説明

画像形成装置

【課題】現像剤の流動性変化により現像剤排出特性が変化してしまった場合においても、安定した現像剤排出特性を達成することで、現像剤溢れや画像濃度ムラを抑制する。
【解決手段】、第一の搬送スクリュー25又は第二の搬送スクリュー26の回転速度を検知する搬送スクリュー回転速度検知手段Zが検知した回転速度が所定の回転速度以下の場合に、現像スリーブ28の回転速度を所定の回転速度に減速する制御を行う制御手段(回転速度検出部、CPU、制御回路)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、記録画像表示装置、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーとキャリアを混合した2成分現像剤を用いた画像形成装置がある。2成分現像剤を用いた現像法は、キャリアとトナーの摩擦帯電によりトナーに電荷を付与し、電荷が付与されたトナーを潜像に対して静電的に付着させることによって画像を形成する方法である。そのため、キャリアの帯電付与能力の低下を低減することが必要である。
【0003】
そこで、キャリアの帯電付与能力低下の防止手段として、キャリアを含んだ補給剤を現像装置へ補給することにより帯電性能の劣化を抑制した画像形成装置が提案されている。この方式では、現像装置内に新しい現像剤又はキャリアの補給装置を設けている。そして、補給装置からの新しい現像剤又はキャリアの補給より過剰になった現像装置内の余剰現像剤を、現像装置の壁面に設けられた現像剤排出口より排出させて回収する。
【0004】
しかしながら一般に、印字率の低い原稿の画像形成処理が行なわれる割合が多いと、攪拌スクリューによる攪拌・摺擦や、現像スリーブ(現像剤担持体)上のトナー層を均一にする為の規制部材との摺擦を受ける時間が長くなる。このため、トナーに含まれている電荷制御や流動性制御の為の外添剤が、剥れたり、トナー表面に埋め込まれたりして、帯電性能や流動性が悪化してしまう。
【0005】
その結果、排出不良により現像剤量が増え、現像装置から現像剤が溢れだし、画像を汚してしまうことがあった。また、排出過多により現像剤量が減り、現像スリーブに対し十分な現像剤を供給できないことでコート不良が発生し、画像濃度ムラが発生することがあった。特に現像剤溢れ現象は、現像装置から溢れでた現像剤が画像形成装置本体を汚すことで、転写不良や定着ローラを傷つける要因となる。
【0006】
そこで、特許文献1では、現像剤の排出口を開閉するシャッタ部材を設け、現像剤の排出量を調整している。また、特許文献2においては、現像容器内の現像剤搬送部材の搬送能力に差を設け、現像剤の排出量を調整している。具体的には排出口近傍における現像剤搬送部材の現像剤搬送能力を、排出口近傍で大きくし、排出口近傍から現像剤搬送方向下流側及び上流側の領域で小さくしている。また、特許文献3では、現像スリーブと攪拌スクリューを別駆動で駆動させることで現像剤量を適正化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−277041号公報
【特許文献2】特開2004−206088号公報
【特許文献3】特開平8−76597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来記述においては以下のような課題があった。
【0009】
特許文献1の構成では、シャッタ開閉のために稼動モータが必要となるため現像器構成が煩雑となり、大型化してしまうといった課題がある。また、シャッタ等を用いて極微量の現像剤を精度良く排出させることは難しいため現像剤量を安定して維持することは難しかった。
【0010】
特許文献2の構成では、現像剤排出口近傍の現像剤搬送能力を搬送方向で差をつける構成であるため、現像剤排出口近傍で現像剤滞留部が発生する。この滞留部では現像剤面が安定しない為、不安定な排出が繰り返されてしまう。このため、現像剤溢れや画像濃度ムラを完全に防止することは難しかった。
【0011】
特許文献3の構成では、現像剤量バランスの変化等に伴いトルクが変動し、現像スリーブ回転速度に変化が生じた場合にも、攪拌スクリューの回転速度を一定に制御させる。このため、現像剤搬送バランスが崩れてしまい、結果として現像剤溢れや画像濃度ムラを発生させてしまうことがあった。
