説明

画像形成装置

【課題】 多重露光による高解像度処理では、高解像度画像を低解像度画像に変換した際に高解像度画像の位相により下端エッジ部の画素値が変わるために、エッジ部を検出しづらく、また、下端エッジ部付近の画素値を間引き過ぎてしまうと、高解像度化処理の画質に影響を及ぼすという課題がある。
【解決手段】 高解像度化画像を2値化処理して下端エッジ部を検出するとともに、下端エッジ部の画素値によって、定着爆発の抑制処理における間引きパターンを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真エンジンへの多重露光処理データに対して、定着爆発を抑えるためのトナー載り量を抑えるための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真を用いた画像形成装置において、紙搬送方向に垂直な線画部の下端に発生する定着爆発という現象が知られている。この現象は、紙媒体上に転写されたトナー像が、定着器の垂直方向の圧力を受けて定着プロセスが完了する前に、紙が含有する水分が定着器の熱によって水蒸気化し、空気的な圧力によって崩されることによって起こるものと考えられている。
【0003】
この課題に対して、線画の下端部分のトナー量を軽減することによって、トナー像の崩れる量を軽減し、現象を軽減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、この紙搬送方向に垂直な線画の下端部のエッジを検出し、エッジ部分の上部の画素値を減らした画像データを生成する技術を開示している。
【0005】
一方、電子写真方式の画像形成装置において、ドラム面に対するレーザー光を多重照射して、レーザーの走査線の間に潜像のピークを作ることによって、レーザーの実走査間隔で表現される解像度よりも高い解像度で画像書き込みを行う技術がある(特許文献2)。特許文献2では、元の高解像度画像の内容によって、画像形成装置の解像度でのレーザー光の強弱を決定し、複数の画素を重ね合わせてレーザーの走査線間に画像を形成することで、元の高解像度画像よりも低い解像度の走査線に従ってレーザー光を照射しても、元の高解像度画像を再現できる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-152766号公報
【特許文献2】特許第3275050号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のレーザーの多重照射による高解像度化処理を行った場合でも、定着爆発の現象自体は無くならず、定着爆発の抑制処理と多重照射による高解像度化処理を同時に行う必要がある。
【0008】
上記特許文献2のような高解像度化処理によって得られる画像は多値画像である。特許文献1では多値画像において所定領域の平均濃度を2値化閾値として下端エッジの判別に用いているが、特許文献1のような技術によって得られた多値画像の下端エッジ部の画素値には高解像度化を成立させるための意味があるため、単純に平均化によって得られた閾値で2値化するのは必ずしも適切ではなく、また、下端部の画素値を減らしすぎると、高解像度処理が成り立たなくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
所定の解像度で紙媒体に画像を書き込む画像形成手段(102)と、
前記所定の解像度よりも高い解像度の2値画像データを生成する画像生成手段(301,303,304)と、
画像生成手段で生成された画像データを前記所定の解像度を持つ多値画像データに変換する解像度変換手段(304)と、
解像度変換手段で解像度変換された画像データに対して、線画の下端エッジ部付近の画像データを減らす間引き処理手段(305)を持ち、
前記解像度変換手段(304)は、所定のフィルタ係数を高解像度画像に乗算して得られる多値画像データを前記所定の解像度に合わせて間引き処理を行うものであり(S405,S405)、
前記間引き処理手段(305)は、
解像度変換手段が生成した多値画像データを2値化し(S702)、
2値化画像から線画部を検出する(S703)とともに、
検出された線画部の下端エッジ部の画素値に応じて、線画の下端エッジ部付近から減らす画像データパターンを選択して(S705)、
線画の下端エッジ部付近から画像データを減らす(S706)処理を行う
ことを特徴とする画像形成装置(100)
【発明の効果】
【0010】
