説明

画像形成装置

【課題】手差しトレイの操作性を損ねることなく、用紙トレイ上の火災を鎮火することの可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】装置本体内に所望の記録媒体を供給する手差しトレイ254が装置本体100aに対して傾斜支持されている画像形成装置100であって、手差しトレイに載置された記録媒体Pが所定の過熱温度に到達したことを検出する過熱温度検出手段263と、加熱温度検出手段によって記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、手差しトレイを傾斜支持状態から水平支持状態に切り換える支持状態切換手段263a、264と、を備え、過熱温度検出手段は、記録媒体が所定の過熱温度に到達した際に、手差しトレイに含まれるバイメタルが熱変形することによって、所定の過熱温度に到達したことを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、手差しトレイに載置された記録媒体となる用紙類に装置外からの類焼による火災発生の抑制・防止に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ、およびこれらの各種機能を備えるいわゆる複合機等の画像形成装置においては、手差しトレイや排紙トレイは、画像形成装置の外部に用紙の載置面を有するので、当該トレイ上に載置された用紙は、画像形成装置の外部に露出することとなる。このため、用紙トレイ近傍のタバコ等の画像形成装置の外部部の火元に起因する類焼の被害を受ける虞があり、万が一、用紙トレイ上の用紙が燃焼した場合では、当該類焼を速やかに消火することが火災防止等の上で好ましい。
【0003】
これら画像形成装置等の各種電子機器類で発生した火災の被害の防止・抑制するために、発生した火災を消火する装置として、特許文献1では、装置の筐体本体内の上部に消火剤を収容するケースを設け、当該筐体本体の内部温度が一定の高温に達すると、消火剤がケースから放出される電子装置用箱が開示されている。
【特許文献1】特開平8−204352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来から実施されている上述の装置のような消火剤を火災発生箇所に直接に投下して消火する方法を取るのは、あくまでも最終的な消火手段と言えるものであり、仮に、発生した火災を消火することが出来たとしても、投下した消火剤が筐体内に拡散し、装置の周囲の電子機器類に損害を与える虞があった。このため、画像形成装置等の各種電子機器類では、消火剤の投下以外の火災発生の防止等の処置を施す必要があった。
【0005】
本発明の発明者の検討によれば、用紙トレイ上の用紙は、トレイが傾斜している場合に燃え広がり易く、トレイが水平状態である場合は、燃え広がり難い傾向があることが判明した。この傾向は、最上部の用紙が引火した場合、最上部用紙の燃焼時に当該用紙が変形屈曲し、最上部用紙とその下部に位置する用紙との間に隙間が形成され、空気が流入することで酸素が供給され、燃焼し易い状態になることに起因すると考えられている。
【0006】
一方、用紙補給時の操作性を考慮すると、用紙トレイは、傾斜していた方が給紙用のピックアップローラに向けて用紙が自重で進行するために、ピックアップ位置にセットし易い傾向にある。しかしながら、用紙トレイが傾斜している場合では、用紙補給時の操作性が向上するものの、用紙の自重による用紙の変形を低減する効果が減少して、類焼等による燃焼を促進してしまう。
【0007】
これに対して、手差しトレイおよび用紙が水平状態にある場合では、用紙の自重によってトレイ上の用紙の変形屈曲が低減されて、わずかな火気であれば、画像形成装置の外部部の火元に起因する類焼の多くの場合は、類焼等で火災が生じた場合でも、自然消火する傾向にあると考えられている。しかしながら、画像形成装置に備わる手差しトレイ等の用紙トレイを水平にすると、用紙トレイが傾斜されている場合と比べて、給紙用のピックアップローラに向けて用紙が自重で進行させることが出来ず、用紙セットの操作性を低下させてしまう。すなわち、用紙搬送の操作性と火災発生の回避等の安全性の両立が困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、従来の画像形成装置が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、手差しトレイの操作性を損ねることなく、用紙トレイ上の火災を鎮火することの可能な、新規かつ改良された画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある実施の態様によれば、装置本体内に所望の記録媒体を供給する手差しトレイが装置本体に対して傾斜支持されている画像形成装置であって、手差しトレイに載置された記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出する過熱温度検出手段と、過熱温度検出手段によって記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、手差しトレイを傾斜支持状態から水平支持状態に切り換える支持状態切換手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0010】
このような構成とすることにより、手差しトレイの使用時には、手差しトレイを傾斜支持状態とすることにより、手差しトレイの用紙搬送性能を良好な状態としていても、類焼等により手差しトレイ上に火災が発生した場合に、手差しトレイを傾斜支持状態から自然消火可能な水平支持状態に切り換えることによって、手差しトレイ上に発生した火災の拡大を抑制しながら、容易に当該火災の消火が可能となる。
【0011】
このとき、上記実施の態様において、過熱温度検出手段は、記録媒体が所定の過熱温度に到達した際に、手差しトレイに含まれるバイメタルが熱変形することによって、所定の過熱温度に到達したことを検出することとしてもよい。特に、手差しトレイは、過熱温度検出手段の基端側端部に設けたトレイ側係合部が装置本体に設けられた本体側係合部と係合することにより装置本体に対して傾斜支持されている画像形成装置の場合では、支持状態切換手段は、過熱温度検出手段が熱変形した際に、トレイ側係合部が本体側係合部から抜脱されることにより、手差しトレイを傾斜支持状態から水平支持状態に切り換えることとしてもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、装置本体に電源が供給されていないオフ状態のときでも、手差しトレイ上に火災が発生した際に、支持状態切換手段となるバイメタルが熱変形することによって、支持状態切換手段を動作させることによる鎮火作用を付与することが出来る。
【0013】
このとき、上記実施の態様において、手差しトレイには、過熱温度検出手段に接続される熱伝導性を有する熱伝導部材が手差しトレイの広範囲に亘って内包されていることとしてもよい。
【0014】
