説明

画像形成装置

【課題】二次転写位置で中間転写ベルトから記録媒体上に転写されたトナー像に、記録媒体の搬送方向の後方側へトナーが飛散する画像欠陥が生じるのを低減する。
【解決手段】画像形成部で形成されたトナー像が中間転写ベルト20に転写され、二次転写位置29で中間転写ベルトから記録媒体に転写される。二次転写位置では、中間転写ベルトの内周面に接触する対向ロール23に対して二次転写ロール26が二次転写ベルト28及び中間転写ベルトを介して押圧され、対向ロールとの間に転写電圧が印加される。そして、二次転写位置の上流側には、印加ロール30が中間転写ベルトの内周面に接触するように設けられ、二次転写ロールに対してトナーの帯電極性側の電位とする電圧が印加される。これにより、中間転写ベルトと二次転写ロールとの間に電界が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
像保持体上の静電潜像にトナーを転移して可視像を形成する画像形成装置として、像保持体上のトナー像を中間転写体に一旦転写し、この中間転写体上のトナー像を記録媒体に転写するものが広く採用されている。そして、中間転写体としては、駆動ロールや支持ロール等の複数のロール状部材に張架されて周回移動する無端状の中間転写ベルトが多く用いられている。
【0003】
このような装置では、像保持体上で形成されたトナー像は一次転写位置で中間転写ベルトに転写され、中間転写ベルトの周回移動によって二次転写位置へ搬送される。二次転写位置には、例えば特許文献1に記載されているように中間転写ベルトの内周面に押し付けられるバックアップ部材と中間転写ベルトの外側から該中間転写ベルトを介してバックアップ部材に押圧される二次転写部材が配置されている。そして、記録媒体は中間転写ベルトに重ね合わされて二次転写部材とバックアップ部材との間に挟み込まれる。二次転写部材とバックアップ部材との間には電界が形成されており、電荷を有するトナーは電界内で中間転写ベルトから記録媒体上に転移される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−44329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような画像形成装置において、記録媒体上にトナー像を転写するときに、記録媒体の搬送方向の後方側へトナーが飛散して画像欠陥となることがある。
本願発明は、記録媒体の搬送方向の後方側にトナーが飛散する画像欠陥の発生を低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 トナーによる画像を形成する画像形成部と、 周面の方向への周回移動が可能に支持され、前記画像が外周面上に一次転写される中間転写ベルトと、 前記中間転写ベルトの外周面に接触し、該中間転写ベルト上のトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写部材と、 前記中間転写ベルトの内周面と当接するよう設けられ、前記二次転写部材と対向する対向部材と、 前記中間転写ベルトの周回移動方向における前記二次転写位置の上流側で該中間転写ベルトと接触し、前記二次転写部材との間にトナーの帯電極性側の電位とする電圧が印加される印加部材と、を有することを特徴とする画像形成装置
を提供する。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、 前記印加部材と前記二次転写部材との間に印加される前記電圧は、前記中間転写ベルトと前記二次転写部材との間に電界を形成し、該電界は、前記二次転写位置の上流側で前記トナーが前記中間転写ベルトの周面に沿った方向へ移動するのを拘束するように設定されるものとする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、 前記電圧は、該画像形成装置の設置場所の湿度が低くなるのにしたがって、低電圧に設定又はOFF状態とされるものとする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置において、 前記画像形成部で形成されるトナー像が、前記中間転写ベルトの移動方向を横切る方向の直線を含むものであるか否かを判別する判別手段を備え、前記直線を含むものであると判別されたときに、前記印加部材と前記二次転写部材との間に前記電圧を印加するように設定されているものとする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の画像形成装置において、 前記トナー像が転写される記録媒体の平滑度、前記中間転写ベルトの移動速度及び湿度の少なくとも一つのデータを取得し、これに基づいて前記印加部材と前記二次転写部材との間に印加される前記電圧のON/OFF又は電圧値を制御するものとする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る画像形成装置では、本構成を備えていない画像形成装置と比較して、記録媒体の搬送方向の後方側にトナーが飛散する画像欠陥の発生を低減することができる。
