説明

画像形成装置

【課題】像担持体上の残留トナーを電気的に除去する構成において、像担持体表面の汚れの発生を抑制できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】感光体ドラム上に残った負極性のトナーを、正極性のバイアス電圧が印加されたクリーニングブラシに静電吸着させて除去する構成において、時点t1でクリーニングブラシにバイアス電圧を先に印加してから、その後の時点t2に感光体ドラムの回転を開始する制御を行う。感光体ドラムの回転が開始されるまでの間、バイアス電圧の値をクリーニングのための基準値Vrよりも低い値であるVc(>0)に抑え、感光体ドラムの回転開始時にバイアス電圧の値を基準値Vrに切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動可能な像担持体と前記像担持体表面に接するクリーニング部材とを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を形成可能な複写機などの画像形成装置には、例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色用の感光体ドラムを中間転写ベルトに沿って配列し、各感光体ドラム上に形成されたトナー像を、回動する中間転写ベルト表面に順次重ね合わせて一次転写し、中間転写ベルト表面に一次転写された各色トナー像を一括して記録シート上に二次転写する、いわゆるタンデム方式のものがある。
【0003】
このような構成では、中間転写ベルト上のトナー像の全てが記録シートに二次転写されることが望ましいが、実際にはその一部が転写されずに中間転写ベルト表面に残ってしまう。そこで、中間転写ベルト上に残ったトナー(残留トナー)を清掃するためのクリーニング部が二次転写位置よりベルト走行方向下流側の位置に設けられている。
クリーニング部には、例えばバイアス電圧が印加されたクリーニングブラシを中間転写ベルト表面に当接させ、電気的に残留トナーをクリーニングブラシに吸着させてベルト表面から除去する静電吸着方式などがある。クリーニングブラシに吸着された残留トナーは、クリーニングブラシに隣接して設けられている回収ローラにより回収される。
【0004】
この静電吸着方式を用いる場合、バイアス電圧をクリーニングブラシに印加しなければ、クリーニングブラシに留まっている(ブラシの毛に付着している)残留トナーをクリーニングブラシに引き付けておくことができない。そのため、バイアス電圧を印加させずに中間転写ベルトを回動させると、ベルト表面に当接しているブラシの毛が中間転写ベルトの回動によって機械的に動き、その動きによってブラシ内に溜まっている残留トナーがベルト表面側に出て来て、ベルト表面に付着しベルト表面を汚すことになる。そこで、まずバイアス電圧をクリーニングブラシに印加してから、その後に中間転写ベルトの回動を開始する制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−58422号公報(図9など)
【特許文献2】特開昭60−107684号公報(第4図など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような中間転写ベルトの停止中にクリーニングブラシにバイアス電圧を印加する制御を行うと、電圧印加開始から中間転写ベルトの回動開始までの間、バイアス電圧が印加され続け、これにより中間転写ベルトの、クリーニングブラシと当接しているベルト部分に不要な電荷が溜まることになってしまう。
クリーニング部のベルト走行方向下流側の端部には、トナー噴煙を防止するための噴煙防止シールが設けられていたり、クリーニング部よりもベルト走行方向下流側の近傍の位置には、中間転写ベルト表面に接触して、クリーニングブラシでは除去できなかったトナーの外添剤などを摺り落とす発泡スポンジなどからなるフィルミング防止部材が設けられていたりする。そのため、中間転写ベルトの回動が開始されると、電荷の溜まったベルト部分が噴煙防止シールとフィルミング防止部材の位置を通過する際に、噴煙防止シールとフィルミング防止部材に付着しているトナーが、そのベルト部分に溜まった電荷に引き付けられてベルト表面に移動して、ベルト表面を汚してしまうというおそれがある。
【0007】
このような問題は、中間転写ベルトに限られず、像担持体上の残留トナーを電気的に除去するクリーニング部を有する構成、例えば像担持体として感光体ドラムが用いられる構成などに同様に生じ得る。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、クリーニング部材にバイアス電圧を先に印加してから、その後に像担持体の回動を開始する制御を行うことにより、像担持体上の残留トナーを電気的に除去する構成において、像担持体表面の汚れの発生を抑制できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、回動可能な像担持体と、前記像担持体表面に担持されたトナー像を被転写材に静電転写する転写部と、前記像担持体表面に接し前記転写後にその表面に残ったトナーを清掃するクリーニング部材とを有し、前記像担持体の回動開始に先立って、前記像担持体表面を清掃するための、前記トナーの正規帯電極性とは逆極性のバイアス電圧を前記クリーニング部材に印加させる画像形成装置であって、前記像担持体の回動開始以降における前記バイアス電圧の値を基準値Vrとしたとき、電圧印加開始から前記像担持体の回動開始までの間の値Vcが、Vr>0のとき0<Vc<Vr、Vr<0のときVr<Vc<0の範囲にあることを特徴とする。
【0009】
また、前記バイアス電圧の値が、前記像担持体の回動開始と略同時に値VcからVrに切り換えられることを特徴とする。
