説明

画像表示装置及び可変レンズアレイ

【課題】表示される画像の画質の悪化を軽減することができる画像表示装置及び可変レンズアレイを提供する。
【解決手段】画像表示装置は、二次元画像を表示する画像表示部、及び、第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイ、を備えており、可変レンズアレイは画像表示部に対向して配置されており、可変レンズアレイの第1基板と第2基板との間には、レンズ列の屈折力の値を変化させたときに液晶層の液晶分子の配向方向が変わらない場所に、壁状または柱状のスペーサが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は画像表示装置に関する。また、本開示は可変レンズアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
視差のある2つの画像を画像観察者が観察することで立体視を実現する画像表示装置が、種々、知られている。立体視が可能な画像表示装置の方式は、眼鏡によって視差画像を左右の眼に分離して入力する眼鏡方式と、眼鏡を使用することなく視差画像を左右の眼に入力する裸眼方式とに大別される。裸眼方式の画像表示装置として、レンチキュラーレンズ等のレンズアレイと二次元画像を表示する画像表示部とを組み合わせた画像表示装置の実用化が進められている。
【0003】
レンズ列を備えたレンズアレイが画像表示部と画像観察者との間に配置される画像表示装置の動作の概念図を、図30の(A)及び(B)に示す。
【0004】
図30の(A)に示すように、符号R1,R3,R5,R7,R9を付した画素群から出射された光線群は視点2に達する。また、図30の(B)に示すように、符号L2,L4,L6,L8,L10を付した画素群から出射された光線群は視点1に達する。このように、画像表示部からから所定距離をおいた位置にあっては、視点1の画像と視点2の画像が独立して観察される。
【0005】
画像観察者の左眼と右眼とが視点1と視点2とに位置し、符号L2,L4,L6,L8,L10を付した画素群によって左眼用の画像を表示し、符号R1,R3,R5,R7,R9を付した画素群によって右眼用の画像を表示すれば、画像観察者は、画像を立体画像として認識する。
【0006】
一方、立体視を実現する画像表示装置においては、通常画像(二次元画像)の表示も支障なく行うことができることが好ましい。換言すれば、立体画像の表示と通常画像の表示とが切り替え可能といった構成であることが望ましい。レンズアレイのレンズ列の屈折力を可変することができれば、立体画像の表示と通常画像の表示とを切り替えることができる。
【0007】
例えば特開2001−133918号公報(特許文献1)の図2に示すように、レンズ列の屈折力を可変することができる可変レンズアレイとして、透明な電極を有する一対の透明な基板の間に液晶層が配置された構造の可変レンズアレイが提案されている。この構造の可変レンズアレイにあっては、レンズ列は液晶材料を用いた屈折率分布レンズ(Gradient Indexレンズ)から成り、一対の基板間の電圧を変えることによってレンズ列の屈折力を可変することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−133918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液晶材料を用いた屈折率分布レンズ(以下、単に、液晶GRINレンズと呼ぶ場合がある)を用いた可変レンズアレイにあっては、一対の基板の間を所定の間隔に保持する必要がある。光学的なレンズ列を構成するといった関係から、可変レンズアレイの液晶層は、通常の液晶表示パネルの液晶層に比べてかなり厚い。例えば、基板間に散布された球状のスペーサによって間隔を保持するといった構成とすると、スペーサの径は画像表示装置の画素の幅に比べて無視できない大きさとなり、また、スペーサ周辺の液晶分子の配向の乱れによってレンズ性能は低下する。これによって、表示される画像の画質は悪化する。
【0010】
従って、本開示の目的は、表示される画像の画質の悪化を軽減することができる画像表示装置及び可変レンズアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本開示の画像表示装置は、
二次元画像を表示する画像表示部、及び、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイ、
を備えており、
可変レンズアレイは画像表示部に対向して配置されており、
可変レンズアレイの第1基板と第2基板との間には、レンズ列の屈折力の値を変化させたときに液晶層の液晶分子の配向方向が変わらない場所に、壁状または柱状のスペーサが設けられている画像表示装置である。
【0012】
上記の目的を達成するための本開示の可変レンズアレイは、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイであって、
第1基板と第2基板との間には、レンズ列の屈折力の値を変化させたときに液晶層の液晶分子の配向方向が変わらない場所に、壁状または柱状のスペーサが設けられている可変レンズアレイである。
【0013】
あるいは又、上記の目的を達成するための本開示の画像表示装置は、
二次元画像を表示する画像表示部、及び、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイ、
を備えており、
可変レンズアレイは画像表示部に対向して配置されており、
レンズ列の中央部に壁状または柱状のスペーサが設けられている画像表示装置である。
【0014】
あるいは又、上記の目的を達成するための本開示の可変レンズアレイは、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイであって、
レンズ列の中央部に壁状または柱状のスペーサが設けられている可変レンズアレイである。
【0015】
あるいは又、上記の目的を達成するための本開示の画像表示装置は、
二次元画像を表示する画像表示部、及び、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイ、
を備えており、
可変レンズアレイは画像表示部に対向して配置されており、
それぞれ隣接するレンズ列の境界部に壁状または柱状のスペーサが設けられている画像表示装置である。
【0016】
あるいは又、上記の目的を達成するための本開示の可変レンズアレイは、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイであって、
