説明

画像形成装置

【課題】非磁性一成分トナーを用いる画像形成装置において感光体ドラム、現像ローラ、供給ローラを長時間高速回転させて高速印字を行っても掠れのない高品質の画像形成を維持できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】実験において、トナー20gに対し先行投入トナーA、B、C、Dには、それぞれキャリア2g、1g、0.5g、0gが混入されている。感光体ドラム7の回転周面線速度を、108、120、130、140、150(mm/sec)と変化させて、先行投入トナーA、B、C、Dにおける画像掠れの有無を評価すると、A4判用紙3000枚まで印刷後に、140mm/secの高速印刷でベタ画像に掠れが見られなかったのは、先行投入トナーAのみであることが判明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性一成分トナーを用いる画像形成装置において感光体ドラム、現像ローラ、供給ローラを長時間高速回転させて高速印字を行っても掠れのない高品質の画像形成を維持できる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置には、一成分現像剤(トナー)を用いる方式のものと、二成分現像剤を用いる方式のものとがある。
【0003】
一成分現像剤を用いる方式は、一成分現像剤として非磁性トナーを用い、現像ローラには表面にゴム弾性体を被覆したものを用いる。全体として取り扱いと制御が比較的容易であるため、この方式が主流を占めていた。
【0004】
ところが近年、印刷(以下、印字ともいう)処理の高速化に対する要望が強まり、この要望に対処するため二成分現像剤を用いる方式が提案されるようになった。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
このような二成分現像剤を用いる方式では、二成分現像剤として磁性体のキャリアと非磁性のトナーを用い、一般的には質量比90%のキャリアに対して質量比10%のトナーを混合する。そして、現像ローラには周表面が硬質で磁性を持った形式のものが用いられる。
【0006】
なお、一成分現像剤を用いる方式は、一成分現像剤として非磁性トナーを用いると述べたが、特殊印刷を目的とする例えばMICR(Magnetic Ink Character Recognition)プリンタでは、一成分現像剤として磁性トナーを用いている。(例えば、特許文献2参照。)
【0007】
この特許文献2では、一成分現像剤用の画像形成装置を用いているので、表面が弾性体の現像ローラを用いている。また、磁性トナーの一成分現像剤に対し、場合によってはキャリアと混合して二成分現像剤として使用することも可能であるとの一文が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−194908号公報
【特許文献2】特開2003−043803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示される従来技術では、印字処理は高速化できるが、トリクル現像方式であるため、二成分現像剤を一方では補充し他方では廃棄することを繰り返しながら印字処理を行うもので、現像剤の使用方法が不経済であるという解決すべき課題がある。
【0010】
また、特許文献2に示される従来技術は、磁性トナーの一成分現像剤を用いた場合に供給ローラに生じる目詰まりを防止することを目的としており、場合によってはキャリアと混合して二成分現像剤として使用するも可能ということが印字処理の高速化を目的としたものではないという解決すべき課題がある。
【0011】
また、磁性トナーに磁性キャリアを混合した場合の磁性トナーと磁性キャリアとの作用関係が定かでない。それどころか、磁性トナーに磁性キャリアを混合する目的そのものが明確でないという解決すべき課題がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであって、非磁性一成分トナーを用いて現像を行う低速印字が主体の画像形成装置でありながら高速印字を実現した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、少なくとも、ゴム弾性を有する現像ローラ、スポンジ製の供給ローラ、及びトナー層を形成するためのドクターブレードを有する現像装置にて非磁性一成分トナーを使用して現像を行う画像形成装置であって、上記非磁性一成分トナーに対し球形の二成分現像剤用の球形フェライトキャリアを上記トナーよりも少ない量で混合して現像剤とする、ように構成される。
