説明

画像形成装置

【課題】除電光量の低下による感光体ドラムの帯電性能の変化を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】非晶質シリコン系の表面層を有し、その回転駆動によって表面層に帯電や露光を経て形成したトナー像を転写材に転写させる感光体ドラム(18)と、感光体ドラムを帯電させる帯電器(20)と、この帯電に至る前に表面層に除電光を照射する光源を有し、転写を経た後のこの表面層に残された電荷を除去する除電ユニット(19)と、光源を発光させる駆動電流と帯電器に付与する帯電電流との関係に基づいて、除電光の光量低下分を補うように、駆動電流を制御する制御手段(92)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムのトナー像を中間転写体や用紙に出力する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が感光体ドラムを予め帯電し、露光部が感光体ドラムの表面層に光を照射すると、この表面層には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、現像バイアス電圧を印加すると、トナーが励起して静電潜像に付着し、トナー像が感光体ドラムの表面層に形成される。そして、この可視化されたトナー像を用紙に、或いは中間転写体を介して用紙に転写して定着させる。
【0003】
ここで、感光体ドラムの表面層に除電光を照射する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。感光体ドラムの露光履歴を解消しておかなければ、メモリー画像が発生するからである。そこで、除電ユニットの光源が帯電に至る前に除電光を照射し、転写後の感光体ドラムの表面層に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0004】
また、感光体ドラムの表面層の膜減りが生じたり、その使用環境が変化したりすると、感光体ドラムの帯電性能を維持できない。そのため、当該技術では、感光体ドラムの使用期間や感光体ドラムの温度・湿度に応じて除電光量を調整し、感光体ドラムの帯電性能を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−158024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、感光体ドラムには、上述した膜減りの生じ易い有機系の表面層を有したOPC感光体の他、非晶質シリコン系の表面層を有した長寿命の構造がある。つまり、この感光体ドラムによれば、非晶質シリコン系の表面層の膜減りは生じないし、また、使用環境が変化しても感光体ドラムの帯電性能はほとんど変わらないことから、感光体ドラムの使用期間や温度・湿度に応じた除電光量の調整は不要である。
【0007】
しかしながら、感光体ドラムの帯電性能は、光源からの除電光量の低下によって維持困難になるとの問題がある。表面層への除電光量が低下すると、上述の如くメモリー画像が発生するからである。
この場合に、光源の駆動電流を増やし、除電光量を単にメモリー画像が生じない大きな値に設定してその低下分を補うと、次の画像形成時に必要な表面電位に高める際に帯電電流、つまり、帯電器から感光体ドラムへの流れ込み電流が増加し、感光体ドラムの表面層を保護する導電剤が劣化して表面層の抵抗値が上昇するので、やはり帯電性能が変化してしまう。
【0008】
このように、非晶質シリコン系の表面層を有した感光体ドラムにおいて、除電光量の低下によるその帯電性能の変化を抑えるためには、この光源自体に着目、換言すれば、光源の駆動電流、及びこの駆動電流の大きさで決まる帯電電流の観点から除電光量の低下分を補う必要があるが、感光体ドラムの観点のみから単に除電光量を調整する上記従来の技術では、この点については格別な配慮がなされていない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、除電光量の低下による感光体ドラムの帯電性能の変化を抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1の発明は、非晶質シリコン系の表面層を有し、その回転駆動によって表面層に帯電や露光を経て形成したトナー像を転写材に転写させる感光体ドラムと、感光体ドラムを帯電させる帯電器と、この帯電に至る前に表面層に除電光を照射する光源を有し、転写を経た後のこの表面層に残された電荷を除去する除電ユニットと、光源を発光させる駆動電流と帯電器に付与する帯電電流との関係に基づいて、除電光の光量低下分を補うように、駆動電流を制御する制御手段とを具備する。
