説明

画像形成装置

【課題】トナーブリスタの発生を防止するとともに、定着部材を定着可能な温度に加熱する際の加熱時間を短くした定着装置を備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】加熱回転体と、加熱回転体加熱手段と、前記加熱回転体との間にニップ部を形成する加圧回転体と、加圧回転体温度調整手段と、加圧回転体温度検知手段と、を有する定着装置を備えた画像形成装置であって、前記加圧回転体温度調整手段は、前記加圧回転体に接触又は対峙する位置に配設されて前記加圧回転体を加熱する加圧回転体加熱手段と、前記加圧回転体に接触又は対峙する位置に配設されて前記加圧回転体を冷却する加圧回転体冷却手段と、からなり、定着される用紙の情報と、前記加圧回転体温度検知手段により検知される温度と、に応じて、前記加圧回転体加熱手段又は前記加圧回転体冷却手段を動作させることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、FAX等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関し、特に加熱定着方式の定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は複数の機能を有する複合機等の電子写真式画像形成装置の定着装置には、未定着のトナー像を転写された用紙を挟持搬送しつつ加圧、加熱して定着する熱ローラ定着装置が広く用いられている。この定着装置は、定着部材である定着ローラと、その定着ローラを押圧する押圧部材である押圧ローラとのニップ部に用紙を挟持して加熱定着するもので、低速機から高速機まで、或いはモノクロ機からカラー機に至るまで、幅広く採用されている。
【0003】
また近年は、無端状の定着部材である定着ベルトを加熱ローラと定着ローラとに張架し、押圧部材である押圧ローラにより定着ベルトを介して定着ローラを押圧し、定着ベルトと押圧ローラとのニップ部に用紙を挟持して定着するベルト定着装置も用いられている。
【0004】
一方、電子写真方式によるカラー画像形成装置においては、デジタル化が進み高画質化が図られている。このようなカラー画像形成装置に用いる高画質を得るための用紙としては、塗工層を用紙表面にコーティングしたコート紙又はアート紙等、表面が平滑で光沢ムラが発生し難い塗工紙が用いられることが多い。
【0005】
しかし、このような塗工紙を用いて前述した定着装置により加熱定着する場合、塗工紙上に転写されたトナー像を形成するトナーとトナーの隙間に含まれる空気が熱膨張する際に、塗工紙は通気性が悪いため、膨張した空気の逃げ場がなくなる。その結果、トナー層内に気泡が発生し、塗工紙上のカラー画像が乱れるという現象、いわゆる「トナーブリスタ」(定着ムラ)が生じてしまう。この現象は、トナーの重なりが大きいカラー画像形成装置において、特に顕著となる。
【0006】
トナーブリスタ対策として、定着部材としての定着ベルトと、定着ベルトを押圧する押圧部材としての加圧ローラとを有し、定着ベルトの背面(内側)に加熱手段と冷却手段とを並設し、用紙を加熱定着後に直ちに冷却するという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の構成には加圧ローラを冷却する手段があり、トナーブリスタの発生は抑制できるが、加圧ローラを加熱する手段はなく、定着ベルトの加熱時に加圧ローラが熱を奪うため、定着ベルトを加熱する際の立ち上がり時間に問題があった。
【0007】
また、加圧ローラと定着部材(定着ローラ又は定着ベルト)との温度差が大きくなると、用紙のカールが大きくなり、ウォームアップタイムが長くなるという問題が発生し易い。しかしながら、コート紙等の表面の平滑性が高い用紙においては、加圧ローラと定着部材との温度にある程度の差がないと、用紙が定着部材に巻き付き易くなり、トナーブリスタも発生し易くなるという問題が生じるおそれがある。この問題の対策としては加圧ローラを冷却する必要がある。
【0008】
定着ムラ対策として、ヒータを内蔵した定着ローラに定着ベルトを巻回させ、加圧ローラにより定着ベルトを定着ローラに押圧する構成の定着装置で、加圧ローラを加熱する外部加熱手段と、外部加熱手段に冷却手段とを配した定着装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の定着装置を用いることにより加圧ローラが外部加熱手段により加熱されるため、用紙にカールが生じるという問題や、定着ベルトを加熱する際の立ち上がり時間が長くなるという問題は解消される。しかしながら、加圧ローラを冷却する場合には外部加熱手段のヒータをオフした後、外部加熱手段に配された冷却手段により外部加熱手段を冷却しなければならないため、冷却に時間がかかり、トナーブリスタ発生を抑制する対策としては問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−273876号公報
【特許文献2】特開2007−192901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記のような問題を解決し、トナーブリスタの発生を防止するとともに、定着部材を定着可能な温度に加熱する際の加熱時間を短くした定着装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的は下記の発明により達成される。
【0012】
1.加熱回転体と、
前記加熱回転体を加熱する加熱回転体加熱手段と、
前記加熱回転体との間に、トナー像が形成された用紙を挟持して定着させるためのニップ部を形成する加圧回転体と、
前記加圧回転体の温度を変化させる加圧回転体温度調整手段と、
前記加圧回転体の温度を検知する加圧回転体温度検知手段と、
を有する定着装置を備えた画像形成装置であって、
前記加圧回転体温度調整手段は、前記加圧回転体に接触又は対峙する位置に配設されて前記加圧回転体を加熱する加圧回転体加熱手段と、前記加圧回転体に接触又は対峙する位置に配設されて前記加圧回転体を冷却する加圧回転体冷却手段と、からなり、