【0014】
上記球形フェライトキャリアの上記非磁性一成分トナーに対する混合は、例えば、上記現像装置に先行投入されている上記非磁性一成分トナーに対して行われる。この場合、上記球形フェライトキャリアの上記非磁性一成分トナーに対する混合比率は、例えば、上記非磁性一成分トナーの20gに対し上記球形フェライトキャリアは10gである。
【0015】
また、上記球形フェライトキャリアの上記非磁性一成分トナーに対する混合は、例えば、上記トナーカートリッジ内に収容されている上記非磁性一成分トナーに対して行ようにしてもよい。この場合、上記球形フェライトキャリアの上記非磁性一成分トナーに対する混合比率は、例えば、上記非磁性一成分トナーの220gに対し上記球形フェライトキャリアは30gである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、非磁性一成分トナーに少量の球形フェライトキャリアを混入することで、供給ローラが通常の非磁性一成分トナー使用時よりも高速回転しても、非磁性一成分トナーが供給ローラに跳ね飛ばされることなく供給ローラによく吸着するので、掠れの無い高画質の画像形成を高速で印字処理できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係る二次転写式画像形成装置(プリンタ)の内部構成を説明する断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るプリンタの画像形成ユニットを示す断面図である。
【図3】(a),(b),(c)は実施例1に係るプリンタにおける実験において先行投入トナーA、B、C、Dと感光体ドラムの回転周面線速度の変化に対応する掠れ評価及び印字枚数の多少に対応する掠れ評価を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。尚、以下の説明では、「非磁性一成分トナー」と記載する場合と、単に「トナー」と記載する場合があるが、どちらも同一のものを指している。
【0019】
また「磁性キャリア」と記載する場合と「球形フェライトキャリア」と記載する場合と、単に「キャリア」と記載する場合があるが、どちらも同一のものを指している。
[実施形態]
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係る二次転写式画像形成装置(以下、単にプリンタという)の内部構成を説明する断面図である。同図に示すプリンタ1は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置であり、画像形成部2、中間転写ベルトユニット3、給紙部4、及び両面印刷用搬送ユニット5で構成されている。
【0021】
上記の画像形成部2は、同図の右から左へ4個の画像形成ユニット6(6M、6C、6Y、6K)を多段式に並設した構成からなる。4個の画像形成ユニット6のうち上流側(図の右側)の3個の画像形成ユニット6M、6C及び6Yは、それぞれ減法混色の三原色であるマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色トナーによるモノカラー画像を形成する。
【0022】
画像形成ユニット6Kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。上記の各画像形成ユニット6は、トナー容器に収納されたトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下ブラック(K)用の画像形成ユニット6Kを例にしてその構成を説明する。
【0023】
画像形成ユニット6は、最下部に感光体ドラム7を備えている。この感光体ドラム7は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。この感光体ドラム7の周面近傍を取り巻いて、クリーナ8、帯電ローラ9、光書込ヘッド11、及び現像器12の現像ローラ13が配置されている。
【0024】
現像器12は、上部のトナー容器に同図にはM、C、Y、Kで示すようにマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のいずれかのトナーを収容し、中間部には下部へのトナー補給機構を備え、下部には側面開口部に上述した現像ローラ13を備えている。
