説明

画像表示装置及びその輝度制御方法

【課題】複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号の表示輝度を適正に制御する。
【解決手段】画像表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルに表示される映像信号の各フレームについて、表示輝度を制御するためのパラメータである輝度制御値を算出する算出回路と、前記算出回路で算出された輝度制御値を用いて、フレームの表示輝度を制御する輝度制御回路と、を備える。そして、前記映像信号が複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号である場合に、前記輝度制御回路は、1つの画像を構成する複数のフレームに同一の輝度制御値を適用するか、又は、1つの画像を構成する複数のフレームのそれぞれに適用する輝度制御値の差を所定の値よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置の輝度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の表示素子をマトリクス状に配置した表示パネルを備える平面型画像表示装置がある。このような画像表示装置では、映像信号を表示する際に、各フレームの輝度に応じたゲイン(輝度制御値)を画像データに乗算して、表示輝度を適応的に制御する輝度制御回路を備えるものがある。特許文献1には、補正回路を内蔵した画像表示装置において、補正後の画像データが適正なレンジに収まるように、画像データにゲインを乗算する構成が開示されている。特許文献2には、入力画像データの平均輝度レベルに応じて、画像データにゲインを乗算して、表示輝度を制御する構成が開示されている。
【0003】
ところで、近年、表示技術の発達とともに表示の高詳細化だけなく3次元画像表示(3D)などの表示技術についても実用化が進んできている。特許文献3は3D画像表示の例を示す。この構成例では、右目用と左目用のフレームを交互に表示させ、液晶シャッターメガネなどで対応する目に対応するフレームのみを見せることで視覚的に3D画像を構成する。この3D画像表示例に代表されるように、最近では、複数のフレームで1つの画像を構成するような映像信号が出現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−233344号公報
【特許文献2】特開2000−250463号公報
【特許文献3】特開2000−275575号公報
【特許文献4】特開2004−240317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のフレームで1つの画像を構成する映像信号に対して、従来のような適応的な輝度制御を行うと、次のような問題が生じる。すなわち、従来手法では、図1(b)に示すように、1つの画像を構成するフレーム群の各フレームの輝度から個別にゲイン(輝度制御値)が算出される。そのため、フレーム毎に異なるゲインが適用され、フレーム間で輝度のダイナミックレンジが変化する可能性がある。その場合、1つの画像を構成するフレーム間の輝度のバランスが、入力されたオリジナル画像のものと異なることになり、表示画面を見た際に違和感を覚えることがあった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号の表示輝度を適正に制御するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、表示パネルと、前記表示パネルに表示される映像信号の各フレームについて、表示輝度を制御するためのパラメータである輝度制御値を算出する算出回路と、前記算出回路で算出された輝度制御値を用いて、フレームの表示輝度を制御する輝度制御回路と、を備え、前記映像信号が複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号である場合に、前記輝度制御回路は、1つの画像を構成する複数のフレームに同一の輝度制御値を適用するか、又は、1つの画像を構成する複数のフレームのそれぞれに適用
する輝度制御値の差を所定の値よりも小さくすることを特徴とする画像表示装置である。
【0008】
