が照射されている場合の電圧と反射率の関係を示している。
【0052】
図5(b)に示すように、電圧がゼロの状態でF配向であるコレステリック液晶は、電圧がF配向からH配向に移行する閾値電圧である電圧V2u(光の照射がない場合)または電圧V2e(光の照射がある場合)の付近に至るまでF配向を維持し、その後、H配向に移行する。光の照射がある場合の閾値電圧が光の照射がない場合の閾値電圧より低い点はP配向の状態から電圧を上昇させた場合と同様である。
【0053】
媒体9に電圧V(ただし、V2e<V)を印加した状態で一様に光を照射した後に短時間で電圧を落とすと、媒体9のコレステリック液晶は全てP配向に移行して安定となる。この状態が、本実施形態において画像形成装置1の筐体11に載置される媒体9の状態である。以下、電圧Vを「リセット電圧」と呼ぶ。なお、リセット電圧がV2uより高い場合、リセットのための光の照射は不要である。
【0054】
リセット状態の媒体9に電圧V(ただし、V1e<V<V1u)を印加した状態で光を照射した後に電圧を切ると、媒体9のコレステリック液晶はF配向に移行して安定となる。一方、媒体9に電圧Vを印加した状態で光を照射せずに電圧を切ると、媒体9のコレステリック液晶はP配向を維持したまま安定である。従って、ユーザにとって電圧Vの印加の間に光の照射された部分は黒く見え、光の照射がされなかった部分は白く見え、結果として媒体9上に白黒の画像が形成されることになる。電圧Vが先に述べた画像形成電圧である。
【0055】
以上のような理由で、リセット状態の媒体9に画像形成電圧を印加しつつ選択的な光の照射を行う画像形成装置1は、媒体9に画像の形成を行うことができる。
【0056】
なお、リセット電圧および画像形成電圧は上述したものに限られない。例えば、V2u以上であるリセット電圧を印加した状態で一様に光を照射した後に短時間で電圧を落とすと、媒体9のコレステリック液晶は全てP配向に移行して安定になる。このように全面を白くした後、V2e<V<V2uである画像形成電圧Vを印加しつつ選択的な光を媒体9に照射する。光の照射された部分のコレステリック液晶はH配向に移行し、その後P配向に移行して安定となり白く見える。一方、光の照射されなかった部分のコレステリック液晶はF配向になり黒く見える。このように媒体9に画像を形成するようにしてもよい。
【0057】
画像形成装置1においては、上述したように、光照射バー12の遮光板123が遮光を要さない時に閉じられるため、そのような機構を備えない従来技術にかかる画像形成装置と比較し、光照射バー12の副方向の長さを短くすることができる。そのため、例えば画像形成が行われていない間に光照射バー12が媒体9を覆うことがないように光照射バー12の待機領域を設けるような場合、画像形成装置全体の副方向の長さを短くできる。
【0058】
上述した第1実施形態における遮光板123の形状、配置および開閉の機構は例示であって、光照射バー12の副方向の長さを変更可能な機構であればいずれの機構を採用してもよい。以下に第1実施形態における遮光板123の他の機構の例を示す。
【0059】
図6は、遮光板123の軸の位置を上下させることにより遮光板123の開閉を行う機構を備える光照射バー12を主方向に見た図である。この例において、遮光板123はローラ122の軸に取り付けられておらず、例えばモータ(図示略)により駆動されるベルト等(図示略)により上下に移動する軸に回転可能な状態で取り付けられている。遮光板123が取り付けられた軸が光照射バー12の本体の上方位置に移動された場合、遮光板123は重力により垂れ下がり、図6(a)に示すように閉じされた状態となる。一方、遮光板123が取り付けられた軸が光照射バー12の本体の下方位置に移動された場合、遮光板123は媒体9により押し広げられ、図6(b)に示すように開いた状態となる。
【0060】
図7は、遮光板123が閉じられた状態で光照射バー12の本体の上面に乗る機構を備える光照射バー12を主方向に見た図である。なお、図7に示す例においては遮光板123を1枚としており、遮光板123が開いた状態においてLEDアレイ121と端子125および端子126の位置が遮光される領域の中心位置となるように、光照射バー12の本体の中心よりずれた位置にそれらが配置されている。この例において、遮光板123はローラ122の軸に取り付けられておらず、光照射バー12の本体の上部の角に固定された軸に、軸の回転に伴い遮光板123も回転するように取り付けられている。遮光板123が取り付けられた軸は、例えばモータ(図示略)により駆動されるギアにより回転する。図7(a)は遮光板123が閉じられた状態を示している。図7(a)の状態で軸が矢印e1の方向に回転すると、遮光板123が矢印E1の方向に回転し、図7(b)に示す開かれた状態となる。逆に、図7(b)の状態で軸が矢印e2の方向に回転すると、遮光板123が矢印E2の方向に回転し、図7(a)に示す開かれた状態となる。
【0061】
