説明

画像撮影装置、画像撮影方法、画像処理装置、および画像処理方法

【課題】スミア補正の誤補正による画像の劣化が抑えられた画像撮影装置等を提供する。
【解決手段】画像撮影装置において、撮像素子120によって生成された画像信号からスミア成分を検出するとともにスミア領域を検出するスミア検出部102と、撮像素子によって生成された画像信号のうちの、スミア領域からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正部109と、スミア補正部によりスミア補正された画像信号のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整部103と、ホワイトバランス調整部により調整された画像信号に対し、画像の中のスミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減部104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像撮影装置、画像撮影方法、画像処理装置、および画像処理方法に関し、特にスミア現象に対応した画像撮影装置、画像撮影方法、画像処理装置、および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやビデオカメラに代表される画像撮影装置には、画像信号を生成する撮像素子としてCCD(Charge Coupled Device)撮像素子が広く採用されている。CCD撮像素子を使った画像撮影装置によって被写体を撮影する場合に、例えば太陽やライトといった高輝度の被写体を撮影すると、撮影された画像に、画面縦方向に延びる明るい帯状の線が現れる。これはスミア現象と呼ばれている。スミア現象は、CCD撮像素子内の各画素に対応した素子で生じた電荷信号を、垂直転送路を介して転送して読み出す際に、強い光を受けた素子の電荷がスミア成分として垂直転送路に溢れ出すことによって生じる。
【0003】
スミア現象による帯状の線(以降、単にスミアと称する)は、通常、色に対するCCD撮像素子の感度や画像調整の影響を受け、色を有しているのが普通である。例えば、RGBのカラーフィルタを採用したCCD撮像素子は一般的に緑に対して高い感度を有しているため、標準光源下における撮影の場合、CCD撮像素子によって生成された画像信号に対しホワイトバランス調整で緑の成分を抑えることにより、通常の画像における色のバランスを保っている。一方、CCD撮像素子で画像信号に含まれるスミア成分は、通常、各色について等しい量であるが、画像信号に対する上記ホワイトバランス調整によって緑成分が抑えられる結果、スミア現象により生じる線は紫がかったものとなる。
【0004】
デジタルカメラの中でも、機械式シャッタを用いて静止画撮影する機種であれば、スミアがない静止画を撮影することが可能である。しかし、機械式シャッタを有さないデジタルカメラの場合や、機械式シャッタを備えたデジタルカメラでも、スルー画と称される動画を表示する場合、そして、ビデオカメラによる動画撮影の場合にはスミア現象の発生を避けることが困難である。
【0005】
ここで、画像からスミアを除去するために、CCD撮像素子から読み出された信号から画面上におけるスミアの位置、およびスミア成分の量を検出し、検出した位置の信号から、スミア成分の量を減算することで、最終的に得られる画像中のスミアを除去する技術が知られている(例えば、引用文献1〜9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−15653号公報
【特許文献2】特開2006−128882号公報
【特許文献3】特開2006−211368号公報
【特許文献4】特開2008−85855号公報
【特許文献5】特開2008−42749号公報
【特許文献6】特開2007−189544号公報
【特許文献7】特開2007−116334号公報
【特許文献8】特開2005−51634号公報
【特許文献9】特開2002−271802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スミア成分の検出と補正は、CCD撮像素子から順次読み出されるフレームまたはフィールドに対し実行されるが、スミアの検出からスミアの補正までには遅延があるため、例えば動く被写体を撮影する場合に、補正の時点でもはやスミアが含まれていない位置に対してスミア補正を行う誤補正が生じることがある。誤補正の場合には、スミアがもはや存在しない位置にスミア補正が行われることによって、スミアとは別の線が現れることととなる。誤補正によって現れる線は、ホワイトバランス調整の結果、スミアの色に対する補色を有する。例えば、スミア成分の量は各色につき均等であるとして、スミア補正(誤補正)によって各色の信号値から均等の量が減算されると、緑色に対応する減算量は、ホワイトバランス調整によって目減りする。すなわち、緑色の成分は赤および青に比べて減算量が少ない。このため、例えば被写体が色の無いグレーの場合に、誤補正の結果として、緑がかった線が現れることとなる。
【0008】
このように、誤補正が生じると、不自然な色の線が現れる。また、このような問題は、スミアが含まれていない位置に対してスミア補正を行う場合だけでなく、例えばスミアの量を多く見積もったことによる誤補正(過補正)にも生じ得る。
【0009】
本発明は上記問題点を解決し、スミア補正の誤補正による画像の劣化が抑えられた画像撮影装置、画像撮影方法、画像処理装置、および画像処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の画像撮影装置は、
被写体光を受光してこの被写体を表わす画像信号を生成する撮像素子と、
上記撮像素子によって生成された画像信号からスミア成分を検出するとともにこの画像信号により表される画像内においてこのスミア成分が含まれたスミア領域を検出するスミア検出部と、
上記撮像素子によって生成された画像信号のうちの、上記スミア領域に対応する部分からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正部と、
上記スミア補正部によりスミア補正された画像信号に対し、この画像信号により表される画像のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整部と、
上記ホワイトバランス調整部により調整された画像信号に対し、この画像信号により表される画像の中の上記スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の画像撮影装置では、スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色は、グレーに近づける色低減処理が施されるため、例えばスミア成分を含まない部分に誤補正がなされた場合であっても、本来グレーの部分について誤補正により生じた色が低減されるため、誤補正により生じる画像の劣化が抑えられる。
