説明

画像形成装置

【課題】泡を処理剤ないし定着剤として被記録材へ塗布する泡塗布手段を有する画像形成装置において、泡の供給不足や過多、余剰泡による染み出し、塗布装置内の別の部位への延展による不具合、処理液の浪費、被記録材への不要な付着、泡塗布むら等の問題を解消する。
【解決手段】インクジェット方式の画像形成装置は、被記録媒体に対して液体及びゲルのうち少なくとも一方を泡状にした泡を処理剤ないし定着剤として塗布する泡塗布装置200を備えている。泡塗布装置200は、泡生成手段205、207を有し、泡生成手段で生成された泡は延展部250を介して、塗布手段208の泡貯留部237に供給される。泡貯留部237には用紙100の搬送方向と直交する方向の供給幅を変更可能な一対の隔壁部材270a、271aが用紙幅に対応して同期移動可能となっている。泡貯留部237の泡高さを泡高さ検知センサ284により検知し、これに基づいて泡生成手段からの泡供給量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式を採用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、印刷装置、これらのうち1つを含む複合機等の画像形成装置に関し、詳しくは、滲み(フェザリング、ブリーディング等)を抑制し、高濃度で高彩度な画像形成を可能にするセット剤としての機能を有する泡状態になり得る液体(又はゲル又は両方)を微細な泡にして被記録媒体に塗布する画像形成装置に関する。
本発明は、捺染等のインクジェット技術、表面処理(インク浸透性改質剤、光沢材、コート材などの液体塗布)装置に応用することができる。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、記録液の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを用いて、被記録媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、又、媒体、記録媒体、転写材、記録紙等も同義で使用する)を搬送しながら、液滴を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる)を行うものがある。
なお、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を着弾させて画像形成を行う装置を意味する。
また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。
また、「記録液」とは、インクに限るものではなく、上記の意味での画像形成を行うことができる、吐出時に液滴化するものであれば良い。
【0003】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、色材を含む記録液(以下「インク」という)を液滴化して画像形成を行うために、液滴で形成されるドットがひげ状に乱れるフェザリング、異なる色のインク滴が隣接して用紙に打たれた場合に、各色が相互に混ざり合って色境界が不鮮明になるカラーブリード、発色(濃度)不足、裏写り、光沢性、定着性等の不具合が生じることがある。
また、印字後の紙上の液滴が乾くまでに時間がかかるという初期品質の問題に加え、耐水性、耐光性、擦過性、耐オゾンといった堅牢性に関わる問題を抱えている。
【0004】
従来から、特許文献1に記載されているように、インクと反応して滲み防止を促す前処理液を塗布ローラで塗布したり、特許文献2に記載されているように、前処理液を液体吐出ヘッドからミスト状に吐出させて塗布したりすることが行われている。
特許文献3には、インクの定着性を向上させる処理液はインク印字の前又は後に付与することが記載されており、前処理に限定されるものでなく、後処理を行う場合もある。
しかしながら、特許文献1〜3に記載のように、塗布ローラや液体吐出ヘッドで前処理液又は後処理液を吐布する方式では、塗布ムラが発生する(第1の課題)と共に、更に液体のために用紙上でインクと反応後の速乾性に問題があり、特に用紙にシワやカールが発生したり、撓んだりし易くなることから、ジャムが起こり易い(第2の課題)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−137378号公報
【特許文献2】特開2005−138502号公報
【特許文献3】特開2003−205673号公報
【特許文献4】特開2008−94055号公報
【特許文献5】特開平08−72227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、上記課題を解決するために、特願2007−178698号にて、処理液を泡状態にして塗布する技術を提案した。
「泡状態」とは液体中に気泡が大量に分散し、液体が圧縮性を帯びた状態のことを指す。液体やミスト状の処理液と比べて、泡状態にすることの長所は例えば以下の様なことが挙げられる。
(1)泡は空気を大量に含むため、微量液塗布が可能である。
(2)泡は固体に近いため、塗布してから削りとる等で塗布膜厚を容易に調整することができ、また、塗布手段から紙への塗布時に塗布手段からの剥離性が良いため、均一塗布が可能である。
(3)泡は紙の繊維に水分が浸透しにくいため、紙にシワやカールが発生しにくい。
【0007】
上記長所は、処理液の種類に依存せず、同様な効果が得られる。なお、該処理液は紙粉を抑える効果を持つことが望ましく、用紙の地肌色を変える効果があっても良い。
しかしながら、処理液を被記録媒体に泡で塗布する泡塗布装置においては、被記録媒体の幅に応じた泡供給量の増減や、塗布幅の制御を行わなければ、泡の供給不足や過多が生じる(第3の課題)。
塗布領域が記録材幅以上であると、被記録媒体の幅方向両端部より、塗布面とは反対側の面にまで余剰泡が染み出してしまう(第4の課題)。
不要な塗布領域に付着した処理液が、塗布装置内の別の部位へと延展してしまう(第5の課題)。
それら不要な泡の生成により、処理液の浪費となる(第6の課題)。
泡供給量を、被記録媒体幅に応じて制御しないことにより、泡供給量過多となった場合には、塗布装置内外に漏れ出し、装置内を汚損したり、被記録材への不要な付着を招いてしまう(第7の課題)。
また、泡供給量不足となった場合には、泡塗布むらを生じてしまう(第8の課題)。
【0008】
また、特許文献1から5に記載された発明は、全て次の課題を共通に抱えている。
これらの発明の構造においては、常に記録媒体の両面に処理液を塗布してしまう構造であるために、例えば片面だけの印刷時であったとしても、本来処理液を塗布する必要の無い印刷面とは反対側の面にまで処理液を塗布することになり、如何なる幅の記録媒体に対しても、塗布面の反対側に接するローラに付着している(紙がニップされる前に付着していた)処理剤がそのローラ表面に残存している間は裏面にも塗布してしまうが、徐々に紙裏面に転写され、少なくなると、紙の裏面に処理剤が塗布される濃度は徐々に低下してゆく。これはすなわち紙裏面の処理剤の塗布ムラを意味している。
このようなことになると、両面印刷時には裏面の処理剤の濃度が不均一なことによる画像不良や、紙の特性(カール発生状況、画像に対する処理剤の効果等)が不均一になるため、画像品質が著しく損なわれる問題が生じる(第9の課題)。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、上記各課題を悉く解消できる画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、被記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、被記録媒体又は被記録媒体に塗布するための中間部材に対して液体及びゲルのうち少なくとも一方を泡状にした泡を処理剤ないし定着剤として塗布する泡塗布手段を備え、前記泡塗布手段は、前記泡を生成する泡生成手段と、前記泡生成手段から供給された泡を被記録媒体又は前記中間部材に塗布する塗布手段と、前記塗布手段の塗布域内に形成され、前記泡生成手段から供給される泡を貯留する泡貯留部と、前記泡貯留部に貯留された泡量を検知する泡量検知手段と、を有し、前記泡量検知手段による泡量の情報に基づき、前記泡生成手段から供給される泡量を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の画像形成装置において、前記泡生成手段は、前記塗布手段へ泡を供給する際に被記録媒体の搬送方向と直交する被記録媒体幅方向に泡を延展する延展部を有していることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、前記泡生成手段から前記塗布手段へ供給される前記泡の、前記被記録媒体幅方向における供給幅を変更可能な供給幅可変手段を有し、前記泡貯留部に貯留する泡量は、前記供給幅可変手段の最小幅から最大幅にかけての間で所定量の範囲内になるように、前記泡生成手段から供給される泡量の指令値を決定する制御を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、前記泡生成手段から前記塗布手段へ供給される前記泡の、前記被記録媒体幅方向における塗布幅を変更可能な塗布幅可変手段を有し、前記泡貯留部に貯留する泡量は、前記塗布幅可変手段の最小幅から最大幅にかけての間で所定量の範囲内になるように、前記泡生成手段から供給される泡量の指令値を決定する制御を行うことを特徴とする。