【0012】
さらに、他の現像剤流動性の変化要因として、現像剤近傍の温度が大きく依存していることが近年わかってきた。
【0013】
そこで本発明は、現像剤の流動性変化により現像剤排出特性が変化してしまった場合においても、安定した現像剤排出特性を達成することで、現像剤溢れや画像濃度ムラを抑制できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、表面に静電潜像を形成される像担持体と、表面に担持したトナーとキャリアから成る二成分現像剤を前記像担持体の静電潜像へ搬送し、トナー像として現像する現像剤担持体と、前記現像剤担持体へ搬送する前記二成分現像剤を収容する現像室と、前記現像室の下方に配置され、前記現像剤担持体から回収した前記二成分現像剤を収容する攪拌室と、前記現像室内に配置され、前記現像剤担持体へ前記二成分現像剤を搬送する第一の搬送部材と、前記攪拌室内に配置され、現像後に前記現像剤担持体に残った前記二成分現像剤を回収して搬送する第二の搬送部材と、前記現像剤担持体を駆動する第一の駆動装置と、少なくとも前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材のいずれか一方を駆動する第二の駆動装置と、前記第一の搬送部材又は第二の搬送部材の回転速度を検知する検知手段と、を有する画像形成装置において、前記検知手段が検知した回転速度が所定の回転速度以下の場合に、前記現像剤担持体の回転速度を所定の回転速度に減速する制御を行う制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、現像剤の流動性変化により現像剤排出特性が変化してしまった場合においても、安定した現像剤排出特性を達成することで、現像剤溢れや画像濃度ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図2】第1実施形態に係る現像装置の横断面図である。
【図3】(a)第1実施形態に係る現像装置の縦断面図である。(b)第1実施形態に係る現像装置における現像剤の流れと現像剤面状態を示す図である。
【図4】(a)安息角測定方法の説明図である。(b)現像剤流動性変化と温度の関係を説明する図である。
【図5】安息角を測定した現像剤を用いて現像剤排出特性を評価した結果を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る制御部のブロック図である。
【図7】第1実施形態に係る搬送部材の回転速度検知、現像剤担持体の回転速度制御のフローチャートである。
【図8】搬送部材の回転速度を徐々に上げる回転速度推移を説明する図である。
【図9】第1実施形態に係る画像形成装置における異常昇温時の現像装置の温度上昇を説明する図である。
【図10】第2実施形態に係る搬送部材の回転速度比に対する現像剤担持体の回転速度比のテーブルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
本発明に係る画像形成装置の第1実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置100の構成図である。図2は本実施形態に係る現像装置4の横断面図である。
【0018】
図1に示すように、画像形成装置100は、4つの画像形成部P(Pa、Pb、Pc、Pd)を有している。各画像形成部Pa〜Pdにおいて、感光体ドラム(像担持体)1a〜1dが、帯電器2a〜2dによって一様に帯電される。帯電された感光体ドラム1は、レーザービームスキャナ3a〜3dにより、画像信号に基づいたレーザー光を走査露光され、静電潜像が形成される。
【0019】
静電潜像は、現像装置4(4a、4b、4c、4d)によってイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色の現像剤を用いて各色のトナー像として現像される。現像剤としてトナーとキャリアを混合した2成分現像剤を使用する。図2に示すように、消費されたトナー量に応じて、補給剤がホッパ31から現像装置4に供給される。
