説明

画像投射装置

【課題】 画像投射装置のコントラストを向上させることを課題とする。
【解決手段】 上記課題を解決するために、本発明の画像投射装置は、
照明光学系と、
前記照明光学系からの光の光路を偏光方向に応じて分離する偏光分離面を有する偏光分離素子と、
前記偏光分離面により分離された偏光光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調され、前記偏光分離素子を再度介して光を被投射面に投射する投射光学系を移動させる可動手段を有する画像投射装置であって、
前記可動手段は、前記偏光分離面の法線と前記投射光学系の光軸とに平行な断面内において、前記投射光学系が移動可能な範囲を、前記光変調素子から前記偏光分離面に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように定めることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像投射装置に関し、特に反射型の画像表示素子を用いた画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型の液晶パネルを用いた画像投射装置では、液晶パネルに対する入射光と液晶パネルからの画像光の光路を異ならせる必要がある。そのため、反射型の液晶パネルの入射面あるいは出射面側にP偏光を透過し、S偏光を反射する偏光ビームスプリッタが配置される。
【0003】
偏光ビームスプリッタの偏光分離面の特性は、入射光の入射角度に依存する。一般的に、偏光ビームスプリッタの偏光分離特性は、偏光分離面の法線に対する光の入射角度が45°のときに最も良くなるように設計される。偏光分離面に対する光の入射角度が45°から離れれば離れるほど、光線が通る薄膜の厚みが最適値から離れるため、偏光分離特性が低下する。その結果、液晶パネルのある画素について黒表示になるように駆動させたとき、偏光ビームスプリッタの特性が完全でないために光源側に戻らず、投射レンズに入射してしまう光(漏れ光)が多くなり、投射画像のコントラストが低下する。
【0004】
従来、投射画像のコントラストを向上させるために、偏光ビームスプリッタの出射面側に漏れ光を遮断する偏光板を配置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−175437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、偏光板は、本来透過すべき光に対する透過率が低いため、偏光板を配置すると、投射画像の明るさが低下してしまうという課題があった。
そこで本発明は、明るさの低下を抑制しつつ、コントラストを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の画像投射装置は、
照明光学系と、
前記照明光学系からの光の光路を偏光方向に応じて分離する偏光分離面を有する偏光分離素子と、
前記偏光分離面により分離された偏光光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調され、前記偏光分離素子を再度介して光を被投射面に投射する投射光学系を移動させる可動手段を有する画像投射装置であって、
前記可動手段は、前記偏光分離面の法線と前記投射光学系の光軸とに平行な断面内において、前記投射光学系が移動可能な範囲を、前記光変調素子から前記偏光分離面に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように定めることを特徴とする。
【0008】
なお、上記投射光学系が一体に設けられた又は取り外し可能に装着される画像投射装置も本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、明るさの低下を抑制しつつ、高コントラストな画像投射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の画像投射装置の構成図
【図2】偏光ビームスプリッタの漏れ光の説明図
【図3】偏光分離面に対する光の入射角度と偏光分離面の特性の関係を示す図
【図4】本発明の第1実施形態における偏光分離面の漏れ光の角度分布の模式図
【図5】投射レンズが取り込むことができる光量とその角度分布の模式図
【図6】本発明の第2の実施形態の画像投射装置の構成図
【図7】本発明の第2実施形態における偏光分離面の漏れ光の角度分布の模式図
【図8】本発明の第3の実施形態の画像投射装置の構成図
【図9】投射レンズのシフト方向と画像投射装置の小型化の説明図
【図10】本発明の第4の実施形態の画像投射装置の構成図