このような構成とすることにより、手差しトレイの広範に亘って、類焼等の火災発生による温度上昇を効果的に過熱温度検出手段に伝達させるので、速やかに手差しトレイの支持状態切換手段を動作させることが出来るので、鎮火性能が向上する。
【0015】
このとき、上記実施の態様において、手差しトレイは、装置本体に設けられた支持軸を中心に装置本体対して開閉可能な構成であり、手差しトレイが装置本体に対して開状態の場合は、トレイ側係合部が本体側係合部と係合し、手差しトレイが装置本体に対して閉状態の場合は、トレイ側係合部が本体側係合部から抜脱していることとしてもよい。
【0016】
このような構成とすることにより、手差しトレイの不使用時には、トレイ側係合部と本体側係合部とのロック状態を解除して、手差しトレイを装置本体の側面に向けて立設させると、手差しトレイが立設状態で固定することが出来、利用スペースを縮小させて、画像形成装置の省スペース化が図れるようになる。
【0017】
このとき、上記実施の態様において、手差しトレイの記録媒体の載置面側には、熱溶融性のシート部材を介して消火剤が内包されることとしてもよい。
【0018】
このような構成とすることにより、万が一手差しトレイを傾斜支持常態から水平支持状態にしただけで鎮火できない場合、熱で溶融するシート部材である樹脂シートが熱により溶融して消火剤を手差しトレイ表面に露出させられるので、より確実に手差しトレイ上に類焼によって発生した火災を消火するようになる。
【0019】
このとき、上記実施の態様において、手差しトレイには、手差しトレイに載置された記録媒体の温度変化を検知する温度センサが更に備わり、装置本体には、温度センサにより記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、他の外部装置に通知する過熱温度到達通知手段が備わることとしてもよい。
【0020】
このように、温度センサによって手差しトレイ上の積載用紙に火災が発生したことが通信回線を介して接続されているPC等の外部装置に通知されることによって、当該外部装置のユーザ等が直接消火を実行可能となるので、発生した火災の被害を最小限に抑止されるようになる。
【0021】
このとき、上記実施の態様において、支持状態切換手段には、温度センサにより記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、本体側係合部がトレイ側係合部から抜脱するように本体側係合部を駆動する抜脱駆動手段が備わることとしてもよい。
【0022】
手差しトレイに多量の用紙が積載されている場合では、過熱温度検出手段となるバイメタルに用紙の類焼等による熱伝導が十分に行われないことによって、当該バイメタルの温度が十分上がらない場合も想定され、火災発生の検出が遅れる虞があるが、上記実施の態様の構成とすることによって、手差しトレイに多量の用紙が積載時でも、火災発生をより迅速かつ確実に検出可能となるので、当該火災の消火を確実に実行されるようになる。
【0023】
このとき、上記実施の態様において、温度センサは、手差しトレイに載置された記録媒体の上面側の温度変化を検知し、温度センサによって、記録媒体の上面側の温度が所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、抜脱駆動手段が駆動するように制御されることとしてもよい。
【0024】
このように、手差しトレイ上に載置された記録媒体となる用紙上面の温度変化を検出することによって、用紙上面への着火を速やかに検出することが出来るので、支持状態切換手段に備わる抜脱駆動手段の駆動開始までの時間が短縮される。
【0025】
このとき、上記実施の態様において、手差しトレイに載置された記録媒体の上面側の温度変化を検知する温度センサが装置本体の側壁部のうち手差しトレイの載置面に対向する位置に設けられることとしてもよい。
【0026】
このような構成とすることにより、手差しトレイに載置された用紙の上面側の温度を検出する温度センサが手差しトレイからの用紙補給時の妨げになることを防止できる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、類焼等により手差しトレイ上の用紙が発火した場合に、手差しトレイからの給紙性能・操作性を損ねることなく、速やかに当該発火・火災を鎮火することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の画像形成装置をMFPに適用した第1の実施の形態の構成について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態の画像形成装置の概略構成を示す全体構成図である。
【0030】
本実施の形態では、画像形成装置100は、上部に画像読取部110、中央部に画像形成部210、下部に用紙給紙部250を配置するいわゆるフロントアクセス可能なビルドアップ方式の構成となっている。この画像形成装置100の上面に配置された透明ガラス体の原稿台111上には、原稿セットトレイ上にセットされた複数枚の原稿を1枚ずつ自動的に原稿台111上へ給送する自動原稿搬送装置112が設けられている。また、画像形成部210の一方の側面に後処理ユニット260が装着されていると共に、用紙給紙部250の下方に載置台を兼ねた多段給紙ユニット270が配置されている。
【0031】
原稿台111の下方に位置する画像読取部110は、第1の走査ユニット113、第2の走査ユニット114、光学レンズ115、光電変換素子であるCCDラインセンサ116を有し、自動原稿搬送装置112との関連した動作により、原稿台111上に載置された原稿の画像を所定の露光位置において相対的に走査して読み取る。第1の走査ユニット113は、原稿面上を露光する光源ランプ1aを備える光源ランプユニット1、および原稿からの反射光像を所定の方向に反射させる第1ミラー2aを搭載している。光源ランプユニット1の照射光量は、光量センサ3(図2参照)によって検出される。第2の走査ユニット114は、第1ミラー2aで反射された原稿からの反射光を光電変換素子であるCCDラインセンサ116に導く第2ミラー2bおよび第3ミラー2cを搭載している。光学レンズ115は、原稿からの反射光をCCDラインセンサ116の受光面に結像させる。
【0032】
画像形成部210は、感光体ドラム222を所定の電位に帯電させる帯電器223、原稿読取部110または不図示の外部装置から転送された画像データに応じてレーザ光を出射して感光体ドラム222上に静電潜像を形成するレーザスキャンユニット( Laser Scanning Unit;以下、LSUと称する。 )227、感光体ドラム222上に形成された静電潜像に現像ローラ228を介してトナーを供給してトナー像に顕像化する現像器224、感光体ドラム222上に形成されたトナー像を用紙に転写する転写器225、転写工程後の感光体ドラム222上に残留したトナー等を回収するクリーニング器226、転写工程後の感光体ドラム222から用紙を剥離する剥離器229を備え、所望の画像データに基づいて形成されたトナー像を被転写体となる用紙上に転写して印字処理する。
【0033】