さらに、前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回動方向上流または下流に位置し、前記像担持体表面に接する別のクリーニング部材を備え、前記別のクリーニング部材には、前記像担持体の回動開始に先立って、前記像担持体表面に残っている、前記正規帯電極性とは逆の極性に帯電しているトナーの清掃のための、前記正規帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加されることを特徴とする。
【0010】
また、前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回動方向上流に位置し、前記像担持体表面に接する別のクリーニング部材を備え、前記別のクリーニング部材には、前記像担持体の回動開始に先立って、前記像担持体表面に残っている、前記正規帯電極性とは逆の極性に帯電しているトナーの清掃のための、前記正規帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加され、前記クリーニング部材に印加される逆極性のバイアス電圧の値が前記像担持体の回動開始から所定時間経過時点に値VcからVrに切り換えられることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記所定時間は、前記像担持体の周面上における、前記別のクリーニング部材との接触位置から回動方向に前記クリーニング部材との接触位置までの間の距離を当該像担持体の回動速度で除した値であることを特徴とする。
また、回動する感光体上に作像された静電潜像をトナーで現像することにより当該感光体上にトナー像を形成し、当該感光体上に形成されたトナー像を、回動する中間転写体に転写し、当該中間転写体上に転写されたトナー像を、搬送されるシートに転写する構成であり、前記像担持体が前記感光体であり前記転写材が前記中間転写体である、または、前記像担持体が前記中間転写体であり前記転写材が前記シートであることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回動方向上流に位置し、前記像担持体表面に残っているトナーに前記正規帯電極性と同極性の電圧を付与して、当該トナーの極性を当該正規帯電極性と同極性に揃える帯電部材を備えることを特徴とする。
また、前記クリーニング部材は、導電性のブラシローラまたは発泡ローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このようにバイアス電圧を電圧印加開始から像担持体の回動開始までの間、基準値Vrよりも低い値Vcに抑えることにより、像担持体の停止中に当該像担持体の、クリーニング部材との接触部分に不要な電荷が溜まることを抑制でき、従来のような不要な電荷が溜まることに起因する像担持体のトナー汚れの発生を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係るプリンタの全体の構成を示す図である。
【図2】プリンタに備えられるクリーナの構成を拡大して示す図である。
【図3】プリンタに備えられる制御部によるバイアス出力等の制御のタイミングチャートを示す図である。
【図4】実施の形態2に係るクリーナの構成を示す図である。
【図5】実施の形態3に係る下流側クリーニングバイアス電圧の切り換わりの様子を示すタイミングチャートである。
【図6】実施の形態4に係るクリーナの構成例を示す図である。
【図7】実施の形態4に係るクリーニングバイアス電圧の切り換わりの様子を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
<実施の形態1>
(1)プリンタの全体の構成
図1は、プリンタ10の全体の構成を示す図である。
【0016】
同図に示すように、プリンタ10は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像プロセス部11と、給送部12と、定着部13と、制御部14などを備え、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)からのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラーの画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0017】
画像プロセス部11は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部20Y、20M、20C、20K、中間転写ベルト21などを備えている。
作像部20Yは、感光体ドラム1、その周囲に配設された帯電器2、露光部3、現像器4、一次転写ローラ5、感光体ドラムを清掃するためのクリーナ6などを備えており、感光体ドラム1にY色のトナー像を作像する。他の作像部20M〜20Kは、基本的に作像部20Yと同様の構成であり、同図では、符号を省略している。
【0018】
中間転写ベルト21は、無端状のベルトであり、駆動ローラ22と従動ローラ23に張架されて、駆動モータ70(図2)の駆動力により同図矢印A方向に周回駆動される。
給送部12は、記録用のシートとしての用紙Sを収容する給紙カセット31と、給紙カセット31内の用紙Sを搬送路39に向けて1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ32と、繰り出された用紙Sを搬送路39上を搬送する搬送ローラ対33と、搬送される用紙Sを二次転写位置36に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対34と、二次転写位置36において中間転写ベルト21を挟んで従動ローラ23に圧接される二次転写ローラ35などを備えている。
