説明

画像形成装置

【課題】地震による揺れを検知してからセキュリティ行動を開始しても、突発的な地震に対してあまり有効ではない。
【解決手段】MFP1は、地震発生情報検知部32にて緊急地震速報を受信すると、異常時判断処理部34から印刷処理部22に対して画像の形成や印刷の停止を指示する。また、転送処理部36に対して保存済みのデータの転送を指示し、安全な場所にデータを退避させる。合わせて、操作パネル20に緊急地震速報を表示し、ユーザの対処行動を促す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリンタや複写機、ファクシミリ送受信機、これらの機能を備えた複合機、多機能周辺機器等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置は、例えばLAN(Local Area Network)等を通じて印刷用の文書データを受信したり、電話回線を通じてファクシミリの送信データを受信したりすると、そのデータに基づいて印刷を実行する。特に官公庁や企業の事業において画像形成装置が利用される場合、印刷用の文書データやファクシミリの送信データに各種の秘密情報(例えば個人情報、営業秘密等)が含まれていることが多い。そのため近年、画像形成装置で印刷した後の文書はもとより、印刷前の電子データについてもその秘密を保持するべきセキュリティ対象となっている。平常時の対策としては、例えば画像形成装置の設置場所に部外者の立ち入りを禁止したり、部外者による画像形成装置の操作を不能にしたりすることが行われているが、地震発生等の非常時においては平常時の対策だけでは不十分であり、別の対策が必要となる。
【0003】
このため従来、実際に画像形成装置が設置されている場所(例えばオフィスビル)で地震による振動を検知すると、装置内部に保持している内部情報をリムーバブルメディア等の取り外し可能な外部記憶装置に退避させる先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術によれば、地震による揺れが収まった後に部外者が画像形成装置の内部情報にアクセスしようとしても、既に内部情報は外部記憶装置に退避されているため、内部情報の漏洩が防止できると考えられる。一方、正規のユーザはパスワード等の認証によって外部記憶装置から内部情報を復元することができるため、地震終息後に改めて内部情報にアクセスしたり、そこから文書を印刷したりすることができると考えられる。
【特許文献1】特開2007−27682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記の先行技術はあくまで、地震発生現場での揺れを検知して初めて内部情報の退避を開始することから、その時点で既に地震による被害が画像形成装置にまで及んでいる可能性がある。すなわち、内部情報を外部記憶装置に退避させようとしても、その時点で退避機能(一部又は全部)が損なわれていたり、外部記憶装置に物理的な損傷が発生していたりすると、もはや内部情報の退避を行うことは不可能である。この場合、地震発生時のセキュリティ対策そのものが有効に機能せず、結果的に内部情報の漏洩を防止することができなくなるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、地震発生時のセキュリティ対策を確実に実行することができる技術の提供を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地震による本格的な揺れが発生する前にセキュリティ対策のための処理を完了させることで上記の課題を解決する。すなわち本発明の画像形成装置は、画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、画像形成手段により形成された画像を媒体に印刷する印刷手段と、地震動の予報又は警報に基づく地震発生情報を受信する情報受信手段と、情報受信手段により地震発生情報が受信されると、少なくとも画像形成手段による画像の形成又は印刷手段による画像の印刷の動作を停止させる停止処理手段とを備える。
【0007】
上記の「地震発生情報」は地震動の予報又は警報に基づく情報であり、各地で地震による揺れが起こり得ることを事前に報知するためのものである。この地震発生情報は、例えば気象に関する予報業務等を行う公的機関(例えば気象庁)や許可された事業者等により提供されるものであり、一般的に「緊急地震速報」と称される予報又は警報に基づくものである。
【0008】