本発明の第2態様は、表示パネルを備える画像表示装置の輝度制御方法であって、前記表示パネルに表示される映像信号の各フレームについて、表示輝度を制御するためのパラメータである輝度制御値を算出する算出工程と、前記算出工程で算出された輝度制御値を用いて、フレームの表示輝度を制御する輝度制御工程と、を含み、前記映像信号が複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号である場合に、前記輝度制御工程では、1つの画像を構成する複数のフレームに同一の輝度制御値を適用するか、又は、1つの画像を構成する複数のフレームのそれぞれに適用する輝度制御値の差を所定の値よりも小さくすることを特徴とする画像表示装置の輝度制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号の表示輝度を適正に制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の回路構成と輝度制御を説明する図。
【図2】映像信号の例を示す図。
【図3】輝度制御値算出回路の構成と輝度制御の方法を説明する図。
【図4】表示パネルの構成を示す図。
【図5】本発明の実施例2の回路構成と輝度制御を説明する図。
【図6】本発明の実施例3の映像信号の例を示す図。
【図7】本発明の実施例4の映像信号の例を示す図。
【図8】本発明の実施例4の輝度制御を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、複数の表示素子をマトリクス状に配置した表示パネルを備える平面型画像表示装置に関するものである。平面型画像表示装置としては、電子線表示装置、プラズマ表示装置、液晶表示装置、有機EL表示装置などがあるが、本発明はいずれの方式の表示装置にも適用可能である。例えば、電子線表示装置の表示パネルは、一般に、複数の電子放出素子(冷陰極素子)がマトリクス状に配置されたリアプレートと、蛍光体が配置されたフェースプレートとから構成される。電子放出素子としては、表面導電型電子放出素子、電界放出型電子放出素子、MIM型電子放出素子などがある。電界放出型としては、Spindt型、GNF(グラファイトナノファイバー)型、CNT(カーボンナノチューブ)型などがある。
【0012】
本発明の画像表示装置は、表示パネル(例えば図1(a)の0007)、映像信号の各フレームについて輝度制御値を算出する算出回路(0003)、その輝度制御値を用いて対応するフレームの表示輝度を制御する輝度制御回路(0001)を備える。ここで、算出回路は、フレームのデータ(画素値、輝度値)から当該フレームの輝度の代表値を算出(検出)し、その輝度の代表値に基づいて表示輝度を制御するためのパラメータである輝度制御値(ゲイン)を算出する。輝度の代表値は、例えば、1フレーム中の輝度の最大値、最小値、平均値(アベレージピクチャーレベル(APL)ともいう)などである。これらの値は、輝度の特徴値、もしくは、輝度の統計値と呼ぶこともできる。そして、輝度制御回路は、例えば、輝度制御値(ゲイン)をフレームのデータに乗じることにより、表示輝度の調整を行う。このように、フレームの輝度(輝度の代表値)に応じたゲインでフレームの表示輝度を制御することを、適応型輝度制御とも呼ぶ。
【0013】
輝度制御回路は、通常の映像信号に対しては、通常の適応型輝度制御を行い、フレーム毎に輝度制御値を更新する。そして、複数のフレームで1つの画像が構成されている映像
信号の場合、輝度制御回路は、1つの画像を構成する複数のフレームに同一の輝度制御値を適用するか、又は、複数のフレームの夫々に適用する輝度制御値の差を所定の値よりも小さくする。「所定の値」は、複数のフレームの輝度のバランスが輝度制御の前後で変化していることが視聴者に視認できない程度の値に設定される。所定の値は実験により求めた固定値でもよいし、複数のフレームの輝度の代表値に応じて変化する値でもよい。例えば、人間の眼は低輝度領域における輝度変化に敏感であるため、暗い画像ほど「所定の値」が小さくなるようにするとよい。なお、本発明者らの実験によれば、複数のフレームの夫々に適用される輝度制御値の変化が1%以下の場合に、好ましい結果が得られることがわかっている。
【0014】
この構成によれば、1つの画像を構成する複数のフレームに対して、同一又は実質的に同一の輝度制御値を適用することで、その複数のフレーム同士の輝度のバランスを維持できるため、表示画像の違和感の発生や品質の低下を抑制することができる。
【0015】
複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号としては、例えば次のようなものが想定される。
(1)右目用のフレームと左目用のフレームとで1つの画像が構成されている3次元表示用の映像信号(図7(a)参照)。
(2)元映像信号のオリジナルフレームの間に中間フレームが挿入された映像信号(図2(a)参照)。この場合、オリジナルフレームと中間フレームとで1つの画像が構成されているとみなすことができる。中間フレームは、オリジナルフレームの複製でもよいし、前後のオリジナルフレームを補間して得られた補間フレームでもよい。また、複数の中間フレームが挿入されることもある。
