説明

画像蓄積装置及び画像蓄積システム

【課題】良好な画質で画像蓄積を行うこと、及び追尾などのカメラ動作をできるだけ妨げることなく撮影を行うことの両方を過不足なく達成できるようにする。
【解決手段】画像を撮影する状態を制御することが可能なカメラ部100と、前記カメラ部100の状態を制御する制御部200とを有する画像蓄積装置であって、前記制御部200は、カメラ部100の移動中は画像の撮影を行わず、カメラ部100の移動が停止中に画像の撮影を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像蓄積装置及び画像蓄積システムに関し、例えば動き検知機能、追尾機能、及び画像蓄積機能を有し、主に監視や画像配信用途に供されるカメラに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔地に設置し、ネットワーク経由で制御して画像を取得・表示する用途に供するための、いわゆるネットワークカメラがある。ネットワークカメラには、画像の変化を検出する動き検知機能や、画像を蓄積する画像蓄積機能を持つものがある。
【0003】
画像蓄積機能に関するさらに高度な機能としては、定期的に画像を蓄積したり、画像をサーバにアップロードしたり、動き検知が発生したときに画像を蓄積したりする機能を有するものがある。また、動き検知に関するさらに高度な機能としては、動きのあるものに対してカメラを向ける追尾機能を有するものがある。
【0004】
追尾の手法の例としては、特許文献1に記載の「画像処理装置及び追尾装置」が知られている。これは、移動物体の色やヒストグラムに注目して追尾制御を行うものや、移動物体の一部をテンプレートとして記憶して追尾を行う方式や、動きベクトルに注目して追尾を行う方式である。
【0005】
【特許文献1】特開平11−150676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
追尾中の画像蓄積に関して、カメラが動作中においても画像蓄積を行いたい場合がある。従来の方式では一定間隔で撮影を行っていたが、カメラの撮像方向が移動中に撮影を行う場合があり、画像がぶれるという問題があった。また、画像蓄積と追尾のどちらを優先するかの選択を行うことができない問題点があった。
【0007】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、良好な画質で画像蓄積を行うこと、及び追尾などのカメラ動作をできるだけ妨げることなく撮影を行うことを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像蓄積装置は、撮像方向が制御可能な撮像部を制御する制御部を有する画像蓄積装置であって、前記撮像部の撮像方向が移動している場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積は行わず、前記撮像部の撮像方向の移動が停止した場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積を画像蓄積装置に蓄積する制御手段を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の画像蓄積装置の制御方法は、撮像方向が制御可能な撮像部を制御する制御部を有する画像蓄積装置の制御方法であって、前記撮像部の撮像方向が移動している場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積は行わず、前記撮像部の撮像方向の移動が停止した場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積を画像蓄積装置に蓄積することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、追尾中であってもカメラが停止したタイミングで撮像した画像を蓄積することでぶれのない画像を蓄積することができる。
また、本発明の他の特徴によれば、蓄積間隔を指定することにより、一定時間以上の間隔で画像を蓄積したり、一定間隔の指定時刻に近い時刻に蓄積された画像を残したりすることができる。
また、本発明のその他の特徴によれば、画像蓄積を優先するか、追尾を優先するかを選択することができる。さらに、カメラサーバに接続したビューワクライアント側で画像を蓄積することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施形態)
本実施形態では、移動物体の追尾を行う際の画像蓄積に関して、カメラの移動が停止した時に前回の画像蓄積時刻からあらかじめ定めた画像蓄積間隔以上経過していた場合には、画像蓄積を行うようにした画像蓄積装置の例を述べる。