【0011】
第1の発明によれば、非晶質シリコン系の表面層を有した感光体ドラムでは、この表面層の硬度が高くその表面層の膜減りがほとんど起こらないため、除電ユニットの光源がこの表面層を照射する除電光量と帯電器に付与する帯電電流との関係は、ほぼ一定になる。
ここで、除電光量は、光源を発光させる駆動電流で決まり、この駆動電流の大きさに比例する。
【0012】
しかし、光源の劣化が生ずると、使用当初と同じ大きさの駆動電流を光源に流しても、使用当初と同じ大きさの除電光量は得られず、光源の劣化時の除電光量は低下し、使用当初の除電光量を常に下回る。つまり、使用当初の除電光量を得るためには、使用当初よりも大きな駆動電流を光源に流さなければならない。
【0013】
なお、この除電光量の低下は環境温度の上昇によっても生じ、当該温度の上昇時の除電光量は低下し、使用当初の除電光量を常に下回る。
そして、この駆動電流と除電光量との関係を、上述したほぼ一定である除電光量と帯電電流との関係でみれば、光源の劣化時や環境温度の上昇時の帯電電流は、使用当初の帯電電流を常に下回るため、光源の劣化時や環境温度の上昇時の駆動電流を使用当初の駆動電流よりも常に大きく設定すれば、除電光量の低下分を補うことができる。
【0014】
そこで、本発明では、制御手段がこれら駆動電流と帯電電流との関係に基づいて、除電光量低下分を補うように、駆動電流を制御している。よって、使用当初の除電光量を確保でき、感光体ドラムの帯電性能を維持可能になる。この結果、安定した画像形成性能を得ることができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明の構成において、制御手段は、光源の所定期間が経過した場合や画像形成装置の環境温度が上昇した場合に、帯電電流及び駆動電流から特性曲線を得る特性曲線取得部を備えることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、制御手段が特性曲線取得部を備えており、この特性曲線取得部は、光源の劣化時や環境温度の上昇時の除電光量が使用当初の除電光量を常に下回る関係を、上述したほぼ一定である除電光量と帯電電流との関係にあてはめて光源駆動電流−帯電電流による特性曲線を得ており、光源の劣化時や環境温度の上昇時の帯電電流が使用当初の帯電電流を常に下回る点を明確にする。これにより、帯電電流からみた除電光量低下分が明確になり、この低下分を確実に補うことができる。
【0016】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、制御手段は、表面層の露光履歴解消及び帯電器の寿命から決定される帯電電流の使用範囲を用い、除電光の光量低下分を補うための駆動電流の範囲を設定する駆動電流範囲設定部を備えることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、制御手段は駆動電流範囲設定部を備え、この駆動電流範囲設定部が、メモリー画像を防止するために最低限必要な帯電電流から帯電器の寿命を短くさせない帯電電流の上限値までの範囲を用いて、除電光量の低下分を補うための駆動電流を設定する。これにより、駆動電流からみた除電光量低下分が明確になり、この低下分をより確実に補うことができる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明の構成において、駆動電流範囲設定部は、表面層の露光履歴解消及び帯電器の寿命から決定される帯電電流の使用範囲を用い、光源による除電光の光量低下前における駆動電流の範囲を設定していることを特徴とする。
第4の発明によれば、第3の発明の作用に加えてさらに、駆動電流範囲設定部は、光源による除電光の光量低下前、例えば使用当初における駆動電流の範囲を設定しており、光源の劣化時や環境温度の上昇時の駆動電流が使用当初の駆動電流を常に上回る関係を明らかにする。よって、除電光量低下分を補うための駆動電流をより一層明確に設定できる。
【0018】
第5の発明は、第1から第4の発明の構成において、光源は、感光体ドラムの回転軸線に沿って略同等の発光特性を有した複数のLEDチップであることを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、光源がLEDチップである場合には、このLEDチップを封入する透明樹脂が、例えばチップの熱で劣化してその透明度が落ちる「光源の劣化」や、温度上昇によってチップの発光効率が低下する「環境温度の上昇」を原因とする除電光量の低下が顕著になる。しかしながら、上述した制御手段を用いれば除電光量低下分を補えるため、使用当初の除電光量を十分に確保できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光源の駆動電流と帯電電流との関係から除電光量の低下分を補っているため、除電光量が低下しても感光体ドラムの帯電性能を維持できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のプリンタのコントローラを含めた構成図である。
