説明

画像形成装置

【課題】
離型ワックスから気化した成分が画像形成装置内に付着することによる搬送不良を防止することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】
離型ワックスが加熱定着時に気化した状態で、電界を付与し、離型ワックス粒子に電気的な偏りを持たせて静電的に離型ワックスの気化成分を捕集する。そのため、前記離型ワックスから気化した成分に電界を付与する電界発生手段と、前記電界が付与された前記気化した成分を捕える捕集手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着手段を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスを利用して、記録シート(以下、「記録材」と表わす。)に形成されたトナー像は、定着手段によって熱定着処理が実行されている。そして、最近の電子写真用トナーの構成材料として離型ワックスが含まれているものが多いとされる。これは、印字画像の光沢度の調整、顔料の分散性などの効果を付与するためであり、そのほか、定着オフセットの防止のために添加されている。
【0003】
ここで定着オフセットの現象として、以下に示すようにいくつかの種類がある。記録材への定着過程において、定着ローラや定着フィルムでの加熱が不十分(低温)である場合、トナーが十分溶融せず、記録材への固着力が小さくなる。このままではトナーの一部が定着ローラに付着してしまう。この現象はコールドオフセットと呼ばれ、定着ローラにトナーが付着した部分は、記録材上において画像の欠損として現われる。また、定着したトナーもその固着力は弱いため、摩擦などによって記録材上からはがれてしまう可能性がある。
【0004】
反対に、定着ローラや定着フィルムの温度が高過ぎる場合、トナーの溶融は十分であるが、粘度が低下し一部溶融トナーが記録材上からはがれて、定着ローラ表面を汚染してしまう。この現象はホットオフセットと呼ばれ、コールドオフセットと同様に記録材上における画像の欠損となる。
【0005】
そこで、以上説明した定着オフセットを防止する場合において、離型剤としてワックス成分をトナーへ添加することが提案されている(特許文献1)。離型ワックスをトナーに内包させることにより、加熱定着時に溶融トナーと定着ローラとの界面に離型ワックスが移行し、耐オフセット性能の向上を図っている。さらに、耐オフセット性能を向上させるため、2種類以上の離型ワックスをトナーに添加する技術(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−184992
【特許文献2】特開2000−3070
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トナーに含まれる離型ワックスは、記録材が定着ローラと加圧ローラによって加熱と同時に加圧され、両ローラに挟持搬送されることによって液化する。離型ワックスの多くは溶融したトナーと共に記録材に転写された後に固着するが、その一部は気化し気体状態となる。
【0008】
気化した離型ワックスの成分は、周囲の温度によって液相または固相の微粒子状態になって定着手段内を浮遊する。浮遊した離型ワックスの成分は場合によっては画像形成装置内のさまざまな場所に付着する可能性があった。
【0009】
これらが例えば記録材搬送ローラに堆積してくると、記録材が搬送時に引っかかったり、ローラの摩擦係数を低下させてしまう等、搬送性能に悪影響を及ぼすため、装置の信頼性確保及び長寿命化において重要な課題となっていた。そのため、機内を流れる風の方向をコントロールするなど、前記離型ワックス成分の搬送部への付着防止のために特別な対応が必要であった。
【0010】
一方、近年、レーザービームプリンタは、高速化・小型化の要求が非常に高くなってきている。画像形成装置における熱定着処理をより高速で行うには、これまで以上に高い熱エネルギーと加圧力を必要とする。そのためトナーに与える熱エネルギーが増加するにつれ、離型ワックスが気化する量も増加することになり、前述したような離型ワックスの気化成分の付着に関わる問題の発生頻度が多くなってくることが予想される。そのため、加熱加圧定着手段においてトナーに含まれる離型ワックスの気化成分を捕集する技術開発重要となっている。