【0020】
感光体ドラム1a〜1d上のトナー像は、一次転写ローラ(一次転写手段)6a〜6dによって中間転写ベルト(中間転写体)5に重ねて一次転写され、フルカラー画像が形成される。一次転写されずに感光体ドラム1上に残ったトナーは、クリーニング手段7a〜7dにより回収される。中間転写ベルト5は、ローラ61、62、63に懸架され、矢印方向に移動自在とされている。
【0021】
一方、給送カセット112に収容されたシートSは、給送ローラ13、給送ガイド111により、二次転写ローラ(二次転写手段)10と中間転写ベルト5とのニップ部に搬送され、トナー像を二次転写される。トナー像を転写されたシートSは、定着器16によりトナー像が定着され、排出トレー17に排出される。二次転写されずに中間転写ベルト5表面に残ったトナーは、中間転写ベルトクリーニング手段18により回収される。
【0022】
(現像装置4)
図3(a)は本実施形態に係る現像装置4の縦断面図である。図2、図3(a)に示すように、縦攪拌型の現像装置4は、現像容器22を有している。現像容器22内には、現像剤としてトナーとキャリアを含む二成分現像剤が収容されている。
【0023】
現像容器22の感光体ドラム1に対向した現像領域に相当する位置には開口部があり、この開口部に現像スリーブ(現像剤担持体)28が感光体ドラム方向に一部露出するように回転可能に配設されている。
【0024】
現像容器22の内部は、隔壁27によって現像室23と攪拌室24に上下に区画されている。現像室23内(現像室内)には、第一の搬送スクリュー(第一の搬送部材)25が配置されている。現像室23の下方に配置された攪拌室24内(攪拌室内)には、第二の搬送スクリュー(第二の搬送部材)26が配置されている。
【0025】
第一の搬送スクリュー25は、現像室23の底部に現像スリーブ28の軸方向に沿ってほぼ平行に配置されており、回転して現像室23内の現像剤を軸線方向に沿って一方向に搬送する。第二の搬送スクリュー26は、攪拌室24内の底部に第一の搬送スクリュー25とほぼ平行に配置され、現像後に現像スリーブ28に残った現像剤を回収して、第一の搬送スクリュー25と反対方向に搬送する。このように、搬送スクリュー25、26の回転による搬送によって、現像剤が隔壁27の両端部の開口部(即ち、連通部)11、12を通じて現像室23と攪拌室24との間で循環される。
【0026】
現像スリーブ28は、駆動モータ(第一の駆動装置)M1により駆動されている。搬送スクリュー25、26は駆動モータ(第二の駆動装置)M2により駆動されている。この構成により、現像スリーブ28の回転速度に対する搬送スクリュー25、26の回転速度の比率を任意に変更できる。なお、搬送スクリュー25、26は、異なる駆動モータにより駆動される構成であってもよい。
【0027】
なお、第一及び第二の搬送スクリュー25、26の直径は18mm、ピッチは20mmになっており、それぞれ750rpmの回転速度で回転している。現像スリーブ28の直径は20mm、感光体ドラム1の直径は30mm、現像スリーブ28と感光体ドラム1との最近接領域を約300μmとしている。
【0028】
現像スリーブ28はアルミニウムやステンレスのような非磁性材料で構成されている。現像スリーブ28の内部にはマグネットローラ28mが非回転状態で設置されている。マグネットローラ28mは、磁極N1、S1、N2、S2、N3が配置されている。
【0029】
規制ブレード29は、非磁性部材29a、鉄材のような磁性部材29bを有しており、現像スリーブ28の長手方向軸線に沿って延在している。非磁性部材29aは、板状のアルミニウムなどで形成されている。規制ブレード29の現像スリーブ28の表面との間隙を調整することによって、現像スリーブ28上に担持した現像剤磁気ブラシの穂切り量が規制されて現像領域へ搬送される現像剤量が調整される。
【0030】
現像領域においては、現像スリーブ28は、感光体ドラム1の移動方向と順方向で移動し、周速比は、感光体ドラムの1.75倍となっている。この周速比に関しては、0.5〜3.0倍の間で設定され、好ましくは、1.0〜2.0倍の間に設定されれば、何倍でも構わない。移動速度比を大きく設定すると現像効率はアップするが、大きすぎると、トナー飛散、現像剤劣化が発生する。逆に小さく設定すると現像効率がダウンするため、濃度低下が発生する。