【0025】
中間転写ベルトユニット3は、本体装置のほぼ中央で図の左右のほぼ端から端まで扁平なループ状になって延在する無端状の転写ベルト14と、この転写ベルト14を掛け渡されて転写ベルト14を図の反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ15と従動ローラ16を備えている。
【0026】
上記の転写ベルト14は、トナー像を直接ベルト面に転写(一次転写)されて、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への転写位置まで搬送するので、ここではユニット全体を中間転写ベルトユニットといっている。
【0027】
この中間転写ベルトユニット3は、上記扁平なループ状の転写ベルト14のループ内にベルト位置制御機構17を備えている。ベルト位置制御機構17は、転写ベルト14を介して感光体ドラム7の下部周面に押圧する導電性発泡スポンジから成る一次転写ローラ18を備えている。
【0028】
ベルト位置制御機構17は、マゼンタ(M)、シアン(C)及びイエロー(Y)の3個の画像形成ユニット6M、6C及び6Yに対応する3個の一次転写ローラ18を鉤型の支持軸に支持して同一周期で回転させる。
【0029】
また、ベルト位置制御機構17は、ブラック(K)の画像形成ユニット6Kに対応する1個の一次転写ローラ18を上記3個の一次転写ローラ18とは独立に所定の周期で回転させて転写ベルト14を感光体ドラム7から離接させる。
【0030】
これにより、ベルト位置制御機構17は、転写モードを、フルカラーモード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14に当接)、モノクロモード(画像形成ユニット6Kに対応する一次転写ローラ18のみが転写ベルト14に当接)、及び全非転写モード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14から離れる)に切換える。
【0031】
上記の中間転写ベルトユニット3には、上面部のベルト移動方向最上流側の画像形成ユニット6Mの更に上流側に、ベルトクリーナユニットが配置され、下面部のほぼ全面に沿い付けるように平らで薄型の廃トナー回収容器19が着脱自在に配置されている。
【0032】
給紙部4は、上下2段に配置された2個の給紙カセット21を備え、2個の給紙カセット21の給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ22、給送ローラ23、捌きローラ24、待機搬送ローラ対25が配置されている。待機搬送ローラ対25の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト14を介して従動ローラ16に圧接する二次転写ローラ26が配設されて、用紙への二次転写部を形成している。
【0033】
この二次転写部の下流(図では上方)側にはベルト式熱定着装置27が配置されている。ベルト式熱定着装置27の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式熱定着装置27から搬出する搬出ローラ対28、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー29に排紙する排紙ローラ対31が配設されている。
【0034】
両面印刷用搬送ユニット5は、上記搬出ローラ対28と排紙ローラ対31との中間部の搬送路から図の右横方向に分岐した開始返送路32a、それから下方に曲がる中間返送路32b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる終端返送路32cを備えている。
【0035】
更に、両面印刷用搬送ユニット5は、上記の返送路の途中に配置された4組の返送ローラ対33a、33b、33c、33dを備えている。そして上記終端返送路32cの出口は、給紙部4の下方の給紙カセット21に対応する待機搬送ローラ対25への搬送路に連絡している。
【0036】
また、本例において中間転写ベルトユニット3の上面部には、クリーニング部35、取り込みローラ36が配置されている。クリーニング部35は、転写ベルト14の上面に当接して廃トナーを擦り取って除去する。
【0037】