LSU227は、内部に画像データによって変調されたレーザ光を照射する半導体レーザ11、および回転によってレーザ光を主走査方向に偏光するポリゴンミラー12を不図示のレンズ群等と共に備えている。ポリゴンミラー12は、モータ13によって駆動される。モータ13の回転速度は、速度センサ14によって検出される。
【0034】
画像形成部210には、トナー像が転写された用紙を加熱および加圧して用紙上にトナー像を定着させる定着装置となる定着ユニット217が設けられている。定着ユニット217は、上側の加熱ローラ21と下側の加圧ローラ22との一対のローラを備えている。加熱ローラ21は、ヒータ21aを備え、加熱ローラ21の温度は、温度センサ23によって検出される。また、定着ユニット217の排出側には、用紙の両面に画像を形成する両面画像形成モード時に用紙の前後を反転させるスイッチバック路221が形成されている。
【0035】
定着ユニット217においてトナー像が定着された用紙は、必要に応じてスイッチバック路221を経てから排紙ローラ219によって後処理装置260へと導かれ、この後処理装置260でステープル処理や穿孔処理等の後処理が施された後に、トレイ261上に排出される。
【0036】
用紙給紙部250は、装置本体100aの側面に装着された手差トレイ254、両面ユニット255、給紙トレイ251と多段給紙ユニット270に備えられた給紙トレイ252、253を備え、これらの給紙トレイ251〜254は、複数枚の用紙を積層して収納する。また、用紙給紙部250は、給紙トレイ251〜254に積載収容された用紙Pを最上層から1枚ずつピックアップして、画像形成部210に向かって給紙するピックアップローラ(給紙ローラ)256、給紙した用紙を画像形成部210における感光体ドラム222と転写器225との間の転写位置へと搬送する複数の搬送ローラ258、および搬送させた用紙が当該転写位置への給紙前に当該搬送用紙の先端と感光体ドラム222上のトナー像との位置合わせを行うレジストローラ257等の搬送手段を備えている。両面ユニット255は、用紙を反転させるスイッチバック路221に通じており、両面画像形成モード時に表裏面が反転された用紙を一時貯留する。なお、両面ユニット255は、通常の給紙トレイと交換可能にされている。
【0037】
次に、本実施の形態の画像形成装置の電気的構成について、図面を使用しながら説明する。図2は、本実施の形態の画像形成装置の電気的構成の概略を示すブロック図である。
【0038】
画像形成装置100は、当該装置全体の制御手段として、当該各機能部を制御するための制御プログラムを記憶しているROM( Read Only Memory )42およびRAM( Random Access Memory )43を備えたメインCPU( Central Processing Unit )41を備える。そして、メインCPU41には、画像メモリ44、画像処理回路48、HDD( Hard Disk Drive )54、通信部50、検出部51、NIC53、入力操作手段となる操作パネル70、無線通信部52、画像形成部側サブCPU60、および原稿読取部側サブCPU61が接続され、メインCPU41は、これらの各機能部の動作を制御している。
【0039】
メインCPU41は、不図示の電源から電力が供給されると、ROM42に予め書き込まれたプログラムに従って、メインCPU41に接続された画像形成装置100内の各入出機器を統括して制御しながら、当該各入出力機器の処理動作を実行し、この間に入出力される印字データ等の各種データをRAM43の所定のメモリエリアに一時記憶して、ROM42から読み出されたプログラムを実行する。画像処理回路48から出力された画像データは、画像メモリ44に記憶され、リモートの情報処理装置となるクライアントPC55から送信された印字データやパスワードは、HDD54に記憶される。
【0040】
操作パネル70は、本実施の形態では、不図示の入力キーおよび液晶表示パネルを備えており、画像形成装置100の使用状態や利用可能な用紙サイズ、複写倍率等の各種データの表示を行うと共に、入力キーによってユーザの操作を受け付けることができる。操作パネル70に含まれる液晶表示パネルは、液晶画面に触れることで入力が可能な液晶タッチパネルとしても良い。また、ユーザは、操作パネル70の入力キーを用いて、親展印字データ等の各種印字データの印字処理の実行を許可するためのパスワードを入力する。
【0041】
画像処理回路48は、LAN等の通信回線N10を介して接続された情報処理装置であるクライアントPC55から送信された印字データを印字出力可能に展開処理する機能を有する。画像処理回路48において、印字出力可能となるように展開処理された印字データは、画像メモリ44に一時的に記憶され、その後、画像形成部210に送信されて、当該画像形成部210で印字処理される。
【0042】
通信部50は、USBメモリ等の着脱可能な外部記憶機器30とメインCPU41とでデータ通信を実行する機能を有しており、外部記憶機器30が通信部50に接続されているか否かを検出部51で検出する。一方、無線通信部52は、無線LAN等であり、ノートPC等の無線通信可能な装置と無線通信を実行する。
【0043】
NIC53は、A Network Interface Cardの略称であり、クライアントPC55と通信回線N10を介してネットワーク通信を行うための拡張カード等の通信手段である。画像形成装置100は、当該NIC53を介して、クライアントPC55から転送される印刷ジョブに含まれる印字データに基づいて印字処理を実行するか、または原稿読取部110での原稿読取によって得た画像データをクライアントPC55に転送を実行する。
【0044】
NIC53には、通信回線N10を介して、LAN等のネットワーク環境において、NIC53には、通信回線N10を介して、後述の装置内外に設けられた各温度センサ57、58による検出温度を遠隔地で記録する管理サーバ56が接続されており、画像形成装置100と通信を行う。
【0045】
本実施の形態では、メインCPU41は、手差しトレイ254に内包された装置外温度センサ58で異常温度を検出するとNIC53を介して管理サーバ56宛に異常事態を通報する。また、通信回線N10には、複数のMFP等の画像形成装置が接続されており、本実施の形態の画像形成装置100と同様に管理サーバ56とデータ通信を行う。
【0046】
画像形成部210は、画像形成部側サブCPU60によって制御され、ヒータ21a、温度センサ23、画像形成部側ドライバ47、A/D変換器62を含む。温度センサ23は、定着ユニット217において加熱ローラ21の温度を検出して、温度データを当該サブCPU60に出力する。画像形成部側ドライバ47は、画像形成部側サブCPU60から出力された制御データに基づいて、定着ユニット217の加熱ローラ21に内蔵されたヒータ21aを駆動する。
【0047】
メインCPU41は、第1の復帰処理として、画像形成部側サブCPU60に所定のウォームアップコマンドを送信する。メインCPU41から所定のウォームアップコマンドを画像形成部側サブCPU60が受信すると、画像形成部側サブCPU60は、ヒータ21aに通電し、温度センサ23から得られる温度情報を基に、ヒータ21aによって加熱される加熱ローラ21の表面温度を所定の温度に一定化するように、ヒータ21aの通電を制御する。画像形成部側サブCPU60は、加熱ローラ21の表面が所定温度に到達した場合に、画像形成処理が可能な状態(定着レディ状態)に達したと判断して、メインCPU41に当該状態に達した旨を通知する。