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、離型ワックスの気化成分が画像形成装置内に付着することによる搬送不良を防止することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る代表的な構成は、離型ワックスを内包したトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、加熱回転体と前記加熱回転体に圧接する加圧回転体によって形成されるニップ部にて、記録材の上のトナーを加熱、加圧することにより前記記録材に前記トナーを定着させる定着手段と、前記トナーを定着させる過程で発生する離型ワックスから気化した成分に電界を付与する電界発生手段と、前記電界が付与された前記気化した成分を捕える捕集手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、定着手段によって加熱され発生した離型ワックスから気化した成分に電界発生手段により電界をかけると、気化成分に電気的な偏りを持たせることが可能であり、静電的に気化成分を捕集することができる。そのため、紙ガイドや搬送ローラへの離型ワックスから
気化した成分の付着による搬送不良を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置内に設けられる定着手段の構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電界発生手段の全体構成を示す斜視図である。
【図4】離型ワックスの気化成分が電界発生手段を通過する際に持つ電気的な偏りの様子を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る捕集手段の全体構成を示す斜視図である。
【図6】電界発生手段及び捕集手段への電源供給経路を示す説明図である。
【図7】捕集手段によって離型ワックスの気化成分が捕集される様子を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る定着手段の全体構成を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る定着手段及び周辺装置の全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の実施の形態に係る画像形成装置である、フルカラーレーザービームプリンタについて説明する。なお、本発明の実施形態として、感光体ドラムを複数備えたフルカラーレーザービームプリンタを取り上げたが、本発明は、感光体ドラムを一つ備えたモノクロの複写機、プリンタにも適用することができる。したがって、本発明の画像形成装置は、フルカラーレーザービームプリンタに限定されるものではない。
【0017】
図1は、フルカラーレーザービームプリンタ1(以後、「プリンタ1」で統一)の全体構成を示す縦断面図である。
【0018】
プリンタ1の下部には、カセット2が引き出し可能に収納されている。そして、プリンタ1の右側には手差し給送部3が配設されている。カセット2、手差し給送部3には、それぞれ記録材であるシートを積載収容する。カセット2、手差し給送部3からのシートは1枚毎に分離され、レジストローラ4に給送される。
【0019】
プリンタ1はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色毎に対応する画像形成ステーション5Y、5M、5C、5Kを、横一列に並設してある画像形成手段としての画像形成部5を備えている。画像形成部5には、像担持体である感光体ドラム6Y、6M、6C、6K(以後、「感光体ドラム6」で統一)、感光体ドラム6の表面を均一に帯電する帯電手段7Y、7M、7C、7Kが設けられている。さらに、画像形成部5の下部には画像情報に基づいてレーザービームを照射して感光体ドラム6上に静電潜像を形成するスキャナユニット8が配設されている。さらに、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像する現像手段9Y、9M、9C、9K、感光体ドラム6上のトナー像を静電転写ベルト10に転写する一次転写部11Y、11M、11C、11K(以後、「一次転写部11」で統一)が配設されている。一次転写部11でトナー像が転写された静電転写ベルト10のトナー像は、二次転写部12でシートに転写される。
【0020】
その後、シートは、加熱ユニット101と、加熱ユニット101に圧接する加圧ローラ102とで形成される図1では示していない定着ニップ部Nを通過する際に、転写画像の定着を行う定着手段100を通過する。さらにシートは、排出搬送部150を通り、両面フラッパ13によって搬送路が切り替えられ、排出ローラ対14、スイッチバックローラ対15のどちらかに搬送される。スイッチバックローラ対15側に搬送されたシートは、スイッチバックローラ対15部で反転搬送して、再度レジストローラ4、二次転写部12、定着手段100を通過した後、排出搬送部150を通り、排出ローラ対14側に搬送される。シートは排出ローラ対14を通過後、シート積載部16に排出される。