【0012】
図1は、本実施形態における画像蓄積装置の内部構成例を示すブロック図である。本実施形態の画像蓄積装置は、カメラ部100と制御部200とからなる。カメラ部100は、カメラ(光学系)110と雲台120とからなり、信号線を通じて制御部200に接続される。カメラ部100はフォーカスや露出、シャッタースピードなどに関する不図示の制御回路を備え、カメラ110を自動的に制御して最適な画像を撮像する。最適な画像を撮像するために、パン角度、チルト角度、ズーム倍率、フォーカス、露出、シャッタースピード、ホワイトバランス、逆光補正係数等を制御することが可能に構成されている。このようなカメラ部100は、コンピュータ制御可能な市販のカメラを用いることが可能である。
【0013】
制御部200は、CPU210、ROM220、RAM230、画像取得回路240、符号化回路250、カメラ制御回路260、雲台制御回路270、周辺機器インターフェース280を備え、これらは内部バスを通じて相互に接続されている。さらに制御部200は、撮像画像を蓄積するために、ハードディスクドライブなどによって構成された2次記憶装置を有する。また、通信部290を通じてネットワーク300に画像や装置の状態を送信したり、制御信号を受信したりする機能を備えている。符号化回路250は、画像の符号化を行うものである。
【0014】
画像の符号化の方式としては、JPEGやMPEG1/2/4、H.264などの手法があるが、本実施形態の画像蓄積装置は符号化の方式に依存するものではない。制御部200は、画像取得回路240と符号化回路250とを備えるコンピュータであり、既存の技術を用いて構成可能である。
【0015】
図1では、カメラ部100と制御部200とが分離した構成を示している。しかし、それは本実施形態のハードウェア構成の一例であり、外観上一体型の構成にすることも可能である。また、カメラを汎用のPC(パーソナルコンピュータ)に接続した構成も可能であり、その場合は不図示のビデオ回路に外部ディスプレイが接続し、周辺機器インターフェース280にマウスやキーボードが接続された構成となる。
【0016】
次に、カメラ制御処理と画像処理の観点から見たハードウェアの機能ブロックを図2に示す。図2は、言い換えれば図1における画像信号や制御信号の流れを示したものである。このため、図1と同じ表現で機能を説明可能なブロックは同一番号で示す。
【0017】
図2に示したように、機能ブロックはカメラ部100と制御部200からなり、カメラ部100は図1と同じである。また、制御部200は、画像処理・カメラ制御部211、画像蓄積部221、画像バッファ231、符号化部250、カメラ制御部260、雲台制御部270、通信部290等から構成される。ここで、画像蓄積部221は物理的には2次記憶装置235であり、画像バッファ231は物理的にはRAM230であり、画像処理・カメラ制御部211は物理的にはCPU210である。
【0018】
次に、画像信号の流れを説明する。まず、カメラ110から画像を取得して画像バッファ231に蓄積する。画像バッファ231に蓄積された画像は符号化回路250で符号化され、通信回路290を通じてネットワーク300に送信される。
【0019】
他方で、画像は画像バッファ231から画像処理・カメラ制御部211にも送られ、ここで画像の動き検知処理を行う。画像の動き検知処理を行った結果、動きが検知された場合には、画像蓄積部221に画像を蓄積し、動きのあった方向にカメラを制御する制御信号を生成して、カメラ制御部260と雲台制御部270に送信し、カメラ制御を行う。カメラ動作終了後、最初に戻って再び動き検知・追尾処理を行う。
【0020】
画像の動き検知処理は、例えば画像間の差分により行われる。差分方法としては、隣接フレーム間差分や背景差分がよく知られている。隣接フレーム間差分の差分演算としては、座標が同じ画素の明度差の絶対値や、JPEG符号化ブロック単位でのDCT係数の差の絶対値和などが用いられる。注目領域に関して、これらの差分結果を積算した値があらかじめ定めたしきい値を超えると動きありとする方式がある。しかしながら、本実施形態は動き検知の方法に依存するものではない。
【0021】
自動追尾は画面全体に対して動き検知処理を行い、隣接する画素やJPEGブロックなどの動き検知単位を連結して領域分割を行い、最も面積の大きな領域の重心方向にカメラの撮像方向を向ける制御を行う。そして、カメラの移動停止後再び動き検知処理を行うことを繰り返し、一定時間以上動きがない場合は、追尾を終了する。
【0022】
次に、図3を用いて本実施形態における画像蓄積方法を説明する。
