説明

画像形成装置

【課題】薄紙でも排紙不良等を来さずに印刷1枚目から排紙台上に整然と揃えて積載すること。
【解決手段】画像形成された用紙を所定の排出角度で排出ローラ11、17によって排紙台5、6に排出する画像形成装置において、排出角度が大きいほど、用紙の厚さが薄いほど、1枚目の用紙の排出速度が2枚目以降の用紙の排出速度よりも大きくなるように制御手段により制御する。コシの弱い薄紙を排出角度を付けて排紙台に排出する場合に、印刷1枚目の用紙は普通紙の場合よりも速い速度で排出するので、用紙が空気から受ける抵抗が大きいにも関わらず、先端部の浮き上がり等が生じにくく、これを原因とする排紙不良や排紙揃えの悪化等が起きにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を形成した用紙を排紙台上に排出して積載させる画像形成装置に係り、特にコシの弱い薄紙であっても排紙揃えの悪化や排紙不良等を来すことなく排紙台上に整然と揃えて積載できる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の排紙機構においては、特に高速印刷時において薄紙等のコシの弱い印刷用紙を排出した場合に、空気抵抗により、用紙の先端部が幅方向の全体にわたって浮き上がったり、用紙の先端の両角部が丸く捲れ上る変形が発生する場合がある。そして、このような変形が原因で用紙が失速し、排出口を塞ぐように落下してジャム等の排紙不良を起こしたり、排紙揃えが悪化する等、薄紙特有の問題が発生することがあった。そして、このような問題は特に最初の1枚目の印刷物について顕著に現れていた。
【0003】
下記特許文献1には、薄紙等のコシの弱い用紙の先端が排紙トレイ面にひっかかって先端部が丸まってしまう不具合を解決することを目的とした排紙装置の発明が開示されている。この排紙装置では、第1のニップN1及び第2のニップN2から排紙される用紙Pと用紙載置面である緩斜面4bとのなす排紙角度θa、θeが、用紙Pの先端が緩斜面4bに引っ掛かかって用紙の丸まりが生じることがない良好な角度となるように、第1のニップN1及び第2のニップN2と緩斜面4bとの関係が設定されている。従って、第1のニップN1からの排紙は、良好な排紙角度が維持可能な所定の高さY1に達するまで継続し、その後、上位の第2のニップN2へ排紙経路を切り換えれば、第2のニップN2からの排紙は、第1のニップN1からの排紙の最上段の用紙に対して良好な排紙角度で排紙を始め、積載上限の高さY2まで用紙を円滑に排出積載することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−143728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された排紙装置の発明によれば、排出枚数に応じて排出機構を切り替えることで排出用紙と排紙台の角度が所定角度を保ち、安定した排出を行なうようにしているが、装置が大型になるという問題を有していた。また、この発明では、印刷物の1枚目の挙動についての考慮がなされておらず、先端部の幅方向全体の浮き上がりや、先端部の両角部の丸まりを原因とする排紙不良や排紙揃えの悪化等が、特に印刷物の1枚目について顕著に現れるという問題は全く解決されていなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、コシの弱い薄い用紙であっても排紙揃えの悪化や排紙不良等を来すことなく印刷の1枚目から排紙台上に整然と揃えて積載できるようすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された画像形成装置は、用紙の搬送手段と、用紙に画像を形成する画像形成手段と、画像形成された用紙が所定の排出角度で前記搬送手段により排出されて積載される排紙台とを有する画像形成装置において、