【0012】
ここで、上記本発明の画像撮影装置において、上記ホワイトバランス調整部が、上記撮像素子によって生成された画像信号に基づいたホワイトバランス調整量を決定し、この画像信号を、決定したホワイトバランス調整量だけ調整するものであり、
上記色低減部が、上記ホワイトバランス調整部におけるホワイトバランス調整量に応じて、上記特定色範囲を決定するものであることが好ましい。
【0013】
スミア補正の誤補正により本来グレーの領域に生じる色は、光源の種類に応じたホワイトバランス調整量によって異なる。ホワイトバランス調整量に応じて、特定色範囲が決定することにより、光源の種類に応じた適切な色低減処理が実行される。
【0014】
また、上記本発明の画像撮影装置は、上記撮像素子によって順次生成された複数の画像を表わす画像信号を比較することによってこの画像上の被写体の動きを検出する動き検出部を更に備え、
上記色低減部が、上記動き検出部による動きが検出された場合に上記色低減処理を行うものであることが好ましい。
【0015】
スミア補正の誤補正は、被写体が動いている場合に特に生じやすい、そこで、色低減処理を動きが検出された場合に行うことにより、被写体が動いていない場合に処理負担を低減するとともに、被写体が動いて誤補正が生じる可能性がある場合に効率よく色低減処理を実行する。
【0016】
また、上記目的を達成する本発明の画像撮影方法は、撮像素子に被写体光を受光させてこの被写体を表わす画像信号を生成させる撮像ステップと、
上記撮像ステップで生成された画像信号からスミア成分を検出するとともにこの画像信号により表される画像内においてこのスミア成分が含まれたスミア領域を検出するスミア検出ステップと、
上記撮像素子によって生成された画像信号のうちの、上記スミア領域に対応する部分からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正ステップと、
上記スミア補正ステップによりスミア補正された画像信号に対し、この画像信号により表される画像のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整ステップと、
上記ホワイトバランス調整ステップにより調整された画像信号に対し、この画像信号により表される画像の中の上記スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減ステップとを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、上記本発明の画像撮影方法において、上記撮像素子によって生成された画像信号に基づいたホワイトバランス調整量を決定し、この画像信号を、決定したホワイトバランス調整量だけ調整するものであり、
上記色低減ステップが、上記ホワイトバランス調整ステップにおけるホワイトバランス調整量に応じて、上記特定色範囲を決定するものであることが好ましい。
【0018】
また、上記本発明の画像撮影方法は、上記撮像素子によって順次生成された複数の画像を表わす画像信号を比較することによってこの画像上の被写体の動きを検出する動き検出ステップを更に備え、
上記色成分低減ステップが、上記動き検出ステップによる動きが検出された場合に上記色低減処理を行うものであることが好ましい。
【0019】
また、上記目的を達成する本発明の画像処理装置は、
画像を表わす画像信号からスミア成分を検出するとともにこの画像信号により表される画像内においてこのスミア成分が含まれたスミア領域を検出するスミア検出部と、
上記画像信号のうちの、上記スミア領域に対応する部分からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正部と、
上記スミア補正部によりスミア補正された画像信号に対し、この画像信号により表される画像のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整部と、
上記ホワイトバランス調整部により調整された画像信号に対し、この画像信号により表される画像の中の上記スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減部とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、上記目的を達成する本発明の画像処理方法は、
画像を表わす画像信号からスミア成分を検出するとともにこの画像信号により表される画像内においてこのスミア成分が含まれたスミア領域を検出するスミア検出ステップと、
上記画像信号のうちの、上記スミア領域に対応する部分からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正ステップと、
上記スミア補正ステップによりスミア補正された画像信号に対し、この画像信号により表される画像のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整ステップと、
上記ホワイトバランス調整ステップにより調整された画像信号に対し、この画像信号により表される画像の中の上記スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、スミア補正の誤補正による画像の劣化が抑えられた画像撮影装置、画像撮影方法、画像処理装置、および画像処理方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の画像撮影装置の第1実施形態であるデジタルカメラの外観を示す図である。
【図2】図1に示すデジタルカメラの内部の構成を示すブロック図である。
【図3】撮像素子から読み出された画像の例を示す図である。
【図4】図2に示すデジタルカメラの内部構成のうち、スミア補正に関連するブロックと信号の主要な流れを示すブロック図である。
【図5】太陽光におけるグレーの被写体部分を撮影した画像信号の処理を説明する表である。
【図6】スミア現象が発生した場合の画像信号の例を示す表である。
【図7】誤補正がなされた場合の画像信号の値を示す表である。
【図8】太陽光以外の光源時におけるホワイトバランスゲインの代表値を示す表である。
【図9】太陽光以外の光源時におけるグレーの被写体部分を撮影した画像信号の処理を説明する表である。
【図10】太陽光以外の光源時においてスミア現象が発生した場合の画像信号の例を示す表である。
【図11】太陽光以外の光源時において誤補正がなされた場合の画像信号の値を示す表である。
【図12】誤補正がなされた場合にグレーの部分が変化する画像信号のCrおよびCbの値を光源時の種類ごとに表したグラフである。
【図13】色低減部が色の低減を行う対象とする特定色範囲を示す図である。
【図14】デジタルカメラにおける処理の概要を示すフローチャートである。
【図15】第2実施形態のデジタルカメラの内部の構成を示すブロック図である。