本発明の画像形成装置は地震発生情報を受信すると、実際の揺れが発生する前に画像の形成又は印刷の動作を停止させることでセキュリティ対策を敢行する。すなわち、地震発生情報を受信した時点では、ほとんどの場合、画像形成装置の設置場所において実際の地震動(揺れ)は未だ発生していないので、画像形成装置に対して地震による被害が及ぶ前にその健全な機能を活かして停止の処理を確実に完了させることができる。このため、ユーザが画像形成装置に対して文書の印刷を要求した後であっても、その要求に基づく印刷は行われず、地震発生現場に秘密事項が記録された文書が取り残されてしまうことはない。
【0009】
また本発明の画像形成装置は、所定の通信回線を通じて外部機器から送信された画像データを受信する受信手段を備える。この場合、上記の停止処理手段は、情報受信手段により地震発生情報が受信されると、受信手段による画像データの受信の動作を停止させる。
【0010】
例えば、ネットワークや電話回線を通じて受信した画像データに基づいて画像の形成及び印刷が行われる場合、本発明では地震発生情報を受信すると、それ以上の画像データの受信を停止する。これにより、不用意に秘密情報を含む画像データが画像形成装置に対して送信されるのを防止することができる。
【0011】
また本発明の画像形成装置は、少なくとも画像データを含む情報を記憶する記憶手段と、情報受信手段により地震発生情報が受信されると、記憶手段に記憶された情報を他の記憶装置に転送する転送手段とをさらに備える。
【0012】
この場合、ネットワーク経由や電話回線経由で受信した画像データは記憶手段に記憶されるが、地震発生情報を受信すると、その画像データを他の記憶装置に転送することで、情報を安全に退避させることができる。また、このとき「他の記憶装置」を例えば遠隔地(地震による被害が及びにくい地域)に配置しておき、この記憶装置に対してネットワーク経由で画像データを転送すれば、地震終息後にそこから画像データを復元することができる。
【0013】
また本発明の画像形成装置は、上記のように転送手段により記憶手段に記憶された情報が他の記憶装置に転送された場合、記憶手段に記憶された情報を消去する記憶消去手段をさらに備えることが好ましい。これにより、秘密情報の漏洩を確実に防止することができる。
【0014】
本発明の画像形成装置は、転送手段により記憶手段に記憶された情報が他の記憶装置に転送された旨の報告を発行する報告発行手段をさらに備えることもできる。このとき発行された報告は、例えば画像データの送信元に提供してもよいし、画像形成装置の管理者に提供してもよい。これにより、送信元のユーザや管理者等がデータの転送先(行方)を確実に知ることができる。
【0015】
また本発明の画像形成装置は、通常時に使用者の操作に関する操作情報を表示する表示部と、情報受信手段により地震発生情報が受信された場合、操作情報に代えて地震動の発生に関する情報を表示部に表示させる情報表示手段とをさらに備えてもよい。
【0016】
この場合、表示部を通じてユーザに地震動の予報や警報等を周知させ、その後の対処を促すことができる。また、例えばユーザが文書を複写しようとしていた場合はその作業を中止させ、ユーザとともに文書を安全な場所へ退避させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実際の地震動(揺れ)が発生する前にセキュリティ対策を敢行することができる。このため、地震による揺れを感知してから対策を開始するよりも確実性が高く、より強固に秘密情報の漏洩を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
〔基本構成〕
図1は、画像形成装置の一例である多機能周辺機器1(以下、「MFP」と呼称する。)を左前上方から示す斜視図である。図1には操作者に相対するMFP1の正面と、このMFP1の左側面とが見えている。MFP1の装置本体2は例えば胴内排紙型であり、その内側には排紙トレイ15が形成されている。
【0020】
装置本体2の上側には原稿送り装置(ADF)8が搭載されている。MFP1を複写機やファクシミリ、ネットワークスキャナとして利用するときには、この原稿送り装置8から原稿を搬送し、その画像面は光学式のスキャナ部(画像読取部)9にて光学的に読み取られる。
【0021】
スキャナ部9の手前側には操作パネル20が設置されている。この操作パネル20には、ユーザの各種操作に供される複数の操作キーやスイッチが配置されている他、各種の情報を表示する表示画面21が設けられている。表示画面21はタッチパネル式の入力デバイスを兼用しており、その表示画面21には操作用のメニューボタン等の画像が表示されるものとなっている。
【0022】
装置本体2の下部にはフロントローディング式の用紙供給装置3が配置されている。詳しくは、この供給装置3には、装置本体2の高さ方向に沿って上下2段の給紙カセット4が備えられている。各カセット4はいずれも装置本体2に対して着脱可能に構成されており、MFP1の正面側に向けて引き出されることによりカセット4の内部が外部に対して開かれる一方、MFP1の背面側に向けて押し込まれることによりその内部が閉じられる。
