説明

画像形成装置

【課題】 現像装置に非磁性トナーと磁性キャリアからなる現像剤を補給すると共に、使用後の現像剤を排出するための排出口を有する二成分現像装置において、排出口近傍に設けられた搬送手段による現像剤の跳ね上げに伴って排出口から現像剤が排出することを抑制しながら、現像剤の滞留等によって現像剤の排出量が不安定となることを抑制する。
【解決手段】 感光ドラムと、帯電装置と、露光装置と、現像装置とを備え、現像装置には非磁性トナーと磁性キャリアからなる現像剤が補給されると共に、使用後の現像剤を現像装置のハウジングの一部に設けた排出口から溢れ出させることで排出するオートリフレッシュ方式を用いた二成分現像装置において、排出口に回転駆動可能な現像剤排出部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機,プリンタ,ファックスなどに採用される電子写真方式を用いた画像形成装置に関するものであり、詳しくは非磁性トナーと磁性キャリアを混合して使用する2成分現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の画像形成装置、その中でも特に有彩色の画像形成を行なう画像形成装置においては、像担持体上の静電潜像を顕像化するために、磁性キャリアと非磁性トナーとを一定比率で混合してなる現像剤を用いた2成分現像方式が広く使用されている。2成分現像方式では、マグネットを内包した現像剤担持体としての現像スリーブにより現像装置内の現像剤を担持し、像担持体に対抗する位置へ搬送すると共に、像担持体に対抗する位置で磁気ブラシを形成して像担持体上の静電潜像の顕像化(現像)を行なう。このような2成分現像方式を用いることにより、静電潜像に対して忠実に顕像化すること(高画質)が可能であり、また安定性にも優れるといった長所がある。
【0003】
上記2成分現像方式では、現像を行なうと共に現像装置内の現像剤中のトナー濃度が低下する。そのために補給手段によって現像で使用された量と同じ量のトナーが現像装置内に補給され、磁性キャリアと混合・攪拌されることによる摩擦帯電で現像に適する帯電量になるよう制御される。ここで、現像動作を長期にわたり繰り返すと、磁性キャリアが劣化するという問題が発生する。具体的には磁性キャリア表面のコート剤の剥離や、磁性キャリア表面にトナー樹脂やトナーの外添剤が付着することで磁性キャリア表面が変質し、補給されたトナーに対して十分な帯電量を付与することができなくなる。
【0004】
そのため、現像装置内の磁性キャリアを一定期間ごとに交換する必要がある。ただしこの交換作業には専門のオペレーターが必要でかつ時間を要するといった問題があり、装置のダウンタイムの発生やランニングコストの増加につながる。また磁性キャリア交換直後では非常に画質が良好かつ安定であるのに対して、次の交換までの間に徐々に磁性キャリアの劣化が進行するため、通常の使用上問題は無いものの初期の画質,安定性を維持することはできないといった問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、いくつかの解決策が既に提案されている。例えば、特許文献1によると、現像装置ハウジングの側壁に現像剤溢出部を設けている。このため、新しい現像剤を前記補給装置により少しずつ補給するとともに前記現像剤溢出部より排出することができ、前記現像装置ハウジング内の現像剤の特性を一定に維持させることができる構成が開示されている。
【0006】
この方法によって上述した磁性キャリアの交換作業は不要となり、メンテナンス性は向上する。しかしながら、上記の方式では攪拌・搬送部材としてのスクリューの回転に伴い現像剤が跳ね上げられて排出口から排出されてしまう問題があった。その結果、現像剤の量が過度に排出されてしまう。この結果、現像スリーブ上に担持される現像剤量が減少し、画像濃度の低下やスクリューピッチムラ等の異常画像が発生する虞がある。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献2によると、現像剤の排出口周辺部に電磁石が設けられており、電磁石のON/OFFにより現像装置内の現像剤の排出量を制御する構成である。しかしながら、現像剤を排出する際には排出口を開放する必要があり、スクリューにより跳ね上げられた現像剤の排出を抑制できない。
【0008】
また別の方法として、排出口と対向するスクリューの羽根の一部を切り欠くことでスクリューによる現像剤の跳ね上げを抑制する構成も考えられる。しかしながら、排出口近傍で現像剤の滞留が生じ、排出量が安定しない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平2−21591号公報
【特許文献2】特開平6−242683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、トナーとキャリアを有する現像剤を現像装置に補給すると共に、余剰現像剤を現像装置から排出する排出口を備えた現像装置において、現像装置内の搬送部材の駆動に伴う現像剤の跳ね上げによって、現像剤が排出口から排出されることを抑制しながら、現像剤の滞留等によって現像剤の排出量が不安定となることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
像担持体と、トナーとキャリアを有する現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置と、前記現像装置内の現像剤を搬送する搬送手段と、前記搬送手段が設けられた搬送路に設けられ、前記現像装置内の余剰現像剤を排出するための排出口と、を有する画像形成装置において、
前記排出口を塞ぐように回転可能に設けられ、回転することで前記現像装置内の現像剤を前記排出口から排出させるローラ状の排出部材と、前記排出部材の駆動のオンオフを制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
現像装置に非磁性トナーと磁性キャリアからなる現像剤を補給すると共に、余剰現像剤を現像装置から排出する排出口を備えた現像装置において、攪拌・搬送部材としてのスクリューの回転に伴う現像剤の跳ね上げによる現像剤が排出されることを抑制しながら、現像剤の滞留等によって現像剤の排出量が不安定となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の二成分現像方式を用いた画像形成装置の概略構成模型図。