なお、上述した第1実施形態においては、光照射バー12の筐体、ローラ122、遮光板123、遮光ブレード124を全く光を透過しない素材で構成するものとしたが、それらを光電導体層92の抵抗値を変化させる波長の光のみをカットするフィルタ特性を有する素材で構成するようにしてもよい。その場合、ユーザは遮光板123等を通して媒体9に形成される画像をリアルタイムに視認することができる。
【0062】
(2)第2実施形態
以下に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態にかかる画像形成装置2は、第1実施形態にかかる画像形成装置1と比較し、光照射バーおよび光照射バーを搬送する搬送部の構成と、制御部16による搬送部等の制御の動作が異なっており、他は画像形成装置1と同じである。従って、以下に画像形成装置2が画像形成装置1と異なる点を説明し、他を省略する。なお、以下の説明において、画像形成装置2が備える構成部のうち画像形成装置1が備える構成部と共通するものには画像形成装置1の説明において用いた符号を用いる。
【0063】
画像形成装置1が備える光照射バー12は、画像を示す光の照射を行う照射部と、画像形成電圧の印加されているサブ電極941の領域を外部の光から遮光する遮光部とを兼ねる構成を有している。これに対し、画像形成装置2は画像を示す光の照射は行うが遮光は行わない光照射バー31と、画像形成電圧の印加されているサブ電極941の領域を外部の光から遮光する遮光バー32が、それぞれ独立して搬送される構成を有している。
【0064】
図8は、画像形成装置2が備える光照射バー31および遮光バー32と、それらを各々独立して搬送する搬送部33および搬送部34を主方向に見た図である。光照射バー31の底面にはLEDアレイ121、端子125および端子126が設けられている。なお、搬送部33および搬送部34の搬送機構は図8に例示したもの(ネジ山を切ったシャフトの回転に伴い光照射バー31等が副方向に搬送されるもの)に限られず、例えば搬送ベルトを用いたものなど、いずれの搬送機構であってもよい。
【0065】
遮光バー32は遮光板321と、遮光板321の周囲を囲み垂れ下がるように遮光板321に取り付けられた遮光ブラシ322を有している。遮光板321および遮光ブラシ322は遮光を行うとともに電導体の素材でできており、媒体9に帯電している静電気を搬送部34を介して筐体11に放電する機能を有している。なお、遮光板321の副方向の長さは、光照射バー31の副方向の長さはLである。
【0066】
図9は、画像形成装置2の制御部16が給電部13、駆動部14、搬送部33および搬送部34を制御して媒体9に画像形成を行わせる様子を示した図である。図9(a)は、光照射バー31および遮光バー32が定位置にて待機している状態を示している。待機状態において、光照射バー31は遮光バー32の下に位置している。制御部16はPC等から画像データを受信すると、給電部13に画像形成電圧の供給を開始させるとともに、搬送部33および搬送部34を制御して、光照射バー31および遮光バー32を矢印B1の方向に同じ速度vで搬送させる。なお、光照射バー31はいったん搬送が開始されると、搬送が停止されるまでの間、常に速度vで定速搬送される。
【0067】
図9(b)は、LEDアレイ121がサブ電極941−1の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。この時点で、制御部16は搬送部34を制御して遮光バー32の搬送を停止させ、遮光バー32を図9(b)の位置で待機させる。従って、サブ電極941−1の領域は全て遮光バー32により遮光されることになる。また、端子125および端子126がそれぞれ端子9411−1および端子9511に接触するため、サブ電極941−1と電極95との間への画像形成電圧の印加が開始される。そのような状態で、制御部16は駆動部14を制御して、LEDアレイ121による画像を示す光の照射を開始させる。
【0068】
図9(c)は、LEDアレイ121がサブ電極941−1の先頭方向の端部およびサブ電極941−2の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。この時点で、端子125が端子9411−1から離れ、サブ電極941−1と電極95との間への画像形成電圧の印加が終了する。そのタイミングにおいて、制御部16は給電部13を制御して画像形成電圧の供給を停止させるとともに、駆動部14を制御してLEDアレイ121による光の照射を停止させる。また、制御部16は搬送部34を制御し、遮光バー32を速度v(ただし、V>V×2)で矢印B1の方向に搬送させる。従って、光照射バー31が速度vでサブ電極941−2の領域上を搬送されている間に、遮光バー32はサブ電極941−3の領域の全てを遮光する位置に到達する。
【0069】
図9(d)は、遮光バー32がサブ電極941−3の領域を全て遮光する位置に到達した時点の状態を示している。制御部16は遮光バー32が図9(d)に示す位置に到達すると、搬送部34を制御して遮光バー32の搬送を停止させ、遮光バー32を図9(d)に示す位置で待機させる。
【0070】