【0019】
定着部13は、定着ローラと加圧ローラを圧接させて定着ニップを確保すると共にヒータにより定着ローラを加熱して定着に必要な温度(例えば190℃)を維持する。
制御部14は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、各作像部の露光部3に配されたレーザダイオードを駆動するための駆動信号を生成する。生成された駆動信号により作像部毎に、露光部3のレーザダイオードが駆動されて、レーザビームLが出射され、感光体ドラム1が露光走査される。この露光走査を受ける前に、各作像部の感光体ドラム1は、帯電器2により一様に帯電されており、レーザビームLの露光により、感光体ドラム1表面に静電潜像が形成される。以下、帯電器2により感光体ドラム1がマイナス帯電され、レーザビームLにより画像の形成されるべき部分が露光される帯電、露光方式の構成例を説明する。
【0020】
各静電潜像は、現像器4によりトナーで現像される。トナーは、ここでは正規帯電極性がマイナスのものが用いられ、いわゆる反転現像方式になっている。各色のトナー像は、一次転写ローラ5と感光体ドラム1間に作用する静電力により中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、トナー像が中間転写ベルト21上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト21上に多重転写された各色トナー像は、中間転写ベルト21の周回により二次転写位置36に移動する。
【0021】
上記作像動作のタイミングに合わせて、給送部12からは、タイミングローラ対34を介して用紙Sが給送されて来ており、その用紙Sは、中間転写ベルト21と二次転写ローラ35の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラ35と従動ローラ23間に作用する静電力により、中間転写ベルト21上の各色トナー像が一括して用紙S上に二次転写される。
二次転写位置36を通過した用紙Sは、定着部13に搬送され、定着ニップを通過する際に、トナー像が加熱、加圧されて用紙Sに定着された後、排出ローラ対37を介して排出され、収容トレイ38に収容される。用紙Sに二次転写されずに中間転写ベルト21の表面(以下、「ベルト表面」という。)に残った残留トナーは、中間転写ベルト21の周回走行路の外側であり、二次転写位置36からベルト走行方向(回動方向)に作像部20Yまでの間の位置に配設されたクリーナ24により清掃される。
【0022】
(2)クリーナ24の構成
図2は、クリーナ24の構成を拡大して示す図であり、ベルト表面の残留トナーが除去される様子を合わせて示している。残留トナーとして同図には、正規帯電極性のマイナス帯電している残留トナー28と、正規とは逆極性のプラス帯電している残留トナー29が示されている。ここで逆極性に帯電している残留トナー29とは、現像器4内での攪拌時の磨耗等による劣化や一次、二次転写時の高電圧(プラス極性)の印加などに起因して、本来の極性ではなく逆極性に帯電したものである。現像器4内のトナーには、トナー帯電分布においてマイナス帯電しているものがほとんどであるが、その中には帯電量の少ない(ゼロに近い)特性のトナー粒子が少ないとはいえ、ある程度の割合で存在し、このような特性のトナー粒子が逆極性に帯電する残留トナーとしてベルト表面に残り易い。通常、逆極性に帯電した残留トナー29と正規極性に帯電した残留トナー28の割合は同程度ではないが、同図ではこれらが除去される様子を判り易く示すために、双方の残留トナーの量を同程度の割合で示している。
【0023】
同図に示すように、クリーナ24は、第1クリーニングブラシ51と、第1回収ローラ52と、第1スクレーパ53と、第1クリーニングバイアス出力部54と、第2クリーニングブラシ55と、第2回収ローラ56と、第2スクレーパ57と、第2クリーニングバイアス出力部58と、噴煙防止シール59などを備える。
第1クリーニングブラシ51は、金属製の導電性材料からなる中実または中空の棒材である芯金511と、芯金511の外周に植設された導電性のブラシ繊維からなるブラシ部512を備える。ブラシ部512は、ベルト表面に接触している。芯金511は、回転軸として回転可能にクリーナ24の筐体50に支持されており、駆動モータ71からの駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して与えられて、中間転写ベルト21の走行方向に対し逆向きの矢印B方向に回転(カウンター回転)駆動される。
【0024】
ブラシ繊維は、例えばナイロン、ポリエステル、アクリル、レーヨンなどの樹脂にカーボンを分散させ、導電性を付与させた材料からなる。例えば、繊度は1D〜10D、密度は50〜300〔kF/inch〕、原糸抵抗は10〜1013〔Ω〕の範囲に設定される。また、ベルト表面に対して食い込み量は0.5〜2.0〔mm〕に設定される。
第1回収ローラ52は、金属、導電樹脂等の導電性を有する中実または中空の棒材からなり、第1クリーニングブラシ51を挟んで中間転写ベルト21に対峙する位置に配置され、第1クリーニングブラシ51のブラシ部512に接触する。第1回収ローラ52は、クリーナ24の筐体50に回転可能に支持されており、駆動モータ72からの駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して与えられて、第1クリーニングブラシ51の回転方向に対し逆向きの矢印C方向に回転駆動される。摩擦抵抗を低減するために、表面に研磨やメッキ、コーティングなどの処理を施しても良い。また、第1クリーニングブラシ51に対して食い込み量は0.5〜2.0〔mm〕に設定される。
