説明

画像形成装置

【課題】記録媒体の裏汚れを防止しつつ、製造コストの削減を達成できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体(7)を有しており、その駆動によって像担持体上の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部(6)と、ローラ間に掛け回され、その搬送面(14a)に記録媒体を載置して画像担持体と転写ローラ(12)との間を走行しており、この転写ローラに対する潜像に付着するトナーと逆極性の電圧印加によって、トナー像を記録媒体に直接的に転写する転写ベルト(14)と、搬送面に付着した残トナーを、静電気力を用いて回収するバイアスクリーニング手段(30)と、転写ベルトの走行方向で視てバイアスクリーニング手段の下流側に配置されており、このバイアスクリーニング手段で未回収の残トナーを潜像に付着するトナーと同じ極性に整えるクリーニング補助手段(40)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ベルトを用いて画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が像担持体(例えば感光体ドラム)を予め帯電し、露光器が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この感光体ドラムの表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、現像バイアス電圧を印加すると、予め電荷を帯びたトナーは静電潜像に付着し、トナー像が形成される。
【0003】
そして、用紙は、転写ニップ上流側に配置されたローラ対によって転写ニップまで搬送され、可視化されたトナー像がこの転写ベルト上の用紙に転写される。
ここで、このトナー像が用紙に転写される際に、感光体ドラムから用紙に向けて移動するトナーは、転写ベルトの搬送面にも付着することがあり(例えば、紙間でのかぶりトナー等)、この搬送面に付着した残トナーが用紙の裏汚れを起こす。そのため、この残トナーを搬送面から除去する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2954812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、転写ベルトの搬送面に付着した残トナーには、逆チャージトナー、つまり、静電潜像に付着する正規の帯電トナーとは逆の帯電極性を有したトナーや、この正規の帯電トナーと同じ帯電極性を有していても、極めて大きな帯電量のトナーであることが多い。前者の逆チャージトナーは、像担持体の表面電位の上昇などによって生じ、カブリ等の画像欠陥を招く要因になる。一方、後者の極めて大きな帯電量のトナーは、転写ベルトの周回走行によって搬送面に付着し続けたトナーが次第にチャージアップされて発生する。
【0006】
これら逆チャージトナーや、同じ帯電極性を有した極めて大きな帯電量のトナーの双方を搬送面から除去するためには、2段のバイアスクリーニング手段で対応することも考えられる。つまり、その1段目では正規の帯電トナーとは逆極性の電圧を印加して後者のトナーを除去し、次いで、2段目では正規の帯電トナーと同極性の電圧を印加すれば、前者の逆チャージトナーを除去可能になる。
【0007】
しかしながら、2段のバイアスクリーニング手段を設けると、装置が複雑になり、また、装置の製造コストの低廉化を図れないとの問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、用紙の裏汚れを防止しつつ、製造コストの削減を達成できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、像担持体を有しており、その駆動によって像担持体上の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部と、ローラ間に掛け回され、その搬送面に記録媒体を載置して画像担持体と転写ローラとの間を走行しており、この転写ローラに対する潜像に付着するトナーと逆極性の電圧印加によって、トナー像を記録媒体に直接的に転写する転写ベルトと、搬送面に付着した残トナーを、静電気力を用いて回収するバイアスクリーニング手段と、転写ベルトの走行方向で視てバイアスクリーニング手段の下流側に配置されており、このバイアスクリーニング手段で未回収の残トナーを潜像に付着するトナーと同じ極性に整えるクリーニング補助手段とを具備する。
【0009】
第1の発明によれば、転写ベルトは、記録媒体を静電吸着搬送するベルトである。一方、トナーは像担持体の静電潜像に付着し、像担持体にはトナー像が形成される。そして、この潜像に付着するトナーとは逆極性の電圧を転写ローラに印加すると、トナー像が記録媒体に転写される。
このトナー像が記録媒体に転写される際に、像担持体から記録媒体に向けて移動するトナーは、この記録媒体の他、転写ベルトの搬送面にも付着することがある。
【0010】