【図11】投射レンズシフトの可動機構の概略図
【図12】画像投射装置の設置場所と投射レンズシフトの説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0012】
《実施形態1》
図1に本発明の第1の実施形態の画像投射装置の構成図を示す。図1の座標軸のZ軸は投射レンズの光軸と平行な軸であり、スクリーンに向かう方向を+Z方向とする。X軸は、Z軸と偏光分離面8の法線を含む面に垂直な軸であり、紙面裏から表に向かう方向を+X方向とする。Y軸は、X軸およびZ軸に垂直な軸であり、紙面下から上に向かう方向を+Y方向とする。
【0013】
図1の一点鎖線は、コンデンサレンズ5aの光軸、あるいは投射レンズの光軸を表す。反射ミラー6から液晶パネル9に至るまでの一点鎖線は、厳密には光軸ではないが、本明細書においては、光軸と称する。
【0014】
光源1から射出された光は、放物リフレクタ2で反射され、略平行光となって射出され、第1のフライアイレンズ3aに入射し、第1のフライアイレンズ3aを構成する個々のレンズセルにより複数の光束に分離される。分割された複数の光束は、第2のフライアイレンズ3bを通過し、偏光変換素子4に入射する。
【0015】
偏光変換素子4は、偏光分離面を有する偏光ビームスプリッタを複数並べた構造をしており、偏光ビームスプリッタの射出面に1つおきに半波長板が配置される。偏光変換素子4に入射した非偏光光は、P偏光光に揃えられて射出される。なお、S偏光光に揃えたい場合は、偏光ビームスプリッタの透過光路上に半波長板を配置すればよい。その場合、液晶パネル9の位置は、偏光ビームスプリッタ7(偏光分離素子)の入射光が反射する側に配置される。本明細書におけるP偏光およびS偏光は、偏光変換素子4の偏光ビームスプリッタではなく、液晶パネル9から射出される画像光を投射レンズ10側へ導く偏光ビームスプリッタ7の偏光分離面8に対して規定している。
【0016】
偏光変換素子4でP偏光に揃えられた光は、コンデンサレンズ5a、5bを介して反射ミラー6により反射され、偏光ビームスプリッタ7に入射する。偏光ビームスプリッタ7に入射した光は、偏光分離面8を透過し、液晶パネル9を照明する。光源1からコンデンサレンズ5a、5bまでを照明光学系とし、この照明光学系は液晶パネル9(光変調素子)をケーラー照明する。
【0017】
液晶パネル9に入射した光は変調され、変調された光のうち画像光は、偏光ビームスプリッタ7を再度介して(反射されて)、投射レンズ10(投射光学系)に入射する。そして、画像光は、投射レンズ10を介してスクリーン11(被投射面)に投射される。一方で、画像光とはならない偏光成分の光は、偏光分離面8を透過して、光源側に戻される。液晶パネル9の中心における液晶パネル9の面法線と偏光分離面の面法線が成す角度は、45°である。
【0018】
図2に、図1の偏光ビームスプリッタ7および液晶パネル9周辺の拡大図を示す。破線の矢印は、黒表示を行う際の光線を模式的に示した矢印である。本来、黒表示を行う場合には、図2に示すように、液晶パネル9に入射したP偏光は、その偏光方向は変換されず、P偏光のまま反射され、再び偏光分離面8を透過して光源側に戻る。多くのP偏光は、図2に太い実線で示したように光源側へと戻される。しかし、図2の細い破線の矢印で示すように、偏光分離面8の特性上、P偏光にも関わらず投射レンズ10側へと反射されてしまう光(漏れ光)がある。さらに、図2の細い破線の矢印の太さで表わすように、液晶パネル9の同一点から、ある広がりをもって反射された光の漏れ光の量は、偏光ビームスプリッタ7の出射面において、+Y方向は少なく、−Y方向は多い。
【0019】
図3(a)は、図2のXY断面(X方向)において、偏光分離面8への入射光の入射角度の変化に対する偏光分離特性の変化を示したグラフである。図3(b)は図2のYZ断面(Y方向)において、偏光分離面8への入射光の入射角度の変化に対する偏光分離特性の変化を示したグラフである。横軸は波長(nm)、縦軸RpはP偏光の反射率(%)である。Rpの値が高いほど、漏れ光が多いことを示しており、Rpの値が小さいほど消光比が高く、偏光分離面の特性が良いことを表している。グラフの実線は、偏光分離面に対して入射角度45°で入射する光線に対する偏光分離特性を表す。グラフの破線は45°よりも約5°小さい入射角度で入射する光線に対する偏光分離特性を表す。一点鎖線は45°よりも約5°大きい入射角度で入射する光線に対する偏光分離特性を表す。尚、図3(a)、(b)は、画像投射装置に使用される光源のスペクトルの中でも最も比視感度が高い緑波長域500から580(nm)の帯域において性能を満たすよう設計されている。
【0020】
