説明

画像形成装置

【課題】現像剤担持体の電位と供給部材の電位との電位差を適切に制御して、濃度が安定した高品位の画像を形成することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、現像電圧印加手段110が現像剤担持体10に印加する電圧と供給電圧印加手段112が供給部材12に印加する電圧との電位差Vを制御する制御手段60を有し、制御手段60は、像担持体1上に形成された像担持体1の表面の移動方向に連続する試験用現像剤像における現像剤担持体10の1周目に対応する部分と2周目に対応する部分の濃度を濃度検出手段30によって検出した結果に応じて、上記電位差Vを制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を用いた複写機、プリンターなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式或いは静電記録方式を用いた画像形成装置では、像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像を現像装置でトナーにより現像してトナー像を形成する。そして、このトナー像を紙などの転写材に転写し、その後、このトナー像を熱や圧力などにより転写材上に定着させて、印刷物を得る。
【0003】
特に、広く一般に用いられている電子写真方式の画像形成装置では、像担持体として光導電物質を備える電子写真感光体(感光体)が用いられ、この感光体を一様に帯電させた後に、画像情報に応じて露光することで、感光体上に静電潜像を形成する。
【0004】
現像装置としては、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する供給部材と、を有し、現像剤であるトナーを供給部材で現像剤担持体に擦り付けて供給するように構成されたものがある。
【0005】
特許文献1には、供給部材としてスポンジローラを使用して、このスポンジローラによって現像に消費されずれに現像剤担持体上に残ったトナー(現像残トナー)を掻き落とし、新しいトナーを供給する構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、現像剤担持体とこれに圧接する供給部材とを同電位に保持する構成が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、供給部材の物性変化に応じて供給部材の電位を変化させる構成が開示されている。
【0008】
そして、特許文献4には、少なくとも2点の異なる現像バイアスによる画像パターンの濃度を測定し、現像バイアスに対する画像濃度の傾きに応じて供給部材の電位を変化させる構成が開示されている。これにより、トナー、現像剤担持体および供給部材の状態変化に応じて供給部材の電位を変化させることができ、これらの状態変化の画像に対する影響を防ぐことができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−109266号公報
【特許文献2】特開昭60−233676号公報
【特許文献3】特開平6−194944号公報
【特許文献4】特開平11−305501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年、プリンター、複写機などの多様な転写材への対応により、それぞれの転写材に最適な印刷スピードや印刷サイズで出力する方法が採用されるようになってきている。また、より高速出力、長寿命、様々な使用環境に耐え得る現像装置が求められている。
【0011】
こうした中、本発明者らの検討によれば、次に挙げる原因などによる使用状況の変化によって、トナーに対する帯電付与能力が変化してしまい、供給部材による現像剤担持体へのトナーの供給能力が安定しないことがあることがわかった。すなわち、転写材に対応した印刷スピードの変化、長期使用によるトナーの物性の変化、現像剤担持体の表面のトナーフィルミングによる電気的特性の変化、或いは使用環境の変化による供給部材の電気的特性の変化などの原因である。
【0012】
これに対し、特許文献2に開示されるように、現像剤担持体と供給部材を同電位に保持するだけでは、上述のような様々な原因による使用状況の変化によってトナーに対する帯電付与能力が変動してしまい、安定したトナー供給が行えない可能性がある。
【0013】
加えて、印刷する画像パターンによっても供給部材による現像剤担持体へのトナー供給能力が変化することがある。例えば、高印字率の画像の出力が連続的に続く場合、現像剤担持体の1周目に対する場合と比較して複数周目に対する場合には、供給部材に内包されているトナー量が低下してしまい、現像剤担持体へのトナー供給量が低下してしまうことがある。これにより、図2に示すように、画像濃度が低下してしまう問題が発生することがある。
【0014】
このような供給部材に内包されるトナー量が低下した場合の現像剤担持体へのトナー供給量の低下を抑制するために、供給部材の電位を現像剤担持体の電位に対してトナーの帯電と同極性側に大きくすることが有効である。しかし、上述のような様々な原因による使用状況の変化によって、現像剤担持体の電位と供給部材の電位との電位差が過剰になる場合があり、現像剤担持体へのトナー供給量が過剰になることによる現像剤担持体の表面のトナーフィルミングが発生することがある。
【0015】
これに対し、特許文献3に開示されるように、供給部材の物性変化に応じて供給部材の電位を変化させるが考えられる。しかし、特許文献3の方法では、供給部材の物性変化を潜像形成枚数に置き換えて予測制御しているため、実際の供給部材の物性変化とは異なる電位を選択する可能性がある。
【0016】
一方、特許文献4に記載の少なくとも2点の異なる現像バイアスによる画像パターンの濃度を測定し、現像バイアスに対する画像濃度の傾きに応じて供給部材の電位を変化させる方法では、現在の状況を理解して供給部材の電位を制御することが可能となる。しかし、本発明者らの検討によると、測定する画像パターンの位置によっても上記傾きが異なる場合があり、当該方法によっても印刷画像中の濃度の一様性が保てない可能性があることがわかった。そして、本発明者らの検討によると、この現象は、上述のような様々な原因による使用状況の変化によって傾向がその時々で変動することがある。
【0017】