それぞれ隣接するレンズ列の境界部に壁状または柱状のスペーサが設けられている可変レンズアレイである。
【発明の効果】
【0017】
本開示の可変レンズアレイ、あるいは又、本開示の画像表示装置を構成する可変レンズアレイにあっては、レンズ列の屈折力の値を変化させたときに液晶層の液晶分子の配向方向が変わらない場所に、壁状または柱状のスペーサが設けられている。従って、スペーサとスペーサ付近の液晶層の光学的な関係は、レンズ列の屈折力の値を変化させても基本的には一定となる。これによって、スペーサによるレンズ性能の低下が軽減され、表示される画像の画質の悪化を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、第1の実施形態に用いられる画像表示装置を仮想的に分離したときの模式的な斜視図である。
【図2】図2は、可変レンズアレイの正面の模式的な平面図である。
【図3】図3は、可変レンズアレイの背面の模式的な平面図である。
【図4】図4は、図2のA−A線断面図である。
【図5】図5は、立体画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。
【図6】図6は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【図7】図7は、通常画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。
【図8】図8は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【図9】図9は、第1の変形例の可変レンズアレイの正面の模式的な平面図である。
【図10】図10は、可変レンズアレイの背面の模式的な平面図である。
【図11】図11は、第2の変形例の可変レンズアレイの正面の模式的な平面図である。
【図12】図12は、可変レンズアレイの背面の模式的な平面図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に用いられる可変レンズアレイの正面の模式的な平面図である。
【図14】図14は、可変レンズアレイの背面の模式的な平面図である。
【図15】図15は、図13のB−B線断面図である。
【図16】図16は、立体画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。
【図17】図17は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【図18】図18は、通常画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。
【図19】図19は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【図20】図20は、第3の実施形態に用いられる可変レンズアレイの一部の断面図である。
【図21】図21は、立体画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。
【図22】図22は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【図23】図23は、通常画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。
【図24】図24は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【図25】図25は、第4の実施形態に用いられる可変レンズアレイの一部の断面図である。
【図26】図26は、立体画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。
【図27】図27は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【図28】図28は、通常画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。
【図29】図29は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【図30】図30の(A)及び(B)は、レンズアレイが画像表示部と画像観察者との間に配置される画像表示装置の動作の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、実施形態に基づき本開示を説明する。本開示は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値や材料は例示である。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示に係る画像表示装置及び可変レンズアレイ、全般に関する説明
2.第1の実施形態
3.第2の実施形態
4.第3の実施形態
5.第4の実施形態(その他)
【0020】
[本開示に係る画像表示装置及び可変レンズアレイ、全般に関する説明]
本開示の可変レンズアレイ、あるいは又、本開示の画像表示装置に用いられる可変レンズアレイ(以下、これらを単に、本開示の可変レンズアレイと呼ぶ場合がある)にあっては、上述したように、レンズ列の屈折力の値を変化させたときに液晶層の液晶分子の配向方向が変わらない場所に、壁状または柱状のスペーサが設けられている。ここで、「液晶分子の配向方向が変わらない」とは、厳密に液晶分子の配向方向が変わらない場合の他、実質的に液晶分子の配向方向が変わらない場合をも含む。換言すれば、設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。
【0021】
可変レンズアレイの表面を画像観察者が押すといった使用状態が想定される場合には、いわゆる面押し強度を確保するために、壁状のスペーサを用いた構成とすることが好ましい。あるいは又、充分な面押し強度を確保するに足る数の柱状のスペーサを配置するといった構成とすることが好ましい。尚、柱状のスペーサの形状は特に限定するものではなく、例えば角柱状であってもよいし円柱状であってもよい。
【0022】
第1基板における第1電極の平面形状と第2基板における第2電極の平面形状は、可変レンズアレイの設計に応じて、適宜好適な形状とすればよい。基本的には、第1電極および第2電極の一方を平面状の共通電極とし、他方をストライプ状の電極とするといった構成とすればよい。尚、継続して直流電圧を液晶層に印加すると液晶材料の劣化を招くので、通常の液晶表示パネルと同様に、第1電極と第2電極との間の電圧の極性が順次反転するように可変レンズアレイを駆動すればよい。
【0023】