請求項5記載の発明では、請求項3又は4記載の画像形成装置において、前記泡量検知手段は、前記泡貯留部の泡高さを非接触で検知する泡高さ検知手段と、前記泡高さ検知手段により検知された泡高さと、前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段の幅情報との関係から、前記泡生成手段から供給しようとする泡量を算出する泡量算出手段と、を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明では、請求項3又は4記載の画像形成装置において、前記泡貯留部の泡高さに応じて変位する泡高さ検知用板を有し、前記泡高さ検知手段は前記泡高さ検知用板の位置を前記泡高さとして検知することを特徴とする。
請求項7記載の発明では、請求項3〜6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段は、前記泡貯留部を前記被記録媒体幅方向に互いに逆向きに移動可能な一対の隔壁部材を有し、該一対の隔壁部材を所望の幅に固定した後、前記泡貯留部に所定量の泡が蓄積されたことを、前記泡量検知手段からの情報に基づき検知し、前記泡生成手段から供給される泡の供給量の指令値を決定するフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明では、請求項3〜6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段は、前記泡貯留部を前記被記録媒体幅方向に互いに逆向きに移動可能な一対の隔壁部材を有し、該一対の隔壁部材を所望の幅より狭い位置に固定した後、泡供給を開始し、徐々に広げながら所定の幅で前記一対の隔壁部材を固定し、前記泡貯留部に所定量の泡が蓄積されたことを、前記泡量検知手段からの情報に基づき検知し、前記泡生成手段から供給される泡の供給量の指令値を決定するフィードバック制御を行うことを特徴とする。
請求項9記載の発明では、請求項3〜6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記供給幅可変手段又は塗布幅可変手段は、前記泡貯留部を前記被記録媒体幅方向に互いに逆向きに移動可能な一対の隔壁部材を有し、該一対の隔壁部材を所望の幅より狭い位置に固定した後、泡供給を開始し、同時に前記泡量検知手段からの泡量の情報を取得しつつ、前記一対の隔壁部材を段階的に広げては僅かに狭くなる方向に戻し、最終的には所望の幅で前記一対の隔壁部材の位置を固定し、前記泡貯留部に所定量の泡が蓄積されたことを、前記泡量検知手段からの情報に基づき検知し、前記泡生成手段から供給される泡の供給量の指令値を決定するフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明では、請求項3〜6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記供給幅可変手段又は塗布幅可変手段は、前記泡貯留部を前記被記録媒体幅方向に互いに逆向きに移動可能な一対の隔壁部材を有し、印刷命令があり、画像形成する直前のステップにて、前記一対の隔壁部材内に貯留されている泡量を前記泡量検知手段から取得し、印刷命令に即した幅に前記一対の隔壁部材を移動させ、該幅の所望量に対する泡の過不足量を予測算出した後、前記一対の隔壁部材を移動させ、且つ、前記泡の過不足量算出の値に基づき前記泡生成手段から供給される泡の供給量の指令値を決定するフィードバック制御を行うことを特徴とする。
請求項11記載の発明では、請求項3〜10のいずれかに記載の画像形成装置において、前記泡貯留部にて貯留する泡の量について、前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段の幅が広いか狭いかにかかわらず略一定に供給するか、あるいは、幅が広い場合の方が幅が狭い場合よりも少なくなるように制御することを特徴とする。
請求項12記載の発明では、請求項3〜10のいずれかに記載の画像形成装置において、前記泡貯留部にて貯留する泡の量について、前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段の幅が広いか狭いかにかかわらず略一定に供給するか、あるいは、幅が広い場合の方が幅が狭い場合よりも多くなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、泡の供給が途切れることなく余裕を持って安定した泡供給が可能となる。また、泡の貯留量を検知し制御することにより、溢れることが無く、溢れによる装置近傍の汚損や、用紙の裏側への染み込みなどを防止することができる。
比較的泡の流動性が高い場合には、泡貯留部における泡の上部は自然に重力の作用でフラットになる(近づく)ため、シンプルな構造で泡高さを計測でき、非接触のため泡の内圧が高まらず、泡潰れも起こりにくく、泡貯留部の内圧力による漏れ出しも防止できる。
比較的泡の流動性が低く、自然状態では泡の上部が重力の作用だけではフラットになりにくい場合でも、泡高さ検知用板により均等に上から押さえつつフラットにしながら泡高さを検出するので精度の良い検出ができる。
また、泡高さ検知用板を用いることにより、泡の分布が不均一な状態であったとしても、上側から押さえつける力の作用により幅方向に均等に圧力が加わることで均一な分布となる効果も得ることができる。
本発明によれば、印刷処理動作中であっても刻々と消費される泡量を監視しつつ不足にすることなく供給する量を制御することが可能になる。
また、印刷命令次第で隔壁幅の急激な変化により泡高さが増減したとしても、その印刷命令による塗布領域に応じた泡量を算出して泡供給の指令値を決定するため、安定した泡の供給と泡の溢れを防ぐことができる。
【0017】
流動性の低い泡を泡貯留部へ供給する際に、初めから所望の隔壁幅の状態で供給を開始したとしても、満遍なく泡が均等に流れてくれない場合も想定されるため、それを防ぐためには初期には狭い幅の状態にしておき、泡の供給量が徐々に増え始めて泡高さがある程度高い状態を保ちながら隔壁幅を広げる動作を行えば、貯留部の底部は重力による作用で内圧が高まり横方向へ広がろうとする力が強まり、速やかに泡が均等に広がる作用が働く。
そのような力を利用し、隔壁幅は泡が溢れない程度に高まった状態で広げてゆくことで泡貯留部全体の分布が均等になる作用が生じ、安定した泡の供給が行えるとともに泡の溢れを防ぐことができる。
更に隔壁を僅かに戻す動作により隔壁に泡が付着した状態でひとたび広がれば泡が引っ張られながら拡幅し、その後また狭める方向に戻すことで隔壁への泡の付着量を増やし、再び広げる際に引っ張られる泡の量も多くすることにより、結果的には泡を速やかに泡貯留部全体に貯留させる効果が得られる。
連続した大量の印刷命令を受けた際に、先ずは現状の泡貯留部内に残存する泡量を認識するために、泡量検知手段より泡量検出を行い、その後泡量が不足している判断された場合には、その不足に応じた分泡の追加量を先ず予測算出し、その後隔壁幅を印刷命令に則した幅に設定した後泡量検出手段からの刻々と消費されていく泡量をフィードバック制御により補充していくことで、安定した泡の供給を行うことが可能となる。