(3)元映像信号のオリジナルフレームの輝度を時系列の複数のフレームに分割(分配)することで得られた映像信号。図2(b)は、オリジナルフレームに対してローパスフィルタを施したり、輝度を低下させたりすることで生成したサブフレームと、オリジナルフレームからサブフレームを減算することで得られるメインフレームとで、1つの画像を構成した例である。1つのオリジナルフレームが3以上のフレームに分割されることもある。
【0016】
複数のフレームに対して一律に適用する「同一の輝度制御値」は、どのように算出してもよい。例えば、同一の輝度制御値は、1つの画像を構成する複数のフレームのうちの1つのフレーム(典型的には先頭のフレーム)のデータから算出された輝度制御値であってもよい。あるいは、同一の輝度制御値は、1つの画像を構成する複数のフレームの各々のデータから算出された複数の輝度制御値の平均値、最大値、最小値その他の統計値であってもよい。
【0017】
(実施例1)
図1(a)は実施例1の輝度制御回路の構成を示すブロック図である。以下に本構成における基本的な信号の流れを示す。
画像入力S01はまず逆γ処理回路0000へ入力され、輝度に対しリニアになるよう変換されて画像データS04となる。そして画像データS04は輝度制御回路0001において輝度制御値S05を乗算することにより輝度制御処理を施され、画像データS02となる。画像データS02は、画像処理回路0002によって表示パネル0007に最適な駆動データS03へと変換され、駆動データS03は表示パネル0007へと出力される。また、駆動データS03は輝度制御値算出回路0003に入力される。輝度制御値算出回路0003は入力された駆動データS03とフレーム識別信号S07より輝度制御値S05を算出し、輝度制御回路0001へと出力する。輝度制御回路0001は算出された輝度制御値S05を用いて次の画像データS04に輝度制御処理を行う。本構成では、あるフレームから求めた輝度制御値をそのフレームではなく次のフレームに乗算するフィ
ードバック型の輝度制御回路となっている。これはフレーム間のデータの相関性を利用している。
【0018】
駆動データから輝度制御値を算出するメリットは、そのフレームの駆動データの最大値が1水平期間の最大駆動データになるように輝度制御値を算出できることである。図3(a)は輝度制御値算出回路の動作を示したブロック図である。輝度制御値算出回路0003は、入力された駆動データS03から、1フレームの中の駆動データの最大値を検出する。1水平期間から定まる駆動可能な最大値を、検出された1フレーム中の最大値で除算することにより商を得る。そして、得られた商と前回の輝度制御値を乗算することにより新たな輝度制御値S05を得る。これにより、図3(b)に示すように、フレーム中の最大値が、パネルが駆動可能な最大値と実質的に等しくなるように輝度制御することができ、表示輝度を明るくすることが可能である。また、本実施例ではフレーム間での輝度制御値の変化量の大きさを抑制する目的で出力部にローパスフィルタを設けている。
【0019】
図4は表示パネルのブロック図である。表示パネル0007は、マトリクス状に配置された複数の表示素子0008を有している。複数の表示素子0008は、複数の走査配線と複数の変調配線により単純マトリクス配線されている。タイミング生成回路0004は、入力された垂直同期信号、水平同期信号を元に、ドライバ駆動用タイミング信号S06を生成する。走査配線ドライバ0005及び変調配線ドライバ0006は、駆動データS03及びドライバ駆動用タイミング信号S06によって表示パネルの走査配線、変調配線をそれぞれ駆動し、両配線の交点に存在する表示素子0008を発光させる。このとき、駆動データS03の値に応じて、表示素子0008に印加する駆動信号(走査配線と変調配線の電位差)のパルス幅、振幅、又は、その両方を制御することで、表示素子0008を所望の表示輝度で発光させる。これにより表示パネル0007に画像が表示される。
【0020】
さて、ここで図1(a)の回路に対し、複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号が入力された場合を考える。
図1(b)は上記回路において通常の適応型輝度制御を行った際の動作を示した図である。図中の画像データS02、S04の縦軸は輝度を示し、横軸は時間を示している。また破線は、輝度レンジ(駆動可能な最大値)を示し、矩形部分はそのフレーム内のある画素の輝度を示している。この例では、2つのフレームから1つの画像が構成されている。n番目の画像の第1フレームを「n−1」、第2フレームを「n−2」のように表記する。