そして、取り込みローラ36はクリーニング部35が除去した廃トナーを引き継いで、図示を省略したベルトクリーナユニットの一時貯留部に溜め込み、その溜め込まれた廃トナーを搬送スクリューにより落下筒内を上部まで搬送し、落下筒を介して廃トナー回収容器19に送り込んでいる。
【0038】
また、上記のクリーニング部35を適度の圧力で転写ベルト14に圧接させるために、中間転写ベルトユニット3側には、下方から転写ベルト14をクリーニング部35に向けて押圧する押圧ローラ37が設けられている。
【0039】
図1に示すように、この画像形成装置1は、従来の用紙に直接トナー像を転写する方式ではなく、待機搬送ローラ対25により二次転写部まで鉛直方向に搬送される用紙に中間転写ベルト14を介してトナー像を転写する方式となっている。
【0040】
したがって、用紙の搬送路に発生する用紙ジャム等の不具合を回復するメンテナンス処理時には、図1の右側を開放するのみで対処できるようになっている。
【0041】
そして、用紙ジャム等の不具合はキット類の配設部では発生しないので、図1の左側に集中するキット類などの消耗品の着脱の操作は、長手方向に入れ替え操作するだけの小さなスペースで良いように構成されている。
【0042】
これにより、キット間の寸法は、可及的に縮小されており、装置本体全体の小型化が図られている。また、光書込みヘッド自体も小型化され、感光体ドラムに、より近接している構成となっている。
【0043】
図2は、画像形成ユニット6を示す断面図である。尚、図2には、図1と同一の構成部分には図1と同一の番号を付与して示している。
【0044】
図2に示すように、図1に示した現像装置12は上部トナーホッパー38と下部トナーホッパー39からなるトナーカートリッジ40と、外装フレーム41を備えた現像器42とから成る。
【0045】
現像器42の内部には、図1で説明した現像ローラ13の他に、現像ローラ13にトナーを供給する供給ローラ44、現像ローラ13に供給されたトナーの層を一定の層厚に規制するドクターブレード45を備えている。
【0046】
更に、現像器42の内部には、図示を省略している内部のトナーを攪拌して、この攪拌摩擦によりトナーに微弱な負電荷を負わせるトナー撹拌部材46が配設されている。
【0047】
これらのトナーカートリッジ40、現像器42、及びドラムユニット43は、外装フレーム41により一体となって合体し、画像形成ユニット6を構成している。
【0048】
現像器42内のトナー(非磁性一成分トナー)は自重によってスポンジ状の供給ローラ44上に付着し、供給ローラ44の回転に伴われて現像ローラ13表面との接触部に搬送される。
【0049】
現像ローラ13と供給ローラ44には各々現像バイアス電圧及び供給バイアス電圧が印加されており両バイアス間には摩擦によって、負電荷を帯びたトナーが現像ローラ13側に引き寄せられるように電位差が設けてある。
【0050】
現像ローラ13に引き寄せられたトナーは、現像ローラ13の回転に伴われながらドクターブレード45により均一なトナー層に形成され、感光体ドラム7との接点の現像領域へと搬送される。
【0051】
現像領域に搬送された微弱な負電荷を帯びたトナーは、感光体ドラム7の電位と現像ローラ13の電位の差によって、感光体ドラム7周面上の静電潜像に吸着され、静電潜像をトナー像化(現像)する。
【0052】
このように、上記の構成で、非磁性一成分トナーを用いて比較的低速の100mm/sec程度の現像装置では問題なく目的通りの画像を形成することができる。
【0053】
ところが、印字処理の高速化の要望に対処すべく140mm/sec程度の高速印字を行うと問題が発生した。すなわち、高速印字を繰り返すと供給ローラ44へのトナーの供給が不足し画像が掠れる問題が発生する。
【0054】
先ず通常の低速印字の場合について説明する。図2において、感光体ドラム7を時計廻り方向に108mm/secで回転させる。現像ローラ13を反時計廻り方向に131mm/secの速度で回転させる。さらに供給ローラ44も反時計廻り方向に144mm/secの速度で回転させる。
【0055】
感光体ドラム7と現像ローラ13、現像ローラ13と供給ローラ44は、それぞれ一定の喰い込み状態に圧接した状態で配置されている。
【0056】
このような構成の画像形成ユニット6の現像器42に、非磁性一成分トナーを投入し、印字率1.7%の画像を2枚ごと間欠にて繰り返し印字した。2,000枚ごとにA4判一枚全面ベタ画像を印字し画像掠れの無いことを確認しながら20,000枚まで実施した。この結果、20,000枚まで画像掠れのない画像が得られた。