ところで、上述した転写ベルトでは、その搬送面に画像形成を行う必要がない。換言すれば、中間転写体を用いたカラー機とは異なり、トナー像を1次転写して記録媒体に2次転写する必要がないため、この搬送面上に多少の残トナーが存在していても、この残トナーの帯電極性が潜像に付着する正規の帯電トナーと同じ帯電極性であれば、トナー像を記録媒体に転写する際に、この残トナーが記録媒体の裏側を汚すことはない。
【0011】
すなわち、残トナーを回収する点を鑑みれば、若干のクリーニング不良に該当するものの、記録媒体の裏汚れが生じないのであれば、当該クリーニング不良は大きな問題ではない。
そこで、本発明では、バイアスクリーニング手段がその静電気力を用いて搬送面に付着した残トナーを回収するが、その下流側には、別のバイアスクリーニング手段ではなく、潜像に付着する正規の帯電トナーと同じ帯電極性に整えるクリーニング補助手段が配置されており、このクリーニング補助手段ではバイアス電圧を印加しない。上流側のバイアスクリーニング手段で未回収の残トナーの帯電極性を正規の帯電トナーと同じ帯電極性に整えておけば、転写ローラによる逆極性の電圧印加の際に、この未回収の残トナーは搬送面に留まって記録媒体の裏側に移動しないからである。
【0012】
これにより、1段のバイアスクリーニング手段を備えつつも、2段のバイアスクリーニング手段を備えた場合と同様に、記録媒体の裏汚れを防止できる。この結果、装置の製造コストの大幅な削減を達成できる。
第2の発明は、第1の発明の構成において、クリーニング補助手段は、バイアスクリーニング手段で未回収の残トナーとの摩擦によって、その残トナーを潜像に付着するトナーと同じ極性に整えており、潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性と搬送面の摩擦帯電特性とは、逆極性の関係にあることを特徴とする。
【0013】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性と搬送面の材質の摩擦帯電特性とは、逆極性の関係にあるので、クリーニング補助手段が、摩擦によってバイアスクリーニング手段で未回収の残トナーを再帯電する際に、この残トナーは正規の帯電トナーの極性と同じ極性に速やかに整えられる。よって、1段のバイアスクリーニング手段によって構造の簡素化を図りつつ、記録媒体の裏汚れを確実に防止できる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明の構成において、クリーニング補助手段は、搬送面に当接する摩擦ブレード部材であり、潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性とこの摩擦ブレード部材の摩擦帯電特性とは、逆極性の関係にあることを特徴とする。
第4の発明は、第2の発明の構成において、クリーニング補助手段は、搬送面に当接して回転する摩擦ブラシ部材であり、潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性とこの摩擦ブラシ部材の摩擦帯電特性とは、逆極性の関係にあることを特徴とする。
【0015】
第3,4の発明によれば、第2の発明の作用に加えてさらに、摩擦ブレード部材、或いは摩擦ブラシ部材が搬送面に当接しており、バイアスクリーニング手段で未回収の残トナーは容易に掻き乱され、この残トナーを、正規の帯電トナーの極性と同じ極性により一層速やかに整えることができる。
第5の発明は、第1から第4の発明の構成において、バイアスクリーニング手段は、トレール方向で搬送面に当接し、この搬送面に付着した残トナーを回収する金属製の回収ローラと、回収ローラにカウンタ方向で当接し、この回収ローラで回収した残トナーを掻き取るクリーニングブレードと、搬送面に付着した残トナーを回収すべく、潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加してこの搬送面から回収ローラに向かう電界を発生させる電圧制御手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、電圧制御手段は、潜像に付着するトナーとは逆の帯電極性の電圧を印加して搬送面から回収ローラに向かう電界を発生させており、搬送面に付着した残トナーのうち、正規の帯電トナーと同じ帯電極性を有したトナーを回収ローラに向けて移動させる。
【0017】
この回収ローラは転写ベルトの走行方向に沿って若干の速度差で回転し、その搬送面を押さえ付けるトレール方向で転写ベルトに当接する。これにより、この正規の帯電トナーと同じ帯電極性を有した残トナーを静電気力で回収する。そして、クリーニングブレードは、向かい合うカウンタ方向で回収ローラに当接するため、回収ローラで回収した残トナーを容易に掻き取ることができる。これにより、搬送面に付着した残トナーのうち正規の帯電トナーと同じ帯電極性を有したトナーを速やかに除去できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1段のバイアスクリーニング手段を備えつつも、2段のバイアスクリーニング手段を備えた場合と同様に、記録媒体の裏汚れを防止でき、製造コストの削減を達成できる画像形成装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の転写ベルトの周辺拡大図である。