前記排出角度と使用する用紙の種類の少なくとも何れか一方に応じて前記搬送手段による用紙の排出速度を制御することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載された画像形成装置は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記排出角度については前記排出角度が大きいほど、前記用紙の種類については用紙厚さが薄いほど、1枚目の用紙の排出速度が2枚目以降の用紙の排出速度よりも大きくなるように前記搬送手段を制御することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載された画像形成装置は、請求項2に記載の画像形成装置において、
前記排出角度が異なる複数種類の前記排紙台と、前記排紙台ごとの前記排出角度及び前記用紙厚さの組み合わせと用紙の排出速度との対応を記憶した記憶手段と、使用する用紙を指定する用紙指定手段と、使用する排紙台を指定する排紙台指定手段と、前記用紙指定手段によって指定した用紙及び前記排紙台指定手段によって指定した排紙台の組み合わせに対応した排出速度を前記記憶手段から読み出して前記搬送手段を制御する制御手段とを具備することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載された画像形成装置は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の画像形成装置において、
前記排紙台には、排出される用紙の幅方向の両縁部にそれぞれ接触して用紙を腰付する一対の腰付部材が前記幅方向の両側に間隔を調整できるように設けられており、
前記排出角度と使用する用紙の種類の少なくとも何れか一方に応じて前記腰付部材による用紙の腰付けを制御するために、前記排出角度については前記排出角度が大きいほど、前記用紙の種類については用紙厚さが薄いほど、1枚目の用紙が接触する場合の前記一対の腰付部材の間隔を、2枚目以降の用紙が接触する場合よりも狭めることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された画像形成装置によれば、排紙台に用紙を排出する際の排出角度と使用する用紙の種類の少なくとも一方に応じて搬送手段を制御し、排紙台に用紙を排出する際の排出速度を調整している。このため、コシの弱い薄い用紙であっても、又は排出される用紙が空気から受ける抵抗が排出角度によって大きくなる場合であっても、当該用紙は適正に制御された排出速度で排紙台上に排出されるので、先端部の浮き上がり等の用紙の変形等が生じにくく、これを原因とする排紙不良や排紙揃えの悪化等が起きにくい。
【0012】
請求項2に記載された画像形成装置によれば、水平方向から上方に向けて測定した場合の排出角度が大きいほど、また用紙厚さが薄いほど、1枚目の用紙の排出速度を2枚目以降よりも大きくするため、特に印刷物の1枚目から排紙台上に整然と揃えて積載することができる。
【0013】
請求項3に記載された画像形成装置によれば、用紙指定手段によって使用する用紙の種類を指定し、排紙台指定手段によって使用する排紙台を指定すれば、制御手段は上記指定に対応する適切な用紙の排出速度を記憶手段から読み出し、この排出速度で1枚目の用紙を排出するとともに2枚目以降はこれより小さい速度で排出することができる。よって、複数の用紙種類と複数の排紙台の多様な組み合わせに対応し、印刷物の1枚目から排紙台上に整然と揃えて積載する精妙な作業を、経験に頼ることなく誰でも容易に行なうことができる。
【0014】
請求項4に記載された画像形成装置によれば、用紙の排出角度と用紙の種類の少なくとも一方に対応して用紙の排出速度を上述の如く制御するのに加え、さらに排出角度が大きいほど、また用紙厚さが薄いほど、1枚目の用紙が接触する際の腰付部材の間隔を2枚目以降よりも狭め、1枚目の用紙の腰付けをより強くしている。このため、特に空気の抵抗をより大きく受けやすい1枚目の用紙の排出において、先端部の浮き上がり等の変形等がさらに一層生じにくくなり、これを原因とする排紙不良や排紙揃えの悪化等をさらに一層確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の画像形成装置の全体構成を示す模式的断面図である。
【図2】(a)は本実施形態の画像形成装置におけるフェイスアップ排紙台の斜視図であり、(b)は同排紙台における一対の腰付部材の構造を示す断面図である。
【図3】(a)は本実施形態の画像形成装置におけるフェイスダウン排紙台の斜視図であり、(b)は同排紙台における一対の腰付部材の構造を示す断面図である。