定着される用紙の情報と、前記加圧回転体温度検知手段により検知される温度と、に応じて、前記加圧回転体加熱手段又は前記加圧回転体冷却手段を動作させることを特徴とする画像形成装置。
【0013】
2.前記加熱回転体の温度を検知する加熱回転体温度検知手段を有し、
前記加圧回転体温度検知手段により検知される温度と前記加熱回転体温度検知手段により検知される温度との温度差を算出し、当該温度差と定着される用紙の情報とに応じて、前記加圧回転体加熱手段又は前記加圧回転体冷却手段を動作させることを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0014】
3.前記用紙の情報は、用紙の坪量、又は用紙表面におけるコートの有無、のいずれかを含むことを特徴とする前記1又は2に記載の画像形成装置。
【0015】
4.前記加圧回転体加熱手段は加熱部材により加熱される外部加熱ローラを有し、当該外部加熱ローラは前記加圧回転体に対して接離可能に配設されることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0016】
5.前記加圧回転体加熱手段は前記加圧回転体との距離を可変とする加熱手段移動機構部により移動可能に保持されることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0017】
6.前記加圧回転体冷却手段は前記加圧回転体に接離可能に配設されていることを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0018】
7.前記加圧回転体冷却手段は冷却手段移動機構部に保持され、当該冷却手段移動機構部は、前記加圧回転体との間隔を変化させるように移動可能に配設されていることを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構成により、トナーブリスタの発生を防止するとともに、短時間で定着部材を定着可能な温度に加熱できる定着装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の画像形成装置に係る実施形態の全体構成図である。
【図2】本発明の定着装置に係る第1又は第2の実施形態としてのローラ定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【図3】本発明の定着装置に係る第3の実施形態としてのベルト定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【図4】本発明の定着装置に係る第4の実施形態としてのローラ定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【図5】本発明の定着装置に係る第5の実施形態としてのベルト定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【図6】本発明の定着装置に係る第6の実施形態としてのローラ定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【図7】本発明の定着装置に係る第7の実施形態としてのローラ定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【図8】本発明に係る定着装置9の動作を制御する制御手段100の制御系に関するブロック図である。
【図9】本発明に係る定着装置9の第1〜第7の実施形態における動作の手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明に係る定着装置9における実施例と比較例とを対比し、加圧ローラ94の表面温度を比較したグラフとして描いた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に実施の形態に基づいて本発明を説明するが、本発明は該実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は本発明の画像形成装置に係る実施形態の全体構成図である。
【0023】
本画像形成装置は画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとから構成される。画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10K、ベルト状の中間転写体6、給紙搬送手段及び定着装置9等からなる。
【0024】
画像形成装置本体GHの上部には、自動原稿送り装置201と原稿画像走査露光装置202から成る画像読取装置YSが設置されている。自動原稿送り装置201の原稿台上に載置された原稿Dは搬送手段により搬送され、原稿画像走査露光装置202の光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0025】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0026】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段8Yを配置している。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段8Mを配置している。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体ドラム1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段8Cを配置している。黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段8Kを配置している。そして、帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光装置3C、及び帯電手段2Kと露光装置3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0027】