第1電極と第2電極の設計やこれらに印加する電圧の設定にもよるが、上述した好ましい構成を含む本開示の可変レンズアレイにあっては、壁状または柱状のスペーサが、レンズ列の中央部に配置されている構成とすることができるし、あるいは又、それぞれ隣接するレンズ列の境界部に配置されている構成とすることもできる。
【0024】
上述した好ましい構成を含む本開示の可変レンズアレイにあっては、液晶材料の流動性を確保する観点から、第1基板の外周部と第2基板の外周部は封止部によって封止されており、壁状または柱状のスペーサの端部と封止部との間には間隔が空けられている構成とすることが好ましい。
【0025】
可変レンズアレイを構成する第1基板や第2基板は、光に対して透明な材料、即ち、光を余り吸収することの無い材料から構成することができる。第1基板や第2基板を構成する材料として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ガラスを例示することができる。第1基板と第2基板を構成する材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
第1基板の第1電極や第2基板の第2電極は、光透過性を有する金属薄膜や、インジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)などの透明導電材料から構成することができる。第1電極や第2電極は、真空蒸着法やスパッタリング法に例示される物理的気相成長法(PVD法)、各種の化学的気相成長法(CVD法)などの周知の方法によって成膜することができ、また、フォトリソグラフ法とエッチング法との組合せ、リフトオフ法などの周知の方法によりパターニングすることができる。
【0027】
第1基板と第2基板との間に配置される液晶層を構成する材料として、ネマチック液晶材料などの広く周知の材料を用いることができる。液晶層を構成する材料は特に限定するものではない。ポジ型の液晶材料を用いた構成とすることができるし、ネガ型の液晶材料を用いた構成とすることもできる。
【0028】
第1基板と第2基板の液晶層側の面の少なくとも一方に、液晶分子の配向方向やプレチルト角を設定するための配向処理が施されていてもよい。配向処理は、例えばラビング処理を施した配向膜を形成するなどといった周知の方法によって行うことができる。配向膜は、ポリイミド材料などといった周知の材料を用いて構成することができる。
【0029】
壁状または柱状のスペーサの形成方法は特に限定するものではない。スペーサの形成方法として、例えば、スクリーン印刷法、感光法を挙げることができる。スクリーン印刷法とは、スペーサを形成すべき部分に対応するスクリーンの部分に開口が形成されており、スクリーン上のスペーサ形成用材料をスキージを用いて開口を通過させ、基板上にスペーサ形成用材料層を形成した後、必要に応じて硬化処理を行う方法である。感光法とは、基板上に感光性を有するスペーサ形成用材料層を形成し、露光及び現像によってこのスペーサ形成用材料層をパターニングするといった方法である。スペーサは、透明な高分子材料といった周知の材料から構成することができる。
【0030】
第1基板の外周部と第2基板の外周部との間を封止する封止部は、たとえば熱硬化性のエポキシ系樹脂材料といった周知のシール材料を用いて構成することができる。
【0031】
本開示の画像表示装置に用いられる画像表示部として、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネル、プラズマ表示パネルなどといった、広く周知の表示装置を用いることができる。画像表示部は、モノクロ表示であってもよいし、カラー表示であってもよい。
【0032】
後述する各実施形態においては、透過型のモノクロ液晶表示パネルを画像表示部として用いる。また、実施形態にあっては、可変レンズアレイは画像表示部と画像観察者との間に配置されているとして説明する。尚、本開示の構造はこれに限るものではなく、透過型表示パネルと照明部との間に可変レンズアレイが配置されているといった構成とすることもできる。
【0033】
液晶表示パネルは、例えば、透明共通電極を備えたフロントパネル、透明画素電極を備えたリアパネル、及び、フロントパネルとリアパネルとの間に配置された液晶材料から成る。液晶表示パネルの動作モードは特に限定するものではない。所謂TNモードで駆動される構成であってもよいし、VAモードあるいはIPSモードで駆動される構成であってもよい。
【0034】
画像表示部の画素(ピクセル)の数M×Nを(M,N)で表記したとき、(M,N)の値として、具体的には、VGA(640,480)、S−VGA(800,600)、XGA(1024,768)、APRC(1152,900)、S−XGA(1280,1024)、U−XGA(1600,1200)、HD−TV(1920,1080)、Q−XGA(2048,1536)の他、(1920,1035)、(720,480)、(1280,960)等、画像表示用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0035】
透過型表示パネルを背面から照射する照明部として、広く周知の照明部を用いることができる。照明部の構成は、特に限定するものではない。照明部は、光源、プリズムシート、拡散シート、導光板などといった周知の部材から構成することができる。
【0036】
画像表示部を駆動する駆動回路や、可変レンズアレイを駆動する駆動回路は、種々の回路から構成することができる。これらは周知の回路素子などを用いて構成することができる。
【0037】
本明細書に示す各種の条件は、厳密に成立する場合の他、実質的に成立する場合にも満たされる。設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。
【0038】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、本開示に係る画像表示装置及び可変レンズアレイに関する。
【0039】
図1は、第1の実施形態に用いられる画像表示装置を仮想的に分離したときの模式的な斜視図である。
【0040】
図1に示すように、画像表示装置1は、
二次元画像を表示する画像表示部10、及び、
第1電極を有する第1基板130Aと、第2電極を有する第2基板130Bと、第1基板130Aと第2基板130Bとの間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列31の屈折力の値が変化する可変レンズアレイ30、
を備えている。尚、参照番号138は第1基板130Aと第2基板130Bとの封止部を示す。
【0041】