【図4】本実施形態の制御構成を示す機能ブロック図である。
【図5】本実施形態の画像形成装置のフェイスダウン排紙台において速度制御を行なわずに1枚目の用紙を排出した状況を示す斜視図である。
【図6】本実施形態の画像形成装置のフェイスダウン排紙台において速度制御を行なって1枚目の用紙を排出した状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る画像形成装置1を図1〜図6を参照して説明する。この画像形成装置1は用紙に画像を形成して排出する装置であり、特にコシの弱い薄い用紙を用いた場合に、特に排出1枚目の用紙に先端の変形が発生して排紙揃えの悪化や排紙不良等に至る恐れを除くために、その用紙の排出角度や用紙の種類に応じて用紙の排出速度等を制御することを特徴とするものである。
なお、排出1枚目の用紙について、排紙揃えの悪化や排紙不良等が発生する可能性のある薄紙とは、例えば坪量で示せば、52g/m2 以下の用紙であり、例えば純曲げこわさで言えば、75μN・m2 /mの用紙である。
【0017】
まず図1〜図3を参照して画像形成装置1の基本的構造等を説明する。
図1に示すように、この画像形成装置1は、装置の各部を収納する筐体2の内部及び側面側に2台の給紙台3,4を備えている。これらの給紙台3,4には、種類の異なる用紙Pがそれぞれ収納されており、ユーザーの好みに応じて選択使用することができる。
【0018】
なお、ここで用紙の種類とは、一般的には、A3・A4・B4・B5等の規格による用紙のサイズ(寸法)や、薄紙・普通紙・厚紙等の用紙の材質を意味する。ただし、特に本画像形成装置1は用紙を排紙台5,6に排出する際に、用紙の速度を制御することを特徴としており、その制御を行なう際の指標の一つとして、用紙の種類を挙げている。ここで、その制御指標としての用紙の種類とは、排出された用紙が空気から抵抗を受けた場合の変形し易さを示す性質であり、例えば用紙のコシの強弱に対応する「純曲げこわさ」(単位μN・m2 /m)や「坪量」(単位g/m2 )を指すものとする。
【0019】
図1に示すように、給紙台3,4Pから出た用紙Pは、導入路7からループ状の搬送路8に送り込まれ、搬送路8に沿って配置された複数の搬送手段9によって搬送される。搬送路8の下半部には、搬送路8に沿って印刷手段が配置されている。印刷手段はシアン、ブラック、マゼンタ、イエローの各色のインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッドC、K、M、Yからなる。これらの各インクジェットヘッドC、K、M、Yは、搬送路8に沿って所定間隔で各々下向きに配置されており、搬送手段9によって搬送路8を搬送される用紙Pの上面に画像を形成する。
【0020】
図1に示すように、このループ状の搬送路8には、印刷手段の下流の隣部に第1の排出路10が分岐して設けられている。第1の排出路10は、画像形成された用紙を水平な方向に導いて装置外に排出するための経路であり、その端部には搬送手段9としての排出ローラ11が設けられている。この排出ローラ11は筺体2に設けられた図示しない排出口に面しており、この排出口の下方において、第1の排紙台であるフェイスアップ排紙台5が筺体2の外面に取り付けられている。フェイスアップとは、画像形成装置から排出される直前に画像形成された面を上にして排出する排紙台を意味する。第1の排出路10から排出ローラ11で筐体2外に排出された用紙Pは、フェイスアップ排紙台5に送り込まれて画像を上にして積載される。
【0021】
図2(a)は第1の排出ユニットの斜視図である。第1の排出ユニットは、筐体2内に配置される前記排出ローラ11を含む駆動機構と、筐体2の外面に配置されるフェイスアップ排紙台5とで構成される部品ユニットであり、同図はその構造を具体的に示したものである。フェイスアップ排紙台5は画像形成装置から排出される直前に印刷された画像を上に向けた姿勢で用紙Pが排出される排紙台である。フェイスアップ排紙台5は、用紙Pの排出方向に直交する切断線での断面が略V字形の基台12と、用紙Pの排出方向に直交する幅方向について基台12の両側部に設けられた一対の側板13、13と、排出方向について基台12の下流側端部に設けられた突き当て板14とを有している。側板13及び突き当て板14は、用紙Pの寸法等に合わせて適宜位置調整が可能である。