なお、現像手段4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。
【0028】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0029】
定着装置9は、加熱される加熱回転体としての定着ローラ91と加圧回転体としての加圧ローラ94との間に形成されたニップ部で記録材としての用紙P上に担持されたトナー像を加熱・加圧して定着する。
【0030】
かくして、画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に転写手段7Y、7M、7C、7Kにより逐次転写されて(1次転写)、カラー画像合成されたトナー像が形成される。給紙カセット20内に収容された用紙Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23等を経て、転写手段7Aに搬送され、用紙P上にカラー画像が転写される(2次転写)。カラー画像が転写された用紙Pは定着装置9の前記ニップ部において加熱・加圧され、用紙P上に担持されたカラートナー像が定着される。その後、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。レジストローラ23はソレノイド等により駆動モータの駆動を切断したり接続したりすることができる。停止したレジストローラに用紙Pを突き当て、所定のタイミングで駆動させることにより用紙Pのニップ部等への搬送タイミングを制御することができる。
【0031】
一方、転写手段7Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8Aにより残留トナーが除去される。
【0032】
制御手段100は、画像形成装置本体GHの内部に配設され、画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとの信号の授受や、画像形成装置本体GH各部の動作の制御を行う。
【0033】
なお、以上はカラー画像を形成する画像形成装置であったが、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってもよいし、中間転写体を用いても用いなくてもよい。
【0034】
次に、画像形成装置本体GHに備えられる、本発明に係わるローラ定着方式の定着装置の実施形態について、図2〜図5に基づいて説明する。本発明に係る加圧回転体温度調整手段は、加圧回転体加熱手段と加圧回転体冷却手段とにより構成される。
【0035】
図2は、本発明の定着装置に係る第1又は第2の実施形態としてのローラ定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【0036】
第1の実施形態の定着装置9は、加熱回転体としての定着ローラ91、加圧回転体としての加圧ローラ94、加圧回転体加熱手段としての外部加熱ローラ941、加圧回転体冷却手段942、及び加圧回転体温度検知手段としての温度センサTS2、等を有している。また、定着ローラ91には加熱回転体加熱手段としての出力可変のハロゲンヒータH1が内蔵されており、外部加熱ローラ941には加熱部材としての出力可変のハロゲンヒータH2が内蔵されている。定着ローラ91と加圧ローラ94とは圧接してニップ部を形成する。外部加熱ローラ941は加圧ローラ94に接触して配設され、加圧回転体冷却手段942は加圧ローラ94に接離可能に配設される。加圧回転体温度検知手段としての温度センサTS2は加圧ローラ94に対峙する位置に配設されている。加熱回転体温度検知手段としての温度センサTS1は加熱回転体としての定着ローラ91に対峙する位置に配設されている。
【0037】
定着ローラ91は、アルミニュウムや鉄等により円筒状に形成された芯金にシリコンゴムやフッ素ゴム等からなる耐熱性の弾性層を巻き付け、更にその表面に離型層を被覆して形成される。離型層は、PFA(パーフルオロアルコキシ)若しくはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から形成され、弾性層の表面を塗布若しくはチューブにより被覆している。
【0038】
加圧ローラ94は、定着ローラ91と同様に、アルミニュウムや鉄等により円筒状に形成された芯金(パイプ状であっても良い)にシリコンゴムやフッ素ゴム等から形成された耐熱性の弾性層を巻き付け、更にその表面に離型層を被覆して形成される。離型層は、定着ローラ91と同様にPFA又はPTFE等のフッ素樹脂から形成され、弾性層を塗布若しくはチューブにより被覆している。加圧ローラ94は不図示の付勢部材によって付勢され、定着ローラ91を下方から加圧している。
【0039】
加圧ローラ94の外周面には、外部加熱ローラ941が接触して配設され、かつ温度センサTS2が加圧ローラ94に対峙して配設されている。
【0040】
外部加熱ローラ941は、アルミニウムパイプ等で形成されるローラ部材131からなる。加圧回転体冷却手段942は、アルミニウムパイプ等で形成されるヒートパイプからなり、公知のリンク機構により加圧ローラ94に対して接離可能に配設され、図示しないソレノイドやモータにより駆動されて接離する。温度センサTS2は公知の温度センサであり、接触タイプであっても、非接触タイプであっても良い。
【0041】
なお、定着ローラ91を加熱する加熱部材、又は、加圧ローラ94を加熱する加圧回転体加熱手段として、ハロゲンヒータH1、H2に代えて出力可変のセラミックヒータを用いても良く、誘導加熱方式による加熱手段を用いても良い。
【0042】
上記構成により、ハロゲンヒータH1により加熱され不図示のモータによって駆動される定着ローラ91は図2の時計方向に回転し、加圧ローラ94は反時計方向に回転する。図1に示す画像形成装置によってトナー画像が形成された用紙Pは、定着ローラ91と加圧ローラ94とにより形成されるニップ部で挟持・搬送され、加熱及び加圧によりトナー像が定着される。
【0043】