最大隔壁幅の状態での泡貯留部内に供給する泡量が最大泡貯留量限界を超えてしまうと、最大隔壁幅の状態から最小隔壁幅の状態に幅縮小したときに、貯留限界を超えてしまい、泡が溢れてしまう可能性があるのに対し、最大隔壁幅の状態での泡貯留部内に供給する泡量を最大泡貯留量限界を超えないように制御することで、最小隔壁幅の状態にしたときでも、泡が溢れることなく貯留することができるため、安定した泡の供給が可能となる。
更には、隔壁幅を変える際に突発的な泡の溢れを引き起こすことなく貯留することができるため、安定した泡の供給が可能となる。
最大隔壁幅の状態へ拡幅したときでも、泡の貯留分布がところどころで枯渇することなく満たされるようにすることができるため、安定した泡の供給が可能となる。
更には、隔壁幅を変える際に突発的な泡の分布が途切れて枯渇してしまうことなく貯留することができるため、安定した泡の供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図2】泡塗布装置の塗布手段の構成を示す図で、(a)は左側面図、(b)は上側面図である。
【図3】泡生成手段の要部を示す図である。
【図4】一対の隔壁部材を示す斜視図である。
【図5】隔壁部材が最大幅に設定された場合の塗布手段の上側面図である。
【図6】隔壁部材が最大幅に設定された状態での泡の供給状態を示す左側面図である。
【図7】隔壁部材が最小幅に設定された場合の塗布手段の上側面図である。
【図8】隔壁部材が最小幅に設定された状態での泡の供給状態を示す左側面図である。
【図9】泡貯留部におけるフラップによる泡のこぼれ防止機能及び泡高さ検知用板を用いた泡高さの検知状態を示す図である。
【図10】泡貯留部における泡高さを泡高さ検知用板を用いずに直接検知する状態を示す図である。
【図11】泡貯留部における密閉手段(フラップ)が無い場合の泡のこぼれ現象を説明する図である。
【図12】処理剤塗布制御のフローチャートである。
【図13】Max.幅×長さ対応処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図14】サイズA幅×長さ対応処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図15】サイズN幅×長さ対応処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図16】Min.幅×長さ対応処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図17】泡量制御設定状態を示す図で、(a)は隔壁を最大幅に設定したときの左側面図、(b)は隔壁を最小幅に設定したときの左側面図である。
【図18】隔壁幅に対応した泡供給制限制御におけるセンサ検知距離の設定値を示すグラフである。
【図19】隔壁幅情報とセンサ検知距離情報とに基づく、泡貯留制限値までの泡の追加量(高さ)を求めるテーブルデータの特性図である。
【図20】他の実施形態における、泡供給初期から完了までの隔壁幅制御の状況を示す図で、(a)は塗布手段の左側面図、(b)はタイミングチャートである。
【図21】さらに他の実施形態における、泡供給初期から完了までの隔壁幅制御の状況を示す図で、(a)は塗布手段の左側面図、(b)はタイミングチャートである。
【図22】システム制御ブロック図である。
【図23】隔壁幅を最大から最小に狭めたときの泡の貯留状態を示す図である。
【図24】最大安全泡貯留量と、隔壁幅可変範囲における安全泡貯留量との関係を示すグラフである。
【図25】隔壁幅を最小から最大に拡げたときの泡の貯留状態を示す図である。
【図26】最小安全泡貯留量と、隔壁幅可変範囲における安全泡貯留量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る泡塗布手段としての泡塗布装置を含む画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成図である。
この画像形成装置は、被記録媒体である用紙100に液滴を吐出して画像を形成する画像形成手段としての記録ヘッドユニット101と、用紙100を搬送するベルト搬送装置102と、用紙100を収容する給紙トレイ103と、画像が形成された用紙100が排紙される排紙トレイ104と、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向上流側で被塗布部材である用紙100に泡状体を塗布する泡塗布手段としての泡塗布装置200とを備えている。
【0020】
記録ヘッドユニット101は、液滴を吐出する複数のノズルを用紙幅相当分の長さに配列したノズル列を有するライン型液体吐出ヘッドから構成され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の記録液としてのインク滴を吐出する記録ヘッド101y、101m、101c、101kを備えている。なお、シリアル型画像形成装置として記録ヘッドをキャリッジに搭載する構成とすることもできる。
ベルト搬送装置102は、無端状ベルトである搬送ベルト102aが搬送ローラ121とテンションローラ122との間に掛け渡されて周回するように構成されている。搬送ベルト102aに対する用紙100の保持は、例えば静電吸着、空気の吸引による吸着などを行う構成とすることやその他の公知の搬送手段を用いることができる。
給紙トレイ103に収容された用紙100はピックアップローラ131で1枚ずつ分離されて搬送ローラ対132によって給紙されて搬送ローラ対133、レジストローラ対134によって搬送路135を介して搬送され、泡塗布装置200によって泡塗布が行われた後、ベルト搬送装置102上に送り込まれて保持される。
ベルト搬送装置102で搬送されながらヘッドユニット101から各色の液滴が吐出されて、泡が塗布された用紙100上に画像が形成され、その後用紙100は排紙トレイ104に排出される。
【0021】
泡塗布装置200は、泡状態にすることが可能な液体又はゲル若しくは液体及びゲル(以下、これらを「処理液」又は「セット剤」と総称する)201を収容した容器202と、この容器202から処理液201を圧送するポンプ203と、ポンプ203で供給路204を介して供給された処理液201から泡210aを生成する、泡生成手段の一部をなす第1泡生成部205と、第1泡生成部205から泡210aを送る経路である泡供給経路206と、泡供給経路206で搬送される泡210aを複数回せん断して小さな泡(小泡)210(b、c、d)を生成する、泡生成手段の一部をなす第2泡生成部207と、泡210を用紙100に塗布する塗布手段としての泡塗布部208と、泡塗布部208へ泡を供給する際に、泡を被記録媒体の搬送方向と直交する幅方向に延展する延展部250等を備えている。
第2泡生成部207には、第1泡生成部205で生成された泡210aをせん断する網状の泡微細化部材241a、241b、241cが配置されており、泡塗布部208へ向かってこれらの網目は段階的に細かく設定されている。泡210aはこれらの泡微細化部材241a、241b、241cを通過する毎にせん断され、通過後は表面張力により小径の泡となる。この小泡化(微細化)は段階的になされる。図3では泡微細化部材241a、241b、241cで示している。
延展部250は、図3に示すように、所定の体積をもつマニホールド部251と、スリット状の出口252を有している。
なお、当図では便宜的に延展部隔膜260は省略している。
【0022】
ここで、「泡」とは、液体がその中に空気などの気体を含んで丸くなったものであり、気体を包む液体の表面張力により形作られ、ある時間立体的形状を保持できるものをいう。以下、「泡状体」ともいう。
このような形状保持性を有する泡としては、かさ密度0.05g/cm3以下であり、泡径の分布範囲が10μm〜1mm、平均泡径が100μm以下であることが望ましい。なお、泡は単体では丸く形成されるが、複数結合すると表面張力により個々の泡の形状は多面体形状をとる。
このように形成された「泡」は液体ではなく半固体となり、流動性等において固体に近い物性を示す。
【0023】
図3の右方向から微細化泡が延展部250へ供給される。パイプ経路である泡供給経路206で供給された泡はマニホールド部251で延展(拡散)され、出口252を通過して泡塗布部208へと供給される。