偏光分離面8の法線に対して45°で入射する光線を基準として、そこから同じ角度だけ光線の入射角度を変化させた場合を考える。図3(a)、(b)から、YZ断面において入射角度を変化させた場合のほうが、XY断面において入射角度を変化させた場合よりも偏光分離面の特性の変動が大きいことがわかる。つまり、偏光分離面は、YZ断面(Y方向)における入射角度の変化に対する偏光分離特性に比べ、XY断面(X方向)における入射角度の変化に対する偏光分離特性が良い。
【0021】
さらに、図3(b)のYZ断面の角度変化に着目する。YZ断面において、入射角度を+5°と−5°角度を変化させた場合を比較すると、特性の変化の様子が、図3(a)とは異なることがわかる。これは、偏光分離面の法線に対して入射角度45°で入射する光線が通過する膜厚を基準とすると、光線の入射角度がY方向に+5°変化すると入射する光線が通過する膜厚は薄くなり、−5°変化すると厚くなるからである。さらに、Rp特性のピークの位置(図3(b)の矢印)が、入射角度が45+5°では短波長側に、45−5°では長波長側にシフトしていることが分かる。一般的に、偏光分離面(偏光分離膜)のP偏光の反射率の特性は、光線が通る膜の厚みが薄くなると短波長側に、厚くなると長波長側にシフトすることが知られている。このことから、緑の波長域の光(500〜600nm)が入射する場合、その入射角が45+α°のほうが45−α°に比べ漏れ光が少なくなる。
【0022】
再び図2を用いて説明する。図3(a)、(b)で示したように、図2においては、偏光分離面8に対して45°+αで入射する光(図中の細い破線)のほうが、45°−αで入射する光(図中の太い破線)よりも漏れ光が少ない。
【0023】
図4に、投射画像が全黒表示になるように液晶パネル9を駆動した場合のXY断面における偏光分離面に入射する光線の入射角度と漏れ光の分布を模式図に示す。座標軸は偏光分離面8に対する入射角度を表し、中心は45°からの角度のずれが0°であることを表す。色が薄い部分ほど漏れ光が少なく、色が濃い部分ほど漏れ光が多い。
【0024】
図4で表されるようにコントラストを低下させる原因となる漏れ光は、X方向には対称になるが、Y方向には非対称であり、特に−Y方向に角度が大きくなるにつれ、漏れ光が多くなる。よって、できるだけ漏れ光の少ない領域の光を多く被投射面に投射する、あるいは、漏れ光の多い領域の光はできるだけ被投射面に投射しないようにすることが重要である。尚、図4に示したような漏れ光の角度分布は、実際の画像投射装置において全黒画像を表示し、さらに投射レンズを除いて画像表示素子からの光線を直接スクリーン上で観測することにより確認することができる。
【0025】
次に、投射レンズ10が取り込む事ができる光線の角度分布について説明する。液晶パネル9から発散して投射レンズ10に向かう光が、投射レンズ10を介してスクリーンに到達するまでの経路に着目する。液晶パネル9において投射レンズ10の光軸中心に対応する点、つまり、液晶パネル9の中心から発散する光は、投射レンズ10のFナンバーで規定される角度成分が全て取り込まれる。しかし、液晶パネル9の中心から離れた点から発散する光は、投射レンズ10のビネッティングにより一部の角度成分が遮光される。ビネッティングとは、斜めにレンズに入射する光束の一部が、レンズの大きさや厚み、レンズ枠によって、一部がけられてしまうことである。
【0026】
画像投射装置は、液晶パネル9に対して投射レンズ10を平行偏心する所謂「投射レンズシフト」を行うことで、画像の投射方向を所望の方向に調整する。また、投射レンズに可動機構(可動手段)を設け、投射レンズを固定から可動とすることで、画像の投射方向の調整自由度を高めた画像投射装置がある。図1に示した構成も、液晶パネル9に対して投射レンズ10を平行偏心、即ちシフト可能な構成とすることで、斜め上方向に画像を投射している。
【0027】
図11に一般的な投射レンズシフトの可動機構の概略図を示す。可動機構は、投射レンズ10の取り付け部H、第1のシフト板S1、第2のシフト板S2からなる。投射レンズ10の取り付け部Hが、第1のシフト板S1に取り付けられており、さらに取り付け部Hと第1のシフト板S1を連結させるユニットが第2のシフト板S2に取り付けられている。
【0028】
第1、第2のシフト板にはそれぞれ動力伝達部113が供えられており、例えばネジ状の溝などが彫られている。動力伝達部113に、112で示す動力が伝えられる事で、上下方向と左右方向(図11の111に示す方向)に独立に可動する構造になっている。動力としては、手動でも電動でもよい。電動で可動機構を動かす場合、一般的に動力源としてはパルスモーターなどが用いられる。
【0029】
本実施例の構成においても上述のような可動機構を設けており(不図示)、画像の投射方向の調整自由度を高めた構成としている。
