説明

画像形成部材に用いる反応性シランエステルを生成する方法

【課題】シランエステル中のたとえばオリゴマーなどの一部の不純物を低減または排除するシランエステルの製造方法またはプロセスを提供する。
【解決手段】カルボン酸の無水塩を供給する工程と、前記カルボン酸無水塩を、第一の溶媒と、前記、第一の溶媒に実質的に混和しない第二の溶媒と、を含む二相反応系に添加する工程と、前記カルボン酸無水塩と、前記第一の溶媒と、前記第二の溶媒と、の混合物を加熱する工程と、前記カルボン酸無水塩と、前記第一の溶媒と、前記第二の溶媒と、の混合物にハロゲン化アルキル置換基を含むシランを添加してシランエステルを生成する工程と、さらに、低級アルカン溶媒で生成したシランエステルを抽出する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランエステルを生成するプロセスまたは方法に関し、具体的には、生成中のシランエステルの尚早な重合を抑制するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の具体例により、シランエステルを生成するプロセスまたは方法を説明する。具体的には、本開示は生成中のシランエステルの尚早な重合を抑制するプロセスに関する。 本開示は、電子写真または静電複写画像(electrostatographic images)の形成に用いられる画像化部材、光導電体(photoconductor)、または光受容体(photoreceptor)の層または成分(components)に好適に用いられる材料の形成に関して適用できる。本開示はそのような材料に関連して述べるが、そのプロセスまたは方法は一般にシランエステルの生成およびこれを含む画像化部材に適用される。
【0003】
ゼログラフィなどの電子写真用途において、電荷保持表面(光導電体、光受容体または画像化表面(imaging surface)など)は静電的に(electrostatically)帯電し、複写される元の画像の光パターンに露光され、これに合致させて表面を選択的に放電する。得られたその表面上の荷電および放電領域のパターンが元の画像に合致する静電気荷電パターン(静電潜像)を形成する。その潜像は、「トナー」と呼ばれる、静電気に引きつけられる微細な粉末と接触させて現像される。トナーは、表面の静電荷により画像領域に保持される。こうして、複写される元の光画像に合致するトナー画像が生じる。次いでトナー画像は基材(紙など)に転写され、画像がそこに固定されて、複写される画像の永久記録が形成される。現像に続いて、電荷保持表面に残った過剰のトナーはその表面から除去される。
【0004】
上記のプロセスは既知であり、荷電表面が種々の方法で画像に沿って放電される原画像からの光レンズコピー(light lens copying)および電子的に生成または保存された原画像からの印刷用途に有用である。電荷保持基材上に電荷が画像に沿って付与されるイオンプロジェクション装置も同様に作動する。
【0005】
電子写真の画像形成部材は、通常多層光受容体であり、負荷電システム(negative charging system)では、基材支持体(substrate support)、任意の導電層、任意の電荷遮断層(charge blocking layer)、任意の接着層、電荷発生層、および電荷移動層を含む。光受容体または画像形成部材は、フレキシブルベルト、硬質ドラムなどを含むいくつかの形状を取ることができる。
【0006】
任意の上塗り(overcoating)層(保護膜など)は、電荷移動層を保護するために塗布されてきた。上塗り層は、たとえば耐摩耗性や耐擦傷性の強化をもたらし、画像形成部材の寿命の延長など機械的機能を強化する。
【0007】
シランエステル材料は、電子写真プリンタや静電複写プリンタに用いられる画像形成部材や光受容体のシリコーン系(silicone−based)ハードコートまたはオーバーコートの前駆体材料として用いることができる。光受容体にシリコーンハードコートを形成するのに用いる好適なシランエステルの一例は次に示す式(I)のシランエステルである。
【0008】
【化1】

【0009】
式(I)のシランエステルは通常、次の式(II)に示すジカルボン酸の塩をシロキサン基を含むアルキルハライドと反応させることによって生成する。
【0010】
【化2】

【0011】