【0023】
図2は、MFP1の内部構造を概略的に示す図である。なお、図中に実線で示された矢印は用紙の搬送経路及びその搬送方向を表している。各カセット4には用紙Pが積層状態で収容されており、用紙Pはカセット4から1枚ずつ分離されて図中の左方向に向けて送出される。
【0024】
供給装置3の左方には用紙搬送部6が配置されている。カセット4から送出された用紙Pは用紙搬送部6において、装置本体2の左側面に沿って上方に向けて縦搬送される。また、装置本体2の右側面には開閉式の手差しトレイ5が備えられており、この手差しトレイ5から供給された用紙も図中でみて装置本体2の右側から左方向に向けて搬送され、その後、上方に向けて縦搬送される。
【0025】
〔画像形成部(画像形成手段)、転写部(印刷手段)〕
装置本体2の内部には、用紙搬送方向で見て下流側にレジストローラ7、画像形成部10及び転写部11が順番に配置されている。画像形成部10の右方には光学部14が備えられており、この光学部14からは画像形成部10の感光体ドラムに向けてレーザ光が照射される。
【0026】
また用紙搬送方向でみて転写部11の下流側には、ローラ対19を有する定着部12、及び排出分岐部13が順番に配置されている。片面印刷を行う場合、定着部12から排出された用紙は排出分岐部13を経て排紙トレイ15に排出される。排出分岐部13と用紙搬送部6との間には両面印刷用ユニット16が配置されており、この両面印刷用ユニット16は定着部12から排出された用紙を用紙搬送部6に戻し、画像形成部10に向けて再び送出する。
【0027】
〔セキュリティ対策機能〕
以上がMFP1の基本的な構成(ハード上の構成)及び機能である。加えて本実施形態では、MFP1に地震発生時のセキュリティ対策を実行するための制御機能が備わっている。以下、MFP1のセキュリティ機能について説明する。
【0028】
図3は、MFP1の制御上の構成に関するブロック図である。ここでは便宜上、各種の構成要素をブロック単位に分けて示しているが、操作パネル20を除くほとんどの構成要素は既存のハードウェアリソース(例えばCPU、通信アダプタ等)を利用して実現することができるものである。以下、それぞれについて説明する。
【0029】
先ずMFP1の基本機能(原稿の読み取りやファックスの送受信、画像の形成、印刷)の制御に関する構成として、上記の操作パネル20が挙げられている他、印刷処理部22、保存部24、ファックス通信部28、ネットワーク通信部30等が挙げられている。このうち操作パネル20は、上記のようにユーザが行う操作入力を受け付けるものである。また印刷処理部22は、上記の画像形成部10で行われる画像形成の動作(潜像の形成や現像)や、転写部11での印刷の動作を制御する機能を有するものである。
【0030】
〔記憶手段〕
保存部24には、記憶媒体として例えば不揮発メモリ26が接続されている。保存部24は、不揮発メモリ26に対するデータの書き込み、読み出し及び消去の動作を管理する機能を有する。不揮発メモリ26にはデータベースを構築することが可能であり、その記憶領域には、例えばMFP1に登録されているアドレス帳(連絡先名、ファックス番号、メールアドレスの一覧等)や各種の設定(個人用の用紙サイズや濃度、印刷倍率、給紙段の指定等)が記憶されている。またMFP1をネットワークプリンタとして利用する場合、例えばユーザが使用するパーソナルコンピュータ(図示していない)から送信されてきた印刷用の画像データは不揮発メモリ26に蓄積される。この他にも、MFP1をファクシミリ送受信機として利用する場合、送信用の原稿を読み取った画像データや、送信元から受信した画像データが不揮発メモリ26に蓄積されるものとなっている。なお、ここでは不揮発メモリ26を例に挙げているが、記憶媒体としてハードディスク(磁気記録媒体)を用いてもよい。
【0031】
〔受信手段〕
ファックス通信部28は、例えばファックスモデム等のリソースを利用して電話回線に接続することができる。またネットワーク通信部30は、例えば汎用のネットワークアダプタ等のリソースを利用して既存のネットワーク(LAN)に接続することができる。これにより、上記のようにMFP1をファックス送受信機やネットワークプリンタとして利用したり、あるいはネットワークスキャナ、インターネットファックス等として利用したりすることができる。
【0032】
〔情報受信手段〕
さらにセキュリティ対策用の要素として、MFP1は地震発生情報検知部32、異常時判断処理部34及び転送処理部36を備えている。このうち地震発生情報検知部32は、例えばネットワーク通信部30を通じて緊急地震速報を受信する機能を有する。「緊急地震速報」は、公的機関(気象庁)が行う地震動の予報及び警報、あるいは許可された事業者が行う地震動の予報に基づいて提供されるサービス情報である。なお、ここではネットワーク通信部30を通じて緊急地震速報を受信する形態を例に挙げているが、例えば電話回線を通じて緊急地震速報を受信したり、専用の無線受信機を用いて受信したりする形態であってもよい。