【0030】
上述の可動機構を用いて、投射レンズシフトを行い、斜め方向に画像を投射すると、前述のビネッティングの効果により、投射レンズ10が取り込むことが可能な光の角度分布がY方向に非対称になる。参考として、図5に光量分布が略均一な光束が投射レンズ10に入射した場合、図1の配置によって投射レンズ10が取り込むことができる光量と、その角度分布の模式図を示した。+Y方向は−Y方向に比べ、ビネッティングの影響が少なく取り込むことができる光量が多いことが分かる。逆に−Y方向にはビネッティングの影響により取り込むことができる光量が少ない。
【0031】
本発明は、この作用を利用し、−Y方向に比べて+Y方向に投射レンズをシフトさせる。すなわち、本発明の投射レンズの可動機構は、偏光分離面8の法線と投射レンズ10の光軸とに平行な断面内(YZ断面)において、投射レンズ10が移動可能な範囲を、以下のように定める。液晶パネル9から偏光分離面8に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように定める。これにより、漏れ光をカットする偏光板を、液晶パネル9と投射レンズ10の間に配置せずとも、コントラストの高い画像を得ることができるので、明るさの低下を抑えることができる。
【0032】
図12を用いて画像投射装置の設置場所による投射方向について説明する。図12(a)のように、室内の天井に画像投射装置を吊るした、所謂「天吊状態」では、天井と投射像が干渉しないように床の方向(図面下方向)に投射することが一般的である。
【0033】
また、図12(b)のように、机など投射台に画像投射装置を設置する場合は、投射台と投射像が重ならないように天井の方向(図面上方向)に投射することが一般的である。
【0034】
本実施形態においては、「天吊状態」あるいは「投射台に配置する状態」における投射レンズのシフト方向は同じである。つまり、「天吊状態」、「投射台に配置する状態」は、画像投射装置の筺体を上下反転させればよい。
【0035】
本実施形態の投射レンズ10の具体的な可動範囲は、−Y方向の可動範囲が液晶パネルのY方向の長さの10%程度であるのに対し、+Y方向の可動範囲は50%程度にしている。なおシフトの可動範囲は、液晶パネルの中心を基準としている。例えば50%ならば、液晶パネルの短辺長さの半分だけ、10%ならば液晶パネルの長さの10%だけパネルの中心からシフトしている。上述のように、−Y方向の10%以上に投射レンズをシフトさせ、投射方向を−Y方向に大きく調整したい場合は、前述のように、プロジェクタの筺体を上下反転させて設置可能な構成にすれば対応できる。
【0036】
《実施形態2》
図6(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態の画像投射装置の構成図である。実施形態1と異なる点は、照明光学系において、照明光学系の光軸を含み互いに直交する第1の断面(XZ断面)と第2の断面(YZ断面)でそれぞれ光束を圧縮する手段を設けた点である。図6(a)は、実施形態2の画像投射装置をXZ断面から見た図、図6(b)は、実施形態2の画像投射装置をYZ断面から見た図である。
【0037】
光源1から射出された光は、楕円リフレクタ2Aで集光され、凸レンズ12に入射し、凸レンズ12により収斂され、凹シリンドリカルレンズ13に入射する。図6(a)の断面において、入射光は、凸レンズ12と凹シリンドリカルレンズ13(負のシリンドリカルレンズ)により略平行光となって射出される。第1フライアイレンズ3aに入射した光は、第1のフライアイレンズを形成する個々のレンズにより、複数の光束に分離される。第1のフライアイレンズ3aを通過した光は、図6(b)の断面において、凸レンズ12と第2のフライアイレンズ3bの前面に位置する凹シリンドリカルレンズ14により略平行光として射出される。XZ断面、YZ断面においてそれぞれ圧縮された光束は、第2のフライアイレンズ3bを通過し、偏光変換素子4に入射する。
【0038】
本実施形態においても液晶パネル9から反射する光が、偏光ビームスプリッタ7の偏光分離面8に入射する角度に応じて、偏光分離特性の変動が生じコントラストを低下させる漏れ光が発生する。液晶パネルにおいて全黒画像に対応する偏光状態に光線を変調した場合の、偏光分離面における漏れ光の角度分布の模式図を図7に示す。座標軸は偏光分離面8に対する入射角度を表し、中心は45°からの角度のずれが0°であることを表す。色が薄い部分ほど漏れ光が少なく、色が濃い部分ほど漏れ光が多い。
【0039】
本実施形態においても、実施形態1と同様に、コントラストの高い画像を表示することができる。
【0040】