【0048】
原稿読取部110は、原稿読取部側サブCPU61によって制御され、光源ランプ1a、光量センサ3、原稿読取部側ドライバ45、A/D変換器63を含む。光量センサ3は、光源ランプユニット1の光源ランプ1aが照射した光の光量を検出して、A/D変換器63を介して、検出した光量データを原稿読取部側サブCPU61に入力する。原稿読取部側ドライバ45は、原稿読取部側サブCPU61から出力された制御データに基づいて、光源ランプユニット1の光源ランプ1aを駆動する。
【0049】
メインCPU41は、第2の復帰処理として、原稿読取部側サブCPU61に所定のウォームアップコマンドを送信する。原稿読取部側サブCPU61は、メインCPU41より所定のウォームアップコマンドを受信すると、光源ランプ1aに通電し、光量センサ3から得られる光量情報を基に、光源ランプ1aの光量が所定の光量に一定化するように、光源ランプ1aの通電を制御する。原稿読取部側サブCPU61は、光源ランプ1aの光量が所定の光量に到達した場合に、原稿読取処理が可能な状態(読取レディ状態)に達したと判断して、メインCPU41に当該状態に達した旨を通知する。
【0050】
なお、画像形成部側サブCPU60、原稿読取部側サブCPU61には、上記以外にも、画像形成部210、原稿読取部110内にそれぞれ備わる不図示のモータ、クラッチ、ソレノイド、およびセンサ等の画像形成処理時、原稿読取処理時に動作する各種入出力機器が接続されている。画像形成部側サブCPU60、原稿読取部側サブCPU61は、画像形成処理時、原稿読取処理時に、それぞれ所定のタイミングで温度センサ23、光量センサ3の検出データを読み取り、当該検出データに応じて、画像形成部210、原稿読取部110内に備わるそれぞれのモータ等を駆動させる。
【0051】
また、本実施の形態では、画像形成装置100の装置内に装置内温度センサ57、装置外に装置外温度センサ58を設けており、これらの温度センサ57、58は、メインCPU41に接続している。装置外温度センサ58は、前述したように、手差トレイ254内に設けられている。
【0052】
装置内温度センサ57は、画像形成動作時においては、感光体や現像剤の温度特性を補償して良好な印字品位が得られるように、感光体表面電位や現像バイアス電位等の各種プロセス条件を制御するために利用する。そのため、装置内温度センサ57は、感光体ドラム222に近接して設けられる。一方、装置外温度センサ58は、画像形成装置100の外気温や手差しトレイ254の用紙載置面側の温度を測定する。なお、装置外温度センサ58の機能等の詳細な説明は、後述する。
【0053】
<コピーモードの場合>
次に、本実施の形態の画像形成装置100におけるコピーモード時の印字処理について説明する。なお、本文中で定義するコピーモードは、原稿の画像を読み取る画像読取処理、および読み取った画像を用紙上に複写する画像形成処理を含む。
【0054】
コピーモード時には、原稿読取部110の原稿台111上に複写対象の原稿が載置された後に、ユーザが操作パネル70の条件入力キーで所望の複写枚数や複写倍率等のデータを入力した後に、スタートキーを押下すると画像読取処理および画像形成処理を含むコピー動作が開始される。
【0055】
このようにして処理を開始する画像形成装置100は、まず、スタートキーが押されると、略同時に図示しないメイン駆動モータが始動し、各駆動ギヤが回転する。その後、給紙ローラ256が回転して用紙が給紙され、給紙された用紙は、搬送経路内をレジストローラ257まで搬送される。ここで、用紙は、感光体ドラム222上の画像先端部と同期を取るために一時停止し、用紙の先端部は、均一にレジストローラ257に押しつけられて用紙の先端位置の補正が行なわれる。
【0056】
原稿読取部110において、原稿読取中の画像情報は、光源ランプユニット1の光源ランプ1aが点灯し、走査ユニット113が所定の方向へ移動することによって、露光走査が開始され、光源ランプユニット1から照射された光の原稿画像面における反射光がミラー2a〜2cおよび光学レンズ115を経由してCCD116に受光され、画像情報として読み取られる。読み取られた画像情報は、画像処理回路48において、デジタルデータである画像データに変換される。デジタルデータに変換された画像データは、設定された条件で画像処理が施されて、画像メモリ44に一旦記憶された後に、LSU227に画像データとして供給される。
【0057】
所定速度で回転する感光体ドラム222の表面は、帯電ユニット223からの電荷の付与を受けて、所定の帯電電位に均一に帯電される。LSU227は、メインCPU41から供給された画像データに基づいて半導体レーザ11を駆動し、画像データによって変調されたレーザ光を所定速度で回転するポリゴンミラー12を介して、感光体ドラム222の表面に照射する。LSU227によるレーザ光の照射により、感光体ドラム222の表面には、画像データに基づく静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体ドラム222の表面には、現像ユニット224からトナーが供給されて、静電潜像がトナー像に顕像化される。
【0058】
被転写体となる用紙は、感光体ドラム222の回転に同期して回転を開始するレジストローラ256によって、感光体ドラム222と転写器25との間に搬送されて、転写器225によって感光体ドラム222の表面に担持されているトナー像の転写を受ける。感光体ドラム222の表面に残留したトナーは、紙粉等と共にクリーナ226によって除去されてから回収される。
【0059】
その後、トナー像の転写を受けた用紙は、定着ユニット217に搬送されて、加熱ローラ21と加圧ローラ22との間に有する定着ニップ部を通過する間に加熱・加圧処理を受ける。用紙上に転写したトナー像は、これら一対のローラ21、22による加熱および加圧によって溶融し、用紙表面に堅牢に定着する。転写されたトナー像が定着した用紙は、排紙ローラ219を介して後処理装置260に排出されて、コピーモード時の印字処理が終了する。
【0060】
<プリントモードの場合>
画像形成装置100は、リモートの情報処理装置であるクライアントPC55からNIC53を介して入力される印刷データや、通信部50を介して接続される外部記憶機器30に記憶されている画像データを画像形成部210が備えるLSU227に転送し、LSU227に画像データとして供給された後は、前述したコピーモード時と略同様に印字処理を実行する。
【0061】
次に、本実施の形態の画像形成装置に備わる手差しトレイの特徴部の構成について、図面を使用しながら詳細に説明する。図3は、本実施の形態の画像形成装置に備わる手差しトレイの要部の周辺の構成を示す概略図である。
【0062】
手差しトレイ254は、装置本体100a内の給紙トレイ251、252、253に収納不能な不定形サイズ用紙や表面コート紙等の利用頻度の少ない用紙や、PET樹脂等からなるフィルムシート等の記録媒体を画像形成装置100の画像形成部210に給紙するために使用される。手差しトレイ254に載置された用紙Pは、装置本体100a内に設けられた用紙取込機構280によって、装置本体100a内の不図示の用紙搬送路に供給される。