【図3】図1の画像形成ユニット周辺の断面図である。
【図4】図2の除電光量制御部の説明図である。
【図5】除電光量と帯電電流との関係を説明する図である。
【図6】除電光量と感光体ドラムの光メモリー電位との関係を説明する図である。
【図7】光源の駆動電流と除電光量との関係を説明する図である。
【図8】光源の駆動電流と帯電電流との関係(特性曲線)を説明する図である。
【図9】光メモリー電位の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるカラー印刷可能なプリンタ1の構造が概略的に示されている。同図に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は同図中の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0022】
図1に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙が積層された状態で収納されている。同図でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられる。
【0023】
そして、用紙は、図1において給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0024】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び2次転写部30が順番に配置されている。
画像形成部16には4個の画像形成ユニット17が並設され、各画像形成ユニット17には感光体ドラム18がそれぞれ設けられている(図1及び図3)。この感光体ドラム18は回転自在に設置され、図示しない駆動モータによって図1及び図3の時計回りにそれぞれ駆動する。
【0025】
本実施例の感光体ドラム18は、例えばφ30mmの直径で形成され、その表面に非晶質シリコン系の表面層を有したa−Siドラムである。
また、この感光体ドラム18と給紙カセット4との間には露光部15が備えられており(図1)、この露光部15からは、レーザ光が各感光体ドラム18に向けてそれぞれ照射される。そして、これら図1及び図3に示されるように、各感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、中間転写ローラ13、クリーニング部50やイレーサ(除電ユニット)19がそれぞれ設けられている。
【0026】
この帯電器20は、図3にも示される如く画像形成ユニット17の下部に位置し、感光体ドラム18に接する帯電ローラ21、及び帯電ローラ21の表面を研磨摺擦にて清掃するブラシを備えた摺擦ローラ22を有し、感光体ドラム18の表面層に直接に接触して帯電させる。なお、帯電ローラ21は、例えばエピクロルヒドリンゴム製であり、例えばφ12mmの直径で形成されている。
【0027】
また、現像器24は図1及び図3において画像形成ユニット17の左方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラ25を有する。この現像ローラ25は図示しない駆動モータによって図1及び図3の反時計回りに駆動する。
画像形成部16は中間転写ベルト(転写材)12を有し、当該中間転写ベルト12は各感光体ドラム18の上方に配置され、この中間転写ベルト12と排紙トレイ36との間には4個のトナーコンテナ23が配設されている(図1)。これら各トナーコンテナ23は、プリンタ1の背面側から前面側に向けて、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、そして、ブラック用の順に配設され、このブラック用のトナーコンテナの容量が最も大きく構成される。
【0028】
2次転写部30には2次転写ローラ31が備えられ、この2次転写ローラ31は中間転写ベルト12に対して斜め下方から圧接可能に構成されている。これら中間転写ベルト12と2次転写ローラ31とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。