図9(e)は、光照射バー31のLEDアレイ121がサブ電極941−3の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。この時点で、この時点で、端子125が端子9411−3に接触する。そのタイミングにおいて、制御部16は給電部13を制御して画像形成電圧の供給を再開させるとともに、駆動部14を制御してLEDアレイ121による光の照射を再開させる。なお、その際にLEDアレイ121から照射される光が示す画像は、サブ電極941−3の領域に形成されるべき画像である。
【0071】
図9(f)は、LEDアレイ121がサブ電極941−3の先頭方向の端部およびサブ電極941−4の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。この時点で、端子125が端子9411−3から離れ、サブ電極941−3と電極95との間への画像形成電圧の印加が終了する。そのタイミングにおいて、制御部16は給電部13を制御して画像形成電圧の供給を停止させるとともに、駆動部14を制御してLEDアレイ121による光の照射を停止させる。また、制御部16は搬送部34を制御し、遮光バー32を速度vで矢印B1の方向に搬送させる。その後、後続のサブ電極941の領域に関し、図9を用いて説明した動作が繰り返される。その結果、奇数番目のサブ電極941の領域に画像の形成が順次行われる。
【0072】
奇数番目のサブ電極941の領域への画像形成が全て完了すると、制御部16は給電部13、駆動部14、搬送部33および搬送部34を制御して、矢印B1と反対の方向に光照射バー31および遮光バー32を搬送させつつ図9を用いて説明した動作を繰り返すことにより、偶数番目のサブ電極941の領域に画像形成を行う。その結果、光照射バー31および遮光バー32が副方向に一往復する間に、媒体9の全面に画像データに従った画像が形成されることになる。
【0073】
画像形成装置2においては、遮光バー32が光照射バー31と独立して搬送され、遮光を要するサブ電極941のみを遮光することができるため、そのような構成を備えない従来技術にかかる画像形成装置と比較し、遮光バー32の副方向の長さを短くすることができる。そのため、例えば画像形成が行われていない間に遮光バー32が媒体9を覆うことがないように遮光バー32の待機領域を設けるような場合、画像形成装置全体の副方向の長さを短くできる。
【0074】
上述した第2実施形態における光照射バー31および遮光バー32の構成は例示であって、光照射バー31が遮光バー32の下にもぐる構成であればいずれの構成を採用してもよい。以下に第2実施形態における光照射バー31および遮光バー32の他の構成の例を示す。
【0075】
図10は、台形柱形状の光照射バー31と、蝶番の構造を備える遮光バー32とを採用した例を示している。この例において、遮光バー32には遮光ブラシ322は付けられていない。遮光バー32は一組の遮光板321aおよび遮光板321bを有し、それらが同じ軸に回転可能な状態で取り付けられている。遮光板321の軸側と反対側の端部は媒体9に接する側が凸となるように丸く折り曲げ加工が施されている。従って、光照射バー31が遮光バー32の下に潜り込んだり、光照射バー31を覆っていた遮光バー32が光照射バー31を残して先に移動したりする際、遮光板321aおよびbが必要に応じて光照射バー31に押し上げられるため、光照射バー31もしくは遮光バー32の移動の妨げとならない。
【0076】
また、上述した第2実施形態における遮光バー32は光照射バー31と同様に媒体9の面に沿って搬送されたが、遮光バー32の搬送の方法はそれに限られない。例えば、図11は、光照射バー31がサブ電極941−2の領域上を搬送されている間に遮光バー32がサブ電極941−1の領域上の位置からサブ電極941−3の領域上の位置に、主方向を軸として回転しつつ搬送される様子を示した図である。第2実施形態において、搬送部34を図11に示したように遮光バー32の搬送を行うように構成してもよい。
【0077】
(3)第3実施形態
以下に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態にかかる画像形成装置3は、第2実施形態にかかる画像形成装置2と比較し、遮光バー32aおよびbの2つの遮光バー32と、それらを各々搬送する搬送部34aおよびbとを備えている点と、制御部16による搬送部34等の制御の動作が異なっており、他は画像形成装置2と同じである。従って、以下に画像形成装置3が画像形成装置2と異なる点を説明し、他を省略する。なお、以下の説明において、画像形成装置3が備える構成部のうち画像形成装置2が備える構成部と共通するものには画像形成装置2の説明において用いた符号を用いる。
【0078】
図12は、画像形成装置3が備える光照射バー31と遮光バー32aおよびb、それらの各々を副方向に搬送する搬送部33と搬送部34aおよびbを示した斜視図である。
【0079】