レーザーの多重露光を利用した高解像度化処理画像に対して、定着爆発の軽減処理を行う場合に、1200dpi画像の位相に応じて適切な間引きパターンの選択を行うことで、定着爆発の軽減効果と高解像度化を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】プリンタ部の断面図である。
【図3】コントローラの画像処理フローを示すブロック図である。
【図4】解像度変換部の処理フローチャートの一例を示す図である。
【図5】解像度変換部の処理結果の一例を示す図である。
【図6】解像度変換部の処理で使用されるフィルタ係数の一例を示す図である。
【図7】間引き処理部の処理フローチャートの一例を示す図である。
【図8】間引き処理部の処理における線画検出処理の処理結果の例を示す図である。
【図9】間引き処理部の処理で使用される間引きパターンの一例を示す図である。
【図10】間引き処理部の処理結果の一例を示す図である。
【図11】間引き処理部の処理フローチャートの別の例を示す図である。
【図12】間引き処理部の別の処理例による処理結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
[実施例1]
本発明の実施形態における画像形成装置100の概略ブロック図を図1に示す。
【0014】
本実施形態の画像形成装置100は、各種制御や画像処理を行うためのプログラムやデータを格納するためのROM102,RAM103、ROM102,RAM103に格納されたプログラムに従って、画像形成装置の各部を制御するCPU101、ユーザーに各種の設定を行わせ、設定を表示する操作部103、ネットワークから印刷データを受信するためのネットワークI/F106を有する。さらに、受信した印刷データを変換した画像データを記録用紙に画像形成するプリンタ部104を有する。画像形成装置100は、ネットワーク111を介して、画像形成装置100に対してプリントの実行を指示するとともにデータを送信するパソコン(PC)110と接続されている。
【0015】
本実施形態において、画像形成装置100が有するプリンタ部104は電子写真方式のモノクロ画像形成装置であるものとする。プリンタ部104の動作について、図2に示す断面図を用いて説明する。
【0016】
プリンタ部104は、CPU101が行う画像処理によって生成された画像データに応じた露光時間で露光光を駆動し静電潜像を形成し、この静電潜像を現像してトナー像を形成する。そして、このトナー像を記録媒体201へ転写したのちにその記録媒体上のトナー像を定着させる。帯電ユニットは、感光体202を帯電させるための帯電器203を備える。各注入帯電器にはスリーブ203Sが設けられている。
【0017】
感光体202は、アルミシリンダの外周に有機光導伝層を塗布して構成し、駆動モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転可能である。駆動モータは感光体202を画像形成動作に応じて反時計周り方向に回転させることが可能である。
【0018】
露光ユニットは、感光体202へスキャナ部204より露光光を照射し、感光体の表面を選択的に露光することにより、静電潜像を形成するように構成されている。
【0019】
現像ユニットは、静電潜像を可視化するために、現像器206を備えている。そして、各現像器には、スリーブ206Sが設けられている。
【0020】
転写ユニットは、感光体202から中間転写体208へトナー像を転写するために、中間転写体208を時計周り方向に回転させる。そして、感光体202とその対向に位置する一次転写ローラ207の回転に伴って、トナー像を転写する。
【0021】
一次転写ローラ207に適当なバイアス電圧を印加すると共に感光体202の回転速度と中間転写体208の回転速度に差をつけることにより、効率良く単色トナー像を中間転写体208上に転写する(これを一次転写という。)。
【0022】
更に転写ユニットは、トナー像を中間転写体208上に転写し、トナー像を中間転写体208の回転に伴い、二次転写ローラ209まで搬送する。更に記録媒体201を給紙トレイ200から二次転写ローラ209へ搬送し、記録媒体201に中間転写体208上のトナー像を転写する。この二次転写ローラ209に適当なバイアス電圧を印加して、静電的にトナー像を転写する(これを二次転写という。)。二次転写ローラ209は、記録媒体201上にトナー像を転写している間、209aの位置で記録媒体201に当接し、処理後は209bの位置に離間する。
【0023】
