説明

画像形成装置

【課題】熱均一化手段の温度にかかわらず、定着手段の非通紙部の過度な温度上昇を防止しつつ、熱均一化手段の接触による定着手段の通紙部の過度な温度低下に起因する定着不良を防ぎ、印刷不良を防止することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる場合には、定着ベルト64の通紙部の温度と熱均一化部材68の温度との温度差に応じて、熱均一化部材68の定着ベルト64への接触時の印刷状態を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着器を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式のプリンタ、複写機等の画像形成装置は、印刷情報に対応した像をなすトナーを印刷媒体としての用紙に転写させ、定着器において熱と圧力とによりトナーを用紙に定着させている。
【0003】
従来の定着器において、例えば幅の狭い用紙に印刷する場合には、定着手段としての例えば定着ベルトの非通紙部の温度が上昇する。すなわち、幅の狭い所定サイズの用紙を用いた連続印刷を行うと、定着ベルトの非通紙部は、用紙によって熱が奪われないので、通紙部よりも温度が上昇することになる。ここで、通紙部とは、定着ベルトの長手方向(幅方向)における幅の狭い所定サイズの用紙が通過する部分であり、非通紙部とは、定着ベルトの長手方向における前記所定サイズの用紙が通過しない部分である。
このため、熱均一化部材を所定の条件で定着ベルトに接触させることにより、非通紙部の熱を通紙部へ移動させて、非通紙部の過度の温度上昇を防止していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−77880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱均一化部材の熱容量は定着ベルトと比較して大きいため、定着ベルトから離間した状態の熱均一化部材が低温の場合には、熱均一化部材を定着ベルトに接触させると、定着ベルトにおける通紙部の熱を必要以上に奪ってしまうことがある。このため、定着ベルトの温度が低下してしまい、定着不良を起こす虞があり、その結果印刷不良を招く虞があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、熱均一化手段の温度にかかわらず、定着手段の非通紙部の過度な温度上昇を防止しつつ、熱均一化手段の接触による定着手段の通紙部の過度な温度低下に起因する定着不良を防ぎ、印刷不良を防止することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明の画像形成装置は、印刷媒体に熱を供給する定着手段と、前記定着手段に熱を供給する加熱手段と、前記定着手段の長手方向における所定サイズの印刷媒体が通過する部分である通紙部の温度を検出するための第1の温度検出手段と、前記定着手段に対して離間・接触可能に設置され、前記定着手段の長手方向の温度分布を均一化する熱均一化手段と、前記熱均一化手段の温度を検出するための第2の温度検出手段と、前記定着手段の前記通紙部を設定温度に加熱制御する加熱制御手段と、を有し、前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させる場合には、前記第1の温度検出手段により検出された前記通紙部の温度と前記第2の温度検出手段により検出された前記熱均一化手段の温度との温度差に応じて、前記熱均一化手段の前記定着手段への接触時の印刷状態を変更する。
【0008】
また、本発明の画像形成装置は、印刷媒体に熱を供給する定着手段と、前記定着手段に熱を供給する加熱手段と、前記定着手段の長手方向における所定サイズの印刷媒体が通過する部分である通紙部の温度を検出するための第1の温度検出手段と、前記定着手段に対して離間・接触可能に設置され、前記定着手段の長手方向の温度分布を均一化する熱均一化手段と、前記熱均一化手段の温度を検出するための第2の温度検出手段と、前記定着手段の前記通紙部を設定温度に加熱制御する加熱制御手段と、前記印刷媒体上に現像剤像を形成する現像剤像形成部におけるトナー回収処理の実施を検知するクリーニング検知手段と、を有し、前記熱均一化手段の前記定着手段への接触を前記トナー回収処理の実施中に行い、前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させる場合には、前記第1の温度検出手段により検出された前記通紙部の温度と前記第2の温度検出手段により検出された前記熱均一化手段の温度との温度差に応じて、前記トナー回収処理の実施中における前記設定温度を補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱均一化手段の温度にかかわらず、定着手段の非通紙部の過度な温度上昇を防止しつつ、熱均一化手段の接触による定着手段の通紙部の過度な温度低下に起因する定着不良を防ぎ、印刷不良を防止することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る定着器の概略構成を示す断面図である。
【図3】定着ヒータの概略構成を示す分解斜視図である。
【図4】熱均一化部材の定着ベルトに対する離間・接触を行う離間・接触機構を説明するための図であり、(a)は離間・接触機構を含む定着器の斜視図、(b)は熱均一化部材が定着ベルトに接触している状態を示す側面図、(c)は熱均一化部材が定着ベルトから離間している状態を示す側面図である。
【図5】第1実施形態に係る画像形成装置のブロック図である。
【図6】熱均一化部材を定着ベルトに接触させる直前の両者の温度差と、熱均一化部材を定着ベルトに接触させた後の定着ベルトの温度変化との関係を示すグラフである。
【図7】熱均一化部材の定着ベルトに対する離間・接触制御に関する処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す処理を行った場合の印刷状態及び各部温度の時間変化を例示する図であり、(a)は熱均一化部材を定着ベルトに接触させる直前の両者の温度差が小さい場合を示し、(b)は前記温度差が大きい場合を示す。
【図9】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置のブロック図である。
【図10】第2実施形態における熱均一化部材の定着ベルトに対する離間・接触制御に関する処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図10に示す処理を行った場合の印刷状態及び各部温度の時間変化を例示する図であり、(a)は熱均一化部材を定着ベルトに接触させる直前の両者の温度差が小さい場合を示し、(b)は前記温度差が大きい場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。ここでは、画像形成装置としてプリンタが使用される。ここでは、画像形成装置が、各種サイズ(例えばA4,A3,B5サイズ等)の印刷媒体としての用紙Pを用いた印刷を実行できるように構成されているものとして説明する。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置1は、用紙Pを搬送する用紙搬送部2、印刷情報に応じた記録光を露光する記録光露光部材としてのLEDヘッド3、トナー等の現像剤を用いて前記記録光に応じた現像剤像(以下、「トナー像」という)を用紙P上に形成する現像剤像形成部(以下、「トナー像形成部」という)5、用紙P上のトナー像を定着させる定着器6とを有している。ここで、用紙搬送順にしたがって、トナー像形成部5と、定着器6とが配置されている。また、LEDヘッド3は、トナー像形成部5に隣接して配置されている。