【0033】
〔停止処理手段〕
地震発生情報検知部32で緊急地震速報を受信したことが検知されると、これを受けて異常時判断処理部34はセキュリティ対策に関する動作を具体的に指示する。例えば、異常時判断処理部34は印刷処理部22に対して画像形成及び印刷の動作を停止する指示を発行する。さらに異常時判断処理部34は、転送処理部36及び保存部24に対してデータの転送及び消去の指示を発行したり、ファックス通信部28に対して通信を停止する指示を発行したりする。またセキュリティ対策として、例えば操作パネル20に緊急地震速報を受信した旨が表示されたり、操作パネル20に表示されている操作用のメニューが無効化されたりする。なお、これらの処理については別のフローチャートを参照してさらに後述する。
【0034】
〔転送手段〕
転送処理部36は異常時判断処理部34からの指示に基づき、不揮発メモリ26に記憶されている電子データをネットワーク通信部30を通じて転送する。データの転送先は、例えばネットワークに接続されたファイルサーバ等の記憶装置であり、転送先の記憶装置は予め遠隔地(東京地方に対する大阪地方のように、地震による影響が及びにくい地域)に設置されていることが望ましい。
【0035】
〔地震発生情報の受信〕
図4は、地震発生情報検知部32が実行する情報検知処理の手順例を示すフローチャートである。MFP1の作動中、地震発生情報検知部32は例えばタイマ割込処理として図4の情報検知処理を実行している。以下、手順例に沿って説明する。
【0036】
ステップS100:地震発生情報検知部32は、上記の緊急地震速報に基づく地震発生情報を受信したか否かの確認を行う。特に地震発生情報を受信していなければ(No)、地震発生情報検知部32はひとまず情報検知処理を終了し、割り込み発生前の状態(例えばメインプログラム)に復帰する。これに対し、地震発生情報を受信したことを確認すると(Yes)、地震発生情報検知部32は次にステップS102を実行する。
【0037】
ステップS102:地震発生情報検知部32は、受信した地震発生情報を解析する。例えば、地震発生情報に地震動が到達するまでの時間(予測到達時間)や揺れの大きさ(予測震度)、揺れが継続する時間(予測揺れ時間)等の詳細情報が含まれている場合、それぞれの具体的な値を地震発生情報から算出する。地震発生情報にそこまでの詳細情報が含まれていない場合、地震発生情報検知部32は特に値を算出することなく次のステップS104に進む。
【0038】
〔地震動の発生に関する情報の表示(情報表示手段)〕
ステップS104:地震発生情報検知部32は、操作パネル20に対して情報表示依頼を発行する。具体的には、操作パネル20の表示ドライバ(図示していない)に対し、緊急地震速報の受信時に対応した情報の表示を依頼する。これを受けて表示ドライバは、それまで表示されていた操作パネル20のメニューボタン等を無効化するとともに、メニューボタンの画像に代えて例えば「緊急地震速報を受信しました」等のメッセージを表示させる。なお、先のステップS102で詳細情報を算出していた場合、その予測到達時間や予測震度、予測揺れ時間等を合わせて表示させてもよい。
【0039】
ステップS106:次に地震発生情報検知部32は、異常時判断処理部34に対して地震発生(緊急地震速報を受信した旨)を通知する。以上の手順を終えると、異常時判断処理部34は割り込み発生前の状態に復帰する。この場合、地震発生情報検知部32はそれ以降の割り込みを禁止し、重ねて情報検知処理を実行することなく待機状態となる。
【0040】
〔セキュリティ対策の発動〕
次に図5は、異常時判断処理部34が実行する異常時対策処理の手順例を示すフローチャートである。この異常時対策処理もまた、MFP1の作動中に例えばタイマ割込処理として定期的に実行されている。
【0041】
ステップS200:異常時判断処理部34は、地震発生情報検知部32から地震発生通知があったか否かを確認する。特に地震発生通知がされていなければ(No)、異常時判断処理部34は割り込み発生前の状態に復帰する。これに対し、地震発生通知がなされた場合(Yes)、異常時判断処理部34は次のステップS202以降に進む。
【0042】
〔画像形成及び印刷の停止〕
ステップS202:先ず異常時判断処理部34は、印刷停止処理を実行する。この定義済み処理では、異常時判断処理部34は印刷処理部22に対して画像形成及び印刷の停止を指示する。これにより、例えば画像形成部10において感光体ドラムの露光や潜像をトナーで現像する動作は行われなくなる。また、用紙Pが例えばレジストローラ7で待機していた場合、その用紙は転写部11に供給されずに停止したままとなり、給紙カセット4からの新たな給紙は行われなくなる。