【0022】
図2(a)に示すように、フェイスアップ排紙台5の入口側、すなわち同図中には表れない排出ローラ11の下流側には、排出される用紙Pの幅方向の両縁部にそれぞれ接触して用紙Pを下方に突出した形状に腰付する一対の腰付部材15(ウイングとも称する)が設けられている。図2(b)に拡大して模式的に示すように、各腰付部材15は、用紙Pの幅方向についての断面が直角三角形状の部材であり、その斜辺を上向きかつ互いに内方に向けた状態で、用紙Pの搬送方向の中心線について対称に配置されている。このように配置された一対の腰付部材15,15の間を用紙Pが通過すると、用紙Pは幅方向の両側縁が搬送方向の全長にわたって上方に曲げられた状態となり、下方に凸の形態となって排出される。
【0023】
図2(b)に矢印にて示すように、一対の腰付部材15,15は図示しない連動機構によって前記中心線に関して互いに反対方向に対称に移動できるようになっている。また一対の腰付部材15,15は、手動乃至図示しない駆動機構としてのウイング移動手段により、用紙Pの幅や種類に合わせて任意に間隔を調節することができ、これによって湾曲の程度を適切に設定し、排出時に必要な強度で腰付けできるようになっている。
【0024】
例えば、用紙Pの種類が薄紙であり、コシが弱いために不都合が生じると考えられる場合には、通常の設定よりも一対の腰付部材15,15の間隔を短めに設定し、用紙Pの湾曲の程度を強くする。すなわち、一対の腰付部材15,15を通過することにより、用紙Pは搬送方向の全長にわたって幅方向に大きな曲率で曲げられた状態となって排出される。これによりコシの弱い薄い用紙Pであっても、また空気の流れがなく空気抵抗の影響を受けやすい印刷の1枚目であっても、排出された用紙Pは変形せずに排紙台上に送り込まれて所定位置に落下するので、前述したような不都合が生じることは避けられ、排紙台上に整然と積載させることができる。
【0025】
図1に示すように、ループ状の搬送路8の上半部には、用紙Pをループ外に排出する第2の排出路16が分岐して設けられている。第2の排出路16は、画像形成された用紙Pをループ外に導いて筐体2外へ斜め上方へ向けて排出するための経路であり、その端部には搬送手段9としての排出ローラ17が設けられている。この排出ローラ17は筺体2に設けられた図示しない排出口に面しており、この排出口の下方において、第2の排紙台であるフェイスダウン排紙台6が筺体2の外面に取り付けられている。フェイスダウンとは、画像形成装置から排出される直前に画像形成された面を下にして排出する排紙台を意味する。第2の排出路16から排出ローラ17で筐体2外に排出された用紙Pは、フェイスダウン排紙台6に送り込まれて画像形成装置から排出される直前に印刷された画像を下にして積載される。
【0026】
図3(a)は第2の排出ユニットの斜視図である。第2の排出ユニットは、筐体内に配置される前記排出ローラ17を含む駆動機構と、筐体2の外面に配置されるフェイスダウン排紙台6とで構成される部品ユニットであり、同図はその構造を具体的に示したものである。フェイスダウン排紙台6は印刷された画像を下に向けた姿勢で用紙Pが排出される排紙台である。フェイスダウン排紙台6は、用紙Pが積載される平板状の基台18と、用紙Pの幅方向について基台18の両側部に設けられた一対の側板19,19とを有している。側板19は用紙Pの寸法等に合わせて適宜位置調整が可能である。図3(a)では、フェイスダウン排紙台6の基台18が水平に表れているが、これを実際に画像形成装置1に取り付けた状態では、図1に示すように基台18が水平方向から所定角度だけ上方に向いた角度となっている。従って、排出ローラ17で斜め上方に排出された用紙Pは一旦上昇した後、重力で落下して基台18上に順次積載されていくことになる。
【0027】