ここで、泡状態になり得る処理液201は、用紙100の表面に塗布することで用紙100の表面を改質する改質材である。例えば、処理液201は、予め用紙100(前述したように材質としての紙に限定されない。)にムラなく塗布しておくことで、インクの水分を速やかに用紙100に浸透させると共に色成分を増粘させ、更には乾燥も早めることによって滲み(フェザリング、ブリーディング等)や裏抜けを防止し、生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)を上げることを可能にする定着剤(セット剤)である。
この処理液201は、組成的には、例えば界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれか、若しくはこれらを2種類以上混合させたもの)に対して、水分の浸透を促進するセルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース等)とタルク微粉体のような基剤を加えた溶液等を挙げることができる。更に微粒子を含有することもできる。
【0024】
図1に示すように、第1泡生成部205は、泡生成容器220内の処理液201に対し、高圧空気供給部221から高圧空気を、高圧空気供給路223を介して供給することによって、泡210を生成する。
泡生成容器220内で泡210が生成されて充満することにより、その圧力によって泡供給経路206を介して泡塗布部208に向けて供給される。なお、泡生成中に処理液201を供給する供給路204を通じて泡210や処理液201が逆流しないようにポンプ203が供給路204を閉じるようにしている。
泡延展部250の出口252から供給された小泡210dは、塗布手段(泡塗布部208)を構成する塗布ローラ232と泡搬送ローラ233との間の泡貯留部237に図示のように貯留される。
【0025】
塗布ローラ232の代わりに多孔質の弾性表層を有する泡生成塗布ローラ234に置き換えてもよい。以下にその違いを説明する。
塗布ローラ232が泡貯留部237の泡を加圧ローラ235の加圧によりそのままの泡の状態で用紙100へ塗布するのに対し、泡生成塗布ローラ234は独立気泡、連続気泡を問わず毛管力を有する弾性体材料からなる表層が泡貯留部237の泡に接触すると、既に泡化している泡の処理剤であっても、ローラ表層のマイクロセルなどの毛管力により僅かに吸い込まれた後に再度加圧ローラ235により押し出されるが、元の泡貯留部237の泡を僅かに吸い込んだ後ローラ気泡内に閉じ込められた少量の気泡の処理剤成分は新たな更に細かな泡となって分割されるいわゆる泡のせん断効果で更なる細かい気泡を生成する作用がある。
したがって、この泡生成塗布ローラの場合には、狙いの泡塗布領域(幅)よりも僅かに広がった領域まで泡が生成されるため、用紙100への塗布範囲も僅かながら広がるが、泡自体の細かさは前述のメカニズムの通り細かくなることが期待される。
【0026】
泡貯留部237には、図1、2に示すように、搬送路の両端側(用紙の搬送方向と直交するローラ軸方向又は被記録媒体幅方向の両端側)に備えた、1対の隔壁部材としての前部隔壁270aと後部隔壁271aとがあって、夫々には搬送路の幅方向中心に左右対称のリードを備えたリードスクリュ272が貫通し、その回転に応じて幅方向に互いが逆の方向に移動する構造になっている。
リードスクリュ272を駆動する方式は、図示の通り、リードスクリュ272端部の歯車273と、これに噛合うピニオン274とそれを回転させるモータ275とから構成されるネジ送り方式である。
モータ275の種類は、所望の回転角度を精度良く回転させられるステッピングモータを用いるのが適当であるが、同様に回転角度指令値に応じて精度が確保される駆動源であればこれに限らずともよい。
【0027】
図2(b)に示すように、最大幅近傍まで前部隔壁270aと後部隔壁271aとが広がった時に、後部隔壁271aの外側に接するように、マイクロスイッチからなるホームポジションセンサ(以下「HPセンサ」という)276が設けられており、モータ275の初期位置を検出するためのイニシャライズ動作用の絶対位置を検出するセンサとして用いられる。
図1及び図4に示すように、前部隔壁270a及び後部隔壁271aの泡搬送ローラ233と加圧ローラ235とに接する部位は、夫々のローラ外形に倣う円弧形状をしている。更には摺動特性(摩擦係数低減)を確保するためにこの部位にはテフロン(登録商標)、高密度ポリエチレンなどを貼り付けたり、又はシール性を確保するためにオーリング機能を持たせた断面形状の弾性材料を用いることにより、泡搬送ローラ233と加圧ローラ235との摺動による磨耗を防ぎつつ、泡の貯留を確実に保つことができるようになる。
【0028】
図4に示すように、前部隔壁270aと後部隔壁271aには、夫々出口252の内部にまで延長された前部挿入部270bと、後部挿入部271bが設けられている。そして、その幅方向両外側に内接し、更に泡供給経路206の端部としての供給口206aとの間に、ゴムやエラストマ等弾性変形する材質からなる、漏斗状の延展部隔膜260が設けられている(図1、図2(b)参照)。
これにより前部隔壁270aと、後部隔壁271aの設定されるいかなる幅寸法においても閉塞された空間を保つ構造と成っており、少なくとも前部隔壁270aと、後部隔壁271aの間に挟まれた領域の泡貯留部237から外側の領域へは小泡210dはこぼれ出さないようにしている。
【0029】
図4に示すように、前部隔壁270aと、後部隔壁271aの幅方向内側には夫々第1のフラップ(サイドフラップ)280aがヒンジ280bで、第2のフラップ(サイドフラップ)281aがヒンジ281bで上下方向(隔壁部材の高さ方向)に揺動可能に設けられている。
泡貯留部237の幅方向中央部において、出口252の上面には、第1、2のフラップに対してその上方で直交する方向に延びる第3のフラップ(センターフラップ)282aがヒンジ282bで上下方向に揺動可能に設けられている。
これらのフラップは、泡貯留部237における一対の隔壁部材(前部隔壁270aと後部隔壁271a)で囲まれた領域を閉空間状態とする密閉手段を構成している。
この構成により、泡貯留部237の上側からも外側の領域へは小泡210dはこぼれ出さないようにしている。
なお、図4では、固定隔壁238及び後述する清掃ブレード236は省略している。
【0030】
この3枚のフラップの幅寸法には以下の特徴がある。
図2(b)に示すように、第3のフラップ282aの幅寸法は100mmになっており、丁度このサイズは画像形成装置にて搬送される最小用紙幅に等しい。
第3のフラップ282aの幅寸法は、第1のフラップ280aと第2のフラップ281aが最小用紙幅に設定されたときの内側寸法と同じで、且つ同じ位置になる様に配置されている。
第1のフラップ280aと第2のフラップ281aは、図1等で示すように下方に開口した断面コ字形状を有している(図4では省略)。また、これらのフラップは、ヒンジへの取り付け位置が互いに上下方向に若干ずれており、最小用紙幅に設定されるときはいずれか一方が他方に乗り上げるように寸法設定がなされている。
第1のフラップ280aと第2のフラップ281aは若干下方へ垂れ下がるようにその下限位置が設定されている。
第3のフラップ282aは自重で第1のフラップ280aと第2のフラップ281aを押圧する。
【0031】
第1のフラップ280aの幅寸法と、第2のフラップ281aの幅寸法も100mmになっており、これらのフラップと、第3のフラップ282aとが上下方向に三重に重なるようになっている。これにより、前部隔壁270aと後部隔壁271aとの内寸が最小幅サイズ(100mm)に設定されてもフラップ間の干渉は生じない。
前部隔壁270aと、後部隔壁271aの幅寸法を最大用紙幅対応の内側寸法297mmにすると、それに伴って第1のフラップ280aと第2のフラップ281aも互いに広げられるが、先述の通り夫々の寸法は共に100mmになっているため、第3のフラップ282aとは夫々1.5mm分重なった部分が設けられ、これにより泡の漏れ出しを防ぐ効果が得られるようになっている。
【0032】