【0063】
本実施の形態では、図1に示すように、手差しトレイ254は、装置本体100aの一側面部に対して開閉自在に取り付けられており、ユーザの使用時に装置本体100aの外方に開放して、装置本体100aに対して傾斜支持されて、所望の用紙Pを載置できるように構成されている。
【0064】
手差しトレイ254は、支持軸262を介して、装置本体100aに設けられる手差しトレイ支持部100bに回動可能に支持されている。このように、手差しトレイ254は、手差しトレイ支持部100bに回動可能に支持されることによって、上述したように、装置本体100aに対して開閉自在となる。
【0065】
手差しトレイ支持部100bの頂部側には、手差しトレイ254が傾斜支持状態から水平支持状態となった際に、当該手差しトレイ254の表面に当接して支持する当接部100b1が形成されている。
【0066】
本実施の形態の手差しトレイ254には、所定の過熱温度に到達した際に、熱変形するバイメタルから形成される過熱温度検出部263が当該手差しトレイ254の長さ方向に沿って内包されている。当該過熱温度検出部263を構成するバイメタルは、例えば、鉄とニッケルの合金に、マンガン、クロム、銅等を添加して2種類の熱膨張率の異なる金属板を形成し、これらの金属板を冷間圧延で貼り合わせることによって、形成される。
【0067】
前述したように、手差しトレイ254の先端側には、装置外温度センサ58が内包されており、画像形成装置100の外気温や手差しトレイ254の用紙載置面側の温度変化を検知する。
【0068】
それに対して、手差しトレイ254の基端側、換言すると、過熱温度検出部263の装置本体側に有する基端側には、装置本体側に固定して設けられている本体側係合部となる略カギ形状の第1係合部264と係合するように屈曲した形状で形成されたトレイ側係合部となる第2係合部263aが備わる。過熱温度検出部263の基端側に形成された第2係合部263aが装置本体100aに設けられている第1係合部264と係合することによって、手差しトレイ254が装置本体100aに対して傾斜支持されるようになる。
【0069】
このように、所定の過熱温度に到達した際に熱変形するバイメタルからなる過熱温度検出部263を手差しトレイ254の長さ方向の略全長に至って内包することによって、手差しトレイ254に載置された用紙類に類焼等の火災が発生した場合に、過熱温度検出部263が熱変形する。当該熱変形によって、過熱温度検出部263の基端側に形成された第2係合部263aが第1係合部264から抜脱されて、手差しトレイ254が傾斜支持状態から水平支持状態に切り換わる。このため、手差しトレイ254が用紙搬送性能の良好な状態となる傾斜支持状態としても、類焼等により手差しトレイ254に載置された用紙類に火災が発生した場合に、手差しトレイ254を自然消火可能な水平支持状態に切り換えることによって、当該火災の拡大を抑制しながら、消火可能となる。このような作用・効果をより顕著に奏するためには、過熱温度検出部263は、用紙Pと接触する載置面側となる手差しトレイ254の表側に含まれている方が用紙発火時の熱がより伝わり易くなるので、好適である。なお、本実施の形態における手差しトレイ254の鎮火作用の詳細については、後述する。
【0070】
一方、用紙取込機構280は、図3に示すように、手差しトレイ254に載置された用紙Pを装置本体100aの内部に備わる不図示の用紙搬送路に送り込むために、用紙Pを取り込むピックアップローラ281と、このピックアップローラ281によって取り込まれた用紙Pを1枚ずつ分離してから当該用紙搬送路に導入する一対の対峙するローラからなるサバキローラ282とを備える。
【0071】
ピックアップローラ281は、図3に示すように、ピックアップアーム283に回転可能に支持されている。このピックアップアーム283は、図4に示すように、所定方向移動手段となるソレノイド284によって、手差しトレイ254に載置された用紙Pの最上位面に対して、上下方向に離接するように移動可能となっている。
【0072】
すなわち、ピックアップローラ281の非作動時には、図4の点線に示すように、ソレノイド284によって、ピックアップアーム283が上昇して、ピックアップローラ281を用紙Pの最上位面から離間している状態(ホームポジション)に移動させる。それに対して、手差しトレイ254からの用紙搬送が開始されるピックアップローラ281の作動時には、図4の実線に示すように、ピックアップローラ281が用紙Pの最上位面と当接するように、ソレノイド284によって、ピックアップアーム283が下降する。
【0073】
ピックアップローラ281が用紙Pの最上位面と当接した後に、ピックアップローラ281は、駆動手段となる繰り出し給紙モータ285によって、手差しトレイ254上の用紙Pをサバキローラ282の方向に繰り出す方向に回転駆動する。これによって、ピックアップローラ281が必ず手差しトレイ254上の積載用紙Pの最上位面に当接して、ピックアップローラ281の回転駆動力で用紙Pを装置本体内に給紙するようになる。
【0074】
サバキローラ282は、装置本体100aの用紙搬送路の導入部側に設けられており、駆動手段となる繰り出し給紙モータ285が手差しトレイ254から送り込まれた用紙Pを装置本体100aに繰り出す方向に回転駆動することによって、ピックアップローラ281から取り込まれた用紙Pを1枚ずつ分離しながら用紙搬送路に供給する。なお、本実施の形態では、ピックアップローラ281およびサバキローラ282の駆動手段として、共通の繰り出し給紙モータ285が使用されているが、各ローラ281、282それぞれ別個の駆動手段を使用してもよい。
【0075】
次に、本実施の形態の画像形成装置の手差しトレイ上に載置された用紙に発生した火災を消火する動作について、図面を使用しながら説明する。図5は、本実施の形態の画像形成装置に備わる手差しトレイ上の用紙が発火した状態を示す図であり、図6は、本実施の形態の手差しトレイ中の過熱温度検出部が温度上昇により熱変形・屈曲して、第1係合部と第2係合部の係合が外れた状態を示す図であり、図7は、第2係合部が第1係合部から抜脱して、手差しトレイが傾斜支持状態から水平支持状態に切り換わった状態を示す図である。
【0076】
図5に示すように、手差しトレイ254から用紙Pを搬送中に、手差しトレイ254に載置された用紙Pがタバコ等の火元に起因する類焼の被害を受けて火災F1が発生した場合に、手差しトレイ254に内包された過熱温度検出部263は、所定の過熱温度に到達すると、図6に示すように、熱変形して湾曲するようになる。過熱温度検出部263の熱変形によって、当該過熱温度検出部263の基端側に有する第2係合部263aが装置本体100a側に固定して設けられる第1係合部264から抜脱する。
【0077】