従って、本発明の目的は、現像剤担持体の電位と供給部材の電位との電位差を適切に制御して、濃度が安定した高品位の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、静電潜像を担持する像担持体と、表面に現像剤を担持して回転することで前記像担持体上の静電潜像に現像剤を付着させて現像剤像を形成する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に接触して前記現像剤担持体の表面に現像剤を供給する供給部材と、前記現像剤担持体に電圧を印加する現像電圧印加手段と、前記供給部材に電圧を印加する供給電圧印加手段と、前記像担持体上の現像剤像の濃度を検出する濃度検出手段と、を有する画像形成装置において、前記現像電圧印加手段が前記現像剤担持体に印加する電圧と前記供給電圧印加手段が前記供給部材に印加する電圧との電位差を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記像担持体上に形成された前記像担持体の表面の移動方向に連続する試験用現像剤像における、前記現像剤担持体の1周目に担持された現像剤で現像された部分と2周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度を前記濃度検出手段によって検出した結果に応じて、前記電位差を制御することを特徴とする画像形成装置である。
【0019】
本発明の他の態様によると、静電潜像を担持する像担持体と、表面に現像剤を担持して回転することで前記像担持体上の静電潜像に現像剤を付着させて現像剤像を形成する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に接触して前記現像剤担持体の表面に現像剤を供給する供給部材と、前記現像剤担持体に電圧を印加する現像電圧印加手段と、前記供給部材に電圧を印加する供給電圧印加手段と、前記像担持体に形成された現像剤像を移動する被転写体に転写させる転写手段と、前記被転写体上の現像剤像の濃度を検出する濃度検出手段と、を有する画像形成装置において、前記現像電圧印加手段が前記現像剤担持体に印加する電圧と前記供給電圧印加手段が前記供給部材に印加する電圧との電位差を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記像担持体上に形成され前記被転写体上に転写された前記被転写体の移動方向に連続する試験用現像剤像における、前記現像剤担持体の1周目に担持された現像剤で現像された部分と2周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度を前記濃度検出手段によって検出した結果に応じて、前記電位差を制御することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、現像剤担持体の電位と供給部材の電位との電位差を適切に制御して、濃度が安定した高品位の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図2】高印字率の画像の出力時の現像剤担持体の周期と画像濃度との関係を示すグラフ図である。
【図3】現像剤担持体の1周目と2周目の現像コントラスト電位と画像濃度との関係を示すグラフ図である。
【図4】現像剤担持体の周期による画像濃度の変化を示す模式図である。
【図5】本発明に従う画像濃度差測定モードで形成する試験トナー像の一例の模式図である。
【図6】本発明に従う画像濃度差測定モードで形成する試験トナー像の他の例の模式図である。
【図7】本発明を適用し得る他の画像形成装置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0023】
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成および動作
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置100の概略断面構成を示す。本実施例では、画像形成装置100は、電子写真方式を用いた非磁性一成分接触現像方式のレーザービームプリンタである。
【0024】
画像形成装置100は、像担持体(静電潜像担持体)としてドラム型の感光体(感光ドラム)1を有する。感光体1は、駆動手段としての駆動モータ(図示せず)によって、図中矢印R1方向(時計回り)に回転駆動される。感光体1の周囲には、その回転方向に沿って、次の各手段が配置されている。まず、帯電手段としての帯電部材2である。本実施例では、帯電部材2として、感光体1の表面に接触して回転するローラ型の接触帯電部材(帯電ローラ)を用いた。次に、露光手段としての露光装置3である。本実施例では、露光装置3として、レーザービーム光源を備えるレーザースキャナを用いた。次に、現像手段としての現像装置4である。現像装置4については後述して更に詳しく説明する。次に、転写手段としての転写部材9である。本実施例では、転写部材9として、感光体1に接触して回転するローラ型の接触転写部材(転写ローラ)を用いた。次に、クリーニング手段としてのクリーナ5である。本実施例では、クリーナ5は、感光体1に接触するクリーニング部材としてのクリーニングブレード51と、クリーニングブレード51によって感光体1上から除去されたトナーを収容する回収容器52とを有する。
【0025】
また、画像形成装置100には、転写材13の搬送手段、トナー像を転写材13に定着させる定着手段としての定着装置17などが設けられている。
【0026】
画像形成時には、感光体1の表面が、帯電ローラ2によって所定の極性(本実施例では負極性)・電位に一様に帯電処理される。このとき、帯電ローラ2には帯電電圧印加手段としての帯電電源102から帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。一様に帯電した感光体1の表面は、露光装置3によって、画像情報に応じて走査露光される。これにより、感光体1上の露光部の電位の絶対値が低下して、感光体1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光体1上に形成された静電潜像は、現像装置4によって現像剤としての非磁性一次成分現像剤であるトナーによってトナー像として現像される。本実施例では、トナーの正規の帯電極性は、感光体1の帯電極性と同極性の負極性であり、現像装置4は、感光体1上の露光部にトナーを付着させる反転現像を行う。