式(II)のジカルボン酸は、DMF−トルエン混合物中の炭酸カリウムとの反応でジカリウム塩に変換される。反応で生成する水は次にトルエン蒸留により共沸して(azeotropically)除去される。水の除去に続いて、得られたジカリウム塩をたとえば3−ヨードプロピルメチルジイソプロポキシシラン(3−iodopropyl methyl diisopropoxy silane)などのハロゲン化アルキル基を含むジアルキルオキシシランと反応させる。ジカリウム塩はシランと縮合反応して、たとえば式(I)のシランエステルなどのシランエステルを形成する。
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,298,697号明細書
【特許文献2】米国特許第4,338,390号明細書
【特許文献3】米国特許第4,560,635号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記のプロセスに伴ういくつかの制限がある。第一に、水の除去がこのプロセスの重要なステップである。カルボン酸ジカリウム塩の、ジアルコキシシランとの縮合反応は、反応剤(reactant)のひとつと、反応生成物である(resultant)シランエステル生成物の両者が反応性に富み(highly labile)、痕跡量の水があると尚早に重合を開始するほどに、水に対して非常に敏感である。第二に、カルボン酸ジカリウム塩から水を除去してもなお、アルコキシシランとの縮合反応で得られるシランエステルは、少なくとも約5〜約10パーセントのオリゴマーを含むいくつかの不純物を含有する。したがって、反応生成物であるシランエステルは、その不純物を除去するためにカラムクロマトグラフィを用いて精製しなければならない。この要件に伴う不利益は、このシランエステルを処理してオリゴマー不純物を除去するカラムクロマトグラフィ法は、一般に工業規模では好適あるいは実用的でない。具体的には、シランエステルのカラムクロマトグラフィは、サイクル回数と単位製造コスト(unit manufacturing costs)を増大させる。特に、光受容体グレードの(photoreceptor grade)製品を達成または得る(achieve or obtain)のはコスト高(costly)になる。
【0014】
上記の観点から、シランエステル中のたとえばオリゴマーなどの一部の不純物を低減または排除するシランエステルの製造方法またはプロセスを提供することが望ましい。さらに、オリゴマーを含まない(oligomer free)シランエステルを得るために、反応後の処理の必要性(the post reaction processing requirements)を低減したシランエステル生成プロセスを提供することが望ましい。これらの生成物は、画像形成部材または光受容体(感光体)の製造に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、二相反応系中でカルボン酸の無水塩をシランと反応させる工程を含む、シランエステルを生成する方法であって、シランは、ハロアルキル置換基を含み、二相反応系は、(i)第一の溶媒と、(ii)実質的に第一の溶媒と混和しない第二の溶媒と、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
シランエステルを形成する方法の一態様を説明する。本方法は、二相反応系におけるカルボン酸の無水塩とシランとの反応工程を含む。ここで、前記シランは、ハロアルキル置換基を含み、前記二相反応系は、(i)第一の溶媒および(ii)第一の溶媒と実質的に混和しない(non−miscible)第二の溶媒とを含む。
【0017】
他の態様として、シランエステルを調製する方法をここに開示する。本方法は、カルボン酸の無水塩を供給する工程と、そのカルボン酸無水塩を、第一の溶媒、および第一の溶媒と実質的に混和しない第二の溶媒、を含む二相反応系に添加する工程と、そのカルボン酸無水塩と第一の溶媒と第二の溶媒からなる混合物を加熱する工程と、その混合物にハロゲン化アルキル置換基を有するシランを添加してシランエステルを生成させる工程と、さらに低級アルカン溶媒でシランエステルを抽出する工程と、を含む。
【0018】
さらに別の態様において、本開示はシランエステルを生成する方法を提供する。この方法は、カルボン酸の無水塩を形成する工程と、二相反応系においてそのカルボン酸無水塩をシランと反応させる工程と、を含む。その二相反応系は、実質的に水を含まず、非プロトン性極性溶媒(polar aprotic solvent)と低級アルカン溶媒とを含む。
【0019】