【0043】
〔データ受信の停止〕
ステップS204:次に異常時判断処理部34は、通信停止処理を実行する。この定義済み処理では、異常時判断処理部34はファックス通信部28及びネットワーク通信部30に対してそれぞれ通信の停止を指示する。これにより、ファックス通信部28にて例えばファックスを受信していたとしても、その通信は遮断される。また、このとき途中まで受信していた受信データがあれば、合わせてそのデータの消去が行われる。同様に、ネットワーク通信部30にて印刷用の画像データを受信中であったとしても、その受信は中断され、途中までバッファリングされたデータの消去が行われる。この場合、ファックスの送信エラーが発生するため、送信元では通信が正常に完了しなかったことが明らかとなる。また、ユーザのパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」と略称)では印刷エラーが発生するため、ここでも同様に印刷が正常に完了しなかったことが明らかとなる。
【0044】
〔データの転送(転送手段)及び消去(記憶消去手段)〕
ステップS206:さらに異常時判断処理部34は、データ転送処理を実行する。この定義済み処理では、異常時判断処理部34は転送処理部36に対してデータの転送(退避)を指示する。これを受けて、転送処理部36は不揮発メモリ26に記憶(蓄積分も含む)されている各種のデータ(受信済みの画像データ、データベースに登録されているデータ等)の転送を開始する。データの転送作業は、実際に地震波が到達するまでの時間内に完了させる。
【0045】
ここでの転送手法は、例えば電子メールに添付する形態であってもよいし、ネットワーク通信による形態であってもよい。またデータの転送先は、既に述べたようにネットワークに接続されている他の記憶装置であってもよいし、他の画像形成装置(MFP1以外のMFP)であってもよい。また、合わせてこの処理では、異常時判断処理部34は保存部24に対し、転送済みのデータの消去を指示する。これにより、地震終息後のMFP1には重要なデータが何も残存しない状態となる。
【0046】
〔転送レポートの発行(報告発行手段)〕
ステップS208:続いて異常時判断処理部34は、レポート発行処理を実行する。この定義済み処理では、異常時判断処理部34は転送処理部36によるデータ転送時のログ、チェックサムの値等を収集し、転送されたデータに関するレポートを作成する。例えば、ユーザのパソコンから送信された画像データが印刷されずに転送された場合、その送信者であるユーザのパソコンに対して転送結果のレポートを通知する。レポートは、例えばテキストファイル形式やCSV形式によるものであってもよいし、音声ファイル形式によるものであってもよい。また異常時判断処理部34は、MFP1の管理者が保有する端末等に転送結果のレポート(転送されたデータ一覧)を通知する。
【0047】
以上の手順を実行すると、異常時判断処理部34は割り込み発生前の状態に復帰する。なお、復帰後に異常時判断処理部34はそれ以降の割り込みを禁止し、重ねて異常時対策処理を実行することなく待機状態となる。待機状態は、例えば地震終息後にMFP1の復旧が行われるまで継続する。MFP1に重大な損傷がない場合、復旧時に待機状態を解除(リセットスタート)すれば、MFP1を正常に起動させることができる。
【0048】
いずれにしても、地震発生時に以上のセキュリティ対策を実行することにより、本実施形態のMFP1には以下の有用性が認められる。
【0049】
(1)緊急地震速報を受信した場合、MFP1は直ちに画像形成及び印刷の動作を停止するため、ユーザや管理者等が現場から非難した場合であっても、秘密事項が記載された文書が地震発生現場に取り残されたままとなることはない。これにより、MFP1からの情報漏洩を確実に防止することができる。
【0050】
(2)また、たとえ通信中であってもデータ受信を中止するため、MFP1に秘密事項を含むデータが蓄積されることはない。このため、地震終息後にMFP1が盗難にあったとしても、そこから送信者の情報が漏洩するのを防止することができる。
【0051】
(3)一方、既に受信済みのデータや登録済みのデータは他所へ転送されるとともに消去されるため、上記(2)と同様に盗難による情報漏洩を確実に防止することができる。
【0052】
(4)上記(3)と合わせて、転送結果のレポートが送信者や管理者に通知されるため、地震終息後にデータの在処を確実にトレースすることができる(トレーサビリティの確保)。これにより、MFP1へのデータの復旧作業をより迅速かつ確実に行うことができる。
【0053】