図3は、追尾中のカメラの動作状態と画像蓄積の関係を示したものである。横軸が時刻tであり、縦軸がカメラの動作状態を表す。カメラの動作状態には移動中と停止中の二つがある。
【0023】
停止時にカメラは動き検知処理を行い、動きが検知されると追尾を開始する。追尾は既に述べたように画像処理によって移動目標を決定し、移動終了後の停止状態で次回の移動目標位置を定める画像処理を行う。このため、追尾は移動と停止の繰り返し処理となる。
【0024】
時刻「0」においてカメラが静止中であるので、制御部200は、カメラ110において撮像された画像から順次蓄積が行われている。図3では、時刻「0」においてカメラ110の撮像タイミングとほぼ同時に画像の蓄積(画像蓄積1)が実行されていることが理解される。この時刻「0」において被写体の動きが検知された場合、被写体の移動にともなって追尾のためのカメラ動作を開始する。カメラ動作に必要な時間は移動量の大小で決まり、移動量が大きいほど長くなる。移動1の終了後、停止1において所定の蓄積間隔Tiが経過していたので、画像蓄積2を行う。同様にして、次のカメラ移動2の終了後、画像蓄積3を行う。次の移動3が終了した後の停止3は、前回の停止2の停止時刻からの経過時間が所定の蓄積間隔Tiより短いため、画像蓄積は行わない。これは停止2におけるカメラの制御状態(カメラの撮像方向)があまり変化せず、蓄積を省略してもよいと判断したためである。この結果、次回の画像蓄積は移動4の後の停止である停止4において画像蓄積4として実行される。
【0025】
次に、本実施形態における制御部200のソフトウェア処理手順の概要を図4のフローチャートを参照しながら説明する。
本実施形態における追尾装置の動作状態は動き検知モードと追尾モードの二つのモードを有する。動き検知モードで動きを検知すると、動きのある方向にカメラを制御する追尾モードに移行し、逆に追尾モードで対象を見失うと、動き検知モードに戻る。
【0026】
動き検知モードでは、開始後に最初のステップS401において、制御部200は、動き検知プリセットを指定している場合には、そのプリセット位置への移動を行う。次に、ステップS402に進み、既に説明した動き検知処理を行う。
【0027】
次に、ステップS403において、制御部200は、動きが発生したかどうかを判別する。この判別の結果、動きがない場合にはステップS402に戻り、前述した動き検知処理を続ける。また、ステップS403の判別の結果、動きが発生した場合にはステップS404へ進んで画像蓄積を行い、追尾モードへ移行する。
【0028】
制御部200は、追尾モードでは開始後、ステップS410で動き検知を再度行う。動き検知モードにおける動き検知処理と、追尾モードにおける動き検知処理との違いは、動き検知モードにおける動き検知処理は画像上で特定の部分領域に対して処理を行う。これに対し、追尾モードにおける動き検知処理は画面全体に対して行うことである。これは、動き検知時は例え出入り口などのあらかじめ動きの発生が予想される部分を指定することが多いからである。一方で、追尾時はできるだけ広い範囲に注目して追尾対象を検出したいからである。
【0029】
制御部200は、動き検知処理後、ステップS411で被写体の動きの有無を判別する。この判別の結果、被写体の動きがない場合にはステップS412に進み、被写体の動きのない時間の連続性を確認する。この確認の結果、動きの無い時間があらかじめ決められた時間を超過していれば、動き検知モードに移行する。また、ステップS412の判別の結果、動きの無い時間があらかじめ決められた時間よりも短ければステップS410に戻って再度動き検知処理を行う。
【0030】
一方、制御部200は、ステップS411の判別の結果、被写体の動きありと判別された場合にはステップS413に進んで追尾処理としてのカメラ制御を行う。ステップS413におけるカメラ制御は、例えば動き検知処理ステップS410で得た動き情報を基にして画像上で動きのあった領域を求め、その重心点が画像中央に来るようにカメラ制御する。もちろん、本実施形態は追尾方法に依存するものではないので、例えば移動物体の色や柄、エッジなどの特徴量を記憶して継続的に追尾を行う方式を使用することもなんら問題ない。
【0031】
カメラ制御終了後、ステップS414において、前回の蓄積時刻から蓄積間隔が経過しているかどうかを判別する。この判別の結果、画像蓄積時刻経過していた場合には、ステップS415に進んでカメラ110によってリアルタイムに撮像されている画像の蓄積処理を行う。画像蓄積終了後、あるいは、ステップS411で蓄積間隔が経過していない場合には、画像の蓄積処理を行わずにステップS410に戻って次の動き検知を行う。