【0021】
次にプリンタ1の定着手段100の詳細な構成を図2に基づいて説明する。図2は第1の実施の形態に係る定着手段100の縦断面図である。定着手段100において、101は加熱ユニット、102は加圧回転体としての加圧ローラであり、これら加熱ユニット101及び加圧ローラ102は筐体に収納されている。
【0022】
加熱ユニット101は、加熱手段としてのヒータ103を有する。このヒータ103は支持部材としてのヒータホルダ104に支持されている。ヒータホルダ104は液晶ポリマー等の、耐熱性と摺動性を具備した耐熱性樹脂により、断面略半円形樋型に形成されている。ヒータホルダ104には、加熱回転体としてのスリーブ状の定着スリーブ105が外装されている。定着スリーブ105は熱・機械的ストレスに耐え、熱伝導性の良い、例えばSUS等の金属製のベース層に、シートPの分離性能を確保するために離型性に優れている、例えば、PFA樹脂が塗布されている。
【0023】
加圧ローラ102は金属の芯金にシリコンゴム等で形成された弾性層があり、表層は定着スリーブと同様に離形性に優れたPFA等のフッ素系樹脂で被覆されている。ヒータホルダ104に支持されたヒータ103と対向させるように定着スリーブ105に加圧ローラ102を押圧し、定着スリーブ105と加圧ローラ102との間に定着ニップ部Nを形成している。
【0024】
ヒータ103の制御手段としてのヒータ駆動制御回路は、図示していないが、給電手段と、これを制御するCPU等を備えている。このヒータ駆動制御回路はCPUがプリント信号を入力して給電手段をオン・オフ制御することにより、ヒータ103の発熱抵抗体を通電加熱する。発熱抵抗体の通電加熱によりヒータ103が急速昇温する。このヒータ103の温度がヒータ103の裏面(定着ニップ部Nと反対側の面)に設けられた温度検知手段としてのサーミスタ(不図示)の検知温度に基づいてヒータ103を所定の目標設定温度に温調制御し、定着スリーブ105をその温度に加熱する。本発明の実施の形態においては、設定温度は、例えば180℃である。
【0025】
この状態において、未定着トナーSを担持したシートPが矢印Y方向にて示すシート搬送方向から定着ニップ部Nに導入され、シートPを定着ニップ部Nで挟持搬送する(図2参照)。この搬送過程でヒータ103の熱が定着スリーブ105を介してシートPに付与される。未定着トナーSはヒータ103の熱とニップ圧によってシートP面に定着される。定着ニップ部Nを出たシートPは定着スリーブ105の表面から曲率分離されて排出ローラ対14またはスイッチバックローラ対15に搬送される。
【0026】
離型ワックスはトナーに内包されており、シートPが定着ニップ部Nで挟持搬送されるときに定着ニップ部Nの圧によりトナーが潰され、トナー内部から出て来る。また定着ニップ部Nの熱によって離型ワックスが融点以上になり、離型ワックスは液体もしくは気体の状態になる。本発明の実施の形態で用いる離型ワックスの融点は、例えば、76℃である。
【0027】
液体もしくは気体の離型ワックスから気化した成分はシートPの印字面側から発生し、定着手段100内の気流によって移動する。定着手段100内の気流は定着手段100内の温度による熱対流、定着スリーブ105及び加圧ローラ102の回転による気流、シートPが搬送されることで発生する気流によって発生する。この中で定着スリーブ105及び加圧ローラ102の回転による気流が他の熱対流及びシートPが搬送されることで発生する気流より大きく、定着手段100内の気流の大部分を占める。また、離型ワックスから気化した成分は定着スリーブ105と加圧ローラ102の定着ニップ部Nで発生し、かつ印字面側で発生するために、主に定着スリーブ105の回転による気流に乗って移動する。
【0028】
図2で定着スリーブ105は反時計回りに回転する。このとき定着スリーブ105周辺の空気も定着スリーブ105の回転により反時計回りに連れ回る。その気流に乗った離型ワックスから気化した成分は電界発生手段201の間を通過する。
【0029】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電界発生手段201の全体構成を示す斜視図である。電界発生手段201は加熱回転体を収納する側に設けられており、金属板202aと金属板202bとから成る。そして電界発生手段201の2枚の金属対の一方に+もしくは−の電圧を印加し、他方には0Vもしくは逆極性の電圧を印加する。本発明の実施の形態における電圧は、例えば、3〜4kV程度である。ただし、この時に必要な印加電圧は、個々の画像形成装置で使用されるトナー及び離型ワックスの組成やシステムの条件によって異なる。また金属板202a及び202bは樹脂部材203a及び203bによって保持され、定着手段100に固定されている。