【0013】
印刷制御部10(図5参照)は、図示しない操作部や通信部を通じて印刷指示を受けると、画像形成のタイミングに合わせて、用紙搬送部2により用紙Pをトナー像形成部5に搬送させる。LEDヘッド3は、印刷情報に応じた記録光をトナー像形成部5の帯電した感光体(図示せず)へ照射して静電潜像を形成する。トナー像形成部5は、前記静電潜像が現像されて感光体に付着したトナーを用紙Pに転写することによって、LEDヘッド3により照射された記録光に応じたトナー像を用紙P上に形成する。そして、用紙Pは、用紙搬送部2によって定着器6に搬送されると、定着器6の熱と圧力によって用紙P上のトナー像が定着され、その後に排出される。
【0014】
トナー像形成部5では、トナーカートリッジ5aに収容されるトナーがトナー供給ローラ5bに向けて落下する。トナー供給ローラ5bは、補給されたトナーを現像ローラ5cに供給する。トナー供給ローラ5bから供給されたトナーは現像ローラ5c表面に付着し、現像ブレード5dにより薄層化される。一方、帯電ローラ5gは感光体ドラム5e表面を帯電する。帯電した感光体ドラム5e表面に対してLEDヘッド3が記録光を照射して静電潜像を形成する。現像ローラ5cは、感光体ドラム5e上の静電潜像にトナーを付着してトナー像を形成する。感光体ドラム5e上に形成されたトナー像は、転写ローラ5hにより用紙Pに転写される。転写後、用紙Pに転写されずに感光体ドラム5e上に残留する転写残トナーはクリーニングローラ5fに付着する。そのため感光体ドラム5e上の転写残トナーが除去される。
【0015】
図2は、第1実施形態に係る定着器の概略構成を示す断面図である。
図2に示すように、定着器6は、用紙Pに熱を供給して搬送するための定着手段としての無端状の定着ベルト64と、定着ベルト64に熱を供給して加熱する加熱手段としての定着ヒータ61と、定着ヒータ61を支持するヒータ支持部材62と、用紙Pを加圧する第1の加圧部材としての上加圧ローラ63と、用紙Pを加圧する第2の加圧部材としての下加圧ローラ65とを備えている。
【0016】
また、定着器6は、定着ベルト64の長手方向(幅方向)における幅の狭い所定サイズ(例えばA5サイズやB5サイズ)の用紙Pが通過する部分である通紙部(ここでは定着ベルト64の長手方向中央部)の表面温度を検出するための第1の温度検出手段としてのベルトサーミスタ67と、定着ベルト64に対して離間・接触可能に設置され、定着ベルト64の長手方向の温度分布を均一化する熱均一化手段としての熱均一化部材68と、熱均一化部材68の温度を検出するための第2の温度検出手段としての熱均一化部材サーミスタ69と、定着ベルト64の長手方向における前記所定サイズの用紙Pが通過しない部分である非通紙部(ここでは定着ベルト64の長手方向端部)の表面温度を検出するための第3の温度検出手段としての端部温度サーミスタ73とを備えている。端部温度サーミスタ73は、定着ベルト64の長手方向の両端部にそれぞれ設けられていてもよく、いずれか一方の端部に設けられていてもよい。なお、定着ベルト64の長手方向(幅方向)とは、用紙Pの搬送方向に直交する方向、つまり図2の紙面に垂直な方向でもある。
【0017】
定着ベルト64は、定着ヒータ61、ヒータ支持部材62、上加圧ローラ63、ベルトガイド66、及び熱均一化部材68に張架されている。なお、図2は、熱均一化部材68が、離間・接触機構680(図4参照)により定着ベルト64から離間されている状態を示している。
【0018】
本実施形態では、ベルトサーミスタ67は、定着ベルト64の通紙部としての長手方向中央部の外表面に接触しており、端部温度サーミスタ73は、定着ベルト64の非通紙部としての長手方向端部の外表面に接触している。但し、ベルトサーミスタ67、端部温度サーミスタ73は、定着ベルト64の内面に接触していてもよく、あるいは定着ベルト64の表面に対して非接触に設置されていてもよい。
【0019】
また、ベルトサーミスタ67及び端部温度サーミスタ73は、定着ベルト64の周方向において上加圧ローラ63の下流側で且つ熱均一化部材68の上流側に設置されている。一方、熱均一化部材サーミスタ69は、熱均一化部材68の長手方向中央部の表面に接触している。
【0020】
上加圧ローラ63は、鉄等の金属製の中実シャフトによって構成されている基体としての芯金63aと、この芯金63aを被覆する耐熱多孔質スポンジ製の弾性層63bとを有している。上加圧ローラ63の外径は例えば40mm程度であり、弾性層63bの厚さは例えば10mm程度である。上加圧ローラ63の芯金63aの端部には、図示しないギアが固定されており、このギアが用紙搬送部2により回転駆動されることによって、上加圧ローラ63が回転駆動され、これにより下加圧ローラ65が従動回転する。
【0021】
下加圧ローラ65は、鉄等の金属製の中実シャフトによって構成されている基体としての芯金65aと、この芯金65aを被覆する耐熱多孔質スポンジ製の弾性層65bとを有している。
【0022】
下加圧ローラ65は、図示しないばね等の弾性体により、上加圧ローラ63に向けて押し付けられている。ここで、下加圧ローラ65は、上加圧ローラ63に対向する位置において定着ベルト64を介して上加圧ローラ63の方に押圧されており、これにより、下加圧ローラ65が定着ベルト64を介して上加圧ローラ63に当接する部分であるニップ部が形成されている。
【0023】
定着ベルト64は、例えば耐熱性の高いポリイミド樹脂から形成された厚さ100μm程度の基体の表層上に、厚さ200μm程度の例えばシリコーンゴム製の離型層が形成されたものであり、熱容量が小さく、熱応答性が良好となっている。但し、定着ベルト64の基体は、ステンレス鋼、ニッケル等の金属製であってもよく、あるいはゴム製であってもよい。
【0024】
熱均一化部材68は、熱伝導性の良い材料で構成されており、ローラ形状を呈している。熱均一化部材68は、ここでは金属ローラが用いられる。但し、熱均一化部材68の形状はローラ形状に限られるものではなく、例えば板状の金属の熱均一化部材が使用されてもよい。また、熱均一化部材68は、定着ベルト64の周方向において定着ヒータ61の上流側に設置されており、熱均一化部材68の熱容量は定着ベルトと比較して大きい。
【0025】
ベルトサーミスタ67、端部温度サーミスタ73、熱均一化部材サーミスタ69は、温度に応じて自身の抵抗値が変化する素子である。印刷制御部10の温度検知部100(図5参照)は、各サーミスタ67,73,69の抵抗値を検知することにより、ベルトサーミスタ67、端部温度サーミスタ73、熱均一化部材サーミスタ69の温度をそれぞれ検知する。ここでは、各サーミスタ67,73,69には、温度の増加に従って抵抗値が減少する特性の素子が用いられている。