可変レンズアレイ30は、画像表示部10の正面(画像観察者側)に対向して配置されており、画像表示部10とは設計上定めた所定の間隔を空けて対向するように図示せぬ保持部材によって保持されている。後述するように、可変レンズアレイ30の第1基板130Aと第2基板130Bとの間には、レンズ列31の屈折力の値を変化させたときに液晶層の液晶分子の配向方向が変わらない場所に、壁状のスペーサが設けられている。第1の実施形態にあっては、柱状のスペーサはレンズ列31の中央部に配置されている。

【0042】
画像表示部10の背面側には光を照射する照明部20が配置されている。照明部20は、光源、プリズムシート、拡散シート、導光板などといった部材(これらは図示せず)から構成されている。
【0043】
画像表示部10の背面側には、偏光方向がX方向となるように図示せぬ第1の偏光フィルムが貼られており、画像表示部10の正面側には、偏光方向がY方向となるように第2の偏光フィルムが貼られている。図示せぬ駆動回路によって画像表示部10は駆動され、画素内の液晶分子の配向方向を制御することによって、外部からの映像信号に応じた二次元画像を表示する。また、別の図示せぬ駆動回路によって可変レンズアレイ30は駆動され、立体画像を表示する場合と通常画像を表示する場合とで、レンズ列31の屈折力の値がそれぞれ所定の値に設定される。
【0044】
画像表示部10の表示領域11には、水平方向(図においてX方向)にM個、垂直方向(図においてY方向)にN個の画素12が配列されている。第m列目(但し、m=1,2・・・,M)の画素12を、画素12mと表す。
【0045】
可変レンズアレイ30には、垂直方向に延びるレンズ列(可変レンズ列)31が、水平方向にP個並んで配列されている。第p列目(但し、p=1,2・・・,P)のレンズ列31をレンズ列31pと表す。「P」と上述した「M」の関係については後述する。
【0046】
説明の都合上、立体画像を表示する際の画像の視点数は中央の観察領域WACにおいて視点A1,A2・・・,A4の4つであるとして説明するが、これは例示にすぎない。観察領域の個数や視点の数は、画像表示装置1の設計に応じて適宜設定することができる。画像表示部10とレンズ列31との位置関係などを好適に設定することによって、中央の観察領域WACの左側の領域WALと右側の領域WARにおいても、各視点用の画像が観察可能となる。
【0047】
次いで、図2ないし図4を参照して、可変レンズアレイ30の構成について説明する。
【0048】
図2は、可変レンズアレイの正面の模式的な平面図である。図2においては第2基板130Bの一部を切り欠いて示した。図3は、可変レンズアレイの背面の模式的な平面図である。図3においては第1基板130Aの一部を切り欠いて示した。図4は、図2のA−A線断面図である。
【0049】
図4に示すように、可変レンズアレイ30は、第1電極1311,1312・・・,1318を有する第1基板130Aと、第2電極134を有する第2基板130Bと、第1基板130Aと第2基板130Bとの間に配置された液晶層137とを含んでいる。尚、第1電極1311,1312・・・,1318を纏めて、第1電極131と表記する場合がある。他の構成要素においても同様である。
【0050】
第1電極131と第2電極134は、それぞれ、第1基板130Aと第2基板130Bの液晶層137側の面(内面)に形成されている。液晶層137は、ポジ型のネマチック液晶材料から成る。
【0051】
第1電極131と第2電極134は、ITOといった透明導電材料から構成されており、周知の成膜技術により形成されている。第1電極131は、周知のパターニング技術によって、図2に示す所定のストライプ形状に形成されている。第2電極134は、いわゆる共通電極を構成し、第2基板130Bの全面に形成されている。尚、図示の都合上、図3にあっては第2電極134と後述する第2配向膜135の表示を省略した。また、図2においても、後述する第1配向膜133の表示を省略した。
【0052】
図4に示すように、第1基板130A上には、第1電極131を含む全面を覆う第1配向膜133が形成されており、第2基板130B上には、第2電極134を含む全面を覆う第2配向膜135が形成されている。これらは例えばポリイミド材料から構成されており、その表面にラビング処理が施されている。第1配向膜133と第2配向膜135によって、電界が印加されていない状態における液晶分子137Aの分子軸の方向が規定される。第1配向膜133と第2配向膜135は、電界が印加されていない状態では液晶分子137Aの長軸をY方向に向かせ、電界が印加されると長軸をZ方向に傾けるような配向処理が施されている。尚、図4は、電界が印加されていないときの液晶分子137Aの配向を示している。第2電極134には、図示せぬ駆動回路から所定の電圧が印加される。
【0053】
1つのレンズ列31は、基本的には4列の画素12に対応する。レンズ列31と画素12の水平方向のピッチを、それぞれ符号LDと符号NDで表せば、LD≒4×NDである。例えば、画素ピッチNDが0.3[mm]であるとすると、レンズ列31ピッチLDは約1.2[mm]である。また、上述した「P」と「M」は、P≒M/4といった関係にある。
【0054】
図2と図4に示すように、1つのレンズ列31を構成する領域には、垂直方向に延びるストライプ状の第1電極1311,1312・・・,1318が配置されている。図4に示すように、第1電極131は、所定の間隔NWを空けて水平方向に並ぶように配置されている。符号EWは第1電極131の水平方向の幅を表す。レンズ列ピッチLDと間隔NWと幅EWは、LD=8×(NW+EW)といった関係にある。尚、1つのレンズ列31に対応する第1電極131の本数も8本に限定するものではなく、可変レンズアレイ30の設計に応じて適宜設定することができる。間隔NWと幅EWの値は特に限定するものではなく、例えば成膜およびパターニング技術を考慮して適宜好適な値に設定すればよい。
【0055】
図2に示すように、第1基板130A上には、水平方向にストライプ状に延びる給電線1321,1322・・・,1324が更に設けられている。給電線1321乃至1324も、基本的には第1電極131と同様の製造プロセスによって形成されている。第1電極1311,1318は給電線1321に接続され、第1電極1312,1317は給電線1322に接続されている。また、第1電極1313,1316は給電線1323に接続され、第1電極1314,1315は給電線1324に接続されている。尚、図2においては、給電線132と電極131のコンタクトの図示を省略した。
【0056】