また、本実施形態の他の効果は、XZ断面(第1断面)とYZ断面(第2断面)それぞれで、光束を独立に圧縮しており、実施形態1よりもY方向(第2断面に平行な方向)の光束の圧縮率が高い。YZ断面おいてより強く光束を圧縮することで、偏光分離面の特性の変動が大きいY方向において偏光分離面への入射角度の広がりを小さくすることができる。これにより、X、Y方向の光束を同じだけ圧縮した場合に比べ、偏光分離面における漏れ光が少なくなり、投射画像のコントラストがより向上させることができる。
【0041】
なお、本実施形態では光束を圧縮する機能として正レンズと凹シリンドリカルレンズを用いている。しかし、例えばフライアイレンズのレンズセルを光軸から離れるに従って徐々に光軸から離れる方向に偏心させて、フライアイの機能と凹シリンドリカルレンズを一体化させた偏心フライアイレンズを用いても良い。
【0042】
《実施形態3》
図8は本発明の第3の実施形態の画像投射装置の構成図である。実施形態1と異なる点は、ダイクロイックミラー15を設け、複数の液晶パネルに、異なる波長帯域の光を入射させる点である。15はダイクロイックミラー(色分離素子)、16は波長選択性位相板であり、赤の波長帯域の光のみに作用し、その偏光方向を90°回転させる素子ある。17,18はそれぞれ第1の偏光ビームスプリッタ、第2の偏光ビームスプリッタである。19は赤用の反射型の液晶パネル(第1の画像表示素子)、20は緑用の反射型の液晶パネル(第2の画像表示素子)、21は青用の反射型の液晶パネル(第3の画像表示素子)である。22は緑の波長帯域の光を反射し、赤および青の波長帯域の光を透過する色合成面を有する合成プリズム(色合成素子)である。ダイクロイックミラー15、第1、第2の偏光ビームスプリッタ17,18は、ダイクロイックミラー15の色分離面を含む平面と、第1、第2の偏光ビームスプリッタ17,18の偏光分離面を含む平面とが直交するように、配置されている。
【0043】
コンデンサレンズ5bを出射した光束は、ダイクロイックミラー15に入射する。ダイクロイックミラー15は入射光のうち、緑の波長帯域の光(第1の色光)のみを透過し、青帯域、赤帯域の光(第2、第3の色光)を反射する。緑帯域の光は偏光ビームスプリッタ17(第1の偏光ビームスプリッタ)で検光され、緑用の液晶パネル20を照明する。緑用の液晶パネル20にてS偏光に変換された光は、偏光ビームスプリッタ17を反射し、合成プリズム22を反射し、投射レンズにより被投射面に投射される。液晶パネル20により偏光方向が変換されなかった光は、再び偏光ビームスプリッタ17を透過し、光源に戻される。
【0044】
ダイクロイックミラー15で反射された赤帯域、青帯域の光は波長選択性位相板16を通過する。波長選択性位相板16は赤帯域の光のみに作用し、その偏光方向を90°回転させ、S偏光にする。S偏光光に変換された赤帯域の光は偏光ビームスプリッタ18(第2の偏光ビームスプリッタ)の偏光分離面を反射し、赤用の液晶パネル19に入射する。液晶パネル19によりP偏光光に変換された赤帯域の光は偏光ビームスプリッタ18、合成プリズム22を透過した後、投射レンズ10により被投射面に投射される。液晶パネル19により変換されなかった赤帯域のS偏光光は偏光ビームスプリッタ18の偏光分離面を反射し、光源側に戻される。
【0045】
ダイクロイックミラー15により反射された青帯域の光は、波長選択性位相板16を通過し、偏光ビームスプリッタ18を透過し、青用の液晶パネル21に入射する。青用の液晶パネルに入射後、P偏光からS偏光に変換された光は偏光ビームスプリッタ18を反射後、合成プリズム22を透過し、投射レンズにより被投射面に投射される。液晶パネル21により変換されなかったP偏光光は偏光ビームスプリッタ18を透過し、光源側に戻される。
【0046】
ここで、明るさに最も寄与する緑の波長帯域の漏れ光に注目すると、実施形態1と同様に光線が通過する偏光分離面の厚みが薄くなる角度変化に対してP偏光の消光比が下がる。従って、−Y方向の漏れ光が+Y方向に比べて大きい。よって、本実施形態も、実施形態1と同様に、偏光板による明るさの低下を抑えつつ、コントラストを向上する効果が得られる。
【0047】
本実施形態のように、複数の波長帯域の光を用いてカラー画像を投射する画像投射装置の場合、各色光に対応する複数の光変調素子(液晶パネル19、20、21)を有する。
【0048】
実施形態1と同様に、投射レンズ10の可動機構(図11)は、投射レンズ10の移動可能な範囲を以下のように定める。即ち、偏光分離面の法線と投射レンズの光軸とに平行な断面内において、液晶パネル20から偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように定める。
【0049】