【0026】
図3は、定着ヒータの概略構成を示す分解斜視図である。
図3に示すように、定着ヒータ61は、基板611、電気絶縁層612、抵抗発熱体613、電極614、及び保護層615を備えており、面状発熱体を構成している。
【0027】
具体的には、定着ヒータ61は、例えばSUS430に代表されるステンレス鋼等の基板611上に、電気絶縁層612として薄くガラス膜を形成し、その上にニッケル−クロム合金あるいは銀−パラジウム合金の粉末をスクリーン印刷によりペースト状に塗布して抵抗発熱体613を形成すると共に、抵抗発熱体613の端部に銀等の化学的に安定で電気抵抗の小さい金属やタングステン等の高融点金属から構成される電極614を形成し、その上をガラス、あるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアル力ン)、FEP(パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー)等に代表されるフッ素系樹脂から構成される保護層615で覆って保護したものである。
【0028】
定着ヒータ61の電極614はヒータ電源16(図5参照)に接続されており、このヒータ電源16から電極614を介して電圧が印加されることで、抵抗発熱体613が発熱する。印加電圧は例えば100V、定着ヒータ61の出力は例えば1200Wとされている。
【0029】
図4は、熱均一化部材の定着ベルトに対する離間・接触を行う離間・接触機構を説明するための図であり、(a)は離間・接触機構を含む定着器の斜視図、(b)は熱均一化部材が定着ベルトに接触している状態を示す側面図、(c)は熱均一化部材が定着ベルトから離間している状態を示す側面図である。
【0030】
図4に示すように、離間・接触機構680は、熱均一化部材離接モータ71(図5参照)の回転駆動力を伝達する駆動力伝達機構としてのシャフト681と、シャフト681の端部に接続される偏芯カム682と、偏芯カム682により押されて回動軸684まわりに回動するレバー683とを備えており、シャフト681の回転量に応じて、偏芯カム682がレバー683を押す量が変化するようになっている。
【0031】
図4(a)に示すように、熱均一化部材68は、定着ヒータ61の加熱部の幅とほほ同じ幅を有しており、中央に配置された支持軸685が定着ベルト64の長手方向(幅方向)の端縁よりも外側において離間・接触機構680と接触している。熱均一化部材68は、図示しないばね等の加圧部材によって定着ベルト64に圧力を加えて押し当てられている(図4(b)参照)。また、レバー683の偏芯カム682と反対側の端部は、熱均一化部材68の支持軸685に当接されており、レバー683の先端が支持軸685を押し下げて、熱均一化部材68を定着ベルト64から離間させることができるように構成されている。なお、離間・接触機構680は、図4に示す機構に限定されるものではない。
【0032】
図5は、第1実施形態に係る画像形成装置のブロック図である。
図5に示すように、画像形成装置1は、印刷動作を制御する印刷制御部10、記録光露光部材としてのLEDヘッド3、記録光に応じたトナー像を形成するトナー像形成部5、トナー像形成部5と接続され当該トナー像形成部5にバイアス電圧を印加するトナー像形成部電源7、用紙P(図1等参照)を搬送するための用紙搬送モータ18、用紙搬送モータ18と接続され当該用紙搬送モータ18を駆動する駆動電力を供給するモータ電源17、定着ベルト64(図2参照)を加熱する定着ヒータ61を内蔵する定着器6、及び定着ヒータ61と接続され当該定着ヒータ61に電力を供給するヒータ電源16を有している。
【0033】
また、画像形成装置1は、定着ベルト64(図2参照)の長手方向中央部の温度(以下、「中央部温度」ともいう)を検出するためのベルトサーミスタ67、定着ベルト64(図2参照)の長手方向端部の温度(以下、「端部温度」ともいう)を検出するための端部温度サーミスタ73、熱均一化部材68(図2参照)を定着ベルト64(図2参照)に対して離間・接触させるための熱均一化部材離接モータ71、熱均一化部材離接モータ71と接続され当該均一化部材離接モータ71を駆動する駆動電力を供給するモータ電源70、及び熱均一化部材68(図2参照)の温度を検出するための熱均一化部材サーミスタ69を有している。
【0034】
印刷制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段とメモリ等の記憶手段とを備えており、CPUが必要なプログラムをメモリ上に読み出して実行することで制御を行う。プログラムの実行に必要なデータや演算結果は必要に応じてメモリ等の記憶手段に保存される。
【0035】
印刷制御部10は、LEDヘッド3、トナー像形成部電源7、用紙搬送用のモータ電源17、熱均一化部材離接用のモータ電源70、ヒータ電源16、ベルトサーミスタ67、端部温度サーミスタ73、及び熱均一化部材サーミスタ69と接続されている。
【0036】
印刷制御部10は、ベルトサーミスタ67の検出結果をもとにして定着ベルト64(図2参照)を設定温度Tsp(図8参照)に加熱制御するためにヒータ電源16を制御する加熱制御手段としての加熱制御部101と、定着ベルト64(図2参照)の中央部温度及び端部温度並びに熱均一化部材68(図2参照)の温度をサーミスタ67,73,69を使用して検知する温度検知部100と、熱均一化部材68(図2参照)の定着ベルト64(図2参照)に対する離間・接触を制御する離接制御部102とを内蔵する。
【0037】
次に、図1、図2、図5を参照して、定着器6の動作について説明する。
印刷制御部10は、図示しない操作部や通信部を通じて印刷指示を受けると、用紙搬送部2により図示しないギアを介して上加圧ローラ63を図2中の矢印方向に回転させる。
【0038】
さらに、印刷制御部10は、ベルトサーミスタ67を用いて検知された定着ベルト64の中央部温度が、あらかじめ決められた印刷可能温度範囲内であるか否かを判断し、印刷可能温度範囲内であれば用紙Pの搬送を開始する。ここで、印刷可能温度範囲とは、用紙Pヘトナーを定着させることができる温度範囲であり、下限温度(第1の閾値)としてのTlowと、上限温度としてのT2とを持つ。Tlowは例えば175℃であり、T2は例えば205℃である。
【0039】
加熱制御部101は、ヒータ電源16から定着ヒータ61への電力供給をオン/オフすることにより、定着ベルト64の中央部温度が設定温度Tsp(図8参照)になるように制御する。例えば、ベルトサーミスタ67を用いて検知された定着ベルト64の中央部温度が設定温度Tspよりも所定温度以上高い場合、加熱制御部101は、ヒータ電源16から定着ヒータ61への電力供給を停止して、定着ベルト64の温度を低下させる(クールダウン)。一方、定着ベルト64の長手方向中央部の温度が設定温度Tspよりも所定温度以上低い場合、加熱制御部101は、ヒータ電源16から定着ヒータ61への電力供給を行うことで、定着ベルト64の温度を上昇させる(ウォームアップ)。
【0040】
次に、図4を参照して、離間・接触機構680の動作について説明する。