【図16】図15に示すデジタルカメラの内部構成のうち、スミア補正に関連するブロックと信号の主要な流れを示すブロック図である。
【図17】第2実施形態のデジタルカメラにおける処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の画像撮影装置の第1実施形態であるデジタルカメラの外観を示す図である。図1(a)には、デジタルカメラ1を正面から見た図が示されており、図1(b)には、デジタルカメラ1を背面から見た図が示されている。
【0025】
図1(a)に示すように、ボディ1aの中央には撮影レンズ1101が備えられており、その撮影レンズ1101の右斜め上方には発光窓190Aが備えられている。さらにボディ1a上面にはレリーズボタン10aなどが備えられている。また、図1(b)に示すように、ボディ1a背面には表示画面125Aが備えられており、その表示画面125Aの隣にはメニューを表示画面125A上に表示するときに操作されるMENU/OKキー10bやそのメニュー内のいずれかの項目を選択するときに操作される十字キー10cや、表示画面125Aを非表示にしたり表示にしたりする時に操作されるDISP/BACKボタン10dや表示画面125A上に既撮影画像を再生表示するときに操作される再生釦10eやズームスイッチ10fやキャンセルキー10gなどの操作子が備えられている。尚以降においては、これらの操作子をまとめて操作子群10と記載することがある。
【0026】
図2は、図1に示すデジタルカメラの内部の構成を示すブロック図である。
【0027】
図2に示すデジタルカメラ1は、画像の撮影を担う撮像部S、デジタルカメラ1の動作を統括的に制御するCPU100、撮影補助光を発光するフラッシュ130、フラッシュ130に電源を供給する充電部131、画像を表示するLCD140、LCD140の信号中継を担うLCDI/F141、データを一時記憶するRAM106、プログラムが記憶されたROM107、メモリI/F105、画像信号が最終的に記憶されるメモリカード150、外部メモリI/F151、および、操作子群10を備えている。また、デジタルカメラ1には、デジタル化された画像信号に対し画像処理を行う画像処理部Dと、画像信号の圧縮・伸張処理を行う圧縮伸張処理部108も備えられている。画像処理部Dは、スミア検出部102、スミア補正部109、ホワイトバランス調整部103、および色低減部104を備えている。
【0028】
本実施形態のデジタルカメラ1の動作は、CPU100によって統括的に制御されている。CPU100には、バスBおよびメモリインターフェース(メモリI/F)105を介してRAM106およびROM107が接続されている。ROM107内にプログラムが書き込まれている。本実施形態のデジタルカメラ1においては電源が投入されたことを受けてCPU100がそのROM107にメモリI/F105を介してアクセスして内部のプログラムの手順にしたがってこのデジタルカメラ1の動作の制御を開始する。
【0029】
撮像部Sは、光学ユニット110、モータ駆動部101、撮像素子120、タイミングジェネレータ121、アナログ信号処理部123、ADコンバータ(ADC)124、および、画像入力インターフェース(画像入力I/F)125を有している。光学ユニット110は、撮影レンズ1101や絞りを有しており、光学ユニット110の撮影レンズ1101で捉えられている被写体が撮像素子120に結像される。このときには、フォーカスと露出が調整された被写体光を撮像素子120に結像させる必要があるので、CPU100によってモータ駆動部101が制御され、光学ユニット110内の絞りの径が変更され露出調節が行なわれるとともに、撮影レンズのフォーカス位置が調整されることによりピント調整が行なわれる。また、光学ユニット110は、被写体光を制限するための図示しない機械式シャッタも備えており、静止画撮影時のスミア現象を防止している。
【0030】
撮像素子120は、光学ユニット110の撮影レンズで結像されてなる被写体光を受光して被写体を表わす画像信号を生成する。本明細書では、画像信号により表される被写体の画像を、信号上の画像、また単に画像とも称する。本実施形態において、撮像素子120は、CCDイメージセンサである。撮像素子120は、矩形状の領域に2次元配列された、図示しない多数のフォトダイオードや、垂直転送路および水平転送路とを有しており、フォトダイオードのそれぞれに光量に応じて蓄積された電荷の信号を、垂直転送路および水平転送路によって垂直方向および水平方向に順次転送することにより、画像信号を出力する。本実施形態において、フォトダイオードのそれぞれは赤(R)緑(G)青(B)のいずれかの色に対応しており、撮像素子120は、画像の画素単位ごとにRGB各色に対応した信号を出力する。また、矩形状の領域に配置されたフォトダイオードのうち、矩形の一辺に配置されたフォトダイオードは、遮光材で覆われており被写体光を受光せず、通常は黒レベルの信号を出力する。
【0031】
アナログ信号処理部123は、撮像素子120から出力された画像信号を受けてノイズ低減処理といったアナログ信号処理を行う。
【0032】
ADC124は、アナログ信号処理部123処理が行われた画像信号をデジタル信号の画像信号に変換する。変換された画像信号は、画像入力I/F125によってバスBに導かれる。
【0033】
タイミングジェネレータ121は、撮像素子120に対し、画像信号を読み出すためのタイミング信号を供給する。撮像素子120は、タイミングジェネレータ121から供給されるタイミング信号に応じて画像信号を出力する。
【0034】
図1に示すデジタルカメラにおいては、表示画面125Aがファインダ代わりに用いられる。したがって、表示画面125A上に動画を表示するため、電源が投入されたときにCPU100は、およびタイミングジェネレータ121に指示して、所定の間隔ごとに撮像素子120に1画面(1フレーム)分の画像を生成させてはアナログ信号処理部123へと画像信号を出力させている。撮像素子120から、アナログ信号処理部123、A/D122、画像入力I/F125を経てバスB上に導かれた画像信号は、まずRAM106にすべて転送される。この後、画像信号は、スミア検出部102、スミア補正部109、ホワイトバランス調整部103、および色低減部104を経た後、LCDI/F141を介してLCD140に転送される。この結果、LCD140には画像信号に基づく画像が表示される。CPU100は、前述した様に撮像素子120に所定の間隔ごとに画像を生成させては出力させているので、LCD140には光学ユニット110が捉えている被写体像(以降スルー画という)が動画として表示される。
【0035】