【0012】
請求項2に係る画像形成装置では、本構成を備えていない画像形成装置と比較して、記録媒体の搬送方向の後方側にトナーが飛散するのを、印加部材と二次転写部材との間の電界内でトナーに作用する力によって拘束することができる。
【0013】
請求項3に係る画像形成装置では、本構成を備えていない画像形成装置と比較して、画像の鮮明度の低下を低減することができる。
【0014】
請求項4に係る画像形成装置では、本構成を備えていない画像形成装置と比較して、後方側にトナーが飛散する画像欠陥が生じやすい画像について、この画像欠陥の発生を低減することと、この画像欠陥が生じにくい画像について鮮明度の低下を低減することとの両立が可能となる。
【0015】
請求項5に係る画像形成装置では、本構成を備えていない画像形成装置と比較して、画像形成時における条件が後方側へトナーが飛散する画像欠陥を生じやすいときについて、この画像欠陥の発生を低減することと、この画像欠陥が生じにくい条件のときに画像の鮮明度の低下を低減することの両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願に係る発明の一実施形態である画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の二次転写が行われる位置の構成を示す拡大図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の二次転写位置に形成される電界の状態を示す概略図である。
【図4】図1に示す画像形成装置の印加部材に印加する電圧とトナーの飛散が生じる頻度との関係を示す図である。
【図5】図1に示す画像形成装置の印加部材として、一つのロールを設けた場合及び二つのロールを設けた場合について、これらの印加部材に印加する電圧とトナーの飛散が生じる頻度との関係を示す図である。
【図6】本発明が解決しようとする課題である画像欠陥を示す概略図である。
【図7】図6に示す画像欠陥の拡大図である。
【図8】図6及び図7に示す画像欠陥が生じる原因を説明する概略断面図である。
【図9】二次転写位置及び二次転写位置の上流側でトナーに作用する力を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願に係る発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成図である。また、図2は、図1に示す画像形成装置の二次転写が行われる位置の拡大図である。
この画像形成装置は、4色のトナーを用いてカラー画像を形成する画像形成装置であり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、これらと対向する中間転写ベルト20とを備えている。中間転写ベルト20は、これらの画像形成ユニット10のそれぞれと対向するように張架され、周面が周回駆動されるものである。この中間転写ベルト20の周回移動方向における上流側から順に、イエローのトナー像を形成する画像形成ユニット10Y、マゼンタのトナー像を形成する画像形成ユニット10M、シアンのトナー像を形成する画像形成ユニット10C、ブラックのトナー像を形成する画像形成ユニット10Kが配列され、その下流側には、二次転写を行うための二次転写部材24が中間転写ベルト20と対向するように配置されている。この二次転写部材24が中間転写ベルト20と対向する二次転写位置29にはシート収容部8から搬送路9を経て、シート状の記録媒体が送り込まれる。記録媒体の搬送経路における二次転写位置29の下流側には、トナー像が転写された記録媒体の搬送装置25並びにトナー像を加熱及び加圧して記録媒体上に圧着する定着装置7が設けられている。さらに下流側にはトナー像が定着された記録媒体を重ねて保持する排紙保持部(図示しない)が設けられている。
【0018】