熱均一化部材68は、図示しないばね等の加圧部材によって定着ベルト64に圧力を加えて押し当てられているため、レバー683が熱均一化部材68に圧力を与えない状態では、熱均一化部材68は、定着ベルト64と接触した状態となる(図4(b)参照)。
【0041】
この状態で、熱均一化部材離接モータ71(図5参照)が駆動させられると、その駆動力がシャフト681を通して偏芯カム682に伝達されて、偏芯カム682がレバー683の一端を押す。すると、レバー683がB方向に回動され、レバー683の他端が熱均一化部材68の支持軸685に対して定着ベルト64と離れる方向に圧力を加えることになり、熱均一化部材68と定着ベルト64とが離間する(図4(c)参照)。このようにして、熱均一化部材離接モータ71(図5参照)を制御することにより、熱均一化部材68の定着ベルト64に対する離間・接触が制御される。
【0042】
次に、熱均一化部材68(図2参照)と定着ベルト64(図2参照)との間の熱の授受について説明する。
図6は、熱均一化部材を定着ベルトに接触させる直前(以下、「接触前」ともいう)の両者の温度差ΔT(定着ベルトの温度から熱均一化部材の温度を引いた温度)と、熱均一化部材を定着ベルトに接触させた後(以下、「接触後」ともいう)の定着ベルトの通紙部(長手方向中央部)の温度変化(最大温度変化)との関係を示すグラフである。図6のグラフは実験により求められる。
【0043】
図6に示すように、前記温度差ΔTと定着ベルト64(図2参照)の通紙部の温度変化とは相関がある。すなわち、接触前の温度差ΔTが大きいほど、接触後の温度低下量(定着ベルト64の通紙部の温度変化の絶対値)が大きくなっている。これは、温度差ΔTが大きいほど、移動する熱量が多いために起こる現象である。つまり、温度差ΔTが大きい場合、温度の高い定着ベルト64から温度の低い熱均一化部材68へ移動する熱量が多くなるために、定着ベルト64の通紙部の温度低下量が大きくなる。
【0044】
次に、図7を参照して、熱均一化部材68の定着ベルト64に対する離間・接触の制御について説明する。図7は、熱均一化部材の定着ベルトに対する離間・接触制御に関する処理の手順を示すフローチャートである。図7の処理において、例えば幅の狭い所定サイズ(例えばA5サイズやB5サイズ)の用紙Pを用いて印刷中の場合について説明する。なお、初期において、熱均一化部材68は定着ベルト64から離間している。
【0045】
図7に示すように、ステップS101では、温度検知部100が印刷中の定着ベルト64の端部温度を端部温度サーミスタ73を用いて検知し、印刷制御部10は、検知された定着ベルト64の端部温度とベルト上限温度Thigh(第2の閾値)とを比較する。ここで、ベルト上限温度Thighは、定着ベルト64等の部材が損傷等の不具合を起こさない上限温度であり、例えば230℃である。
【0046】
印刷制御部10は、定着ベルト64の端部温度がベルト上限温度Thigh以上になったと判定すると(S101;Yes)、ステップS102に処理を移行させる。一方、印刷制御部10は、定着ベルト64の端部温度がベルト上限温度Thigh未満であると判定した場合(S101;No)、印刷制御部10は実行中の印刷を継続する。
【0047】
ベルト上限温度Thighは、実際に不具合が起こる温度よりも少し低め(不具合が起こらない方)に設定されている。したがって、ステップS101において、印刷制御部10は、定着ベルト64の端部温度>ベルト上限温度Thighであるか否かを判定してもよい(後記する図10のS202でも同様)。
【0048】
ステップS102では、温度検知部100が定着ベルト64の中央部温度をベルトサーミスタ67を用いて検知し、印刷制御部10は、検知された定着ベルト64の中央部温度をTupとして取得する。また、温度検知部100が熱均一化部材68の温度を熱均一化部材サーミスタ69を用いて検知し、印刷制御部10は、検知された熱均一化部材68の温度をTlevとして取得する。また、印刷制御部10は、定着ベルト64の目標温度としてあらかじめ設定され図示しない記憶手段に保存されている設定温度をTspとして取得する。
【0049】
ステップS103では、印刷制御部10は、熱均一化部材68が接触していない状態の定着ベルト64の中央部温度Tupと熱均一化部材68の温度Tlevとの温度差を算出して、ΔTとする(ΔT=Tup−Tlev)。
【0050】
ステップS104では、印刷制御部10は、仮に熱均一化部材68が定着ベルト64に接触した場合の接触後の定着ベルト64の予測温度を次式を用いて算出して、Tupconとする。
Tupcon=Tup+A×ΔT
ここで、係数Aは、実験から求められる係数であり、例えば図6に示す関係から求められる。ここでは、例えばA=−0.33である。
【0051】
ステップS105では、印刷制御部10は、前記式を用いて算出した接触後の定着ベルト64の予測温度Tupconと、用紙Pヘトナーを定着させることができる下限温度Tlowとを比較する。
【0052】
印刷制御部10は、ステップS105においてTupcon>Tlowであると判定した場合(S105;No)、仮に熱均一化部材68が定着ベルト64に接触した場合でも接触後の定着ベルト64の中央部温度は下限温度Tlowよりも高くなって定着不良が発生する虞はないと予測し、ステップS111に処理を移行させる。
【0053】
ステップS111では、離接制御部102が、モータ電源70を制御して熱均一化部材離接モータ71に通電することにより、離間・接触機構680の作用によって熱均一化部材68を定着ベルト64に向けて移動させて接触させる。この間、印刷制御部10は、実行中の印刷を継続する。
【0054】
一方、印刷制御部10は、ステップS105においてTupcon≦Tlowであると判定した場合(S105;Yes)、仮に熱均一化部材68が定着ベルト64に接触した場合には接触後の定着ベルト64の中央部温度が下限温度Tlow以下になって定着不良が発生する虞があると予測し、ステップS106に処理を移行させる。
【0055】
ステップS106では、印刷制御部10が実行中の印刷を一時停止させてから、離接制御部102が、モータ電源70を制御して熱均一化部材離接モータ71に通電することにより、離接制御部102に離間・接触機構680の作用によって熱均一化部材68を定着ベルト64に向けて移動させて接触させる制御を行わせる。
【0056】
具体的には、印刷制御部10は、現在印刷中の用紙Pについての印刷動作を継続して完了させ、印刷された用紙Pを画像形成装置1(図1参照)から排出させると共に、新たな給紙を停止させることで、印刷を一時停止させる。印刷中の用紙Pの画像形成装置1(図1参照)からの排出後に、印刷制御部10は、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる。
【0057】
加熱制御部101は、前記処理の期間中もベルトサーミスタ67の温度が設定温度Tsp(図8参照)となるように制御を続ける。
【0058】