【0027】
感光体1上に形成されたトナー像は、転写ローラ9によって記録媒体(メディア)である転写材13に転写される。トナー像が転写された転写材13は、定着装置17へと搬送され、ここで加熱および加圧されることによって、その上にトナー像が定着させられる。その後、転写材13は、印刷物として画像形成装置100の外部に排出される。
【0028】
また、転写材13に転写されずに感光体1上に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーナ5においてクリーニングブレード51により掻き取られ、回収容器52に収納される。クリーナ5によって清掃された感光体1は、再び帯電ローラ2によって帯電処理される。
【0029】
これらの一連の動作が連続して繰り返されることによって、画像形成が行われる。
【0030】
2.現像装置
上述のように、本実施例の画像形成装置100は、非磁性一成分接触現像方式を採用している。現像装置4は、現像容器6を有し、その中に現像剤としての非磁性一成分現像剤であるトナーTが収容されている。また、現像容器6には、現像剤担持体としての現像ローラ10、現像剤供給部材としての供給ローラ12、現像剤規制部材としての現像ブレード7、攪拌搬送部材14などが設けられている。現像容器6は、感光体1と対向する位置に開口部を有し、この開口部から一部が外部に露出するようにして、現像ローラ10が現像容器6に回転可能に支持されている。
【0031】
ここで、現像ローラ10の回転軸線は、感光体1の回転軸線と略平行である。現像ローラ10は、感光体1に接触し、図中矢印R2方向に回転駆動される。すなわち、現像ローラ10は、感光体1との接触部において、その表面が感光体1の表面と同方向に移動するように回転駆動される。また、供給ローラ12の回転軸線は、現像ローラ10の回転軸線と略平行である。供給ローラ12は、現像ローラ10に接触し、図中矢印R3方向に回転駆動される。すなわち、供給ローラ12は、現像ローラ10との接触部において、その表面が現像ローラ10の表面と逆方向に移動するように回転駆動される。
【0032】
現像ローラ10には、現像電圧印加手段としての現像電源110が接続されている。現像電源110から現像ローラ10に現像電圧(現像バイアス)が印加されることで、感光体1と現像ローラ10との間に電界が形成される。本実施例では、現像ローラ10には現像電圧として直流電圧が印加される。また、供給ローラ12には、供給電圧印加手段としての供給電源112が接続されている。供給電源112から供給ローラ12に供給電圧(供給バイアス)が印加されることで、現像ローラ10と供給ローラ12との間に電界が形成される。本実施例では、供給ローラ12には、供給電圧として直流電圧が印加される。
【0033】
現像容器6に収容されたトナーは、攪拌搬送部材14によって、供給ローラ12が配置された領域に向けて搬送される。供給ローラ12は、現像ローラ10との接触部においてトナーを摺擦する。これにより、トナーに摩擦帯電により電荷を付与して現像ローラ10に付着させる。このとき、供給ローラ12には、供給電源112から供給バイアスが印加され、現像ローラ10の電位と供給ローラ12の電位との電位差により、現像ローラ10と供給ローラ12との間に電界が形成される。この電位差の制御については、後述して詳しく説明する。現像ローラ10に供給されたトナーは、現像ローラ10の回転に伴って現像ローラ10と現像ブレード7との接触部を通過する。これにより、現像ローラ10上のトナーの層厚が規制されると共に、トナーは更に摩擦帯電により電荷が付与される。その後、現像ローラ10上のトナーは、現像ローラ10の回転に伴って感光体1と現像ローラ10との接触部(現像部)に搬送される。このとき、現像ローラ10には、現像電源110から現像バイアスが印加され、感光体1と現像ローラ10との間に、感光体1上に形成された静電潜像に応じた電界が形成され、現像ローラ10上のトナーが静電潜像に応じて感光体1に転移する。こうして、感光体1上の静電潜像はトナー像として現像される。その後、現像に消費されなかった現像ローラ10上のトナーは、現像ローラ10の回転に伴って現像容器6内へと搬送される。そして、このトナーの全部または一部が、現像ローラ10と供給ローラ12との接触部において、現像ローラ10上から剥ぎ取られて、現像容器6内に回収される。
【0034】
現像ローラ10について更に説明する。本実施例では、現像ローラ10は、弾性層を有するローラ(弾性ローラ)である。現像ローラ10の表面の弾性層の硬度は、現像性と耐久性の両立の観点から20〜60度(ASKER C)程度が好ましい。現像ローラ10の弾性層の材質としては、公知の材質、構造のものを使用可能である。特に、シリコーンゴム、ウレタンゴム、NBRの如きソリッドのゴム弾性体、或いはこれらの発泡弾性体を好ましく使用することができる。また、現像ローラ10として、表面に中心部と異なるコート層を有する公知の多層構造ローラを使用することもできる。
【0035】
現像ローラ10の表面形状は、その表面粗度を制御することが、高画質および高耐久性を両立するために好ましい。現像ローラ10の表面粗度として、例えばRa(μm)(JIS B 0601)を3.0以下となるように設定すると、安定したトナー搬送量が得られる。現像ローラ10の表面粗度Raが3.0を超えると、現像ローラ10上のトナー搬送量が増大し、現像ブレード7との摩擦によるトナーへの帯電付与が不十分になり、白地部への画像カブリが発生することがある。
【0036】
また、画像濃度の要求を満たし、感光体1と現像ローラ10との摩擦により十分にトナーを帯電させるためには、感光体1と現像ローラ10との回転周速比は110%以上であることが好ましい。一方、感光体1と現像ローラ10との回転周速比を150%より大きい値に設定すると、感光体1と現像ローラ10との接触部の機械的ストレスが増し、トナーの劣化が顕著になる可能性がある。以上より、感光体1と現像ローラ10との回転周速比は110%以上150%以下が好ましい。本実施例では、この回転周速比は120%に設定した。本実施例では、現像ローラ10の方が感光体1よりも速い回転周速で回転する。
【0037】
次に、現像ブレード7について更に説明する。本実施例では、現像ブレード7は、弾性体で形成され、現像ローラ10の表面に圧接するよう配置されている。現像ローラ10上のトナーは、現像ブレード7により規制され、現像ローラ10上にトナー層を形成する。