過熱温度検出部263の基端側に設けた第2係合部263aが装置本体100aに設けた第1係合部264と係合して、装置本体100aに対して傾斜支持されていた手差しトレイ254は、第2係合部263aが第1係合部264から抜脱すると、手差しトレイ254の自重によって旋回し、図7の点線に示す傾斜支持状態から、図7の実線に示す水平支持状態に切り換わる。このように、手差しトレイ254上の用紙Pに火災が発生した場合に燃え広がり易い傾斜支持状態から、燃え広がり難い水平支持状態に、手差しトレイ254を切り換えることによって、当該火災の拡大を抑制しながら、自然消火が可能な状態にして、消火が促進されるようになる。なお、所定の過熱温度が検出されて、過熱温度検出部263が熱変形して、第2係合部263aが第1係合部264から抜脱しても、手差しトレイ254の自重によって旋回しないような手差しトレイ254の重量が不足する場合には、旋回可能となる重量にするために、手差しトレイ254の先端側に錘部材を設けることが好ましい。
【0078】
また、手差しトレイ254に発生した火災の鎮火性能を高めるために、図8の本実施の形態の手差しトレイ254を上から見た平面図に示すように、手差しトレイ254の過熱温度検出部263と接続するような熱伝導性を有する金属板等の熱伝導部材265が手差しトレイ254の広範囲に亘って内包させる構成としても良い。このように、連結部265aを介して、過熱温度検出部263と接続される熱伝導部材265を設けることによって、手差しトレイ254の用紙載置面の広範囲に亘って、手差しトレイ254上の用紙Pの火災等に起因する過熱温度の到達を効率良く過熱温度検出部263に伝達させるので、速やかに本実施の形態の手差しトレイ254に発生した火災の鎮火動作が実行されるようになる。
【0079】
さらに、手差しトレイ254は、前述したように、装置本体100aに設けられた支持軸262を中心に装置本体100aに対して開閉可能な構成となっている。すなわち、本実施の形態では、手差しトレイ254が装置本体100aに対して開状態の場合は、第2係合部263aが第1係合部264と係合することによって、手差しトレイ254が装置本体100aに対して傾斜支持状態となっている。
【0080】
一方、手差しトレイ254を不使用時に装置本体100aに対して閉状態の場合、すなわち、手差しトレイ254を手動で支持軸262を中心に回動させて、装置本体100aの側面側に向けて立設させる場合では、手差しトレイ254を装置本体側に折畳んだ閉状態の概略図である図9に示すように、第2係合部263aが第1係合部264から抜脱している状態となっている。このとき、手差しトレイ254の先端側は、装置本体100aの側壁側に形成されている略フック形状の手差しトレイロック部材100cに係合することによって固定されている。このため、手差しトレイ254の不使用時には、手差しトレイ254が立設状態に保持されるで、利用スペースを縮小可能にして、画像形成装置100の省スペース化が図れるようになる。
【0081】
また、手差しトレイ254上に火災が発生した際に、手差しトレイ254を傾斜支持常態から水平支持状態に切り換える本実施の形態の消火・鎮火作用を施しても、万が一、消火しない場合に備えて、図10に示すように、手差しトレイ254の用紙載置面側には、熱溶融性の樹脂から形成されるシート部材266を介して消火剤267を内包させてもよい。このように、手差しトレイ254に当該シート部材266を介して消火剤267を内包させると、熱で溶融するシート部材266が手差しトレイ254上に発生した火災の熱によって溶融して、消火剤267を手差しトレイ254の用紙載置面側の表面に露出させられるので、より確実に手差しトレイ254上の火災を消火出来る。
【0082】
なお、前述したように、本実施の態様では、手差しトレイ254の先端側には、手差しトレイ254に載置された用紙Pの温度変化を検知可能な装置外温度センサ58が備わっているが、当該装置外温度センサ58によって、手差しトレイ254上の用紙Pに火災が発生して所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、リモートのクライアントPC55等の他の外部装置に通知する機能を具備させても良い。このように、装置外温度センサ58によって、手差しトレイ254上の用紙Pに火災が発生したことを通信回線で接続されているクライアントPC55等の他の外部装置に通知することによって、当該外部装置のユーザ等が直接消火を実行可能となるので、発生した火災の被害を最小限に抑止されるようになる。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態では、手差しトレイ254は、手差しトレイ254の内部に所定の過熱温度に達すると熱変形するバイメタルからなる過熱温度検出部263が設けられている。そして、手差しトレイ254を使用する際に、過熱温度検出部263の基端側に形成された第2係合部263aが装置本体100aの側面部側に設けられた第1係合部264と係合することによって、手差しトレイ254が装置本体100aに対して傾斜支持される。
【0084】
このため、手差しトレイ254に載置された用紙Pに火災が発生した際に、過熱温度検出手段となる過熱温度検出部263が熱変形することによって、手差しトレイ254を傾斜支持状態から水平支持状態に切り換える支持状態切換手段となる第2係合部263aが第1係合部264から抜脱される。第2係合部263aが第1係合部264から抜脱されると、手差しトレイ254の自重で支持軸262を支点にして当該手差しトレイ254が回動することによって、手差しトレイ254の用紙搬送性能が良好な傾斜支持状態から自然消火可能な水平支持状態に切り換わる。このように、手差しトレイ254の支持状態が切り換わることによって、容易に当該支持状態切換機能を動作させることによる鎮火作用を施せられ、仮に装置本体100aに電源が供給されていないオフ状態のときでも、当該鎮火作用を施せるようになる。
【0085】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の画像形成装置の第2の実施の形態について、図面を使用しながら説明する。本実施の形態の画像形成装置の概略構成を示す全体構成図は、第1の実施の形態と同様であるので、かかる説明は、省略する。
【0086】
本実施の形態では、手差しトレイ254を傾斜支持状態から水平支持状態に切り換える支持状態切換手段の構成および動作が異なる。すなわち、第1の実施の形態では、上述したように、支持状態切換手段は、手差しトレイ254に載置された用紙Pに火災が発生した際に、過熱温度検出手段となる過熱温度検出部263が熱変形することによって、第2係合部263aが第1係合部264から抜脱されて、手差しトレイ254を傾斜支持状態から水平支持状態に切り換える。これに対して、本実施の形態では、支持状態切換手段は、手差しトレイ254に備わる装置外温度センサ58が手差しトレイ254上の用紙Pの温度が所定の過熱温度に到達したことを検出すると、装置本体側の第1係合部が過熱温度検出部の基端側に形成された第2係合部から抜脱するように駆動制御される。
【0087】
以下、本実施の形態の画像形成装置に備わる手差しトレイの特徴部の構成について、図面を使用しながら詳細に説明する。図11は、本発明の第2の実施の形態の画像形成装置に備わる手差しトレイの要部の周辺の構成を示す概略図であり、図12は、本実施の形態の手差しトレイが傾斜支持状態から水平支持状態に切り換わった状態を示す図である。