本開示は種々の例示する態様において、カルボン酸塩を、ハロゲン化アルキル置換基を有するシランと結合させることにより、シランエステルを形成する方法またはプロセスに関する。本プロセスはいかなる水も実質的に含まず、第一の溶媒とその第一の溶媒と実質的に混和しない第二の溶媒とを含む二相反応系を利用する。実施態様において、本開示によるシランエステルを生成するプロセスは、非プロトン性極性溶媒とその非プロトン性極性溶媒に実質的に混和しない溶媒とを含む二相反応系にカルボン酸塩を添加する工程と、そのカルボン酸無水塩を含む二相反応系を加熱する工程と、そのカルボン酸無水塩を含む二相反応系にハロゲン化アルキル置換基を含むシランを添加する工程と、そのカルボン酸無水塩とシランを含む二相反応/溶媒系を加熱してシランエステルを生成させる工程と、次いでそのシランエステル生成物を抽出する工程とを含む。
【0020】
この二相反応系は、第一の溶媒と、その第一の溶媒に実質的に混和しない第二の溶媒とを含む。なお、ここで用いる第一の溶媒に実質的に混和しない第二の溶媒とは、第一の溶媒に混和しない(non−miscible)かまたは一部しか混和しない(only partially miscible)溶媒を指す。実施態様において、第一の溶媒は非プロトン性極性溶媒である。非プロトン性極性溶媒として好適な物質は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、塩化メチレン、ヘキサメチルホスホラミド(hexamethylphosphoramide、HMPA)などを含むがこれらに限定されない。
【0021】
また、別の態様では、第一の溶媒は、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、塩化メチレン、ヘキサメチルホスホラミド、スルホラン(sulfolane)を含む群から選択される。
【0022】
第二の溶媒は、第一の溶媒に実質的に混和しない。実施態様において、第一の溶媒は非プロトン性極性溶媒であり、第二の溶媒は低級アルカンである。低級アルカンはたとえばDMFにその一部しか混和しない。好適な低級アルカンには、約3〜約9の炭素原子を有するアルカンが含まれる。好適な低級アルカンの例として、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。一実施態様において、二相反応系はDMFとシクロヘキサンとを含む。
【0023】
また別の態様では、第二の溶媒は、ペンタン、イソペンタン、へキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択されるアルカンである。
【0024】
実施態様において、シランエステルを生成するプロセスまたは方法は実質的に水を含まない。前記のごとく、反応系内の少量の水の存在はカルボン酸塩とシランとの間の縮合反応中にその反応剤およびシラン生成物の尚早な重合を誘発する。実施態様において、カルボン酸塩はカルボン酸の無水塩である。カルボン酸の無水塩はそのような塩を生成する、いかなる好適な方法によって生成してもよい。実施態様において、カルボン酸の無水塩は溶媒中でカルボン酸を無水アルカリ金属化合物と混合することにより生成される。実施態様において、第一の溶媒は非プロトン性極性溶媒で、カルボン酸の無水塩の生成に用いられる溶媒は、シランエステルを生成するための二相反応システムに用いられるのと同じ非プロトン性極性溶媒である。たとえば、第一の溶媒がDMFである一実施態様において、式(II)のジカルボン酸の無水ジカリウム塩は、DMF中で式(II)のジカルボン酸を無水炭酸カリウムと混合することにより生成することができる。無水アルカリ金属化合物はカルボン酸のタイプに基づいて選択され、具体的には、アルカリ金属原子の数がカルボン酸中のカルボキシル基の数に対応するように選択される。すなわち、アルカリ金属原子対カルボキシル基の化学両論比は1:1である。たとえば、モノ−、ジ−、またはトリ−カルボン酸塩のカルボン酸塩から生成するシランエステルにおいて、無水アルカリ金属材料はそれぞれ1、2、または3つのアルカリ金属原子を含む。カルボン酸の塩を生成するのに好適な、いかなるアルカリ金属化合物も用いることができる。好適なアルカリ金属化合物の非限定的な例としては、無水炭酸カリウムを挙げることができる。
【0025】
カルボン酸は決定的(critical)ではなくていかなるカルボン酸でもよく、特定の目的にとって望ましいシランエステルを生成するのに望みに応じて如何なる数のカルボキシル基を含んでもよい。実施態様において、カルボン酸はたとえばモノ−、ジ−、またはトリ−カルボン酸でもよい。式(I)のシランエステルの生成において、たとえば、カルボン酸は式(II)のカルボン酸であってもよい。式(I)のシランエステルは、光画像形成部材中のある層を形成するのに好適な材料である。
【0026】
本開示によるプロセスで用いられるシランは一般に式(III)で表すことができる。