【0025】
第1スクレーパ53は、金属またはゴム等からなるブレード状の部材であり、その先端が第1回収ローラ52の周面に当接している。第1スクレーパ53の厚み、圧接角、圧接力等は、トナーの種類やトナー外添剤、第1回収ローラ52の材質に応じて設定される。
第1クリーニングバイアス出力部54は、トナーの正規帯電極性と同極性(マイナス)のバイアス電圧を出力する。出力されたバイアス電圧は、第1回収ローラ52を介して第1クリーニングブラシ51に印加される。このバイアス電圧の印加により、第1クリーニングブラシ51と中間転写ベルト21間に電位差が生じ、両者間には、逆極性に帯電したトナーに対して中間転写ベルト21から第1クリーニングブラシ51に向かう方向の静電力を作用させる電界が形成される。この電界による静電作用およびブラシ部512によるトナー掻き取り作用によりベルト表面上の逆極性に帯電した残留トナー29がベルト表面から離れて第1クリーニングブラシ51のブラシ部512に吸着される。
【0026】
同様に、第1回収ローラ52と第1クリーニングブラシ51間には、その電位差により、逆極性のトナーに第1クリーニングブラシ51から第1回収ローラ52に向かう方向の静電力を作用させる電界が形成され、第1クリーニングブラシ51に吸着された残留トナー29が第1回収ローラ52に移動してその周面に吸着される。第1回収ローラ52の周面に吸着された残留トナー29は、第1スクレーパ53により第1回収ローラ52の周面から掻き落とされて、筐体50内の回収部(不図示)に回収される。
【0027】
第2クリーニングブラシ55、第2回収ローラ56および第2スクレーパ57は、基本的に第1クリーニングブラシ51、第1回収ローラ52、第1スクレーパ53と同様の構成になっている。第2クリーニングブラシ55は、駆動モータ73の駆動力により回転駆動され、第2回収ローラ56は、駆動モータ74の駆動力により回転駆動される。
第2クリーニングバイアス出力部58は、トナーの正規帯電極性と逆極性(プラス)のバイアス電圧を出力する。出力されたバイアス電圧は、第2回収ローラ56を介して第2クリーニングブラシ55に印加される。
【0028】
このバイアス電圧の印加により、中間転写ベルト21と第2クリーニングブラシ55間に、正規帯電極性と同極性に帯電したトナーに中間転写ベルト21から第2クリーニングブラシ55に向かう方向の静電力を作用させる電界が形成される。また、第2回収ローラ56と第2クリーニングブラシ55間には、第2クリーニングブラシ55から第2回収ローラ56に向かう方向の静電力を作用させる電界が形成される。
【0029】
これによりベルト表面上の正規帯電極性と同極性に帯電した残留トナー28は、ベルト表面から離れて第2クリーニングブラシ55のブラシ部に吸着され、吸着された残留トナー28は、第2回収ローラ56に移動してその周面に吸着する。第2回収ローラ56の周面に吸着された残留トナー28は、第2スクレーパ57により掻き落とされて、筐体50内の回収部に回収される。
【0030】
噴煙防止シール59は、筐体50の、中間転写ベルト21に対向する側の開口上部と下部にそれぞれ貼着されており、回収された残留トナーがクリーナ24内部から外部に噴出するのを防止する。
中間転写ベルト21の周回走行路の外側であり、クリーナ24からベルト走行方向に作像部20Yまでの間の位置には、フィルミング防止摺擦部材60が配設されている。フィルミング防止摺擦部材60は、ポリウレタンフォームやウレタンフォーム、ゴムスポンジ材など発泡セルを有する弾性部材からなり、第1、第2クリーニングブラシ51、55では除去できなかったトナー外添剤などをベルト表面から擦り落とし、自身の発泡セル内に取り込むことによりベルト表面を清掃する。フィルミング防止摺擦部材60は、厚みが3〜7〔mm〕、密度が45〜100〔kg/m〕、硬度が4〜15〔kPa〕(25%圧縮時硬度)、セル数が40〜120〔個/25mm〕、ベルト表面との接触幅が8〜20〔mm〕、ベルト表面に対する食い込み量が0.5〜2〔mm〕程度に設定される。
【0031】
第1クリーニングバイアス出力部54による上流側クリーニングバイアスと第2クリーニングバイアス出力部58による下流側クリーニングバイアスそれぞれの出力制御、駆動モータ70による中間転写ベルト21の回動制御、駆動モータ71、73による第1、第2クリーニングブラシ51、55の回転制御、および駆動モータ72、74による第1、第2回収ローラ52、56の回転制御は、制御部14により実行される。
【0032】
(3)制御部14によるバイアス出力等の制御の詳細
図3は、制御部14によるバイアス出力等の制御のタイミングチャートを示す図であり、(a)は、実施例を、(b)は、比較例を示している。
図3(a)に示すように、まず第1クリーニングバイアス出力部54に指示して上流側クリーニングバイアスを出力させると共に、第2クリーニングバイアス出力部58に指示して下流側クリーニングバイアスを出力させる(時点t1)。この時点t1では、中間転写ベルト21は停止状態にある。上流側クリーニングバイアスの電圧値(第1クリーニングブラシ51の電圧値)は、Vu(負)であり、下流側クリーニングバイアスの電圧値(第2クリーニングブラシ55の電圧値)は、Vr(正)よりも低いVc(>0)、例えばVc=0.5×Vrとされる。
【0033】
ここで、Vu、Vrの値は、中間転写ベルト21の走行中において、そのベルト表面上の残留トナー28、29を静電的に吸着してベルト表面から除去するのに適した電圧値(基準値)である。