図3(a)に示すように、フェイスダウン排紙台6の入口側、すなわち同図中には表れない排出ローラ17の下流側には、排出される用紙Pの幅方向の両縁部にそれぞれ接触して用紙Pを上方に突出した形状に腰付する一対の腰付部材15,15(ウイングとも称する)が設けられている。図3(b)に拡大して模式的に示すように、各腰付部材15は、用紙Pの幅方向についての断面が直角三角形状の部材であり、その斜辺を下向きかつ互いに内方に向けた状態で、用紙Pの搬送方向の中心線について対称に配置されている。このように配置された一対の腰付部材15,15の間を用紙Pが通過すると、用紙Pは幅方向の両側縁が搬送方向の全長にわたって下方に曲げられた状態となり、上方に凸の形態となって排出される。
【0028】
図3(b)に矢印にて示すように、一対の腰付部材15,15は図示しない連動機構によって前記中心線に関して互いに反対方向に対称に移動できるようになっている。また一対の腰付部材15,15は、手動乃至図示しない駆動機構としてのウイング移動手段により、用紙Pの幅や種類に合わせて任意に間隔を調節することができ、これによって湾曲の程度を適切に設定し、排出時に必要な強度で腰付けできるようになっている。
【0029】
フェイスダウン排紙台6における腰付部材15の作用は、フェイスアップ排紙台5の腰付部材15と原理的には同一であるが、その他の条件が同一であれば、フェイスダウン排紙台6における腰付部材15,15の間隔は、フェイスアップ排紙台5の腰付部材15,15の間隔よりも狭く設定される場合がある。なぜなら、腰付部材15は用紙Pを腰付けするための部材であるが、フェイスダウン排紙台6では基台18が先上がりに傾斜しており、用紙Pは斜め上方に向けて排出されるため、空気抵抗に負けないように用紙Pをより強く腰付けして排出する必要がある場合もあるためである。
【0030】
図1に示すように、第2の排出路16と給紙台3,4からの導入路7との間にはスイッチバック路20が分岐して設けられている。このスイッチバック路20は、搬送路8を搬送されてきた用紙Pを受け入れた後に逆行させて搬送路8に戻すことにより、搬送路8中における用紙Pの上下(表裏)を反転させる手段である。このスイッチバック路20を用い、用紙Pの上下(表裏)面を逆転させて搬送路8を2回通過させれば、インクジェットヘッドC、K、M、Yで用紙Pの両面にカラー画像を形成するカラー両面印刷を行なうことができる。
【0031】
次に、図4の機能ブロック図を参照して、1枚目の画像形成における排出速度制御や腰付部材15の間隔設定制御の機能について説明する。
画像形成装置1は、画像形成に係る機能を統括的に制御する制御手段30を備えている。この制御手段30は、画像形成のために必要なプログラムや各種データ、また本装置1の特徴である印刷1枚目の排出速度等制御のために必要な排出速度等制御データを格納した記憶部31を備えている。
【0032】
この記憶部31に格納された排出速度等制御データとは、まず第1義的には、排紙台5,6における用紙Pの排出角度(例えばフェイスダウン排紙台6は0°、フェイスアップ排紙台5は30°)及び使用可能な用紙厚さの種類の組み合わせに対して、印刷1枚目の用紙Pを排出した場合に腰折れしない排出速度を対応させたデータである。つまり、ある排紙台5,6(すなわち排出角度)とある用紙種類(用紙の厚さ薄さ)を選択した場合、どの程度の排出速度で排出すれば空気抵抗に負けずに整然とした排紙ができるかは予め実験によって定めておくことができるので、このようなデータを予め取得し、排出角度(又は排紙台の種類)及び用紙種類の組み合わせと、これに適した排出速度との対応関係を示すテーブル形式等のデータとして、記憶部31に格納しておけばよい。
【0033】
排出速度等制御データにおける排出角度と排出速度の関係について説明する。通常はフェイスアップ排紙台5のように用紙Pをほぼ水平方向に排出する排出角度が0°の場合と、フェイスダウン排紙台6のように用紙Pを水平方向から上方に傾斜した角度に排出する場合とでは、後者の方が1枚目の用紙Pとして排出された場合に静止した空気による抵抗をより強く受けるため、より速い排出速度が必要になる。従って、上記記憶部31のデータにおいても、用紙Pの種類が同一であれば、フェイスアップ排紙台5の場合よりも、フェイスダウン排紙台6の方が排紙速度は大きく設定されている。また、排出角度が0°を越える場合(斜め上方に排出する場合)においては、一般に排出角度が大きくなるほどより速い排出速度が必要になる。
【0034】