上述の接続関係から明らかなように、第1電極1311,1318の電圧は給電線1321に印加される電圧によって制御され、第1電極1312,1317の電圧は給電線1322に印加される電圧によって制御される。また、第1電極1313,1316の電圧は給電線1323に印加される電圧によって制御され、第1電極1314,1315の電圧は給電線1324に印加される電圧によって制御される。給電線1321,1322・・・,1324にはそれぞれ独立した電圧が図示せぬ駆動回路から印加される。
【0057】
また、図3と図4に示すように、1つのレンズ列31を構成する領域には、垂直方向に延びる壁状のスペーサ136が配置されている。
【0058】
スペーサ136は第2基板130Bの第2配向膜135上の所定の場所に設けられている。スペーサ136は、透明な高分子材料から成り、第2配向膜135上に設けられた感光性を有するスペーサ形成用材料層の露光及び現像によって形成されている。
【0059】
第1の実施形態において、スペーサ136は、レンズ列31の中央部に位置する第2配向膜135上に設けられている。スペーサ136の中心を通る線に対し、第1電極1311と第1電極1318は対称に配置されており、第1電極1312と第1電極1317は対称に配置されている。他の第1電極においても同様である。
【0060】
図4において、符号SWはスペーサ136の水平方向の幅を表す。また、符号SHはスペーサ136のZ方向の高さを表す。幅SWは例えば25[μm]であり、高さSHは例えば50[μm]である。図1ないし図3に示すように、第1基板130Aの外周部と第2基板130Bの外周部は例えばエポキシ系樹脂材料から成る封止部138によって封止されており、図3に示すスペーサ136の長さSLは、スペーサ136の端部と封止部138との間に間隔D1,D2が空くような値に設定されている。間隔D1,D2の値は、可変レンズアレイ30の製造の際に支障なく液晶材料が基板間に流れるような値に設定されている。
【0061】
可変レンズアレイ30の製造方法を説明する。第1基板130A上に、第1電極131、第1ないし第4給電線および第1配向膜133等を、周知の方法により適宜形成する。また、第2基板130B上に、第2電極134、第2配向膜135及びスペーサ136等を周知の方法により適宜形成する。そして、上記工程を経た第1基板130Aと第2基板130Bを液晶材料を挟んだ状態で対向させ、周囲を封止することによって、可変レンズアレイ30を得ることができる。
【0062】
次いで、図5ないし図8を参照して、可変レンズアレイ30の動作について説明する。先ず、立体画像を表示するときの動作について説明し、次いで、通常画像を表示するときの動作について説明する。
【0063】
図5は、立体画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。図6は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【0064】
画像表示装置1の動作時において第2電極134には例えば0[ボルト]が印加される。そして、立体画像を表示するときには、例えば、給電線1321には30[ボルト]が印加され、給電線1322には20[ボルト]が印加され、給電線1323には10[ボルト]が印加され、給電線1324には0[ボルト]が印加される。
【0065】
この状態においては、給電線1321に接続されている第1電極1311,1318と、第2電極134との間の電圧は30[ボルト]である。従って、第2電極134と第1電極1311,1318との間に電界が形成され、液晶分子137Aの長軸はZ方向を向く。また、給電線1322に接続されている第1電極1312,1317と、第2電極134との間の電圧は20[ボルト]である。従って、第2電極134と第1電極1312,1317との間には、先ほどよりも弱い電界が形成される。液晶分子137Aの長軸はZ方向を向くが、その程度は若干弱い。給電線1323に接続されている第1電極1313,1316と、第2電極134との間の電圧は10[ボルト]である。従って、第2電極134と第1電極1313,1316との間にも電界が形成され、液晶分子137Aの長軸はZ方向を向くが、その程度は更に弱くなる。
【0066】
一方、給電線1324に接続されている第1電極1314,1315と、第2電極134との間の電圧は0[ボルト]である。従って、第2電極134と第1電極1314,1315との間には電界が形成されず、液晶分子137Aの長軸はY方向のままとなる。
【0067】
液晶層137はポジ型のネマチック液晶材料から成る。液晶分子137Aの長軸方向の屈折率は、短軸方向の屈折率よりも大きい。このため、図5のグラフに示すように、液晶層137における屈折率は、レンズ列31の周辺部は小さく、中央部に向かうほど大きくなる。尚、図5に示す符号「nS」と符号「nL」は、それぞれ、液晶分子137Aの短軸方向の屈折率と長軸方向の屈折率を示す。尚、図5に示すグラフは模式的なものであって、屈折率の最大値と最小値とが常に「nS」や「nL」になるといったことを意味するものではない。後述する他の図面におけるグラフにおいても同様である。
【0068】
この状態にあっては、レンズ列31を透過する光の波面は、レンズ列31の中央部から周辺部に向かうほど早く進む。従って、ある一点に波面が集中するように光は進むので、レンズ列31は凸レンズとして作用する液晶GRINレンズを構成する。図6に示すストライプ状のレンズ列31は、光学的には円筒状の凸レンズ列と同視できるので、レンチキュラーレンズとして動作する。尚、図5等に示す屈折率のグラフは、スペーサ136を構成する高分子材料として、液晶分子137Aの長軸方向の屈折率と略同様の屈折率を示す材料が選択されている場合の例を示した。また、図6や後述する図8等においては、図示の都合上スペーサ136を省略した。
【0069】
視点A1,A2・・・,A4用の画像を形成するための画素12から出射した光は、レンズ列31を透過する際に進行方向が変えられ、所定の方向に向かう。これによって、図1に示す観察領域WAにおいて、所定の視点用の画像を観察することができる。
【0070】
図7は、通常画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。図8は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【0071】
通常画像を表示するときには、例えば、給電線1321,1322・・・,1324には0[ボルト]が印加される。この状態においては、第1電極1311,1312・・・,1318と、第2電極134との間の電圧は0[ボルト]である。従って、第2電極134と全ての第1電極131との間には電界が形成されず、液晶分子137Aの長軸はY方向のままとなる。
【0072】