【0030】
図4は、離型ワックスから気化した成分が電界発生手段201を通過する際に持つ電気的な偏りの様子を示す説明図である。離型ワックス粒子401の内部には複数の離型ワックス分子402が内包されている。一般的に分子内の正電荷(原子核が担う)と負電荷(電子が担う)の重心が一致しない分子を極性分子と呼び、分子内において電気的な偏りを持っている。液体・気体などの状態では離型ワックス分子402は離型ワックス粒子401内を自由に移動でき、しかも外力がない状態では離型ワックス分子402はランダムに動くため、大局的には離型ワックス粒子401の電気的な偏りは見られない(図4(a))。
【0031】
しかし電界などの外力が離型ワックス粒子401に働くと、電界によって電界発生手段201のプラス側には離型ワックス分子402のマイナス側が、電界発生手段201のマイナス側には離型ワックス分子402のプラス側が引き寄せられる。その結果、図4(b)に示すように離型ワックス分子402が整列し、大局的に離型ワックス粒子401に電気的な偏りがみられるようになる。このとき離型ワックスから気化した成分の粒子は気流に乗って移動しているため、図2に示した離型ワックス気化成分の流れQのように電界発生手段201には付着せずに電気的な偏りを持ったままの状態で電界発生手段201を通過する。電界発生手段201を通過した離型ワックス気化成分の粒子は電界発生手段201によって形成された流路と直交するように配置された捕集手段301へ静電的に付着・捕集される。
【0032】
次に捕集手段301の構成を図5に示す。捕集手段301は電極303が耐熱性樹脂材料(例えば、PETやPBT)製の捕集板302aと捕集板302bによって挟持されるように構成されている。これは電極303に離型ワックスから気化した成分が付着することによる電界作用の低下防止と離型ワックスから気化から成分を捕集するための表面積を多くするためである。電極303に電圧が印加されると捕集板表面304a及び304bに電界が生じ、電気的な偏りを持った離型ワックスから気化した成分を捕集板表面304a及び304bで静電的に吸着・捕集することが可能となる。
【0033】
ここで電界発生手段201及び捕集手段301の電圧供給手段を図6に示す。電子写真技術において一般的に構成されている二次転写部12では、駆動ローラ12cによって移動するベルトX上の未定着トナーSをシートPに転写させるために、転写ローラ12aに転写バイアスを印加し、対向ローラ12bをアースに接続している。第1の実施の形態において、転写バイアスは、例えば、3〜6kVであり、電源ユニット17から供給されている。
【0034】
さらに本発明の実施の形態においては、電界発生手段201及び捕集手段301に必要な電圧は、上述した電源ユニット17の転写ローラ12aへの転写バイアスの供給経路から分岐させて供給させている。
【0035】
なお、定着手段において定着スリーブ側にトナーが付着する定着オフセット対策のために、定着スリーブ及び、加圧ローラにバイアスを印加させることも一般的な構成である。従って、このバイアスの供給経路から分岐させて電界発生手段201及び捕集手段301に電圧を印加させても構わない。
【0036】
このように電界発生手段201及び捕集手段301に対して既存の画像形成プロセスの電圧供給経路から分岐して電源供給させることで、専用の電源を新たに設ける必要なくなり、最小限のコストで本提案の構成を実現することが可能となる。
【0037】
図7は、捕集手段301によって電圧が印加された離型ワックスから気化した成分が捕集される様子を示す説明図である。図7(a)では捕集板表面304aがマイナス電位の場合、図7(b)では捕集板表面304aがプラス電位の場合を示す。
【0038】
図7(a)では捕集板表面304aがマイナス電位のため、電界発生手段201を通過して電気的な偏りを持つに至った離型ワックス粒子は、プラス電位に偏った側が捕集板表面304aに付着する。このとき離型ワックス粒子の付着してない側はマイナス電位なので、次の離型ワックスの粒子のプラス側を引き寄せる力が働き、離型ワックス気化成分を付着・捕集する。これが繰り返し起こるため、離型ワックス粒子が数珠繋ぎ状に付着する。
【0039】
また、図7 (b)のときは離型ワックス粒子のマイナス側が引き寄せられ、捕集板表面304aに付着する。離型ワックス粒子が数珠繋ぎ状になるのは図7 (a)の説明と同様である。
【0040】
なお、このとき離型ワックス及び捕集板表面304aが、離型ワックスの融点以上の場合、離型ワックスが液化するため数珠繋ぎにはならないが、電気的な捕集効果は同じである。