定着ベルト64に熱均一化部材68が接触すると、定着ベルト64の温度が低下し始め、所定時間が経過した後に最も低下する。これは、熱の移動が定着ベルト64と熱均一化部材68との温度差に比例することによる現象であり、接触直後は前記温度差が大きいために熱の移動は速いが、熱が移動するにしたがって徐々に前記温度差が小さくなっていくために熱の移動が少なくなっていき、定着ベルト64の温度の低下が収まる。この時点の状態が定着ベルト64の温度が最も低下する状態である。この状態となるまでに所定時間を要して温度が変化していくため、所定時間後に最も温度が低下する。
【0059】
したがって、印刷制御部10は、前記所定時間が経過するまで待機する(S107;No)。前記所定時間が経過した後(S107;Yes)、印刷制御部10は、ステップS108に処理を移行させる。この間、熱均一化部材68は定着ベルト64に接触させられたままである。
【0060】
ステップS108では、温度検知部100が定着ベルト64の中央部温度をベルトサーミスタ67を用いて検知し、印刷制御部10は、検知された温度を現在の定着ベルト64の中央部温度Tupとして取得する。
【0061】
ステップS109では、印刷制御部10は、現在の定着ベルト64の中央部温度Tupが下限温度Tlowよりも高いか否かを判定する。
【0062】
印刷制御部10は、ステップS109においてTup≦Tlowであると判定した場合(S109;No)、加熱制御部101にウォームアップを実行させて、ステップS108に処理を戻す。
【0063】
一方、印刷制御部10は、ステップS109においてTup>Tlowになったと判定した場合(S109;Yes)、ステップS110に処理を移行させて、印刷を再開する。
【0064】
なお、離接制御部102は、ステップS106,S111において熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させるように制御した後、実行中の印刷の終了時、又は幅の広い所定サイズ(例えばA4サイズ)の用紙の印刷時に、熱均一化部材68を定着ベルト64から離間させるように制御する。
【0065】
下限温度Tlowが、実際に定着不良が起こる温度よりも少し高め(定着不良が起こらない方)に設定されている場合には、ステップS105において、印刷制御部10は、定着ベルトの予測温度Tupcon<下限温度Tlowであるか否かを判定してもよい(後記する図10のS206でも同様)。この場合、ステップS109では、印刷制御部10は、現在の定着ベルト64の中央部温度Tupが下限温度Tlow以上か否かを判定する。
【0066】
図8は、図7に示す処理を行った場合の印刷状態及び各部温度の時間変化を例示する図であり、(a)は熱均一化部材を定着ベルトに接触させる直前の両者の温度差ΔT(ΔT=Tup−Tlev)が小さい場合(接触前の熱均一化部材68の温度が高温の場合)を示し、(b)は前記温度差ΔTが大きい場合(接触前の熱均一化部材68の温度が低温の場合)を示す。
【0067】
なお、図8において、ΔTdr1は、接触前の定着ベルト64の中央部温度Tupと下限温度Tlowとの差(ΔTdr1=Tup−Tlow)を示し、ΔTdr2は、接触後の定着ベルト64の温度低下量を示す。
【0068】
図8(a)では、例えば、設定温度Tsp=185℃、下限温度Tlow=175℃、熱均一化部材68の定着ベルト64に対する接触直前の温度Tlev=170℃、同時点での定着ベルト64の中央部温度Tup=185℃である。
【0069】
この条件における接触後の定着ベルト64の予測温度Tupconは、
Tupcon=185+(−0.33)×(185−170)=185−5=180℃
となる。Tupcon>Tlowであるため、印刷制御部10は、接触後の定着ベルト64の中央部温度は下限温度Tlowよりも高くなって定着不良は発生しないと予測し、印刷を停止させずに離接制御部102に熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる制御を行わせて、印刷を継続させる(図8(a)に示す「印刷状態」参照)。
【0070】
図8(b)では、例えば、熱均一化部材68の定着ベルト64に対する接触直前の温度Tlev=140℃であり、その他の温度は図8(a)の場合と同じとする。
【0071】
この条件における接触後の定着ベルト64の予測温度Tupconは、
Tupcon=185+(−0.33)×(185−140)=185−15=170℃
となる。Tupcon≦Tlowであるため、印刷制御部10は、接触後の定着ベルト64の中央部温度は下限温度Tlow以下になって定着不良が発生する虞があると予測し、印刷を一時停止させてから、離接制御部102に熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる制御を行わせ、定着ベルト64の中央部温度Tupが下限温度Tlowよりも大きくなってから印刷を再開させる(図8(b)に示す「印刷状態」参照)。
【0072】
このように第1実施形態の画像形成装置1は、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる場合には、定着ベルト64の通紙部の温度と熱均一化部材68の温度との温度差に応じて、熱均一化部材68の定着ベルト64への接触時の印刷状態を変更する。より具体的には、画像形成装置1は、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる場合に、前記温度差に基づいて定着ベルト64の通紙部の温度が下限温度Tlow以下の低温になると予測されるときには印刷を一時停止して熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させ、前記温度差に基づいて定着ベルト64の通紙部の温度が前記低温にならないと予測されるときには印刷を継続して熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる。
【0073】
すなわち、第1実施形態の画像形成装置1は、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる場合には、定着ベルト64の通紙部の温度と熱均一化部材68の温度との温度差に応じて、定着熱が不足した状態での印刷を回避し、必要な定着熱を付与し得る状態での印刷を確保する制御を行う。
【0074】
したがって、第1実施形態の画像形成装置1によれば、熱均一化部材68の温度にかかわらず、定着ベルト64の非通紙部の過度な温度上昇を防止しつつ、熱均一化部材68の接触による定着ベルト64の通紙部の過度な温度低下に起因する定着不良を防ぎ、印刷不良を防止することが可能となる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と共通する部分については、第1実施形態に示した構成及び説明を援用するものとする。第1実施形態と相違する部分について主に説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については同一の符号を付してある。
【0076】
図9は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置のブロック図である。
第2実施形態の画像形成装置1aは、印刷制御部10aがクリーニング検知手段としてのクリーニング検知部200を備える点で、第1実施形態と相違している。
【0077】