定着ユニットは、記録媒体201に転写されたトナー像を記録媒体201に溶融定着させるために、記録媒体201を加熱する定着ローラ212と記録媒体201を定着ローラ212に圧接させるための加圧ローラ213を備えている。定着ローラ212と加圧ローラ213は中空状に形成され、内部にそれぞれヒータ214、215が内蔵されている。定着装置211は、トナー像を保持した記録媒体201を定着ローラ212とか圧ローラ213により搬送するとともに、熱および圧力を加え、トナーを記録媒体201に定着させる。
【0024】
トナー定着後の記録媒体201は、その後図示しない排出ローラによって図示しない排紙トレイに排出して画像形成動作を終了する。
【0025】
クリーニングユニット210は、中間転写体208上に残ったトナーをクリーニングするものであり、中間転写体208上に形成されたトナー像を記録媒体201に転写した後に残った廃トナーは、クリーナ容器に蓄えられる。
【0026】
次に、CPU101がRAM103に格納されたプログラムを読みだして実行することによって行う画像処理の各部について、図3を用いて説明する。
【0027】
まず、画像生成部301は、前述のPC110から送信される印刷データから、印刷処理が可能なビットマップの画像データを生成する。ここで印刷データは、PDL(Page Description Language)と呼ばれるページ画像データを作成するためのプリンタ記述言語が一般的であり、通常、文字やグラフィックス、イメージ等のデータの描画命令が含まれている。このような印刷データを解析しラスタライズ処理することで所定の解像度を持つ、多値(たとえば8ビット)ビットマップ画像データ生成する。ガンマ補正部302は、画像生成部301で生成した画像データに対して、後述するスクリーン処理部303でスクリーン処理された画像データが記録紙へと転写された際の濃度特性が所望となるよう、一次元のルックアップテーブルを用いて入力される画像データを補正する。前記濃度特性は、後述するスクリーン処理部303が持つスクリーンの線数や角度、形状などに応じて変化するため、補正に用いるルックアップテーブルは、前記スクリーンに対応付けて保持する必要がある。
【0028】
次に、スクリーン処理部303は、プリンタ部104で印刷可能な1ビットの画像データに変換するスクリーン処理を行う。スクリーン処理部303は、PC110での印刷指定時にユーザーによって設定された解像度情報600dpi/1200dpiやスクリーン種別(スクリーン線数や角度)に応じた閾値マトリックスを保持し、設定に応じて適切な閾値マトリックスを用いてスクリーン処理を行う。
【0029】
スクリーン処理は、入力される画像データを、閾値マトリックスを用いてプリンタ部102で印刷可能な1ビットの画像データに変換する処理である。閾値マトリックスは、幅M、高さNのM×N個の閾値をマトリックス状に配置したものである。スクリーン処理は、画像データの各画素に対応した閾値を閾値マトリックスから読み出し、画素の値と閾値との比較を行い、画素の値が閾値以上であれば1を、そうでなければ0を出力することによって画像データを1ビットに変換する。閾値マトリックスは、画像データの横方向にM画素、縦方向にN画素の周期でタイル状に繰り返し適用される。
【0030】
なお、本実施形態において、スクリーン処理はこれに限るものではなく、一定の周期を持って画像データを二値化する方法であれば良い。
【0031】
スクリーン処理部303は、上記のようにして、600dpi1bitないし1200dpi1bitの画像データを生成し、後段の解像度変換部304に送る。
【0032】
次に、解像度変換部304は、600dpi1bitの画像データをそのまま出力する一方で、1200dpi1bitの画像データを600dpi多値の画像データに変換する。本実施形態において、解像度変換部304で出力する多値データのビット数は、4bitであるものとする。本ブロックでの詳細な処理については、後でフローチャートを用いて、詳しく説明する。
【0033】
間引き処理部305は、解像度変換部304が生成した600dpi1bitないし600dpi4bitの画像データに対して、定着爆発を抑制するために、線画部の下端エッジを検出し、検出した下端エッジから1〜4ライン上の部分の画素をパターンで間引く処理を行う。間引き処理部の処理についても、後でフローチャートを用いて、詳細に説明する。
【0034】