なお、排出角度が0°の場合(フェイスアップ排紙台5を使用する場合)には、2枚目以降の速度として設定されている速度のままで排出すると、突き当て板14からの跳ね返りによって排紙状態の乱れにつながるので、1枚目は2枚目以降の速度よりも遅い速度で排出し、2枚目以降には本来の速度に戻して排出する。この際、1枚目は2枚目よりも排出速度が遅いので、2枚目以降の用紙Pが1枚目の用紙Pに衝突しないようにするため、2枚目以降の給紙タイミングを遅らせるように制御する。
【0035】
排出速度等制御データにおける用紙種類と排出速度の関係について説明する。通常は、普通紙と薄紙では、薄紙の方が剛性が小さいため、薄紙を1枚目の用紙Pとして排出した場合に静止した空気に対する抵抗に負けないためには、より速い排出速度が必要になる。従って、上記記憶部31のデータにおいても、排出角度が同一であれば、普通紙や厚紙よりも、薄紙の方が排紙速度は大きく設定されている。
【0036】
なお、排出角度及び用紙種類の組に対して排出速度を定めていたが、排出角度と用紙種類のうち、少なくとも一つのパラメータについて排出速度を定めることとしてもよい。
【0037】
この記憶部31に格納された排出速度等制御データは、前述したように印刷1枚目の用紙Pの排出速度を設定して搬送手段9を制御するものであるが、第2義的には、同様のパラメータから腰付部材15,15の間隔を設定制御するためのデータを含んでいても良い。つまり、ある排紙台(すなわち排出角度)とある用紙種類(用紙の厚さ薄さ)を選択した場合、腰付部材15,15の間隔をどの程度にすれば空気抵抗に負けずに整然とした排紙ができるかは予め実験によって定めておくことができるので、このようなデータを予め取得し、これを排出角度及び用紙種類の組み合わせと、腰付部材15の間隔との対応関係を示すテーブル形式等のデータとして、記憶部31に格納しておけばよい。
【0038】
排出速度等制御データにおける排出角度と腰付部材15,15の間隔との関係について説明する。通常はフェイスアップ排紙台5のように用紙Pをほぼ水平方向に排出する排出角度が0°の場合と、フェイスダウン排紙台6のように用紙Pを水平方向から上方に傾斜した角度に排出する場合とでは、後者の方が、1枚目の用紙Pとして排出された場合に静止した空気による抵抗をより強く受けるため、この抵抗に負けないためには、腰付部材15,15の間隔をより狭くして用紙Pの腰付けをより強くする必要がある。従って、上記記憶部31のデータにおいても、用紙Pの種類、排出速度等が同一であれば、フェイスアップ排紙台5の場合よりも、フェイスダウン排紙台6の方が腰付部材15,15の間隔はより狭く設定されている。また、排出角度が0°を越える場合(斜め上方に排出する場合)においては、一般に排出角度が大きくなるほど腰付部材15,15の間隔はより狭くすることが必要になる。
【0039】
排出速度等制御データにおける用紙種類と腰付部材15,15の間隔との関係について説明する。通常は、普通紙と薄紙では、薄紙の方が剛性が小さいため、薄紙を1枚目の用紙として排出した場合に、静止した空気に対する抵抗に負けないためには、腰付部材15,15の間隔をより狭くして用紙Pの腰付けをより強くする必要がある。従って、上記記憶部31のデータにおいても、排出角度、排出速度等が同一であれば、普通紙や厚紙よりも、薄紙の方が腰付部材15,15の間隔はより狭く設定されている。
【0040】
なお、ここでは、排出角度及び用紙種類の組み合わせに対して排出速度を定めていたが、排出角度と用紙種類のうち、少なくとも一つのパラメータに対して腰付部材15,15の間隔を定めることとしてもよい。
【0041】
以上の説明に基づき、本実施形態における排出速度等制御データの具体的な内容について一例を挙げると次の通りである。
普通紙とフェイスダウン排紙台6を選択した場合の排出速度を標準速度とする。
普通紙とフェイスアップ排紙台5を選択した場合、排出速度は標準速度よりも遅くする。前述したように、突き当て板14からの跳ね返りによるトラブルを避けるためである。
薄紙とフェイスダウン排紙台6を選択した場合、排出速度を標準速度よりも速くする。空気抵抗に負けないようにするためである。
薄紙とフェイスアップ排紙台5を選択した場合、排出速度は標準速度よりも遅くする。前述したように、突き当て板14からの跳ね返りによるトラブルを避けるためである。