(5)また、MFP1を操作しようとしていたユーザに対して、操作パネル20を通じて緊急地震速報を報知することができるため、その後のユーザの対処行動に寄与することができる。また、ユーザが原稿台や原稿送り装置8に原稿をセットすることを未然に思いとどまらせ、原稿を安全に持ち去る行動を促すことができる。合わせて操作パネル20による操作の受け付けを無効化することで、原稿の読み取り等を未然に止めさせることができる。
【0054】
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施可能である。例えば、データ転送処理(図5中のステップS206)では画像データやファックスによる受信データ、アドレス帳のデータだけでなく、MFP1の保守管理情報(印刷枚数のカウンタ情報、トナー残量情報等)を合わせて転送してもよい。これにより、さらなる情報漏洩の防止が可能である。
【0055】
図3に示される構成は、上記のように既存のハードウェアリソースを用いて実現してもよいし、別途専用のモジュールとしてMFP1に組み込んでもよい。ただし、本実施形態のように既存のリソースを活用する場合はソフトウェア上の書き換えだけで対応できるため、ハード的な改造が不要であるという利点(コスト低減効果)がある。
【0056】
一実施形態では、情報検知処理において操作パネル20に情報表示依頼を発行しているが、これを異常時対策処理の中で行ってもよい。
【0057】
その他、一実施形態では画像形成装置の例としてMFPを挙げているが、画像形成装置は複写機やプリンタ、スキャナ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】MFPを左前上方から示す斜視図である。
【図2】MFPの内部構造を概略的に示す図である。
【図3】MFPの制御上の構成に関するブロック図である。
【図4】情報検知処理の手順例を示すフローチャートである。
【図5】異常時対策処理の手順例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 MFP
3 用紙供給装置
4 給紙カセット
10 画像形成部
11 転写部
20 操作パネル
22 印刷処理部
24 保存部
26 不揮発メモリ
28 ファックス通信部
30 ネットワーク通信部
32 地震発生情報検知部
34 異常時判断処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により形成された画像を媒体に印刷する印刷手段と、
地震動の予報又は警報に基づく地震発生情報を受信する情報受信手段と、
前記情報受信手段により地震発生情報が受信されると、少なくとも前記画像形成手段による画像の形成又は前記印刷手段による画像の印刷の動作を停止させる停止処理手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
所定の通信回線を通じて外部機器から送信された前記画像データを受信する受信手段をさらに備え、
前記停止処理手段は、
前記情報受信手段により地震発生情報が受信されると、前記受信手段による前記画像データの受信の動作を停止させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
少なくとも前記画像データを含む情報を記憶する記憶手段と、
前記情報受信手段により地震発生情報が受信されると、前記記憶手段に記憶された情報を他の記憶装置に転送する転送手段とをさらに備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記転送手段により前記記憶手段に記憶された情報が他の記憶装置に転送された場合、前記記憶手段に記憶された情報を消去する記憶消去手段をさらに備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の画像形成装置において、
前記転送手段により前記記憶手段に記憶された情報が他の記憶装置に転送された旨の報告を発行する報告発行手段をさらに備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、
通常時に使用者の操作に関する操作情報を表示する表示部と、
前記情報受信手段により地震発生情報が受信された場合、前記操作情報に代えて地震動の発生に関する情報を前記表示部に表示させる情報表示手段とをさらに備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−171199(P2009−171199A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6792(P2008−6792)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】