【0021】
フレーム1−1の駆動データから算出された輝度制御値1を用いてフレーム1−2に輝度制御を行い、フレーム1−2の駆動データから算出された輝度制御値2を用いてフレーム2−1に対し輝度制御を行っている。このように、出力されるフレームのデータS03から輝度制御値S05が算出され、その輝度制御値S05を次の入力フレームのデータS04に乗算することにより画像データS02が得られる。
【0022】
しかしこの方法では1画像を構成するフレーム群の中でもさまざまな輝度制御値が算出される。そのため、それらの輝度制御値を用いて輝度制御を行うと、1つの画像を構成するフレーム群の中で、フレーム間の輝度バランス(輝度比)が変化する可能性がある。図1(b)の例では、輝度調整前の画像データS04と輝度調整後の画像データS02とで、フレーム1−1と1−2の輝度バランスが大きく異なっていることがわかる。このような輝度バランスの変化は、表示画像の品質の低下を招くため、好ましくない。
【0023】
そこで本実施例では、図1(c)に示すように、1画像を構成するフレーム群のうちメインフレーム(先頭のフレーム)から算出した輝度制御値を用いてフレーム群すべての輝度制御を行う。
【0024】
輝度制御値算出回路0003には、フレーム識別信号S07が入力される。フレーム識別信号S07は、メインフレームのデータが入力されている期間にHi、それ以外のフレームのデータが入力されている期間にLowとなる信号である。輝度制御値算出回路0003は、このフレーム識別信号S07によりメインフレームであるか否かを判別し、メインフレームのデータの場合にのみ輝度制御値を算出する。輝度制御値算出回路0003にてメインフレーム1−1から算出された輝度制御値2は輝度制御回路0001へ出力され、新たな輝度制御値が出力されるまで保持される。
【0025】
輝度制御回路0001は、フレーム1−1と1−2に対しては一つ前の画像から算出された輝度制御値1を適用する。次のフレーム2−1が入力されると、輝度制御回路0001は輝度制御値1を輝度制御値2に更新し、輝度制御値2をフレーム2−1と2−2に適用する。この方法により、1つの画像を構成する複数のフレームに対して同一の輝度制御値が適用される。したがって、図1(c)に示すように、輝度制御の前後でフレーム間の輝度バランスが維持されるようになり、複数のフレームで1つの画像を構成している映像信号に対しても高輝度かつ高品位な画像表示を実現できる。
【0026】
なお、フレーム識別信号S07は、図1(c)の例に限られない。例えば、メインフレームの開始を示す短いパルスであってもよいし、メインフレームのときにLow、サブフレームのときにHiとなる信号であってもよい。
【0027】
また、本実施例では輝度制御値はメインフレームとサブフレームの間で同じ値を取るように決定したが、これに限定されるわけではなく、メインとサブのフレーム間の輝度制御値変化を制限しても同様の効果があることを発明者は見出している。特に輝度制御値の変化を1%以下とした場合に好ましい結果を得られた。具体的には、輝度制御値算出回路0003によりメインとサブの両方の輝度制御値を算出し、メインとサブの輝度制御値の変化が所定の値(例えば1%)を超えている場合に、サブ若しくはメイン、又はその両方の輝度制御値を補正すればよい。
【0028】
また、本実施例では、輝度制御値算出回路0003がメインフレームか否かを判別し、メインフレームのときのみ輝度制御値を算出している。しかし、輝度制御値算出回路0003が全フレームについて輝度制御値を算出し、輝度制御回路0001がフレーム識別信号S07に基づきフレームの種類を判別して、メインフレームとサブフレームに同一の輝度制御値を適用するようにしてもよい。この構成でも、上記実施例と同様の作用効果を得ることができる。なお、乗算するフレームが確実に次フレームであるなど入力データと輝度制御値の遅延が一定かつ明白な場合は、輝度制御値算出回路0003から輝度制御回路0001へ出力する部分のフレーム識別信号S07を省いてもよい。
【0029】
(実施例2)
実施例1では、フィードバック型の輝度制御処理を示したが、実施例2では、フィードフォワード型の輝度制御処理に本発明を適用した例を示す。輝度制御値の内容及びその算出と乗算方法は実施例1と同じでよい。
【0030】
図5(a)はフィードフォワード型の輝度制御処理を行う回路のブロック図である。画像入力S01は、複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号である。画像入力S01はまず逆γ処理回路0000にて輝度に対しリニアになるよう変換されて画像データS04となる。画像データS04は、画像処理回路0002によって表示パネル0007に最適な駆動データS03へと変換される。駆動データS03は、輝度制御回路0001と輝度制御値算出回路0003に入力される。