【0032】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態によれば、撮像方向を制御可能なカメラを用いた追尾装置において、以下の効果が得られる。すなわち、追尾によるカメラ移動が終了してカメラの移動が停止状態にあるときに、前回の蓄積時刻から一定時刻経過した場合に画像蓄積を行うことにより、ぶれのない画像を一定間隔に近い間隔で撮像することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
本実施形態は、蓄積時刻を指定してカメラ110によってリアルタイムに撮像されている画像の蓄積処理を、カメラの停止期間時に毎回画像蓄積を行い、各蓄積指定時刻に最も近い時刻に蓄積された画像を選択して、残りは破棄する形態である。
【0034】
以下、図5を用いて本実施形態における画像蓄積の原理を説明する。動き検知時の画像の蓄積対象として、等間隔Tごとの画像が蓄積されるものとしてあらかじめ指定されている。図5において、制御部200は、時刻t1に動きが検知され、カメラ110によってリアルタイムに撮像されている画像の最初の画像蓄積を行う。
【0035】
次に、追尾のための移動1を開始する。画像蓄積時刻は時刻t1から等間隔に、t2=t1+T、t3=T1+2T、t4=t1+3T…、と指定される。一方、制御部200は、動き領域検出→移動→停止→動き領域検出→移動→停止、の順に自動追尾処理を繰り返し、移動1→停止1→移動2→停止2、の順に動作を行う。ここで、画像蓄積はt1以後、カメラ110が停止するごとに行われ、蓄積2、蓄積3、・・・、蓄積5と5枚の画像が蓄積される。
【0036】
一方で、蓄積時刻は、t2、 t3、 t4 と三回の時刻指定となる。蓄積時刻t2に最も近い時刻に蓄積されたのは蓄積画像2であるから、蓄積時刻t2に対応する蓄積画像としては蓄積画像2が採用される。
【0037】
同様にして、蓄積時刻t3に対応する蓄積画像としては蓄積画像3が採用され、蓄積時刻t4に対しては蓄積画像5が採用される。その結果、蓄積画像4は不要となるため、破棄される。ここで、各時刻においてどの画像を選択するかは蓄積時刻の前後に画像が撮像された時点ではじめて決定できる。同様に、撮像した画像を破棄するかどうかは当該画像の撮像時刻以後の蓄積時刻においてどの画像を蓄積画像として採用するか、が決定された後になる。
【0038】
本実施形態における画像蓄積装置の制御部200による処理手順を図6に示す。
図6は、第1の実施形態における画像蓄積の制御部200による処理手順である図4と同様に動き検知モードと追尾モードからなり、動きを検知すると追尾モードに移行する。図6において、動き検知モードの動作手順ステップS601からステップS604は第1の実施形態における動作手順と同一であるので説明を省略する。
【0039】
制御部200は、追尾モードにおいて、ステップS610で動き検知処理を行い、ステップS611で第1の実施形態と同様な方法により動きがあったかどうかを判別する。この判別の結果、動きなしと判別した場合はステップS612に進み、あらかじめ定めた時間以上動きがないかどうか判別する。
【0040】
一方、制御部200は、ステップS612の判別の結果、所定の時間に達していない場合にはステップS610に戻って再度動き検知を行う。また、ステップS612の判別の結果、所定の時間に達していた(超過していた)場合には、ステップS613に進んで蓄積に使用されなかった画像を破棄して動き検知モードに戻る。
【0041】
また、制御部200は、ステップS611で動きありと判別された場合にはステップS614に進み、動きのあった方向にカメラの撮像方向の制御を行う。そして、カメラ110の動作終了後、ステップS615でカメラ110によってリアルタイムに撮像されている画像の蓄積を行い、さらにステップS616で画像の選択と破棄を行う。
【0042】
画像の選択は、既に述べたように蓄積指定時刻の前後に少なくとも各1枚の画像がある場合に選択を行うことが可能であり、蓄積指定時刻に最も近い時刻に保存された画像が選択される。一方で、蓄積画像の破棄は、ある画像が蓄積指定時刻より前に保存された画像であって、かつ、蓄積画像として採用されなかった場合に破棄される。ステップS616で画像の選択・破棄を行った後、ステップS610に戻って動き検知を継続する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、追尾停止時に画像蓄積を行い、蓄積指定時刻にもっとも近い時刻に撮像された画像を蓄積画像として採用することにより、ぶれのない鮮明な画像を所望の時刻により近いタイミングで蓄積することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