【図2】本実施例1の二成分現像方式を用いた画像形成装置の概略構成模型図。
【図3】従来の二成分現像装置の概略構成模型図。
【図4】画像形成枚数に対するトナーBET値変化を示す関係図。
【図5】画像形成枚数に対する現像剤の安息角変化を示す関係図。
【図6】現像剤の安息角に対する現像剤排出口近傍の現像剤の溢れ出し状態を示す模式図。
【図7】画像形成枚数に対する現像装置内の現像剤量を示す関係図。
【図8】現像剤中のトナー濃度と現像剤の安息角の関係を示す関係図。
【図9】現像剤の安息角に対する現像剤排出口近傍の現像剤の跳ね上げ状態を示す模式図。
【図10】本実施例1の二成分現像装置の概略構成模型図。
【図11】現像剤排出部材の模型図。
【図12】現像剤排出口と現像剤排出部材の配置を示す模型図。
【図13】本実施例1の画像形成枚数に対する現像装置内の現像剤量を示す関係図。
【図14】本実施例1のブロック図。
【図15】本実施例1の制御タイミングを示す模式図。
【図16】本実施例2の二成分現像装置の概略構成模型図。
【図17】本実施例2の現像剤排出口近傍の攪拌スクリュー形状を示す模型図。
【図18】本実施例3の二成分現像装置の概略構成模型図。
【図19】現像剤剤面高さ検知手段による現像剤排出部材の制御を示すフローチャート。
【図20】本実施例3のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)
図2は、本発明に係る画像形成装置の実施例1の概略構成を示す。本実施例1の画像形成装置100は、二成分接触現像方式を採用した電子写真方式のレーザビームプリンタ(プリンタ)である。
【0015】
(プリンタの全体構成)
先ず、図2を参照して、本実施例1のプリンタ100の全体構成について説明する。
【0016】
プリンタ100は、像担持体として、回転ドラム型の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と呼ぶ)を有する。本実施例1において、感光ドラム1は、帯電特性が負帯電性の有機光導電体(OPC)であり、外径30mm、中心支軸を中心に100mm/secのプロセススピード(周速度)をもって矢示の反時計方向に回転駆動される。
【0017】
感光ドラム1表面は、帯電装置2により一様に帯電処理される。本実施例1では帯電装置2として、帯電ローラ2aによる接触帯電方式を採用している。この帯電ローラ2aは、芯金の両端部をそれぞれ不図示の軸受け部材により回転自在に保持されると共に、押し圧ばね2bによって感光ドラム1に所定の押圧力をもって圧接されており、感光ドラム1の回転に従動して回転する。
【0018】
この帯電ローラ2aの芯金には電源より所定の条件の帯電バイアス電圧が印加されることにより感光ドラム1の周面が所定の極性・電位に接触帯電処理される。本実施例1において、帯電ローラ2aに対する帯電バイアス電圧は直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。具体的には、直流電圧;−600V,交流電圧;周波数f:1.5kHz,ピーク間電圧:1500Vppの正弦波とを重畳した振動電圧であり、感光ドラム1の周面は−600V(暗電位Vd)に一様に接触帯電処理される。
【0019】
レーザビーム3により感光ドラム1表面に形成された静電潜像は、次工程の現像装置4によりトナー像として顕像化される。本実施例1の場合、感光ドラム1の表面の露光明部にトナーが付着して静電潜像が反転現像される。現像装置4の詳細については後述する。
【0020】
現像装置4により顕像化された感光ドラム1表面のトナー像は、次工程の転写装置5により記録材P上に転写される。本実施例1においては、転写装置5は転写ローラである。転写ローラ5は、感光ドラム1に所定の押圧力をもって圧接され、その圧接ニップ部が転写部である。この転写部に所定の制御タイミングにて記録材Pが搬送される。転写部に給送された記録材Pは、回転する感光ドラム1と転写ローラ5との間に挟持されて、その間転写ローラ5にはトナーの正規帯電極性である負極性とは逆極性である正極性の転写バイアス、本実施例1では+2kVが印加される。これにより、転写部を搬送されていく記録材Pの表面に感光ドラム1の表面のトナー像が順次に静電転写されていく。
【0021】
転写部を通ってトナー像の転写を受けた記録材Pは、次工程の定着装置(不図示)へ搬送され、トナー像の定着処理を受けて画像形成物(プリント、コピー)として出力される。
【0022】
一方、転写装置5により記録材Pに転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー像(所謂転写残トナー)は、感光ドラム1回転方向において転写装置5の下流側に配設されたクリーニング装置6により感光ドラム1表面から除去される。本実施例1では、板状のウレタンゴムからなるゴムブレード6aを、感光ドラム1に対して所定の押圧力をもって圧接してなるブレードクリーニング方式である。クリーニング装置6により表面から転写残トナーを完全に除去された感光ドラム1は、前述の帯電装置2から始める次の画像形成に備える。
【0023】
(現像装置)
次に図1及び図10を参照して、現像装置4について詳しく説明する。
【0024】
現像装置4には、非磁性トナ−と磁性キャリアからなる2成分現像剤が収容されており、2成分現像剤に占める非磁性トナーの重量比はおよそ8wt%である。この比はトナーの帯電量、キャリア粒径、プリンタ100の構成などで適正に調整されるべきものであって、必ずしもこの数値に従わなければいけないものではない。
【0025】