クリーニング検知部200は、非印刷動作としてのトナー回収処理の実施を検知する。ここで、トナー回収処理とは、トナー像形成部5における余分なトナーを回収する処理を指し、連続的に印刷している中で所定枚数の印刷を完了するたび(例えば50枚印刷毎)に行われる処理である(例えば特開2000−89637号公報、米国特許第6081679号明細書等参照)。より具体的には、トナー回収処理は、クリーニングローラ5fに印加される電圧の極性が、感光体ドラム5e上の転写残トナーをクリーニングローラ5fに付着させて除去するときとは逆の極性とされることで、クリーニングローラ5fに付着したトナーが感光体ドラム5eに移動し、感光体ドラム5e上に移動したトナーが現像ローラ5cによって回収される処理である。
【0078】
画像形成装置1aは、トナー回収処理中にはトナー像を用紙P上に形成する画像形成処理を行うことができないため、印刷を一時停止させている。第2実施形態の画像形成装置1aは、前記トナー回収処理の間に熱均一化部材68の定着ベルト64への接触を行うものであり、熱均一化部材68の定着ベルト64への接触のために印刷を停止させることがないので生産性の低下を防止することができる。
【0079】
次に、図10を参照して、第2実施形態における熱均一化部材68の定着ベルト64に対する離間・接触の制御について説明する。図10は、第2実施形態における熱均一化部材の定着ベルトに対する離間・接触制御に関する処理の手順を示すフローチャートである。図10の処理において、例えば幅の狭い所定サイズ(例えばA5サイズやB5サイズ)の用紙Pを用いて印刷中の場合について説明する。なお、初期において、熱均一化部材68は定着ベルト64から離間している。
【0080】
図10に示すように、印刷制御部10aは、クリーニング検知部200がトナー像形成部5におけるトナー回収処理の実施を検知するまで待機する(S201;No)。クリーニング検知部200がトナー回収処理の実施を検知すると(S201;Yes)、印刷制御部10aは、ステップS202に処理を移行させる。なお、印刷制御部10aは、トナー回収処理中には印刷を一時停止させている。
【0081】
ステップS202〜S206は、第1実施形態の図7のステップS101〜S105とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。但し、印刷制御部10aは、定着ベルト64の端部温度がベルト上限温度Thigh未満であると判定した場合には(S202;No)、ステップS210に処理を移行させる。
【0082】
印刷制御部10aは、ステップS206においてTupcon>Tlowであると判定した場合(S206;No)、仮に熱均一化部材68が定着ベルト64に接触した場合でも接触後の定着ベルト64の中央部温度は下限温度Tlowよりも高くなって定着不良が発生する虞はないと予測し、ステップS209に処理を移行させる。
【0083】
一方、印刷制御部10aは、ステップS206においてTupcon≦Tlowであると判定した場合(S206;Yes)、仮に熱均一化部材68が定着ベルト64に接触した場合には接触後の定着ベルト64の中央部温度が下限温度Tlow以下になって定着不良が発生する虞があると予測し、ステップS207に処理を移行させる。
【0084】
ステップS207では、印刷制御部10aは、トナー回収処理の実施中における定着ベルト64の目標温度としての設定温度を、通常の設定温度Tspよりも高い設定温度Tsp´に補正して設定する。
【0085】
ステップS207において、印刷制御部10aは、接触前の定着ベルト64の中央部温度Tupと下限温度Tlowとの差を算出してΔTdr1とし(ΔTdr1=Tup−Tlow)、通常の設定温度Tspよりも高い補正後の設定温度Tsp´を次式を用いて算出する。
Tsp´=(ΔTdr2−ΔTdr1)+Tsp
ここでのΔTdr2は、接触後の定着ベルト64の温度低下量の予測値(ΔTdr2=|A×ΔT|)である。
【0086】
つまり、印刷制御部10aは、通常よりも差分H(H=ΔTdr2−ΔTdr1)だけ設定温度を高くする。この設定温度を通常よりも高くするための差分Hは、接触後の定着ベルト64の温度低下量の予測値(ΔTdr2)から、接触前の定着ベルト64の中央部温度Tupと下限温度Tlowとの差(ΔTdr1)を引いたものであり、接触後の定着ベルト64が下限温度Tlowよりも何度下回るかの予測値を示している。したがって、差分Hは、「H=Tlow−Tupcon」に相当する。
【0087】
ステップS208では、印刷制御部10aは、定着ベルト64の温度が補正後の設定温度Tsp´に到達するのに十分な所定時間が経過するまで待機する(S208;No)。この所定時間が経過した後(S208;Yes)、印刷制御部10aは、ステップS209に処理を移行させる。
【0088】
ステップS209では、離接制御部102が、モータ電源70を制御して熱均一化部材離接モータ71に通電することにより、離間・接触機構680の作用によって熱均一化部材68を定着ベルト64に向けて移動させて接触させる。
【0089】
続いて、印刷制御部10aは、クリーニング検知部200がトナー回収処理の終了を検知するまで待機する(S210;No)。クリーニング検知部200がトナー回収処理の終了を検知すると(S210;Yes)、印刷制御部10aは、ステップS211に処理を移行させる。
【0090】
そして、印刷制御部10aは、定着ベルト64の目標温度としての設定温度を、通常の設定温度Tspに戻すように設定して(S211)、印刷を再開させる(S212)。
【0091】
前記のような処理を行うことによって、印刷制御部10aは、接触後に定着ベルト64の温度が下限温度Tlowよりも下回る量を予測し、この量だけ定着ベルト64の設定温度を高くしてから、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる制御を行わせることができる。これにより、定着ベルト64への接触前の熱均一化部材68の温度が低温であったとしても、トナー回収処理が終了して印刷を再開するときには、定着ベルト64の中央部温度Tupを下限温度Tlowよりも高く保つことができる。
【0092】
なお、離接制御部102は、ステップS209において熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させるように制御した後、実行中の印刷の終了時、又は幅の広い所定サイズ(例えばA4サイズ)の用紙の印刷時に、熱均一化部材68を定着ベルト64から離間させるように制御する。
【0093】
図11は、図10に示す処理を行った場合の印刷状態及び各部温度の時間変化を例示する図であり、(a)は熱均一化部材を定着ベルトに接触させる直前の両者の温度差ΔT(ΔT=Tup−Tlev)が小さい場合(接触前の熱均一化部材68の温度が高温の場合)を示し、(b)は前記温度差ΔTが大きい場合(接触前の熱均一化部材68の温度が低温の場合)を示す。
【0094】
なお、図11において、ΔTdr1は、接触前の定着ベルト64の中央部温度Tupと下限温度Tlowとの差(ΔTdr1=Tup−Tlow)を示し、ΔTdr2は、接触後の定着ベルト64の温度低下量を示す。
【0095】