【0031】
現像装置4の上部には、トナーとキャリアを混合した補給用2成分現像剤を収容するホッパ31が配置される。画像形成によって消費された分のトナーは、ホッパ31から補給スクリュー32により搬送され、現像剤補給口30を通過して、現像容器22に補給される。
【0032】
(現像剤の流れと現像剤面状態)
図3(b)は現像剤の流れと現像剤面状態を示す現像装置4の縦断面図である。図3(b)の実線で示した通り、第一の搬送スクリュー25の搬送方向下流側(開口部12側)における剤面高さが低く、第二の搬送スクリュー26の搬送方向下流側(開口部11側)は、現像剤面が高くなる傾向がある。
【0033】
尚、現像剤の剤面高さは、現像剤の流動性(もしくは凝集性)により変化することが知られている。特に、現像剤流動性が悪化すると汲み上げ効率並びに搬送効率が悪化するため、現像剤面高さの傾きが大きくなる(図3(b)の点線状態)。その結果、現像剤排出口40近傍の現像剤面が低下し余剰現像剤排出特性が低下することで、現像装置4内の現像剤量が増加(特に攪拌室24内の現像剤量)しつづけることになる。
【0034】
更に、現像剤流動性の変化により、攪拌室24から現像室23への現像剤流出量(つまり汲み上げ効率)が低下すると、攪拌室24側の現像剤量が増えることとなる。この状態から更に攪拌室24から現像室23への汲み上げ部(開口部11)近傍の現像剤量が増え、現像スリーブ28から搬送されてくる現像剤を現像装置内に取り込め(回収でき)なくなった時点で、図3(b)中のB部近傍より現像剤溢れ現象が発生する。
【0035】
(現像剤の凝集性の変化に伴う、現像剤の流動性変化)
ここで現像剤の流動性を、現像剤の安息角を測定することで評価した。図4(a)は安息角測定方法の説明図である。本実施形態におけるトナーの安息角Φは、以下の方法を用いて測定した。
【0036】
測定装置として、パウダーテスターPT−N型(ホソカワミクロン株式会社)を用いた。測定方法は、パウダーテスターPT−N型に付属する取り扱い説明書における安息角の測定に準拠する(篩301の目開き710μm、振動時間180s、振幅2mm以下)。すなわち、図4(a)に示すように、トナーをロート303から円盤302上に落下させ、この円盤302上に円錐状に堆積したトナーの母線と円盤302表面と現像剤500のなす角を安息角Φとして求める。
【0037】
実験は、現像装置4を恒温層内で、絶対水分量一定条件で温度を変化させながら(20℃、30℃、40℃、50℃にて)空回転を実施し、空回転時間1時間後の現像剤の安息角を評価した。なお現像装置における空回転条件は、画像形成装置条件と同一でおこなった。
【0038】
図4(b)はイエロートナーの実験の結果を示す図である。図4(b)に示すように、初期の現像剤の流動性特性として温度依存性が存在する。また、高温環境下においては安息角Φが大きく、つまり流動性が悪化する。これは温度が高くなるにつれて、トナー表面近傍に分散されたワックスのトナー表面への染み出しにより現像剤間での凝集性が上昇したためと考えられる。この傾向は、ワックス部数やワックス種類やトナーの融点により大きな差を有する。
【0039】
図5は安息角を測定した現像剤を用いて現像剤排出特性を評価した結果を示す図である。図5中の横軸は現像剤重量、縦軸は単位時間あたりの現像剤排出量を示している。
【0040】
現像剤排出特性は、現像剤量が低下しすぎてコート不良が発生しないこと、さらに現像剤量が増加しすぎて現像剤溢れが発生しない性能を求められる。本実施形態の現像装置4においては、初期現像剤量が330gに対し、コート不良が発生する現像剤量が250g以下、現像剤溢れが発生する現像剤量が450g以上であった。ここで、初期現像剤量とは、想定画像Dutyで、釣り合いのとれている現像剤量を中心現像剤量という。
【0041】