【0027】
【化3】

【0028】
式(III)において、Rはハロゲン化アルキル置換基である。このハロゲン化アルキルのハロゲンは、たとえば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などである。このハロゲン化アルキルのアルキル部分は決定的なものではない。ハロゲン化アルキルの好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどが含まれるがこれらに限定されない。アルキルは直鎖アルキルでも分岐アルキルでもよい。R、R、およびRの基は決定的なものでなく、望ましいシランエステルの生成に好適な如何なる置換基を含んでもよい。R、R、および/またはR置換基として好適な基の例には水素、直鎖アルキル基または分岐アルキル基、置換直鎖アルキル基または分岐アルキル基、アルコキシ基などが含まれるがこれらに限定されない。実施態様において、シランはハロゲン化アルキル置換基および少なくともひとつのアルコキシ基を含む。アルコキシ置換基は、直鎖アルコキシ基または分岐アルコキシ基でよい。一実施態様において、式(I)のシランエステルの生成にシランとして3−ヨードプロピルメチルジイソプロピルシランが用いられる。
【0029】
実施態様において、シランエステルを生成するプロセスは、たとえば非プロトン性極性溶媒などの第一の溶媒と、その非プロトン性極性溶媒とは実質的に混和しない第二の溶媒とを含む二相反応系に、無水カルボン酸塩を添加する工程を含む。無水カルボン酸塩を二相反応系に添加した後に混合物が加熱される。無水カルボン酸塩と反応系の混合物の加熱は、約50℃〜約100℃、または約50℃〜約90℃の温度で少なくとも2時間、より好ましくは約2〜約8時間行われる。加熱は、たとえば、無水カルボン酸塩と反応系の溶液を還流することによって行われる。
【0030】
無水カルボン酸塩と二相反応系を含む系の加熱に続いて、シランを無水カルボン酸塩と反応させ、シランエステル生成物を生成する。実施態様において、シランエステルはシランを無水カルボン酸塩と二相反応系に添加し、次いで加熱することによって生成する。加熱は約50℃〜約100℃の温度で少なくとも約4時間または反応が完結するまで行われる。いつ反応が完結するかを確定するために反応を追跡するのに、たとえば、HPLCを含むいかなる好適な方法を用いてもよい。
【0031】
シランをカルボン酸塩と反応させた後、反応物は冷却してよい。いかなる特定の理論にもよらないが、反応中、カルボン酸塩は主として反応系の非プロトン性極性溶媒相に存在し、シランは主としてアルカン相に存在する。生成すると、シランエステル生成物もまた主としてアルカン相に存在する。シラン生成物はさらに低級アルカン溶媒に抽出してもよい。抽出はオリゴマー副産物ではなく所望のシランエステルのみを抽出すべきである。低級アルカン溶媒への抽出は所望のシランエステル生成物を得るために必要に応じて繰り返してもよい。
【0032】
低級アルカン溶媒による抽出の後、低級アルカン溶媒相は痕跡量の非プロトン性極性溶媒を含む可能性がある。非プロトン性極性溶媒は、たとえば、少量の飽和食塩水溶液での洗浄により低級アルカン溶媒相から除去できる。非プロトン性極性溶媒の除去の後、粗シランエステル生成物は乾燥および低級アルカン溶媒の蒸発によって得ることができる。
【0033】
得られるシランエステル生成物は実質的にオリゴマー分を含まない。シランエステル生成物からのオリゴマー分がないということは、シランエステル生成物を精製しオリゴマーを除去する後処理または精製ステップの削減を可能にする。たとえば、実質的にオリゴマー分を含まないシランエステル生成物はそのような不純物を除去するのにしばしば必要な厳密なカラムクロマトグラフィにかける必要がないであろう。
【0034】
二相反応系の反応で得られるシランエステルは極性の低い(less−polar)少量の不純物を未だ含んでいる可能性がある。極性の低い不純物はシリカゲルの濾過カラム精製で除去できる。シリカゲルによる濾過カラム精製は技術的にはカラムクロマトグラフィの一形態であるが、従来のカラムクロマトグラフィ法に比べて用いるシリカゲルが少ないという点で従来のカラムクロマトグラフィと異なる。すなわち、従来のカラムクロマトグラフィ法では重量比で約10:1のシリカを用いるのに対して、濾過カラム精製は通常、重量比で約3:1のシリカを用いる。さらに、濾過カラム精製法は画分を取る一方で、従来のカラムクロマトグラフィ法はこれを取らない。粗シランエステル生成物は望みに応じてさらに精製してよい。シランエステルを精製するのに好適などの方法も望みのレベルの純度を達成するために用いることができる。