図11(a)では、例えば、設定温度Tsp=185℃、下限温度Tlow=175℃、熱均一化部材68の定着ベルト64に対する接触直前の温度Tlev=170℃、同時点での定着ベルト64の中央部温度Tup=185℃である。
【0096】
この条件における接触後の定着ベルト64の予測温度Tupconは、
Tupcon=185+(−0.33)×(185−170)=185−5=180℃
となる。Tupcon>Tlowであるため、印刷制御部10aは、接触後の定着ベルト64の中央部温度は下限温度Tlowよりも高くなって定着不良は発生しないと予測し、トナー回収処理の実施中における定着ベルト64の目標温度としての設定温度を、通常の設定温度Tspから変更せずに維持して、離接制御部102に熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる制御を行わせる(図11(a)に示す「印刷状態」参照)。
【0097】
図11(b)では、例えば、熱均一化部材68の定着ベルト64に対する接触直前の温度Tlev=140℃であり、その他の温度は図11(a)の場合と同じとする。
【0098】
この条件における接触後の定着ベルト64の予測温度Tupconは、
Tupcon=185+(−0.33)×(185−140)=185−15=170℃
となる。Tupcon≦Tlowであるため、印刷制御部10aは、接触後の定着ベルト64の中央部温度は下限温度Tlow以下になって定着不良が発生する虞があると予測し、トナー回収処理の実施中における定着ベルト64の目標温度としての設定温度を、通常の設定温度Tspよりも高い設定温度Tsp´に補正して設定する。設定温度を通常よりも高くするための量である差分Hは、H=Tlow−Tupcon=175−170=5℃であり、補正後の設定温度Tsp´は、Tsp´=Tsp+H=185+5=190℃とされる。これにより、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させ、トナー回収処理が終了した後に印刷を再開しても(図11(b)に示す「印刷状態」参照)、定着ベルト64の中央部温度Tupを下限温度Tlowよりも高く保つことができる。
【0099】
このように第2実施形態の画像形成装置1aは、熱均一化部材68の定着ベルト64への接触をトナー回収処理の実施中に行い、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる場合には、定着ベルト64の通紙部の温度と熱均一化部材68の温度との温度差に応じて、トナー回収処理の実施中における定着ベルト64の設定温度を補正する。より具体的には、画像形成装置1aは、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる場合に、前記温度差に基づいて定着ベルト64の通紙部の温度が下限温度Tlow以下の低温になると予測されるときにはトナー回収処理の実施中における定着ベルト64の設定温度を高くしてから熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させ、前記通紙部の温度が前記低温にならないと予測されるときには定着ベルト64の設定温度を維持して熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる。
【0100】
すなわち、第2実施形態の画像形成装置1aは、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる場合には、定着ベルト64の通紙部の温度と熱均一化部材68の温度との温度差に応じて、定着熱が不足した状態での印刷を回避し、必要な定着熱を付与し得る状態での印刷を確保する制御を行う点で、前記第1実施形態と同一の又は対応する特別な技術的特徴を有するものである。
【0101】
したがって、第2実施形態の画像形成装置1aによれば、第1実施形態と同様に、熱均一化部材68の温度にかかわらず、定着ベルト64の非通紙部の過度な温度上昇を防止しつつ、熱均一化部材68の接触による定着ベルト64の通紙部の過度な温度低下に起因する定着不良を防ぎ、印刷不良を防止することが可能となる。
【0102】
しかも、第2実施形態の画像形成装置1aによれば、トナー回収処理中に熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させるようにしたため、熱均一化部材68の定着ベルト64への接触のために印刷を停止させることがなくなり、生産性の低下を防止することができるという更なる効果を奏する。
【0103】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0104】
例えば、前記実施形態は、定着ベルト64の端部温度がベルト上限温度Thigh以上の場合に、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させるように構成されているが(S101、S202)、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば定着ベルト64の中央部温度Tupと端部温度との差が所定の閾値以上の場合に、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させるように構成されてもよい。
【0105】
また、前記第1実施形態において、画像形成装置1は、熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させる場合に、定着ベルト64の通紙部の温度と熱均一化部材68の温度との温度差に基づいて定着ベルト64の通紙部の温度が下限温度Tlow以下の低温になると予測されるときには印刷速度を低下させて印刷を継続して熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させ、前記温度差に基づいて定着ベルト64の通紙部の温度が前記低温にならないと予測されるときには印刷速度を変えずに印刷を継続して熱均一化部材68を定着ベルト64に接触させるように構成されてもよい。このように構成しても、定着熱が不足した状態での印刷を回避し、必要な定着熱を付与し得る状態での印刷を確保することが可能となる。
【0106】
また、前記実施形態では、プリンタを例に挙げて説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複写機、ファクシミリ装置、MFP(Multifunction Peripheral)等の画像形成装置にも適用可能である。
【0107】
また、前記実施形態では、定着手段として定着ベルトが使用されているが、例えばローラ形状の定着手段が使用されてもよい。また、前記実施形態では、加熱手段として面状発熱体である定着ヒ−タが使用されているが、例えばハロゲンランプ等の他の発熱体が使用されてもよい。また、前記実施形態では、温度検出手段としてサーミスタが使用されているが、例えば熱伝対等の他の温度検出手段が使用されてもよい。
【0108】