また、補給剤中に含まれるキャリアの比率(CD比)が10%に調整されている。従って、現像剤の補給が無い状態(白べた画像形成時)で現像剤の排出が止まり(排出量0mg/s)、250g以下の現像剤量にならないことが求められる。また、現像剤補給が最大の状態で、図5中のべた黒供給量線として示した補給剤(700mg)に含まれるキャリア量(70mg)以上の余剰現像剤が排出口40より排出され、現像剤量が450g以上増えないことが求められる。
【0042】
なお、本実施形態では、現像剤補給が最大の状態は、A3黒べた画像形成時であり、べた黒供給量線(排出量98mg/s)として示した補給剤は、700mgである。ここで、補給剤(700mg)=A3黒ベタ画像に使われるトナー量(630mg)+CD比10%分のキャリア量(70mg)となっている。また、単位時間当たりの排出量98(mg/s)=キャリア量70(mg)×420(mm)/300(mm/s)となる。ここで、420mmとはA3の副走査長さ、300mm/sとはプロセススピードである。
【0043】
従来は、現像剤量が少ない時点でコート不良が発生しなく、且つ現像剤量が多い時点で現像剤溢れが発生しないような現像剤排出口高さを見つけ出し適用してきた。しかしながら、図5からも明らかなように、実線で示した安息角40°現像剤ではコート不良が、点線で示した安息角60°現像剤では現像剤溢れが発生してしまうため、コート不良と現像剤溢れを両立できる現像剤排出口高さや形状が存在しないことがわかる。
【0044】
コート不良は現像剤量が少ない場合に発生するため、現像剤、特にキャリアを現像装置内に補充する必要がある。そのためには補給剤を補充すればよい。しかし、本実施形態のようにキャリアとトナーを含んだ補給剤の場合には、キャリアを足すことはトナーを同時に足すことになり、現像装置内のトナー濃度(TD比)が変化してしまう。特に印字比率が低い状況で補給を続けると、トナー消費が行われないため現像装置内のTD比が上昇していく。その結果、トナー帯電量が低下を引き起こし、飛散やカブリ現象を引き起こす。
【0045】
この対応として、補充され余剰トナーを感光ドラム上に吐き出すような制御も考えられるが、不要なトナーを吐き出すことでトナー消費量を増やすこととなり、ランニングコストが低下してしまう。
【0046】
そこで、本実施形態では、まず、流動性の良い現像剤(安息角40°現像剤)に対し、コート不良が発生しない排出口高さ(本実施形態では従来の排出口高さより、10mm高い位置)を見つけた(図5中の一点破線)。しかしながら、上述したように流動性の悪い現像剤(安息角60°現像剤)での排出特性が更に悪化することとなる(図5中の二点破線)。この現像剤流動性の変化に伴い、現像剤搬送方向で現像剤面傾きが大きくなることで現像剤排出量が低下するため、現像装置内の現像剤量が増えていく。その結果、搬送スクリュー25、26の回転軸上に懸かる駆動トルクが大きくなる。
【0047】
そこで、決定した現像剤排出口高さにおいて、搬送スクリュー25、26の回転速度の変化を検知し、搬送スクリュー25、26にかかる負荷変化を検知し、現像剤量の変化分を検知する。現像剤量が増加した場合には、検知結果に基づいて、現像スリーブ28の回転速度を現像剤溢れが発生しないように回転速度に下げて、現像剤量を安定化させる制御を行う。
【0048】
具体的に説明すると、本実施形態の現像装置4は、機能分離縦撹拌現像器であるため、現像剤の搬送は、搬送スクリュー25、26による現像剤循環と、現像スリーブ28による上(現像室23)から下(攪拌室24)への搬送の2種類があります。
【0049】
そして、現像スリーブ28の搬送力(つまり回転速度)が変わってない状態で、搬送スクリュー25、26の搬送力(つまり回転速度)が落ちてしまった場合、現像剤循環に対し上から下に搬送されている現像剤量が相対的に多くなってしまう。このため、下(攪拌室24)側に現像剤が多く溜まってしまう。これにより、攪拌室24の現像剤量が増えて溢れが発生してしまうため、スクリュー25、26の搬送力が落ちてしまった場合には、現像スリーブ28の搬送力を下げることで、攪拌室24への現像剤流入量を減らし、現像剤量バランスを適正化する。
【0050】
(制御部200)
図6は本実施形態の現像スリーブ28の回転速度を制御する制御部200のブロック図である。本実施形態においては、図6に示すように、制御部200は、搬送スクリュー回転速度検知手段Z、回転速度検出部201、CPU202、制御回路203を有している。回転速度検出部201、CPU202、制御回路203は、制御手段を構成する。
