画像形成装置
【課題】記録媒体の違いによる中間色の色再現性の違いを小さくし、異なる記録媒体間でも安定した色再現性を確保する。
【解決手段】本発明は、カラー画像を併置配置作像にて形成する画像形成装置において、カラー画像の中間色の形成を記録媒体の光拡散特性値に応じて加法混色と減法混色との割合を変化させ、記録媒体200の彩度を補正する。記録媒体の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更は、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行う。
【解決手段】本発明は、カラー画像を併置配置作像にて形成する画像形成装置において、カラー画像の中間色の形成を記録媒体の光拡散特性値に応じて加法混色と減法混色との割合を変化させ、記録媒体200の彩度を補正する。記録媒体の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更は、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加法混色と減方混色とでフルカラー画像を再現する並置配置の画像形成方法を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電子写真印刷、インクジェット印刷ならびにオフセット印刷におけるフルカラー印刷では、まず印刷対象のカラー原稿画像を色分解してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(以下「C、M、Y、BK」と記す)の版を作成し、印刷における色再現(特に中間色の色再現)はシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3原色の重ね合せ(減法混色)により実現される。例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の印刷は、それぞれ、MとY、CとY、CとMの積層印刷で実現している。また、カラー印刷においてはC、M、Yの現像剤の使用量の低減や印刷画像の調子(色調および濃度諧調)の強調などの観点から、墨版(BK版)を使用することが一般に知られている。
【0003】
中間色再現の方法には、上記減法混色以外にC、M、Yの画像を併置配置し、加法混色にて実現する方法がある。この併置配置印刷方式は、各色の画像を重ねないため、全ての色を単層で表現するため印刷に要する現像剤やインク量を少なく出来る特長があり、電子写真方式のプリンタとしてはOce社CPS700が本方法を採用している。
【0004】
一方、併置配置印刷における加法混色での問題は、各色を重ねないため色彩度が低くなり、色再現域が小さくなることである。この併置配置印刷における再現域を拡大させる方法として、ドットマトリクス内のドットの個数、配置を変えて中間調表現を行なう方法が特許文献1で開示され、高彩度の単色ブルートナーとCMYトナーの4色トナーの併置配置印刷方法が特許文献2で開示されている。また、各色ドットの一部を物理的に混ぜ合わせ、減法混色により彩度向上を図る方法が特許文献3で開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
併置配置作像の特徴としては、用紙等の記録媒体の光拡散特性の違いにより色再現域が異なり、特に中間色の色相に違いが生じることが挙げられる。これは、併置配置作像による混色では各単色画像からの反射光による加法混色の他に、異なる色境界部では記録媒体中の光拡散に起因する減法混色も生じるからである。この記録媒体中の光拡散に起因する減法混色の程度は記録媒体の光拡散特性により異なり、特に併置配置作像ではその色再域への影響が大きくなる。そのため、上述したような特許文献1〜3に記載の併置配置作像に関する手法では、使用する記録媒体の違いにより色再現性(特に色彩度)が大きく変化してしまう課題がある。
本発明は、併置配置作像を用いた画像形成において、使用する記録媒体の光散乱特性の違いにより生じる色変動、特に中間色の色彩の不安定性に関することを課題とし、使用する記録媒体の光散乱特性に応じた作像条件を設定することで、安定した色再現性を提供する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3原色およびブラックの現像剤を用いてカラー画像を併置配置作像にて形成するものであり、カラー画像の中間色の形成は、現像剤の内2色を用い、その2色の加法混色と減法混色を併用して中間色を実現し、且つ使用する記録媒体の光拡散特性に応じて加法混色と減法混色との割合を変化させることを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、記録媒体の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更を、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行うことを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を備え、計測手段で記録媒体の光拡散特性を印刷実行前に計測し、計測手段による計測値に基づきカラー画像の中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率を設定することを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段で計測した記録媒体の光拡散特性の計測結果を記憶する記憶部を有することを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段を有することを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段と記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を備え、色相計測測色手段による色相計測および計測手段で計測した記憶媒体の光拡散特性に応じた中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の補正を設定印刷量毎に行うことを特徴としている。
【0007】
本発明を画像形成方法として捉えると次のようになる。
画像形成方法としては、少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3原色およびブラックの現像剤を用いてカラー画像を併置配置作像にて形成するものであり、カラー画像の中間色の形成を、現像剤の内2色を用い、その2色の加法混色と減法混色を併用して中間色を実現し、且つ使用する記録媒体の光拡散特性に応じて加法混色と減法混色との割合を変化させる。
画像形成方法において、記録媒体の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更を、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行うようにしてもよい。
画像形成方法において、記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を画像形成装置が備えている場合には、計測手段で記録媒体の光拡散特性を印刷実行前に計測し、計測手段による計測値に基づきカラー画像の中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率を設定してもよい。