【図3】図2の感光体ドラム周辺におけるトナーの説明図である。
【図4】図2のバイアスクリーニングユニット周辺におけるトナーの説明図である。
【図5】図2の摩擦ブラシ部材周辺におけるトナーの説明図である。
【図6】図2のバイアスクリーニングユニット及び摩擦ブラシ部材を経たトナーの状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例であるタンデム方式のカラープリンタの概略構成図であり、同図の右側がプリンタ1の正面に対応し、左側が背面に対応している。
同図に示されるように、この装置本体2の下部には用紙(記録媒体)のカセット3が配置されており、カセット3には画像形成前の用紙Pが積層状態で収容される。用紙Pはカセット3から1枚ずつ分離され、プリンタ1の正面からプリンタ1の背面に向けて搬送される。
【0021】
装置本体2の内部には、用紙搬送路4から用紙Pの搬送方向で見て、レジストローラ5、画像形成部6及び定着部18の順に配置されており、定着部18から送出された用紙Pは用紙搬送路20を経て排紙トレイ22に排出される。
本実施例の画像形成部6は、4つの画像形成ユニット6C,6M,6Y,6Bで構成されている。
【0022】
これら各画像形成ユニット6C,6M,6Y,6Bは、プリンタ1の正面側から背面側に向けて順に配列され、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程を通じてシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成している。
【0023】
具体的には、各画像形成ユニット6C,6M,6Y,6Bには、対応色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)7がそれぞれ設けられている。各感光体ドラム7は装置本体2に対して回転自在に設置され、図示しない駆動モータによって同図の時計回りに駆動する。
また、各感光体ドラム7の周囲には、それぞれ対応する帯電器8、露光部(LEDプリントヘッドユニット等)9、現像器10、転写ローラ12、摺擦ローラ13が設けられている。
【0024】
帯電器8は転写ローラ12の反対側に配置されており、対応する各感光体ドラム7の表面を一様に帯電させる。また、露光部9は、感光体ドラム7の回転方向で見て帯電器8の下流側に配置され、対応する各感光体ドラム7の表面に向けてレーザ光を照射する。
現像器10は、感光体ドラム7の回転方向で見て露光部9の下流側に配置されており、各トナーコンテナ11C,11M,11Y,11Bからシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーがそれぞれ供給され、これら各色のトナーを感光体ドラム7の表面に静電的に付着させる。
【0025】
これにより、各感光体ドラム7の表面には、露光部9による静電潜像に応じたトナー像が現像される。そして、これら各感光体ドラム7上に形成されたトナー画像は、転写ベルト14を搬送する用紙Pに転写される。
詳しくは、この転写ベルト14は、樹脂製のシート材の両端部分を重ね合わせて接合したエンドレス形状のベルトや、継ぎ目を有しないシームレスのベルトが用いられており、駆動ローラ15と従動ローラ16との間に掛け回され、図示しない駆動モータによって同図の反時計回りに走行する。
【0026】
なお、樹脂製のシート材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などを使用し、また、転写ベルト14の材質の摩擦帯電特性は、静電潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性に対して逆極性(逆の帯電極性)の関係を有している。なお、このタンデム方式のカラー機ではなく、モノクロ機の場合には、その表面にフッ素系(例えばPTFE)のコーティングを施したアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などを使用できる。
【0027】
また、この転写ベルト14は、用紙Pを載置して感光体ドラム7と転写ローラ12との間を走行する。これにより、各感光体ドラム7上に形成されたトナー像はレジストローラ5から送出された用紙Pに次々に直に転写され、この用紙Pは転写ベルト14で定着部18に向けて搬送される。
【0028】
摺擦ローラ13は、感光体ドラム7の回転方向で見て帯電器8の上流側に配置される。この摺擦ローラ13は、対応する各感光体ドラム7の表面に接触可能に構成されており、上記駆動モータによって同図の反時計回りで感光体ドラム7と若干の速度差を設けて駆動することにより、この表面を研磨している。なお、各感光体ドラム7上に残留したトナーは図示しないクリーニング装置で除去される。
【0029】