さらに、実施形態には存在しないが、排出角度がより大きい排紙台を使用する場合において、薄紙を選択した場合には、排出速度をさらに大きくする。この排紙台に普通紙を使用する場合には、通常前記標準速度で問題ないが、必要に応じて標準速度より速い速度を採用してもよい。
このように、排出角度及び用紙種類の組み合わせに応じ、記憶部31の排出速度等制御データに基づいて排出速度だけを制御してもよいし、上記排出速度の制御に加え、同時に記憶部31のデータに基づいて腰付部材15,15の間隔も調整して用紙Pの腰付けに関してより確実な制御を行なうようにしてもよい。
【0042】
制御手段30には、使用する用紙Pを指定する用紙指定手段32と、使用する排紙台を指定する排紙台指定手段33が設けられている。これらの指定手段32,33は、画像形成装置1の入力手段として設けられた操作パネルであってもよく、その場合にはユーザーが操作パネルを操作することにより、種々の画像形成情報の一部として、使用する用紙の指定(薄紙、普通紙、厚紙等の選択)及び使用する排紙台の指定(フェイスアップ排紙台5又はフェイスダウン排紙台6の選択)を行なう。又は、画像形成情報が外部のPC等から遠隔的に送られてくる場合には、当該外部のPCが用紙と排紙台の指定手段ということになる。
【0043】
制御手段30は、用紙指定手段32で使用すべき用紙Pを指定され、排紙台指定手段33で使用すべき排紙台を指定されると、指定された排紙台の排出角度及び指定された用紙Pの厚さの組み合わせに対して、記憶部31から、この組み合わせに最適なデータとして、この組み合わせに対応する印刷1枚目の用紙排出速度のデータを読み出す。そして、制御手段30は、印刷開始1枚目の用紙Pについては、この用紙排出速度で用紙Pが排出されるように、搬送手段9を駆動する。2枚目以降の用紙Pについては、1枚目よりも遅い通常の規定の排出速度で排出する。
【0044】
コシの弱い薄紙を使用する場合に、排出角度に応じて排出速度を制御せず、例えばフェイスアップ排紙台5の場合の排紙速度(前記一例で言えば標準速度)で、より傾斜角度の大きなフェイスダウン排紙台6において排紙した場合を検討する。この場合、図5に示すように、印刷開始1枚目の時点では、排紙台6上の空気は静止しており、まだ空気の流れが出来ていないため、斜め上方に送り出された1枚目の用紙Pは、この静止した空気の壁に衝突して先端が幅全体について上方に浮き上がり、その結果失速してしまう。これは薄紙としては排出速度が不十分であった結果と言える。そして、この用紙Pは排出口を塞ぐように落下し、ジャム等の排紙不良を起こす等して排紙揃えが悪化する等の問題が発生してしまう。
【0045】
ところが、本実施形態の画像形成装置1によれば、相対的に傾斜角度の大きなフェイスダウン排紙台6と薄紙を選択して画像形成及び排紙する場合は、相対的に傾斜角度の小さいフェイスアップ排紙台5での排紙速度(前記一例で言えば標準速度)よりも大きい排紙速度で排紙される。そのため、図6に示すように、排紙台6上の空気が静止して空気の流れがない印刷開始1枚目の状態であり、かつコシの弱い薄紙を使用する場合であっても、用紙Pは先端が変形せず失速することなく飛翔し、その後重力によって排紙台6上の所定位置に落下する。その後、2枚目以降の用紙Pについては、すでに用紙排出による空気の流れが出来ているため、1枚目よりも小さい排出速度で排出しても問題はなく、用紙Pは順次排紙台6上の用紙Pに良好な紙揃えで重なっていく。
【0046】
以上説明したのは、排出速度を制御する場合であるが、これとは別に、又はこの制御とともに、同様のパラメータを基として腰付部材15,15の間隔を制御してもよい。すなわち、制御手段30は、用紙指定手段32で使用すべき用紙Pを指定され、排紙台指定手段33で使用すべき排紙台を指定されると、指定された排紙台の排出角度及び指定された用紙Pの厚さの組み合わせに対して、記憶部31から、この組み合わせに最適なデータとして、この組み合わせに対応する腰付部材15,15の間隔についてのデータを読み出す。そして、制御手段30は、印刷開始1枚目の用紙Pについては、ウイング移動手段を制御して指定された排紙台の腰付部材15をデータに応じた間隔に設定し、用紙Pの排出を行なう。2枚目以降の用紙Pについては、腰付部材15,15の間隔を1枚目よりも長い通常の間隔にして用紙Pの排出を行なう。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置1によれば、特にコシの弱い薄い用紙Pであっても、又は排出角度が大きくて用紙Pが空気から受ける抵抗が大きくなる場合であっても、特に印刷開始後の1枚目から用紙Pの排出速度又は腰付部材15,15の間隔が適正に制御されるため、排出された用紙Pには先端部の浮き上がり等の変形が生じにくく、印刷開始後の1枚目から排紙不良等を起こさずに整然と揃えて積載させることができる。