図13は、画像形成装置3の制御部16が給電部13、駆動部14、搬送部33、搬送部34aおよびbを制御して媒体9に画像形成を行わせる様子を示した図である。図13(a)は、光照射バー31と遮光バー32aおよびbが定位置にて待機している状態を示している。待機状態において、光照射バー31は重なり合う遮光バー32aおよびbの下に位置している。制御部16はPC等から画像データを受信すると、給電部13に画像形成電圧の供給を開始させるとともに、搬送部33と搬送部34aおよびbを制御して、光照射バー31と遮光バー32aおよびbを矢印B1の方向に同じ速度vで搬送させる。なお、光照射バー31はいったん搬送が開始されると、搬送が停止されるまでの間、常に速度vで定速搬送される。
【0080】
図13(b)は、LEDアレイ121がサブ電極941−1の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。この時点で、制御部16は搬送部34aを制御して遮光バー32aの搬送を停止させ、遮光バー32aを図13(b)の位置で待機させる。従って、サブ電極941−1の領域は全て遮光バー32aにより遮光されることになる。また、端子125および端子126がそれぞれ端子9411−1および端子9511に接触するため、サブ電極941−1と電極95との間への画像形成電圧の印加が開始される。そのような状態で、制御部16は駆動部14を制御して、LEDアレイ121による画像を示す光の照射を開始させる。同時に、制御部16は搬送部34bを制御して、遮光バー32bを速度v(ただし、v>v)にて矢印B1の方向に搬送させる。
【0081】
図13(c)は、遮光バー32bがサブ電極941−2の領域の全てを遮光する位置まで搬送された時点の状態を示している。制御部16は搬送部34bを制御して遮光バー32bの搬送を停止させ、遮光バー32bを図13(c)の位置で待機させる。その結果、サブ電極941−1およびサブ電極941−2が遮光バー32aおよびbにより遮光されることになる。
【0082】
図13(d)は、LEDアレイ121がサブ電極941−1の先頭方向の端部およびサブ電極941−2の末尾方向の端部に到達した時点の状態を示している。この時点で、端子125が端子9411−1から離れ端子9411−2に接触し、サブ電極941−1と電極95との間への画像形成電圧の印加が終了すると同時にサブ電極941−2と電極95との間への画像形成電圧の印加が開始される。そのタイミングにおいて、制御部16は搬送部34aを制御して、遮光バー32aを速度v(ただし、v>v)にて矢印B1の方向に搬送させる。
【0083】
図13(e)は、遮光バー32aがサブ電極941−2の領域の全てを遮光する位置まで搬送された時点の状態を示している。制御部16は搬送部34aを制御して遮光バー32aの搬送を停止させ、遮光バー32aを図13(e)の位置で待機させる。また、制御部16は、遮光バー32aが図13(d)の位置から図13(e)の位置に向かい移動を開始した後、LEDアレイ121がサブ電極941−2の先頭方向の端部およびサブ電極941−3の末尾方向の端部に到達する前のいずれかのタイミングに、搬送部34bを制御して、遮光バー32bを速度vにて矢印B1の方向に搬送させる。ただし、速度vは、LEDアレイ121がサブ電極941−2の先頭方向の端部およびサブ電極941−3の末尾方向の端部に到達する前に遮光バー32bがサブ電極941−3の領域の全てを遮光する位置まで移動可能な速度である。
【0084】
図13(f)は、遮光バー32bがサブ電極941−3の領域の全てを遮光する位置まで搬送された時点の状態を示している。制御部16は搬送部34bを制御して遮光バー32bの搬送を停止させ、遮光バー32bを図13(f)の位置で待機させる。その結果、サブ電極941−2およびサブ電極941−3が遮光バー32aおよびbにより遮光されることになる。その後、後続のサブ電極941の領域に関して、図13を用いて説明した動作が繰り返される。
【0085】
画像形成装置3においては、画像形成中には遮光バー32aおよびbが広がってサブ電極941を遮光する一方、画像形成が行われていない間には遮光バー32aおよびbが重なって、それら全体の面積が小さくなる。そのため、そのような構成を備えない従来技術にかかる画像形成装置と比較し、例えば画像形成が行われていない間に遮光バー32が媒体9を覆うことがないように遮光バー32の待機領域を設けるような場合、画像形成装置全体の副方向の長さを短くできる。
【0086】
また、画像形成装置3においては、あるサブ電極941の領域に関して画像の形成が完了し、画像形成電圧の印加が終了した場合、そのサブ電極941を遮光していた遮光バー32aが光照射バー31の搬送の速度vよりも高速に矢印B1の方向に搬送される。従って、そのような構成を備えない従来技術にかかる画像形成装置による場合と比較して、ユーザは画像形成の完了した領域を速やかに確認することができる。そのために、遮光バー32aの搬送速度vは可能な限り速い方が望ましい。
【0087】
なお、上述した第3実施形態においては、常に遮光バー32bが遮光バー32aに先行して搬送されるものとしたが、例えば遮光バー32aと遮光バー32bとが交互に先行して搬送されるように構成してもよい。
【0088】