【0035】
上記の精製シランエステルを用いて得られる画像形成部材または光受容体もまたここに開示される。画像形成部材または光受容体は、基材支持体(substrate support)、電荷発生層、および精製シランエステルを含む電荷輸送層および上塗り層を含む。
【0036】
本実施態様例による光受容体は、光受容体に用いるのに好適な他の層を含んでもよい。たとえば、光受容体は反り防止(anti−curl)層、上塗り層、および接着剤層を含んでよい。
【0037】
光受容体または画像形成部材は、たとえばコピー、複製、印刷、ファクシミリなどの好適なプロセスのいずれにも利用することができる。通常、画像形成プロセスは、画像形成部材上への均一な電荷を形成する工程と、静電潜像を形成するために、画像形成部材に画像形状の活性化照射(activating radiation)して露光する工程と、マーキング材料の画像を形成するために、静電的に引きつけられる(electrostatically attractable)マーキング材料で潜像を現像する工程と、好適な基材にマーキング材料画像を転写する工程と、を含む。所望により、転写したマーキング材料画像は基材に固定してもよく、第二の基材に転写してもよい。
【0038】
静電的に引きつけられるマーキング材料は周知であり、たとえば熱硬化性樹脂、顔料などの着色材、帯電添加剤(charge additive)、および表面添加剤を含む。通常のマーキング材料は米国特許第4,560,635号、第4,298,697号、および第4,338,390号に開示され、その全開示が参照によりここに含まれる。
【0039】
活性化照射は、白色光(incandescent light)、イメージバー(image bar)、レーザーなど、いかなる好適な装置からのものでもよい。画像形成部材上の静電潜像の極性は、正または負のいずれでもよい。光発生顔料は主として入射光を吸収して電子および正孔を生成する作用を行う。負に帯電した(negatively charged)画像形成部材において、正孔は画像形成表面(imaging surface)に移動して(transport)負電荷が中和され(neutralize)、電子は基材(substrate)に移動して光放電される。一方、正に帯電した(positively charged)画像形成部材においては、電子は画像形成表面に移動して正電荷を中和し、正孔は基材に移動して光放電を可能にする。適量の正孔および電子移動分子の選択により二極移動(bipolar transport)が達成でき、すなわち画像形成部材が負または正に均一に帯電され、この部材はその後光放電される。
【0040】
シランエステルを形成するプロセスをさらに以下の実施例を参照して説明する。実施例は方法またはプロセスを説明するのが目的であり、決して制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0041】
ディーンスタークフラスコ(Dean−Stark flask)を備え、シクロヘキサンを入れたアルゴン雰囲気下の500ml容の丸底フラスコに式(I)の無水カルボン酸ジカリウム塩(anhydrous di−potassium salt of the carboxylic acid)8.00g(14.76mmol)、試薬級DMF140mlおよびシクロヘキサン60mlを入れた。その混合物を約80℃の温度で2時間還流し、反応混合物をなるべく乾燥するようにした。この混合物の還流の間少量の共沸物(azeotrope)が得られた。 共沸物の下方の相(lower phase)は、大部分がDMFであった(NMR分光法による)。
【0042】
還流の後、式(II)のカルボン酸の無水ジカリウム塩、DMF、およびシクロヘキサンの混合物に3−ヨードプロピルメチルジイソプロピルシラン9.75g(29.53mmol)を一度に加え、約80℃で4時間還流した。混合物の還流が終わりシランとカルボン酸の反応が終了した後、引き続く2回のシクロヘキサン抽出を行った。シクロヘキサン相に幾分かのDMFが残るので、シクロヘキサン相を少量の飽和食塩水溶液で洗浄してこれを除去した。DMFの除去の後、乾燥およびシクロヘキサン相の蒸発により式(I)のシランエステルの粗成物が得られた。
【0043】