そして、時点t1から所定時間T1が経過した時点t2で、駆動モータ70〜74を駆動させて中間転写ベルト21、第1、第2クリーニングブラシ51、55および第1、第2回収ローラ52、56の回転駆動を開始させると共に、第2クリーニングバイアス出力部58に指示して下流側クリーニングバイアスの電圧値をVcからVrに切り換える。
【0034】
このように中間転写ベルト21、第1、第2クリーニングブラシ51、55等の回転開始に先立って、中間転写ベルト21等の停止中に上流側と下流側のクリーニングバイアスの出力を開始させるのは、上述のようにブラシに留まっている残留トナーをブラシに引き付けておくためであり、これによりブラシ内の残留トナーが外に飛び出てベルト表面に付着することが防止される。
【0035】
また、中間転写ベルト21の回動開始までの間、下流側のクリーニングバイアスの電圧値を基準値Vrよりも低いVcに抑えているのは、中間転写ベルト21の停止中に中間転写ベルト21の、第2クリーニングブラシ55と接しているベルト部分211(図2)に不要な電荷が溜まることを防止するためである。具体的には、バイアス電圧の基準値Vrは、中間転写ベルト21の走行中に残留トナーを効率良くベルト表面から除去するのに適した値であるが、ベルト停止中に印加すると、ベルト部分211の単位時間当たりに付与される電荷(ここでは、正電荷)の量がベルト走行中のときよりも多くなって、これが不要な電荷となって溜まることになる。そこで、ベルト停止中にはバイアス電圧の値を基準値Vrより下げて不要な電荷が多く溜まるのを抑えるものである。
【0036】
これにより、中間転写ベルト21の回動が開始されてベルト部分211が下流側の噴煙防止シール59とフィルミング防止摺擦部材60を通過する際に、両部材に付着しているトナーがベルト部分211に溜まった電荷に引き付けられてベルト表面に移動することにより、ベルト表面を汚してしまうといったことが抑制される。
クリーニングバイアスの電圧値Vcは、実験などから最適な値が決められるが、その下限値と上限値を定義すれば、次のようになる。すなわち、下限値は、中間転写ベルト21または第2クリーニングブラシ55が回転しても第2クリーニングブラシ55のブラシ部に溜まっている残留トナーをブラシ部に引き付けて(ブラシ内に拘束して)おくことができる電圧の範囲の最小値ということができる。一方、上限値は、残留トナーがベルト部分211に引き付けられてベルト表面に移動してベルト表面を汚すといったことが生じない電圧範囲の最大値ということができる。
【0037】
本実施の形態では、上記のようにVcの値をVc=0.5×Vrとしている。これは、実験から求めたものである。実験の一例を以下に示す。中間転写ベルト21としてポリイミド製のものを用い、第1、第2クリーニングブラシ51、55としてブラシ繊維をナイロン、繊度が2D、密度が240〔kF/inch〕、原糸抵抗が1011.5〔Ω〕のものを用いた。第1、第2クリーニングブラシ51、55は、共にバイアス電圧の基準値Vr=500〔V〕、T1=40〔ms〕として、下流側の電圧値Vcを基準値Vrの半分である250〔V〕に設定した。
【0038】
比較のために、図3(b)の比較例(従来相当)の制御でも実験を行った。図3(b)に示すように比較例は、下流側のクリーニングバイアスの電圧値が中間転写ベルト21の停止中から基準値のVrに上げられており、この点が図3(a)の制御と異なっている。
クリーニングバイアスの電圧値が一律に基準値であるV2に固定されるので、ベルト部分211に不要な電荷が溜まり易い制御であるといえる。なお、比較例では、T1=60〔ms〕とした。T1の値が実施例より20〔ms〕長いのは、0〔V〕から立ち上がるクリーニングバイアスの電圧値がT2=500〔V〕であり、実施例よりも電圧が高いために、立ち上がりに要する時間がより長くかかるからである。
【0039】
実験では帯電から露光、現像、転写、定着までの一連の電子写真方式による画像形成を実行する装置において、上記の噴煙防止シール59とフィルミング防止摺擦部材60と同じ部材を装着すると共にそれらに多くのトナーを付着させた状態でプリントを実行したときに、そのトナーが中間転写ベルト21を介して用紙に二次転写されてその用紙にトナー汚れが発生するか否かを判定した。その結果、比較例では、用紙にトナー汚れが発生したのに対し、実施例では汚れ発生には至らなかった。
【0040】
中間転写ベルトとクリーニングブラシなどの部材を、その大きさや材料などを画像形成装置に一般に用いられるものに変えて同様の実験を繰り返し行ったところ、電圧値Vr、Vcを、次の(式1)の関係を満たすように設定すれば、トナー汚れの発生を防止できることが判った。
0.2×Vr<Vc<0.8×Vr・・(式1)
装置構成に応じて(式1)で示される範囲内の適切な値に電圧Vcの値を設定することができる。このような実験結果は、後述する他の実施の形態についても同様に得られた。なお、上記では中間転写ベルト21の回動開始の際のバイアス出力制御の例を説明したが、中間転写ベルト21の回動終了の際には、図3(a)に示すように中間転写ベルト21の停止(時点t3)と略同じタイミングで、クリーニングバイアスが停止(オフ)されると共にクリーニングブラシと回収ローラも停止されるように制御される。
【0041】
以上説明したように本実施の形態では、トナーの正規帯電極性とは逆極性のクリーニングバイアスについて、中間転写ベルト21の回動開始までの間の電圧Vcを中間転写ベルト21の回動開始以降における基準値のVrより低い値としたので、中間転写ベルト21にクリーニングバイアスによる不要な電荷が溜まり、この電荷に起因するトナー汚れの発生を防止することができる。
【0042】
<実施の形態2>