図14は、上述した遮光バー32および搬送部34とは異なる機構を備えた遮光バー32および搬送部34を第3実施形態において採用した例を示す図である。この例の遮光バー32aおよびbは、主方向に見た形状がL字型を上下反対にしたものとなっており、上面が一部重なり合って、全体としてコの字を左に90度回転させたような形状を示す。遮光バー32aおよびbの各々が媒体9に接触する端部にはローラが取り付けられている。
【0089】
遮光バー32aおよびbの各々は、例えばねじ山を切ったシャフトにより光照射バー31に取り付けられている。光照射バー31の本体内には、モータ(図示略)に駆動されるギア(図示略)が回転し、シャフトを光照射バー31の本体内から押し出したり光照射バー31の本体内に引き込んだりすることにより、遮光バー32aおよびbを搬送する搬送部34aおよびbが設けられている。そのため、光照射バー31と遮光バー32aおよびbとの副方向における相対的な位置関係は図14(a)〜(d)に例示するように、様々に変更される。例えば、遮光バー32が定速vで搬送されている時に遮光バー32bをv(ただし、v>v)の速度で搬送したい場合、搬送部34bは遮光バー32bを光照射バー31から速度(v−v)で引き離すようにギアの回転を行えばよい。
【0090】
なお、図14に示した形状の遮光バー32aおよびbを、例えば図12に示した搬送機構により搬送するようにしてもよい。また、図14に示した例において、画像形成が行われない間は図14(a)に示すように遮光バー32aおよびbを閉じられた状態とし、画像形成が行われる間は常に図14(b)に示すように遮光バー32aおよびbを開かれた状態とすれば、第1実施形態の変形例となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる画像形成装置を示した図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる光照射バーを示した図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる画像形成装置が画像形成を行う媒体の構造を示した図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる光照射バーの搬送の様子を示した図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる画像形成装置が画像形成を行う媒体に含まれるコレステリック液晶の特性を示したグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例にかかる光照射バーを示した図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例にかかる光照射バーを示した図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる光照射バーおよび遮光バーとそれらを搬送する搬送部を示した図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる光照射バーおよび遮光バーの搬送の様子を示した図である。
【図10】本発明の第2実施形態の変形例にかかる光照射バーおよび遮光バーを示した図である。
【図11】本発明の第2実施形態の変形例にかかる遮光バーの搬送の様子を示した図である。
【図12】本発明の第3実施形態にかかる光照射バーおよび遮光バーとそれらを搬送する搬送部を示した図である。
【図13】本発明の第3実施形態にかかる光照射バーおよび遮光バーの搬送の様子を示した図である。
【図14】本発明の第3実施形態の変形例にかかる光照射バーおよび遮光バーを示した図である。
【符号の説明】
【0092】
1…画像形成装置、2…画像形成装置、3…画像形成装置、9…媒体、11…筐体、12…光照射バー、13…給電部、14…駆動部、15…搬送部、16…制御部、31…光照射バー、32…遮光バー、33…搬送部、34…搬送部、91…液晶層、92…光電導体層、93…ラミネート層、94…電極、95…電極、96…基板、97…基板、98…黒色層、121…LEDアレイ、122…ローラ、123…遮光板、124…遮光ブレード、125…端子、126…端子、321…遮光板、322…遮光ブラシ、911…マイクロカプセル、912…バインダ、941…サブ電極、9411…端子、9511…端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、光の照射により抵抗値が変化する特性を有する光電導体層と、前記液晶層および前記光電導体層を挟み対向する位置に配置された一対の電極層とを有し、画像を示す光の照射を受け当該光が示す画像を形成可能な媒体であって、前記一対の電極層の少なくとも一方は複数のストライプ状のサブ電極層に分割されている媒体を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層の長手方向に沿ったライン状に、前記媒体に対し画像を示す光を照射する照射部と、
前記照射部が照射するライン状の光の長手方向を横切る一の方向に、前記保持部に保持された前記媒体の表面に沿って前記照射部を搬送する搬送部と、