前部隔壁270aと、後部隔壁271aの幅寸法を最大用紙幅対応の内側寸法297mmに設定したときの上側面図を図5に示す。その状態で泡貯留部237に溜まった小泡210dの3段階の状態を左側面図として図6に個々に示す。
図6(a)は泡が少量の状態を、図6(b)は泡が泡貯留部237に満たされた直後の状態を、図6(c)は更に泡が供給されて溢れ出す直前の状態を示している。
泡が増量してくると、第1のフラップと第2のフラップはその圧力で押し上げられ、上方に変位する。
前部隔壁270aと、後部隔壁271aの幅寸法を最小用紙幅対応の内側寸法100mmに設定したときの上側面図を図7に示す。その状態で泡貯留部237に溜まった小泡210dの3段階の状態を左側面図として図8に個々に示す。
図8(a)は泡が少量の状態を、図8(b)は泡が泡貯留部237に満たされた直後の状態を、図8(c)は更に泡が供給されて溢れ出す直前の状態を示している。
【0033】
これらの3つの状態で泡の接触した反発力を利用して変位する泡高さ検知用板としての第3のフラップ282aの天面の位置を、泡高さ検知手段としての泡高さ検知センサ284で非接触で検出するようになっている。
泡高さ検知センサ284により検知された泡高さと、一対の前部隔壁と後部隔壁の幅情報との関係から、泡量算出手段(後述する制御手段としてのCPU)により泡生成手段から供給しようとする泡量を算出する。
泡高さ検知センサ284と、前記泡量算出手段とにより泡量検知手段が構成される。
泡量検知手段は、例えば、前部隔壁と後部隔壁の幅情報からこれに対応する泡貯留部の底面積を予めメモリに記憶されたテーブルから抽出し、この値と泡高さ検知センサ284により検出された泡高さとから泡貯留部の泡量(体積)を算出する。
【0034】
このように、塗布ローラ232と泡搬送ローラ233との間の泡貯留部237に貯留された小泡210dの貯留量に応じてヒンジ282bを中心に、貯留された泡による押しのける力(接触圧力)で第3のフラップを揺動させ、その変位量を、非接触方式(光学方式の反射型)の泡高さ検知センサ284を用いて泡量を検知する方式の詳細を図9に示す。
図9(a)は、泡貯留部の泡がフラップに接しておらず、泡少量状態であることを、泡高さ検知センサ284を用いて第3のフラップの位置により検出している状態を示している。
図9(b)は、泡貯留部の泡が第1〜3のフラップを押し上げ、泡が充填状態であることを、泡高さ検知センサ284を用いて第3のフラップの位置により検出している状態を示している。
【0035】
図10に示すように、泡高さ検知センサ284により泡貯留部の最上部の泡の位置を直接検出するようにしてもよい。
図10(a)は、泡貯留部の充填初期の泡少量状態を泡高さ検知センサ284を用いて検出している状態を示している。
図10(b)は、泡貯留部の充填状態を泡高さ検知センサ284を用いて検出している状態を示している。
【0036】
第3のフラップ282aは上記3段階の状態のいずれにおいても第1のフラップ280aと第2のフラップ281aを上側からその自重で押さえ付けており、これにより泡の増加による第1のフラップと第2のフラップの急な上昇による泡の漏れが防止されるとともに、ローラ軸方向への泡の均一拡散(延展)が促進される。すなわち、第3のフラップによる第1のフラップ及び第2のフラップを含めた押圧作用により、供給口206aから供給される泡をローラ軸方向(被記録媒体幅方向)に均す機能が得られる。
供給口206aは泡供給経路206と延展部250との接続部であり、その幅(径)は、前部隔壁270aと、後部隔壁271aの可動範囲の最小幅よりも狭い。これにより、泡の流動が隅々に広がるため安定した泡の分布機能が得られ、安定した泡の供給を行うことができる。
【0037】
図1に示すように、前部隔壁と後部隔壁の用紙搬送方向下流側端部に沿うように、断面円弧状の清掃ブレード236が設けられている。清掃ブレード236はローラ軸方向全体に亘って延びる長さを有し、泡塗布部208の図示しない側板に支持されている。清掃ブレード236の一端(下端)は塗布ローラ232の表面にカウンタ方向で当接しており、塗布ローラ232上の残留物を除去する。
上記のように、清掃ブレード236はローラ軸方向に延びる長さを有しているので、泡貯留部237における第1のフラップ及び第2のフラップでカバーできない部分もカバーでき、泡の漏れ出し防止に寄与している。
また、前部隔壁と後部隔壁の用紙搬送方向上流側端部に沿うように、断面アングル形状の固定隔壁238が設けられている。固定隔壁238は、ローラ軸方向全体に亘って延びる長さを有し、泡塗布部208の図示しない側板に支持されている。固定隔壁238の一端(下端)は泡搬送ローラ233の表面に当接しており、泡貯留部237の泡の漏洩を防いでいる。
固定隔壁238は、延展部250の出口252の下面に支持してもよく、出口252の下面に一体に形成してもよい。
【0038】
上記のように、泡貯留部237の天面に第3のフラップ282aを設けて、第1のフラップ280aと第2のフラップ281aを上側から押さえ付けることにより、泡貯留部237での泡の分布が均等に保たれる効果がある。
塗布ローラ232または、泡生成塗布ローラ234と泡搬送ローラ233との間の泡貯留部237に貯留された小泡210dの貯留量に応じて第3のフラップのヒンジ282bを中心に、貯留された泡の分布が偏ったとしても、図9に示すように、上側からの押さえ付けにより泡は均等に分布する。
もし、これらの3つのフラップがない場合には、図11に示すように、泡の分布が不均一になり、最悪の場合には泡貯留部237から漏れ出すことがある。
図示では断面方向(隔壁の高さ方向)の泡の分布について説明しているが、泡貯留部237の長手方向(ローラ軸方向)においても同様の事象が起こり得る。
【0039】
塗布ローラ232または、泡生成塗布ローラ234と、泡搬送ローラ233が図9に示す回転方向で回転することによって、貯留された泡は攪拌状態に置かれるため常に一定のセル径の泡となる。
ここで、塗布ローラ232と、泡生成塗布ローラ234との構造的な違いと、機能的な違いについて説明する。
塗布ローラ232の構造は、表面が平滑か、極めて細かい細粒面になっており、材質は弾性体であっても、材質内部に泡の材料成分が浸透することはなく、あくまでも表面に付着した泡を用紙100表面へと転写させるために付着搬送する機能になっている。
一方で、泡生成塗布ローラ234の構造は、材質が独立気泡、連続気泡を問わず毛管力を有する発泡弾性体材料からなっており、表層が泡貯留部237の泡に接触すると、既に泡化している泡の処理剤であっても、ローラ表層の発泡体の研磨面によるマイクロセルなどの毛管力により僅かに吸い込まれた後に再度加圧ローラ235により押し出されるが、元の泡貯留部237の泡を僅かに吸い込んだ後ローラ気泡内に閉じ込められた少量の気泡の処理剤成分は更に細かな泡となって分割されるため、いわゆる泡のせん断効果による更なる細かい気泡を生成する作用があり、このローラの場合には、狙いの泡塗布領域(幅)よりも僅かに広がった領域まで泡が生成されるため、用紙100への塗布範囲も僅かながら広がることが起きるが、泡自体の細かさは前述のメカニズムの通り細かくなることが期待される。
【0040】
泡生成塗布ローラ234の機能は、請求項3に記載の塗布手段に対応している。すなわち、泡生成塗布ローラ234へ泡が供給された後にも更に細かな泡生成を行うことを意味するため、隔壁の機能は泡生成塗布ローラ234へ供給する幅を意味している。したがって、泡生成塗布ローラ234を使用した場合の一対の隔壁は、供給幅可変手段として機能する。
一方、塗布ローラ232の機能は、請求項4に記載の塗布手段に対応している。すなわち、塗布ローラ232へ泡が供給された後にもそのままの泡の状態を保ったまま塗布を行うことを意味するため、隔壁の機能は泡塗布ローラ232による用紙100への塗布する幅を意味している。したがって、塗布ローラ232を使用した場合の一対の隔壁は、塗布幅可変手段として機能する。
【0041】
このように被記録媒体の処理剤として「泡」状のものを用いることは、液体の処理剤に比べて特に高速での記録・処理時に格別の効果を有する。
たとえば、連帳機のように連続紙に高速で印刷を行う場合、処理剤の塗布も記録動作に追いつくためにローラ等を高速に回転させて塗布を行う必要がある。
このような記録が毎分100m程度を超えるスピードになると、ローラの高速回転により発生する遠心力もきわめて大きくなり、液体の処理剤では処理剤がローラ表面から引き離され飛散してしまい、記録媒体に塗布される量が著しく低下してしまうという不具合がある。