この状態では、液晶層137は、屈折率が「nL」である材料から成る単なる透明な基板として作用する。換言すれば、図8に示すストライプ状のレンズ列31はは屈折力を失った状態である。従って、画像表示装置1はレンズアレイが設けられていないと同様の状態となり、通常画像を観察することができる。
【0073】
図5および図7を対比して明らかなように、立体画像を表示する場合と通常画像を表示する場合とで、スペーサ136付近の液晶分子137Aはその配向方向は一定に保たれる。このように、スペーサ136はレンズ列31の屈折力の値を変化させたときに液晶層137の液晶分子137Aが動かない場所に設けられている。従って、スペーサ136付近の液晶分子137Aが、スペーサ136の影響によって初期配向状態に影響を受けたとしても、第1電極131と第2電極134との間に電圧を加えて液晶分子137Aを配向させるといった動作の妨げになるといったことがない。
【0074】
また、スペーサ136を構成する高分子材料として液晶分子137Aの長軸方向の屈折率と略同様の屈折率を示す材料が選択されていれば、可変レンズアレイ30の屈折力をどのように設定したとしても、スペーサ136は液晶層137と光学的に同一視できる。従って、スペーサ136の存在によってレンズ性能が損なわれるといったことがない。
【0075】
以上、第1の実施形態について説明した。上述した説明では、スペーサ136は各レンズ列31の中央部に設けられているとしたが、これに限るものではない。例えば、スペーサ136が設けられているレンズ列31と、スペーサ136が設けられていないレンズ列31とが交互に配置されるといった構成であってもよい。後述する他の実施形態においても同様である。このような変形例の可変レンズアレイの正面の模式的な平面図と背面の模式的な平面図を、図9と図10に示す。
【0076】
あるいは又、スペーサ136は壁状であるとして説明したが、柱状のスペーサが設けられている構成とすることもできる。後述する他の実施形態においても同様である。このような変形例の可変レンズアレイの正面の模式的な平面図と背面の模式的な平面図を、図11と図12に示す。
【0077】
[第2の実施形態]
第2の実施形態も、本開示に係る画像表示装置及び可変レンズアレイに関する。
【0078】
第2の実施形態は、第1の実施形態に対して、可変レンズアレイを構成するスペーサの位置が異なり、また、通常画像を表示する際に第1電極に印加する電圧の値が異なる。以上の点が相違する他、第2の実施形態は第1の実施形態と同様の構成である。
【0079】
第2の実施形態に用いられる画像表示装置2を仮想的に分離したときの模式的な斜視図は、図1に示す画像表示装置1を画像表示装置2と読み替え、可変レンズアレイ30を可変レンズアレイ230と読み替えたと同様である。
【0080】
図13ないし図15を参照して、可変レンズアレイ230の構成について説明する。
【0081】
図13は、可変レンズアレイの正面の模式的な平面図である。図13においては第2基板130Bの一部を切り欠いて示した。図14は、可変レンズアレイの背面の模式的な平面図である。図14においては第1基板130Aの一部を切り欠いて示した。図15は、図13のB−B線断面図である。
【0082】
図13ないし図15に示すように、可変レンズアレイ230において、壁状のスペーサ236は、レンズ列31と隣接するレンズ列31との境界部に配置されている。即ち、スペーサ236はそれぞれ隣接するレンズ列31の境界部に配置されている。
【0083】
第2の実施形態においても、電界が印加されていないときの液晶分子137Aの長軸はY方向を向くとして説明する。尚、図15は、電界が印加されていないときの液晶分子137Aの配向を示している。
【0084】
次いで、図16ないし図19を参照して、可変レンズアレイ230の動作について説明する。先ず、立体画像を表示するときの動作について説明し、次いで、通常画像を表示するときの動作について説明する。
【0085】
図16は、立体画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。図17は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【0086】
画像表示装置2の動作時において第2電極134には例えば0[ボルト]が印加される。そして、立体画像を表示するときには、例えば、給電線1321には30[ボルト]が印加され、給電線1322には20[ボルト]が印加され、給電線1323には10[ボルト]が印加され、給電線1324には0[ボルト]が印加される。
【0087】
この状態における第2電極134と第1電極131の間に形成され電界の様子は、第1の実施形態において図5を参照して説明したと同様である。レンズ列31は凸レンズとして作用する液晶GRINレンズを構成する。図17に示すストライプ状のレンズ列31は、光学的には円筒状の凸レンズ列と同視できるので、レンチキュラーレンズとして動作する。
【0088】
図18は、通常画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。図19は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【0089】
通常画像を表示するときには、給電線1321,1322・・・,1324には30[ボルト]が印加される。第2電極134と全ての第1電極131との間には電界が形成され、液晶分子137Aの長軸はZ方向を向く。
【0090】
この状態では、液晶層137は、屈折率が「nS」である材料から成る単なる透明な基板として作用する。換言すれば、図19に示すレンズ列31は屈折力を失った状態である。従って、画像表示装置2はレンズアレイが設けられていないと同様の状態となり、通常画像を観察することができる。
【0091】
[第3の実施形態]
第3の実施形態も、本開示に係る画像表示装置及び可変レンズアレイに関する。
【0092】
第3の実施形態にあっては、可変レンズアレイの液晶層は、ネガ型のネマチック液晶材料から成る。第3の実施形態は、第1の実施形態に対して、配向膜と液晶材料が相違する。以上の点が相違する他、第3の実施形態は第1の実施形態と同様の構成である。
【0093】
第3の実施形態に用いられる画像表示装置3を仮想的に分離したときの模式的な斜視図は、図1に示す画像表示装置1を画像表示装置3と読み替え、可変レンズアレイ30を可変レンズアレイ330と読み替えたと同様である。
【0094】
図20は、第3の実施形態に用いられる可変レンズアレイの一部の断面図である。具体的には、第1の実施形態で参照した図2において可変レンズアレイ30を可変レンズアレイ330と読み替えたときのA−A線断面図である。
【0095】