本発明に関わる別の実施形態として、追尾時のカメラの撮像方向の移動動作に優先順位を設け、追尾と画像蓄積とのいずれを優先するかを選択する。そして、画像蓄積を優先する場合には、蓄積予定時刻に到達した場合には、追尾中であってもこれを中止してカメラ110によってリアルタイムに撮像されている画像の蓄積を行った後に、再び追尾制御を行う方式を説明する。
【0045】
追尾と蓄積のどちらを優先するか判別するためには、画像蓄積装置の2次記憶装置上に判別情報を記録するための領域を設ける。そして、プログラム起動時に当該領域の情報をプログラム領域として割り当てられたRAM上に変数として読み込んで、プログラム実行時に参照すればよい。この2次記憶装置上の値やRAM上の値は直接書き換えることもできるし、画像蓄積装置のプロセス動作中にネットワーク300経由で当該プロセスに指示を出して、変数を書き換えることも可能である。この場合、プロセス終了時に2次記憶装置上の領域に変更後の値を書き込んで終了し、次回の起動に備えることになる。
【0046】
次に、図7を用いて本実施形態におけるカメラ制御プロセスと画像蓄積プロセスの処理手順について説明する。
ここで、追尾優先の場合の処理手順は第1または第2の実施形態と同一であるため説明を省略し、画像蓄積優先モードが選択された場合を説明する。同モードにおけるカメラの動作モードは第1または第2の実施形態と同様に動き検知モードと追尾モードが存在する。また動き検知・追尾プロセスのほかに画像蓄積プロセスが存在する。動き検知・追尾プロセスのうち、動き検知モードの動作手順は第2の実施形態における動き検知モードの動作手順であるステップS601からステップS604と同一であるが、追尾モード移行時に画像蓄積プロセスを起動する。
【0047】
以後、図7では制御部200における追尾モードと画像蓄積プロセスの処理手順を説明する。
動きを検知して追尾モードを開始すると、先ず、制御部200は、ステップS710において動き検知処理を行う。ここでの動き検知処理は、第1および第2の実施形態と同様に画面全体に対して隣接フレーム間差分後に、最大の動き領域を求める処理を行う。次にステップS711で追尾対象があるかどうかを判別する。
【0048】
ステップS711の判別の結果、追尾対象なしと判断された場合には、制御部200は、ステップS712に進んで連続して対象が発見されない時間が所定の時間を超過したかどうか判別する。この判別の結果、超過していない場合にはステップS710に戻って動き検知を継続する。また、ステップS712の判別の結果、超過した場合にはステップS713に進んで蓄積画像として採用されなかった画像を破棄し、その後、ステップS714で画像蓄積プロセスを終了して動き検知モードに戻る。
【0049】
一方、ステップS711において、制御部200は、追尾対象ありと判別された場合にはステップS715に進んで追尾対象領域へのカメラ制御を開始する。次に、ステップS716でイベントの発生を待つ。イベントにはカメラ制御動作の中断要求イベントと、カメラ制御終了イベントの二種類を設ける。
【0050】
そして、制御部200は、ステップS716でイベントの発生を検知した場合にはステップS717に進んで動作中断要求かどうかを判別する。この判別の結果、動作中断要求である場合にはステップS718に進んでカメラ動作を中断する。また、ステップS717の判別の結果、動作中断イベントでない場合にはカメラ制御終了イベントなのでステップS710に戻って動き検知処理を継続する。ステップS718でカメラの撮像方向の移動動作を中断している間、画像蓄積プロセスではカメラ110によってリアルタイムに撮像されている画像の蓄積を行う。
【0051】
次に、画像蓄積プロセスから画像蓄積が終了したかどうかをステップS719において待つ。そして、画像蓄積終了イベントを受信したら、ステップS720に進んで残りのカメラ制御を行い、追尾時のカメラ制御目標値までカメラ110の撮像方向を制御する。カメラ制御終了後、ステップS710に戻って次の動き検知を行う。
【0052】
制御部200は、動き検知モードにおいて動きが検知されたら画像蓄積プロセスを起動し、追尾モード終了時はステップS714で終了する。
開始後、ステップS721において画像蓄積時刻に到達したかどうかを判別する。画像蓄積時刻は第2の実施形態と同様に、動き検知に伴う最初の画像蓄積時刻を基準に一定間隔で設定される。また、画像蓄積時刻でない場合には、同時刻への到達を待つ。一方、もし蓄積予定時刻に到達していた場合にはステップS722においてカメラの動作中断要求イベント発行する。これは動き検知・追尾プロセスに対してカメラの動作を中断する要求を出すものである。
【0053】