現像装置4は感光ドラム1に対向した現像領域が開口しており、この開口部に一部露出するようにして現像剤担持体としての現像スリーブ4cが回転可能に配置されている。磁界発生手段である固定のマグネット4dを内包する現像スリーブ4cは非磁性材料で構成される。現像動作時には図10の矢印方向に回転し、現像容器4a内の現像剤を層状に保持して現像領域に担持搬送し、感光ドラム1と対向する現像領域に現像剤を供給して、感光ドラム1に形成された静電潜像をトナーにより現像する。静電潜像を現像した後の現像剤は、現像スリーブ4cの回転にしたがって搬送され、現像容器4a内に設けられた搬送路に回収される。また現像容器4aの搬送路には第1の現像剤攪拌・搬送部材としてのスクリュー4e(現像スリーブ4cに近い側 以下「現像スクリュー」と呼ぶ)が配置されている。また、第2の現像剤攪拌・搬送部材としてのスクリュー4f(現像スリーブ4cから遠い側 以下「攪拌スクリュー」と呼ぶ)により現像容器4a内の搬送路を循環し、再度混合攪拌される。現像剤循環の方向は、本実施例1では現像スクリュー4e側で図10の手前側から奥側に向かう方向、攪拌スクリュー4f側では図10の奥側から手前側に向かう方向である。また現像スクリュー4e及び攪拌スクリュー4fは、共に中心軸径が7mm,外形が14mmのものを使用した。
【0026】
図2中の4gは現像剤カートリッジである。現像剤カートリッジは略円筒の形状をしており、プリンタ100本体から容易に脱着可能である。現像剤カートリッジ4gをプリンタ100に手前側から挿入することで、現像剤補給口4hが開口する。現像剤補給口4hには補給スクリューが設けられており、適宜回転することで現像剤カートリッジ4g内の現像剤を現像容器4a内に適量補給する役目を担っている。つまり、画像形成によって消費された分のトナーは、補給スクリュー4hの回転力と重力によって、現像剤カートリッジ4g内から現像剤補給口4hを通過して現像容器4a内に補給される。
【0027】
この補給現像剤に占める磁性キャリアの重量比はおよそ15wt%であるが、特にこの数値に限定されるものではない。即ち現像容器4a内の現像剤に対してトナー量が圧倒的に多く、体積比を考えればトナー中に磁性キャリアが微量混合されているものと考えることもできる。つまり、画像形成によって消費されたトナーを補う際に、微量の磁性キャリアを徐々に補給していくことになる。補給される現像剤の磁性キャリアの比が多くなれば同じ量のトナー補給で磁性キャリアの入れ替わり量が多くなり、現像器1内の現像剤はフレッシュな状態に近づくが、その分磁性キャリアの消費量が多くなる。よって、それぞれのプリンタ100が必要とする画質性能,ランニングコストに応じて適当な混合比を別途定めることが好ましい。
【0028】
また、トナー(及び磁性キャリア)の補給量は補給スクリューの回転数によっておおよそ定められるが、この回転数はトナー補給量制御手段4k(図10(b)参照)によって定められる。トナー補給量制御の方法としては現像剤のトナー濃度を光学的に検知するものや、感光ドラム1上の基準潜像を現像してそのトナー像の濃度を検知する方法などさまざまな方法が用いられている。本実施例1ではトナー補給量制御手段4kとして、現像装置4内の現像剤のトナー濃度を磁気的に検知する方式を採用した。本方式を採用した理由としては、本方式が他の方式と比較してコストや安定性で優れるためであるが、他の方式でも大きな差はなく、プリンタ100の構成に応じて別途定めることが好ましい。
【0029】
次に、本実施例1にて用いられる2成分現像剤について説明する。
トナーは、結着樹脂,着色剤,その他帯電制御剤,ワックス等の添加剤を含む着色樹脂粒子からなる。そして、流動性の改善,帯電量の調整等の必要に応じて、着色樹脂微粒子の表面には、例えばコロイダルシリカ,チタニア等の無機酸化物微粒子が外添されている。本実施例1におけるトナーは、結着樹脂がポリエステル系樹脂からなり、体積平均粒径Dは約7.0μmである。
【0030】
トナーの体積平均粒径Dは、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を使用する。測定法としては、一級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液からなる電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターTA−II型により100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積を測定することにより体積分布を算出する。そして、の測定結果から体積50%のメジアン径をもって体積平均粒径とする。
【0031】
磁性キャリアは、例えば表面酸化或は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金、或は酸化物フェライトなどが好適に使用可能であり、これらの磁性粒子の製造法は特に制限されない。本実施例1における磁性キャリアの体積平均粒径は約30μmである。
【0032】
磁性キャリアの体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置HEROS(日本電子製)を用いて、体積基準で粒径0.5〜350μmの範囲を32対数分割して測定する。そして、チャンネルにおける粒子数を測定し、その測定結果から体積50%のメジアン径をもって体積平均粒径とする。
【0033】
次に、本実施例の特徴的な部分である、現像剤の回収方法について詳しく説明する。
まず、従来の現像剤の回収方法について説明する。図1には従来の画像形成装置の概略構成を、図3には従来の現像装置4の概略構成をそれぞれ示してある。
【0034】
図3(a)で示した現像装置4の現像剤を収容する現像容器4aには、攪拌スクリュー4fが設けられている。この攪拌スクリュー4fと対向するように攪拌スクリュー4fの近傍壁面に現像剤排出口4iが設けてある。現像容器4a内に格納され、画像形成を繰り返すことでトナー樹脂や外添剤などが表面に付着し劣化した磁性キャリアを含む現像剤が現像剤排出口4iより現像容器4a外に排出される。より詳細には図3(b)に示すように、現像剤補給口4hに対して攪拌スクリュー4fによる現像剤搬送方向下流側に現像剤排出口4iを設ける。と共に、現像剤排出口4i近傍では攪拌スクリュー4fによる現像剤の搬送能力を部分的に弱くして現像剤の剤面を他の部分よりも高くする。こうすることで、現像容器に現像剤が補給されることで余剰する余剰現像剤が現像剤排出口4iの下辺を乗り越えて現像容器4a外に排出される。ここで、排出される現像剤の量は、先に述べた現像剤カートリッジ4gより現像容器4aに補給された新しい現像剤と同じ量になるように制御するため、現像剤排出口4iの鉛直方向の高さ及び現像剤排出口4i近傍の攪拌スクリュー4fの形状が決定される。
【0035】