ホワイトバランス調整部103は、撮像素子120における色の感度特性や、光源の種類によって変わる画像の色調を補正し、光源にかかわらず白さが同じに見えるようにする。より詳細には、ホワイトバランス調整部103は、撮像素子120で生成された画像を解析し光源の色調を推定することによって補正係数すなわちゲインを決定し、画像信号のRGB各成分の値に補正係数を乗じることによって補正を行う。また、本実施形態のホワイトバランス調整部103は、画像信号の階調を調整するためのガンマ補正、およびRGB色空間からYCrCb色空間への色空間変換も行う。スミア検出部102およびスミア補正部109は、画像中のスミア検出およびスミア補正を行う。色低減部104は、スミア補正部109による誤補正(過補正を含む)の影響を低減する。スミア検出部102、およびスミア補正部109、および色低減部104の詳細については後述する。
【0036】
図1に示すデジタルカメラにおいて、LCD140上のスルー画を見ながらシャッタチャンスにレリーズボタン10aが押されると、まずレリーズボタン10aが半押しされたときにCPU100が測光および測距を行ってモータ駆動部101に指示して絞りの径を調節させるとともにフォーカスレンズを合焦位置に移動させてピント調整を行わせる。
【0037】
続いてレリーズボタン10aが全押しされたときにCPU100は、半押し時に予め算出しておいたシャッタ速度でタイミングジェネレータ121に指示して撮像素子120に露光を行わせ、露光終了後に被写体を表わす画像信号をアナログ信号処理部123へと出力させる。
【0038】
撮像素子120から出力された画像信号がアナログ信号処理部123へ供給されると、アナログ信号処理部123ではノイズ低減処理などが行なわれ、ADC124でデジタル信号に変換された画像信号がバスB上に導かれ、バスに導かれた画像信号がRAM106にすべて導かれる。
【0039】
RAM106に記憶された画像信号は、今度はバスBを経由して圧縮伸張処理部108に転送される。圧縮伸張処理部108は、画像信号に対し圧縮処理を施す。圧縮処理された画像信号は外部メモリI/F151に転送されメモリカード150に記録される。
【0040】
図1に示すデジタルカメラにおいて、撮像素子120はCCD撮像素子であり、撮像素子120の一部が強い光を受けた場合には、その光を受けたフォトダイオードから溢れた電荷が垂直転送路を転送中の電荷に加わるスミア現象が発生する。撮像素子120において、遮光材で覆われたフォトダイオードは通常、黒レベルの信号を出力するが、スミア現象の影響は他のフォトダイオードと同様に受けるため、スミアに対応する電荷の値が出力される。
【0041】
図3は、撮像素子から読み出された画像の例を示す図である。ここに示されているのは、グレーの背景に自動車が配された被写体を表わす画像である。
【0042】
図3に示された画像160は、撮像素子120の矩形領域に対応して、撮像素子120から出力された画像信号の状態を表わしている。矩形の下辺には、遮光されたフォトダイオードの信号に対応した黒レベル部分161がある。また、画像160にはスミア162が現れている。スミア162は、黒レベル部分161にも現れる。スミア検出部102およびスミア補正部109は、スミアの検出および補正を行う。
【0043】
図4は、図2に示すデジタルカメラの内部構成のうち、スミア補正に関連するブロックと信号の流れを示すブロック図である。
【0044】
撮像素子120で生成された画像信号は、アナログ信号処理部123でアナログ処理を受け、ADC124でデジタル変換された後、スミア検出部102とスミア補正部109に供給される。スミア検出部102は、供給された画像信号からスミア成分を検出するとともに画像信号が表わす画像内においてスミア成分が含まれたスミア領域を検出する。検出結果はCPU100に供給される。一方、スミア補正部109では検出結果に基づいてスミア補正が行われ、スミア補正された画像信号はホワイトバランス調整部103、および色低減部104による処理を経てLCD140に表示される。なお、図4では、画像入力I/F125、RAM106、およびLCD I/F141は省略されている。また、図4に示す、スミア検出部102、スミア補正部109、ホワイトバランス調整部103、および色低減部104の組合せが本発明の画像処理装置の一実施形態にも相当している。
【0045】
まず、スミア補正の処理について説明する前に、撮像素子で生成される信号の値とホワイトバランス調整部における値の調整について説明する。
【0046】
図5は、太陽光におけるグレーの被写体部分を撮影した画像信号の処理を説明する表である。
【0047】
本実施形態の撮像素子120はRGBのカラーフィルタを使用しており、緑に対して高い感度を有している。このため、標準光源として太陽光下における撮影の場合、CCD撮像素子によって生成された画像信号に対しホワイトバランス調整で緑の成分を抑えることにより、画像における色のバランスが保たれている。図5に示す例では、緑に対する感度は赤や青に対する感度に比べ2倍であり、この場合、ホワイトバランス調整部103における補正係数であるホワイトバランスゲイン(WBゲイン)は、赤、緑、青について2、1、2であり、赤および青のゲインは緑のゲインの2倍である(R/G=2、B/G=2)。図5に示すように、標準の明るさを有するグレーの被写体(例えば図3における背景のうちの点p1)のある画素について、撮像素子120からは赤、緑、青の各色について14bit値として、3000、6000、3000の値が出力される。これらの値は、ホワイトバランス調整部103で各色のWBゲインが乗算されると、赤、緑、青の値は全て6000になる。このようにして、画像のホワイトバランス調整が行われる。この後、ガンマ係数を2.2としたガンマ補正と8ビット変換によって、赤、緑、青の値はすべて160になり、色空間変換処理によって、Y=160、Cr=0、そしてCb=0の値が生成される。ここでYは画像の輝度を表わし、Crは赤についての色成分を表わし、Cbは青についての色成分を表わす。色成分CrおよびCbのそれぞれは0を中心として正負の値をとり得る。上記変換後の値は、Cr=0およびCb=0であり、色成分が無いグレーを表わしている。
【0048】
図6は、スミア現象が発生した場合の画像信号の例を示す表である。
【0049】
スミアは通常、撮像素子で生成される信号のうち赤、緑、青の各色について均等に加算される。例えば図3におけるグレーの背景のうちの点p2にはスミアが現れている。ここで例えば、スミア成分として、赤、緑、青に1000が加算されると、撮像素子から出力される赤、緑、青の信号値は、4000、7000、4000となる。なお、遮光材で覆われた部分(図3における点p3)については、本来の黒レベルの信号値(例えば0)に、スミア成分が加わった値(例えば1000)が出力される。
【0050】
図6に示すように、グレーの部分にスミアが加わり、赤、緑、青の値は、4000、7000、4000となった場合、ホワイトバランス調整によって、赤、青の値が緑の値の2倍に調整されると、赤、緑、青の値は、8000、7000、8000となる。ガンマ補正および色空間変換の結果、輝度成分Yの値は176となり、色成分Cr,Cbの値はともに6.6となる。Cr,Cbの値がともに正の値であり、画像に現れるスミアは紫がかったものであることを意味する。