動き検知・追尾プロセスでは、既に説明したように、ステップS716でこの要求を受け付け、ステップS718で中断処理を行う。中断が終了したかどうかは、画像蓄積プロセスにおいてステップS723でポーリングを行って判断する。
【0054】
この判断の結果、カメラの動作が終了したと判断した場合にはステップS724でカメラ110によってリアルタイムに撮像されている画像蓄積を行う。そして、ステップS725で画像蓄積を終了したことを動き検知・追尾プロセスに通知する。その後、ステップS721に戻って次の画像蓄積時刻に到達するのを待つ。なお、画像蓄積プロセスは追尾モードから動き検知モードに戻る際にステップS714で終了される。
【0055】
以上述べたように、本実施形態によれば、画像蓄積を優先するか追尾を優先するかを選択し、画像蓄積を優先する場合には、画像蓄積の予定時刻になったら追尾を中断して画像を蓄積する。そして、画像の蓄積後に再び残りの追尾動作を継続することにより、より柔軟な画像蓄積手段を持つ画像蓄積装置を提供することができる。
【0056】
(第4の実施形態)
本発明に関わる別の実施形態としては、第3の実施形態において、追尾中に画像蓄積時刻が到来したときにカメラ動作を一旦中断した後で、再び残りのカメラ制御をすることなく、次の動き検知処理を開始することも可能である。追尾の対象は常に動いていることから、動き検知処理を頻繁に行うことで追尾精度を高める効果が得られる場合もある。この場合、第3の実施形態における図7において、ステップS719、ステップS720、ステップS725の各処理を省略することで、本実施形態における画像蓄積装置の処理手順を実装することができる。
【0057】
(第5の実施形態)
本発明に関わる別の実施形態として、画像に付加されたカメラ移動状態に関する情報に基づいて、ビューワクライアントにおいて画像を保存するようにした画像蓄積システムについて、図10を参照しながら説明する。
【0058】
先ず、カメラサーバ400とビューワクライアント500の関係を説明する。
カメラサーバ400は、ネットワーク300に対してWebサーバと同様のサービスを提供し、所定のプロトコル形式で送信される要求を受信する。そして、カメラのパン・チルト・ズームなどの動作を行ったり、画像を撮像して返信したり、外部入力や動き検知などのイベントを発行したりする。ビューワクライアント500は、カメラサーバ400に対して画像を要求したり、カメラのパン・チルト・ズームの変更を要求したり、返信された画像を表示したりする。ここで、本実施形態はプロトコルの形式に依存するものではない。
【0059】
本実施形態の画像蓄積システムにおける画像蓄積のタイミングとしては、第1あるいは第2の実施形態と同一のタイミングを考える。いずれもカメラが停止したタイミングで画像蓄積を行うが、本実施形態では、この画像蓄積はビューワクライアント500側で行うことになる。そのため、カメラ動作が停止しているかどうかをビューワクライアント500に知らせるために、画像に図8に示すようなカメラに関する情報を画像に付加して送信する。
【0060】
図8において、画像に付加する情報は、時刻、カメラのパン・チルト・ズーム、動き検知・追尾の状態、追尾を行う際の制御目標等である。時刻情報は、例えばANSIのtime関数で得られる4バイトの値を代入する。パン・チルトは2バイトを使用して、±180度を小数点第二位まで表現する。ズームは3バイトを使用して、倍率ないしは画角を小数点第三位まで表現する。
【0061】
動き検知・追尾の状態は、モード(動き検知/追尾)、カメラの動作状態(停止/動作中)を、1バイトのうち2ビットを用いて表す。また、追尾対象位置情報は、パン・チルト・ズームと同様な表現方法である。本実施形態は画像の符号化方式に依存するものではないが、JPEGの場合、画像の先頭付近に付加情報用の領域があり、具体的にはAPP0マーカーの後に前記述べたような付加情報を置くことが可能である。
【0062】
このような情報を画像に付加すれば、第1あるいは第2の実施形態と同様なタイミングで、ビューワクライアント500側において画像を蓄積することができる。ビューワクライアント500において行われる処理手順の一例を図9に示す。
【0063】
図9(a)は、第1の実施形態と同様なタイミングで画像蓄積を行う場合のビューワクライアント500の処理手順の例である。また、図9(b)は第2の実施形態と同様なタイミングで画像蓄積を行う場合のビューワクライアント500の処理手順の例である。ビューワクライアント500では、通常、GUIの処理に関するプロセスや、画像受信に関するプロセスや、その他のイベント処理に関するプロセスが動作するが、ここでは画像蓄積に関わるプロセスに関してのみ説明する。
【0064】