前記照射部により照射される光が前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの一のサブ電極層に接する光電導体層を照射している間、当該一のサブ電極層と当該一のサブ電極層に対向する位置に配置された電極層との間に電圧を印加する給電部と、
前記照射部により照射される光が前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの一のサブ電極層に接する光電導体層を照射している間、当該一のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る遮光部と
を備え、
前記遮光部は、前記一の方向における長さを変更する機構を備える
画像形成装置。
【請求項2】
液晶層と、光の照射により抵抗値が変化する特性を有する光電導体層と、前記液晶層および前記光電導体層を挟み対向する位置に配置された一対の電極層とを有し、画像を示す光の照射を受け当該光が示す画像を形成可能な媒体であって、前記一対の電極層の少なくとも一方は複数のストライプ状のサブ電極層に分割されている媒体を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層の長手方向に沿ったライン状に、前記媒体に対し画像を示す光を照射する照射部と、
前記照射部が照射するライン状の光の長手方向を横切る一の方向に、前記保持部に保持された前記媒体の表面に沿って前記照射部を搬送する第1の搬送部と、
前記照射部により照射される光が前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの一のサブ電極層に接する光電導体層を照射している間、当該一のサブ電極層と当該一のサブ電極層に対向する位置に配置された電極層との間に電圧を印加する給電部と、
前記照射部により照射される光が前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの一のサブ電極層に接する光電導体層を照射している間、当該一のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る遮光部と、
前記一の方向に、前記第1の搬送部による前記照射部の搬送の速度と異なる速度で、前記遮光部を搬送する第2の搬送部と
を備える画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の搬送部は、前記照射部が前記第1の搬送部により前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの第1のサブ電極層に沿って搬送されている間中、前記第1のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る位置に前記遮光部を停止させた後、前記照射部が前記第1の搬送部により前記第1のサブ電極層よりも前記一の方向の前方に位置する第2のサブ電極層に沿って搬送されている間に前記第2のサブ電極層よりも前記一の方向の前方に位置する第3のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る位置に前記遮光部を移動させる
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記遮光部は第1の部位と第2の部位を有し、
前記第2の搬送部は、前記照射部が前記第1の搬送部により前記保持部に保持された前記媒体の前記複数のサブ電極層のうちの第1のサブ電極層に沿って搬送されている間、前記第1のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る位置に前記遮光部の前記第1の部位を停止させると同時に、前記第1のサブ電極層よりも前記一の方向の前方に位置する第2のサブ電極層に接する光電導体層を外部の光から遮る位置に前記遮光部の前記第2の部位を移動させる
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記遮光部は、前記保持部に保持された前記媒体の表面に接触する端部を備える
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記端部はローラまたはブラシである
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記端部は接触した物体を付着する特性を備える
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記端部は接触した物体に帯電した静電気を除去する特性を備える
請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−103923(P2009−103923A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275700(P2007−275700)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】