つまり、従来の現像剤排出口4iをもつ現像装置4(図3参照)では、現像剤カートリッジ4gにより補給される現像剤により、現像容器4a内に格納された現像剤の剤面が補給される前に比べて上昇する。そして、現像剤排出口4iの下辺高さを超えた分が重力により現像容器4a外に排出される仕組みであった。しかしながら、このような従来の方式では、前述したように、現像剤の剤面は現像剤の状態(現像剤の流動性や嵩密度)で大きく変化する。このため、例えば現像装置4の使用に伴い現像剤が劣化した場合に現像剤排出口4iから排出される現像剤量が初期に比べて変化してしまう。また、図3(a)中の経路2の破線で示すように、現像剤排出口4iの下辺から現像剤が溢れ出すだけでなく、攪拌スクリュー4fの回転に伴い現像剤が跳ね上げられて現像剤排出口4iから排出されてしまう。このように、排出量が安定しないことにより、現像容器4a内に格納される最適な現像剤量(剤面)に対して、現像剤量が非常に多くなったり、少なくなったりする虞がある。
【0036】
ここで、従来の現像装置4における現像剤劣化と現像剤排出量の関係について説明する。現像剤の劣化には様々なものがあるが、現像剤の流動性に大きく影響するものとしてはトナー表面の外添剤の付着状態変化が挙げられる。外添剤の一部は、先に述べたとおりトナーの流動性を改善するために添加されている。しかしながら、例えば画像比率が非常に低い画像を大量に印字した場合などには、トナーが現像容器4a内に長期間にわたって存在する。それと共に、現像容器4a内の各部位(例えば現像剤規制部)からシェアを受けることにより、外添剤の一部はトナー樹脂内に埋め込まれたり、あるいはトナー表面から離脱したりすることで、トナー表面に存在する外添剤の量が著しく減少してしまう。その結果としてトナーの流動性、更には現像剤の流動性が悪化してしまう。
【0037】
図4には、現像装置4の使用に伴う外添剤のトナー表面への付着状態変化の関係を示す。また、図5には、現像装置4の使用に伴う現像剤の流動性変化の関係を示す。ここで、外添剤のトナー表面への付着状態変化としてはトナーのBET値測定を、現像剤の流動性変化としては現像剤の安息角測定を実施した。
【0038】
まず、図4について説明する。図4は、現像装置4を用いて画像比率が非常に低い画像(0.5%)と、画像比率が一般のオフィス文書画像(5%)のそれぞれを連続して出力した時のトナーのBET値変化を比較したものである。トナーのBET値測定には、カンタクローム社製クワドラソーブSIを用いて測定した。
【0039】
外添剤のトナー表面への付着状態変化として用いたトナーのBET値は、トナー表面の外添剤の付着量を示すものであり、トナー表面に存在する外添剤が少なくなると共にトナーのBET値が小さくなる。つまり、トナー母体表面にBET値の大きい外添剤が外添されることによりトナーとしてのBET値も大きくなるが、外添剤のトナー樹脂内への埋め込みやトナー表面からの離脱によりトナーのBET値が小さくなる。トナー表面から外添剤が完全になくなった場合にはトナーのBET値はトナー母体のBET値と同じになる。ここで、画像比率が5%の画像を連続出力した場合には、画像の出力枚数によらずトナーのBET値がそれほど変化していない。これに対し、画像比率が0.5%の画像を連続出力した場合には、画像の出力枚数の増加に伴いトナーのBET値が大きく減少していることがわかる。
【0040】
図5は、現像装置4を用いて画像比率が非常に低い画像(0.5%)と、画像比率が一般のオフィス文書画像(5%)のそれぞれを連続して出力した時の現像容器4a内に格納された現像剤の安息角変化を比較したものである。現像剤の安息角測定には、ホソカワミクロン社製パウダテスタPT−Sを用いて測定した。
【0041】
現像剤の流動性変化として用いた現像剤の安息角測定は、安息角が低いほど現像剤の流動性が良い(さらさらしている)ことを示すものである。ここで、画像比率が5%の画像を連続出力した場合には、画像の出力枚数によらず現像剤の安息角がそれほど変化していない。これに対し、画像比率が0.5%の画像を連続出力した場合には、画像の出力枚数の増加に伴い現像剤の安息角が大きく増加していることがわかる。
【0042】
以上のことから、例えば画像比率が非常に低い画像を連続して出力した場合には、トナー表面の外添剤がトナー樹脂内への埋め込みやトナー表面からの離脱により少なくなり、同時に現像剤の流動性も大きく悪化する(ぼそぼそになる)ことがわかる。
【0043】
図6は、現像剤の流動性による現像剤排出口4i近傍の現像剤剤面の高さ状態(図中Aで示した破線が現像剤剤面)を示した模式図である。図6(a)は、画像比率0.5%の画像を500枚程度出力したあとの比較的現像剤の流動性が良い状態(安息角43°)の現像剤排出口4i近傍の現像剤剤面の高さ状態である。一方、図6(b)は、画像比率0.5%の画像を10000枚程度出力したあとの比較的現像剤の流動性が悪い状態(安息角55°)の現像剤排出口4i近傍の現像剤剤面の高さ状態である。これらを比較すると、現像剤の流動性が悪い場合(図6(b))の現像剤排出口4i近傍の現像剤剤面が、現像剤の流動性が良い場合(図6(a))の現像剤排出口4i近傍の現像剤剤面に比較して非常に高いことがわかる。前述のとおり、現像剤排出口4i近傍では攪拌スクリュー4fによる現像剤の搬送能力を部分的に弱くしているわけであるが、現像剤の流動性が悪化することにより現像剤排出口4i近傍の現像剤が搬送されずに必要以上に滞留してしまうためである。この結果、現像剤排出口4iから排出される現像剤量は、耐久等に伴い現像剤の流動性が悪化した場合のほうが多くなることがわかる。
【0044】
図7は、現像装置4を用いて画像比率が非常に低い画像(0.5%)と、画像比率が一般のオフィス文書画像(5%)のそれぞれを連続して出力した時の現像容器4a中に格納された現像剤量の変化を比較したものである。上で説明したとおり、画像比率が一般のオフィス文書画像(5%)程度である場合には、現像剤の劣化やそれに伴う現像剤の流動性の悪化が起こらない。このため、現像容器4aに補給された現像剤量とほぼ同じ量が現像剤排出口4iから排出され、現像容器4a内の現像剤の量は大きく変化しない。一方、画像比率が非常に低い画像(0.5%)である場合には、トナーの劣化とそれに伴う現像剤の流動性の悪化が画像出力枚数に伴って促進される。このため、現像容器4aに補給された現像剤量以上の現像剤が現像剤排出口4iから排出され、現像容器4a内の現像剤の量は大きく減少する。出力枚数が6000枚を超えた以降は、現像スリーブ4cに担持される現像剤量も少なくなり、画像濃度の低下やスクリューピッチムラ等の画像不良が発生した。