本実施の形態において制御手段100は、用紙Pの厚みや種別(コートの有無など)からなる用紙の情報と、温度センサTS2による加圧ローラ94の検知温度と、に応じて、ハロゲンヒータH1、H2の出力やヒートパイプ942の接離動作を制御する。即ち、用紙Pが厚み(坪量)の大きい場合や、コート紙でない場合にはハロゲンヒータH2の出力を大きくし、回転可能なヒートパイプ942を加圧ローラ94から離間させて加圧ローラ94と定着ローラ91との温度差が小さくなるように制御する。また、用紙Pが厚紙以外のコート紙であるときの温度センサTS2により検知される加圧ローラ94の温度は、温度センサTS1により検知される定着ローラ91の温度との差に応じて、ヒートパイプ942の接離動作とハロゲンヒータH2の出力が制御される。即ち、算出された温度差が小さい場合には加圧ローラ94が冷却され、温度差が大きい場合には加圧ローラ94が加熱される。
【0044】
次に、定着装置9の第2の実施形態についての機能及び動作について、第1の実施形態と同様に、図2を用いて説明する。
【0045】
第1の実施形態と第2の実施形態との構成の違いは、第1の実施形態における外部加熱ローラ941が加圧ローラ94に接触して固設されているのに対し、第2の実施形態における外部加熱ローラ941は加圧ローラ94に対して接離可能に配設されている点である。即ち、第2の実施形態における外部加熱ローラ941は、図示しないモータ又はソレノイドにより駆動され、図示しない公知のリンク機構により加圧ローラ94に対して接離可能に配設されている。第1の実施形態と第2の実施形態における、その他の構成及び動作は同一であり、同一の符番を用いているため、第2の実施形態における定着装置9のその他の構成及び動作についての説明は省略する。
【0046】
本発明に係る第2の実施形態において、外部加熱ローラ941を加圧ローラ94に対して接離可能に配設することにより、加圧ローラ94を冷却する際に、短時間での冷却を可能にしている。
【0047】
図3は、本発明の定着装置に係る第3の実施形態としてのベルト定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【0048】
定着装置9は、加熱回転体としての定着ベルト91A、加圧回転体としての加圧ローラ94、加圧回転体加熱手段としての外部加熱ローラ941、加圧回転体冷却手段942、及び加圧回転体温度検知手段としての温度センサTS2、等により構成されている。また、定着ベルト91Aは、加熱ローラ92及び定着ベルト側加圧ローラ93により巻回されており、加熱ローラ92の内部には加熱回転体加熱手段としての出力可変のハロゲンヒータH1が内蔵されている。また、外部加熱ローラ941には出力可変のハロゲンヒータH2が内蔵されている。定着ベルト側加圧ローラ93は定着ベルト91Aを介して加圧ローラ94に圧接し、定着ベルト91Aと加圧ローラ94との間にニップ部を形成する。外部加熱ローラ941は加圧ローラ94に接触して配設され、加圧回転体冷却手段942は加圧ローラ94に接離可能に配設される。温度センサTS2は加圧ローラ94に対峙する位置に配設されている。
【0049】
第3の実施形態における、定着ベルト91Aは、無端状に形成されており、例えば、基体としてはPI(ポリイミド)やニッケル電鋳のベルト状部材を用い、基体の外周面を弾性層として耐熱性のシリコンゴムで被覆している。更に、その表面をPFA(パーフルオロアルコキシ)チューブの樹脂層で被覆している。加熱ローラ92の構成は、第1の実施形態における定着ローラ91の構成に類似しているため説明は省略する。定着ベルト側加圧ローラ93は、鉄等の金属から形成された中実(パイプ状でも可)の芯金を、弾性層として耐熱性のソリッドゴムであるシリコンゴムで被覆し、更に、低摩擦で耐熱性樹脂であるPFAでコーティングした樹脂層で被覆している。加圧ローラ94、外部加熱ローラ941、加圧回転体冷却手段942、及び温度センサTS2の構成は、第1の実施形態における加圧ローラ94の構成と類似しているため説明は省略する(以下、第3、第4の実施形態についても同様)。圧着ベルト側加圧ローラ943は、アルミニュウム等から形成された円筒状の芯金の外周面を、弾性層としての耐熱性のシリコンゴムで被覆し、更に、その表面をPFAチューブの樹脂層で被覆している。
【0050】
上記構成により、ハロゲンヒータH1により加熱され不図示のモータによって駆動される定着ベルト91Aは図3の時計方向に回転し、加圧ローラ94は反時計方向に回転する。トナー画像が形成された用紙Pは、定着ベルト91Aと加圧ローラ94とにより形成されるニップ部で挟持・搬送され、加熱及び加圧によりトナー像が定着される。
【0051】
本実施の形態において制御手段100は、定着される用紙Pの用紙情報と、温度センサTS2による加圧ローラ94の表面温度とに応じて、ハロゲンヒータH1、H2の出力やヒートパイプ942の接離動作を制御する。制御手段100による用紙の情報と、温度センサTS2による加圧ローラ94の検知温度とに応じての、加圧ローラ94の加熱又は冷却の制御動作は、第1の実施形態と同一であるため説明は省略する。
【0052】
本発明に係る第3の実施形態においては、定着部材として定着ベルト91Aを用いているため、ウォームアップタイムを短くできるという利点がある。
【0053】
図4は、本発明の定着装置に係る第4の実施形態としてのローラ定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。第4の実施形態の定着装置9において、トナー像を定着するためのニップ部は、定着ローラ91と圧着ベルト94Aとの間に形成される。
【0054】
定着装置9は、加熱回転体としての定着ローラ91、加圧回転体としての圧着ベルト94A、加圧回転体加熱手段としての外部加熱ローラ941、加圧回転体冷却手段942、及び加圧回転体温度検知手段としての温度センサTS2、等により構成されている。圧着ベルト94Aは、温度調整用ローラ943及び保持ローラ944、945により巻回される。また、圧着ベルト94Aの内側には圧着ベルト94Aを定着ローラ91に押圧させるための押圧部材946が配設されている。加熱ローラ91の内部には加熱回転体加熱手段としての出力可変のハロゲンヒータH1が内蔵されており、外部加熱ローラ941には出力可変のハロゲンヒータH2が内蔵されている。押圧部材946は、圧着ベルト94Aを定着ローラ91に押圧して定着ローラ91と圧着ベルト94Aとの間にニップ部を形成している。外部加熱ローラ941及び加圧回転体冷却手段942は加圧ローラ94に接離可能に配設される。温度センサTS2は加圧ローラ94に対峙する位置に配設されている。