【0088】
本実施の形態の手差しトレイは、第1の実施の形態と同様に、手差しトレイ254は、図11に示すように、手差しトレイ254の内部に所定の過熱温度に達すると熱変形するバイメタルからなる過熱温度検出部263が設けられている。そして、手差しトレイ254を使用する際に、過熱温度検出部263の基端側に形成された第2係合部263aが装置本体100aの側面部側に設けられた第1係合部364と係合することによって、手差しトレイ254が装置本体100aに対して傾斜支持される。
【0089】
本実施の形態では、第1係合部364は、回動支点366によって回動可能に支持されており、装置本体100aに設けられた駆動手段となるソレノイド365によって回動駆動される。手差しトレイ254を使用中の通常時では、図11に示すように、第1係合部364は、弾性部材となるバネ367の弾性力によって、第2係合部263aに係合する方向に回動されて、第2係合部263aに対して押圧して、第2係合部263aと係合状態にある。
【0090】
これに対して、手差しトレイ254に載置された用紙Pに類焼等の火災が発生して、手差しトレイ254に備わる装置外温度センサ58が手差しトレイ254上の用紙Pの温度が所定の過熱温度に到達したことを検出した場合には、第2係合部263aに係合する第1係合部364は、ソレノイド365を抜脱駆動手段としてONさせて、第1係合部364をバネ367の弾性力に抗して回動させる。このため、第1係合部364と第2係合部263aとの係合が解除されて、第1係合部364が第2係合部263aから抜脱して、図12に示すように、手差しトレイ254の自重で支持軸262を支点にして、当該手差しトレイ254が回動して、手差しトレイ254が傾斜支持状態から自然消火可能な水平支持状態に切り換わる。
【0091】
次に、本実施の形態の画像形成装置の電気的構成について、図面を使用しながら説明する。図13は、本実施の形態の画像形成装置の電気的構成の概略を示すブロック図である。
【0092】
本実施の形態の画像形成装置200は、第1の実施の形態と同様に、当該装置全体の制御手段として、当該各機能部を制御するための制御プログラムを記憶しているROM42およびRAM43を備えたメインCPU41を備える。また、第1の実施の形態と同様に、メインCPU41には、画像メモリ44、画像処理回路48、HDD54、通信部50、検出部51、NIC53、入力操作手段となる操作パネル70、無線通信部52、画像形成部側サブCPU60、および原稿読取部側サブCPU61が接続され、メインCPU41は、これらの各機能部の動作を制御している。本実施の形態では、さらに、メインCPU41には、第1係合部364を第2係合部263aから抜脱させるための抜脱駆動手段となるソレノイド365を駆動するための抜脱駆動部370が接続されており、メインCPU41によって動作制御されている。なお、本実施の形態における画像形成装置200の電気的構成の他の機能部は、第1の実施の形態と同様であるので、かかる説明は、省略する。
【0093】
本実施の形態では、手差しトレイ254上の用紙Pに火災が発生して、装置外温度センサ58によって、当該用紙Pが所定の過熱温度に到達したことを検出されると、メインCPU41は、第1係合部364が第2係合部263aから抜脱するように、抜脱駆動部370を駆動制御する。このため、手差しトレイ254を装置本体100aに対して傾斜支持していた第1係合部364が第2係合部263aから抜脱すると、手差しトレイ254の自重で支持軸262を支点にして当該手差しトレイ254が回動することによって、手差しトレイ254の用紙搬送性能が良好な傾斜支持状態から自然消火可能な水平支持状態に切り換わる。
【0094】
前述したように、第1の実施の形態では、手差しトレイ254に載置された用紙Pに類焼等による火災が発生した際に、過熱温度検出部263が熱変形することによって、過熱温度検出部263の基端部に備わる第2係合部263aが第1係合部264から抜脱されて、手差しトレイ254が傾斜支持状態から水平支持状態に切り換わる。すなわち、手差しトレイ254に火災が発生した際に、画像形成装置100の装置全体の制御手段となるメインCPU41を介することなく、手差しトレイ254が傾斜支持状態から水平支持状態に切り換わる。このため、仮に装置本体100aに電源が供給されていないオフ状態のときでも、当該鎮火作用を施せる。しかしながら、手差しトレイ254に多量の用紙が積載されている場合では、過熱温度検出部263に用紙の類焼等による熱伝導が十分に行われないことによって、バイメタルからなる過熱温度検出部263の温度が十分上がらない場合も想定され、火災発生の検出が遅れる虞がある。
【0095】
これに対して、本実施の形態では、手差しトレイ254に多量の用紙Pを積載した場合でも、装置外温度センサ58が手差しトレイ254上の用紙Pが過熱温度に到達したことを検出したら、メインCPU41がソレノイド365を抜脱駆動させる抜脱駆動部370を駆動制御することによって、第1係合部364と第2係合部263aとの係合が解除して、手差しトレイ254を傾斜支持状態から水平支持状態に切り換える。このため、手差しトレイ254上の火災発生をより迅速かつ確実に検出するので、当該火災の消火を確実に実行可能とする。
【0096】
なお、装置外温度センサ58を手差しトレイ254に載置された用紙Pの上面側の温度変化を検出するように設けるようにすると、用紙上面への着火を更に速やかに検出することが出来るので、ソレノイド365の駆動開始までの時間が短縮されるようになるので好ましい。具体的には、本実施の形態における手差しトレイ254の変形例として、図14に示すように、手差しトレイ254に載置された用紙Pの上面側の温度変化を検知する温度センサとして、装置本体100aの側壁部100a1のうち、手差しトレイ254の載置面254aに対向する位置に赤外線検出センサ358を設けることとしてもよい。
【0097】
当該赤外線検出センサ358は、手差しトレイ254の載置面254aにセンサ検出面358aが向けられるように、設置されており、赤外線検出センサ358により手差しトレイ254の載置面254aに積載された用紙Pの上面側の温度上昇を検出することが出来る。メインCPU41は、赤外線検出センサ358によって異常な温度上昇を検出したら、ソレノイド365を駆動して第1係合部364と第2係合部263aの係合を抜脱・解除して、手差しトレイ254を傾斜支持状態から水平支持状態に切り換える。このように、手差しトレイ254上面の温度上昇を検出する装置外温度センサとなる赤外線検出センサ358を手差しトレイ254の上面に設けないで、装置本体100aの側壁側100a1に設けることによって、手差しトレイ254に載置された用紙Pの温度変化を検出する温度センサが手差しトレイ254からの用紙補給時の妨げになることを防止できる。
【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0099】