次に、CPU101がRAM102に格納された制御プログラムを実行することによって実現する解像度変換部304が、スクリーン処理部303で生成した画像データを入力として行う解像度変換の処理について、図4のフローチャートを用いて詳細に説明する。ここで、解像度変換部304に入力される画像をI(xs,ys)と表現することとする。
【0035】
まず、解像度変換部304は、S401において、PC110でユーザーが設定し、画像形成装置100に伝達された画像解像度情報を検査する。解像度が600dpiであれば、600dpi1bit画像をそのまま出力し(S410)、処理を終える。解像度が1200dpiであれば、S402に処理を移す。
【0036】
次に、解像度変換部304は、S402において、解像度変換後の600dpi4bit画像データのためのメモリを確保する。このメモリ領域をOと表現することとし、この600dpiでの座標系を(x,y)と表現することとする。こうして表現した座標系(x,y)の全てについて(S403)、S404〜S407の処理を行う。
【0037】
次に、解像度変換部304は、S404において、600dpiでの座標(x,y)を2倍した数値を、入力画像である1200dpi画像の座標系(xs,ys)とし、S405において、1200dpiの入力画像I(xs,ys)と周囲の8画素を取得する。すなわち、
I(xs-1,ys-1)
I(xs, ys-1)
I(xs+1, ys-1)
I(xs-1, ys)
I(xs, ys)
I(xs+1, ys)
I(xs-1, ys+1)
I(xs, ys+1)
I(xs+1, ys+1)
を取得する。
【0038】
次に、解像度変換部304は、S406において、これら9画素に対して、フィルタ係数を用いて重み付き加算を行う。このフィルタ処理において用いるフィルタ係数のひとつの例を図6に示す。フィルタ係数1(600)は、中央に4を配置し、周囲8画素に中央からの距離に応じて減少する重み係数を持っている。このフィルタ係数は、プリンタ部102の状態に応じて、変更することも考えられるが、本実施例では、フィルタ係数1に示すような数値を持つものとして説明する。これら9個の係数値をS405で取得した9画素の画素値とを乗算したのちに加算する。すなわち、フィルタ係数1を用いた場合のO(x,y)の画素値を以下のように計算する。
【0039】
O(x,y) = f11*I(xs-1,ys-1) +
f12*I(xs, ys-1) +
f13*I(xs+1, ys-1) +
f21*I(xs-1, ys) +
f22*I(xs, ys) +
f23*I(xs+1, ys) +
f31*I(xs-1, ys+1) +
f32*I(xs, ys+1) +
f33*I(xs+1, ys+1)
このように計算した画素値は、元の1200dpi画像が1bitであるため、0から16の値を持つことになるが、O(x,y)を4bit(0〜15)で表現するために、ここでは、画素値16は15に丸めるものとする。
【0040】
解像度変換部304は、S407において、上記のように計算した画素値O(x,y)を出力して処理を終える。
【0041】
図4に示したフローチャートに従って、処理を行った結果の模式図を図5に示す。図5(a)は解像度変換前の1200dpi1bitの画像データを1bit画素値の0を白で、1を黒で表現したものであり、図5(b)は解像度変換処理後の600dpi4bitの画像データを画素値を黒の濃さで表現したものである。
【0042】
図5(b)において、501.502は、ともに1200dpi画像データ中における6画素の幅を持つ線画であるが、線画の開始位置の位相が異なっている。
【0043】
このことによって、線画部501を解像度変換処理した結果は、図5(b)において、画素値12を持つライン511、画素値15を持つ2つのライン512、画素値4を持つライン513から構成されることになる。同様に計算すると、線画部502を解像度変換処理した結果は、図5(b)において、画素値4を持つライン521、画素値15を持つ2つのライン522、画素値12を持つライン523から構成されることになる。
【0044】
プリンタ部104は、それぞれの画素値の大きさによって、ドラム202上にレーザー204が照射するレーザー光の強度を制御するが、レーザーの光径は600dpiの走査線間隔である42ミクロンよりもおよそ2倍程度大きい。そのため、照射されたレーザー光によるドラム202面上の潜像は複数のレーザー光による潜像の重ね合わせによる像となる。たとえば、線画部の下端部であるライン512とライン513の重ね合わせでは、ライン512をライン513の画素値4に応じた分だけ太らせるような潜像を形成することで、元の1200dpi画像の持つ画像位置を表現することが可能となる。