図9(a)において、ビューワクライアント500は、処理が開始された後の最初のステップS901で画像の受信を待つ。そして、画像を受信した場合にはステップS902に進んで、図8で説明した付加情報を解析する。
【0065】
次に、ステップS903に進み、ビューワクライアント500は、ステップS902で解析した付加情報から、カメラが停止中かどうかを判別する。この判別の結果、追尾モードではない場合や、カメラが移動中の場合にはステップS901に戻って次の画像受信を待つ。
【0066】
一方、ステップS903の判別の結果、ビューワクライアント500は、カメラが停止中の場合にはステップS904に進んで、前回の蓄積時刻からあらかじめ指定した蓄積間隔を経過したかどうかを判別する。蓄積間隔はビューワクライアント500のGUIから指定することが可能である。この判別の結果、あらかじめ指定した蓄積間隔が経過していない場合にはステップS901に戻って次の画像受信を待つ。また、ステップS904の判別の結果、あらかじめ指定した蓄積間隔が経過した場合にはステップS905に進んで画像蓄積を行う。そして、ステップS905において画像蓄積を終了した後に、ステップS901に戻って次の画像受信を待つ。
【0067】
図9(b)は、既に述べたように蓄積予定時刻付近の画像を選択して蓄積を行うビューワクライアント500の処理例を説明するフローチャートである。
処理が開始された後、ステップS911からステップS913までは図9(a)で説明した処理手順と同一であるため、説明を省略する。
【0068】
ステップS913の判別の結果、カメラの移動が停止中と判別された場合にはステップS914に進んで画像蓄積を行う。次に、ステップS915に進み、画像の選択・破棄を行う。画像の選択は蓄積予定時刻の前後に画像が蓄積された後に行われ、画像の破棄は蓄積予定時刻以前に撮像された画像において蓄積画像として採用されなかったものが破棄される。
【0069】
以上述べたように本実施形態によれば、画像の撮像・送信を行うカメラサーバ400と、画像の取得・表示を行うビューワクライアント500とからなる画像蓄積装置において、クライアント側で蓄積を行う画像蓄積装置を提供することができる。
【0070】
(本発明に係る他の実施形態)
前述した実施形態における画像蓄積装置及び画像蓄積システムを構成する各手段、並びに画像蓄積装置の制御方法、画像蓄積システムの制御方法の各ステップは、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0071】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0072】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図4、図6、図7及び図9に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムあるいは装置に直接、あるいは遠隔から供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0073】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0074】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0075】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RWなどがある。また、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などもある。
【0076】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0077】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0078】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、ダウンロードした鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0079】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。その他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0080】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】画像蓄積装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図2】画像蓄積装置の機能モジュール構成例を示す図である。