また、用紙搬送方向でみて2次転写部30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排紙トレイ36が順番に配置されている。
【0029】
本実施例では、2次転写部30と手差しトレイ3との間に両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
上記のクリーニング部50は、図3に示されるように、感光体ドラム18の回転方向でみて中間転写ローラ(1次転写ローラ)13との転写位置の下流側にて、クリーニングブレード52、摺擦ローラ56やトナー回収部80を有している。
【0030】
具体的には、摺擦ローラ56は、図示しない駆動モータによって図3の反時計回りに駆動し、トナー像が転写された後の感光体ドラム18の表面層をトレール方向で摺擦研磨する。これにより、この摺擦ローラ56は、非晶質シリコン系の表面層に付着する残留トナーなどを除去する。
クリーニングブレード52は、ハウジング51の下端に固定される亜鉛鋼板の本体や、この本体に溶着されたポリウレタンゴム製のブレード部からなり、このブレード部のエッジが感光体ドラム18にカウンタ方向で接し、上記表面層に付着した残留トナーなどを掻き取っている。
【0031】
これらクリーニングブレード52や摺擦ローラ56によって感光体ドラム18の表面層から掻き取られた残留トナーは、ハウジング51内に溜まり、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延びたスクリュー88によって搬送され、図示しない回収容器に集められる。
上述のイレーサ19は、感光体ドラム18の回転方向でみて帯電器20の上流側、具体的には、クリーニング部50の上流側に位置するハウジング51の上端に配置されており、今回の転写を経ると直ちにその除電光を感光体ドラム18の表面層に照射し、この除電から次回の帯電までの間に、クリーニングユニット50によるクリーニング工程を挟んで感光体ドラム18の表面層に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0032】
より詳しくは、イレーサ19は、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延びたイレース基板19aを有し、イレース基板19aには、複数のLEDチップ(光源)74に駆動電流を与える駆動回路が形成されている。
各LEDチップ74は透明樹脂に封入され、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って略等間隔でイレース基板19aに配置されており、上記駆動回路からの駆動電流でそれぞれ発光する。
【0033】
ところで、これら各LEDチップ74の発光特性はイレーサ19の製造時には略同等であるが、上記透明樹脂の透明度が落ちると、その除電光量が低下する(光源の劣化)。また、プリンタ1内の温度が上昇した場合には、LEDチップ74の発光効率が低下し、この温度が低下するまでは一時的に除電光量が低下する(環境温度の上昇)。
【0034】
そこで、本実施例では、これら光源の劣化や環境温度の上昇を原因としたLEDチップ74の除電光量低下分を補っており、これは、図2に示されたコントローラ90からの駆動信号によって実施される。
なお、当該LEDチップ74の除電光量低下分を補正する原理については、後に図5〜図8を用いて改めて詳述し、ここでは、図2及び図4によるコントローラ90の構成を中心に説明する。
【0035】
コントローラ90は除電光量制御部(制御手段)92を備え(図2)、使用当初の除電光量を確保できるように、LEDチップ74を発光させる駆動電流の大きさを制御する。より具体的には、図4に示される如く、本実施例の除電光量制御部92は特性曲線取得部94及び駆動電流範囲設定部96を有する。
この特性曲線取得部94は、LEDチップ74を発光させる駆動電流Iledと帯電ローラ21に付与する帯電電流Iとの関係で形成される特性曲線(光源駆動電流−帯電電流による特性曲線)を取得する。
【0036】
これは、LEDチップ74からの除電光量Eを光量測定装置で測定すると、後述のように、a−Siドラム18では、除電光量Eと帯電ローラ21に付与する帯電電流Iとの関係がほぼ一定になる点に着目したものである。
この除電光量Eは上記駆動回路に入力される駆動電流Iledの大きさで求めることができる。帯電電流Iは、帯電ローラ21からa−Siドラム18の表面層への流れ込み電流を、例えばa−Siドラム18の一周分計測した平均値から求めることができる。
【0037】
これにより、特性曲線取得部94は、光源駆動電流−帯電電流による特性曲線を取得し、この取得結果を駆動電流範囲設定部96に出力する。