【0041】
以上、説明した通り、定着手段によって加熱され発生した離型ワックスから気化した成分に電界発生手段により電界をかけると、離型ワックス粒子に電気的な偏りを持たせることが可能であり、静電的に離型ワックスから気化した成分を捕集することができる。従って、離型ワックスの気化成分が紙ガイドや搬送ローラ等、画像形成装置内に付着することによる搬送不良を防止することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0043】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る定着手段110の全体構成を示す縦断面図であり、第1の実施の形態と異なる特徴的な部分を示している。従って、第2の実施の形態に係るフルカラーレーザービームプリンタ1(以後、プリンタ1)においては、定着手段110の内部以外は第1の実施の形態と同じである。
【0044】
第2の実施の形態における定着手段110において、離型ワックス気化成分の粒子に電気的な偏りを持たせ、同時に静電的に捕集することが可能な捕集手段501を配置する。すなわち、第2の実施の形態における捕集手段501は、第1の実施の形態において説明した電界発生手段201が備える電界発生機能と捕集手段301が担う捕集機能との両者の機能を合わせ持つものであり、一体型捕集手段と言いうるものである。なお、電界発生手段と前記捕集手段が一体化された、一体型捕集手段501は図5に示す捕集手段301と同じ構成になっているため、説明は割愛する。
【0045】
ただし、印加する電圧を第1の実施の形態における捕集手段301よりも高くする必要がある。第2の実施の形態においては、一体型捕集手段501に、例えば、5〜6kV程度の電圧を印加した。
【0046】
これは第1の実施の形態では電界発生手段201で離型ワックス気化成分の粒子を電気的に偏らせているため、捕集手段301では弱い電界でも離型ワックス粒子を引き寄せることが可能である。これに対し、一体型捕集手段501では、離型ワックス粒子を電気的に偏らせると同時に、電気的に偏った離型ワックス粒子を引き寄せて捕集する必要がある。また、電界発生手段201と異なり一体型捕集手段501では電極の表面に樹脂部材がいるため樹脂部材の厚み分だけ電界が弱くなってしまう。よって第2の実施の形態における捕集手段501には、電界発生手段201より高い印加電圧を必要とする。
【0047】
従って、離型ワックスの気化成分が紙ガイドや搬送ローラ等、画像形成装置内に付着することによる搬送不良を防止することが可能な画像形成装置を提供することができる。特に第2の実施の形態においては、離型ワックス気化成分の粒子に電気的に偏りを持たせる機能と静電的に離型ワックスの気化成分を捕集する機能を同時に満たす一体型捕集手段を配置している。従って、それぞれの機能を備える装置を別々に配置するよりも小さなスペースで配置でき、部材にかかるコストを下げることも可能である。
【0048】
〔第3実施形態〕
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態において、上述の第1または第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0049】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る定着手段及び周辺装置の全体構成を示す縦断面図である。第3の実施の形態においては、定着手段の他に定着手段のシートP搬送方向下流にさらに離型ワックスから気化した成分に電界を付与する電界発生機能及び前記電界が付与された前記気化した成分を捕らえる捕集機能を備える第2の捕集システム600を設置している点において、上述した第1、或いは、第2の実施の形態における画像形成装置と異なる。 なお、第3の実施の形態に係る画像形成装置が備える定着手段としては、第1の実施の形態で説明した定着手段100であっても、第2の実施の形態で説明した定着手段110であっても良い。以下では、定着手段100が備えられていることを前提として説明を行う。この定着手段100の内部には、上述したように電界発生手段201及び捕集手段301が設けられており、両者を以下、まとめて第1の捕集システムと表わす。
【0050】
これまで説明したように基本的には発生源に近い定着手段内で電気的に離型ワックス気化成分を捕集する。ただし、一部の離型ワックスの気化成分は熱対流やシートPが搬送されることで発生する気流に乗って定着手段外へ排出されてしまう可能性がある。この離型ワックスの気化成分を捕集するために考案した構成が図9である。
【0051】