上記画像形成ユニット10のそれぞれは、表面に静電潜像が形成されて像保持体として機能する感光体ドラム1を有しており、各感光体ドラム1の周囲に、該感光体ドラム1の表面を帯電する帯電装置2と、感光体ドラム上に形成された潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像を形成する現像装置4と、感光体ドラム1上のトナー像を中間転写ベルト20上に一次転写する一次転写ロール5と、転写後の感光体ドラム上に残留したトナーを除去するクリーニング装置6と、を備えている。また、帯電された感光体ドラム1のそれぞれについて、画像信号に基づいて像光を発生する露光装置3が設けられ、現像装置5が対向する位置の上流側で感光体ドラム1に像光を照射して静電潜像を書き込むものとなっている。
【0019】
感光体ドラム1は、金属の円筒状部材の周面に有機感光体層を積層して形成したものであり、金属部分が電気的に接地されている。また、電圧が印加されるものであってもよい。
【0020】
上記帯電装置2は、被帯電体である感光体ドラム1の周面と間隔をあけて張架された電極ワイヤを備えるものであり、この電極ワイヤと感光体ドラム1との間に電圧を印加し、コロナ放電を生じさせて感光体ドラム1の表面を帯電するものである。
本実施の形態では、上記のようにコロナ放電によって帯電させる装置を用いたが、固体放電器やロール形状又はブレード形状などの接触あるいは非接触帯電装置を用いることもできる。
【0021】
上記露光装置3は、画像信号に基づいて点滅するレーザー光を発生し、これをポリゴンミラーによって感光体ドラム1の主走査方向(軸線方向)に走査するものである。これによりそれぞれの感光体ドラム1の表面に各色の画像に相当する静電潜像が形成される。
【0022】
上記現像装置4は、トナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤を使用するものであり、感光体ドラム1と対向する位置に現像ロール4aを備え、回転する現像ロール4aの周面上に二成分現像剤の層が形成される。この現像ロール4aの周面から感光体ドラム1上にトナーを転移して潜像を可視化する。また、画像形成にともない消費されたトナーは、消費量に応じて補充されるようになっている。
【0023】
上記一次転写ロール5は、金属の芯材に導電性粒子が添加されたゴム材で外周面を被覆したものであり、各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kについて感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kと対向する位置の中間転写ベルト20の背面側に配置されている。そして、一次転写ロール5Y,5M,5C,5Kと感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kとの間に転写電圧が印加され、これらが対向する一次転写位置19で、通過する中間転写ベルト20に感光体ドラム上のトナー像を静電的に転写するものである。
【0024】
上記クリーニング装置6は、感光体ドラム1の周面に接触して配置されたクリーニングブレード及びクリーニングブラシにより、転写後の感光体ドラム上に残留したトナーを除去するものである。
【0025】
上記中間転写ベルト20は、複数の層を重ね合わせたフィルム状の部材を無端状に形成したものである。それぞれの層は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、フッ素系樹脂などの樹脂材料に、カーボンやイオン導電物質などの導電性付与のための物質を添加し、予め定められた表面抵抗率となるように調整されている。
本実施の形態の中間転写ベルトは、複数の層のうち最も内側の層(以後、「最内層」とする)の内周面の表面抵抗率は複数の層のうち最も外側の層(以後、「最外層」とする)の外周面の表面抵抗率より小さくなるように調整されている。最外層の表面抵抗率の常用対数値を11.0LogΩ/□程度とし、最内層の表面抵抗率の常用対数値は、最外層の表面抵抗率の値より1.0LogΩ/□以上小さく設定するのが望ましい。
【0026】
このような中間転写ベルト20は、回転駆動される駆動ロール21と、中間転写ベルト20の幅方向への偏りを調整する調整ロール22と、対向ロール23とに張架されて図1中に示す矢印Aの方向に周回移動するものとなっている。
【0027】