【0045】
次に、従来の現像装置4における現像剤の流動性と攪拌スクリュー4fによる現像剤の跳ね上げについて説明する。図8は現像容器4a内に格納された現像剤に占めるトナーの重量比に対する現像剤の流動性(安息角)の関係を示したものである。現像剤中のトナーの重量比が小さい場合には現像剤の流動性が良く(さらさらしている)、トナーの重量比が増加するに伴って現像剤の流動性が悪く(ぼそぼそしている)なることがわかる。ここで現像剤のトナーの重量比は、本実施例において初期の時点では8wt%であるが、磁性キャリアが劣化してトナーに対する帯電能力が低下することを起因とする画像濃度ダウンを調整するため、必要に応じて適宜調整している。
【0046】
図9は、現像剤の流動性による現像剤排出口4i近傍の現像剤跳ね上げ状態を示した模式図である。図9(a)はトナー重量比が10wt%(安息角43°)の時の現像剤の跳ね上げ状態を、図9(b)はトナー重量比が4wt%(安息角35°)の時の現像剤の跳ね上げ状態をそれぞれ図中破線で示したものである。これらを比較すると、トナー重量比4wt%時の現像剤の流動性が良い場合には、現像剤排出口4i近傍の現像剤剤面Aがトナー重量比10wt%の場合に比較して若干低くなっている。これに対し、攪拌スクリュー4fによる現像剤の跳ね上げは、トナー重量比4wt%時の場合が多くなっていることがわかる。この結果、現像容器4a内の現像剤中のトナー重量比が小さい場合には、攪拌スクリュー4fの回転に伴う現像剤の跳ね上げが多くなる。このため、現像剤排出口4iの下辺から溢れ出すだけでなく、跳ね上げられた現像剤が現像剤排出口4iを通過して現像容器4a外へと排出される。このため、現像容器4aに補給された現像剤量以上の現像剤が排出され、現像容器4a内の現像剤の量は大きく減少してしまう。
【0047】
上述のように、従来の現像剤の回収方法では、現像剤の劣化や現像剤中のトナー重量比によって現像剤の流動性が変化することで、現像剤排出口4iから排出される現像剤の量が安定しない。結果として現像容器4a内に格納される最適な現像剤量に対して、現像剤量が非常に多くなったり、少なくなったりしてしまう。
【0048】
そこで、本実施例1では、図10に示すように現像剤排出口4i部に現像剤排出部材4jを設けた。現像剤排出部材4jは、現像剤排出口4i部を塞ぐように設けられており、図10(a)中の矢印方向に回転駆動可能である。この現像剤排出部材4jを設けた方式によると、従来の現像剤排出口4i下辺から現像剤が溢れ出すのではなく、現像剤排出部材4jの搬送力により現像剤を現像容器4a内から外部へ排出する。よって、現像剤排出部材4jの回転駆動の有無(オンオフ)により、現像剤の排出のタイミングを任意に選択できる。それと共に、機械的に現像剤を排出するために1回転あたりの現像剤排出量はほぼ一定であり、現像剤の劣化に関係なく安定して現像剤を排出することが可能となる。また、現像剤排出部材は、現像剤排出口4iを塞ぐように設けられていることで、前述の攪拌スクリュー4fによる現像剤の跳ね上げによる排出を防止することが可能となる。
【0049】
以下、現像剤排出部材4jについて詳細に説明する。現像剤排出部材4jとしては、図11(a)に示すようなスポンジローラ、図11(b)に示すブラシローラ、あるいは現像スリーブ4cと同様のマグネットローラ等のローラ状の部材を用いることができる。ここで、マグネットローラを用いた場合には、マグネットローラに担持する現像剤の量をコントロールするための規制部材の追加や、マグネットローラの磁極パターンの調整などが必要となる。また、現像剤排出部材4jとしての構成が複雑になることから、スポンジローラやブラシローラ等を用いることが好ましい。本実施例1では、現像剤排出部材4jとしてブラシローラを採用した。
【0050】
ブラシローラとしては、その製法から大別して2種類存在する。1つめとしては、平板上の基布に対してブラシを形成する繊維(糸)を織り込み、その後適当な大きさにカットし、スパイラル状に芯金に巻きつけてローラ形状に仕上げる織物型のブラシローラである。2つめとしては、芯金に予め接着剤を塗布しておき、最終的にブラシローラを形成する繊維長とほぼ同じ程度の大きさにカッティングした繊維(糸)を静電気力により芯金に突き刺してローラ形状に仕上げる静電植毛型のブラシローラである。それぞれに長所・短所はあるものの、現像剤排出部材4jとしての現像剤排出能力には大差が無いためどちらを選択しても構わないが、本実施例1では前者の織物型のブラシローラを選択した。
【0051】
ブラシローラを形成する繊維(糸)の材質としては、ナイロン,ポリエチレンテレフタレート,ポリイミド,レーヨン,トリアセテート,キュプラなど様々な種類がある。現像剤排出部材4jとしての現像剤排出能力としては、ブラシを形成する繊維(糸)の種類に関わらず大差が無いためどれを選択しても構わないが、本実施例1ではコストなどの面からナイロンを選択した。
【0052】

実際のブラシローラとしては、4mmの芯金に基布厚さ2mm,繊維(糸)の長さ3mmの合計5mmの織物を巻き付けてなる外形14mmのものを用いた。ここで、繊維(糸)の長さは、1mmから5mmの範囲のものが好ましい。これは、繊維(糸)の長さが1mm以下の場合には、ブラシローラ上のブラシの表面積が小さすぎるため、現像剤を十分に担持できず、繊維(糸)の長さが5mm以上の場合には、ブラシの内部にまで現像剤が入り込んでしまう。このため、使用に伴い現像剤の搬送能力が変化(低下)する虞があるためである。
【0053】
また、ブラシローラの織物の条件としては、ブラシを形成する繊維(糸)の太さと植毛密度の2つがある。ブラシを形成する繊維(糸)の太さは、繊維(糸)の材質としてナイロンを用いる場合には、4デシテックスから10デシテックスの範囲のものが好ましい。これは、繊維(糸)の太さが4デシテックス以下の場合には、ブラシローラ上のブラシが柔らかすぎるため、現像剤を十分に搬送できない虞がある。繊維(糸)の太さが10デシテックス以上の場合には、ブラシローラ上のブラシが硬すぎるため、現像剤を十分に担持できない虞があるためである。本実施例1では、繊維(糸)の太さとして6デシテックスのものを用いた。