【0045】
次に、CPU101がRAM102に格納された制御プログラムを実行して動作することによって実現する間引き処理部305が行う処理について、図7のフローチャートを用いて詳細に説明する。ここで、間引き処理部305が解像度変換部304の処理結果として受け取る画像をI(x,y)と表現する。
【0046】
まず、間引き処理部305は、S701において、PC110でユーザーが設定し、画像形成装置100に伝達された画像解像度情報を検査する。解像度が600dpiであれば、S711に処理を移し、解像度が1200dpiであれば、S702に処理を移す。
【0047】
間引き処理部305は、S711において、y方向に3画素以上の幅を持つ線画を検出し、S712で検出した線画の下端位置のY座標をYe、ライン幅をYhとして記憶する。次に、間引き処理部305は、S713でライン幅Yhに応じた間引きパターンを選択して、S706で選択したパターンを用いた間引き処理を行う。
【0048】
間引き処理部305がS712で行う検出処理と記憶する下端位置Ye,ライン幅Yhの模式図を図8に示す。
【0049】
線画検出は、入力画像I(x,y)800をX方向に8画素毎のブロックで処理するものとする。8画素毎に短冊状に区切られた画素ブロック801でY方向に上から黒画素が存在するかどうかを検査して、得られた黒画素のブロック802の存在を検出する。検出して得られたブロックの一番下端のY座標を下端エッジY座標Yhとして記憶し、ブロックの高さをライン幅Yhとして記憶する。
【0050】
I(x,y)は1bitの画像であるので、検出処理は、X方向の全てにわたって画素値1であるラインを検出し、X方向の全てにわたって画素値0であるラインが次に出現する座標値をYeとすればよく、画素値1であるライン検出位置から画素値0であるライン検出位置までの幅をYhとすればよい。
【0051】
S713で選択する間引きパターンは、解像度が600dpiの場合は、後述1200dpiの場合のように、ライン幅と下端エッジの画素値によって選択するのではなく、ライン幅によってのみ決定される。選択する間引きパターンの詳細は、1200dpi処理での説明の際に詳しく述べる。
【0052】
さて、解像度設定が1200dpiの場合、間引き処理部305は、S702において、入力画像I(x,y)を所定の閾値に対して、I(x,y)が閾値以上の場合には1、閾値以下の場合には0となるように閾値処理して2値化画像B(x,y)を生成する。ここでの閾値は0以外であるものとする。すなわち、画像が存在するところは画素値1となるように2値化を行う。
【0053】
次に、間引き処理部305は、S703でI(x,y)に対して線画検出を行い、S704で下端エッジY座標Yeとライン幅Yhを記憶したのと同様に、S711において、B(x,y)を入力画像として線画検出を行い、S704において、YeとYhを記憶する。ただし、解像度設定が1200dpiの場合は、検出すべき線画部のライン幅は、4ライン以上とする。1200dpiで6ライン幅の線画は600dpiに解像度変換した場合には、3ラインではなく、4ラインとなるからである。
【0054】
次に、間引き処理部305は、S705において、下端エッジ部における入力画像I(x,Ye)の画素値、および、ライン幅に応じて間引きパターンを選択して、S706で選択した間引きパターンを用いて間引き処理を行う。
【0055】
ここで、S705で選択する間引きパターンの詳細について、図9を用いて説明する。
【0056】
本実施形態においては、600dpiで4ライン幅から6ライン幅の線画に対して、間引き処理を行うものとし、4ラインから6ラインに対する間引きパターンを設定するが、プリンタ部102の特性によっては、より多くのライン数に対する間引きパターンを設定してもよく、本発明の主旨はライン数を限定するものではない。
【0057】
すでに図5でみたように、1200dpi座標での描画位置によって、同じ線画が600dpi4bitの画像に変換された際に、下端エッジ部の画素値が異なる場合がある。しかしながら、解像度変換部304で用いるフィルタ係数がフィルタ係数600のように決定されているならば、下端エッジ部の画素値は、12ないし4となる。このことを利用して、間引きパターン選択は間引きパターン表900の中から選択する。
【0058】
下端エッジ部の画素値が4であって、
ライン幅Yhが4ラインである場合には、間引きパターン901