画像形成方法において、画像形成装置が記憶部を備えている場合には、記録媒体の光拡散特性を装置外部の計測手段で計測した記録媒体の光拡散特性の計測結果を記憶部に記憶して、そのデータを用いても良い。
画像形成方法において、色相計測測色手段を画像形成装置が備えている場合、この色相計測測色手段で、カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測してもよい。
画像形成方法において、カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段と記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を画像形成装置が備えている場合、色相計測測色手段による色相計測および計測手段で計測した記憶媒体の光拡散特性に応じた中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の補正を設定印刷量毎、あるいは所定時間毎に行っても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カラー画像の中間色の形成は、現像剤の内2色を用い、その2色の加法混色と減法混色を併用して中間色を実現し、且つ使用する記録媒体の光拡散特性に応じて加法混色と減法混色との割合を変化させるので、使用する記録媒体の種類による色再現範囲、特に中間色の差異を小さくでき、安定した色再現性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の一形態を示す概略図である。
【図2】(a)は完全併置配置印刷物の光反射経路の説明図、(b)は(a)の平面視図である。
【図3】(a)は色ずれが生じた際の完全併置配置印刷物の光反射経路の説明図、(b)は(a)の平面視図である。
【図4】(a)は本形態における隣接ドットの一部重ね合せが生じた際の完全併置配置印刷物の光反射経路の説明図、(b)は(a)の平面視図である。
【図5】光拡散特性計測手段の概略図である。
【図6】ビームプロファイルの計測例を示す図である。
【図7】ドット面積率を50%〜100%で変化させた際の中間色画像(評価パターン)の断面概略図である。
【図8】記録媒体の光拡散特性係数Nと評価チャートの彩度Cの計測結果例を示す図である。
【図9】ドット面積率と彩度の関係を示す図である。
【図10】光拡散特性計数Nとドット印刷面積率Xの関係を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の一形態を示す概略図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の一形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示す画像形成装置は、タンデム型電子写真方式の画像形成装置を示す。符号1は、画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、符号2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、符号3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、符号4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、符号7は転写紙等の記録媒体200が収容される給紙部、符号9は記録媒体200の搬送タイミングを調整するレジストローラ、符号11Y,11M,11C,11BKは、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される像担持体である感光体ドラム、符号12は感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上をそれぞれ帯電する帯電部、符号13は感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上に形成される静電潜像をそれぞれ現像する現像部、符号15は感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上の未転写トナーをそれぞれ回収するクリーニング部をそれぞれ示す。
【0011】
感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK、各帯電部13、各現像部14及び各クリーニング部15は、色毎のケーシング内にそれぞれ組み込まれて各色のプロセスユニットをそれぞれ構成している。各プロセスユニットの下方には、各感光体ドラムと対向するように、複数のローラに巻き掛けられて転写体である転写ベルト17が配置されている。転写ベルト17は複数色のトナー像が記録媒体200上に重ねて担持されるように記録媒体200を搬送するものである。転写ベルト17の内側には、各感光体ドラムと対向する位置に、感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上に形成されたトナー像を記録媒体200上に重ねて転写する転写部材となる転写バイアスローラ14がそれぞれは位置されている。
【0012】
符号16は転写ベルト17を清掃する転写ベルトクリーニング部、符号19は記録媒体200上のトナー像(未定着画像)を定着する定着装置を示す。本形態において、定着装置19には電磁誘導加熱方式が採用されているが、他の加熱方式のものであってもよい。
【0013】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、周知のカラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして、図示しない周知の画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ対応する感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上に向けて発せられる。
一方、4つの感光体ドラム11Y,11M,11C,11BKは、それぞれ図1の時計方向に回転している。そして、各感光体ドラムの表面は、各帯電部12との対向部で、それぞれ一様に帯電される(帯電工程)。こうして各感光体ドラム上には、帯電電位が形成される。帯電された各感光体ドラム表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
【0014】
書込み部2からは、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光の解像度は2400dpiで、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程)。
【0015】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Y表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11M表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11C表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BK表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0016】