上記対向ロール23と中間転写ベルト20を挟んで対向する位置に配置された二次転写部材24は、二次転写ロール26と、補助ロール27と、これらに張架された二次転写ベルト28とを有するものである。二次転写ベルト28は中間転写ベルト20と重ね合わされた状態で対向ロール23と二次転写ロール26との間に挟み込まれ、中間転写ベルト20が周回駆動されるのにともなって周回移動するものとなっている。また、中間転写ベルト20と二次転写ベルト28との間に記録媒体が送り込まれたときには、この記録媒体を挟み込んで搬送するものとなっている。そして、二次転写ロール26と対向ロール23との間に転写用の電界を形成するために、転写電圧が印加される。この転写電圧は、例えば−1kV以上で−6kV以下の範囲内で設定され、対向ロール23の電位がトナーと同極性側となるように印加される。つまり、トナーの帯電極性が負である場合には、対向ロール23が二次転写ロール26より低電位となるように転写電圧が印加される。
【0028】
上記二次転写ロール26は、金属の芯材26aの外周面上に、導電性粒子が添加されたゴム材の外周層26bを形成したものである。外周層26bは複数の層で構成されるものが望ましく、例えば三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層とを有するものとなる。コア層はカーボンブラック等の導電性粒子を添加したシリコーンゴム、ウレタンゴム、又はEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの材料の発泡していない材料で形成することができる。コーティング層は、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシ樹脂等で形成することができる。また、この二次転写ロールの外周層の体積抵抗率は、107Ωcm以下であることが望ましい。
【0029】
上記対向ロール23は、金属の芯材23aの外周面上に外周層23bを形成したものであり、外周層23bは単層又は複数の層から構成されるもののいずれでもよい。単層構造の場合は、例えばカーボンブラック等の導電性粒子を添加したシリコーンゴム、ウレタンゴム、又はEPDM等で形成することができる。二層構造の場合は、上記ゴム層の外周面を該ゴム層より表面抵抗率の大きい材料で被覆したものとする。対向ロール23の表面抵抗率の値は、107Ω/□以上で1011Ω/□以下の範囲とするのが望ましい。
【0030】
上記中間転写ベルト20の周回移動方向における二次転写位置29の上流側には、印加部材である2つの印加ロール30が中間転写ベルト20の内周面と接触し、軸線回りに回転が可能に支持されている。
これら2つの印加ロール30a,30bは金属製のロールであり、二次転写ロール26との間に電圧が印加される。この電圧は、印加ロール30の電位がトナーと同極性側となるように印加され、使用するトナーが負極性の場合、例えば−1kVから−6kVまでの範囲内で設定するのが望ましい。
【0031】
上記印加ロール30は、中間転写ベルト20に接するとともに、調整ロール22と対向ロール23との間で張架された中間転写ベルト20を外側にほとんど押し出さない位置に支持されている。そして、2つの印加ロール30a,30bは、二次転写ロール26と対向ロール23との中心を結ぶ線上から中間転写ベルト20に沿って上流側に3cm及び5cmの位置で該中間転写ベルト20と接触している。
【0032】
上記定着装置7は、加熱源を内蔵した加熱ロール7aと、この加熱ロール7aに圧接される加圧ロール7bとを備えており、これらが互いに接触してニップ部を形成している。トナー像が転写された記録媒体は、上記ニップ部に送り込まれ、回転駆動される加熱ロール7aと加圧ロール7bとの間で加熱されるとともに加圧され、トナー像が記録媒体上に圧着されるものとなっている。
【0033】
このような画像形成装置は、以下のように動作する。
画像形成動作が開始されると感光体ドラム1が回転駆動され、帯電装置2によって各感光体ドラム1の表面が帯電される。そして、露光装置3からは、画像データに基づいて点滅するレーザ光が出力され、感光体ドラム1の表面の感光層に走査される。これにより、レーザ光の照射位置の電位が減衰し、露光された位置と露光されていない位置との間に静電電位の差が生じ、いわゆる静電潜像が感光体ドラム1の表面に形成される。
【0034】
このようにして感光体ドラム1上に形成された静電潜像は、感光体ドラム1の回転により現像ロール4aと対向する現像位置まで搬送される。この現像位置を通過するときに、現像ロール4aに付着しているトナーが感光体ドラム表面の像部分に静電的に転移し、トナー像が形成される。
【0035】
一次転写位置19では、感光体ドラム1と一次転写ロール5とが中間転写ベルト20を介して対向しており、これらの間に転写電圧が印加されている。各感光体ドラム1の表面で現像されたトナー像が一次転写位置19へ搬送されると感光体ドラム1と一次転写ロール5との間に形成されている電界内で静電気力がトナーに作用し、感光体ドラム1表面のトナー像が中間転写ベルト20の表面に転写される。このとき一次転写ロール5に印加される転写電圧は、トナーの極性(−)と逆極性(+)となっている。