一方、転写ベルト14上に残留したトナー(残トナー)は、バイアスクリーニングユニット(バイアスクリーニング手段)30及び摩擦ブラシ部材(クリーニング補助手段)40で除去される。
具体的には、まず、バイアスクリーニングユニット30は、図2に示されるように、転写ベルト14の走行方向で見て駆動ローラ15の下流側近傍に配置され、用紙Pを載置する搬送面14aに付着した残トナーを、静電気力を用いて回収して搬送面14aから除去する。
【0030】
なお、この図2、及び以下に説明する図3〜図6は、バイアスクリーニングユニット30や摩擦ブラシ部材40の構造の理解を助けるために、一対の感光体ドラム7及び転写ローラ12のみを示しているが、上述の如く、図2の駆動ローラ15と従動ローラ16との間には、計4対の感光体ドラム7及び転写ローラ12が配置される。
【0031】
本実施例のバイアスクリーニングユニット30は、回収ローラ32と、クリーニングブレード34と、回収容器36と、電圧制御部(電圧制御手段)39とから構成される(図2)。
回収ローラ32は、金属製(例えばSUS430製)であり、転写ベルト14の幅方向に延び、この転写ベルト14よりも大きな速度(線速比:1.2〜2.0)で図2の時計回りに回転し、その搬送面14aにトレール方向で当接する。
【0032】
クリーニングブレード34は、転写ベルト14の幅方向に延び、搬送面14aとは反対側にて回収ローラ32にカウンタ方向で当接する。また、回収容器36は、回収ローラ32とクリーニングブレード34との当接位置の下方に配置されている。
また、上述した駆動ローラ15は接地されており、これら回収ローラ32と駆動ローラ15との間には、各感光体ドラム7の静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧が電圧制御部39から印加され、転写ベルト14の搬送面14aから回収ローラ32に向かう電界が生じている。
【0033】
なお、上述した転写ローラ12と感光体ドラム7との間にも、各感光体ドラム7の静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧が電圧制御部38から印加される。
つまり、仮に本実施例で使用するトナーがプラス帯電性のトナー(正規の帯電トナー)である場合には、電圧制御部38が転写ローラ12に当該トナーと逆極性の電圧を印加すると、図3に示される如く、感光体ドラム7上のプラス帯電性のトナー80は感光体ドラム7から離れ、基本的には搬送面14a上の用紙Pに向かう。
【0034】
ここで、この搬送面14a上には、この感光体ドラム7から離れたプラス帯電性のトナー80や、感光体ドラム7の表面電位の上昇などで生じたマイナス帯電性のトナー81が残トナーとして付着することがある(図4)。また、このプラス帯電性のトナー80には、転写ベルト14の周回走行によって次第にチャージアップされた同じくプラス帯電性の残トナーも存在し得る。
【0035】
しかし、本実施例では、バイアスクリーニングユニット30の電圧制御部39が、逆極性の電圧を回収ローラ32と駆動ローラ15との間に印加し、例えば10μA(1μA=1×10−6A)程度の電流を与え、搬送面14aから回収ローラ32に向かう電界を発生させている。これにより、この図4に示される如く、搬送面14aに付着したプラス帯電性のトナー80を搬送面14aから回収し、この回収ローラ32に付着させる。
【0036】
この回収ローラ32に付着した残トナーはクリーニングブレード34で掻き取られ、回収容器36に集められる。
ただし、このままでは残トナーのうち、搬送面14aに付着したマイナス帯電性のトナー81は除去できないが、当該マイナス帯電性のトナー81は摩擦ブラシ部材40で正規の帯電トナーと同じ帯電極性に整えられる。
【0037】
詳しくは、摩擦ブラシ部材40は、図2に示されるように、転写ベルト14の走行方向で見て従動ローラ16の上流側近傍に配置されており、転写ベルト14の幅方向に延びている。また、この摩擦ブラシ部材40は、転写ベルト14と同じ速度(線速比:1.0)にて図2の反時計回りに回転し、搬送面14aにカウンタ方向で当接する。
【0038】
本実施例の摩擦ブラシ部材40は、絶縁PET樹脂の繊度6Dのブラシであり、100kF/inch、つまり、基布上の1平方インチあたりに100,000本のフィラメント数を有しており、その材質による摩擦帯電特性は、正規の帯電トナーとは逆極性(本実施例ではマイナス帯電性)の関係を有して構成されている。
【0039】
すなわち、図5に示されるように、搬送面14aに付着したマイナス帯電性のトナー81は、回収ローラ32を通過しても、摩擦ブラシ部材40で掻き乱されてプラス帯電性のトナー80に総て整えられる。次いで、このプラス帯電性のトナー80が付着したままの搬送面14aは、レジストローラ5の近傍にて用紙Pを載置し、感光体ドラム7に向かう。
【0040】
続いて、電圧制御部38が転写ローラ12に上記トナーと逆極性の電圧を印加すると、用紙Pの表面及び裏面に対するトナーの存在を明確にすべく、ベルト14の厚みを部分的に薄く記載した図6に示されるように、感光体ドラム7上のプラス帯電性のトナー80は感光体ドラム7から離れて用紙Pに向かうが、搬送面14aに付着していたプラス帯電性のトナー80は、用紙Pの裏面に向かわず、搬送面14aに付着し続ける。