各色の静電潜像が形成された各感光体ドラム表面は、それぞれ現像部13との対向位置に達し、各現像部13から各感光体ドラム上に各色のトナーが供給されて、各感光体ドラム上の潜像がそれぞれの色のトナーで現像される(現像工程)。
現像工程後の感光体ドラム11Y,11M,11C,11BKの表面は、それぞれ、転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、転写バイアスローラ14が転写ベルト17の内周面に当接するように設置されている。このため転写バイアスローラ14の位置で、転写ベルト17上の記録媒体200に、感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上に形成された各色のトナー像が、順次転写される(転写工程)。
【0017】
転写工程後の感光体ドラム11Y,11M,11C,11BKの表面は、それぞれクリーニング部15との対向位置に達し、クリーニング部15で各感光体ドラム上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程)。クリーニング工程を終えた各感光体ドラムの表面は、不図示の除電部を通過して電位がリセットされる。この処理を終えることで感光体ドラム11Y,11M,11C,11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0018】
他方、感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上の各色のトナーが転写(担持)された記録媒体200は、図中の矢印方向に走行して、定着装置19と転写ベルト17の間に配置されている分離チャージャ18との対向位置に達する。そして、分離チャージャ18との対向位置で、記録媒体200に蓄積された電荷が中和されて、トナーのちり等を生じさせることなく記録媒体200が転写ベルト17から分離される。
【0019】
記録媒体200が分離された転写ベルト17の表面は、転写ベルトクリーニング部16の位置に達し、転写ベルト17上に付着した付着物が転写ベルトクリーニング部16によって清掃されて回収される。
【0020】
転写ベルト17上に搬送される記録媒体200は、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されたものである。詳しくは、記録媒体200を収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された記録媒体200が、不図示の搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達した記録媒体200は、タイミングを合わせて、転写ベルト17の位置に向けて搬送されて、順次各色のトナー像が転写される。フルカラーのトナー像が転写された記録媒体200は、転写ベルト17から分離された後に定着装置19に導かれる。定着装置19では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像(トナー)が記録媒体200上に定着される。定着工程後の記録媒体200は、不図示の排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
(第1の実施形態)
【0021】
ここで、本発明におけるフルカラー画像形成では、転写ベルト17上へのC,M,Y,Kのトナー像を併置に配置して形成する。但し、図2(b)に示すような全く各色トナー像(画像面201,202)の重ね合せを行なわない完全併置作像では、図2(a)に示すように、画像面201,202に入射される光203の殆どが単色トナー層のみからの反射光204,205のみとなり、隣接する色間を伝播した後に画像面から返ってくる光206の量は微量となる。よって併置配置作像での混色は、反射光204,205による加法混色が大半を占めるため、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)などの中間色の彩度が低くなる。また、完全併置作像ではC,M,Y,Kのトナー像間に色ずれが生じた場合、図3(a)、図3(b)に示すように支持体(記録媒体)301が露出してしまい、露出した支持体301からの反射光302の影響を受け、色変動が大きくなる。
【0022】
そのため、本発明におけるフルカラー画像形成では、図4(a)、図4(b)に示すように、各色ドットの隣接部が一部重なるように各色の構成ドットサイズを大きく設定した。その結果、色隣接部401はCトナーとMトナーとの重ね構造となり、そこからの反射光402はより高彩度の減法混色光となるため、この減法混色分を、上記した単色トナーからの反射光204,205の加法混色に加えることで、中間色の彩度を増大することができ、その結果、フルカラー画像の色再現域を拡大することができる。更に、図4の色隣接部401ように隣接部を重ね合せることで、多少の色ずれが生じた場合でも、支持体(記録媒体)200が露出することを防止でき、安定した色再現性が確保できる。
【0023】
ここで、図4に示したように、併置配置作像では、各色トナー像の隣接部401において支持体である記録媒体中の光拡散に起因する減法混色による発色が存在する。但し、この減法混色量は、記録媒体の光拡散特性に大きく変化するため印刷に使用する画像支持体(記録媒体)200の種類により、中間色の色相(特に彩度)が異なる。
【0024】
本形態では、この記録媒体200の光拡散特性は記録媒体に垂直に照射したレーザ光の拡散光(影)の大きさ(径)と記録媒体を介さないレーザスポット径より算出した。具体的には、図5に示すような計測手段となる用紙光拡散測定装置500を用いる。用紙光拡散測定装置500は、レーザ光501(波長:780nmの半導体レーザ)と14ビットデジタルCCD502(以下「CCD502」と記す)とが互いに対向配置されていて、両者の間に記録媒体200を配置するように構成されている。CCD502は記録媒体200の光拡散特性を計測するビームプロファイル計測手段503と接続されている。
【0025】
図6は、ビームプロファイル計測手段503で出力されるビームプロファイルの例を示す。レーザ光501とCCD502の間に記録媒体200が無い状態のビーム強度プロファイル601と、レーザ光501とCCD502の間に記録媒体200を配置した際に記録媒体200を透過したビーム光強度プロファイル602を計測し、スポット径の比により記録媒体200の光散乱特性を定義した。ここで、図6においてレーザスポット径X1と用紙透過スポット径X2はCCD502で検出した光強度のピーク値の1/e2(13.5%)レベルの光強度の幅と定義し、記録媒体200の光拡散係数Nはその比のX2/X1とした。
【0026】
本形態では記録媒体200にはコート紙(用紙A)、上質紙(用紙B)、再生紙(用紙C)の3種類の用紙を用い、色再現域計測のためのカラーチャート(C,M,Y,K、R、G、Bのベタパッチ)印刷を行った。なお、カラーチャート印刷の中間色R,G,Bは、単色C,M,Yのチェッカーフラッグパターンの併置配置印刷で作製した。チェッカーフラッグパターンの各色構成ドットは2400dpi、ドットサイズは4ドット×4ドットとした。また、上記中間色パターンは、形成する2色のドット面積比率を50%、60%、70%、80%、90%、100%の6種類のパターンを印刷した。