【0051】
続いて、スミアの補正と誤補正について説明する。
【0052】
スミア検出部102は、この部分の画像における位置および値から、画像内においてスミア成分が含まれたスミア領域を検出する。検出は、画像の黒レベル部分の信号値に基づいて行う。例えば、図3に示す黒レベル部分161における信号値のうち、通常の黒レベルの値とはことなり所定の閾値を超える部分にスミアがあると判定し、黒レベルを超える量がスミア成分の量であるとする。また、スミア検出部102は、黒レベル部分161のスミアが検出された部分P3を含んだ、画像160を縦に延びる帯状の領域をスミア領域162aと判定する。スミア領域およびスミア成分の量の情報は、CPU100に供給される。スミア補正部109は、CPU100の制御に基づき、スミア領域およびスミア成分の量の情報に応じたスミア補正を行う。具体的には、スミア補正部109は、撮像素子120で生成された画像のうちの、スミア領域からスミア成分を減算することによりスミア補正を行う。スミア補正が適正に行われれば、スミアが除去された画像が得られることとなる。
【0053】
例えば、被写体が動かない場合のように、あるフレームの画像におけるスミア成分およびスミア領域がそれ以前のフレームの画像信号から検出されたものと一致する場合には、スミア成分は適切に除去される。例えば、図6に示すように、グレーの部分にスミア成分としての値1000が加わり、4000、7000、4000となった赤、緑、青の値から、検出に応じて1000の値が減算された場合には、値が3000、6000、3000となり、図5に示すスミア無しの場合と同じ値に回復される。
【0054】
しかし、スミア検出部102によるスミア成分の検出からスミア補正部109による補正までは遅延がある。つまり、スミア検出部102による検出結果は、検出対象となったフレームの画像よりも後で生成されたフレームの画像に対する補正に反映される。このため、スミアの位置が、検知したフレームにおける位置からずれていた場合には、スミアの無い位置にスミア補正がなされる誤補正が生じる。
【0055】
図7は、誤補正がなされた場合の画像信号の値を示す表である。
【0056】
図7の例では、標準の明るさを有するグレーの被写体に対して、撮像素子120によって生成される値が3000、6000、3000であった場合に(図5参照)、この部分がスミアが検出されたとしてスミア成分の値として1000が減算されると、スミア補正後の値は、図7に示すように、赤、緑、青の各色について、2000,5000,2000となる。この値は、ホワイトバランス調整部103によるホワイトバランス調整によって、4000,5000,4000となる。この値の、ガンマ補正およびYCC色空間への色空間変換の結果、Yの値は141となり、CrおよびCbの値はともにー9となる。Cr,Cbの値がともに負の値であり、スミア誤補正の結果は、緑がかった線として現れることとなる。
【0057】
このように、スミア成分を含まないグレーを表す値に対し、誤補正によるスミア補正とホワイトバランス調整が行われると、緑色の値となる。したがって、画像には、本来グレーの部分に緑色の帯状の線が現れることとなる。
【0058】
そこで、色低減部104は、誤補正により生じる線の色をグレーに近づける色低減処理を行う。具体的には、色低減部104は、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける処理を行う。より詳細には、画像のうちの、スミア補正部109によってスミア補正が行われたスミア領域に対応する画像信号のうち、グレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる緑色を含む特定色範囲内にある画素の色成分を減ずる。特定色範囲は、例えば、正負の値をとり得る色成分CrおよびCbに対し、緑を含んだ、Crが負の値でかつCbも負の値となる範囲とする。また、減ずる割合としては、例えば1/2である。例えば図7の表を参照して説明した例では、CrおよびCbの値9が、係数1/2を乗算することによってー4.5となり、色の彩度が低減する。このため、誤補正の結果生じる線の緑の色が弱められ、誤補正による画像の劣化が抑えられる。
【0059】
なお、図5,6,7の表では、被写体を照らす光の光源が標準光(太陽光)の場合を説明したが、本実施形態のデジタルカメラ1は、ホワイトバランス調整部103におけるゲインが標準光の場合に固定されるものではなく、いわゆるオートホワイトバランス機能を有している。すなわち、撮像素子120によって生成された画像信号に基づいたホワイトバランス調整量を決定し、画像信号のホワイトバランスを、決定したホワイトバランス調整量だけ調整している。また、色低減部104は、ホワイトバランス調整部103におけるホワイトバランス調整量に応じて、特定色範囲を決定する。
【0060】
図8は、太陽光以外の光源時におけるホワイトバランスゲインの代表値を示す表である。
【0061】
図8の表に示すように、例えば、光源の種類が電球の場合には、光源からの光の青の成分が少ないため、ホワイトバランス調整における青のWBゲインは、赤および緑のWBゲインの4倍(R/G=1,B/G=4)となる。また、水中の撮影では、ホワイトバランス調整における赤のWBゲインが緑および青のWBゲインの4倍となる(R/G=4,B/G=1)。また、光源の種類が水銀灯の場合には、赤および青のゲインが緑のWBゲインの4倍となり(R/G=4,B/G=4)、紫系の特殊光源では、緑のWBゲインが赤および青のWBゲインの2倍となる(R/G=0.5,B/G=0.5)。なお、図8に示すWBゲインの値は典型例であって、WBゲインは撮像素子120で生成された画像の解析結果による。ここで、WBゲインは本発明にいうホワイトバランス調整量の一例に相当する。
【0062】
図9は、太陽光以外の光源時におけるグレーの被写体部分を撮影した画像信号の処理を説明する表である。
【0063】
図9に示すように、光源の種類が太陽光以外の場合には、撮像素子120によって生成される、グレーの被写体に対応した画像信号は、光源に応じた赤、緑、青の値を有しているが、図4に示したWBゲインに応じたホワイトバランス調整によって、最終的には、Yの値が160となり、CrおよびCbの値が0となる。すなわち、グレーを表す値に統一される。
【0064】
この一方、スミアの色は決定されたWBゲインによって異なるものとなる。そして、スミア補正が過補正となった場合に、本来グレーの部分に過補正によって生じる線の色もまた、決定されたWBゲインによって異なるものとなる。
【0065】
図10は、太陽光以外の光源時においてスミア現象が発生した場合の画像信号の例を示す表である。また、図11は、太陽光以外の光源時において誤補正がなされた場合の画像信号の値を示す表である。
【0066】