上述したように、可変レンズアレイ330において、液晶層337はネガ型のネマチック液晶材料から成る。そして、第1の実施形態とは異なり、第1配向膜333と第2配向膜335は、電界が印加されていない状態では液晶分子337Aの長軸をZ方向に向かせ、電界が印加されると長軸をY方向に傾けるような配向処理が施されている。尚、図20は、電界が印加されていないときの液晶分子337Aの配向を示している。
【0096】
次いで、図21ないし図24を参照して、可変レンズアレイ330の動作について説明する。先ず、立体画像を表示するときの動作について説明し、次いで、通常画像を表示するときの動作について説明する。
【0097】
図21は、立体画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。図22は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【0098】
画像表示装置3の動作時において第2電極134には例えば0[ボルト]が印加される。そして、立体画像を表示するときには、例えば、給電線1321には0[ボルト]が印加され、給電線1322には10[ボルト]が印加され、給電線1323には20[ボルト]が印加され、給電線1324には30[ボルト]が印加される。
【0099】
この状態においては、給電線1324に接続されている第1電極1314,1315と、第2電極134との間の電圧は30[ボルト]である。従って、第2電極134と第1電極1314,1315との間に電界が形成され、液晶分子337Aの長軸はY方向を向く。また、給電線1323に接続されている第1電極1313,1316と、第2電極134との間の電圧は20[ボルト]である。従って、第2電極134と第1電極1313,1316との間には、先ほどよりも弱い電界が形成される。液晶分子337Aの長軸はY方向を向くが、その程度は若干弱い。給電線1322に接続されている第1電極1312,1317と、第2電極134との間の電圧は10[ボルト]である。従って、第2電極134と第1電極1312,1317との間にも電界が形成され、液晶分子337Aの長軸はY方向を向くが、その程度は更に弱くなる。
【0100】
一方、給電線1321に接続されている第1電極1311,1318と、第2電極134との間の電圧は0[ボルト]である。従って、第2電極134と第1電極1311,1318との間には電界が形成されず、液晶分子337Aの長軸はZ方向のままとなる。
【0101】
液晶分子337Aの長軸方向の屈折率は、短軸方向の屈折率よりも大きい。このため、図21のグラフに示すように、液晶層337における屈折率は、レンズ列31の周辺部は小さく、中央部に向かうほど大きくなる。尚、図21に示す符号「nS」と符号「nL」は、それぞれ、液晶分子337Aの短軸方向の屈折率と長軸方向の屈折率を示す。
【0102】
この状態にあっては、レンズ列31は凸レンズとして作用する液晶GRINレンズを構成する。図22に示すストライプ状のレンズ列31は、光学的には円筒状の凸レンズ列と同視できるので、レンチキュラーレンズとして動作する。尚、図21等に示す屈折率のグラフは、スペーサ136を構成する高分子材料として、液晶分子337Aの長軸方向の屈折率と略同様の屈折率を示す材料が選択されている場合の例を示した。
【0103】
視点A1,A2・・・,A4用の画像を形成するための画素12から出射した光は、レンズ列31を透過する際に進行方向が変えられ、所定の方向に向かう。これによって、図1に示す観察領域WAにおいて、所定の視点用の画像を観察することができる。
【0104】
図23は、通常画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。図24は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【0105】
通常画像を表示するときには、例えば、給電線1321,1322・・・,1324には30[ボルト]が印加される。この状態においては、第1電極1311,1312・・・,1318と、第2電極134との間の電圧は30[ボルト]である。従って、第2電極134と全ての第1電極131との間には電界が形成され、液晶分子337Aの長軸はY方向となる。
【0106】
この状態では、液晶層337は、屈折率が「nL」である材料から成る単なる透明な基板として作用する。換言すれば、レンズ列31は屈折力を失った状態である。従って、画像表示装置3はレンズアレイが設けられていないと同様の状態となり、通常画像を観察することができる。
【0107】
[第4の実施形態]
第4の実施形態も、本開示に係る画像表示装置及び可変レンズアレイに関する。
【0108】
第4の実施形態は、第3の実施形態に対して、可変レンズアレイを構成するスペーサの位置が異なり、また、通常画像を表示する際に第1電極に印加する電圧の値が異なる。以上の点が相違する他、第4の実施形態は第3の実施形態と同様の構成である。
【0109】
第4の実施形態に用いられる画像表示装置4を仮想的に分離したときの模式的な斜視図は、図1に示す画像表示装置1を画像表示装置4と読み替え、可変レンズアレイ30を可変レンズアレイ430と読み替えたと同様である。
【0110】
図25は、第4の実施形態に用いられる可変レンズアレイの一部の断面図である。具体的には、第2の実施形態で参照した図13において可変レンズアレイ230を可変レンズアレイ430と読み替えたときのB−B線断面図である。
【0111】
図26ないし図29を参照して、可変レンズアレイ230の構成について説明する。
【0112】
図25に示すように、可変レンズアレイ430において、壁状のスペーサ236は、レンズ列31と隣接するレンズ列31との境界部に配置されている。即ち、スペーサ236はそれぞれ隣接するレンズ列31の境界部に配置されている。
【0113】
第4の実施形態においても、電界が印加されていないときの液晶分子337Aの長軸はZ方向を向くとして説明する。尚、図25は、電界が印加されていないときの液晶分子337Aの配向を示している。
【0114】
次いで、図26ないし図29を参照して、可変レンズアレイ430の動作について説明する。先ず、立体画像を表示するときの動作について説明し、次いで、通常画像を表示するときの動作について説明する。
【0115】
図26は、立体画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。図27は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【0116】
画像表示装置4の動作時において第2電極134には例えば0[ボルト]が印加される。そして、立体画像を表示するときには、例えば、給電線1321には0[ボルト]が印加され、給電線1322には10[ボルト]が印加され、給電線1323には20[ボルト]が印加され、給電線1324には30[ボルト]が印加される。