【0041】
そして、回収ローラ32では、電圧制御部39によって搬送面14aから回収ローラ32に向かう電界が生じているため、この搬送面14aに付着し続けたプラス帯電性のトナー80を搬送面14aから回収でき(図4)、クリーニングブレード34で掻き取って回収容器36に集める。これにより、その後の搬送面14aには残トナーが蓄積し難くなる。
【0042】
再び図1に戻り、上述したプリンタ1では、カセット3から用紙Pが1枚ずつ分離して送出され、この用紙Pはレジストローラ5に到達する。このレジストローラ5は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、各感光体ドラム7や転写ローラ12等による画像転写動作のタイミングを計りながら、用紙Pを転写ベルト14に向けて送出する。
【0043】
また、プリンタ1では露光部9によるレーザ光の照射が制御される。これにより、画像形成部6において各感光体ドラム7上に原稿画像の静電潜像が作られ、続いてこの潜像から各感光体ドラム7上にトナー像が形成され、転写ベルト14で搬送する用紙Pに各色別のトナー像が次々に転写される。用紙Pは未定着トナー像を担持した状態で定着部18に向けて送られ、カラー画像或いはモノクロ画像が形成された後、用紙搬送路20を通って排紙トレイ22に排出される。
【0044】
以上のように、本実施例によれば、転写ベルト14は、用紙Pを静電吸着搬送するベルトである。一方、例えばプラス帯電性のトナー80は感光体ドラム7の静電潜像に付着し、感光体ドラム7にはトナー像が形成される。そして、マイナス極性の電圧を転写ローラ12に印加すると、トナー像が用紙Pに転写される。
【0045】
このトナー像が用紙Pに転写される際に、感光体ドラム7から用紙Pに向けて移動するトナーは、この用紙Pの他、転写ベルト14の搬送面14aにも付着することがある。
ここで、本実施例では、バイアスクリーニングユニット30がその静電気力を用いて搬送面14aに付着した残トナーを回収するが、その下流側には、別のバイアスクリーニング手段ではなく、プラス帯電性のトナー80に整えるマイナス帯電性の摩擦ブラシ部材40が配置されており、この摩擦ブラシ部材40ではバイアス電圧を印加していない。
【0046】
転写ベルト14では、トナー像を1次転写して用紙Pに2次転写する必要がないため、その搬送面14a上に多少の残トナーが存在していても、上流側のバイアスクリーニングユニット30で未回収の残トナーの帯電極性をプラス帯電性のトナー80に整えておけば、転写ローラ12によるマイナス極性の電圧印加の際に、この未回収の残トナーは搬送面14aに留まって用紙Pの裏側に移動しないからである。
【0047】
これにより、マイナス極性の電圧を印加する1段のバイアスクリーニングユニット30を備えつつも、正規の帯電トナーとは逆極性の電圧を印加する1段目、及び、正規の帯電トナーと同極性の電圧を印加する2段目からなる2段のバイアスクリーニング手段を備えた場合と同様に、用紙Pの裏汚れや、逆チャージトナーの現像による機内汚染を防止できる。この結果、プリンタ1の製造コストの大幅な削減を達成できる。
【0048】
また、電圧制御部39は、回収ローラ32と駆動ローラ15との間に、マイナス極性の電圧を印加して搬送面14aから回収ローラ32に向かう電界を発生させており、搬送面14aに付着した残トナーのうち、プラス帯電性のトナー80を回収ローラ32に向けて移動させる。
この回収ローラ32は転写ベルト14の走行方向に沿って回転し(ベルトに対して若干速度差を付けるのが望ましい)、その搬送面14aを押さえ付けるトレール方向で転写ベルトに当接する。これにより、プラス帯電性のトナー80を静電気力で回収する。
【0049】
そして、クリーニングブレード34は、向かい合うカウンタ方向で回収ローラ32に当接するため、回収ローラ32で回収したプラス帯電性のトナー80を容易に掻き取ることができる。これにより、搬送面14aに付着したプラス帯電性のトナー80のうち、極めて大きな帯電量の残トナーも速やかに除去できる。
【0050】
さらに、搬送面14aは、その材質が摩擦によってマイナスに帯電する特性を有するのに対し、トナーが摩擦によってプラスに帯電する特性を有しており、これら搬送面14aとトナーとの摩擦帯電特性が逆極性の関係にあるので、摩擦ブラシ部材40が、摩擦によってバイアスクリーニングユニット30で未回収の残トナーを再帯電する際に、この残トナーのうち逆チャージトナーはプラス帯電性のトナー80に速やかに整えられる。よって、1段のバイアスクリーニングユニット30によって構造の簡素化を図りつつ、用紙Pの裏汚れや、逆チャージトナーの現像による機内汚染を確実に防止できる。
【0051】
さらにまた、摩擦ブラシ部材40が搬送面14aにカウンタ方向で当接しており、バイアスクリーニングユニット30で未回収の残トナーは容易に掻き乱され、この残トナーをプラス帯電性のトナー80により一層速やかに整えることができる。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0052】