なお、当該特性曲線の取得はプリンタ1の電源投入時に行われる。LEDチップ74の劣化は2000〜3000時間のスケールで生ずるので、このスケールを鑑みれば、特性曲線は電源投入時に取得すれば十分だからである。
【0038】
次に、駆動電流範囲設定部96は、帯電電流Iの使用範囲を用いて上記駆動回路に入力される駆動電流Iledの範囲を設定している。
具体的には、この帯電電流Iの使用範囲は、a−Siドラム18の表面層で露光履歴を解消するために最低限必要な帯電電流Iminと、帯電ローラ21を短命にしない上限の帯電電流Imaxとで決定されており、この帯電電流Iの使用範囲Imin〜Imaxを、上記光源駆動電流−帯電電流による特性曲線にあてはめて上記駆動回路に入力される駆動電流Iledの範囲を設定し、この設定結果をイレーサ19の駆動回路に向けて出力している。
【0039】
また、本実施例の駆動電流範囲設定部96は、この駆動電流Iledの範囲を、例えば使用当初の如く、LEDチップ74の除電光量低下前における駆動電流の範囲Iled_min〜Iled_maxを予め設定してメモリ98に格納している。
これは、その後、LEDチップ74の除電光量が低下した場合には、上記除電光量低下前における駆動電流の範囲Iled_min〜Iled_maxをメモリ98から呼び出して、除電光量低下後における駆動電流の範囲Iled´_min〜Iled´_maxと比較すれば、LEDチップ74の除電光量がどの程度低下したかを容易に認識できるからである。
【0040】
なお、この使用当初の駆動電流は、除電光量低下前における駆動電流の範囲Iled_min〜Iled_maxの範囲内であれば任意の値に設定可能であるが、例えばこれらの平均値(Iled_min+Iled_max)/2に設定すれば、上限値Iled_max及び下限値Iled_minに対してマージンを持つことができて望ましい。
【0041】
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙はレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて2次転写部30へと送出する。
【0042】
一方、図2の入力ポート91は、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、コントローラ90では光の照射などを制御する。
詳しくは、各感光体ドラム18の表面層に対してイレーサ19のLEDチップ74がそれぞれ点灯して除電し、帯電器20が感光体ドラム18の表面層をそれぞれ帯電する。
【0043】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面層にレーザ光をそれぞれ照射すると、各感光体ドラム18の表面層には静電潜像が作られ、現像バイアス電圧の印加によりこの静電潜像から各色のトナー像が形成される。
各トナー像は中間転写ベルト12に重ね合わされ(1次転写)、2次転写部30にて用紙に2次転写される。なお、感光体ドラム18の表面層に残留したトナーはクリーニング部50等で除去される。
【0044】
続いて、用紙は未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。
【0045】
つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、2次転写部30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
以上のように、本実施例によれば、a−Siドラム18では、その表面層の硬度が高くその膜減りがほとんど起こらないため、イレーサ19のLEDチップ74がこの表面層を照射する除電光量Eと帯電ローラ21に付与する帯電電流Iとの関係は、ほぼ一定になる。
【0046】
詳しくは、図5に示されるように、除電光量Eが少ない場合には、この除電光量Eの変化に対して帯電電流Iは大きく変化する一方、除電光量Eが多くなると、a−Siドラム18の表面層で発生するキャリア量が次第に飽和するので、帯電ローラ21からa−Siドラム18の表面層に流れ込む電流量も次第に飽和し、除電光量Eの変化に対して帯電電流Iの変化が小さくなる。
【0047】