【0051】
搬送スクリュー回転速度検知手段(検知手段)Zは、第一、第二の搬送スクリュー25、26の回転速度を監視する。搬送スクリュー回転速度検知手段Zは、第一、第二の搬送スクリュー25、26の駆動モータM2であるDCブラシレスモータのロータ外周上に設けられた磁気センサである。
【0052】
一般的に、搬送スクリュー駆動トルクと現像剤量には相関がある。一般のモータ(ブラシレスDCモータ等)特性として、加速、減速の駆動条件や、負荷等によって、一定の回転速度に収束するまでの時間が異なり、一定以上の負荷がかかると所定回転速度まで到達出来ない。
【0053】
本実施形態では、制御タイミングは、画像形成シーケンス開始前である。よって、画像形成シーケンス開始の前回転時点で、搬送スクリュー回転速度検知手段Zにより第一、第二の搬送スクリュー25、26の回転速度を監視する。そして、回転速度検出部201、CPU202により、検知結果が所定回転速度以下か否かを判断する。そして、所定回転速度以下と判断した場合には、CPU202、制御回路203により、現像スリーブ28の回転速度を低下させる制御を行う。以下、この制御について具体的に説明する。
【0054】
図7は本実施形態の搬送スクリュー25、26の回転速度検知、現像スリーブ28の回転速度制御のフローチャートである。図7に示すように、画像形成がスタートすると、回転速度検知手段Z、回転速度検出部201により、搬送スクリュー25、26の回転開始から所定時間後(本実施形態では500ms後)の回転速度を検知する。そして、所定回転速度(本実施形態では750rpm)であるかを測定(S1)する。
【0055】
そして、検知回転速度が第2判断基準である所定回転速度に対し95%以下(713rpm以下)であるかを判断する(S2)。95%より大きい場合は、負荷の増加による搬送スクリュー25、26の回転速度の低下はないと判断し、現像スリーブ28の回転速度を維持して(S7)、S1に戻る。
【0056】
S2で95%以下であった場合は、検知回転速度が第2判断基準である所定回転速度に対し90%以下(675rpm以下)であるかを判断する(S3)。90%より大きい場合は、負荷の増加により搬送スクリュー25、26の回転速度が90%〜95%程度に低下していると判断する。そして、現像スリーブ28の回転速度を搬送スクリュー回転速度低下分だけ(95%、本実施形態では476rpm)減速して(S8)、S1に戻る。
【0057】
S3で90%以下であった場合は、検知回転速度が第3判断基準である所定回転速度に対し85%以下(637rpm以下)であるかを判断する(S4)。85%より大きい場合は、負荷の増加により搬送スクリュー25、26の回転速度が85%〜90%程度に低下していると判断する。そして、現像スリーブ28の回転速度を搬送スクリュー回転速度低下分だけ(90%、本実施形態では451rpm)減速して(S9)、S1に戻る。
【0058】
S4で85%以下であった場合は、検知回転速度が第4判断基準である所定回転速度に対し80%以下(600rpm以下)であるかを判断する(S5)。80%より大きい場合は、負荷の増加により搬送スクリュー25、26の回転速度が80%〜85%程度に低下していると判断する。そして、現像スリーブ28の回転速度を搬送スクリュー回転速度低下分だけ(85%、本実施形態では426rpm)減速して(S10)、S1に戻る。
【0059】
S5で80以下であった場合は、モータ回転不良と判断し、エラー表示して終了する(S6)。上記制御により、現像スリーブ28の回転速度制御を実施した後、現像剤流動性の改善や現像剤循環バランスが適正化され、搬送スクリュー25、26における回転速度が上位の判断基準へ戻った際に、それぞれ適正な現像スリーブ28の回転速度に戻る。
【0060】
なお、本実施形態では、搬送スクリュー25、26の回転速度のエラー判定基準を初期回転速度に対し80%として説明した。しかし、本発明は80%に限定されるものではなく、現像スリーブ28の低速化に伴う現像性の低下も考慮した適切なエラー閾値であればよい。