【0054】
また、植毛密度は、繊維(糸)の太さとして6デシテックスのものを用いる場合には、10k本/cmから50k本/cmの範囲のものが好ましい。これは、植毛密度が10k本/cm以下の場合には、ブラシローラ上のブラシが柔らかすぎるため、現像剤を十分に搬送できない虞があるためである。植毛密度が50k本/cm以上の場合には、ブラシローラ上のブラシが硬すぎるため、現像剤を十分に担持できない虞があるためである。本実施例1では、植毛密度として30k本/cmのものを用いた。
【0055】
ちなみに、現像剤排出部材4jとしてスポンジローラを用いる場合のスポンジローラとしては、例えば発泡体の密度が0.15〜0.35g/cmであり、且つセル数が5〜50個/cmのウレタン発泡体が好ましい。このウレタン発泡体を、4mmの芯金に肉厚5mmで巻き付けてなる外径14mmのものを用いることが好ましい。ここで、セル数の範囲が限定される理由としては、以下の理由による。セル数が5個/cm以下の場合には、セルの大きさが大きくなりすぎるため、ウレタン発泡体の内部にまで現像剤が入り込んで目詰まりを起こしてしまい、使用に伴い現像剤排出部材4jとしての現像剤搬送能力が低下する虞がある。また、セル数が50個/cm以上の場合には、セルの大きさが小さくなりすぎるため、ウレタン発泡体の表面で現像剤を十分に担持できず、現像剤排出部材4jとしての現像剤搬送能力を安定して実現することができない虞があるためである。
【0056】
図12に、現像剤排出部材4jとしてブラシローラを用いた場合の現像剤排出口4i近傍の構成図を示す。現像剤排出口4iの上下辺には、シール部材4lが設けられている。シール部材4lとしては、モルトプレーン,モルトプレーンの表面に高密度ポリエチレンやPOM等が貼り付けられたもの、あるいはフェルト等を用いることが出来る。本実施例1では、シール部材4lとして合計の厚みが2mmとなるモルトプレーンの表面に高密度ポリエチレンを貼り付けたものを用いた。また現像剤排出口4iには、厚みが3mmのフェルト部材(不図示)が設けられている。
【0057】
以上のように、現像容器4aの現像剤排出口4iの開口が高さ17mm,幅30mmである。これに対し、現像剤排出口4iの上下辺には厚み2mmのシール部材4lを設け、左右辺には厚み3mm部材を設けることにより、実際の開口は高さ13mm,幅24mmとなる。一方、現像剤排出部材4jは、高さ(外径)14mm,幅26mmであり、現像剤排出口4iの上下辺ではブラシがシール部材4lに0.5mm侵入しており、左右辺では現像剤排出部材4jがフェルト部材に対して1mm侵入している。このようにすることで、現像容器4a内部に格納された現像剤が、現像剤排出部材4jの停止時に現像剤排出口4iと現像剤排出部材4jの間から漏れ出すことを防止している。
【0058】
ここで、現像剤排出部材4jの現像剤排出口4iの上下辺に設けられたシール部材4lに対する侵入量は0mmから2mmの範囲であることが望ましい。これは、現像剤排出部材4jがシール部材4lから離れている場合には現像剤の漏れ出しが問題となる。現像剤排出部材4jがシール部材4lに2mmよりも侵入している場合には、現像剤排出部材4jのブラシに現像剤が詰まって回転駆動できない虞があるためである。また、現像剤排出部材4jの現像剤排出口4iの左右辺に設けられたフェルト部材に対する侵入量は0.5mmから2.5mmの範囲であることが望ましい。これは、現像剤排出部材4jのフェルト部材への侵入量が0.5mm未満である場合には現像剤の漏れ出しが問題となり、2.5mm以上の場合には現像剤排出部材4jに対する負荷が大きくなり、現像剤排出部材4jの回転駆動ができない虞があるためである。
【0059】
但し、現像剤排出部材4jがシール部材4lの間に若干の隙間があっても、トナーはある程度の流動性をもっているため、隙間よりも剤面が高くなっても現像剤量が直ちに排出されない、もしくは少量の現像剤しか排出されなければ隙間があってもよい。
【0060】
更に、現像剤排出部材4jとしてのブラシローラが現像容器4a内部から搬送してきた現像剤を回収するために、現像剤回収部材4mとして厚さ200μmのPETシートがブラシローラのブラシに対して一定の角度で1.0mm侵入するように当接している。
【0061】
次に、現像剤排出部材4jによる現像容器4a内部からの現像剤排出タイミングについて説明する。本実施例1の現像剤排出部材4jを設けた現像装置4では、従来例の現像剤排出口4iからの漏れ出し方式とは異なり、現像剤を任意のタイミングで排出することが可能となる。よって、図14に示すように、現像剤カートリッジ4gから現像容器4a内に補給された現像剤量を画像形成装置100内に設けられた制御部としてのCPUでカウントする。そして、カウントが所定量に達する毎に現像剤排出部材4jを回転駆動することにより現像容器4aから現像剤を排出することができる。ここで、現像剤カートリッジ4gから現像容器4a内に一定量補給されてから、現像剤排出部材4jでまとめて排出する。この理由としては、現像剤排出部材4jの駆動時及び停止時に排出量が不安定になるため、まとめて排出した方が排出される現像剤の量が安定しているためである。本実施例1では、現像剤カートリッジ4gから積算で約3gの現像剤(磁性キャリアの重量比は15wt%)が補給された時点で、現像剤排出部材4jにより約0.5g(磁性キャリアの重量比は約92wt%)排出するように制御した。ここで、本実施例1で用いた現像剤排出部材4jは、1回転あたり約0.05gの現像剤を排出することができ、現像剤排出部材4jの回転数を60rpmに設定した場合の現像剤排出時間は約10秒である。
【0062】
図15を用いて、現像剤排出部材4jによる現像剤排出タイミングについて説明する。図15aに示すように、攪拌スクリュー4fによる現像剤搬送方向に対して、現像剤補給口4h下流側に現像剤排出口4iが設けられている場合が一般的である。これは、現像剤補給口4hから補給された現像剤が、現像容器4a内にもともと存在する現像剤と攪拌スクリュー4fにより十分混合させる必要があるためである。そのため、現像剤補給口4hを攪拌スクリュー4fによる現像剤搬送方向に対してなるべく上流側に配置する必要がある。この場合、現像剤補給口4hで補給されたばかりの現像剤が、現像剤排出部材4jによりすぐに排出される虞がある。よって、本実施例1では、現像剤補給口4hから補給された直後の現像剤が現像剤排出口4iと対向する対向部を通過した後に現像剤排出部材4jを回転駆動して現像剤を排出することとした。つまり図15(b)に示すように、現像剤補給口4hから補給された最後の現像剤が、T秒後に現像剤補給口4hを通過する場合、現像剤補給口4hに設けられた補給スクリューの駆動停止後T秒後に現像剤排出部材4jの駆動を開始するようにした。