例えば、光源の種類が電球の場合には、図10に示すように、本来グレーの部分はスミア現象によってYの値が175.2となり、Crの値がー3.2となり、Cbの値が28.8となる。つまり、スミアはシアンの色を有する。また、図10に示すように、誤補正の場合には、グレーの部分は、Yの値が141.6であり、Crの値が5.4であり、Cbの値がー48.6となる。つまり黄色になる。この他の種類の光源についても、誤補正の結果、被写体のグレーの部分には、WBゲインに応じた色の線が現れる。
【0067】
図12は、誤補正がなされた場合にグレーの部分が変化する画像信号のCrおよびCbの値を光源時の種類ごとに表したグラフである。
【0068】
図12に示すグラフでは、YCrCb空間における画像信号の値Y,Cr,Cbのうち、Cr成分すなわち赤についての成分が横軸に表わされ、Cb成分すなわち青についての成分が縦軸に表わされている。グラフにおけるCr=0かつCb=0の位置、すなわちグラフの原点は、色が無いすなわちグレーを意味する。なお、グレーの明度はYの値で決定されることとなる。また、グラフの第1象限(Cr>0,Cb>0)は、紫がかった色の範囲であり、第2象限(Cr<0,Cb>0)は、シアンの範囲であり、第3象限(Cr<0,Cb<0)は、緑がかった色の範囲であり、第4象限(Cr>0,Cb<0)は、黄色がかった色の範囲である。
【0069】
上述したようにWBゲインが変化するため、誤補正の結果、グレーの部分に生じる色は様々な範囲に分布する。例えば、太陽光および水銀灯の場合は緑となり、電球の場合は黄色となり、水中の場合はシアンとなり、特殊光源の場合は紫となる。
【0070】
そこで、色低減部104は、ホワイトバランス調整部におけるホワイトバランス調整量に応じて、色の低減を行う対象となる特定色範囲を決定している。より詳細には、特定色範囲は、画像信号をYCrCb色空間における値に変換した場合に、Cr軸Cb軸がなす平面において、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色の座標位置を含む象限を選択することで決定される。
【0071】
図13は、色低減部が色の低減を行う対象とする特定色範囲を示す図である。
【0072】
色低減部104は、例えば、図5に示すように赤と青のホワイトバランスゲインが緑のものに比べて大きい(R/G>1,B/G>1)場合には、誤補正の結果、グレーの部分に生じる色はCr<0かつCb<0の第3象限に含まれる。このとき、特定色範囲は、第1〜第4象限のうち緑を含む範囲である第3象限W3(Cr<0かつCb<0)とする。また、電球のように、青のホワイトバランスゲインが緑および赤に比べて大きい場合には、誤補正の結果、グレーの部分に生じる色は第4象限W4(Cr>0,Cb<0)に含まれる。このとき、特定色範囲は、第1〜第4象限のうち黄色を含む範囲である第4象限(Cr>0,Cb<0)とする。
【0073】
色低減部104は、画像信号の色成分Cr,Cbが特定色範囲にある場合に、色成分Cr,Cbを低減して、色をグレーに近づける。
【0074】
このように、オートホワイトバランスのホワイトバランス調整量に応じて、特定色範囲W1〜W4が決定することにより、光源の種類に応じた適切な色低減処理が実行される。
【0075】
ここで、デジタルカメラ1におけるスミア補正関連の処理を説明する。
【0076】
図14は、デジタルカメラにおける処理の概要を示すフローチャートである。図14には、デジタルカメラ1のスルー画表示において、撮像素子によって生成された画像信号のスミア補正に関連する処理が示されている。
【0077】
デジタルカメラ1では、撮像素子120の撮像処理によって被写体を表わす画像信号が生成される(ステップS11)。撮像素子120は、スルー画を表示させるためフレームを表す画像信号を定期的に生成する。したがって、図14のフローチャートは繰り返し実行されることとなる。
【0078】
次に、スミア検出部102が、上記ステップS11で生成された画像からスミア成分およびスミア領域を検出する(ステップS13)。このステップの処理でスミア成分が検出された場合には(ステップS14でY)、スミア補正部109が撮像素子120によって生成された画像信号のうちのスミア領域からスミア成分を減算することによりスミア補正を行う(ステップS15)。
【0079】
この後、ホワイトバランス調整部103が、画像に基づいたホワイトバランス調整量を決定し、画像のホワイトバランス調整処理を行う(ステップS16)。
【0080】
次に、色低減部104が、色低減処理を行う特定色範囲を決定する。特定色範囲は、色空間において色低減処理の対象となる色の範囲である。より具体的には、特定色範囲は、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む範囲である。つまり、特定色範囲はホワイトバランス調整量に応じて決定される。本実施形態では、特定色範囲は、画像信号をYCrCb色空間における値に変換した場合に、Cr軸Cb軸がなす平面において、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色の値Cr、Cbを含む象限を選択することで決定される。特定色範囲は、より詳細には、赤(R)、緑(G)、青(B)各色のホワイトバランス(WB)ゲインについて、R/GおよびB/Gのそれぞれの値が所定の閾値rate1,rate2,rate3よりも大きいか否かによって決定される。ここで、rate1,rate2,rate3の値は例えば1であり、値は1であるとして説明する。
【0081】
ステップS17〜S19の判定において、R/G>rate1であり、かつ、B/G>rate2である場合(ステップS17でY,S18でY)、つまりRおよびBのゲインがGに比べて大きい場合には、特定色範囲は図13に示すW3、つまりCr<0,Cb<0の範囲に決定される(ステップS21)。また、R/G>rate1であり、かつ、B/G>rate2でない場合(ステップS17でY,S18でN)、つまりRのゲインがGに比べて大きく、BのゲインがGに比べて小さい場合には、特定色範囲は図13に示すW2、つまりCr<0,Cb>0の範囲に決定される(ステップS22)。また、R/G>rate1でなく、かつ、B/G>rate3である場合(ステップS17でN,S18でY)、つまりRのゲインがGに比べて小さく、BのゲインがGに比べて大きい場合には、特定色範囲は図13に示すW4、つまりCr>0,Cb<0の範囲に決定される(ステップS23)。また、R/G>rate1でなく、かつ、B/G>rate3でない場合(ステップS17でN,S18でN)、つまりRおよびBのゲインがGに比べて小さい場合には、特定色範囲は図13に示すW1、つまりCr>0,Cb>0の範囲に決定される(ステップS24)。
【0082】
例えば太陽光下の撮影では、ホワイトバランス調整部103は、画像信号から、ホワイトバランス調整量を、R/G>1、B/G>1となる値に決定する。この場合、ステップS17〜S19の判定において、ステップS17でY,ステップS18でYと判定された結果ステップS21で、特定色範囲が、図13に示すW3、つまりCr<0,Cb<0の範囲に決定される(ステップS21)。