【0027】
本形態では中間色の補正の一例として、ブルー(MトナードットとCトナードットとの併置配置で作成したB)の用紙種間の色補正について述べる。
【0028】
図7は中間色ブルーBの上記6種類の印刷パターンの断面模式図である。図7においてドット面積比率50%が完全併置配置、ドット面積比率100%が完全重ね合せ配置の印刷となる。用紙A,用紙B、用紙Cを用いて印刷した上記評価チャートの用紙の光拡散特性係数Nと評価チャートの彩度Cの計測結果を図8に示す。また、図9は用紙A,用紙B、用紙Cの用紙の中間色B:ブルーの彩度Cとドット面積比率の関係を示す図である。図8、図9に示すように、中間色の彩度Cは、各色間重ね合せがない併置配置作像(構成する2色の印刷面積比率は各々50%)の場合、使用する記録媒体200の光拡散特性係数Nが大きいほど、彩度Cは大きくなる。
【0029】
つまり、使用する記録媒体200の種類によりその中間色の色目(彩度)が異なっている。また、構成する2色の印刷面積比率をそれぞれ大きくすると、彩度は増加することがわかる。これは重ね合せ部領で生じる減法混色域が増えたためと考えられる。また、2色の印刷面積比率が80%の以上の場合は、紙種の違いによる色差はほとんど無くなり、印刷面積比率が50%から80%までの彩度は略線形的に変化することがわかる。
【0030】
上記データを用い、2次多項近似によりブルーBの彩度Cを30、35、40を得る際の記録媒体200の光拡散特性計数NとC、Mのドット印刷面積率Xの関係で整理すると図10に示す関係となる。
【0031】
例えば、最も光拡散特性が異なる用紙A(N=0.51)と用紙C(0.89)での中間色ブルーBの彩度Cを35にする場合には、CとMの印刷面積率Xを用紙Aの場合には56%、用紙Cの場合には約63%に設定することになる。用紙Aと用紙Cをそれぞれ上述した印刷面積比で印刷した結果、中間色Bの彩度Cは用紙Aが35.08、用紙Cの彩度は35.02となり略等しい値となった。また、同様の方法により、レッド:Rとグリーン:Gの彩度を補正も可能であった。
【0032】
本形態では、用紙光拡散測定装置500を、例えば図1に示す画像形成装置のレジストローラ9の上流または下流側に設置することで、画像形成装置内で記録媒体200に用いる各用紙全数の光拡散特性の計測が可能となる。そして、記録媒体200の光拡散特性を印刷実行前に用紙光拡散測定装置500で計測し、用紙光拡散測定装置500による計測値に基づきカラー画像の中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率を設定する。
【0033】
以上本形態の画像形成方法および画像形成装置によれば、使用する記録媒体200の光拡散特性が異なる場合でも、記録媒体200の光拡散特性係数Nを計測し、その係数に応じた印刷面積率を設定することで、紙種間の中間色の色再現性(彩度)の違いを補正することが可能となる。このため、使用する記録媒体200の種類による色再現範囲、特に中間色の差異を小さくできて、安定した色再現性を確保できる。また、記録媒体200の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更を、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行うことで、光学条件の変更無しに、コントローラでの画像処理により簡易に記録媒体200の種類による色再現範囲差の補正が可能となる。
【0034】
本形態では、使用する記録媒体自体の光学特性を計測するため、例えば同一紙種におけるロット間での光学特性の違いを計測することが可能となり、安定な色再現範囲差の補正が可能となる。
(第2の実施形態)
【0035】
図5に示す用紙光拡散測定装置500を画像形成装置に設置してもよいが、用紙200の光拡散特性は同種の記録媒体であれば略同じである。そこで、本形態では、図11に示すように、上記用紙拡散特性係数Nの測定を、画像形成装置外に設置した用紙光拡散測定装置500で行い、測定した用紙光拡散係数Nの情報を、画像形成装置に設けた記憶部となる記録媒体データベース600に予め記憶しておくこととした。その結果、印刷開始前の上記色再現補正をより短時間で行うことが可能となった。また、本形態の構成では、画像形成装置に用紙光拡散測定装置500が含まれないため、装置の大幅なコストダウンが可能となる。
(第3の実施形態)
【0036】
本形態では、図12に示すように、画像形成装置内の定着装置19の下流に、中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンの色相計測測色手段700を配置し、図6に示す様な画像面積率と彩度のデータの自動計測を行ない、定期的(2000頁印刷毎)に実施形態1で示した方法により印刷面積率Xを補正した。その結果、現像剤や各感光体ドラムの経時劣化や温度、湿度などの印刷環境が変化した場合にも、高い精度での中間色の補正が可能であることを確認した。
用紙光拡散測定装置500と色相計測測色手段700を1つの画像形成装置内に設置して、記録媒体の光拡散特性と評価パターン(色相計測)をそれぞれ計測し、計測経過に応じて中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の補正を設定印刷量毎に行うようにしてもよい。この場合には、現像剤や感光体ドラムの経時劣化や環境変化(温度、湿度)でのエンジン特性の変化による色再現変化を小さくでき、長期間にわたり安定した色再現性を確保できる。
【符号の説明】
【0037】
1 画像形成装置
500 計測手段
600 記憶部
700 色相計測測色手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開昭57−129750号公報
【特許文献2】特開平6−115174号公報
【特許文献3】特願平8−523394号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、加法混色と減方混色とでフルカラー画像を再現する並置配置の画像形成方法を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電子写真印刷、インクジェット印刷ならびにオフセット印刷におけるフルカラー印刷では、まず印刷対象のカラー原稿画像を色分解してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(以下「C、M、Y、BK」と記す)の版を作成し、印刷における色再現(特に中間色の色再現)はシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3原色の重ね合せ(減法混色)により実現される。例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の印刷は、それぞれ、MとY、CとY、CとMの積層印刷で実現している。また、カラー印刷においてはC、M、Yの現像剤の使用量の低減や印刷画像の調子(色調および濃度諧調)の強調などの観点から、墨版(BK版)を使用することが一般に知られている。
【0003】
中間色再現の方法には、上記減法混色以外にC、M、Yの画像を併置配置し、加法混色にて実現する方法がある。この併置配置印刷方式は、各色の画像を重ねないため、全ての色を単層で表現するため印刷に要する現像剤やインク量を少なく出来る特長があり、電子写真方式のプリンタとしてはOce社CPS700が本方法を採用している。