上記実施の形態では、ベルト表面に付着している、逆極性(プラス)に帯電した残留トナー29を静電的に吸着して回収する構成例を説明したが、本実施の形態では、プラスに帯電した残留トナー29にマイナス電圧を印加してマイナスに帯電させる構成としており、この点が異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0043】
図4は、本実施の形態に係るクリーナ80の構成を示す図である。
同図に示すように、クリーナ80は、帯電ブラシ81と、第1クリーニングバイアス出力部54と、第2クリーニングブラシ55と、第2回収ローラ56と、第2スクレーパ57と、第2クリーニングバイアス出力部58と、噴煙防止シール59などを備える。
帯電ブラシ81は、金属等の導電性材料の薄板に、先端がベルト表面に接触する導電性のブラシ部82を備えてなる。より詳しくは、駆動ローラ22の軸方向に長い薄板状の導電性材料の片面に、ブラシ繊維、あるいは、ブラシ繊維が織り込まれた導電性の基布が接着されることにより、薄板から伸びた繊維が駆動ローラ22の軸方向に並んでブラシ部82が形成されている。ブラシ部82に用いられるブラシ繊維は、上記第1クリーニングブラシ51のブラシ部512と同じ材料のものである。
【0044】
帯電ブラシ81には、第1クリーニングバイアス出力部54から出力されるマイナスのクリーニングバイアスが印加され、このマイナスのバイアス電圧により、ベルト表面上の残留トナーがブラシ部82を通過する際に、その残留トナーの帯電極性がマイナスに揃えられるようになっている。具体的には、逆極性(プラス)に帯電している残留トナー29についてはマイナス帯電に変えられ、正規(マイナス)に帯電している残留トナー28についてはその帯電量がより増やされる。
【0045】
マイナス帯電に揃えられた残留トナーは、帯電ブラシ81よりもベルト走行方向下流側に位置する第2クリーニングブラシ55により吸着され、ベルト表面から除去される。
このような帯電ブラシ81を用いる構成においても、第2クリーニングブラシ55に印加するクリーニングバイアスの電圧を上記のタイミングで値Vc、Vrに切り換えることにより、トナー汚れを防止することができる。なお、残留トナーに正規帯電極性と同極性の電圧を付与して、その残留トナーの極性を正規帯電極性と同極性に揃えることができる部材であれば、ブラシ状のものに限られず、例えば導電性のシート状、ローラ状、ブレード状のものなどを用いることもできる。また、必ずしもベルト表面に接していなくても良く、コロナ放電を利用したワイヤや鋸歯電極を備えた帯電器などを用いるとしても良い。
【0046】
<実施の形態3>
上記実施の形態では、下流側クリーニングバイアスの電圧値を、中間転写ベルト21の回動開始までは基準値であるVrよりも低いVcに抑え、中間転写ベルト21の回動開始と同時にVrに切り換えるとしたが、本実施の形態では、電圧Vcを中間転写ベルト21の回動が開始されても一定時間だけ継続して、その後にVr´に切り換えるとしており、この点が異なっている。
【0047】
図5は、本実施の形態に係る下流側クリーニングバイアス電圧の切り換わりの様子を示すタイミングチャートである。
同図に示すように、下流側クリーニングバイアスの電圧の値は、中間転写ベルト21の回動開始時t2以降も開始前のVcが継続しており、時点t2からの経過時間が一定時間T2に達した時点t3でVr´に切り換えられるようになっている。このように中間転写ベルト21の回動開始から一定時間T2に亘って下流側のクリーニングバイアス電圧(プラス)の値をVcに抑えているのは、次の理由による。
【0048】
すなわち、装置構成によっては、走行中の中間転写ベルト21の、第1クリーニングブラシ51を通過した後のベルト部分に、第1クリーニングブラシ51のクリーニングバイアスによるマイナス電荷が溜まり、マイナス電荷が溜まった状態のまま下流側の第2クリーニングブラシ55に到達することが生じる場合がある。この場合、下流側のクリーニングバイアス電圧(プラス)の基準値を、このマイナス電荷の影響を考慮せずに、例えば実施の形態1の基準値Vrと同じ値に設定すると、このマイナス電荷により、下流側におけるプラス電荷による静電吸着の効果が低減することになってしまう。
【0049】
そこで、上流側クリーニングバイアスによるマイナス電荷の影響を受け易い構成の場合には、予め下流側のクリーニングバイアス電圧の基準値を、マイナス電荷の影響を受けない構成(例えば、実施の形態1)の基準値よりも高い値(図5の例では、Vr´)に設定して、マイナス電荷による電圧降下分を補う(マイナス電荷により電圧降下する分を予め加算しておく)ことが行われる。
【0050】
このように基準値を高い値に設定した場合、中間転写ベルト21のうち、上流側の第1クリーニングブラシ51によるマイナス電荷の溜まったベルト部分については、そのマイナス電荷による電圧降下が生じた状態で、規定の電圧である基準値にほぼ維持される。
ところが、中間転写ベルト21には、マイナス電荷の影響を受けていない部分も存在する。具体的には、停止中(時点t1〜t2間)における中間転写ベルト21の、第1クリーニングブラシ51からベルト走行方向に第2クリーニングブラシ55までの部分(図2の212)である。この部分212については、マイナス電荷が存在せず、ベルト回動開始と同時に第2クリーニングブラシ55に高い電圧Vr´が印加されると、ベルト走行中とはいえ、電圧が高いゆえにプラス帯電によるプラス電荷が溜まってしまうことがある。
【0051】
ベルト部分212にプラス電荷が溜まった状態になると、噴煙防止シール59やフィルミング防止摺擦部材60に付着しているトナーがベルト部分212に引き付けられてベルト表面を汚してしまうおそれが生じる。そこで、中間転写ベルト21のベルト部分212が第2クリーニングブラシ55を通過するのに要する時間T2(時点t2〜t3)、下流側の第2クリーニングブラシ55に印加されるバイアス電圧の値をベルト停止中と同じ値であるVcに抑えて、プラス電荷が溜まることを防止するものである。この所定時間T2は、例えばベルト部分212の周長(ベルト表面上における、第1クリーニングブラシ51との接触位置からベルト走行方向に第2クリーニングブラシ55との接触位置までの距離)をベルト回動速度で除した値として求められる。