次に、除電光量Eが小さいと、a−Siドラム18の表面層では前回の露光履歴を解消できず、メモリー画像が発生して画像劣化を引き起こす。光メモリー電位(以降、メモリー電位と称する)について図9を使って説明する。図9の表面電位Vは現像位置でa−Siドラム18の表面電位を測定したものである。1周目に表面電位Voに帯電され、2周目においてソリッド画像を露光する。露光された部分(露光領域)の表面電位はVLまで低下する。除電の後、再帯電を行うが、除電の光量が十分でないと、露光プロセスで感光層に過剰発生した光キャリアの残留電荷の影響により、帯電プロセスにおいて、光キャリアの残留電荷が帯電を打ち消し、再帯電後の表面電位はVrとなり、Voよりも低くなってしまう。一方、非露光領域の再帯電後の表面電位は、光キャリアの残留電荷による打ち消しが起こらない為、表面電位Voに帯電される。この電位差Vmrがメモリー電位である。メモリー電位Vmrが大きくなると、ソリッド画像部の再帯電後の表面電位が大きく低下するので、かぶりが発生し、画像劣化を引き起こす。除電光量を十分に大きくすると、除電プロセスにおいて、ソリッド画像部の露光領域及び非露光領域ともに大量の光キャリアが発生するため、ソリッド画像部の露光領域と非露光領域における残留光キャリアの差が小さくなるので、メモリー電位Vmrは小さくなる。
図6に示された除電光量Eとa−Siドラム18の上記メモリー電位Vとの関係において、このメモリー画像が生ずる表面電位の下限値をVmとしたときの除電光量をEminとし、この除電光量Eminを図5にあてはめると、メモリー画像を防止するために最低限必要な帯電電流Iminが決まる。
【0048】
一方、この帯電ローラ21の寿命を短くしないためには、帯電電流の上限値Imaxが必要である。
ここで、除電光量Eは、LEDチップ74を発光させる駆動電流Iledで決まり、この駆動電流Iledの大きさに比例する(図7)。
しかし、LEDチップ74を封入する透明樹脂が、例えばLEDチップ74の熱で劣化してその透明度が落ちると、この図7に示されるように、使用当初と同じ大きさの駆動電流Iled0をLEDチップ74に流しても、使用当初と同じ大きさの除電光量E0は得られず、LEDチップ74の劣化時の除電光量E´は低下して使用当初の除電光量E0を常に下回る。つまり、使用当初の除電光量E0を得るためには、使用当初よりも大きな駆動電流Iled´をLEDチップ74に流さなければならない。
【0049】
また、この除電光量Eの低下は環境温度の上昇によっても生じ、当該温度の上昇時の除電光量Eは低下し、使用当初の除電光量E0を常に下回る。
そして、この駆動電流Iledと除電光量Eとの関係を、上述したほぼ一定である除電光量Eと帯電電流Iとの関係でみれば、図8に示される如く、光源駆動電流−帯電電流による特性曲線が得られ、LEDチップ74の劣化時や環境温度の上昇時の帯電電流は、使用当初の帯電電流を常に下回るため、LEDチップ74の劣化時や環境温度の上昇時の駆動電流Iled´を使用当初の駆動電流Iled0よりも常に大きく設定すれば、除電光量Eの低下分を補うことができる。
【0050】
そこで、本実施例では、除電光量制御部92がこれら駆動電流Iledと帯電電流Iとの関係に基づいて、除電光量低下分を補うように、駆動電流Iledの範囲を制御している。よって、使用当初の除電光量E0を確保でき、a−Siドラム18の帯電性能を維持可能になる。この結果、安定した画像形成性能を得ることができる。
【0051】
また、除電光量制御部92が特性曲線取得部94を備えており、この特性曲線取得部94は、LEDチップ74の劣化時や環境温度の上昇時の除電光量E´が使用当初の除電光量E0を常に下回る関係、換言すれば、LEDチップ74の劣化時や環境温度の上昇時に必要な駆動電流Iled´が使用当初の駆動電流Iled0を常に上回る関係を、上述したほぼ一定である除電光量Eと帯電電流Iとの関係にあてはめて、図8の光源駆動電流−帯電電流による特性曲線を得ており、LEDチップ74の劣化時や環境温度の上昇時の帯電電流が使用当初の帯電電流を常に下回る点を明確にする。これにより、帯電電流Iからみた除電光量低下分が明確になり、この低下分を確実に補うことができる。
【0052】
さらに、除電光量制御部92は駆動電流範囲設定部94を備え、この駆動電流範囲設定部94が、メモリー画像を防止するために最低限必要な帯電電流Iminから帯電ローラ21の寿命を短くさせない帯電電流の上限値Imaxまでの範囲を用いて、除電光量の低下分を補うための駆動電流Iled´_min(図8に●印で示す)からIled´_max(図8に■印で示す)を設定する。これにより、駆動電流Iledからみた除電光量低下分が明確になり、この低下分をより確実に補うことができる。
【0053】
さらにまた、駆動電流範囲設定部94は、LEDチップ74による除電光量低下前(例えば使用当初)における駆動電流Iled_min(図8に○印で示す)からIled_max(図8に□印で示す)の範囲を設定してメモリ98に格納しており、LEDチップ74の劣化時や環境温度の上昇時の駆動電流Iled´が使用当初の駆動電流Iled0を常に上回る関係を明らかにする。よって、除電光量低下分を補うための駆動電流Iled´_min(図8に●印で示す)からIled´_max(図8に■印で示す)の範囲をより一層明確に設定できる。