【0004】
一方、併置配置印刷における加法混色での問題は、各色を重ねないため色彩度が低くなり、色再現域が小さくなることである。この併置配置印刷における再現域を拡大させる方法として、ドットマトリクス内のドットの個数、配置を変えて中間調表現を行なう方法が特許文献1で開示され、高彩度の単色ブルートナーとCMYトナーの4色トナーの併置配置印刷方法が特許文献2で開示されている。また、各色ドットの一部を物理的に混ぜ合わせ、減法混色により彩度向上を図る方法が特許文献3で開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
併置配置作像の特徴としては、用紙等の記録媒体の光拡散特性の違いにより色再現域が異なり、特に中間色の色相に違いが生じることが挙げられる。これは、併置配置作像による混色では各単色画像からの反射光による加法混色の他に、異なる色境界部では記録媒体中の光拡散に起因する減法混色も生じるからである。この記録媒体中の光拡散に起因する減法混色の程度は記録媒体の光拡散特性により異なり、特に併置配置作像ではその色再域への影響が大きくなる。そのため、上述したような特許文献1〜3に記載の併置配置作像に関する手法では、使用する記録媒体の違いにより色再現性(特に色彩度)が大きく変化してしまう課題がある。
本発明は、併置配置作像を用いた画像形成において、使用する記録媒体の光散乱特性の違いにより生じる色変動、特に中間色の色彩の不安定性に関することを課題とし、使用する記録媒体の光散乱特性に応じた作像条件を設定することで、安定した色再現性を提供する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3原色およびブラックの現像剤を用いてカラー画像を併置配置作像にて形成するものであり、カラー画像の中間色の形成は、現像剤の内2色を用い、その2色の加法混色と減法混色を併用して中間色を実現し、且つ使用する記録媒体の光拡散特性に応じて加法混色と減法混色との割合を変化させることを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、記録媒体の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更を、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行うことを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を備え、計測手段で記録媒体の光拡散特性を印刷実行前に計測し、計測手段による計測値に基づきカラー画像の中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率を設定することを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段で計測した記録媒体の光拡散特性の計測結果を記憶する記憶部を有することを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段を有することを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段と記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を備え、色相計測測色手段による色相計測および計測手段で計測した記憶媒体の光拡散特性に応じた中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の補正を設定印刷量毎に行うことを特徴としている。
【0007】
本発明を画像形成方法として捉えると次のようになる。
画像形成方法としては、少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3原色およびブラックの現像剤を用いてカラー画像を併置配置作像にて形成するものであり、カラー画像の中間色の形成を、現像剤の内2色を用い、その2色の加法混色と減法混色を併用して中間色を実現し、且つ使用する記録媒体の光拡散特性に応じて加法混色と減法混色との割合を変化させる。
画像形成方法において、記録媒体の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更を、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行うようにしてもよい。
画像形成方法において、記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を画像形成装置が備えている場合には、計測手段で記録媒体の光拡散特性を印刷実行前に計測し、計測手段による計測値に基づきカラー画像の中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率を設定してもよい。
画像形成方法において、画像形成装置が記憶部を備えている場合には、記録媒体の光拡散特性を装置外部の計測手段で計測した記録媒体の光拡散特性の計測結果を記憶部に記憶して、そのデータを用いても良い。
画像形成方法において、色相計測測色手段を画像形成装置が備えている場合、この色相計測測色手段で、カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測してもよい。
画像形成方法において、カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段と記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を画像形成装置が備えている場合、色相計測測色手段による色相計測および計測手段で計測した記憶媒体の光拡散特性に応じた中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の補正を設定印刷量毎、あるいは所定時間毎に行っても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カラー画像の中間色の形成は、現像剤の内2色を用い、その2色の加法混色と減法混色を併用して中間色を実現し、且つ使用する記録媒体の光拡散特性に応じて加法混色と減法混色との割合を変化させるので、使用する記録媒体の種類による色再現範囲、特に中間色の差異を小さくでき、安定した色再現性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の一形態を示す概略図である。
【図2】(a)は完全併置配置印刷物の光反射経路の説明図、(b)は(a)の平面視図である。
【図3】(a)は色ずれが生じた際の完全併置配置印刷物の光反射経路の説明図、(b)は(a)の平面視図である。
【図4】(a)は本形態における隣接ドットの一部重ね合せが生じた際の完全併置配置印刷物の光反射経路の説明図、(b)は(a)の平面視図である。
【図5】光拡散特性計測手段の概略図である。
【図6】ビームプロファイルの計測例を示す図である。
【図7】ドット面積率を50%〜100%で変化させた際の中間色画像(評価パターン)の断面概略図である。
【図8】記録媒体の光拡散特性係数Nと評価チャートの彩度Cの計測結果例を示す図である。
【図9】ドット面積率と彩度の関係を示す図である。