【0052】
このように上流側のクリーニングバイアスによるマイナス電荷が溜まり易い構成においても、下流側のクリーニングバイアスの電圧値を上記のように切り換えることによりベルト表面のトナー汚れを防止することが可能になる。
なお、上記では、時間T2における下流側のクリーニングバイアスの電圧値をベルト停止中における電圧値Vcと同じ値としたが、これに限られない。装置構成によって適切な値、例えばVcとVrの間の値、Vcよりも小さい値などとすることができる。
【0053】
<実施の形態4>
上記実施の形態では、クリーニングバイアス電圧の切換制御を、中間転写ベルト21を清掃するクリーナ24に適用した構成例を説明したが、本実施の形態では、感光体ドラムを清掃するクリーナに適用するとしており、この点が異なっている。
図6は、本実施の形態に係るクリーナ106の構成例を示す図であり、図7は、クリーニングバイアス電圧の切り換わりの様子を示すタイミングチャートである。
【0054】
図6の符号101で示す部材は感光体ドラム、102は帯電ローラ、105は転写ローラであり、上記実施の形態と同様に、電子写真方式により感光体ドラム101上にトナー像を形成すると共に、転写ローラ105間の転写ニップを用紙Sが通過する際に、感光体ドラム101上に形成されたトナー像をその用紙Sに転写する構成になっている。なお、同図では、露光部と現像器が省略されている。
【0055】
クリーナ106は、転写後に感光体ドラム101上に残った残留トナー28を清掃するものであり、クリーニングブラシ111と、回収ローラ112と、スクレーパ113と、クリーニングバイアス出力部114と、噴煙防止シール115などを備える。これらは、実施の形態1の第2クリーニングブラシ55〜噴煙防止シール59と基本的に同じ機能を有するものである。
【0056】
図7に示すように、まず時点t1でクリーニングバイアスが出力される。クリーニングブラシ111に印加されるクリーニングバイアスの電圧値は、基準値Vrよりも低いVc(>0)である。電圧値をVcに抑えるのは、上記実施の形態における中間転写ベルト21を清掃する構成と同様の理由による。すなわち、クリーニングバイアスの電圧値が大きいと、感光体ドラム101の停止中に、ドラム表面のクリーニングブラシ111との接触部分に不要な電荷が溜まり、感光体ドラム101の回転開始後に噴煙防止シール115に付着している残留トナーが、この溜まった電荷に引き付けられてドラム表面を汚してしまうといったことを防止するためである。
【0057】
時点t1から所定時間T1が経過した時点t2で、駆動モータ(不図示)により感光体ドラム101とクリーニングブラシ111と回収ローラ112の回転駆動が開始されると共に、クリーニングバイアスの電圧値がVcからVrに切り換えられる。
このようにクリーニングバイアスの電圧値を感光体ドラム101の回転開始前までは、基準値のVrよりも低いVcに、回転開始時以降にVrに切り換えることにより、感光体ドラム101表面のトナー汚れを防止することができる。本実施の形態のクリーナ106を実施の形態1のクリーナ6に適用することも可能である。
【0058】
本発明は、画像形成装置に限られず、上記のクリーニングバイアス電圧の制御方法であるとしてもよい。さらに、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。また、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
【0059】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態1では、第1クリーニングブラシ51が第2クリーニングブラシ55よりもベルト走行方向上流に位置する構成としたが、これに限られず、例えば第2クリーニングブラシ55が第1クリーニングブラシ51よりも上流に位置する構成をとることもできる。また、回転するとしたが、回転しないものであっても良い。例えば、ブレード状の部材を用いることもできる。さらに、ベルト表面に数ミリ程度の食い込み量を有するとしたが、ベルト表面に接していれば良い。また、逆極性に帯電しているトナー29をも清掃可能な構成としたが、逆極性に帯電するトナーがほとんど発生しない、または発生しても微少であるためにトナー汚れにまで至らないような装置構成の場合には、上流側の第1クリーニングブラシ51等を備えない構成としても良い。
【0060】
(2)上記実施の形態1では、クリーニングバイアスの電圧値Vcを一定値としたが、これに限られない。例えば、0<Vc<Vrの範囲内においてVcの値が段階的に上がるような制御、漸次上昇するような制御などを用いるとしても良い。すなわち、電圧値Vcとは、時間的に可変する値を含む意味で用いられる。また、クリーニングバイアスの電圧値が、その印加開始から中間転写ベルト21の回動開始までの間、Vcであり、当該回動開始以降にVrに切り換えられるとしたが、切換時が回動開始時に限られない。トナー汚れの抑制という効果が発揮される範囲で、当該開始時の直前に切換を実行するとしても良い。すなわち、上記の回動開始までの間とは、この直前の切換を含む意味で用いられる。これらのことは、他の実施の形態でも同様である。さらに、0<Vc<Vrの範囲内でトナー汚れ抑制の効果を得られれば良く、上記(式1)の範囲に限られることもない。
【0061】