【0031】
輝度制御値算出回路0003は入力された駆動データS03とフレーム識別信号S07を元に輝度制御値S05を算出し、輝度制御回路0001へ出力する。輝度制御回路0001は輝度制御値算出回路0003より算出された輝度制御値S05を用いて駆動データS03に対し輝度制御を行い、輝度制御された駆動データS09は表示パネル0007へ出力される。
【0032】
図5(b)は上記回路において通常の適応型輝度制御を行った際の動作を示した図である。フレーム1−1の駆動データから算出した輝度制御値1と、フレーム1−2から算出した輝度制御値2は同一とは限らない。そのため、実施例1と同様に、輝度バランスの変化による表示品質の低下という問題が生じる可能性がある。
【0033】
そこで本実施例では、図5(c)に示すように、1画像を構成するフレーム群のうちメインフレームから算出した輝度制御値を用いてフレーム群すべての輝度制御を行う。この方法により、1つの画像を構成する複数のフレームに対して同一の輝度制御値が適用されるため、フレーム間の輝度バランスが維持され、高輝度かつ高品位な画像表示を実現できる。
【0034】
(実施例3)
液晶ディスプレイのようなホールド型表示装置では、動画ボケを低減するため、オリジナルフレームの間に低輝度画像を挿入したり、フレームレート変換による倍速駆動を行うことがある。このような場合にも、関連するフレーム群に対して同一又は実質的に同一の輝度制御値を適用することで、前述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0035】
図6(a)、(b)は、特開2004−240317号公報に記載されている駆動方法の例を示している。図6(a)は元画像データであり、図6(b)は画素に書き込まれる画像データである。縦軸は輝度を表し、横軸は時間を表している。この駆動方法では、1フレーム期間P0を第1期間P1と第2期間P2に分割し、1フレーム期間において画素に書き込むべきデータを第1期間P1において集中的に書き込む。その際に映像全体の輝度が下がらないよう画素に対する書込値を元画像データの輝度値の2倍にする。2倍にした値が表示可能範囲を超えた場合に限り、第2期間P2に残余の値を書き込む。この処理によって生成される画像データは元画像1枚が複数フレームで構成され、かつフレーム間で輝度差が大きいものとなる。図6(b)では、元画像F3がフレームF31とF32で構成され、元画像F6がフレームF61とF62で構成されている。
【0036】
このような画像データでは、第1期間のフレーム(F31)から算出される輝度制御値と第2期間のフレーム(F32)から算出される輝度制御値とが大きく異なる可能性がある。そのため、通常の適応型輝度制御の場合は、上記実施例と同様、輝度バランスの変化による表示品質の低下という問題が生じる可能性がある。
【0037】
そこで本実施例では、第1期間のフレームから算出した輝度制御値を、第1期間と第2期間の両方のフレームに適用して輝度制御を行う。この方法により、1つの画像を構成する複数のフレームに対して同一の輝度制御値が適用されるため、フレーム間の輝度バランスが維持され、高輝度かつ高品位な画像表示を実現できる。
【0038】
(実施例4)
実施例4は、3次元表示用の映像信号が入力された場合の例を示す。回路構成、輝度制御値の内容及びその算出と乗算方法は、上述した実施例のいずれかと同じでよい。
【0039】
図7(a)、(b)は、3D表示方法の一例を示している。図7(a)のように1つの3D画像は右目用フレームと左目用フレームの2枚で構成されており、右目用フレームと
左目用フレームが交互に表示される。そして図7(b)のように、シャッターメガネなどを利用して、右目で右目用フレーム、左目で左目用フレームを見ることによって、視覚的に3D画像が構成される。
【0040】
図8(a)は、通常の適応型輝度制御を行った際の動作と問題点を示した図である。3D表示では視差を表現するため右目用のフレームと左目用のフレームは若干異なる。そのためそれぞれから算出された輝度制御値は同じとは限らない。そのため、実施例1と同様に、輝度バランスの変化による表示品質の低下という問題が生じる可能性がある。また、右目用フレームと左目用フレームの輝度の差が大きいと、フリッカーと呼ばれるちらつきが生じたり、3D表示に失敗したりするおそれもある。
【0041】