【0063】
ここで、現像剤排出タイミングは現像剤の補給動作が行なわれない画像形成の前回転動作及び後回転動作タイミングや、画像形成時に一時的に画像形成を中断(割り込みタイミング)して実施しても構わない。しかし、大量部数を連続して出力する場合には前回転動作及び後回転動作タイミングが発生せず、また一時的に画像形成を中断(割り込みタイミング)では生産性を低下させてしまう。このため、上記で示した通常の画像形成時に現像剤の排出を行なうことが好ましい。
【0064】
図13は、画像比率が非常に低い画像(0.5%)画像を連続して出力した時の現像容器4a中に格納された現像剤量の変化を、本実施例1の現像装置4と従来の現像装置4で比較したものである。この結果から、画像比率が非常に低い画像(0.5%)画像を連続して出力し、現像剤劣化による現像剤の流動性が変化した場合でも、本実施例1の現像装置4を用いることで、現像容器4a内の現像剤量はほとんど変化していないことがわかる。
【0065】
以上説明したように、本実施例1による画像形成装置によって、以下の効果を奏する。即ち、現像剤の流動性の変化に伴う現像剤排出口から排出される現像剤量の変化を抑制できる。また、攪拌スクリューの回転に伴う現像剤が跳ね上げによる現像剤の排出を原因として発生する現像装置内に格納された現像剤量が変化することを抑制することが可能となる。更には、現像装置内に格納された現像剤量が変化することで発生する現像装置の現像剤排出口以外の部分から現像剤が漏れ出すといった問題を抑制できる。そして、画像濃度の低下やスクリューピッチムラ等の異常画像が発生することを防止して、長期にわたり安定した画像形成装置を提供することが可能となる。
【0066】
(実施例2)
次に、本発明に係る画像形成装置の実施例2について説明する。
本実施例2のプリンタ100の基本構成は、実施例1のものと同様であり、詳細な説明を省略し、本実施例2の特徴的な部分について以下に説明する。
【0067】
図16に本実施例2の現像装置4の概略構成を示す。図16(a)に示すとおり、本実施例2では現像剤排出口4i及び現像剤排出部材4jを、現像容器4aの攪拌スクリュー4f下側の底面に設けたことを特徴とする。実施例1で図12を用いて説明したように、本発明の現像剤排出口4i及び現像剤排出部材4jの構成をとることで、現像容器4a内の現像剤の漏れに対する優れたシール性を発揮することが可能である。そのために、本実施例2のように現像容器4a底面に現像剤排出口4i及び現像剤排出部材4jを設けた場合でも、現像容器4a内部から現像剤が漏れ出すことはない。
【0068】
次に、現像剤排出口4i及び現像剤排出部材4jを現像容器4aの底面に設けたことによる利点について説明する。図17は、現像剤排出口4iと現像剤排出口4i近傍の攪拌スクリュー4fの形状について示した模式図である。図17(a−1)及び(a−2)は、現像容器4aの側面に現像剤排出口4iを設けた場合の、上方向及び横方向から現像剤排出口4i近傍の状態を示す模式図である。現像剤排出口4iを現像容器4a側面に設けた場合には、攪拌スクリュー4fによる現像剤搬送方向に対して直角方向に現像剤を排出することとなり、現像剤排出部材4jの回転に伴う作用力によるところが大きい。このため、現像剤排出部材4jによる現像剤の排出量を安定化させるためには、図17(a−1)及び(a−2)に示すように攪拌スクリュー4fの一部にリブを設け、攪拌スクリュー4fの現像剤の搬送力を部分的に低下させるようにする必要がある。しかしながら、攪拌スクリュー4fのリブの部分では、現像剤が滞留して密度が増加すると共に、リブによるストレスが現像剤に加わり、現像剤の劣化を促進させる虞がある。
【0069】
一方、本実施例2の現像剤排出口4iを現像容器4a底面に設けた場合には、攪拌スクリュー4fによる現像剤搬送方向に対して鉛直方向下側に現像剤を排出することとなり、現像剤排出部材4jの回転に伴う作用力に加えて現像剤の重力が働く。このため、攪拌スクリュー4fにリブを設けなくても、現像剤排出部材4jによる現像剤の排出量は安定させることができる。また、攪拌スクリュー4fにリブを設けなくても良いことで、現像剤排出口4iを現像容器4a側面に設けた時のような現像剤の劣化の促進も防止することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施例2による画像形成装置によって、実施例1に比較して現像剤排出部材によって排出される現像剤量を長期にわたってより安定させることが可能となる。
【0071】
(実施例3)
次に、本発明に係る画像形成装置の実施例3について説明する。
本実施例2のプリンタ100の基本構成は、実施例1のものと同様であり、詳細な説明を省略し、本実施例3の特徴的な部分について以下に説明する。
【0072】
図18に本実施例3の現像装置4の概略構成を示す。本実施例3では、現像剤排出口4i及び現像剤排出部材4jの配置は実施例2と同様であるが、現像剤排出口4i及び現像剤排出部材4jの周囲に現像剤剤面高さ検知手段4nを有することを特徴とする。より具体的には、現像剤排出口4i及び現像剤排出部材4jの近傍の現像容器4a側面に、現像剤剤面高さ検知手段4nを設けている。現像剤剤面高さ検知手段4nとしては、現像剤中の磁性キャリアの透磁率を検知するセンサを用いた。このセンサは、前述した現像装置4内の現像剤のトナー濃度を磁気的に検知するトナー補給量制御手段4kと同じものである。現像剤剤面高さ検知手段4nは、そのセンサ面の鉛直方向中央部が、初期の現像剤剤面と同じ高さになるように現像容器4a側面に取り付けられている。そして、現像剤の剤面が高くなった場合には、現像剤剤面高さ検知手段4nのセンサ面全体を現像剤(磁性キャリア)が覆うため、センサの出力が高くなる。逆に現像剤の剤面が低くなった場合には、現像剤剤面高さ検知手段4nのセンサ面には現像剤(磁性キャリア)が存在しないため、センサの出力が低くなる。つまり、現像剤剤面高さ検知手段4nのセンサ面を覆う現像剤(磁性キャリア)の量を検知することで、現像剤の剤面高さを算出している。