【0117】
この状態における第2電極134と第1電極131の間に形成される電界の様子は、第3の実施形態において図21を参照して説明したと同様である。レンズ列31は凸レンズとして作用する液晶GRINレンズを構成する。図27に示すストライプ状のレンズ列31は、光学的には円筒状の凸レンズ列と同視できるので、レンチキュラーレンズとして動作する。
【0118】
図28は、通常画像を表示するときの可変レンズアレイ及び画像表示部の一部の模式的な断面図である。図29は、画像表示部と可変レンズアレイの一部の模式的な斜視図である。
【0119】
通常画像を表示するときには、給電線1321,1322・・・,1324には0[ボルト]が印加される。第2電極134と全ての第1電極131との間には電界が形成されず、液晶分子337Aの長軸はZ方向を向く。
【0120】
この状態では、液晶層337は、屈折率が「nS」である材料から成る単なる透明な基板として作用する。換言すれば、図29に示すレンズ列31は屈折力を失った状態である。従って、画像表示装置4はレンズアレイが設けられていないと同様の状態となり、通常画像を観察することができる。
【0121】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0122】
例えば、各実施形態においてスペーサは第2基板130B上に形成されるとしたが、第1基板130A上に形成される構成とすることもできる。また、各実施形態においては第1基板130Aと第2基板130Bの液晶層側の面のいずれにも配向膜を設ける構成としたが、いずれか一方に配向膜が設けられている構成や、場合によっては配向膜を含まないといった構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0123】
1,2,3,4・・・画像表示装置、10・・・画像表示部、11・・・表示領域、12・・・画素、20・・・照明部、30,230,330,430・・・可変レンズアレイ、31・・・レンズ列、130A・・・第1基板、130B・・・第2基板、131,1311,1312,1313,1314,1315,1316,1317,1318・・・第1電極、132,1321,1322,1323,1324・・・給電線、133,333・・・第1配向膜、134・・・第2電極、135,335・・・第2配向膜、136,236・・・スペーサ、137,337・・・液晶層、138・・・封止部、137A,337A・・・液晶分子、WAL,WAC,WAR・・・観察領域、A1,A2,A3,A4・・・視点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元画像を表示する画像表示部、及び、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイ、
を備えており、
可変レンズアレイは画像表示部に対向して配置されており、
可変レンズアレイの第1基板と第2基板との間には、レンズ列の屈折力の値を変化させたときに液晶層の液晶分子の配向方向が変わらない場所に、壁状または柱状のスペーサが設けられている画像表示装置。
【請求項2】
壁状または柱状のスペーサはレンズ列の中央部に配置されている請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
壁状または柱状のスペーサはそれぞれ隣接するレンズ列の境界部に配置されている請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
第1基板の外周部と第2基板の外周部は封止部によって封止されており、
壁状または柱状のスペーサの端部と封止部との間には間隔が空けられている請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
二次元画像を表示する画像表示部、及び、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイ、
を備えており、
可変レンズアレイは画像表示部に対向して配置されており、
レンズ列の中央部に壁状または柱状のスペーサが設けられている画像表示装置。
【請求項6】
二次元画像を表示する画像表示部、及び、
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイ、
を備えており、
可変レンズアレイは画像表示部に対向して配置されており、
それぞれ隣接するレンズ列の境界部に壁状または柱状のスペーサが設けられている画像表示装置。
【請求項7】
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイであって、
第1基板と第2基板との間には、レンズ列の屈折力の値を変化させたときに液晶層の液晶分子の配向方向が変わらない場所に、壁状または柱状のスペーサが設けられている可変レンズアレイ。
【請求項8】
壁状または柱状のスペーサはレンズ列の中央部に配置されている請求項7に記載の可変レンズアレイ。
【請求項9】
壁状または柱状のスペーサはそれぞれ隣接するレンズ列の境界部に配置されている請求項7に記載の可変レンズアレイ。
【請求項10】
第1基板の外周部と第2基板の外周部は封止部によって封止されており、
壁状または柱状のスペーサの端部と封止部との間には間隔が空けられている請求項7に記載の可変レンズアレイ。
【請求項11】
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイであって、
レンズ列の中央部に壁状または柱状のスペーサが設けられている可変レンズアレイ。
【請求項12】
第1電極を有する第1基板と、第2電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを含み、第1電極と第2電極との間に印加される電圧によってレンズ列の屈折力の値が変化する可変レンズアレイであって、
それぞれ隣接するレンズ列の境界部に壁状または柱状のスペーサが設けられている可変レンズアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−173715(P2012−173715A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38679(P2011−38679)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(598172398)株式会社ジャパンディスプレイウェスト (90)
【Fターム(参考)】