【0057】
ところが、同じ画像形成ユニット6で 高速印字を達成するために感光体ドラム7の回転周面線速度を140mm/secにし、現像ローラ13と供給ローラ44の回転周面線速度も同じ比率で速度を上げた。
【0058】
他の条件も同じにして印字を繰り返したところ、A4判サイズの全面ベタ画像において初期は良好であったが、2,000枚付近からベタ画像に掠れが出始めた。6,000枚では画像の掠れが顕著となり実用に耐えない状態になった。
【0059】
ベタ画像は先端から現像ローラの131回転分と供給ローラの441回転分の長さまでは十分な画像濃度が得られているが、その後はベタ画像に掠れが発生している。現像ローラ13と供給ローラ44上のトナーが消費されてしまい、供給ローラ44に供給されるべきトナーが不十分になって発生してしまう現象であると考えられた。
【0060】
ここで、6,000枚の時点で感光体ドラム7の回転周面線速度を108mm/secに戻し、現像ローラ13及び供給ローラ44の回転周面線速度も同じように戻してみると、この画像の掠れ不良は一気に解消した。
【0061】
種々検討した結果、この画像の掠れ不良の現象は、供給ローラ44を高速回転することによって引き起こされていることがわかった。つまり、供給ローラ44が高速回転すると、その遠心力によって非磁性一成分トナーが供給ローラ44の円周方向に弾き飛ばされ、供給ローラ44に付着することが出来なくなるためであると考えられる。
【0062】
そこで、本発明者は、供給ローラ44が高速回転しても、その遠心力でトナーが弾き飛ばされるのを防ぎ供給ローラ44に十分なトナーが供給されるようにするには、どのようにすればよいかを考えた。
【0063】
そして、非磁性一成分トナーそのものの粒径を大きくして個々のトナーを重くすることは出来ないが、非磁性一成分トナーよりも10倍以上も粒径が大きくて比重も重い二成分現像方式で使用されている磁性キャリアをトナーに混入すると、磁性キャリアの重さに助成されてトナーが供給ローラ44に付着することが出来るのではないかと考えた。
【0064】
つまり、この場合も、二成分現像方法の原理で、非磁性一成分トナーに磁性キャリアを混入させると、摩擦帯電したトナーが磁性キャリア付着する。その結果トナーと磁性キャリアが一体となった状態で供給ローラ44に近づく。
【0065】
磁性キャリアと結びついたトナーは、全体として大きな自重を持ったことになり、供給ローラ44の遠心力でも弾き飛ばされにくくなり、供給ローラ44に良く付着する。その結果、現像ローラ13と供給ローラ44の一周分後に発生するベタ画像の掠れが解消することが判明した。
【実施例1】
【0066】
このベタ画像の掠れ解消の実験では、図1に示したものと同様の、カラーページプリンタ(SPEEDIA−N3600(カシオ計算機製))を用い、印字速度を外部より制御する方法で行った。
【0067】
この実施例1では、あらかじめ図1に示すプリンタ1の図2に示す現像器42内に20gのトナーが先行して投入されている(以下このトナーを先行投入トナーと言う)。そして、使用開始時にユーザがトナーカートリッヂ40を装着しトナーを補給する方式を行っている。また、この先行投入トナーには磁性キャリアが混合される。
【0068】
すなわち、平均粒径7μmの非磁性一成分トナー(本機はカラープリンタであるが、ここでは黒色トナーのみを使用する)と平均粒径80μmの球形フェライトキャリアとを用意し、以下の内容で混合して攪拌して複数の磁性キャリア入りの先行投入トナーを作成した。
【0069】
先行投入トナーA:トナーを20g、キャリアを2g
先行投入トナーB:トナーを20g、キャリアを1g
先行投入トナーC:トナーを20g、キャリアを0.5g
先行投入トナーD:トナーを20g、キャリアを0g
【0070】
これらの混合物である、磁性キャリア入りの先行投入トナーを、各現像装置12の現像器42に全量投入した。また、トナーカートリッヂ40には同じ平均粒径7μmの黒トナーを220g充填したものを4本用意し、各現像装置12に装着した。
【0071】
以上の現像装置12を、図1に示したプリンタ1のカラー位置及び黒の位置に装着し印字を開始した。装着後本体電源をONすると本体装置調整のための空回転動作が入りカートリッヂ40から補給されるトナーと先行投入トナーが混合攪拌される。
【0072】