【0083】
特定色範囲を決定した後、色低減部104が特定色補正の処理を実行する(ステップS25)。色低減部104は、ステップS15のスミア補正、およびステップS16のホワイトバランス調整が実行された画像のうちスミア補正がなされたスミア領域を構成する各画素のうち、YCrCb色空間における特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う。より詳細には、特定色範囲内にある画素の色成分であるCr,Cbの値に、0より大きく1以下の係数、例えば1/2を乗じて、値を低減する。
【0084】
このステップS25により、誤補正の結果生じる線の色が低減し、誤補正による画像の劣化が抑えられる。
【0085】
この後、画像信号は、LCD140に送られ、スルー画が表示される(ステップS27)。なお、上記ステップS14でスミアが検出されない場合には(ステップS14でN)、スミア補正や色低減処理は実行されず、ホワイトバランス調整部103が、画像信号のホワイトバランス調整処理を行う(ステップS26)。
【0086】
図14のフローチャートに示す処理が本発明の画像撮影方法の一実施形態に相当し、このフローチャートのうちステップS13以降の処理が本発明の画像処理方法の一実施形態に相当する。
【0087】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0088】
図15は、第2実施形態のデジタルカメラの内部の構成を示すブロック図である。
【0089】
第2実施形態のデジタルカメラ2は、動き検出部170をさらに備えた点が、第1実施形態のデジタルカメラ1と異なる。
【0090】
動き検出部170は、撮像素子120によって順次生成された複数の画像を比較することによって画像上の被写体の動きを検出する。より詳細には、先に生成された画像のうちの特定の部分と一致する部分が、後で生成された画像のどこにあるかを検索することによって、画像上の被写体の動きを検出する。
【0091】
スミア補正の誤補正は、被写体そのもの特に高輝度となる部分が動くことや、デジタルカメラを構える位置や向きが変動することによって、被写体が動く場合に特に発生しやすい。
【0092】
第2実施形態のデジタルカメラ2では、被写体の動きを検出しない場合には色低減処理を実行しないことによって処理負担の低減を図し、画像上の被写体の動きを検出した場合に色低減処理を行い、効率よく色低減処理を実行する。
【0093】
図16は、図15に示すデジタルカメラの内部構成のうち、スミア補正に関連するブロックと信号の主要な流れを示すブロック図である。
【0094】
撮像素子120で生成され、アナログ信号処理部123、ADC124を経た画像の信号は、スミア検出部102とスミア補正部109に加え、動き検出部170にも供給される。動き検出部170で被写体の動きの検出結果はCPU100に供給され、CPU100は、検出結果に応じて色低減部104の動作を制御する。
【0095】
図17は、第2実施形態のデジタルカメラにおける処理の概要を示すフローチャートである。
【0096】
第2実施形態のデジタルカメラ2における処理は、図14に示す処理に対し、動き検出を行う点(ステップS31,32)が異なる。スミア補正の処理(ステップS15)およびホワイトバランス調整の処理(ステップS16)に続いて、動き検出部170が動き検出を行う(ステップS31)。動き検出部170によって動きが検出された場合には(ステップS32でY)、図14で説明した特定色範囲の設定(ステップS17〜24)および特定色補正(ステップS25)を実行する。この一方、動き検出部170によって動きが検出されない場合には(ステップS32でN)、特定色補正は実行しない。
【0097】
このように第2実施形態のデジタルカメラ2では、被写体の動きを検出しない場合には色低減処理を実行しないことによって処理負担の低減を図し、画像上の被写体の動きを検出した場合に色低減処理を行い、効率よく色低減処理を実行する。
【0098】
なお、上述した実施形態では、本発明にいう画像撮影装置の例として、デジタルカメラを示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、ビデオカメラであってもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、本発明にいう画像処理装置および画像処理方法の例として、撮像素子によって生成された画像信号を直ちに処理するデジタルカメラを説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、メモリ等記憶装置に記憶された画像信号の処理に適用するものであってもよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、本発明にいうスミア補正および色低減処理の例として、スルー画として表示する画像に対する処理を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、機械式シャッターを具備しない場合の記録用画像信号に対する処理に応用してもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、本発明にいう色低減処理の対象となる特定色範囲の例として、YCrCb色空間におけるCr>0か否か、およびCb>0か否かによって分かれる4つの範囲のいずれかを特定色範囲とする場合を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、Cr>αかあるいはCr<−α(αは正の実数)であるか、および、Cr>βかあるいはCr<−β(ベータは正の実数)であるかで区切られる範囲から選択するものであってもよく、また、範囲は、色空間上での特定の条件による境界により囲まれた範囲であってもよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、本発明にいう色低減処理の例として、Cr,Cbの値を1/2とする処理を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、処理としては、0〜1の範囲のいずれかの値を乗ずるものであってもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、本発明にいう色低減部の例として、ホワイトバランス調整部におけるオートホワイトバランスのホワイトバランス調整量に応じて、特定色範囲を決定する例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、オートホワイトバランスを備えず、例えば、特定色範囲が、標準光源を前提とした固定されたものであってもよい。
【0104】