【0048】
特に、本実施形態の画像形成装置1では、用紙Pの排出角度と用紙Pの種類の少なくとも一方のパラメータに対応して用紙Pの排出速度を制御する手法と、これに加えて同パラメータに対応して腰付部材15,15の間隔を制御する手法とを、予め用意した記憶部31のデータに基づいて自動的に行なうようにしたので、複数の用紙種類と複数の排紙台の多様な組み合わせに対応し、印刷物の1枚目から排紙台上に整然と揃えて積載する精妙な作業を経験に頼ることなく誰でも容易に行なうことができる。
【0049】
なお、以上説明した実施形態では、排出角度の異なる排紙台は2台であったが、排出角度の異なる排紙台が3台以上あってもよい。さらに、必要に応じて排出角度を可変できる排紙台を採用する場合において、当該排紙台を選択した場合には、当該排紙台にて設定された排出角度等に応じて排出速度や腰付部材15の間隔を制御することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1…画像形成装置
5…フェイスアップ排紙台
6…フェイスダウン排紙台
9…搬送手段
11…搬送手段としての排出ローラ
17…搬送手段としての排出ローラ
30…制御手段
31…記憶部
32…用紙指定手段
33…排紙台指定手段
P…用紙
C,K,M,Y…画像形成手段としてのインクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の搬送手段と、用紙に画像を形成する画像形成手段と、画像形成された用紙が所定の排出角度で前記搬送手段により排出されて積載される排紙台とを有する画像形成装置において、
前記排出角度と使用する用紙の種類の少なくとも何れか一方に応じて前記搬送手段による用紙の排出速度を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記排出角度については前記排出角度が大きいほど、前記用紙の種類については用紙厚さが薄いほど、1枚目の用紙の排出速度が2枚目以降の用紙の排出速度よりも大きくなるように前記搬送手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記排出角度が異なる複数種類の前記排紙台と、前記排紙台ごとの前記排出角度及び前記用紙厚さの組み合わせと用紙の排出速度との対応を記憶した記憶手段と、使用する用紙を指定する用紙指定手段と、使用する排紙台を指定する排紙台指定手段と、前記用紙指定手段によって指定した用紙及び前記排紙台指定手段によって指定した排紙台の組み合わせに対応した排出速度を前記記憶手段から読み出して前記搬送手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記排紙台には、排出される用紙の幅方向の両縁部にそれぞれ接触して用紙を腰付する一対の腰付部材が前記幅方向の両側に間隔を調整できるように設けられており、
前記排出角度と使用する用紙の種類の少なくとも何れか一方に応じて前記腰付部材による用紙の腰付けを制御するために、前記排出角度については前記排出角度が大きいほど、前記用紙の種類については用紙厚さが薄いほど、1枚目の用紙が接触する場合の前記一対の腰付部材の間隔を、2枚目以降の用紙が接触する場合よりも狭めることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206815(P2012−206815A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72674(P2011−72674)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】