【0038】
次に、供給ローラ12について更に説明する。供給ローラ12は、現像ローラ10の回転方向において、現像ブレード7と現像ローラ10との接触部よりも上流側において現像ローラ10に接触するように、回転可能に現像容器6に支持されている。供給ローラ12としては、芯金上に弾性層として発泡骨格状スポンジ構造を有する弾性ローラ、或いは芯金上にレーヨン、ナイロンなどの繊維を植毛したファーブラシ構造を有するブラシローラを、好ましく使用することができる。これらは、現像ローラ10に対するトナーの供給および現像に消費されずに現像容器6に戻されたトナーの現像ローラ10からの剥ぎ取りを良好に行える点で好ましい。本実施例では、芯金上にポリウレタンフォームを設けた弾性ローラを用いた。この供給ローラ12の現像ローラ10に対する当接幅(供給ローラの表面の移動方向における幅)は、1mm以上8mm以下が好まし。本実施例では、この当接幅は3mmに設定した。
【0039】
3.画像濃度変動
本実施例の画像形成装置10において、後述する本発明に従う制御を行わない場合には、次のような現象が発生することがある。
【0040】
特に、図3に示すように、低印字率の画像を出力した後の高印字率の画像を出力する場合に、現像ローラ10の1周目と2周目とで、現像コントラスト電位に対する画像濃度の傾きの変動が顕著となることがある。ここで、現像コントラスト電位とは、一様に帯電処理した後に露光した感光体1上の露光部の電位と、現像バイアス(直流成分)の電位との電位差である。
【0041】
この現象は、現像ローラ10上のトナーの帯電量の差が原因となっている。現像コントラスト電位に対する画像濃度の傾きが大きいほどトナーの帯電量が低く、当該傾きが小さいほどトナーの帯電量が高い。
【0042】
この状況において、高印字率の画像(例えばベタ画像)を出力すると、図4に示すように、現像ローラ10の1周目に対応する部分の画像は濃度の薄い画像となる。これは、現像ローラ10の1周目と2周目とでの、現像ローラ10上のトナーの帯電量の差が影響している。ここで、図4は、感光体1上の画像を模式的に表しており、図中の矢印は感光体1の表面の移動方向(搬送方向)を示す。
【0043】
つまり、現像ローラ10の1周目は、その上のトナーの帯電量は、低印字率の画像の出力中のトナーの帯電量に対応する。低印字率の画像の出力中は、現像ローラ10上のトナーの大半は現像に消費されずに現像ローラ10上に現像残トナーとして残る。そして、その一部は供給ローラ12によって現像ローラ10から剥ぎ取られることなく現像ローラ10上に残留し、さらに現像ブレードなどにより繰り返し摩擦帯電電荷が付与されて、帯電量が高い状況になりやすい。
【0044】
一方、現像ローラ10の2周目は、その上のトナーの帯電量は、高印字率の画像の出力中のトナーの帯電量に対応する。高印字率の画像の出力中は、現像ローラ10上のトナーの大半は現像に消費され、現像ローラ10上に現像残トナーが少ない状況となる。そして、供給ローラ12から多くのトナーが新たに現像ローラ10へ供給される。
【0045】
現像ローラ10に供給された直後のトナーは、摩擦帯電による電荷の付与が不十分の状態になりやすく、低印字率の画像の出力中と比較して、トナーの帯電量が低い状況になりやすい。
【0046】
そして、この現象は、前述のような様々な原因による使用状況の変化によって傾向がその時々で変動する。すなわち、転写材13に対応した印刷スピードの変化、長期使用によるトナーの物性の変化、現像ローラ10の表面のトナーフィルミングによる電気的特性の変化、或いは使用環境の変化による供給ローラ12の電気的特性の変化などの原因である。したがって、このような様々な原因による使用状況の変化によって、トナーに対する帯電付与能力が変化してしまい、供給ローラ12による現像ローラ10へのトナーの供給能力が安定しなくなってしまうことがある。
【0047】
4.現像ローラの電位と供給ローラの電位との電位差の制御
次に、本実施例における、現像ローラ10の電位と供給ローラ12の電位との電位差(以下「供給電位差」ともいう。)の制御について説明する。この供給電位差は、現像ローラ10に現像電源から印加する現像バイアス(Vdr)と、供給ローラ12に供給電源112から印加する供給バイアス(Vrs)との電位差に対応する。
【0048】
ここで、供給ローラ12の電位を現像ローラ10の電位に対してトナーの正規の帯電極性とは逆極性方向に大きくしていく方向に供給電位差を変化させることを、トナーの正規の帯電極性とは逆極性方向(または単にトナーと逆極性方向)に大きくすると表現する。逆に、供給ローラ12の電位を現像ローラ10の電位に対してトナーの正規の帯電極性と同極性方向に大きくしていく方向に供給電位差を変化させることを、トナーの正規の帯電極性と同極性方向(または単にトナーと同極性方向)に大きくすると表現する。
【0049】
図3に示す現像コントラスト電位に対する画像濃度の傾きにおいて、現像ローラ10の2周目の傾きに対して現像ローラ10の1周目の傾きが小さいほど、現像ローラ10の1周目における現像ローラ10上のトナーの帯電量が高い状態である。
【0050】
この場合、供給バイアス(Vrs)と現像バイアス(Vdr)との電位差V(V=Vrs−Vdr)をトナーと逆極性方向に大きくすることで、現像ローラ10上のトナーの帯電量を下げることができる。すなわち、正規の帯電極性のより高い電荷を有するトナーは、逆極性方向により高い電位を有する供給ローラ12側に引き寄せられるので、現像ローラ10上のトナーの帯電量(トナーの単位質量当たりの電荷量)の絶対値を全体として下げることができる。これにより、現像ローラ10の1周目と2周目とにそれぞれ対応する部分の画像の濃度差を低減できる。
【0051】
そこで、本実施例では、現像ローラ10の1周目と2周目とにそれぞれ対応する部分の画像の濃度差(画像濃度の傾き)を測定して、その測定結果に基づいて供給電位差を制御する。概して、上記画像の濃度差が大きいことが測定された場合には、供給電位差をトナーと逆極性方向に大きくし、上記画像の濃度差が小さいことが測定された場合には、供給電位差をトナーと同極性方向に大きくする。
【0052】
より具体的には、本実施例の画像形成装置100は、予め設定された所定のタイミングで、次のような画像濃度差測定モードを実行する。
【0053】