【0061】
上述した現像スリーブ28の回転速度制御の効果を確認する実験を行った。実験は、現像剤の流動性が悪化する高温高湿環境下(温度30℃、湿度80%)において、Duty変動過酷評価を20万回行った。このDuty変動過酷評価では、間欠モードで2万枚毎に「フルカラー低印字率(0%比率)チャート」と「フルカラー高印字率(100%比率)チャート」を交互に変更させる。
【0062】
その結果、本実施形態の制御を行わない場合には、現像剤量が減ることによるコート不良は未発生であったが、10万回までの低印字率耐久中に現像剤溢れが発生し、画像上に現像剤汚れを発生させてしまった。これに対し、本実施形態の制御を行った場合には、コート不良、現像剤溢れとも全く発生しなかった。
【0063】
また、現像剤量推移を確認したところ、本実施形態の制御を行わない場合には、300〜470gまで現像剤量が振れていて470g時点で溢れてしまった。これに対し、本実施形態の制御を行った場合には、320〜400g内で推移していた。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の制御によれば、現像剤流動性が悪化し、現像剤の循環バランスが変化し、現像剤溢れ現象が発生しやすい状況になった場合でも、現像スリーブ28の回転速度を制御することで、現像剤の循環バランスの適正化が計れる。これにより、コート不良を抑制しつつ現像剤溢れを抑制できる。
【0065】
なお、負荷の増加に伴い、搬送スクリュー25、26を所望回転速度で動作できなくなることがある。また、駆動モータM2を急速に立上げてしまうと、駆動モータM2への突入電流が大きくなり、ノイズとして高圧信号に重畳されてしまうと、横スジ画像不良が発生してしまう。そこで、駆動モータM2の立上げ制御として、図8に示すように、100msc毎に駆動モータM2の回転速度を徐々に上げる段階加速動作制御を採用することが多い。そこで、段階加速動作制御を採用した場合には、駆動モータM2の段階立ち上げ時の回転速度の推移や立ち上がり特性を検知し、その検知結果に基づき現像スリーブ28の回転速度を制御してもよい。
【0066】
[第2実施形態]
次に本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について図を用いて説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
本実施形態の画像形成装置は、上記第1実施形態の画像形成シーケンス開始の前回転時点に加えて、画像形成中においても、常に搬送スクリュー25、26の回転速度の検知、現像スリーブ28の回転速度の制御を行うものである。これにより、搬送スクリュー25、26の回転速度が変化した時点でリアルタイムに現像スリーブ28の回転速度を制御できる。
【0068】
図9に示すように、画像形成中に排気トナーフィルタがトナーにより根詰まりしたりして、異常昇温した場合に、現像剤流動性が悪化し、現像剤溢れが発生するおそれがある。このような場合でも、本実施形態の画像形成装置によれば、常時、搬送スクリュー25、26の回転速度を検知し、現像スリーブ28の回転速度の制御を行うため、現像剤溢れを抑制できる。また、エラー終了時に、異常昇温を発見し、排気トナーフィルタの根詰まり等を発見することができる。
【0069】
さらに、現像スリーブ28の回転速度を下げることで、現像スリーブ28の回転に伴う自己昇温を低減する効果も相乗され、本実施形態の制御を行わない場合に比べて、約4℃の昇温低減も達成することができる。
【0070】
[第3実施形態]
次に本発明に係る画像形成装置の第3実施形態について図を用いて説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図10は本実施形態の搬送スクリュー25、26の回転速度比に対する現像スリーブ28の回転速度比のテーブルを説明する図である。本実施形態の画像形成装置は、搬送スクリュー回転速度検知手段Zの結果に伴い、図10に示す制御テーブルを用いて、現像スリーブ28の回転速度を変更させることを特徴とする。
【0072】