【0036】
このようにして、中間転写ベルト20は、それぞれの画像形成ユニット10と順次に対向して各色のトナー像が重ね合わせて転写される。全ての色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、図1中に示す矢印Aの方向に周回移動し、中間転写ベルト20の内面に接する対向ロール23と、二次転写部材24とが対向する二次転写位置29にトナー像が搬送される。
【0037】
二次転写ベルト28と中間転写ベルト20との間には、中間転写ベルト20上のトナー像が搬送されるタイミングにあわせて記録媒体Pが送り込まれ、二次転写のための電界が二次転写ロール26と対向ロール23との間に形成される。このとき形成される電界内で静電気力がトナーに作用し、中間転写ベルト20の表面のトナー像が記録媒体Pに転写される。
その後、記録媒体Pは搬送装置25によって定着装置7へ送り込まれ、トナー像が加熱及び加圧されて、複数色が重ね合わされたトナー像が記録媒体の表面に定着される。
このようにして、カラー画像の定着が完了した記録媒体は、排紙保持部へ向けて搬送され、一連のカラー画像形成動作が終了する。
【0038】
上記工程で、中間転写ベルト20上のトナー像が記録媒体Pに転写されるとき、二次転写ロール26と対向ロール23との間には、図3に示すように二次転写用の電界Aが形成されている。そして、この電界Aの他に、印加ロール30と二次転写ロール26との間に電圧が印加されることにより、中間転写ベルト20と二次転写ロール26との間にも電界Bが生じている。この電界Bは、印加ロール30、中間転写ベルト20、記録媒体P、二次転写ベルト28、二次転写ロール26の抵抗値に応じて中間転写ベルト20に電位が生じ、この中間転写ベルト20と二次転写ロール26との間の電位差によって生じるものである。そして、この電界Bは、二次転写ロール26と対向ロール23とが互いに強く押圧される領域よりも上流側で、トナー像が保持された中間転写ベルト20と記録媒体Pとが重ね合わされた領域で生じており、中間転写ベルト20と記録媒体Pとの間に挟まれたトナーを拘束する力を発生させる。つまり、電界Bは中間転写ベルト20及び記録媒体Pの面を突き抜ける方向に作用し、トナーが記録媒体の表面に沿った方向に移動するのを拘束するものとなる。この拘束力は、二次転写ロール26と対向ロール23とが互いに強く押圧される領域に突入する直前のトナーが進行方向の後方側に飛散するのを拘束することになる。これにより、例えば図6に示すような画像欠陥の発生を低減することになる。
【0039】
図6に示す画像欠陥は、記録媒体の進行方向を横切る方向に描かれた複数本の細線を有する画像で、細線を構成するトナーが記録媒体の進行方向の後方側に飛散するものである。この飛散は、複数本の細線上の分散した位置で発生しており、この飛散部分を拡大すると図7に示すようになっている。つまり、細線上の極狭い範囲でトナーTが後方側に吹き飛ばされるように移動している。そして、このような画像欠陥は、細線が記録媒体Pの進行方向に対して交差しているとき、特に直角に近い角度となっているとき、細線の太さが0.1〜0.5mm程度のとき、細線の間隔が2〜5mm程度のときに生じ易くなる。
【0040】
このような画像欠陥は次のようにして発生するものと考えることができる。
二次転写ロール26と対向ロール23とが互いに強く押圧される領域に突入する前に、図8(a)に示すように中間転写ベルト20と記録媒体Pとが重ね合わされ、記録媒体Pの背面は二次転写ベルト28に接触する。このとき中間転写ベルト20上のトナーTが記録媒体Pとの間に挟み込まれ、前方側にある細線のトナーT1と後方側にある細線のトナーT2との間に空間Sが形成される。この空間Sは、中間転写ベルト20と二次転写ロール26との圧接力F1が小さいときは、押しつぶされることなく維持されているが、二次転写ロール26と対向ロール23とが互いに強く押圧される領域に突入するときに、図8(b)に示すように、大きな圧接力F2によって前方側から上記空間Sが押しつぶされる。そして、細線が記録媒体Pの搬送方向に対して交差して複数描かれている画像、特に記録媒体Pの搬送方向に対して細線が直角に近い角度で複数描かれている画像等では、上記空間S内の空気が閉じ込められるようになって排出路が形成されにくくなる。このため、上記空間Sが前方側から押しつぶされると、図8(b)中に矢印Cで示すように、圧接力が弱い後方側で細線を形成しているトナー粒子群T2が空気圧によって吹き飛ばされ、後方側に上記空間S内の空気が開放される。これにより後方側の細線を構成するトナーが後方側に散乱するものと考えられる。