カラー画像を投射する画像投射装置の場合、可動機構が定める投射レンズ10の移動範囲を、全ての光変調素子と該光変調素子により変調された光を検光する偏光分離面が満足するのが好ましい。しかし、特定の色光を変調する光変調素子が、上記関係を満足するものであってもよい。このとき、本実施形態のように、特定の光変調素子が緑の波長帯域の光を変調する光変調素子(液晶パネル20)であることより、他の色に比べて比視感度が良い色光に対して、実施形態1と同様の効果を得ることができる。この結果、よりコントラストが高いと感じる画像を表示することができる。
【0050】
また、実施形態3のその他の効果として、投射レンズ10がシフトしている方向に関して(図8のY方向)、画像投射装置を小型化できることが挙げられる。投射レンズ10の鏡筒と可動機構は比較的大きな部品である。従って、投射レンズ10の可動範囲によっては、画像表示装置の筐体を大きくしなければならない。
【0051】
本実施形態では、上記効果に加え画像表示装置の小型化を実現している。図9に小型化の効果の概念図を示す。図9(a)は本実施例のように−Y方向に比べて+Y方向に可動範囲を大きくした構成、図9(b)は−Y方向に比べて+Y方向に可動範囲を大きくした構成を表す。図9(b)の構成では合成プリズムの中心軸を基準として−Y方向に可動範囲が大きくしているので、筐体の下端までのサイズを大きくとる必要がある。一方、本実施例のような図9(a)の構成では、合成プリズム22の中心軸を基準に+Y方向に可動範囲を大きくとっているので、図9(b)の構成に比べ偏光ビームスプリッタや合成プリズムの半サイズ分だけ筐体を小型化することができる。
【0052】
すなわち、画像投射装置が、色分離素子により分離された光路を合成する色合成面を有する合成プリズム22(色合成素子)を有する。そして、液晶パネル20(光変調素子)により変調された画像光は、偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面および色合成面により反射されて投射レンズ10に入射する。可動機構(図11)は、実施形態1と同様に、液晶パネル20から偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように、投射レンズ10を移動させる。本実施形態では、この移動方向が、合成プリズム22(色合成素子)から偏光ビームスプリッタ17(偏光分離面)へ向かう方向である。これにより、投射レンズがシフトしている方向に関して(図8のY方向)、画像投射装置を小型化することが可能である。なお、本明細書における「平行」とは、完全に「平行」な状態に限られない。
【0053】
《実施形態4》
図10は本発明の第4の実施形態の画像投射装置の構成図である。実施形態3と異なる点は、偏光ビームスプリッタ17(第1の偏光ビームスプリッタ)に対する緑用の液晶パネル20の配置位置である。液晶パネル20のこの配置に伴って、半波長板30を、ダイクロイックミラー15と偏光ビームスプリッタ17との間に設けている。それ以外の構成は、第3の実施形態と同じであるので、以下では第3の実施形態との相違点のみ説明する。本実施形態の液晶パネル20の配置は、偏光ビームスプリッタ17からの反射光で液晶パネル20を照明するための配置である。ダイクロイックミラー15を透過した緑帯域の照明光は、偏光変換素子4によってP偏光に揃えられているため、そのままでは偏光ビームスプリッタ17で反射しない。そこで本実施形態では、半波長板30をダイクロイックミラー15と偏光ビームスプリッタ17との間に設け、照明光の偏光方向をS偏光に変換している。
【0054】
これにより、ほぼS偏光に揃った緑帯域の照明光は偏光ビームスプリッタ17で反射・検光され、液晶パネル20を照明する。液晶パネル20にてP偏光に変換された光は、偏光ビームスプリッタ17を透過して、合成プリズム22で反射し、投射レンズにより被投射面に投射される。液晶パネル20により偏光方向が変換されなかった光は、再び偏光ビームスプリッタ17で反射し、光源側に戻される。
【0055】
本実施形態においても、実施形態1と同様に、偏光ビームスプリッタ17での漏れ光が投射レンズに入射する割合を抑えて、コントラストを向上させている。従って、投射レンズを可動する際、その可動範囲の大部分でコントラストを向上させることができる。
【0056】
更に本実施形態では、投射レンズがシフトしている方向に(Y方向)液晶パネル20およびそれに付随する保持部分等が存在しないので、投射レンズシフトの可動範囲の自由度が増す。例えば、実施例1では、+Y方向の可動範囲を液晶パネルのY方向の長さの50%程度としていたが、図8の液晶パネル20が存在した位置を有効に活用して投射レンズの可動範囲を+Y方向にさらに大きく60%などに設定することができる。