【図10】光拡散特性計数Nとドット印刷面積率Xの関係を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の一形態を示す概略図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の一形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示す画像形成装置は、タンデム型電子写真方式の画像形成装置を示す。符号1は、画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、符号2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、符号3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、符号4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、符号7は転写紙等の記録媒体200が収容される給紙部、符号9は記録媒体200の搬送タイミングを調整するレジストローラ、符号11Y,11M,11C,11BKは、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される像担持体である感光体ドラム、符号12は感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上をそれぞれ帯電する帯電部、符号13は感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上に形成される静電潜像をそれぞれ現像する現像部、符号15は感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上の未転写トナーをそれぞれ回収するクリーニング部をそれぞれ示す。
【0011】
感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK、各帯電部13、各現像部14及び各クリーニング部15は、色毎のケーシング内にそれぞれ組み込まれて各色のプロセスユニットをそれぞれ構成している。各プロセスユニットの下方には、各感光体ドラムと対向するように、複数のローラに巻き掛けられて転写体である転写ベルト17が配置されている。転写ベルト17は複数色のトナー像が記録媒体200上に重ねて担持されるように記録媒体200を搬送するものである。転写ベルト17の内側には、各感光体ドラムと対向する位置に、感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上に形成されたトナー像を記録媒体200上に重ねて転写する転写部材となる転写バイアスローラ14がそれぞれは位置されている。
【0012】
符号16は転写ベルト17を清掃する転写ベルトクリーニング部、符号19は記録媒体200上のトナー像(未定着画像)を定着する定着装置を示す。本形態において、定着装置19には電磁誘導加熱方式が採用されているが、他の加熱方式のものであってもよい。
【0013】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、周知のカラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして、図示しない周知の画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ対応する感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上に向けて発せられる。
一方、4つの感光体ドラム11Y,11M,11C,11BKは、それぞれ図1の時計方向に回転している。そして、各感光体ドラムの表面は、各帯電部12との対向部で、それぞれ一様に帯電される(帯電工程)。こうして各感光体ドラム上には、帯電電位が形成される。帯電された各感光体ドラム表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
【0014】
書込み部2からは、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光の解像度は2400dpiで、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程)。
【0015】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Y表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11M表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11C表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BK表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0016】
各色の静電潜像が形成された各感光体ドラム表面は、それぞれ現像部13との対向位置に達し、各現像部13から各感光体ドラム上に各色のトナーが供給されて、各感光体ドラム上の潜像がそれぞれの色のトナーで現像される(現像工程)。
現像工程後の感光体ドラム11Y,11M,11C,11BKの表面は、それぞれ、転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、転写バイアスローラ14が転写ベルト17の内周面に当接するように設置されている。このため転写バイアスローラ14の位置で、転写ベルト17上の記録媒体200に、感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上に形成された各色のトナー像が、順次転写される(転写工程)。
【0017】
転写工程後の感光体ドラム11Y,11M,11C,11BKの表面は、それぞれクリーニング部15との対向位置に達し、クリーニング部15で各感光体ドラム上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程)。クリーニング工程を終えた各感光体ドラムの表面は、不図示の除電部を通過して電位がリセットされる。この処理を終えることで感光体ドラム11Y,11M,11C,11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0018】
他方、感光体ドラム11Y,11M,11C,11BK上の各色のトナーが転写(担持)された記録媒体200は、図中の矢印方向に走行して、定着装置19と転写ベルト17の間に配置されている分離チャージャ18との対向位置に達する。そして、分離チャージャ18との対向位置で、記録媒体200に蓄積された電荷が中和されて、トナーのちり等を生じさせることなく記録媒体200が転写ベルト17から分離される。
【0019】
記録媒体200が分離された転写ベルト17の表面は、転写ベルトクリーニング部16の位置に達し、転写ベルト17上に付着した付着物が転写ベルトクリーニング部16によって清掃されて回収される。
【0020】