【0055】
第4の実施形態における定着ローラ91の構成は第1の実施形態における定着ローラ91の構成に、圧着ベルト94Aの構成は第2の実施形態における定着ベルト91Aの構成に、それぞれ類似しているため説明は省略する。温度調整用ローラ943及び保持ローラ944、945は、アルミニュウム等の中実(パイプ状でも可)の部材でも良く、弾性層や樹脂層を被覆しても良い。
【0056】
上記構成により、ハロゲンヒータH1により加熱され不図示のモータによって駆動される定着ローラ91は図4の時計方向に回転し、圧着ベルト94Aは反時計方向に回転する。トナー画像が形成された用紙Pは、定着ローラ91と圧着ベルト94Aとにより形成されるニップ部で挟持・搬送され、加熱及び加圧によりトナー像が定着される。
【0057】
本実施の形態において制御手段100は、定着される用紙Pの用紙情報と、温度センサTS2による加圧ローラ94の表面温度とに応じて、ハロゲンヒータH1、H2の出力、外部加熱ローラ941の接離動作、及びヒートパイプ942の接離動作を制御する。制御手段100による加圧ローラ94の加熱又は冷却の制御動作は、第1の実施形態と同一であるため説明は省略する。
【0058】
本発明に係る第4の実施形態においては、加圧部材として圧着ベルト94Aを用いているため、ニップ部を広く形成することができ、写真画像やカラー画像等の画質の向上を図ることができる。
【0059】
図5は、本発明の定着装置に係る第5の実施形態としてのベルト定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【0060】
定着装置9は、加熱回転体としての定着ベルト91A、加圧回転体としての圧着ベルト94A、加圧回転体加熱手段としての外部加熱ローラ941、加圧回転体冷却手段942、及び加圧回転体温度検知手段としての温度センサTS2、等により構成されている。また、定着ベルト91Aは、加熱ローラ92及び定着ベルト側加圧ローラ93により巻回されており、加熱ローラ92の内部には加熱回転体加熱手段としての出力可変のハロゲンヒータH1が内蔵されている。外部加熱ローラ941には出力可変のハロゲンヒータH2が内蔵されている。また、圧着ベルト94Aは、圧着ベルト側加圧ローラ943、及び2つの保持ローラ944、945により巻回されている。圧着ベルト側加圧ローラ943は、定着ベルト91Aと圧着ベルト94Aとを介して定着ベルト側加圧ローラ93を押圧し、定着ベルト91Aと圧着ベルト94Aの間にニップ部が形成される。外部加熱ローラ941及び加圧回転体冷却手段942は、それぞれ圧着ベルト側加圧ローラ943がバックアップする位置で圧着ベルト94Aに対して接離可能に配設される。温度センサTS2は加圧ローラ94に対峙する位置に配設される。
【0061】
第5の実施形態における定着ベルト91A、加熱ローラ92、及び定着ベルト側加圧ローラ93の構成は第2の実施形態に、圧着ベルト側加圧ローラ943の構成は第1の実施形態における加圧ローラ94の構成に、それぞれ類似しているため説明は省略する。また、圧着ベルト94A、及び保持ローラ944、945の構成は、第3の実施形態における圧着ベルト94A、及び保持ローラ944、945の構成に類似しているため説明は省略する。
【0062】
上記構成により、ハロゲンヒータH1により加熱され不図示のモータによって駆動される定着ベルト91Aは図5の時計方向に回転し、圧着ベルト94Aは反時計方向に回転する。トナー画像が形成された用紙Pは、定着ベルト91Aと加圧ローラ94とにより形成されるニップ部で挟持・搬送され、加熱及び加圧によりトナー像が定着される。
【0063】
本実施の形態において制御手段100は、定着される用紙Pの用紙情報と、温度センサTS2による加圧ローラ94の表面温度とに応じて、ハロゲンヒータH1、H2の出力、外部加熱ローラ941の接離動作、及びヒートパイプ942の接離動作を制御する。制御手段100による加圧ローラ94の加熱又は冷却の制御動作は、第1の実施形態と同一であるため説明は省略する。
【0064】
本発明に係る第5の実施形態において、定着部材及び加圧部材の両方にベルト部材を設けることにより、ウォームアップタイムの短縮と、加圧部材としての圧着ベルト94Aの早期の温度上昇と降下を図ることが可能となる。
【0065】
図6は、本発明の定着装置に係る第6の実施形態としてのローラ定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【0066】
第6の実施形態としての定着装置9の構成は、第1の実施形態としての定着装置9の構成に類似しており、同一の機能を有する部材には同一の符番を付しているため説明は省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0067】
第6の実施形態としての定着装置9の構成が第1の実施形態としての定着装置9の構成と異なる点は、加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942の構成の違いである。以下にその構成の違いについて説明する。
【0068】
構成の違いの1つは、第1の実施形態における加圧回転体加熱手段が加圧ローラ94に接触して配設されているのに対し、第6の実施形態における加圧回転体加熱手段は加圧ローラ94から離間して対峙する位置に配設されている点である。
【0069】
構成の違いの他の1つは、第1の実施形態の加圧回転体加熱手段が外部加熱ローラ941であるのに対し、第6の実施形態における加圧回転体加熱手段941は、出力可変のハロゲンヒータ、セラミックヒータ、又は誘導加熱方式による加熱装置である点である。即ち、第6の実施形態における加圧回転体加熱手段には外部加熱ローラ941はなく、ハロゲンヒータ、セラミックヒータ、又は誘導加熱方式による加熱装置と、図示しない保持具又は保護カバーだけが配設されているという点である。