また、上述した実施形態では、スミア検出部102、スミア補正部109、ホワイトバランス調整部103、および色低減部104を独立したブロックとして説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、各部の処理は、例えばDSP(Digital Signal Processor)に代表されるプロセッサとプログラムの協同により実行されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1,2 デジタルカメラ
102 スミア検出部
103 ホワイトバランス調整部
104 色低減部
108 圧縮伸張処理部
109 スミア補正部
120 撮像素子
121 タイミングジェネレータ
123 アナログ信号処理部
170 動き検出部
W1,W2,W3,W4 特定色範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光を受光して該被写体を表わす画像信号を生成する撮像素子と、
前記撮像素子によって生成された画像信号からスミア成分を検出するとともに該画像信号により表される画像内において該スミア成分が含まれたスミア領域を検出するスミア検出部と、
前記撮像素子によって生成された画像信号のうちの、前記スミア領域に対応する部分からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正部と、
前記スミア補正部によりスミア補正された画像信号に対し、該画像信号により表される画像のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整部と、
前記ホワイトバランス調整部により調整された画像信号に対し、該画像信号により表される画像の中の前記スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減部とを備えたことを特徴とする画像撮影装置。
【請求項2】
前記ホワイトバランス調整部が、前記撮像素子によって生成された画像信号に基づいたホワイトバランス調整量を決定し、該画像信号を、決定したホワイトバランス調整量だけ調整するものであり、
前記色低減部が、前記ホワイトバランス調整部におけるホワイトバランス調整量に応じて、前記特定色範囲を決定するものであることを特徴とする請求項1記載の画像撮影装置。
【請求項3】
前記撮像素子によって順次生成された複数の画像を表わす画像信号を比較することによって該画像上の被写体の動きを検出する動き検出部を更に備え、
前記色低減部が、前記動き検出部による動きが検出された場合に前記色低減処理を行うものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像撮影装置。
【請求項4】
撮像素子に被写体光を受光させて該被写体を表わす画像信号を生成させる撮像ステップと、
前記撮像ステップで生成された画像信号からスミア成分を検出するとともに該画像信号により表される画像内において該スミア成分が含まれたスミア領域を検出するスミア検出ステップと、
前記撮像素子によって生成された画像信号のうちの、前記スミア領域に対応する部分からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正ステップと、
前記スミア補正ステップによりスミア補正された画像信号に対し、該画像信号により表される画像のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整ステップと、
前記ホワイトバランス調整ステップにより調整された画像信号に対し、該画像信号により表される画像の中の前記スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減ステップとを備えたことを特徴とする画像撮影方法。
【請求項5】
前記ホワイトバランス調整ステップが、前記撮像素子によって生成された画像信号に基づいたホワイトバランス調整量を決定し、該画像信号を、決定したホワイトバランス調整量だけ調整するものであり、
前記色低減ステップが、前記ホワイトバランス調整ステップにおけるホワイトバランス調整量に応じて、前記特定色範囲を決定するものであることを特徴とする請求項4記載の画像撮影方法。
【請求項6】
前記撮像素子によって順次生成された複数の画像を表わす画像信号を比較することによって該画像上の被写体の動きを検出する動き検出ステップを更に備え、
前記色成分低減ステップが、前記動き検出ステップによる動きが検出された場合に前記色低減処理を行うものであることを特徴とする請求項4または5記載の画像撮影方法。
【請求項7】
画像を表わす画像信号からスミア成分を検出するとともに該画像信号により表される画像内において該スミア成分が含まれたスミア領域を検出するスミア検出部と、
前記画像信号のうちの、前記スミア領域に対応する部分からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正部と、
前記スミア補正部によりスミア補正された画像信号に対し、該画像信号により表される画像のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整部と、
前記ホワイトバランス調整部により調整された画像信号に対し、該画像信号により表される画像の中の前記スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減部とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
画像を表わす画像信号からスミア成分を検出するとともに該画像信号により表される画像内において該スミア成分が含まれたスミア領域を検出するスミア検出ステップと、
前記画像信号のうちの、前記スミア領域に対応する部分からスミア成分を減算することによりスミア補正を行うスミア補正ステップと、
前記スミア補正ステップによりスミア補正された画像信号に対し、該画像信号により表される画像のホワイトバランス調整を行うホワイトバランス調整ステップと、
前記ホワイトバランス調整ステップにより調整された画像信号に対し、該画像信号により表される画像の中の前記スミア領域を構成する各画素のうち、スミア成分を含まないグレー成分が仮にスミア補正およびホワイトバランス調整により変換された場合に得られる色を含む特定色範囲内にある画素の色をグレーに近づける色低減処理を行う色低減ステップとを備えたことを特徴とする画像撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−199845(P2010−199845A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41076(P2009−41076)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】