まず、図5に示すように、画像濃度差測定用の試験現像剤像として、現像ローラ10の2周以上に相当する長さで感光体1の表面の移動方向(搬送方向)に連続するトナー像(以下「試験トナー像」という。)を形成する。なお、本実施例では、試験トナー像は、現像ローラ10の長手方向(回転軸線方向)の略中央に対応する位置に形成する。図5は、感光体1上の試験トナー像を模式的に表しており、図中の矢印は感光体1の表面の移動方向(搬送方向)を示す。すなわち、感光体1の表面の移動方向において、当該試験トナー像に対応する静電潜像の先端が現像部に到達してからその後端が現像部を通過するまでの間に、現像ローラ10は2周以上する。本実施例では、この試験トナー像は、次のような条件で形成する。感光体1を帯電ローラ2によって画像形成時と同じ帯電電位に一様に帯電処理する。その後、一様に帯電した感光体1を、露光装置3によってベタ画像(最高画像濃度レベルの画像)の形成時の条件で露光して、試験トナー像用の静電潜像を形成する。そして、この静電潜像を、現像装置4によってベタ画像の形成時の現像バイアス条件にて現像する。
【0054】
次に、濃度検出手段としての濃度センサ30(図1)によって、感光体1上の試験トナー像における現像ローラ10の1周目に対応する部分と2周目に対応する部分との2箇所の画像濃度を測る。すなわち、感光体1上の試験トナー像の部分であって、当該試験トナー像に対応する静電潜像の先端が現像部に到達してから、現像ローラ10の1周目、2周目にそれぞれ担持されたトナーで現像された2箇所の画像濃度を測る。
【0055】
濃度センサ30は、感光体1と現像装置4との対向部(現像部)よりも感光体1の回転方向の下流側において感光体1上のトナー像の濃度を測定できるように配置されている。本実施例では、濃度センサ30は、光源を備えた投光部と受光素子を備えた受光部とを有し、感光体1上のトナー像に光源からの光を照射し、その反射光を受光素子で受光して、反射光量の変化によってトナー像の濃度(トナー載り量)に係る情報を検出する。濃度センサ30の検出結果に係る信号は、制御手段としての画像形成装置本体に設けられたCPU60に入力される。
【0056】
試験トナー像の画像濃度の検出結果について、現像ローラ10の1周目に対応する部分の画像濃度の検出結果をA、2周目に対応する部分の画像濃度の検出結果をBとする。CPU60は、画像濃度Aと画像濃度Bとの濃度差X(X=B−A)を算出する。CPU60は、この濃度差Xに基づき、供給電源112が供給ローラ12に印加する供給バイアス(Vrs)、現像電源110が現像ローラ10に印加する現像バイアス(Vdr)を制御する。こうして、CPU60は、供給電位差V(V=Vrs−Vdr)を選択し、切り換えることができる。表1は、濃度差Xによる供給電位差Vの制御例を示す。表1の例では、濃度差Xが大きくなるにつれて供給電位差Vをトナーと逆極性方向に大きくするように、濃度差Xの複数の閾値(0、0.2、0.4)が設けられており、供給電位差Vを段階的に変化させるようになっている。供給電位差はより少ないまたは多い変更幅毎に段階的に変化させてもよいし、実質的に連続的に変化するように濃度差Xと供給電位差Vとを関係付けておいてもよい。本実施例では、表1に示すような濃度差Xと供給電位差Vとの関係を示す情報が予めCPU60に設定されている。CPU60は、この情報を用いることで、上述のようにして算出した濃度差Xから、供給電位差Vを制御する。
【0057】
【表1】

【0058】
このような制御動作(画像濃度差測定モード)を適宜実施することにより、前述のような様々な原因による使用状況の変化によらず、濃度が一様で安定した高品位の画像を形成することが可能となる。例えば、印刷スピードを変化させた場合に、出力画像を形成する前に、画像濃度差測定モードを実施することができる。また、現像装置4の使用量(駆動時間や画像形成枚数に相当)が所定の閾値以上となった場合(或いは所定の閾値以上となる毎)に、非画像形成時に画像濃度差測定モードを実行することができる。また、画像形成装置100に、環境検知手段として、画像形成装置100の内部および/または外部の温度および/または湿度の環境を検知する環境センサを設ける。そして、その検知結果が所定の閾値以上または以下となった場合に、非画像形成時に画像濃度差測定モードを実施することができる。非画像形成時とは、感光体1上に転写材13に転写して出力するための画像を形成している画像形成時以外のタイミングである。例えば、画像形成前の準備動作である前回転動作時、画像形成後の整理(準備)動作である後回転動作時、または転写材13に転写する画像と画像との間のタイミングに相当する紙間時である。
【0059】
なお、本実施例では、試験トナー像の形成時にベタ画像形成時の現像バイアスを用い、また供給電位差は表1に示す関係に従って制御した。しかし、これらは、ターゲットとする濃度の一様性によって決定されるものであり、画像形成装置、現像装置、トナーによって適宜変更できるものである。
【0060】
また、現像ローラ10の長手方向(回転軸線方向)における試験トナー像の条件(幅、配置)は、濃度センサ30の検出幅や配置によって決定されるものである。
【0061】
以上のように、本実施例によれば、画像形成装置100は、現像電圧印加手段110が現像剤担持体10に印加する電圧と供給電圧印加手段112が供給部材12に印加する電圧との電位差Vを制御する制御手段60を有する。そして、制御手段60は、像担持体上に形成された像担持体の表面の移動方向に連続する試験用現像剤像における、次の部分の濃度を濃度検出手段30によって検出した結果に応じて、電位差Vを制御する。すなわち、現像剤担持体10の1周目に担持された現像剤で現像された部分と2周目に担持された現像剤で現像された部分である。より詳細には、本実施例では、制御手段60は、次のようにして、電位差Vを制御する。すなわち、現像電圧印加手段110が現像剤担持体10に印加する電圧をVdr、供給電圧印加手段112が供給部材12に印加する電圧をVrsとする。また、現像剤担持体10の1周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度をA、現像剤担持体10の2周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度をBとする。このとき、制御手段60は、次式、X=B−Aで表される濃度差が大きくなるほど、次式、V=Vrs−Vdrで表される電位差を現像剤の正規の帯電極性とは逆極性方向に大きくする。