最初に印字速度を変えて全面ベタ(A4判サイズ横送り)の画像を印字し、掠れ有無の画像評価を実施した。印字速度の変更は感光体ドラム7の速度を変えることを基本とし、他の部材の速度は同じ比率で可変するようにした。
【0073】
感光体ドラム7の速度は、プリンタ1の基本線速度を108mm/secとし、順次120mm/sec、130mm/sec、140mm/sec、150mm/sec、と変更して実施した。
【0074】
図3(a),(b),(c)は、上記先行投入トナーA、B、C、Dと、感光体ドラム7の回転周面線速度(以下、単に感光体線速度という)の変化に対応する掠れ評価、及び印字枚数の多少に対応する掠れ評価を示す図表である。
【0075】
図3(a)は、感光体ドラム7の感光体線速度を、108mm/sec、120mm/sec、130mm/sec、140mm/sec、150mm/sec、と変化させたことに対する先行投入トナーA、B、C、Dにおける画像掠れの有無に対する評価を示している。結果は表1に示すように、キャリアを混合していない先行投入トナーDの150mm/secの場合以外は良好な画像であった。
【0076】
初期評価終了後、いずれの先行投入トナーA、B、C、Dにおいても良好な画像形成が得られた印字速度140mm/secに印字速度を固定して印字を開始した。
【0077】
印字条件は、各現像装置毎の印字率を1.7%とし、A4判の2枚ごと間欠印字とした。画像サンプルは印字開始後500枚、1000枚、以後1000枚毎に行い、各現像装置での全ベタ印字における画像の掠れを評価した。
【0078】
図3(b)は、その評価結果を示す図表である。先行投入トナーAは印字速度140mm/secで4000枚の印字時点でも良好な結果を示している。他の先行投入トナーB、C、Dのように、キャリアが無いかキャリアが有ってもその量が少ないと、早い印字枚数の時点から掠れが生じてしまうことが判明する。
【0079】
次に、上記3000枚を印字した時点で、感光体線速度を再び108mm/sec、120mm/sec、130mm/sec、140mm/sec、150mm/sec、と変化させて、ベタ画像の掠れ有無の評価を実施した。
【0080】
図3(c)は、その評価結果を示す図表である。表3に示すように、少量のキャリアを混合したものでも、感光体線速度が120mm/sec、又は130mm/secまで速くなっても、ベタ画像の掠れが無く、キャリア混合の効果があることが判明する。
【0081】
特に、トナー20gに対してキャリアを2g混入したキャリアの混入量が最も多い先行投入トナーAの場合は、感光体線速度が140mm/secまで速くなっても、ベタ画像の掠れが無く、良好な画像を形成できることが判明する。
【0082】
以上の結果から、二成分現像剤用の球形フェライトキャリアを非磁性一成分トナーに混合することは、非磁性一成分トナー現像器において、供給ローラ44の回転を速くして印字処理を高速化させたときに、トナーの供給ローラ44への補給という点で有効な方法であることが判明した。
【実施例2】
【0083】
実施例1では先行投入トナーにあらかじめ球形フェライトキャリアを混合する方法を示したが、球形フェライトキャリアをトナーカートリッヂ40に予め混入しても同様の効果が得られる。
【0084】
この実施例2では、4色の非磁性一成分トナー220gに、各々30gの球形フェライトキャリアを投入し攪拌混合した後、トナーカートリッジナー40に投入した。先行投入トナーには球形フェライトキャリアを含まない非磁性一成分トナーを投入した。
【0085】
これらの現像装置12及びトナーカートリッヂ40を図1のプリンタ1に搭載し、感光体線速度を140mm/secとし、印字率を各色1.7%として2枚ごとの間欠印字を行った。その結果は、トナーが無くなるまで画像掠れの無い良好な印字が継続した。
【実施例3】
【0086】
実施例2において印字を終了した現像装置12に、球形フェライトキャリアを含まない非磁性一成分トナーが充填されたトナーカートリッジ40を装着し、印字を続けたところ良好な印字を継続することが出来た。
【実施例4】
【0087】
球形フェライトキャリアを5g混合された非磁性一成分トナーの混合物をトナーカートリッジ40に充填し、このトナーカートリッジ40を、実施例3において印字を終了した現像装置12に装着し、印字を続けたところキャリアを含まないものより良好な印字結果が得られた。
[失敗例]
【0088】