【0070】
構成の違いの他の1つは、第1の実施形態の加圧回転体冷却手段942が加圧ローラ94に接離可能に配設されているのに対し、第6の実施形態における加圧回転体冷却手段942は加圧ローラ94から離間して対峙する位置に配設されている点である。
【0071】
構成の違いの他の1つは、第1の実施形態の加圧回転体冷却手段942がヒートパイプであるのに対し、第6の実施形態における加圧回転体冷却手段942は出力可変のファンであるという点である。
【0072】
上記構成により、ハロゲンヒータH1により加熱され不図示のモータによって駆動される定着ローラ91は図6の時計方向に回転し、加圧ローラ94は反時計方向に回転する。トナー画像が形成された用紙Pは、定着ローラ91と加圧ローラ94とにより形成されるニップ部で挟持・搬送され、加熱及び加圧によりトナー像が定着される。
【0073】
本実施の形態において制御手段100は、定着される用紙Pの用紙情報と、温度センサTS2による加圧ローラ94の表面温度とに応じて、加圧回転体加熱手段941の出力及びファン942の出力を制御する。
【0074】
本発明に係る第6の実施形態においては、加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942が共に加圧ローラ94から離間した位置に配設されているため、加圧ローラ94表面に対する傷や劣化の懸念がなく、出力画像の画質への影響もない。
【0075】
なお本実施の形態においては、加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942を加圧ローラ94から所定の間隔を空けて加圧ローラ94に対峙する位置に配設するという構成を、第1の実施形態と同様のローラ定着方式と組み合わせた構成としたが、他の定着方式と組み合わせても良い。即ち、第2〜第5の実施形態との組み合わせであり、第2〜第5の実施形態における加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942を加圧ローラ94から所定の間隔を空けて配設するという構成とするものである。ここでの所定の間隔とは、実験により求めた最適の間隔をいう。
【0076】
また、加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942の配置を、加圧ローラ94に対し、本実施の形態では所定の間隔を空けた配置とし、第1の実施形態では接触させる構成としたが、2つの手段の一方を接触させ、他方を離間させる構成としても良い。即ち、第1の実施形態と第6の実施形態との部材を組み合わせて、第1の実施形態における外部加熱ローラ941を加圧ローラ94に接触させて配置し、第6の実施形態における出力可変のファン942を離間させて配置するという構成である。或いは、第6の実施形態における加圧回転体加熱手段941を加圧ローラ94から離間させて配置し、第1の実施形態におけるヒートパイプ942を加圧ローラ94に接触させて配置するという構成である。これらの構成の組み合わせは、本実施の形態(第6の実施形態)のみならず、以下に説明する第7の実施形態においても適用可能である。
【0077】
図7は、本発明の定着装置に係る第7の実施形態としてのローラ定着方式を用いた構成について説明するための断面図である。
【0078】
第7の実施形態としての定着装置9の構成は、第6の実施形態としての定着装置9の構成に類似しており、同一の機能を有する部材には同一の符番を付しているため説明は省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0079】
第7の実施形態としての定着装置9の構成が第6の実施形態としての定着装置9の構成と異なる点は、加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942の構成の違いである。
【0080】
構成の違いの1つは、第6の実施形態における加圧回転体加熱手段941が加圧ローラ94から所定の距離だけ離間して固設されているのに対し、第7の実施形態における加圧回転体加熱手段941は加圧ローラ94に対して移動可能に配設される点である。加圧回転体加熱手段941の移動は加熱手段移動機構部947により行われる。加熱手段移動機構部947は公知のリンク機構やガイドレール等により構成され、ソレノイドやモータを駆動源として移動動作が行われる。
【0081】
構成の違いの他の1つは、第6の実施形態における加圧回転体加熱手段941の出力が可変であるのに対し、第7の実施形態における加圧回転体加熱手段941は出力固定であるという点である。
【0082】
構成の違いの他の1つは、第6の実施形態における加圧回転体冷却手段(ファン)942が加圧ローラ94から所定の距離だけ離間して固設されているのに対し、第7の実施形態におけるファン942は加圧ローラ94に対して移動可能に配設される点である。ファン942の移動は冷却手段移動機構部948により行われる。冷却手段移動機構部948は公知のリンク機構やガイドレール等により構成され、ソレノイドやモータを駆動源として移動動作が行われる。
【0083】
構成の違いの他の1つは、第6の実施形態におけるファン942の出力が可変であるのに対し、第7の実施形態におけるファン942は出力固定であるという点である。
【0084】
上記構成により、ハロゲンヒータH1により加熱され不図示のモータによって駆動される定着ローラ91は図7の時計方向に回転し、加圧ローラ94は反時計方向に回転する。トナー画像が形成された用紙Pは、定着ローラ91と加圧ローラ94とにより形成されるニップ部で挟持・搬送され、加熱及び加圧によりトナー像が定着される。
【0085】
本実施の形態において制御手段100は、用紙情報と加圧ローラ94の表面温度とに応じて、加圧回転体加熱手段941の移動距離、及びファン942の移動距離を制御する。
【0086】