【0041】
このような現象が生じるときに、図8(b)中に示す電界B、つまり中間転写ベルト20と二次転写ロール26との間に形成されている電界Bがあると、電荷を有するトナーに拘束力が作用し、後方側に吹き飛ばす力に対して抵抗するものとなる。
【0042】
この電界Bによるトナーを拘束する力は、次のような作用によるものを含むと考えることができる。
対向ロール23が二次転写ロール26と対向する中心位置付近では電界Aが二次転写ロール26から対向ロール23に向かって記録媒体Pの厚さ方向に作用するのに対し、電界Bが作用する領域では電界Aが作用する領域に比べて中間転写ベルト20に存在する負電荷が粗となっており、電界Bは図9(a)に示すように記録媒体の面に対して傾斜した方向に形成される。このため、負電荷を有するトナー粒子に作用する静電気力Eも傾斜した方向となり、図9(b)に示すように上記静電気力Eの記録媒体Pの表面に沿った方向の成分Ehが、該記録媒体Pの搬送方向における上流側に向かって作用する。この力が、トナー粒子Tを下流側に吹き飛ばそうとする力Wに抵抗するものとなる。
【0043】
一方、上記中間転写ベルト20と二次転写ロール26との間に形成されている電界Bは、記録媒体Pが中間転写ベルト20に接触する直前の領域(図3中に符号Dで示す領域)でも作用する。このため、記録媒体Pが中間転写ベルト20に接触する前にトナーの転移が生じて像の鮮明度が低下する、いわゆる滲みが発生する虞が考えられる。しかし、図3に示すように記録媒体Pを二次転写ベルト26に接触する位置より上流側で中間転写ベルト20に接触させることにより、記録媒体Pが中間転写ベルト20に接触する直前の領域Dの電界の強さを小さく抑えることができ、これによりトナーが後方側に飛散する画像欠陥の抑制と像の鮮明度が低下することの抑制とを両立させることが容易となる。
また、印加ロール30と二次転写ロール26との間に印加する電圧を調整して、上記像の鮮明度が低下する欠陥の発生を抑えることができる。さらに、中間転写ベルト20を複数の層から構成されるものとし、最内層の内周面の表面抵抗率が最外層の外周面の表面抵抗率より小さくなるように調整することによっても、トナーが後方側に飛散する画像欠陥の抑制と像の鮮明度が低下することの抑制とを両立させることが容易となる。
【0044】
なお、上記印加ロール30と二次転写ロール26との間には、トナー像の二次転写を行うときのすべてにおいて電圧を印加するものであってもよいが、トナーが後方に飛散する画像欠陥が生じやすい条件のときに、電圧を印加するように制御することもできる。上記画像欠陥が生じにくい条件では、印加ロール30と二次転写ロール26との間の電圧の印加を停止してもトナーが後方へ飛散する画像欠陥が発生する可能性は少なく、電圧の印加を停止すると、電圧を印加することによる像の鮮明度の低下が生じる可能性も小さくなる。
【0045】
例えば、転写する画像が欠陥を生じ易いものであるか否かを画像データから判別し、欠陥が生じ易いものであるときに印加ロール30に電圧を印加することができる。欠陥が生じやすい画像は、前述の記録媒体の進行方向と直角方向に複数の細線を含む画像や、多重の円又は円弧を含む画像等が考えられる。また、細線以外の像の後方に間隔をあけて細線がある画像等も欠陥が生じる可能性がある。これらの画像を基本形態として記憶しておき、画像処理装置において画像データからこれらの基本形態に該当する画像を含むか否かを判別して印加ロール30への電圧印加を制御することができる。
【0046】
また、環境条件、画像形成速度、使用する記録媒体等も、トナーが後方に飛散する画像欠陥の生じ易さに影響している。湿度が高いときにはトナーの帯電量が低下し、上記画像欠陥が生じ易くなる。画像形成速度つまり中間転写ベルトの移動速度が速いときには、移動速度が遅いときに比べ中間転写ベルト20と二次転写ベルト28とトナーTとで囲まれた空間が急激に押しつぶされ、トナーの飛散が生じ易くなる。また、使用する記録媒体Pがコート紙等の平滑なものであるときには、表面がなものに比べて中間転写ベルト20と二次転写ベルト28とトナーTとで囲まれた空間内の空気が抜けにくく、上記画像欠陥が生じやすくなる。したがって、上記のような条件についてのデータを取得する手段を備えるものとし、これらデータに基づいて、又はこれらのデータの組み合わせに基づいて、印加ロール30と二次転写ロール26との間に電圧を印加するか否かを制御してもよい。
【0047】