【図3】第1の実施形態における追尾時の画像蓄積タイミングの説明図である。
【図4】第1の実施形態における画像蓄積装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態における追尾時の画像蓄積タイミングの説明図である。
【図6】第2の実施形態における画像蓄積装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施形態における画像蓄積を優先した場合の画像蓄積装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】第5の実施形態における画像に付加する情報の例を示す図である。
【図9】第5の実施形態におけるクライアントにおいて画像を蓄積する際の画像蓄積プロセスの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】画像蓄積システムを説明する図である。
【符号の説明】
【0082】
100 カメラ部
110 カメラ
120 雲台
200 制御部
211 画像処理・カメラ制御部
221 画像蓄積部
231 画像バッファ
250 符号化部
260 カメラ制御部
270 雲台制御部
290 通信部
300 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像方向が制御可能な撮像部を制御する制御部を有する画像蓄積装置であって、
前記撮像部の撮像方向が移動している場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積は行わず、前記撮像部の撮像方向の移動が停止した場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積を画像蓄積装置に蓄積する制御手段を有することを特徴とする画像蓄積装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記撮像部の撮像方向の移動が停止した状態で、かつ、前回の画像蓄積から所定の間隔以上経過している場合に画像蓄積を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像蓄積装置。
【請求項3】
画像蓄積を行うための時間間隔を設定する設定手段を有し、
前記制御手段は、前記設定手段により設定された時間間隔で決定されるタイミングに最も近い時刻に蓄積された画像を蓄積することを特徴とする請求項1に記載の画像蓄積装置。
【請求項4】
前記撮像部は、撮像した画像の変化を検知する動き検知手段を有し、
前記制御部は、前記動き検知手段により検知した動き領域の特徴に従って前記撮像部を制御することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像蓄積装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記撮像部を制御中である場合に、画像蓄積の予定時刻になったら制御を中断して画像蓄積を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の画像蓄積装置。
【請求項6】
撮像方向が制御可能な撮像部と、前記撮像部から得られた画像を蓄積するクライアントとを有する画像蓄積システムであって、
前記クライアントは、
前記撮像部の撮像方向が移動している場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積は行わず、前記撮像部の撮像方向の移動が停止した場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積を画像蓄積装置に蓄積する制御手段を有することを特徴とする画像蓄積システム。
【請求項7】
撮像方向が制御可能な撮像部を制御する制御部を有する画像蓄積装置の制御方法であって、
前記撮像部の撮像方向が移動している場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積は行わず、前記撮像部の撮像方向の移動が停止した場合は、前記撮像部によって撮像されている画像の蓄積を画像蓄積装置に蓄積することを特徴とする画像蓄積装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−96532(P2007−96532A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280792(P2005−280792)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】