液体の処理剤でこのような不具合を解決するためには、液体の粘度を上げてローラ表面から飛散しにくくすることも考えられるが、このような高粘度液体は薄膜で塗布することが困難であり、また給液、排液動作の負荷が大きく搬送用のポンプの大型化や装置の複雑化を招く。
これに対して「泡」状の処理剤は、搬送時は通常の低粘度液体であり搬送負荷が少ない上に、ローラ上では発泡させた状態で半固体の性質を示すため、ローラの高速回転にも追随し飛散することがない。
また、被記録媒体への薄膜塗布に有利であることは前述の通りである。また、塗布後の残泡はヒータの加熱等で消泡することで容易に低粘度液体として再回収でき、液体の処理剤塗布の高速塗布における問題点をすべて解決することができる。
【0042】
次に、この画像形成装置における印刷命令に対する、用紙サイズに応じた処理剤塗布制御の一連の処理動作例を図12から図16に示すフロー図を参照して説明する。
図12はメインルーチンで、図13から図16はそのサブルーチンである。
印刷命令有無の条件分岐(S−01)にて、No(以降N)であれば元に戻り、Yes(以降Y)であれば、前部隔壁270aと後部隔壁271aの間隔を最大幅(例えば図2(b)で示すA3幅(297mm))まで広げる動作をモータ275を起動して行う(S−02)。
後部隔壁271aの外側の壁面をHPセンサ276が検知することによりHPとして認識される(S−03)。
この信号を得ることにより、任意の幅寸法までのモータ275の回転数(ステッピングモータの場合にはステップ数)を指令することにより設定することができるため、幅駆動制御のイニシャライズを実行したことになる。
【0043】
次に、泡貯留部237にある泡の高さを泡高さ検知センサ284で検知し、上記算出方法により泡量を検出(計量)しておく(S−04)。
次に、処理剤を塗布する対象の用紙サイズ情報を、印刷命令や、操作者による操作部からの入力情報に基づき取得する(S−05)。(S−05)にて取得した用紙サイズ情報の幅寸法がMax.(最大幅)であるか条件分岐し(S−06)、Yであればサブルーチンへ(S−09)、Nであれば次ステップを実行する。
(S−05)にて取得した用紙サイズ情報の幅寸法がMax.(最大幅)よりa寸法分狭い「A幅」であるか条件分岐し(S−07)、Yであればサブルーチンへ(S−10)、Nであれば次ステップを実行する。
(S−05)にて取得した用紙サイズ情報の幅寸法がMax.(最大幅)よりn寸法分狭い「N幅」であるか条件分岐し(S−08)、Yであればサブルーチンへ(S−11)、Nであれば次ステップを実行する。
【0044】
ここで、(S−07)のa寸法、「A幅」と、(S−08)のn寸法、「N幅」は一般的な値であって、実際にはA4横、B5横・・・はがきサイズ等の具体的な寸法であったり、aからn寸法までを数段の不等分割や、等分割での寸法を適用した「幅寸法」で合っても構わない。
Min(最小幅)に最も近い「幅寸法」の条件分岐である前記(S−08)でNoとなった場合には、(S−12)で(S−05)にて取得した用紙サイズ情報の幅寸法がMin.(最小幅)であることとして認識され、(S−12)としての対応するサブルーチンを実行する。
次に、次頁の印刷命令の有無で条件分岐し(S−13)、Yであれば前記(S−02)へループするが、Nであれば当メインフローは終了する。
【0045】
次に図13から図16までのサブルーチンを個々に説明する。
図13は、(S−09)の「Max.幅対応処理」サブルーチンである。
前記メインルーチンの(S−04)で取得した泡の泡貯留部での量が、同メインルーチン(S−05)で取得した用紙幅と長さ(=塗布面積)の情報から、充分塗布するに足りる量であるかどうかを条件分岐し(S−101)、Nであれば、泡の不足量を算出し(S−104)、その不足分を泡供給手段である高圧空気供給部221にて供給を行う(S−105)。
泡の貯留量を再度検出し(S−106)、(S−101)へ戻る。
条件分岐Yで隔壁幅をMax.幅寸法にするまでモータ275を駆動し(S−102)、用紙へ処理剤を塗布する動作を実行する(S−103)。
【0046】
図14は、(S−10)の「サイズA幅対応処理」サブルーチンである。
前記メインルーチンの(S−04)で取得した泡の貯留部での量が、同メインルーチン(S−05)で取得した用紙幅と長さ(=塗布面積)の情報から、充分塗布するに足りる量であるかどうかを条件分岐し(S−111)、Nであれば、泡の不足量を算出し(S−114)、その不足分を泡供給手段である高圧空気供給部221にて供給を行う(S−115)。泡の貯留量を再度検出し(S−116)、(S−111)へ戻る。
条件分岐Yで隔壁幅をA寸法にするまでモータ275を駆動し(S−112)、用紙へ処理剤を塗布する動作を実行する(S−113)。
図15は、(S−11)の「サイズN幅対応処理」サブルーチンである。
前記メインルーチンの(S−04)で取得した泡の貯留部での量が、同メインルーチン(S−05)で取得した用紙幅と長さ(=塗布面積)の情報から、充分塗布するに足りる量であるかどうかを条件分岐し(S−121)、Nであれば、泡の不足量を算出し(S−124)、その不足分を泡供給手段である高圧空気供給部221にて供給を行う(S−125)。泡の貯留量を再度検出し(S−126)、(S−121)へ戻る。
条件分岐Yで隔壁幅をA寸法にするまでモータ275を駆動し(S−122)、用紙へ処理剤を塗布する動作を実行する(S−123)。
【0047】
図16は、(S−12)の「サイズMin.幅対応処理」サブルーチンである。
前記メインルーチンの(S−04)で取得した泡の貯留部での量が、同メインルーチン(S−05)で取得した用紙幅と長さ(=塗布面積)の情報から、充分塗布するに足りる量であるかどうかを条件分岐し(S−131)、Nであれば、泡の不足量を算出し(S−134)、その不足分を泡供給手段である高圧空気供給部221にて供給を行う(S−135)。泡の貯留量を再度検出し(S−136)、(S−131)へ戻る。
条件分岐Yで隔壁幅をMin.寸法にするまでモータ275を駆動し(S−132)、用紙へ処理剤を塗布する動作を実行する(S−133)。
【0048】
図17、図18に基づいて、隔壁の幅に対応した泡の泡貯留部への供給量の制御を説明する。
第3のフラップの天面位置(以降センサ検知距離と呼ぶ)に応じて変化する泡高さ検知センサ284の出力信号の値を基に、供給量の上限を個別に定めている。
その状況を、まず隔壁間距離がMax.の状態を示す図17(a)では、センサ検知距離が長い(特定の信号レベルの値)のときに泡供給を満杯と認識して供給停止する制御を行い、また隔壁間距離がMin.の状態を示す図17(b)では、センサ検知距離が短い(特定の信号レベルの値)のときに泡供給を満杯と認識して供給停止する制御を行う。
隔壁間距離がMax.の状態からMin.の状態まで変わる間に泡供給が満杯と認識させるためのセンサ検知距離(信号レベル)が短い(高レベル)から長い(低)に変化する設定値を示しているのが、図18である。
【0049】
このような隔壁間距離に応じて泡貯留部への泡の満杯とする供給量を変化させることにより、泡貯留部に供給される泡の供給量は常に一定に保つ制御を行っている。
つまり、請求項3又は請求項4に記述される「所定量の範囲内」とは、前述の一定の量も含めた個々の量になるように制御することを意味している。
このように、一定の量にする理由は、隔壁間隔を、印刷命令に応じて、Min.幅からにMax.幅へ変化させる場合には問題にならないが、急遽Max.幅からMin.幅に変化させる必要がある場合に泡貯留部の泡が溢れ出す不具合を引き起こすことが無いようにするために行われている。
【0050】
図19は、泡生成手段から供給される泡量を算出するための「泡供給量制限値」を示している。すなわち、現状の隔壁幅と、泡高さ検知センサ284より取得した泡高さに基づく現状の泡貯留部237に存在する泡量情報とにより、泡貯留部237に満杯に充填できる追加量を求めることを示している。
また、その供給を開始すると同時に刻々と満たされる泡量を泡高さ検知センサ284で監視しつつ、制限に達した際に供給を停止する制御を行うことを示している。
【0051】