ライン幅Yhが5ラインである場合には、間引きパターン903
ライン幅Yhが6ラインである場合には、間引きパターン905
下端エッジ部の画素値が12であって、
ライン幅Yhが4ラインである場合には、間引きパターン902
ライン幅Yhが5ラインである場合には、間引きパターン904
ライン幅Yhが6ラインである場合には、間引きパターン906
を選択する。
【0059】
下端エッジ部の画素値が4である場合には、その1ライン上のラインの画素値は15であり、ドラム202面上の潜像において主要なライン部を構成する画素値となるため、極力間引かないパターンを使用する。このことによって、下端ライン部のエッジ特性を保持しつつ、ライン部付近のトナー量を減らし、定着爆発の影響を軽減することができる。
【0060】
一方、解像度設定が600dpiの場合には、S713の間引きパターン選択において、下端エッジ部の画素値は1bit値で1(4bit換算では15)となるので、ライン幅Yhに従って、間引きパターン907,908,909の中から間引きパターンを選択する。
【0061】
次に、間引き処理部305は、S706において、解像度設定600dpi/1200dpi共通の処理として、選択されたパターン中の白画素の部分を、検出されている線画部に置き換えて、出力して、間引き処理部305の処理を終える。
【0062】
上記のようにして、間引き処理部305の処理を行った結果の画像の模式図を図10に示す。
【0063】
画像生成部301からスクリーン処理部303が生成した1200dpi1bitの画像データとして生成した入力画像1001中の6ラインの幅を持った線画部1004は解像度変換部304の処理で、600dpi4bit画像1002中の線画部1006のように、ライン下端部に画素値4を持つ4ラインの線画なる。一方、線画部1005は解像度変換処理部304の処理で、600dpi4bit画像1002中の線画部1007のように、ライン下端部に画素値12を持つ4ラインの線画になる。1002のそれぞれの線画部に対して、間引き処理部305の処理を行った結果は、間引き処理画像1003中の線画部1008、1009であり、線画部1008では下端エッジ部付近を過度に間引いてしまうことを防いでいる。
【0064】
上記説明により、レーザーの多重露光を利用した高解像度化処理画像に対して、定着爆発の軽減処理を行う場合に、1200dpi画像の位相に応じて適切な間引きパターンの選択を行うことで、定着爆発の軽減効果と高解像度化を両立させることができる。
【0065】
[実施例2]
実施例1では、間引き処理部305は、入力画像に対する2値化を画素値0以外は1とするようにして行い、間引きパターンの選択をライン下端部の画素値を考慮に入れて行っていたが、本実施例では、間引き処理部305が行う2値化処理を解像度変換部304で使用するフィルタ係数に応じて求めて、間引きパターンの選択を単純化する例について述べる。
【0066】
本実施例において、間引き処理部305が行う処理のフローの例を図11を用いて説明する。
まず、間引き処理部305は、S1101において、PC110でユーザーが設定し、画像形成装置100に伝達された画像解像度情報を検査する。解像度が600dpiであれば、S1111に処理を移し、解像度が1200dpiであれば、S1102に処理を移す。S1111〜S1113については、S711 〜S713とまったく同様であるため説明を省略する。
【0067】
解像度設定が1200dpiの場合、間引き処理部305は、S1102において、解像度変換部304が使用するフィルタ係数から、2値化閾値を計算する。すなわち、閾値Thは、
Th = ( (f11+f12+f13) + (f11+f12+f13)+(f21+f22+f23) ) / 2
フィルタ係数600の数値を用いた場合には、Th = (4 + 4+8) /2 で閾値は8となる。
【0068】
次に、間引き処理部305は、S1103において、入力画像I(x,y)が、S1102で求めた閾値以上の場合には1、閾値以下の場合には0となるように閾値処理して2値化画像B(x,y)を生成する。
【0069】
次に、間引き処理部305は、S1104において、B(x,y)を入力画像として線画検出を行い、S1104において、YeとYhを記憶する。本実施例においては、S1104で検出する線画部は600dpiと同じく3ライン以上とし、S1105とS1106は600dpi時の処理とまったく同様である。間引きパターンの選択は、600dpi時・1200dpi時とも、ライン幅のみによって決定し、ライン幅Yhに従って、間引きパターン907,908,909の中から間引きパターンを選択する。