【0062】
これにより、現像ローラ10の電位と供給ローラ12の電位との電位差を適切に制御して、濃度が安定した高品位の画像を形成することができる。そして、適宜のタイミングで画像濃度測定モードを実施することにより、転写材に対応した印刷スピード変化、長期使用による物性変化、使用環境の変化などによる使用状況変化によらずに、濃度が一様で安定した高品位の画像を形成することが可能となる。
【0063】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成および動作は、実施例1のものと同じである。したがって、実施例1のものと同一またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0064】
実施例1では、試験トナー像における現像ローラ10の1周目に対応する部分と2周目に対応する部分の2箇所の画像濃度を測定して、その濃度差Xから供給電位差Vを決定した。
【0065】
しかし、特定の使用環境(例えば低温低湿環境や長期使用)において、トナー凝集度が非常に高くなってしまうことがある。このような場合、実施例1による制御例では、高印字率の画像出力状態が続いた現像ローラ10の3周目以降の複数周目において、供給ローラ12から現像ローラ10へのトナー供給が不十分となり、画像濃度が薄くなる可能性がある。特に、画像形成装置100が出力し得るサイズの転写材13の搬送方向後半(後端側)ほど、この画像濃度が薄くなる現象が起こりやすい。
【0066】
この場合、供給バイアス(Vrs)と現像バイアス(Vdr)との電位差V(V=Vrs−Vdr)をトナーと同極性方向に大きくすることで、供給ローラ12から現像ローラ10へのトナー供給量が増加する。すなわち、正規の帯電極性に帯電したトナーは、逆極性方向により高い電位を有する現像ローラ10側に引き寄せられるので、現像ローラ10へのトナー供給量を増加することができる。これにより、画像の濃度が薄くなる現象を低減することができる。しかし、供給電位差をトナーと同極性方向に大きくしすぎると、実施例1の制御において抑制した現像ローラ1周目に対応する部分と2周目に対応する部分との画像濃度差や、現像ローラ10上にトナーフィルミングを発生させる可能性がある。そのため、供給電位差のより正確な制御が求められる。
【0067】
そこで、本実施例では、図6に示すように、試験トナー像として、現像ローラ10の10周以上に相当する長さで感光体1の表面の移動方向(搬送方向)に連続するトナー像を形成する。なお、本実施例では、試験トナー像は、現像ローラ10の長手方向(回転軸線方向)の略中央に対応する位置に形成する。図6は、感光体1上の試験トナー像を模式的に表しており、図中の矢印は感光体1の表面の移動方向(搬送方向)を示す。すなわち、感光体1の表面の移動方向において、当該試験トナー像に対応する静電潜像の先端が現像部に到達してからその後端が現像部を通過するまでの間に、現像ローラ10は10周以上する。本実施例では、この試験トナー像は、実施例1の場合と同様の次の条件で形成する。感光体1を帯電ローラ2によって画像形成時と同じ帯電電位に一様に帯電処理する。その後、一様に帯電した感光体1を、露光装置3によってベタ画像(最高画像濃度レベルの画像)の形成時の条件で露光して、試験トナー像用の静電潜像を形成する。そして、この静電潜像を、現像装置4によってベタ画像の形成時の現像バイアス条件にて現像する。
【0068】
そして、濃度センサ30によって、感光体1上の試験トナー像における現像ローラ10の1周目に対応する部分と、2周目に対応する部分と、10周目に対応する部分との3箇所の画像濃度を測る。すなわち、感光体1上の試験トナー像の部分であって、当該試験トナー像に対応する静電潜像の先端が現像部に到達してから、現像ローラ10の1周目、2周目、10周目にそれぞれ担持されたトナーで現像された3箇所の画像濃度を測る。
【0069】
試験トナー像の画像濃度検出結果について、現像ローラ10の1周目に対応する部分の画像濃度の検出結果をA、2周目に対応する部分の画像濃度の検出結果をB、10周目に対応する部分の画像濃度の検出結果をCとする。CPU60は、画像濃度Aと画像濃度Bとの第1の濃度差X(X=B−A)と、画像濃度Bと画像濃度Cとの第2の濃度差Y(Y=B−C)と、を算出する。CPU60は、この第1、第2の濃度差X、Yに基づき、供給電源112が供給ローラ12に印加する供給バイアス(Vrs)、現像電源110が現像ローラ10に印加する現像バイアス(Vdr)を制御する。こうして、CPU60は、供給電位差V(V=Vrs−Vdr)を選択し、切り換えることができる。表2は、第1、第2の濃度差X、Yによる供給電位差Vの制御例を示す。表2の例では、第1の濃度差Xが大きくなるにつれて供給電位差Vをトナーと逆極性方向に大きくし、かつ、第2の濃度差Yが大きくなるにつれて、同一の第1の濃度差Xに対する供給電位差Vをトナーと同極性方向に大きくするように、第1の濃度差Xの複数の閾値(0、0.2、0.4)、第2の濃度差Yの複数の閾値(0、0.2)が設けられており、供給電位差Vを段階的に変化させるようになっている。供給電位差はより少ないまたは多い変更幅毎に段階的に変化させてもよいし、実質的に連続的に変化するように濃度差X、Yと供給電位差Vとを関係付けておいてもよい。本実施例では、表2に示すような濃度差X、Yと供給電位差Vとの関係を示す情報が予めCPU60に設定されている。CPU60は、この情報を用いることで、上述のようにして算出した濃度差X、Yから、供給電位差Vを制御する。
【0070】
【表2】

【0071】
ここで、本実施例では、試験トナー像における現像ローラ10の10周目に対応する部分の画像濃度Cを測定したが、この現像ローラ10の10周目とは、次のようにして決定したものである。本実施例では、画像形成装置100が出力し得る転写材13のうち搬送方向の長さが最大のものに画像を形成する際に、感光体1上の画像形成可能領域の移動方向の先端が現像部に到達してからその後端が現像部を通過するまでの間に現像ローラ10は10回転する。そのため、画像濃度の変動が最大となることが考えられる、試験トナー像における現像ローラ10の10周目に対応する部分の画像濃度を測定する。たとえば、理解を容易とするために、感光体1と現像ローラ10の回転周速が等速であり、転写材13の搬送方向の先端から後端までの全域に画像形成が可能である場合を考える。この場合、画像形成装置100が出力し得る転写材13のうち搬送方向の長さが最大のものの搬送方向の長さを、現像ローラ10の周長で割った値を、画像濃度Cを測定する部分に対応する現像ローラ10の周回数の値として採用することができる。ただし、この値は、画像形成装置によって適宜変更できるものである。