図中の任意の現状隔壁幅における現状のセンサ検知距離(信号レベル=泡嵩=泡高さ)のポイントにおいて、泡貯留部237に追加できる泡の量が、泡供給量制限値の線までの差分として求められる。
また、仮に現状の隔壁幅から変化したとしてもその時のセンサ検知距離(信号レベル=泡量高さ)は一点鎖線で示す様に変化するが、その追加可能な泡の供給量は一定であることを示している。
すなわち、現状の泡貯留部237に貯留されている泡の量は当然ながら一定であり、隔壁幅が変化するに伴い、仮に隔壁幅が狭くなればその分泡の嵩が高くなるためセンサ検知距離(信号レベル)は短(高レベル)になるが、その隔壁幅における泡供給量の制限値に至るまでの追加可能な泡の高さが求まる。この泡の高さは、相対的なセンサ信号上の高さに相当する信号レベルのことであって、泡体積ではない。
【0052】
図20は、他の実施形態において、「泡隔壁部を所望の幅より狭い位置に固定した後、泡供給を開始し、徐々に広げながら所定の幅で隔壁位置を固定し、泡貯留部に所定量の泡が蓄積する」様子を説明するための図である。
すなわち、図20(a)に示すように、隔壁幅を初期値の状態は狭い状態にしておき、泡の供給が開始されると同時に隔壁幅広げつつ、泡が溢れることが無いように泡高さ検知センサ284で監視しながら流量を制御する。
隔壁幅の目標値に達した後供給を停止する。図20(b)のタイミングチャートは、時間軸(X軸)の経過と共に隔壁幅を広げ、その間に泡を供給する様子を示したものである。
【0053】
図21は、さらに他の実施形態において、「泡隔壁部を所望の幅より狭い位置に固定した後、泡供給を開始し、同時に泡量検知手段からの現状の泡量の情報を取得しつつ、隔壁部を段階的に広げては僅かに狭くなる方向に戻し、最終的には所望の幅で隔壁位置を固定し、泡貯留部に所定量の泡が蓄積されたこと」の様子を説明するための図である。
すなわち、図21(a)に示すように、隔壁幅を初期値の状態は狭い状態にしておき、泡の供給が開始されると同時に隔壁幅広げつつ、泡が溢れることが無いように泡高さ検知センサ284で監視しながら流量を制御する。
図21(b)のタイミングチャートに示すように、その途中で4回僅かに隔壁幅を狭い方向に戻す動作を行いながら最終的には隔壁幅の目標値に達した後供給を停止する。時間軸(X軸)の経過と共に隔壁幅を広げ、その間に泡を供給する様子を示したものである。
【0054】
次に、この画像形成装置に制御部の概要について図22に示すブロック図を参照して説明する。
この制御部は、本画像形成装置のシステム制御を行うCPU801と、CPU801が実行するプログラムなどの情報や、特には制御テーブル等を格納するROM802と、ワーキングエリアとして使用するRAM803と、オペレータが各種設定等を行うため操作表示部804と、紙サイズ検知やジャム検知等を行う各種センサ805と、各種モータ等806と、各種センサ805及び各種モータ等806への出力制御信号を行うI/O807と、画像読取り装置(スキャナ)808を制御する読取り制御部809と、プロッタ部(印字機構部)810を制御する印字制御部811と、電話回線とのI/F制御を行う網制御装置812の制御も含めて、各種ファクシミリ通信制御を行う通信制御部813と、泡状体塗布装置200の制御を行う泡状体塗布制御部814等を備えている。
ここで、各種センサ805には、泡高さ検知センサ284、環境条件を検出する温度/湿度検知手段、泡状体に成り得る処理液201が容器202内にあるか否か検知する図示していない液体エンド検知手段を含む。
上記のように、泡量算出手段としてのCPU801と、泡高さ検知センサ284とにより本発明の泡量検知手段が構成される。
【0055】
図23(a)は、最小隔壁幅の時に供給した泡の量が後述するVmax.(最大泡貯留量限界)を上回った状態で、次なる印刷命令により、最大隔壁幅から最小隔壁幅へと幅縮小した際に、貯留限界を超えて泡が溢れてしまい、このままでは隔壁の外側まで泡が染み出してしまう直前の状態を示している。
それに対して、図23(b)は、最小隔壁幅の時に供給した泡の量が後述するVmax.(最大泡貯留量限界)に設定した状態で、次なる印刷命令により、最大隔壁幅から最小隔壁幅へと幅縮小した際にも前述のように貯留限界を超えて泡が溢れてしまうことなく、安定して泡供給が行える状態を示している。
図24は、最大隔壁幅の状態から最小隔壁幅の状態までの隔壁の可変範囲に於ける、泡が溢れてしまうことなく安全に塗布できるのに必要な泡供給量の制御テーブルを示しており、縦(Y)軸は泡の貯留量(体積)、横(X)軸は隔壁幅を示している。
【0056】
図示の、Vmax.(最大泡貯留量限界)は、図23(a)の最小隔壁幅の状態へ幅を縮小したときでも、泡貯留部の上部から泡が溢れないようにするための最大限度の泡供給量を示している。
突発的な泡の溢れを防止するために、最小隔壁幅の状態での泡の最大供給量がVNmax(最小隔壁幅に於ける最大泡供給量)になるように、最大隔壁幅の状態での泡の最大供給量がVWmax.(最大隔壁幅に於ける最大泡供給量)になるように夫々僅かずつマージンを持たせて指令値を定めている。
なお且つ、隔壁から溢れる問題が隔壁幅を狭めるときに生じることから、VNmax.(最小隔壁幅に於ける最大泡供給量)は、VWmax.(最大隔壁幅に於ける最大泡供給量)よりも少なくなる関係となり、最大隔壁幅から最小隔壁幅までの泡の最大供給量は、VWmax.から、VNmax.までを結んだ勾配の値を供給の指令値とした制御を行うことで、隔壁幅を徐々に狭くしていった際の途中過程において、泡貯留部の上部の平面性が保たれていない状態であった時に突発的に泡が隔壁の外側へ溢れてしまうことの無いように考慮し、VNmax.≦VWmax.とし、
また更に、前記Vmax.との関係も加味することで、Vmax.≧VNmax.≧VWmax.としている。
【0057】
図25(a)は、最小隔壁幅の時に供給した泡の量が後述するVmin.(最小泡貯留量限界)以下を下回った状態で、次なる印刷命令により、最小隔壁幅から最大隔壁幅へと拡幅した際に、泡の貯留分布がところどころで枯渇し、このままでは全域に泡を均等に供給できなくなることで塗布ムラを起こしてしまう状態を示している。
それに対して、図25(b)は、最小隔壁幅の時に供給した泡の量が後述するVmin.(最小泡貯留量限界)に設定した状態で、次なる印刷命令により、最小隔壁幅から最大隔壁幅へと拡幅した際にも前述のように貯留分布がところどころで枯渇しまうことなく、全域に泡を均等に供給できる状態になることで塗布ムラを起こす心配も無く安定して泡供給が行える状態を示している。
【0058】
図26は、最小隔壁幅の状態から最大隔壁幅の状態までの隔壁の可変範囲に於ける、泡が枯渇することなく安全に塗布できるのに必要な泡供給量の制御テーブルを示しており、縦(Y)軸は泡の貯留量(体積)、横(X)軸は隔壁幅を示している。
図示の、Vmin.(最小泡貯留量限界)は、図25(a)の最大隔壁幅の状態へ拡幅したときでも、泡の貯留分布がところどころで枯渇することなく満たされることができるための最小限度の泡の供給量を示している。
突発的な泡の枯渇を防止するために、最小隔壁幅の状態での泡の最小供給量がVNmin.(最小隔壁幅に於ける最小泡供給量)となるように、最大隔壁幅の状態での泡の最小供給量がVWmin.(最大隔壁幅に於ける最小泡供給量)になるように、夫々僅かずつマージンを持たせて指令値を定めている。
なお且つ、枯渇する問題が隔壁幅が広がるときに生じることから、
Nmin.(最小隔壁幅に於ける最小泡供給量)は、VWmin.(最大隔壁幅に於ける最小泡供給量)よりも多い関係となり、最大隔壁幅から最小隔壁幅までの泡の最大供給量は、VWmin.から、VNmin.までを結んだ勾配の値を供給の指令値とした制御を行うことで、隔壁幅を徐々に狭くしていった際の途中過程において、泡貯留部の上部の平面性が保たれていない状態であった時に突発的に泡の分布が途切れて枯渇してしまうことの無いよう考慮し、VNmin.≦VWmin.とし、
また更に前記Vmin.との関係も加味することで、Vmin.≦VNmin.≦VWmin.としている。
【0059】
なお、上記実施形態では泡塗布装置が画像形成前の用紙に対して泡を塗布する構成で説明しているが、記録ヘッドユニットの下流側に泡塗布装置を配置し、画像形成が行われた用紙上に泡を塗布する構成とすることもできる。
【0060】