【0054】
また、本実施例の如くLEDチップ74を用いた場合には、このLEDチップ74の劣化や環境温度の上昇を原因とする除電光量の低下が顕著になる。しかしながら、上述の除電光量制御部92を用いれば除電光量低下分を補えるため、使用当初の除電光量E0を十分に確保できる。
なお、本実施例における各種数値を明記する。まず、a−Siドラム18のドラム線速は400[mm/sec] 、光メモリー電位Vは5[V]である。
【0055】
また、帯電ローラ21の帯電直流電圧は490[V]、電圧振幅は1000[V]、帯電電圧周波数は2.75[kHz]であり、帯電電流上限Imaxは250[μA]、帯電電流下限Iminは200[μA]である。さらに、LEDチップ74の照射位置から帯電ローラ21に到達するまでの時間は80[mmsec]である。
【0056】
そして、使用当初の駆動電流下限Iled_minは17[mA]、駆動電流上限Iled_maxは60[mA]であるのに対し、除電光源劣化後の駆動電流下限Iled´_minは40[mA]、駆動電流上限Iled´_maxは100[mA]である。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0057】
例えば、上記実施例では、LEDチップ74を有したイレーサ19について説明したが、本発明の光源はレーザダイオードや有機EL素子であっても良い。これらの場合にも光源劣化による除電光量の低下が生ずるからである。
また、上記実施例では、中間転写ベルトを採用したプリンタ1で説明されている。しかし、本発明は、感光体ドラム18のトナー像を用紙に直接に転写する場合にも適用可能であり、本発明の転写材は用紙であっても良い。
【0058】
さらに、この実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、除電光量の低下による感光体ドラムの帯電性能の変化を抑制できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0059】
1 プリンタ(画像形成装置)
12 中間転写ベルト(転写材)
18 感光体ドラム
19 イレーサ(除電ユニット)
20 帯電器
74 LEDチップ(光源)
90 コントローラ
92 除電光量制御部(制御手段)
94 特性曲線取得部
96 駆動電流範囲設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質シリコン系の表面層を有し、その回転駆動によって前記表面層に帯電や露光を経て形成したトナー像を転写材に転写させる感光体ドラムと、
前記感光体ドラムを帯電させる帯電器と、
この帯電に至る前に前記表面層に除電光を照射する光源を有し、前記転写を経た後のこの表面層に残された電荷を除去する除電ユニットと、
前記光源を発光させる駆動電流と前記帯電器に付与する帯電電流との関係に基づいて、前記除電光の光量低下分を補うように、前記駆動電流を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記光源の所定期間が経過した場合や前記画像形成装置の環境温度が上昇した場合に、前記帯電電流及び前記駆動電流から特性曲線を得る特性曲線取得部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記表面層の露光履歴解消及び前記帯電器の寿命から決定される帯電電流の使用範囲を用い、前記除電光の光量低下分を補うための前記駆動電流の範囲を設定する駆動電流範囲設定部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記駆動電流範囲設定部は、前記表面層の露光履歴解消及び前記帯電器の寿命から決定される帯電電流の使用範囲を用い、前記光源による除電光の光量低下前における前記駆動電流の範囲を設定していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記光源は、前記感光体ドラムの回転軸線に沿って略同等の発光特性を有した複数のLEDチップであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−191512(P2011−191512A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57457(P2010−57457)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】