【0072】
また、転写材13の搬送方向後半(後端側)の画像濃度を予測できるものであれば、現像ローラ10の10周目に対応する部分まで連続する試験トナー像を形成して、その現像ローラ10の10周目に対応する部分の画像濃度を検出する必要はない。
【0073】
例えば、試験トナー像における現像ローラ10の1周目と2周目と3周目とにそれぞれ対応する部分の3箇所の画像濃度を測定する。現像ローラ10の1周目に対応する部分の画像濃度の検出結果をA、2周目に対応する部分の画像濃度の検出結果をB、3周目に対応する部分の画像濃度の検出結果をDとする。そして、第1の濃度差X(X=B−A)と第2の濃度差Y’(Y’=B−D)に基づき、供給電位差V(V=Vrs−Vdr)を選択し、切り換える。この場合、第2の濃度差Y’と例えば現像ローラ10の10周目に対応する部分の画像の濃度との関係を求めておき、当該濃度差を抑制できるように第2の濃度差Y’と供給電位差Vとを予め関係付けておけばよい。なお、上記3周目に限定されるものではなく、4周目や5周目であってもよい。
【0074】
なお、本実施例の画像濃度差測定モードは、例えば、実施例1の画像濃度測定モードを実施するのとは別に、環境の温湿度環境が特定の閾値以下となった場合や現像装置の使用量が特定の閾値以上となった場合にのみ実施することができる。もちろん、画像濃度測定モードとして常に本実施例のものを実施するようにしてもよい。
【0075】
以上のように、本実施例によれば、制御手段60は、実施例1において濃度を検出した試験用現像剤像における部分に加えて、更に、試験用現像剤像における次の部分の濃度を濃度検出手段30によって検出した結果に応じて、電位差Vを制御する。すなわち、現像剤担持体10の3周目以降のいずれかの周回であって、画像形成装置が画像を形成し得る転写材のうち搬送方向の長さが最大のものの1枚に画像を形成する際の最大の周回数以下のいずれかの周回に担持された現像剤で現像された部分である。より詳細には、本実施例では、制御手段60は、次のようにして、電位差Vを制御する。すなわち、現像電圧印加手段110が現像剤担持体10に印加する電圧をVdr、供給電圧印加手段112が供給部材12に印加する電圧をVrsとする。また、現像剤担持体10の1周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度をA、現像剤担持体10の2周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度をB、上記3周目以降のいずれかの周回に担持された現像剤で現像された部分の濃度をCとする。このとき、制御手段60は、次式、X=B−Aで表される第1の濃度差が大きくなるほど、次式、V=Vrs−Vdrで表される前記電位差を現像剤の正規の帯電極性とは逆極性方向に大きくする。それと共に、制御手段60は、次式、Y=B−Cで表される第2の濃度差が大きくなるほど、同一の前記第1の濃度差Xに対する前記電位差を現像剤の正規の帯電極性と同極性方向に大きくする。
【0076】
これにより、実施例1と同様の効果が得られると共に、トナー凝集度が非常に高くなり、現像ローラ10へのトナー供給が不十分になり易い状況においても、濃度が安定した高品位の画像を形成することができる。
【0077】
他の実施例
実施例1、2では、濃度センサ30は、感光体1上のトナー像を検出するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。斯界にて周知のように、例えばカラー画像形成装置として、図7(a)に示すような中間転写体を有する中間転写方式の画像形成装置、或いは図7(b)に示すような転写材担持体を備えた直接転写方式の画像形成装置がある。なお、図7(a)、(b)において、図1のものと同一またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付している。
【0078】
すなわち、中間転写方式の画像形成装置は、第1の像担持体としての感光体1に形成したトナー像を、一次転写手段9によって、第2の像担持体としての中間転写体151に転写(一次転写)させる。その後、このトナー像を、二次転写手段90によって、中間転写体151から転写材13に転写(二次転写)させる。中間転写体151としては無端ベルト状の中間転写ベルトが用いられることが多い。カラー画像形成装置では、例えば、中間転写体151の表面の移動方向に沿って複数の感光体1が配置される。そして、各感光体1から異なる色のトナー像を中間転写体151上に順次に転写することで多重トナー像を形成し、これを転写材13上に一括して転写することでカラー画像を形成することができる。
【0079】
また、直接転写方式の画像形成装置は、中間転写方式における中間転写体の代わりに、転写材を担持して搬送する転写材担持体152を有する。そして、像担持体としての感光体1上に形成したトナー像を、転写手段9によって、転写材担持体152に担持された転写材13に転写させる。転写材担持体152としては、中間転写ベルトと同様の、無端ベルと状の転写材担持ベルトが用いられることが多い。カラー画像形成装置では、例えば、転写材担持体152の表面の移動方向に沿って複数の感光体が配置され、各感光体1から異なる色のトナー像を転写材担持体152上の転写材13に順次に転写することでカラー画像を形成することができる。
【0080】
これらいずれの方式の画像形成装置においても、感光体1に形成した試験トナー像を、中間転写体151または転写材担持体152に転写し、中間転写体151上または転写材担持体152上で濃度センサ30により試験トナー像の濃度を検出することができる。これにより、例えば複数の感光体1を備える画像形成装置において、各感光体1に対して濃度センサ30を個別に設けることなく、共通の濃度センサ30によって中間転写体151または転写材担持体152上でトナー像の濃度を測定することができる。したがって、装置の構成の簡易化、コストの低減を図ることができる。
【0081】
また、所望により、試験トナー像の濃度を、転写材に転写した後に未定着の状態で、または定着装置によって定着した後に濃度センサによって検出してもよい。