(3)上記実施の形態では、正規帯電極性がマイナス極性であるトナーを用いた構成例(Vr>0のとき0<Vc<Vr)を説明したが、例えばプラス極性のトナーが用いられる場合には、上記で説明した極性が全て逆に変わり、電圧値VcとVrは、Vr<0かつVr<Vc<0の関係が満たされるように構成される。
また、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラーデジタルプリンタ等に適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、回動可能な像担持体表面に担持されたトナー像を被転写材に静電転写し、当該転写後に当該像担持体表面に残ったトナーを電気的に吸着して清掃する構成の画像形成装置であれば、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。ここで、上記の構成において、例えば像担持体が感光体ドラムである場合には、被転写材が中間転写ベルトになり、像担持体が中間転写ベルトである場合には、被転写材が記録用のシートということになる。像担持体としては、感光体や中間転写ベルトに限られず、例えば中間転写ドラムなどであっても良い。
【0062】
さらに、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体上の残留トナーを電気的に除去する構成において、その残留トナーによる像担持体表面の汚れの発生を抑制する技術として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1、101 感光体ドラム
6、24、80、106 クリーナ
10 プリンタ
14 制御部
21 中間転写ベルト
28、29 残留トナー
51、55、111 クリーニングブラシ
54、58、114 クリーニングバイアス出力部
70、71、72、73、74 駆動モータ
81 帯電ブラシ
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能な像担持体と、前記像担持体表面に担持されたトナー像を被転写材に静電転写する転写部と、前記像担持体表面に接し前記転写後にその表面に残ったトナーを清掃するクリーニング部材とを有し、前記像担持体の回動開始に先立って、前記像担持体表面を清掃するための、前記トナーの正規帯電極性とは逆極性のバイアス電圧を前記クリーニング部材に印加させる画像形成装置であって、
前記像担持体の回動開始以降における前記バイアス電圧の値を基準値Vrとしたとき、電圧印加開始から前記像担持体の回動開始までの間の値Vcが、Vr>0のとき0<Vc<Vr、Vr<0のときVr<Vc<0の範囲にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記バイアス電圧の値が、前記像担持体の回動開始と略同時に値VcからVrに切り換えられることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回動方向上流または下流に位置し、前記像担持体表面に接する別のクリーニング部材を備え、
前記別のクリーニング部材には、前記像担持体の回動開始に先立って、前記像担持体表面に残っている、前記正規帯電極性とは逆の極性に帯電しているトナーの清掃のための、前記正規帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回動方向上流に位置し、前記像担持体表面に接する別のクリーニング部材を備え、
前記別のクリーニング部材には、前記像担持体の回動開始に先立って、前記像担持体表面に残っている、前記正規帯電極性とは逆の極性に帯電しているトナーの清掃のための、前記正規帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加され、
前記クリーニング部材に印加される逆極性のバイアス電圧の値が前記像担持体の回動開始から所定時間経過時点に値VcからVrに切り換えられることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記所定時間は、
前記像担持体の周面上における、前記別のクリーニング部材との接触位置から回動方向に前記クリーニング部材との接触位置までの間の距離を当該像担持体の回動速度で除した値であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
回動する感光体上に作像された静電潜像をトナーで現像することにより当該感光体上にトナー像を形成し、当該感光体上に形成されたトナー像を、回動する中間転写体に転写し、当該中間転写体上に転写されたトナー像を、搬送されるシートに転写する構成であり、
前記像担持体が前記感光体であり前記転写材が前記中間転写体である、または、前記像担持体が前記中間転写体であり前記転写材が前記シートであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記クリーニング部材よりも前記像担持体の回動方向上流に位置し、前記像担持体表面に残っているトナーに前記正規帯電極性と同極性の電圧を付与して、当該トナーの極性を当該正規帯電極性と同極性に揃える帯電部材を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記クリーニング部材は、導電性のブラシローラまたは発泡ローラであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−211142(P2010−211142A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59784(P2009−59784)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】