また、上記実施形態では、泡状態にすることが可能な液体から泡を生成して塗布する例で説明しているが、本発明を、泡状態にすることが可能なゲルから泡を生成して被塗布部材に塗布する装置、この装置を備える画像形成装置にも適用することができる。
【0061】
また、本発明に係る泡塗布装置は、例えば電子写真方式の画像形成装置にも適用することができる。例えば、紙等の媒体上のトナー等の樹脂を含有する微粒子を乱すことなく、かつ当該樹脂微粒子を付着した媒体に定着液を泡化(以下「定着泡」という)して塗布することにより、塗布後に素早く樹脂微粒子の媒体への定着が行われ、更に媒体に残油感が発生しない定着方法及び定着装置、並びに画像形成方法及び画像形成装置にも適用できる。
【0062】
すなわち、当該定着液が気泡を含有した泡状形態とし、更に当該定着泡層の膜厚を加圧力に応じて制御することにより、塗布ローラのような接触塗布手段へのトナーオフセットや画像流れを防止し、極めて微小の塗布による定着を可能とすることができる。また、樹脂微粒子として、電子写真技術に用いるトナー微粒子に対する効果が高く、この樹脂微粒子の層厚に応じて定着泡層の膜厚を制御することでオフセットや画像流れを防止できる。
【符号の説明】
【0063】
100 被記録媒体としての用紙
200 泡塗布手段としての泡塗布装置
201 液体としての処理液
205 泡生成手段としての第1泡生成部
207 泡生成手段としての第2泡生成部
208 塗布手段としての泡塗布部
210 泡
237 泡貯留部
250 延展部
270a 隔壁部材としての前部隔壁
271a 隔壁部材としての後部隔壁
284 泡高さ検知手段としての泡高さ検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
被記録媒体又は被記録媒体に塗布するための中間部材に対して液体及びゲルのうち少なくとも一方を泡状にした泡を処理剤ないし定着剤として塗布する泡塗布手段を備え、
前記泡塗布手段は、前記泡を生成する泡生成手段と、
前記泡生成手段から供給された泡を被記録媒体又は前記中間部材に塗布する塗布手段と、
前記塗布手段の塗布域内に形成され、前記泡生成手段から供給される泡を貯留する泡貯留部と、
前記泡貯留部に貯留された泡量を検知する泡量検知手段と、
を有し、
前記泡量検知手段による泡量の情報に基づき、前記泡生成手段から供給される泡量を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記泡生成手段は、前記塗布手段へ泡を供給する際に被記録媒体の搬送方向と直交する被記録媒体幅方向に泡を延展する延展部を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記泡生成手段から前記塗布手段へ供給される前記泡の、前記被記録媒体幅方向における供給幅を変更可能な供給幅可変手段を有し、
前記泡貯留部に貯留する泡量は、前記供給幅可変手段の最小幅から最大幅にかけての間で所定量の範囲内になるように、前記泡生成手段から供給される泡量の指令値を決定する制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記泡生成手段から前記塗布手段へ供給される前記泡の、前記被記録媒体幅方向における塗布幅を変更可能な塗布幅可変手段を有し、
前記泡貯留部に貯留する泡量は、前記塗布幅可変手段の最小幅から最大幅にかけての間で所定量の範囲内になるように、前記泡生成手段から供給される泡量の指令値を決定する制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の画像形成装置において、
前記泡量検知手段は、前記泡貯留部の泡高さを非接触で検知する泡高さ検知手段と、
前記泡高さ検知手段により検知された泡高さと、前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段の幅情報との関係から、前記泡生成手段から供給しようとする泡量を算出する泡量算出手段と、
を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3又は4記載の画像形成装置において、
前記泡貯留部の泡高さに応じて変位する泡高さ検知用板を有し、
前記泡高さ検知手段は前記泡高さ検知用板の位置を前記泡高さとして検知することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段は、前記泡貯留部を前記被記録媒体幅方向に互いに逆向きに移動可能な一対の隔壁部材を有し、該一対の隔壁部材を所望の幅に固定した後、前記泡貯留部に所定量の泡が蓄積されたことを、前記泡量検知手段からの情報に基づき検知し、前記泡生成手段から供給される泡の供給量の指令値を決定するフィードバック制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項3〜6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段は、前記泡貯留部を前記被記録媒体幅方向に互いに逆向きに移動可能な一対の隔壁部材を有し、該一対の隔壁部材を所望の幅より狭い位置に固定した後、泡供給を開始し、徐々に広げながら所定の幅で前記一対の隔壁部材を固定し、前記泡貯留部に所定量の泡が蓄積されたことを、前記泡量検知手段からの情報に基づき検知し、前記泡生成手段から供給される泡の供給量の指令値を決定するフィードバック制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項3〜6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記供給幅可変手段又は塗布幅可変手段は、前記泡貯留部を前記被記録媒体幅方向に互いに逆向きに移動可能な一対の隔壁部材を有し、該一対の隔壁部材を所望の幅より狭い位置に固定した後、泡供給を開始し、同時に前記泡量検知手段からの泡量の情報を取得しつつ、前記一対の隔壁部材を段階的に広げては僅かに狭くなる方向に戻し、最終的には所望の幅で前記一対の隔壁部材の位置を固定し、前記泡貯留部に所定量の泡が蓄積されたことを、前記泡量検知手段からの情報に基づき検知し、前記泡生成手段から供給される泡の供給量の指令値を決定するフィードバック制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項3〜6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記供給幅可変手段又は塗布幅可変手段は、前記泡貯留部を前記被記録媒体幅方向に互いに逆向きに移動可能な一対の隔壁部材を有し、
印刷命令があり、画像形成する直前のステップにて、前記一対の隔壁部材内に貯留されている泡量を前記泡量検知手段から取得し、
印刷命令に即した幅に前記一対の隔壁部材を移動させ、該幅の所望量に対する泡の過不足量を予測算出した後、前記一対の隔壁部材を移動させ、且つ、前記泡の過不足量算出の値に基づき前記泡生成手段から供給される泡の供給量の指令値を決定するフィードバック制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記泡貯留部にて貯留する泡の量について、前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段の幅が広いか狭いかにかかわらず略一定に供給するか、あるいは、幅が広い場合の方が幅が狭い場合よりも少なくなるように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項3〜10のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記泡貯留部にて貯留する泡の量について、前記供給幅可変手段又は前記塗布幅可変手段の幅が広いか狭いかにかかわらず略一定に供給するか、あるいは、幅が広い場合の方が幅が狭い場合よりも多くなるように制御することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−158609(P2010−158609A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1035(P2009−1035)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】