また、上記のようなデータに基づいて印加ロール30と二次転写ロール26との間に印加する電圧値を制御することもできる。例えば、画像形成装置の設置位置の湿度を検出するセンサを備えるものとし、この検出結果に基づき、湿度が低いときには印加ロール30と二次転写ロール26との間に印加する電圧を低く設定し、湿度が高いときには、低湿のときより印加する電圧を高く設定する。これにより、トナーが記録媒体の搬送方向の後方側へ飛散する画像欠陥を抑制することと、滲むように鮮明度が低下する画像の欠陥の抑制とを両立させることができる。このような作用についての実験結果は後述する。
【0048】
以上に説明した実施の形態では、印加部材として、2つの金属ロールを備えた印加ロール30を用いたが、この他の形態であって、中間転写ベルトに電位を付与できる部材を採用することもできる。例えば、表面の位置を固定して支持され、周回移動する中間転写ベルトの内周面が接触して擦りつけられる部材であってもよい。また、3つ以上の部材を並べて用いるものであってもよいし、一つの部材が接触されるものであってもよい。また、支持される位置については、調整ロールや対向ロール等に張架された中間転写ベルトに対して内側から押し付けて中間転写ベルトを外側に押し出すように印加部材を配置してもよい。また、中間転写ベルトの周面の移動方向には、二次転写部材と対向部材とが互いに押圧される位置の上流側で中間転写ベルトと二次転写部材との間のトナーが記録媒体の表面に沿った方向に移動するのを拘束する電界を形成することができる位置であれば、位置を変更して設定することができる。
【0049】
一方、上記実施の形態では、二次転写部材24が二次転写ロール26と補助ロール27と二次転写ベルト28とを有するものであったが、二次転写部材はこのような形態に限定されるものではなく、二次転写ロールが中間転写ベルト又は記録媒体に直接押圧されるものであってもよい。また、回転しないように支持されたパッド状の部材であってもよい。
さらに、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他の形態として実施することもできる。
【0050】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験について説明する。
[実験1]
この実験は、図1及び図2に示す画像形成装置を使用して画像を形成し、トナーが後方に飛散する画像欠陥の発生頻度と、印加ロール30に印加する電圧との関係を調査したものである。図1及び図2に示す実施の形態では、二次転写ロール26の電位を0Vとしており、印加ロール30が正又は負の電位となるように電圧を印加する。
形成した画像は、トナーが後方に飛散する画像欠陥が生じ易い典型的な例として、記録媒体の移動方向と直角となる方向に線幅0.3mmの細線を3mm間隔で形成するものである。また、この細線はブラックトナーを用いた像とシアントナーを用いた像とを重ね合わせたものとする。
この像を中間転写ベルト20上に形成し、二次転写位置で記録媒体P上に転写した後、定着する。そして、トナーが後方へ飛散する欠陥が生じた箇所を計数して、評価特性値とする。
【0051】
図4は、印加ロール30に印加する電圧値を0Vとしたときの欠陥発生数を基準とし、印加ロール30が負側の電位となるように又は正側の電位となるように電圧を印加したときの画像欠陥の発生数を相対値として示すものである。
この図に示されるように、印加ロール30に負側の電位を付与したときには、画像欠陥の発生数は低減され、正側の電位が付与されたときには画像欠陥が増加する。
【0052】
[実験2]
この実験では、図2に示される2つの印加ロール30a,30bのうち、下流側のロール30aのみ又は上流側のロール30bのみを設けたときの効果を、二つのロールを設けたときと比較するものである。形成する画像及び評価の方法は実験1と同様に行う。
図5に示されるように、印加ロールとして下流側のロール30aのみ又は上流側のロール30bのみを設けたときのいずれについても、印加ロール30が負側の電位となるように電圧を印加することによって、画像欠陥が減少する傾向が認められる。しかし、一つのロールのみを設置したときには印加ロール30と中間転写ベルト20との接触状態が安定しておらず、減少傾向も2つのロールを用いた場合に比べて画像欠陥の減少傾向が安定していない。図1及び図2に示す実施形態のように二つのロールを用いることによって接触状態が改善され、一つのロールのみを使用する場合に比べ、安定して画像欠陥が低減される。
【0053】
[実験3]