転写ベルト17上に搬送される記録媒体200は、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されたものである。詳しくは、記録媒体200を収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された記録媒体200が、不図示の搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達した記録媒体200は、タイミングを合わせて、転写ベルト17の位置に向けて搬送されて、順次各色のトナー像が転写される。フルカラーのトナー像が転写された記録媒体200は、転写ベルト17から分離された後に定着装置19に導かれる。定着装置19では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像(トナー)が記録媒体200上に定着される。定着工程後の記録媒体200は、不図示の排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
(第1の実施形態)
【0021】
ここで、本発明におけるフルカラー画像形成では、転写ベルト17上へのC,M,Y,Kのトナー像を併置に配置して形成する。但し、図2(b)に示すような全く各色トナー像(画像面201,202)の重ね合せを行なわない完全併置作像では、図2(a)に示すように、画像面201,202に入射される光203の殆どが単色トナー層のみからの反射光204,205のみとなり、隣接する色間を伝播した後に画像面から返ってくる光206の量は微量となる。よって併置配置作像での混色は、反射光204,205による加法混色が大半を占めるため、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)などの中間色の彩度が低くなる。また、完全併置作像ではC,M,Y,Kのトナー像間に色ずれが生じた場合、図3(a)、図3(b)に示すように支持体(記録媒体)301が露出してしまい、露出した支持体301からの反射光302の影響を受け、色変動が大きくなる。
【0022】
そのため、本発明におけるフルカラー画像形成では、図4(a)、図4(b)に示すように、各色ドットの隣接部が一部重なるように各色の構成ドットサイズを大きく設定した。その結果、色隣接部401はCトナーとMトナーとの重ね構造となり、そこからの反射光402はより高彩度の減法混色光となるため、この減法混色分を、上記した単色トナーからの反射光204,205の加法混色に加えることで、中間色の彩度を増大することができ、その結果、フルカラー画像の色再現域を拡大することができる。更に、図4の色隣接部401ように隣接部を重ね合せることで、多少の色ずれが生じた場合でも、支持体(記録媒体)200が露出することを防止でき、安定した色再現性が確保できる。
【0023】
ここで、図4に示したように、併置配置作像では、各色トナー像の隣接部401において支持体である記録媒体中の光拡散に起因する減法混色による発色が存在する。但し、この減法混色量は、記録媒体の光拡散特性に大きく変化するため印刷に使用する画像支持体(記録媒体)200の種類により、中間色の色相(特に彩度)が異なる。
【0024】
本形態では、この記録媒体200の光拡散特性は記録媒体に垂直に照射したレーザ光の拡散光(影)の大きさ(径)と記録媒体を介さないレーザスポット径より算出した。具体的には、図5に示すような計測手段となる用紙光拡散測定装置500を用いる。用紙光拡散測定装置500は、レーザ光501(波長:780nmの半導体レーザ)と14ビットデジタルCCD502(以下「CCD502」と記す)とが互いに対向配置されていて、両者の間に記録媒体200を配置するように構成されている。CCD502は記録媒体200の光拡散特性を計測するビームプロファイル計測手段503と接続されている。
【0025】
図6は、ビームプロファイル計測手段503で出力されるビームプロファイルの例を示す。レーザ光501とCCD502の間に記録媒体200が無い状態のビーム強度プロファイル601と、レーザ光501とCCD502の間に記録媒体200を配置した際に記録媒体200を透過したビーム光強度プロファイル602を計測し、スポット径の比により記録媒体200の光散乱特性を定義した。ここで、図6においてレーザスポット径X1と用紙透過スポット径X2はCCD502で検出した光強度のピーク値の1/e2(13.5%)レベルの光強度の幅と定義し、記録媒体200の光拡散係数Nはその比のX2/X1とした。
【0026】
本形態では記録媒体200にはコート紙(用紙A)、上質紙(用紙B)、再生紙(用紙C)の3種類の用紙を用い、色再現域計測のためのカラーチャート(C,M,Y,K、R、G、Bのベタパッチ)印刷を行った。なお、カラーチャート印刷の中間色R,G,Bは、単色C,M,Yのチェッカーフラッグパターンの併置配置印刷で作製した。チェッカーフラッグパターンの各色構成ドットは2400dpi、ドットサイズは4ドット×4ドットとした。また、上記中間色パターンは、形成する2色のドット面積比率を50%、60%、70%、80%、90%、100%の6種類のパターンを印刷した。
【0027】
本形態では中間色の補正の一例として、ブルー(MトナードットとCトナードットとの併置配置で作成したB)の用紙種間の色補正について述べる。
【0028】
図7は中間色ブルーBの上記6種類の印刷パターンの断面模式図である。図7においてドット面積比率50%が完全併置配置、ドット面積比率100%が完全重ね合せ配置の印刷となる。用紙A,用紙B、用紙Cを用いて印刷した上記評価チャートの用紙の光拡散特性係数Nと評価チャートの彩度Cの計測結果を図8に示す。また、図9は用紙A,用紙B、用紙Cの用紙の中間色B:ブルーの彩度Cとドット面積比率の関係を示す図である。図8、図9に示すように、中間色の彩度Cは、各色間重ね合せがない併置配置作像(構成する2色の印刷面積比率は各々50%)の場合、使用する記録媒体200の光拡散特性係数Nが大きいほど、彩度Cは大きくなる。
【0029】
つまり、使用する記録媒体200の種類によりその中間色の色目(彩度)が異なっている。また、構成する2色の印刷面積比率をそれぞれ大きくすると、彩度は増加することがわかる。これは重ね合せ部領で生じる減法混色域が増えたためと考えられる。また、2色の印刷面積比率が80%の以上の場合は、紙種の違いによる色差はほとんど無くなり、印刷面積比率が50%から80%までの彩度は略線形的に変化することがわかる。
【0030】
上記データを用い、2次多項近似によりブルーBの彩度Cを30、35、40を得る際の記録媒体200の光拡散特性計数NとC、Mのドット印刷面積率Xの関係で整理すると図10に示す関係となる。
【0031】
例えば、最も光拡散特性が異なる用紙A(N=0.51)と用紙C(0.89)での中間色ブルーBの彩度Cを35にする場合には、CとMの印刷面積率Xを用紙Aの場合には56%、用紙Cの場合には約63%に設定することになる。用紙Aと用紙Cをそれぞれ上述した印刷面積比で印刷した結果、中間色Bの彩度Cは用紙Aが35.08、用紙Cの彩度は35.02となり略等しい値となった。また、同様の方法により、レッド:Rとグリーン:Gの彩度を補正も可能であった。
【0032】
本形態では、用紙光拡散測定装置500を、例えば図1に示す画像形成装置のレジストローラ9の上流または下流側に設置することで、画像形成装置内で記録媒体200に用いる各用紙全数の光拡散特性の計測が可能となる。そして、記録媒体200の光拡散特性を印刷実行前に用紙光拡散測定装置500で計測し、用紙光拡散測定装置500による計測値に基づきカラー画像の中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率を設定する。