図8(b)は、本実施例の輝度制御動作を示したものである。本実施例では、右目用フレームから算出した輝度制御値を、右目用と左目用の両方のフレームに適用している。この方法により、3D画像を構成する2つのフレームに対して同一の輝度制御値が適用されるため、フレーム間の輝度バランスが維持され、高輝度かつ高品位な3D表示を実現できる。
【0042】
(実施例5)
映画コンテンツでよく見られる24fps(フレーム/秒)の映像信号の場合、動きボケやフリッカーの解消のため、オリジナルフレームの間に複数の中間フレームを挿入することにより、元映像よりも高いフレームレートで表示動作を行うことがある。例えば、2枚の中間フレームを挿入した場合は72fps、3枚の中間フレームを挿入した場合は96fps、4枚の中間フレームを挿入した場合は120fpsとなる。この場合も、オリジナルフレームと複数の中間フレームとで構成されるフレーム群に対し、同一又は実質的に同一の輝度制御値を適用することにより、フレーム間の輝度バランスを維持して、高輝度かつ高品位な画像表示を実現することができる。
【符号の説明】
【0043】
0001…輝度制御回路、0003…輝度制御値算出回路、0007…表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネルに表示される映像信号の各フレームについて、表示輝度を制御するためのパラメータである輝度制御値を算出する算出回路と、
前記算出回路で算出された輝度制御値を用いて、フレームの表示輝度を制御する輝度制御回路と、を備え、
前記映像信号が複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号である場合に、前記輝度制御回路は、1つの画像を構成する複数のフレームに同一の輝度制御値を適用するか、又は、1つの画像を構成する複数のフレームのそれぞれに適用する輝度制御値の差を所定の値よりも小さくすることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号は、右目用のフレームと左目用のフレームとで1つの画像が構成されている3次元表示用の映像信号であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号は、元映像信号のオリジナルフレームの間に1つ以上の中間フレームを挿入して得られた映像信号であり、
前記オリジナルフレームと前記1つ以上の中間フレームとで1つの画像が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号は、元映像信号のオリジナルフレームの輝度を時系列の複数のフレームに分割することで得られた映像信号であり、
前記時系列の複数のフレームで1つの画像が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記輝度制御回路は、1つの画像を構成する複数のフレームに同一の輝度制御値を適用するものであり、
前記同一の輝度制御値は、1つの画像を構成する複数のフレームのうちの1つのフレームのデータから算出された輝度制御値であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記輝度制御回路は、1つの画像を構成する複数のフレームに同一の輝度制御値を適用するものであり、
前記同一の輝度制御値は、1つの画像を構成する複数のフレームの各々のデータから算出された複数の輝度制御値の統計値であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
表示パネルを備える画像表示装置の輝度制御方法であって、
前記表示パネルに表示される映像信号の各フレームについて、表示輝度を制御するためのパラメータである輝度制御値を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された輝度制御値を用いて、フレームの表示輝度を制御する輝度制御工程と、を含み、
前記映像信号が複数のフレームで1つの画像が構成されている映像信号である場合に、前記輝度制御工程では、1つの画像を構成する複数のフレームに同一の輝度制御値を適用するか、又は、1つの画像を構成する複数のフレームのそれぞれに適用する輝度制御値の差を所定の値よりも小さくすることを特徴とする画像表示装置の輝度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−48281(P2011−48281A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198640(P2009−198640)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】