【0073】
次に、現像剤剤面高さ検知手段4nの検知結果に対する現像剤排出部材4jの駆動制御について説明する。図19に現像剤排出部材4jの駆動制御のフローチャートを示す。
ステップ1;CPUが、図20に示す現像剤供給スクリューモーターの回転数をカウントすることにより、現像剤カートリッジ4gから現像容器4a内に補給された現像剤の総量の見積もりを行なう。
【0074】
ステップ2;CPUは、ステップ1で算出された現像剤供給スクリューモーターの回転数(補給された現像剤の総量)が一定量(本実施例3では3g)になった信号を受け取る。この時点で、CPUは、図20に示す現像剤剤面高さ検知手段4nのセンサ基板より出力される電圧値(1Vから4V)から現像剤の剤面高さを検知する。
【0075】
ステップ3;ステップ2で検知された電圧値(剤面高さ)が、予めCPUに格納された下限閾値(剤面高さの許容最小値,本実施例3では2V)よりも小さい場合には、現像剤剤面が低い。(現像容器4a内の現像剤量が少ない)そこで、CPUは、ステップ2で検知された電圧値(剤面高さ)が、下限閾値よりも小さい場合には図20に示す現像剤排出部材駆動モーターの回転数をダウンさせる。(本実施例3では60rpmを30rpmにダウン)こうして、現像剤排出部材4jによる現像剤の排出量を減少させる。
【0076】
ステップ4;ステップ3で下限閾値よりも大きい場合には、CPUによりステップ2で検知された電圧値(剤面高さ)が、予めCPUに格納された上限閾値(剤面高さの許容最大値,本実施例3では4V)よりも大きい場合には、現像剤剤面が高い。(現像容器4a内の現像剤量が多い)このため、CPUは、図20に示す現像剤排出部材駆動モーターの回転数をアップ(本実施例3では60rpmを90rpmにアップ)させ、現像剤排出部材4jによる現像剤の排出量を増加させる。
【0077】
ステップ5;ステップ3及びステップ4の閾値範囲内である場合には、CPUは図20に示す現像剤排出部材駆動モーターの回転数(本実施例3では60rpm)を変化させない。
【0078】
ステップ4及びステップ5で回転数を変化させた場合でも、現像剤排出部材4jの回転時間は同じとしている(本実施例3では10秒間)。以上のような制御を行なうことで、現像容器4aの現像剤剤面(現像剤量)を初期と同じになるように調整することが可能となる。
【0079】
ここで、現像剤排出部材4jの回転数を変化させるのでなく、回転時間を変化させても良い。しかしながら、現像装置4a内の現像剤の量が多い場合には、回転時間が長くなってしまい、現像剤の排出時間が終了する前に現像剤の補給動作が開始されて、補給現像剤が補給された直後に排出される虞がある。このため、上記で示した現像剤排出部材4jの回転数を変化させることが好ましい。
【0080】
以上説明したように、本実施例3による画像形成装置によって、実施例1及び実施例2に比較して、現像装置内に格納された現像剤量や現像剤剤面を長期にわたってより安定させることが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 感光ドラム
2 帯電装置
3 レーザユニット
4 現像装置
4a 現像容器
4b 現像スリーブ
4c マグネットローラ
4d 現像剤規制ブレード
4e 現像スクリュー
4f 攪拌スクリュー
4g 現像剤カートリッジ
4h 現像剤補給口
4i 現像剤排出口
4j 現像剤排出部材
4k トナー補給量制御手段
4l シール部材
4m 現像剤回収部材
4n 現像剤剤面高さ検知手段
5 転写装置
6 感光ドラムクリーニング装置
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、トナーとキャリアを有する現像剤を担持する現像剤担持体を備え、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置と、前記現像装置内の現像剤を搬送する搬送手段と、前記搬送手段が設けられた搬送路に設けられ、前記現像装置内の余剰現像剤を排出するための排出口と、を有する画像形成装置において、
前記排出口を塞ぐように回転可能に設けられ、回転することで前記現像装置内の現像剤を前記排出口から排出させるローラ状の排出部材と、前記排出部材の駆動のオンオフを制御する制御部と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記排出口は、前記現像装置の現像剤を収容する容器の底面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記現像装置に補給される現像剤量が所定量に達した場合に前記排出部材を駆動するように前記排出部材の駆動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記現像装置に補給された直後の現像剤が前記搬送手段によって前記排出口と対向する対向部を通過している期間には、前記排出部材の回転駆動を停止するように前記排出部材の駆動を制御することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記排出口の周囲の現像剤の剤面高さを検知する検知手段を有し、前記制御部は、該検知手段の出力に応じて前記排出口の周囲の剤面高さが高いほど前記排出部材の回転数を高くする、あるいは回転時間を長くするように前記排出部材の駆動を制御することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記排出部材はブラシローラであり、前記排出部材の表面のブラシが前記排出口の枠に接触していることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−242783(P2012−242783A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115861(P2011−115861)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】