この実験では、図1及び図2に示す画像形成装置を使用し、高湿環境下と低湿環境下において、印加ロール30に印加する電圧を変えて画像を形成する。そして、トナーが後方に飛散する画像欠陥の発生頻度と、画像の滲みの程度とを観察して比較したものである。結果は、表1に示すように、高湿環境下では印加ロール30に印加する電圧を上昇させるとトナーの後方への飛散は減少する。そして、画像の滲みの程度はほとんど変化しない。一方、低湿環境では、印加ロール30に印加する電圧が低電圧でも、トナーの後方への飛散を抑制する効果が顕著に現れる。さらに印加する電圧を上昇させてもトナーの飛散を抑制する効果は大きく変動しない。これに対して滲みの程度は印加ロール30に印加する電圧を上昇させると著しく悪化する。このような実験の結果から、高湿の環境下では、印加ロール30に印加する電圧を高く設定して、トナーの飛散を抑制し、低湿の環境下ではトナーの飛散が改善される範囲で電圧を低く設定するか、電圧の印加をOFF状態とし、滲みの程度が悪化するのを少なく抑えるのが望ましいことが分かる。
なお、この実験で滲みのグレードは、滲みが全く発生していないものをグレード0、滲みが極端に悪いものをグレード5とする。滲みがそれほど目立たず、画像として許容できる程度はグレード2に相当するものである。
【0054】
【表1】

【符号の説明】
【0055】
1:感光体ドラム、 2:帯電装置、 3:露光装置、 4:現像装置、 5:一次転写ロール、 6:クリーニング装置、 7:定着装置、 8:シート収容部、 9:搬送路、 、
10:画像形成ユニット、 19:一次転写位置、
20:中間転写ベルト、 21:駆動ロール、 22:調整ロール、 23:対向ロール、 24:二次転写部材、 25:搬送装置、 26:二次転写ロール、 27:補助ロール、 28:二次転写ベルト、 29:二次転写位置、 30:印加ロール、
P:記録媒体、 T:トナー、 A,B:電界の方向、 C:トナーが飛散する方向、 D:記録媒体Pが中間転写ベルト20に接触する直前の領域、 F1,F2:圧接力


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーによる画像を形成する画像形成部と、
周面の方向への周回移動が可能に支持され、前記画像が外周面上に一次転写される中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトの外周面に接触し、該中間転写ベルト上のトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写部材と、
前記中間転写ベルトの内周面と当接するよう設けられ、前記二次転写部材と対向する対向部材と、
前記中間転写ベルトの周回移動方向における前記二次転写位置の上流側で該中間転写ベルトと接触し、前記二次転写部材との間にトナーの帯電極性側の電位とする電圧が印加される印加部材と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印加部材と前記二次転写部材との間に印加される前記電圧は、前記中間転写ベルトと前記二次転写部材との間に電界を形成し、該電界は、前記二次転写位置の上流側で前記トナーが前記中間転写ベルトの周面に沿った方向へ移動するのを拘束するように設定されるものであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電圧は、該画像形成装置の設置場所の湿度が低くなるのにしたがって、低電圧に設定又はOFF状態とされるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成部で形成されるトナー像が、前記中間転写ベルトの移動方向を横切る方向の直線を含むものであるか否かを判別する判別手段を備え、前記直線を含むものであると判別されたときに、前記印加部材と前記二次転写部材との間に前記電圧を印加するように設定されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー像が転写される記録媒体の平滑度、前記中間転写ベルトの移動速度及び湿度の少なくとも一つのデータを取得し、これに基づいて前記印加部材と前記二次転写部材との間に印加される前記電圧のON/OFF又は電圧値を制御するものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−123097(P2012−123097A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272562(P2010−272562)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】