4色の非磁性一成分トナー220gに各々30gの球形フェライトキャリアを投入し攪拌混合した後、トナーカートリッジ40に投入した。先行投入トナーには球形フェライトキャリアを含まない非磁性一成分トナーを投入した。
【0089】
1本目のトナーカートリッジ40が空になったあと、同じく非磁性一成分トナー220gに球形フェライトキャリア30gを混合したものを投入したトナーカートリッジ40を現像装置12に搭載し印字を繰り返した。
【0090】
そうすると、2本目のトナーカートリッジ40のトナーが無くなる近傍でキャリアによる白スジが画像に発生した。さらに3本目の同様構成のトナーカートリッジ40を搭載して印字を繰り返したところ、トナーが無くなる近傍で著しい白スジが多発した。
【0091】
これにより、非磁性一成分トナーに対する球形フェライトキャリアの混入量が多すぎると画像に白スジが発生して、画像の品質が低下することが判明する。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、非磁性一成分トナーを用いる画像形成装置において感光体ドラム、現像ローラ、供給ローラを長時間高速回転させて高速印字を行っても、かすれのない高品質の画像形成を維持できる画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 画像形成装置(プリンタ)
2 画像形成部
3 中間転写ベルトユニット
4 給紙部
5 両面印刷用搬送ユニット
6(6M、6C、6Y、6K) 画像形成ユニット
7(7m、7c、7y、7k) 感光体ドラム
8 クリーナ
9 帯電ローラ
11 光書込ヘッド
12 現像装置
13 現像ローラ
14 転写ベルト
15 駆動ローラ
16 従動ローラ
17 ベルト位置制御機構
18 一次転写ローラ
19 廃トナー回収容器
21 給紙カセット
22 用紙取出ローラ
23 給送ローラ
24 捌きローラ
25 待機搬送ローラ対
26 二次転写ローラ
27 ベルト式熱定着装置
28 搬出ローラ対
29 排紙トレー
31 排紙ローラ対
32a 開始返送路
32b 中間返送路
32c 終端返送路
33a、33b、33c、33d 返送ローラ対
35 クリーニング部
36 取り込みローラ
37 押圧ローラ
38 上部トナーホッパー
39 下部トナーホッパー
40 トナーカートリッジ
41 外装フレーム
42 現像器
43 ドラムユニット
44 供給ローラ
45 ドクターブレード
46 攪拌部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ゴム弾性を有する現像ローラ、スポンジ製の供給ローラ、及びトナー層を形成するためのドクターブレードを有する現像装置にて非磁性一成分トナーを使用して現像を行う画像形成装置であって、
前記非磁性一成分トナーに対し球形の2成分現像剤用の球形フェライトキャリアを前記トナーよりも少ない量で混合して現像剤とする、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記球形フェライトキャリアの前記非磁性一成分トナーに対する混合は、前記現像装置に先行投入されている前記非磁性一成分トナーに対して行われる、ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記球形フェライトキャリアの前記非磁性一成分トナーに対する混合比率は、前記非磁性一成分トナーの20gに対して前記球形フェライトキャリアは2gである、ことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記球形フェライトキャリアの前記非磁性一成分トナーに対する混合は、トナーカートリッジ内に収容されている前記非磁性一成分トナーに対して行われる、ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記球形フェライトキャリアの前記非磁性一成分トナーに対する混合比率は、前記非磁性一成分トナーの220gに対して前記球形フェライトキャリアは30gである、ことを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−8196(P2012−8196A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141563(P2010−141563)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】