【0070】
最後に、間引き処理部305は、S1107において、S1106,S1113で選択された間引きパターンを、入力画像I(x,y)の線画部から間引き処理を行って、処理を終える。
【0071】
本実施例の間引き処理部305による処理結果画像の模式図を図12に示す。最終的な間引き処理後画像において、線画部1201の画素値が4の下端エッジ部は2値化処理で黒画素とはみなされなくなり、ライン検出処理における下端エッジ部は、その上の画素値が15のラインとなる。また、線画部1202の画素値が12の下端エッジ部は2値化処理でも黒画素となるため、下端エッジ部は画素値が12のラインから始まり、その上のラインが間引き処理によって間引かれる。
【0072】
上記説明したように、本実施例では、過度の間引きを抑えつつ、処理間引きパターン選択の処理を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0073】
100 画像形成装置
101 CPU
104 プリンタ部
105 操作部
110 PC
303 スクリーン処理部
304 解像度変換部
305 間引き処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の解像度で紙媒体に画像を書き込む画像形成手段(102)と、
前記所定の解像度よりも高い解像度の2値画像データを生成する画像生成手段(301,303,304)と、
画像生成手段で生成された画像データを前記所定の解像度を持つ多値画像データに変換する解像度変換手段(304)と、
解像度変換手段で解像度変換された画像データに対して、線画の下端エッジ部付近の画像データを減らす間引き処理手段(305)を持ち、
前記解像度変換手段(304)は、所定のフィルタ係数を高解像度画像に乗算して得られる多値画像データを前記所定の解像度に合わせて間引き処理を行うものであり(S405,S405)、
前記間引き処理手段(305)は、
解像度変換手段が生成した多値画像データを2値化し(S702)、
2値化画像から線画部を検出する(S703)とともに、
検出された線画部の下端エッジ部の画素値に応じて、線画の下端エッジ部付近から減らす画像データパターンを選択して(S705)、
線画の下端エッジ部付近から画像データを減らす(S706)処理を行う
ことを特徴とする画像形成装置(100)。
【請求項2】
前記間引き処理手段(305)において、
線画部の下端エッジ部付近から減らす画像データパターンの選択は、下端エッジ部の画素値および線画のライン幅から決定される(S705)
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置(100)。
【請求項3】
所定の解像度で紙媒体に画像を書き込む画像形成手段(102)と、
前記所定の解像度よりも高い解像度の2値画像データを生成する画像生成手段(301,303,304)と、
画像生成手段で生成された画像データを前記所定の解像度を持つ多値画像データに変換する解像度変換手段(304)と、
解像度変換手段で解像度変換された画像データに対して、線画の下端エッジ部付近の画像データを減らす間引き処理手段(305)を持ち、
前記解像度変換手段(304)は、所定のフィルタ係数を高解像度画像に乗算して得られる多値画像データを前記所定の解像度に合わせて間引き処理を行うものであり(S405,S405)、
前記間引き処理手段(305)は、
解像度変換手段で用いられるフィルタ係数から2値化閾値を決定し(S1102)
決定された閾値をもとにして解像度変換手段が生成した多値画像データを2値化し(S1103)、
2値化画像から線画部を検出し(S1104)、
検出された線画部のライン幅に応じて、線画の下端エッジ部付近から減らす画像データパターンを選択して(S1106)、
線画の下端エッジ部付近から画像データを減らす(S1106)処理を行う
ことを特徴とする画像形成装置(100)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−9123(P2013−9123A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140011(P2011−140011)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】