【0082】
このように、制御手段60が、像担持体上に形成され、中間転写体、転写材担持体などの被転写体上に転写された被転写体の移動方向に連続する試験用現像剤像における各部分の濃度を濃度検出手段30によって検出した結果に応じて、電位差Vを制御してもよい。濃度検出手段0で濃度を検出する試験画像の各部分は、前述の各実施例で説明したものと同様の現像剤担持体10の各周回に対応する部分である。
【符号の説明】
【0083】
1 感光体
4 現像装置
10 現像ローラ(現像剤担持体)
12 供給ローラ(供給部材)
13 転写材
30 濃度センサ(濃度検出手段)
60 CPU(制御手段)
100 画像形成装置
151 中間転写体
152 転写材担持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持する像担持体と、表面に現像剤を担持して回転することで前記像担持体上の静電潜像に現像剤を付着させて現像剤像を形成する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に接触して前記現像剤担持体の表面に現像剤を供給する供給部材と、前記現像剤担持体に電圧を印加する現像電圧印加手段と、前記供給部材に電圧を印加する供給電圧印加手段と、前記像担持体上の現像剤像の濃度を検出する濃度検出手段と、を有する画像形成装置において、
前記現像電圧印加手段が前記現像剤担持体に印加する電圧と前記供給電圧印加手段が前記供給部材に印加する電圧との電位差を制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記像担持体上に形成された前記像担持体の表面の移動方向に連続する試験用現像剤像における、前記現像剤担持体の1周目に担持された現像剤で現像された部分と2周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度を前記濃度検出手段によって検出した結果に応じて、前記電位差を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
静電潜像を担持する像担持体と、表面に現像剤を担持して回転することで前記像担持体上の静電潜像に現像剤を付着させて現像剤像を形成する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に接触して前記現像剤担持体の表面に現像剤を供給する供給部材と、前記現像剤担持体に電圧を印加する現像電圧印加手段と、前記供給部材に電圧を印加する供給電圧印加手段と、前記像担持体に形成された現像剤像を移動する被転写体に転写させる転写手段と、前記被転写体上の現像剤像の濃度を検出する濃度検出手段と、を有する画像形成装置において、
前記現像電圧印加手段が前記現像剤担持体に印加する電圧と前記供給電圧印加手段が前記供給部材に印加する電圧との電位差を制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記像担持体上に形成され前記被転写体上に転写された前記被転写体の移動方向に連続する試験用現像剤像における、前記現像剤担持体の1周目に担持された現像剤で現像された部分と2周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度を前記濃度検出手段によって検出した結果に応じて、前記電位差を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記被転写体は、前記像担持体から現像剤像が一次転写された後にその現像剤像を転写材に二次転写するための中間転写体、または前記像担持体から現像剤像が転写される転写材を担持して搬送するための転写材担持体であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像電圧印加手段が前記現像剤担持体に印加する電圧をVdr、前記供給電圧印加手段が前記供給部材に印加する電圧をVrs、前記現像剤担持体の1周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度をA、前記現像剤担持体の2周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度をBとするとき、
前記制御手段は、次式、X=B−Aで表される濃度差が大きくなるほど、次式、V=Vrs−Vdrで表される前記電位差を現像剤の正規の帯電極性とは逆極性方向に大きくすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、更に、前記試験用現像剤像における前記現像剤担持体の3周目以降のいずれかの周回であって、当該画像形成装置が画像を形成し得る転写材のうち搬送方向の長さが最大のものの1枚に画像を形成する際の最大の周回数以下のいずれかの周回に担持された現像剤で現像された部分の濃度を、前記濃度検出手段によって検出した結果に応じて、前記電位差を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像電圧印加手段が前記現像剤担持体に印加する電圧をVdr、前記供給電圧印加手段が前記供給部材に印加する電圧をVrs、前記現像剤担持体の1周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度をA、前記現像剤担持体の2周目に担持された現像剤で現像された部分の濃度をB、前記3周目以降のいずれかの周回に担持された現像剤で現像された部分の濃度をCとするとき、
前記制御手段は、次式、X=B−Aで表される第1の濃度差が大きくなるほど、次式、V=Vrs−Vdrで表される前記電位差を現像剤の正規の帯電極性とは逆極性方向に大きくし、かつ、次式、Y=B−Cで表される第2の濃度差が大きくなるほど、同一の前記第1の濃度差Xに対する前記電位差を現像剤の正規の帯電極性と同極性方向に大きくすることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−145605(P2012−145605A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1460(P2011−1460)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】