本発明に係る第7の実施形態においては、加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段としてのファン942を移動させるため、加熱及び冷却の作用を段階的に確実に切り替えることができる。
【0087】
なお本実施の形態においては、加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942を加圧ローラ94に対して移動可能に配設するという構成を、第1の実施形態と同様のローラ定着方式と組み合わせた構成としたが、他の定着方式と組み合わせても良い。即ち、第6の実施形態と同様に、第2〜第5の実施形態と組み合わせ、第2〜第5の実施形態における加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942を加圧ローラ94に対して移動可能に配設するという構成とするものである。
【0088】
また、加圧ローラ94に対する加圧回転体加熱手段941及び加圧回転体冷却手段942の配置を、第1〜第6の実施形態の構成と組み合わせ、2つの手段の一方を移動可能な構成としても良い。
【0089】
図8は、本発明に係る定着装置9の動作を制御する制御手段100の制御系に関するブロック図である。
【0090】
制御手段100は、使用する用紙の情報と温度センサTS2により検知される加圧ローラ94の温度とに応じて、加圧回転体加熱手段941、加圧回転体冷却手段942、加熱手段移動機構部947、及び冷却手段移動機構部948の動作を制御する。用紙の情報としては、用紙Pの坪量と、用紙がコート紙であるかどうかがあり、これらの用紙の情報は、例えば、画像形成装置本体GHに配設される図示しない操作部のボタン等により入力される。
【0091】
図9は、本発明に係る定着装置9の第1〜第7の実施形態における動作の手順を説明するためのフローチャートである。
【0092】
始めに、使用される用紙Pが厚紙(本実施の形態では坪量130g/mを超えるものを厚紙としている)であるかどうかを判断する(ステップS11)。坪量が130g/mを超える場合にはステップS20に進み、坪量が130g/m以下の場合にはステップS12に進む。
【0093】
ステップS12において、用紙Pはコート紙かどうかを判断する(ステップS12)。コート紙でない場合にはステップS20に進み、コート紙である場合にはステップS13に進む。
【0094】
ステップS13において、定着ローラ91と加圧ローラ94との温度差が下限値(本実施の形態では120℃)に達しているかどうかを判断する(ステップS13)。温度差が120℃以上ある場合にはステップS17に進み、120℃未満である場合にはステップS14に進む。
【0095】
ステップS14において、ヒートパイプ942の加圧ローラ94への接触、ファン出力の増、及び、ヒータ類の出力停止が行われて加圧ローラ94が冷却され、その後ステップS15へと進む。
【0096】
ステップS15において、画像形成のジョブに対して目的の枚数が出力されたかどうかが判断される(ステップS15)。目的の枚数が出力されていない場合にはステップS13に戻り、目的の枚数が出力された場合にはステップS16に進む。ステップS16において、画像形成のジョブは完了となる(ステップS16)。
【0097】
ステップS11で坪量が130g/mを超える場合、又はステップS12で用紙Pがコート紙でない場合にはステップS20に進み、加圧ローラ94が加熱される(ステップS20)。加圧ローラ94の加熱は、加圧回転体加熱手段941の出力又は出力の増、及び、ヒートパイプ942の加圧ローラ94からの離間、ファンの出力停止等により行われる。加圧ローラ94が加熱された後、ステップS21に進み、画像形成のジョブが継続され、ジョブの目的枚数の出力により完了となる(ステップS21)。
【0098】
ステップS13において、定着ローラ91と加圧ローラ94との温度差が下限値の120℃に達していない場合にはステップS17に進み、温度差が上限値の140℃を超えているかどうかが判断される(ステップS17)。温度差が140℃以下である場合にはステップS19に進み、140℃を超えている場合にはステップS18に進む。
【0099】
ステップS18において、ステップS20と同様に、加圧ローラ94が加熱される(ステップS18)。その後、ステップS15に進み、画像形成のジョブに対して目的の枚数が出力されたかどうかが判断される。
【0100】
ステップS17において、定着ローラ91と加圧ローラ94との温度差が140℃以下であるとき、ステップS19に進み、加圧ローラ94はステップS14と同様に冷却される(ステップS19)。その後、ステップS15に進み、画像形成のジョブに対して目的の枚数が出力されたかどうかが判断される(以下、ステップS15、S16へと進む)。
【0101】
図10は、本発明に係る定着装置9における実施例と比較例とを対比し、加圧ローラ94の表面温度を比較したグラフとして描いた模式図である。グラフの実線aは、本発明に係る定着装置9の実施例として、加圧ローラ94に加圧回転体加熱手段941と加圧回転体冷却手段942とを配設した場合の加圧ローラ94の表面温度を表す。また、グラフの破線bは、比較例として、加圧ローラ94に加圧回転体加熱手段941のみを配設した定着装置における加圧ローラ94の表面温度を表す。
【0102】
図10において、縦軸は温度を表し、横軸は時間を表す。横軸の左から順に、コート紙、普通紙、コート紙と並べたのは、始めにコート紙をプリントし、次に普通紙をプリントし、最後にまたコート紙をプリントするという用紙種別の切り替えを表す。
【0103】