なお、前記実施形態に係る画像形成装置が有する各構成要素において、その機能の一部又は全部は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいはソフトウェアによって実現されてもよい。例えばソフトウェアによって機能が実現される場合、当該機能を実現するためのプログラムが、当該プログラムを記録した記録媒体やインターネット等のネットワークを介して、装置に提供される。そして、当該装置のCPUが当該プログラムをメモリ上に読み出して実行することによって機能を実現する。
【符号の説明】
【0109】
1,1a 画像形成装置
2 用紙搬送部
3 LEDヘッド
5 トナー像形成部(現像剤像形成部)
6 定着器
7 トナー像形成部電源
10,10a 印刷制御部
16 ヒータ電源
17 モータ電源
18 用紙搬送モータ
61 定着ヒータ(加熱手段、面状発熱体)
62 ヒータ支持部材
63 上加圧ローラ
64 定着ベルト(定着手段)
65 下加圧ローラ
66 ベルトガイド
67 ベルトサーミスタ(第1の温度検出手段)
68 熱均一化部材(熱均一化手段)
69 熱均一化部材サーミスタ(第2の温度検出手段)
70 モータ電源
71 熱均一化部材離接モータ
73 端部温度サーミスタ(第3の温度検出手段)
100 温度検知部
101 加熱制御部(加熱制御手段)
102 離接制御部
200 クリーニング検知部(クリーニング検知手段)
680 離間・接触機構
681 シャフト
682 偏芯カム
683 レバー
684 回動軸
685 支持軸
A 係数
H 差分
P 用紙(印刷媒体)
Thigh ベルト上限温度(第2の閾値)
T2 上限温度
Tlow 下限温度(第1の閾値)
Tlev 熱均一化部材の温度
Tsp,Tsp´ 定着ベルトの設定温度
Tup 定着ベルトの中央部温度
Tupcon 定着ベルトの予測温度
ΔT 温度差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に熱を供給する定着手段と、
前記定着手段に熱を供給する加熱手段と、
前記定着手段の長手方向における所定サイズの印刷媒体が通過する部分である通紙部の温度を検出するための第1の温度検出手段と、
前記定着手段に対して離間・接触可能に設置され、前記定着手段の長手方向の温度分布を均一化する熱均一化手段と、
前記熱均一化手段の温度を検出するための第2の温度検出手段と、
前記定着手段の前記通紙部を設定温度に加熱制御する加熱制御手段と、
を有し、
前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させる場合には、前記第1の温度検出手段により検出された前記通紙部の温度と前記第2の温度検出手段により検出された前記熱均一化手段の温度との温度差に応じて、前記熱均一化手段の前記定着手段への接触時の印刷状態を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させる場合に、前記温度差に基づいて前記通紙部の温度が第1の閾値以下又は前記第1の閾値未満の低温になると予測されるときには印刷を一時停止して前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させ、前記温度差に基づいて前記通紙部の温度が前記低温にならないと予測されるときには印刷を継続して前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着手段の長手方向における前記所定サイズの印刷媒体が通過しない部分である非通紙部の温度を検出するための第3の温度検出手段を有し、
前記第3の温度検出手段により検出された前記非通紙部の温度が第2の閾値以上又は前記第2の閾値超過の場合に、前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記温度検出手段は、サーミスタであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記定着手段は、無端状の定着ベルトであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、面状発熱体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
印刷媒体に熱を供給する定着手段と、
前記定着手段に熱を供給する加熱手段と、
前記定着手段の長手方向における所定サイズの印刷媒体が通過する部分である通紙部の温度を検出するための第1の温度検出手段と、
前記定着手段に対して離間・接触可能に設置され、前記定着手段の長手方向の温度分布を均一化する熱均一化手段と、
前記熱均一化手段の温度を検出するための第2の温度検出手段と、
前記定着手段の前記通紙部を設定温度に加熱制御する加熱制御手段と、
前記印刷媒体上に現像剤像を形成する現像剤像形成部におけるトナー回収処理の実施を検知するクリーニング検知手段と、
を有し、
前記熱均一化手段の前記定着手段への接触を前記トナー回収処理の実施中に行い、
前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させる場合には、前記第1の温度検出手段により検出された前記通紙部の温度と前記第2の温度検出手段により検出された前記熱均一化手段の温度との温度差に応じて、前記トナー回収処理の実施中における前記設定温度を補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させる場合に、前記温度差に基づいて前記通紙部の温度が第1の閾値以下又は前記第1の閾値未満の低温になると予測されるときには前記トナー回収処理の実施中における前記設定温度を高くしてから前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させ、前記通紙部の温度が前記低温にならないと予測されるときには前記設定温度を維持して前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記定着手段の長手方向における前記所定サイズの印刷媒体が通過しない部分である非通紙部の温度を検出するための第3の温度検出手段を有し、
前記第3の温度検出手段により検出された前記非通紙部の温度が第2の閾値以上又は前記第2の閾値超過の場合に、前記熱均一化手段を前記定着手段に接触させることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記温度検出手段は、サーミスタであることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記定着手段は、無端状の定着ベルトであることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記加熱手段は、面状発熱体であることを特徴とする請求項7乃至請求項11のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−181476(P2012−181476A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45902(P2011−45902)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】