図10に示すように、現像スリーブ28の回転速度の低下率は、搬送スクリュー25、26の回転速度の低下率以上に設定している。このため、現像剤面傾きが大きくなるにつれ、現像スリーブ28による現像剤搬送性が大きく低下することになり、現像剤溢れを効果的に抑制できる。
【0073】
なお、制御テーブルは、例えば本体に備えられた温度センサ等の結果を用いて現像剤流動性変化を予測したテーブルとして採用すれば、更に現像剤溢れを効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0074】
M1、M2 …駆動モータ
P …画像形成部
S …シート
Z …搬送スクリュー回転速度検知手段(検知手段)
1a〜1d …感光体ドラム(像担持体)
4a〜4d …現像装置
5 …中間転写ベルト
6 …一次転写ローラ
7 …クリーニング手段
8 …除電装置
10 …二次転写ローラ
11、12 …開口部
13 …給送ローラ
16 …定着器
17 …排出トレー
18 …中間転写ベルトクリーニング手段
22 …現像容器
23 …現像室
24 …攪拌室
25、26 …搬送スクリュー
27 …隔壁
28 …現像スリーブ(現像剤担持体)
28m …マグネットローラ
29 …穂切り部材
31 …ホッパ
32 …補給スクリュー
40 …現像剤排出口
100 …画像形成装置
111 …給送ガイド
112 …給送カセット
200 …制御部
201 …回転速度検出部
202 …CPU
203 …制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に静電潜像を形成される像担持体と、
表面に担持したトナーとキャリアから成る二成分現像剤を前記像担持体の静電潜像へ搬送し、トナー像として現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体へ搬送する前記二成分現像剤を収容する現像室と、
前記現像室の下方に配置され、前記現像剤担持体から回収した前記二成分現像剤を収容する攪拌室と、
前記現像室内に配置され、前記現像剤担持体へ前記二成分現像剤を搬送する第一の搬送部材と、
前記攪拌室内に配置され、現像後に前記現像剤担持体に残った前記二成分現像剤を回収して搬送する第二の搬送部材と、
前記現像剤担持体を駆動する第一の駆動装置と、
少なくとも前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材のいずれか一方を駆動する第二の駆動装置と、
前記第一の搬送部材又は第二の搬送部材の回転速度を検知する検知手段と、
を有する画像形成装置において、
前記検知手段が検知した回転速度が所定の回転速度以下の場合に、前記現像剤担持体の回転速度を所定の回転速度に減速する制御を行う制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像剤担持体の回転速度の低下率は、前記制御手段により検知した回転速度の低下率以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検知手段が検知した回転速度に合わせた、前記現像剤担持体の所定の回転速度を決めた制御テーブルを用いて、前記現像剤担持体の回転速度を減速することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検知手段が検知した回転速度が所定の回転速度以下の場合に、エラー表示を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段の制御タイミングは、画像形成シーケンス開始前であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段の制御タイミングは、画像形成中であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88687(P2013−88687A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230339(P2011−230339)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】