図2は本プロセス、すなわち二相反応システムを用いるプロセスで得られたシランエステル生成物のゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)チャートを示す。比較のために、図3は非プロトン性極性溶媒中のみで行われた反応で得られたシランエステル生成物の通常のGPCチャートを示す。図3の11.145分での肩部(shoulder)は、シランエステルの尚早な重合で生じる、オリゴマーおよびまたは反応生成物である。図2に示すように、本開示による二相反応系で得られるシランエステルは、そのような肩部を含まず、シランエステル生成物は実質的にオリゴマーを含まないことを示す。
【0044】
粗シランエステルは、シリカゲルによる濾過カラム精製によって精製した。粗シランエステル生成物を溶媒蒸発により1重量部のシリカゲル上に乗せ、次いで3重量部のシリカゲルからなるシリカゲルプラグ(plug)上に乗せた。非極性の不純物は、少量のトルエンを用いて濾過により除去した。次いで、5パーセント(v/v)の酢酸エチル/トルエン溶媒を用いてシランエステルの大部分を濾過により除去した。最終生成物の純度は、非プロトン性極性溶媒のみでの反応で得られ、通常のカラムクロマトグラフィによって精製した式(I)のシランエステルに匹敵した。
【0045】
本開示に従って二相反応系を用いるプロセスで生成した式(I)のシランエステル生成物は光画像形成部材(photo imaging member)として好適である。光画像形成部材に用いるためのシランエステルの適合性はポット・ライフ試験(pot−life test)におけるシランエステルの性能で示される。時間とともに、シランエステル生成物は劣化しオリゴマーが生成する。ポット・ライフ試験は、オリゴマーと、シランエステル生成物、この場合には式(I)のシランエステルである、との比でシランエステルの安定性を測定する。図4は、対照物質(非プロトン性極性溶媒の単一相中での反応で生成し、カラムクロマトグラフィで精製した物質)および本開示によるプロセスで生成した物質、サンプル1および2、についての時間に対するポリマー成長をプロットしたグラフである。試験は40℃で実施した。材料が安定であると考えられるには、7日間完全ゲル化しないままの状態を継続することが必要である。シランエステル生成物に対するオリゴマーの比はゲル浸透クロマトグラフィで評価した。シランエステルのサンプルは毎日採取し、ゲル浸透クロマトグラフィで評価した。図4に示すように、本方法で得られた式(I)のシランエステルは非プロトン性極性溶媒の単一相反応系を用いる従来の技術で製造したシランエステルに匹敵する安定性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本開示による方法による式(I)のシランエステルの生成を表す反応スキームである。
【図2】本開示に従い二相反応系を用いる方法で生成したシランエステル生成物のゲル浸透クロマトグラフィチャートである。
【図3】単相反応系のみを用いる従来の方法で生成したシランエステル生成物のゲル浸透クロマトグラフィチャートである。
【図4】従来の方法で生成したシランエステルと本開示による方法で生成したシランエステルの可使時間を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二相反応系中でカルボン酸の無水塩をシランと反応させる工程を含む、シランエステルを生成する方法であって、
前記シランは、ハロアルキル置換基を含み、
二相反応系は、
(i)第一の溶媒と、
(ii)実質的に第一の溶媒と混和しない第二の溶媒と、
を含む方法。
【請求項2】
シランエステルを製造する方法であって、
カルボン酸の無水塩を供給する工程と、
前記カルボン酸無水塩を、第一の溶媒と、前記、第一の溶媒に実質的に混和しない第二の溶媒と、を含む二相反応系に添加する工程と、
前記カルボン酸無水塩と、前記第一の溶媒と、前記第二の溶媒と、の混合物を加熱する工程と、
前記カルボン酸無水塩と、前記第一の溶媒と、前記第二の溶媒と、の混合物にハロゲン化アルキル置換基を含むシランを添加してシランエステルを生成する工程と、
さらに、低級アルカン溶媒で生成したシランエステルを抽出する工程と、
を含む方法。
【請求項3】
シランエステルを生成する方法であって、
カルボン酸の無水塩を生成する工程と、
二相反応系中で前記カルボン酸の無水塩をシランと反応させる工程と、を含み、
二相反応系は、実質的に水を含まず、非プロトン性極性溶媒と低級アルカン溶媒とを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−160736(P2006−160736A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347439(P2005−347439)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】