例えば、上記の各実施の形態では、画像形成装置として図1に示すようなMFPに本発明に係る手差しトレイを適用しているが、装置本体に対して手差しトレイを傾斜支持する画像形成装置であれば、卓上載置可能な小型プリンタ等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態の画像形成装置の概略構成を示す全体構成図である。
【図2】同実施の形態における画像形成装置の電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図3】同実施の形態の画像形成装置に備わる手差しトレイの要部の周辺の構成を示す概略図である。
【図4】同実施の形態の画像形成装置に備わる用紙取込機構の要部の周辺の構成を示す概略図である。
【図5】同実施の形態の画像形成装置に備わる手差しトレイ上の用紙が発火した状態を示す図である。
【図6】同実施の形態の手差しトレイ中の過熱温度検出部が温度上昇により熱変形・屈曲して、第1係合部と第2係合部の係合が外れた状態を示す図である。
【図7】同実施の形態の手差しトレイに備わる第2係合部が第1係合部から抜脱して、手差しトレイが傾斜支持状態から水平支持状態に切り換わった状態を示す図である。
【図8】同実施の形態の手差しトレイを上から見た平面図である。
【図9】同実施の形態の手差しトレイを装置本体側に折畳んだ閉状態の概略図である。
【図10】同実施の形態における手差しトレイの変形例の要部周辺の構成を示す概略図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態の画像形成装置の電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図12】同実施の形態の画像形成装置に備わる手差しトレイの要部の周辺の構成を示す概略図である。
【図13】同実施の形態の手差しトレイが傾斜支持状態から水平支持状態に切り換わった状態を示す図である。
【図14】同実施の形態における手差しトレイの変形例の要部周辺の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0101】
41 制御手段(メインCPU)
43 記憶手段(RAM)
54 記憶手段(HDD)
55 情報処理装置(クライアントPC)
58 装置外温度センサ
70 入力操作手段(操作パネル)
100 画像形成装置(MFP)
100a 装置本体
100a1 側壁部
210 画像形成部
254 手差しトレイ
254a 載置面
263 過熱温度検出手段(過熱温度検出部)
263a 支持状態切換手段(トレイ側係合部)
264 支持状態切換手段(本体側係合部)
265 熱伝導部材
266 シート部材
267 消火剤
284 抜脱駆動手段(ソレノイド)
358 赤外線検出センサ
N10 通信回線
P 記録媒体(用紙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に所望の記録媒体を供給する手差しトレイが前記装置本体に対して傾斜支持されている画像形成装置であって、
前記手差しトレイに載置された前記記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出する過熱温度検出手段と、
前記過熱温度検出手段によって前記記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、前記手差しトレイを傾斜支持状態から水平支持状態に切り換える支持状態切換手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記過熱温度検出手段は、前記記録媒体が前記所定の過熱温度に到達した際に前記手差しトレイに含まれるバイメタルが熱変形することによって、前記所定の過熱温度に到達したことを検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記手差しトレイは、前記過熱温度検出手段の基端側端部に設けたトレイ側係合部が前記装置本体に設けられた本体側係合部と係合することにより前記装置本体に対して傾斜支持されており、
前記支持状態切換手段は、前記過熱温度検出手段が熱変形した際に、前記トレイ側係合部が前記本体側係合部から抜脱されることにより、前記手差しトレイを前記傾斜支持状態から前記水平支持状態に切り換えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記手差しトレイには、前記過熱温度検出手段に接続される熱伝導性を有する熱伝導部材が前記手差しトレイの広範囲に亘って内包されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記手差しトレイは、前記装置本体に設けられた支持軸を中心に該装置本体対して開閉可能な構成であり、前記手差しトレイが前記装置本体に対して開状態の場合は、前記トレイ側係合部が前記本体側係合部と係合し、前記手差しトレイが前記装置本体に対して閉状態の場合は、前記トレイ側係合部が前記本体側係合部から抜脱していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記手差しトレイの前記記録媒体の載置面側には、熱溶融性のシート部材を介して消火剤が内包されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記手差しトレイには、前記手差しトレイに載置された前記記録媒体の温度変化を検知する温度センサが更に備わり、
前記装置本体には、前記温度センサにより前記記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、他の外部装置に通知する過熱温度到達通知手段が備わることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記支持状態切換手段には、前記温度センサにより前記記録媒体が所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、前記本体側係合部が前記トレイ側係合部から抜脱するように前記本体側係合部を駆動する抜脱駆動手段が備わることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記温度センサは、前記手差しトレイに載置された前記記録媒体の上面側の温度変化を検知し、前記温度センサによって、前記記録媒体の上面側の温度が前記所定の過熱温度に到達したことを検出した際に、前記抜脱駆動手段が駆動するように制御されることを特徴とする請求項7または8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記手差しトレイに載置された前記記録媒体の上面側の温度変化を検知する温度センサが前記装置本体の側壁部のうち前記手差しトレイの前記載置面に対向する位置に設けられることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−1361(P2009−1361A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162723(P2007−162723)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】