【0033】
以上本形態の画像形成方法および画像形成装置によれば、使用する記録媒体200の光拡散特性が異なる場合でも、記録媒体200の光拡散特性係数Nを計測し、その係数に応じた印刷面積率を設定することで、紙種間の中間色の色再現性(彩度)の違いを補正することが可能となる。このため、使用する記録媒体200の種類による色再現範囲、特に中間色の差異を小さくできて、安定した色再現性を確保できる。また、記録媒体200の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更を、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行うことで、光学条件の変更無しに、コントローラでの画像処理により簡易に記録媒体200の種類による色再現範囲差の補正が可能となる。
【0034】
本形態では、使用する記録媒体自体の光学特性を計測するため、例えば同一紙種におけるロット間での光学特性の違いを計測することが可能となり、安定な色再現範囲差の補正が可能となる。
(第2の実施形態)
【0035】
図5に示す用紙光拡散測定装置500を画像形成装置に設置してもよいが、用紙200の光拡散特性は同種の記録媒体であれば略同じである。そこで、本形態では、図11に示すように、上記用紙拡散特性係数Nの測定を、画像形成装置外に設置した用紙光拡散測定装置500で行い、測定した用紙光拡散係数Nの情報を、画像形成装置に設けた記憶部となる記録媒体データベース600に予め記憶しておくこととした。その結果、印刷開始前の上記色再現補正をより短時間で行うことが可能となった。また、本形態の構成では、画像形成装置に用紙光拡散測定装置500が含まれないため、装置の大幅なコストダウンが可能となる。
(第3の実施形態)
【0036】
本形態では、図12に示すように、画像形成装置内の定着装置19の下流に、中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンの色相計測測色手段700を配置し、図6に示す様な画像面積率と彩度のデータの自動計測を行ない、定期的(2000頁印刷毎)に実施形態1で示した方法により印刷面積率Xを補正した。その結果、現像剤や各感光体ドラムの経時劣化や温度、湿度などの印刷環境が変化した場合にも、高い精度での中間色の補正が可能であることを確認した。
用紙光拡散測定装置500と色相計測測色手段700を1つの画像形成装置内に設置して、記録媒体の光拡散特性と評価パターン(色相計測)をそれぞれ計測し、計測経過に応じて中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の補正を設定印刷量毎に行うようにしてもよい。この場合には、現像剤や感光体ドラムの経時劣化や環境変化(温度、湿度)でのエンジン特性の変化による色再現変化を小さくでき、長期間にわたり安定した色再現性を確保できる。
【符号の説明】
【0037】
1 画像形成装置
500 計測手段
600 記憶部
700 色相計測測色手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開昭57−129750号公報
【特許文献2】特開平6−115174号公報
【特許文献3】特願平8−523394号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3原色およびブラックの現像剤を用いてカラー画像を併置配置作像にて形成する画像形成装置において、
前記カラー画像の中間色の形成は、前記現像剤の内2色を用い、その2色の加法混色と減法混色を併用して中間色を実現し、且つ使用する記録媒体の光拡散特性に応じて前記加法混色と減法混色との割合を変化させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更を、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を備え、
前記計測手段で記録媒体の光拡散特性を印刷実行前に計測し、前記計測手段による計測値に基づき前記カラー画像の中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率を設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段で計測した記録媒体の光拡散特性の計測結果を記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段と前記記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を備え、
前記色相計測測色手段による色相計測および前記計測手段で計測した記憶媒体の光拡散特性に応じた前記中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の補正を設定印刷量毎に行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項1】
少なくともシアン、マゼンタ、イエローの3原色およびブラックの現像剤を用いてカラー画像を併置配置作像にて形成する画像形成装置において、
前記カラー画像の中間色の形成は、前記現像剤の内2色を用い、その2色の加法混色と減法混色を併用して中間色を実現し、且つ使用する記録媒体の光拡散特性に応じて前記加法混色と減法混色との割合を変化させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体の光拡散特性に応じて行なう2色の加法混色と減法混色の割合の変更を、中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の変化で行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を備え、
前記計測手段で記録媒体の光拡散特性を印刷実行前に計測し、前記計測手段による計測値に基づき前記カラー画像の中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率を設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段で計測した記録媒体の光拡散特性の計測結果を記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記カラー画像の中間色画像を形成する複数色のドット印刷面積比率を変化させた複数の評価パターンを計測する色相計測測色手段と前記記録媒体の光拡散特性を計測する計測手段を備え、
前記色相計測測色手段による色相計測および前記計測手段で計測した記憶媒体の光拡散特性に応じた前記中間色画像を形成する複数色の印刷面積比率の補正を設定印刷量毎に行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−51180(P2012−51180A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194386(P2010−194386)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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