図から判るように、コート紙から普通紙に切り替わるとき、加圧ローラ94の温度を定着ローラ91の温度に近づけるために実線a及び破線b共に温度を上昇させている。また、普通紙からコート紙に切り替わる際には、加圧ローラ94の温度と定着ローラ91の温度とに一定の温度差を設けるために、加圧ローラ94の温度を下げている。本グラフにおいて、普通紙からコート紙に切り替わるときにおける、実施例としての実線aにおける温度降下に要する時間をTa、比較例としての破線bにおける温度降下に要する時間をTbとする。このとき、グラフから、Ta<Tbとなることが判る。即ち、実施例としての実線aでは、加圧ローラ94に加圧回転体冷却手段942を配設しているため、加圧ローラ94の温度を急速に降下させることができるのである。なお、普通紙使用時における加圧ローラ94の温度が実施例としての実線aより比較例としての破線bの方が低いのは、温度降下に要する時間Tbが長くなりすぎることを防いだものであり、普通紙の定着性に対してはマイナス要因となる。
【0104】
本発明の第2の実施形態の定着装置9を用い、定着ローラ91と加圧ローラ94との温度差を変化させたとき、普通紙(厚紙を含む)に対する定着性及び画質への影響を表1に、コート紙(坪量130g/m以下)に対する定着性及び画質への影響を表2に示す。
【0105】
表1、表2に記載のローラ温度差とは、定着ローラ91と加圧ローラ94との温度差をいう。加圧ローラの加熱又は冷却のオンとは、外部加熱ローラ941又はヒートパイプ942を加圧ローラ94に接触させて加熱又は冷却を行わせている状態をいい、オフとは、外部加熱ローラ941又はヒートパイプ942を加圧ローラ94から離間させた状態をいう。更に、オン/オフとは、外部加熱ローラ941又はヒートパイプ942の加圧ローラ94への接触と離間とを交互に繰り返す状態をいう。なお、本実験においては、定着ローラ91の温度を200℃に設定している。
【0106】
また、定着性及び画質の記号の○、△、×は社内判定規格による判定結果を示すもので、それぞれ、良好、良品限界、不良を表す。
【0107】
【表1】

【0108】
表1から、普通紙使用時の定着性に対しては定着ローラ91と加圧ローラ94との温度差は少ないほうが良いことが判る。
【0109】
【表2】

【0110】
表2から、コート紙使用時における定着性及び画質の両方を満足させるための定着ローラ91と加圧ローラ94との温度差は140℃〜120℃の限られた範囲であることが判る。
【符号の説明】
【0111】
9 定着装置
91 定着ローラ(加熱回転体)
91A 定着ベルト(加熱回転体)
92 加熱ローラ
93 定着ベルト側加圧ローラ
94 加圧ローラ(加圧回転体)
94A 圧着ベルト(加圧回転体)
100 制御手段
941 加圧回転体加熱手段(外部加熱ローラ、ハロゲンヒータ、セラミックヒータ、誘導加熱方式による加熱装置)(加圧回転体温度調整手段)
942 加圧回転体冷却手段(ヒートパイプ、ファン)(加圧回転体温度調整手段)
943 圧着ベルト側加圧ローラ
944 保持ローラ
946 押圧部材
947 加熱手段移動機構部
948 冷却手段移動機構部
P 用紙
a 実線(実施例の加圧ローラ94の表面温度を表す)
b 破線(比較例の加圧ローラ94の表面温度を表す)
GH 画像形成装置本体
H1 ハロゲンヒータ(加熱回転体加熱手段)
H2 ハロゲンヒータ(加熱部材)(ハロゲンヒータ、セラミックヒータ、誘導加熱方式による加熱装置)
Ta 実線aにおける温度降下に要する時間
Tb 破線bにおける温度降下に要する時間
TS1 温度センサ(加熱回転体温度検知手段)
TS2 温度センサ(加圧回転体温度検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱回転体と、
前記加熱回転体を加熱する加熱回転体加熱手段と、
前記加熱回転体との間に、トナー像が形成された用紙を挟持して定着させるためのニップ部を形成する加圧回転体と、
前記加圧回転体の温度を変化させる加圧回転体温度調整手段と、
前記加圧回転体の温度を検知する加圧回転体温度検知手段と、
を有する定着装置を備えた画像形成装置であって、
前記加圧回転体温度調整手段は、前記加圧回転体に接触又は対峙する位置に配設されて前記加圧回転体を加熱する加圧回転体加熱手段と、前記加圧回転体に接触又は対峙する位置に配設されて前記加圧回転体を冷却する加圧回転体冷却手段と、からなり、
定着される用紙の情報と、前記加圧回転体温度検知手段により検知される温度と、に応じて、前記加圧回転体加熱手段又は前記加圧回転体冷却手段を動作させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱回転体の温度を検知する加熱回転体温度検知手段を有し、
前記加圧回転体温度検知手段により検知される温度と前記加熱回転体温度検知手段により検知される温度との温度差を算出し、当該温度差と定着される用紙の情報とに応じて、前記加圧回転体加熱手段又は前記加圧回転体冷却手段を動作させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙の情報は、用紙の坪量、又は用紙表面におけるコートの有無、のいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加圧回転体加熱手段は加熱部材により加熱される外部加熱ローラを有し、当該外部加熱ローラは前記加圧回転体に対して接離可能に配設されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記加圧回転体加熱手段は前記加圧回転体との距離を可変とする加熱手段移動機構部により移動可能に保持されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加圧回転体冷却手段は前記加圧回転体に接離可能に配設されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記加圧回転体冷却手段は冷却手段移動機構部に保持され、当該冷却手段移動機構部は、前記加圧回転体との間隔を変化させるように移動可能に配設されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−63580(P2012−63580A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207718(P2010−207718)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】