【0057】
尚、本発明の効果が得られる形態は図10に限られない。例えば、半波長板30がなくても、偏光ビームスプリッタ17に対してS偏光光を入射させるような形態であれば、液晶パネル20を投射レンズがシフトしている方向に配置せずとも良い。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。例えば、光源はLED光源や直線偏光を出射するレーザー光源であってもよい。また、ダイクロイックミラー15の特性、合成プリズムの特性を変えて、赤帯域の光を透過させ、青帯域、緑帯域の光を透過させてもよい。また、クロスダイクロイックプリズムを用いて、3色の液晶パネルそれぞれに3つの偏光ビームスプリッタを配置させた画像投射装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
7 偏光ビームスプリッタ
8 偏光分離面
9 反射型液晶表示素子
10 投射レンズ
11 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光学系と、
前記照明光学系からの光の光路を偏光方向に応じて分離する偏光分離面を有する偏光分離素子と、
前記偏光分離面により分離された偏光光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調され、前記偏光分離素子を再度介して光を被投射面に投射する投射光学系を移動させる可動手段を有する画像投射装置であって、
前記可動手段は、前記偏光分離面の法線と前記投射光学系の光軸とに平行な断面内において、前記投射光学系が移動可能な範囲を、前記光変調素子から前記偏光分離面に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように定めることを特徴とする画像投射装置。
【請求項2】
前記照明光学系から出射した光のうち、緑の波長帯域の光を分離する色分離素子を有し、
前記光変調素子は前記緑の波長帯域の光を変調する光変調素子であることを特徴とする請求項1に記載の画像投射装置。
【請求項3】
前記色分離素子により分離された光路を合成する色合成面を有する色合成素子を有し、
前記光変調素子により変調された画像光は、前記偏光分離面および前記色合成面により反射されて前記投射光学系に入射し、
前記可動手段が、前記光変調素子から前記偏光分離面に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように前記投射光学系を移動させる方向は、前記色合成素子から前記偏光分離素子へ向かう方向であることを特徴とする請求項2に記載の画像投射装置。
【請求項4】
前記照明光学系から出射した光のうち、入射光を複数の波長帯域の光に分離する色分離素子を有し、
前記色分離素子により分離された光路を合成する色合成面を有する色合成素子を有し、
前記光変調素子により変調された画像光は、前記偏光分離面および前記色合成面により反射されて前記投射光学系に入射し、
前記可動手段が、前記光変調素子から前記偏光分離面に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように前記投射光学系を移動させる方向は、前記色合成素子から前記偏光分離素子へ向かう方向であることを特徴とする請求項1に記載の画像投射装置。
【請求項5】
前記照明光学系は、前記照明光学系の光軸を含み互いに直交する第1断面と第2断面において互いに異なる光束の幅を形成する光学系を有し、
前記第1断面における光束の幅と前記第2断面における光束の幅を比べたとき、より小さい光束の幅が形成される断面を第2断面とすると、
前記可動手段が、前記光変調素子から前記偏光分離面に向かう光線のうち、入射角が45度より小さい光線に比して入射角が45度より大きい光線を多く取り込むように前記投射光学系を移動させる方向は、前記第2断面に平行な方向であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像投射装置。
【請求項6】
前記投射光学系を有することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の画像投射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−61461(P2013−61461A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199437(P2011−199437)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】