第2の捕集システム600は、ファン602及びダクト603を備え、これらにより強制的に気流を発生させ、離型ワックスの気化成分を前記ダクト603内に引き込む。さらに、ダクト603内には熱対流やシートPが搬送されることで発生する気流によって、定着手段100外へ排出された離型ワックスを融点以上に再度加熱可能な加熱手段である加熱ヒータ601が配置されている。また、ダクト603内には図3及び図5で示した電界発生手段201及び捕集手段301が配置されている。なお、第2の捕集システム600には、上述した電界発生手段201及び捕集手段301ではなく、第2の実施の形態において説明した捕集手段501が配置されていても良い。
【0052】
熱対流やシートPが搬送されることで発生する気流によって、定着手段100外へ排出された離型ワックスの気化成分は、ファン602による気流によって強制的にダクト603に引き込まれる。併せて加熱ヒータ601で融点以上に加熱されることから、液体もしくは気体の状態になる。このような状態にされた離型ワックスの気化成分が電界発生手段201を通過することで電気的な偏りを持った状態になり、捕集手段301によって吸着・捕集される。
【0053】
従って、離型ワックスの気化成分が紙ガイドや搬送ローラ等、画像形成装置内に付着することによる搬送不良を防止することが可能な画像形成装置を提供することができる。特に第3の実施の形態においては、定着手段内で捕集しきれず定着手段外へ排出された離型ワックスの気化成分も捕集することが可能となる。従って、より確実に離型ワックスの気化成分が画像形成装置内に付着することを防止でき、搬送不良を防止することができる。
【0054】
なお、上述した第2の捕集システム内には、電界発生手段及び捕集手段が別々に設けられていたが、これらを一体型の捕集手段とすることはもちろん可能である。
【符号の説明】
【0055】
12…二次転写部
12a…転写ローラ
12b…対向ローラ
12c…駆動ローラ
17…電源ユニット
100…定着手段
101…加熱ユニット
102…加圧ローラ
105…定着スリーブ
201…電界発生手段
202a,202b…金属板
203a,203b…樹脂部材
301…捕集手段
501…一体型捕集手段
302a,302b…捕集板
303…電極
304a,304b…捕集板表面
401…離型ワックス分子
402…離型ワックス粒子
601…加熱ヒータ
602…ファン
603…ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型ワックスを内包したトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、
加熱回転体と前記加熱回転体に圧接する加圧回転体によって形成されるニップ部にて、記録材の上のトナーを加熱、加圧することにより前記記録材に前記トナーを定着させる定着手段と、
前記トナーを定着させる過程で発生する離型ワックスから気化した成分に電界を付与する電界発生手段と、
前記電界が付与された前記気化した成分を捕える捕集手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電界発生手段及び前記捕集手段は、前記定着手段の、前記加熱回転体を収納する筐体の内部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電界発生手段及び前記捕集手段への電源供給は、画像形成プロセスに用いられる電源から分岐して行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電界発生手段と前記捕集手段は一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電界発生手段と前記捕集手段は前記定着手段の内部に設けられており第1の捕集システムを構成しており、
前記装置は更に、前記定着手段の外であって前記記録材の搬送方向下流に設置される、前記離型ワックスから気化した成分に電界を付与する電界発生機能及び前記電界が付与された前記気化した成分を捕らえる捕集機能を備える第2の捕集システムを有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2の捕集システムは、前記気化した成分を融点以上に再度加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−237554(P2011−237554A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107939(P2010−107939)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】