例えば、上述の実施例では摩擦ブラシ部材40を用い、搬送面14aに付着したマイナス帯電性のトナー81をプラス帯電性のトナー80に整えているが、この摩擦ブラシ部材40に替えて、同じくマイナス帯電性の摩擦ブレード部材(クリーニング補助手段)を用いてプラス帯電性のトナー80に整えても良い。
なお、上記実施例の摩擦ブラシ部材40(或いは、摩擦ブレード部材)は搬送面14aにカウンタ方向で当接しているが、トレール方向で搬送面14aに当接しても良い。摩擦ブラシ部材40(或いは、摩擦ブレード部材)と搬送面14aとの間に相対速度差があれば機能を果たすからである。
また、上記実施例ではプラス帯電性のトナー80を正規の帯電トナーとして説明したが、本発明はマイナス帯電のトナー81を正規の帯電トナーする場合にも適用可能である。
【0053】
さらに、本発明の画像担持体は4つの感光体ドラムに限定されるものではなく、さらに、上記実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用できる。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、記録媒体の裏汚れを防止しつつ、製造コストの削減を達成できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0054】
1 プリンタ(画像形成装置)
6 画像形成部
7 感光体ドラム(像担持体)
12 転写ローラ
14 転写ベルト
14a 搬送面
15 駆動ローラ
16 従動ローラ
30 バイアスクリーニングユニット(バイアスクリーニング手段)
32 回収ローラ
34 クリーニングブレード
39 電圧制御部(電圧制御手段)
40 摩擦ブラシ部材(クリーニング補助手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を有しており、その駆動によって該像担持体上の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する画像形成部と、
ローラ間に掛け回され、その搬送面に記録媒体を載置して前記画像担持体と転写ローラとの間を走行しており、この転写ローラに対する前記潜像に付着するトナーと逆極性の電圧印加によって、前記トナー像を該記録媒体に直接的に転写する転写ベルトと、
前記搬送面に付着した残トナーを、静電気力を用いて回収するバイアスクリーニング手段と、
前記転写ベルトの走行方向で視て前記バイアスクリーニング手段の下流側に配置されており、このバイアスクリーニング手段で未回収の残トナーを前記潜像に付着するトナーと同じ極性に整えるクリーニング補助手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記クリーニング補助手段は、前記バイアスクリーニング手段で未回収の残トナーとの摩擦によって、当該残トナーを前記潜像に付着するトナーと同じ極性に整えており、
前記潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性と前記搬送面の摩擦帯電特性とは、逆極性の関係にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記クリーニング補助手段は、前記搬送面に当接する摩擦ブレード部材であり、
前記潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性とこの摩擦ブレード部材の摩擦帯電特性とは、逆極性の関係にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記クリーニング補助手段は、前記搬送面に当接して回転する摩擦ブラシ部材であり、
前記潜像に付着するトナーの摩擦帯電特性とこの摩擦ブラシ部材の摩擦帯電特性とは、逆極性の関係にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記バイアスクリーニング手段は、
トレール方向で前記搬送面に当接し、この搬送面に付着した残トナーを回収する金属製の回収ローラと、
該回収ローラにカウンタ方向で当接し、この回収ローラで回収した残トナーを掻き取るクリーニングブレードと、
前記搬送面に付着した残トナーを回収すべく、前記潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加してこの搬送面から回収ローラに向かう電界を発生させる電圧制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−232573(P2011−232573A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103164(P2010−103164)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】